JP4458526B2 - シートベルトリトラクタ及びシートベルト装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば自動車、作業用車両等の自走車両に装備され、乗員を拘束保護するためのシートベルトを巻き取るシートベルトリトラクタ及びシートベルト装置に係わり、特に、シートベルトをモータの駆動トルクによりリールで巻き取るシートベルトリトラクタ及びシートベルト装置に関する。
車両の座席に設けられるシートベルト装置は、車両の衝突時に生じる加速度による乗員の急激な移動を拘束し、乗員の身体の安全を図る装置として不可欠な装置である。このシートベルト装置は、一般にシートベルト(ウェビング)と、シートベルトに取り付けられるタングと、座席に取り付けられてタングを着脱可能なバックル装置と、リトラクタ等とから構成される。
リトラクタは、シートベルトを巻取部材(リール、ボビン、スプール)に巻回してバネ力により内部に引き込むとともに、衝撃が作用する衝突時には緊急ロック機構(ELR機構)により巻取部材のベルト引き出し方向への回転をロックし、このロックされたシートベルトにより前方に急激に移動する乗員の身体を拘束する。
このようなシートベルトリトラクタとして、従来、モータの回転を、複数の歯車よりなる歯車機構を備えた動力伝達機構によって減速しつつ巻取部材に伝達し、巻取部材でシートベルトを巻き取るもの(いわゆるモータリトラクタ)が既に提唱されている。
そして、このようなシートベルトリトラクタでは、さらに車両の衝突危険度を検出する手段を備えてその衝突危険度に応じた段階的なシートベルトの巻き込みをモータの駆動により付与する構成も提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2000−52925号公報
しかしながら、上記従来技術は、車両に衝突の危険性が検出された場合に限り動作するものであり、また衝突危険度に応じて2段階的に行われ、かつシートベルトを締め付けるように変化させるだけの制御でしかない。
その一方で、通常運転時におけるシートベルトの装着力については、強くホールドする方が安心感があって好ましいとする場合から、ゆるい装着力の方が楽で好ましいとするなど、乗員の個人間で好みが大きく異なるものであり、上記従来技術も含めてそのように乗員の好みに対応してシートベルトの張力による装着力を操作できるものがなかった。
本発明の目的は、乗員個人の好みに応じてシートベルトの張力を可変操作することのできるシートベルトリトラクタ及びシートベルト装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、リールをベルト巻取方向に回転しシートベルトを巻き取るスプリングと、前記リールをベルト巻取方向に回転し前記シートベルトを巻き取り可能な回転動力を発生するモータと、ータ制御装置と、乗員が操作可能に設けられ、前記モータ制御装置に対し任意の巻取り張力を設定する指令信号を出力する設定装置とを有し、前記モータ制御装置は、前記設定装置から出力された前記指令信号による前記リールの巻取りの方向及び前記回転動力に関するモータ設定と、現時点の前記モータ設定とが、合致するかどうかを判断する判断手段と、前記判断手段による判断が不合致であった場合、前記指令信号によるモータ設定に合致するように、前記現時点の前記モータ設定を変更する変更手段と、前記変更手段による変更された前記モータ設定に基づく巻取り張力で前記シートベルトを巻き取るよう前記モータの回転動力を制御するフィードバック制御手段とを備えており、前記判断手段は、車両の通常運転中の所定のタイミングで、前記指令信号による前記モータ設定と、前記現時点の前記モータ設定とが、合致するかどうかを判断し、前記変更手段は、前記所定のタイミングで行う前記判断手段による判断が前記不合致であった場合に、前記モータ設定の変更を実行することを特徴とする。
好ましくは、前記モータと前記リールとの間の動力伝達経路に、動力の伝達と伝達停止とを切り換えるクラッチ機構を備える。
また好ましくは、前記シートベルトを巻き取る際には、前記モータが前記スプリングに連結して付勢させることにより前記任意の巻取り張力を発生させる。
[0013]
また上記目的を達成するために、本発明は、シートベルトと、前記シートベルトに取り付けられたタングと、前記タングを任意に着脱可能なバックルと、前記シートベルトの一端を固定したリールをベルト巻取方向に回転しシートベルトを巻き取るスプリングと、前記リールをベルト巻取方向に回転し前記シートベルトを巻き取り可能な回転動力を発生するモータと、ータ制御装置と、乗員が操作可能に設けられ、前記モータ制御装置に対し任意の巻取り張力を設定する指令信号を出力する設定装置とを有し、前記モータ制御装置は、前記設定装置から出力された前記指令信号による前記リールの巻取りの方向及び前記回転動力に関するモータ設定と、現時点の前記モータ設定とが、合致するかどうかを判断する判断手段と、前記判断手段による判断が不合致であった場合、前記指令信号によるモータ設定に合致するように、前記現時点の前記モータ設定を変更する変更手段と、前記変更手段による変更された前記モータ設定に基づく巻取り張力で前記シートベルトを巻き取るよう前記モータの回転動力を制御するフィードバック制御手段とを備えており、前記判断手段は、車両の通常運転中の所定のタイミングで、前記指令信号による前記モータ設定と、前記現時点の前記モータ設定とが、合致するかどうかを判断し、前記変更手段は、前記所定のタイミングで行う前記判断手段による判断が前記不合致であった場合に、前記モータ設定の変更を実行することを特徴とする。
請求項1及び請求項4記載の発明によれば、モータ制御装置が任意の巻取り張力でシートベルトを巻き取れるようモータの回転動力を制御できることで、乗員が自分の好みに合わせた設定でシートベルトの張力を可変操作することのできるようになり、通常運転時においてより快適に運転できるようになる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係るシートベルト装置の概略的な構成を示すブロック図である。この図1において、この第1実施形態のシートベルト装置100は、シートベルトリトラクタ1と、モータ制御装置101と、操作器102と、バックルスイッチ103と、モータ電流検出器104を備えており、またシートベルトリトラクタ1はモータ10と、モータ動力伝達装置105と、リール4と、スプリング手段14とを備えて構成されている。また公知の構成であるため図示を省略しているが、この他にも、シートベルト装置100はシートベルトと、このシートベルトに取り付けられたタングと、このタングを任意に着脱可能なバックルを備えており、シートベルトをシートベルトリトラクタから引き出して乗員に当てた状態でタングをバックルに装着することで、シートベルト装置は乗員を座席に拘束できるようになっている。
モータ制御装置101は、操作器102とバックルスイッチ103とモータ電流検出器104から入力される信号に基づいてモータ10の駆動を制御するものである。操作器102は、車両の座席若しくはその附近に取り付けられ、シートベルトの張力調整に関して乗員が直接操作可能な多数のスイッチが設けられている(詳細は後述する)。バックルスイッチ103は、バックルに設けられて、タングの装着状態を検出するものである。モータ電流検出器104は、モータ10に接続されてモータ10に流れる電流の大きさを検出するものである。
そしてシートベルトリトラクタ1において、モータ制御装置101により回転駆動制御されるモータ10がモータ動力伝達装置105を介して連結するリール4の回転を制御し、またその他方でスプリング手段14がリール4に対して付勢力を付与している。それらモータ10からの回転駆動力とスプリング手段14からの付勢力とが協働して、リール4に巻回されているシートベルトの張力(テンション)が調節されて、乗員の拘束保護をより一層効率よくかつ乗員に対してより一層快適に行うとともに、ベルト張力調節を簡単にかつ確実に行うことができ、しかも、ベルト張力調節のための構造を簡単にした構造となっている。
以下、このシートベルトリトラクタの構成および動作について詳細に説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態のシートベルト装置に用いられるシートベルトリトラクタを示す分解斜視図、図3ないし図5は、図2を部分的に拡大して示す、部分拡大分解斜視図、図6はこの第1実施形態のシートベルトリトラクタの組立状態のロック手段側の縦断面図、図7はこの第1実施形態のシートベルトリトラクタの組立状態のスプリング手段側の縦断面図である。
図2に示すように、この第1実施形態のシートベルトリトラクタ1は、大きく分けてフレーム2と、シートベルト3を巻き取るリール4と、フレーム2の一側に配設され、作動時にリール4のベルト引出方向CWの回転を阻止するロック手段5と、このロック手段5を必要時に作動させるロック作動機構6と、衝突等の大減速度時にロック手段5の作動によりシートベルト引出が阻止されたとき、シートベルトの荷重を制限するフォースリミッタ機構(以下、EA機構ともいう)7と、車両減速度を検知する減速度検知手段8と、回転トルクを発生するモータ10と、モータ10の回転トルクを伝達する動力伝達歯車機構11と、動力伝達歯車機構11から伝達されるモータ10の回転トルクを減速してリール4に伝達する減速機構12と、モータ10の回転トルクをリール4に伝達させる状態およびリール4の回転をモータ10の伝達させない状態のいずれか一方に選択的に切換設定する動力伝達経路切替機構13(クラッチ機構)と、リール4をシートベルト3の巻取方向CCWに付勢するスプリング手段14(スプリング)とからなっている。ここで、動力伝達歯車機構11と、減速機構12と、動力伝達経路切替機構13とが、モータ動力伝達装置105(動力伝達経路)を構成している。
なお、図2の分解斜視図において、シートベルトリトラクタ1が3列に記載されているが、実際にはフレーム2を貫通する直線A1−A2の端A1に、上方のロック手段5およびロック作動機構6の各中心を通る直線のロック手段5側の端A1が連続し、また、フレーム2を貫通する直線A1−A2の端A2に、下方の減速機構12およびスプリング手段14の各中心を通る直線の減速機構12側の端A2が連続するようになっている。
図3に示すように、フレーム2は平行な一対の側壁15,16とこれらの側壁15,16を連結する背板17とからなっている。このフレーム2内の両側壁15,16間には、シートベルト3を巻き取るためのリール4が配設されている。
一方の側壁15には円形の大孔15aが穿設されている。また、他方の側壁16にも、円形の大孔16aが大孔15aと同心に穿設されているとともに、この側壁16の内側に、内周面に所定数のラチェット歯状の内歯18aを有する円形の大孔が穿設された内歯形成部材18が、これらの内歯18aを大孔16aと同心にして固定されている。更に、側壁16には、減速度検知手段8を取り付ける取付孔16bが穿設されている。
リール4は、シートベルト3を巻き取るシートベルト巻取部4aと、このシートベルト巻取部4aの両端のフランジ部4b,4cとからなり、その中央に軸方向に貫通する貫通孔4dが穿設されている。その場合、貫通孔4dは、図示しないが、側壁15側の端部が断面正6角形状の孔に形成され、また側壁16側の端部が後述するストッパ27が嵌合可能でかつリール4とストッパ27とが一体回転可能になる断面形状の孔に形成されている。
図4に示すように、ロック手段5はロッキングベース19とパウル20とを備えている。ロッキングベース19は、ディスク部19aとねじ軸部19bとからなり、その中心に軸方向に貫通する貫通孔19cが穿設されている。この貫通孔19cのディスク部19aに対応する部分は、断面正6角形状孔19c′とされている。また、ディスク部19aには、パウル20を回転可能に支持するための孔19dが穿設されていると共に、この孔19dと同心円の円弧状の荷重被伝達部19eが形成されている。この荷重被伝達部19eはパウル20からの荷重を受けるようになっている。更に、ディスク部19aの外周面の荷重被伝達部19eと反対側の部分には、所定範囲にわたってギザギザの刻み歯19fが形成されており、この刻み歯19fは内歯形成部材18の内歯18aに係合可能となっている。更に、ディスク部19aには、後述するパウルスプリング25の一端を支持するスプリング支持部19gが設けられている。
一方、パウル20は回転基端に穿設された孔20aを有しており、この孔20aとロッキングベース19の孔19dとに図示しないピン等の固定具を嵌合させることにより、パウル20がロッキングベース19に回転可能に取り付けられている。また、パウル20の先端には、内歯形成部材18の内歯18aに係合可能な係止爪20bが形成されていると共に、突出軸からなるカムフォロワ20cが設けられている。更に、パウル20には、円弧状の荷重伝達部20dが形成されており、この荷重伝達部20dは、係止爪20bが内歯18aに係合したとき、パウル20に作用する反力をロッキングベース19の荷重被伝達部19eに伝達させるようになっている。すなわち、パウル20の反力をロッキングベース19で支持するようになっている。
ロック作動機構6は、ロックギヤ21と、フライホイール22と、ロックギヤ21とフライホイール22との間に縮設されるフライホイールスプリング23と、フレーム2の側壁16に着脱可能に固定される第1リテーナ24と、ロッキングベース19とロックギヤ21との間に縮設されるパウルスプリング25とを備えている。
ロックギヤ21は、ディスク部21aと、このディスク部21aの外周に形成され、その外周面に形成された所定数のラチェット歯状の外歯21bを有する環状歯部材21cとからなっている。
ディスク部21aの中心には、筒状のボス21dが形成されていると共に、このボス21dの近傍にフライホイール22を回転可能に支持する支持軸21eが突設されている。更に、ディスク部21aの外周側には、フライホイール22の回転を所定範囲に規制する第1および第2ストッパ21f,21gが設けられていると共に、ディスク部21aを貫通するカム孔21hが穿設されている。このカム孔21hには、パウル20のカムフォロワ20cが嵌合されるようになっており、したがってロックギヤ21がロッキングベース19に対して相対回転したとき、カムフォロワ20cがカム孔21hにガイドされることにより、パウル20が回転するようになっている。更に、ディスク部21aにはパウルスプリング25の一端を支持するスプリング支持部21iが設けられている。
フライホイール22は、ロックギヤ21の支持軸21eに回転可能に嵌合される支持孔22aが穿設されていると共に、先端に係止爪22bが形成された係止部22cが設けられている。そして、フライホイール22が支持孔22aに回転可能に支持されたとき、この係止部22cは第1および第2ストッパ21f,21gの間に位置するようになっている。したがって、フライホイール22の回転は、第1および第2ストッパ21f,21gの間に規制され、係止部22cが第1ストッパ21fに当接しているときは係止爪22bが径方向内側に引っ込んだ状態になり、また係止部22cが第2ストッパ21gに当接しているときは係止爪22bが径方向外側に突出した状態になる。更に、フライホイール22には、フライホイールスプリング23の一端を支持するスプリング支持部22dが設けられている。
フライホイールスプリング23は、その一端がフライホイール22のスプリング支持部22dに支持され、またその他端がロックギヤ21の図示しないスプリング支持部に支持されて、フライホイール22をロックギヤ21に対してベルト引出方向CWに常時付勢している。したがって、フライホイール22の非作動時は、係止部22cが第1ストッパ21fに当接している。
第1リテーナ24は、ディスク部24aと、このディスク部24aの外周にフレーム2側に突出して形成され、側壁16に着脱可能に固定される第1環状フランジ部24b(図6に図示)と、ディスク部24aの外周にフレーム2側と反対側に突出して形成された第2環状フランジ部24cとからなっている。
ディスク部24aの中心には貫通孔24dが穿設されている。また、図6に示すようにディスク部24aのフレーム2側の面には、内周面にラチェット歯状の内歯24eを有する環状歯部材24fが貫通孔24dと同心に突設されている。この環状歯部材24fは、リトラクタ1が組み立てられたとき、ロックギヤ21の環状歯部材21cと第1および第2ストッパ21f,21gとの間に進入可能な大きさに設定されている。その場合、フライホイール22の係止爪22bも環状歯部材21cの内側に位置しており、ロックギヤ21に対してフライホイール22が回転し、係止部22cが第2ストッパ21gに当接した位置では、この係止爪22bが内歯24eに係止するようになっている。第2環状フランジ部24cには、第1カバー34が着脱可能に取り付けられている。
パウルスプリング25は、その一端がロックギヤ21のスプリング支持部21iに支持され、またその他端がロッキングベース19のスプリング支持部19gに支持されて、ロックギヤ21をロッキングベース19に対してベルト引出方向CWに常時付勢している。したがって、ロックギヤ21の非作動時は、パウル20のカムフォロワ20cがカム孔21hの最内側位置21h1に位置し、この状態で、ロックギヤ21はパウルスプリング25によるそれ以上の回転を阻止されている。
EA機構7は、トーションバー26と、ロッキングベース19のねじ軸部19bに螺合される筒状のストッパ27とを備えている。トーションバー26は、トーションバー部26aと、このトーションバー部26aの一端側のロックギヤ21側端部に設けられ、ロッキングベース19の断面正6角形状孔19c′にこのロッキングベース19と相対回転不能に嵌合する断面正6角形状の第1トルク伝達部26bと、この第1トルク伝達部26bの端に設けられたフランジ部26cと、トーションバー部26aの他端に設けられた断面正6角形状の第2トルク伝達部26dと、この第2トルク伝達部26dから同心状に突出し、先端にスプライン溝26eが形成された第1軸部26fと、フランジ部26cから同心状に突出し、スプライン溝26gが形成された第2軸部26hとからなっている。
筒状のストッパ27は内周に、ロッキングベース19のねじ軸部19bと羅合する雌ねじ27aが形成されているとともに、外周にリール4の回転トルクが伝達される一対の回転トルク伝達部27b,27cがそれぞれ設けられている。そして、これらの回転トルク伝達部27b,27cにより、ストッパ27はリール4と一体に回転するようになっていると共に、リール4に対して軸方向に相対的に移動可能となっている。したがって、ストッパ27がロッキングベース19に対してベルト引出方向CWに回転するような回転差が生じる、換言すればリール4がロッキングベース19に対してベルト引出方向CWに回転するような回転差が生じると、ストッパ27は軸方向に移動してロッキングベース19のディスク部19aに当接するようになっている。そして、ストッパ27がロッキングベース19に当接すると、ストッパ27は軸方向移動が停止し、ロッキングベース19と一体回転するようになる。
したがって、ストッパ27とロッキングベース19との間に回転差が生じている間は、トーションバー部26aがねじられるので、EA機構7は車両衝突時のベルト荷重を制限するEA機能を発揮するようになり、ストッパ27がロッキングベース19に当接すると、EA機能が終了する。このように、ストッパ27およびその雌ねじ27aとロッキングベース19およびそのねじ軸部19bとにより、EA機能を行う範囲が規定されている。
図3に示すように、減速度検知手段8は、側壁16に取り付けられるハウジング28と、このハウジング28に取り付けられるセンサケース29と、このセンサケース29に搭載される慣性質量30と、この慣性質量30により作動されるアクチュエータ31とを備えている。
ハウジング28は、フレーム2の側壁16の取付孔16bに嵌合されて取り付けられる嵌合取付部28aと、センサケース29を支持する一対の支持腕部28b,28cとからなっている。また、センサケース29は、支持腕部28b,28cの溝に係合して支持される一対の被支持部29a,29bと、慣性質量30が搭載される質量搭載部29cと、アクチュエータ31を回転可能に支持する一対の支持腕部29d,29eとからなっている。
慣性質量30は、脚部30aと、この脚部30aの上の質量部30bと、アクチュエータ31を作動する作動部30cとからなっている。そして、慣性質量30は質量搭載部29cに搭載されて、通常時は図示のように直立しているが、車両に所定減速度以上の減速度が作用したときα方向に傾動して、作動部30cがアクチュエータ31を回動するようになっている。
更に、アクチュエータ31は、センサケース29の一対の支持腕部29d,29eの孔に回転可能に嵌合支持される回転軸部31aと、慣性質量30の作動部30cによって押圧される被押圧部31bと、回転軸部31aと反対側に設けられ、ロックギヤ21の外歯21bに係止可能な係止爪31cとからなっている。そして、このアクチュエータ31は、慣性質量30が直立状態のときは最下位置にあって、係止爪31cが外歯21bに係合しない非係合位置となり、慣性質量30がα方向に傾動したときは上方へ回転して、係止爪31cが外歯21bに係合する係合位置となるようにされている。
図3に示すように、モータ10は、フレーム2の左側壁15に取り付けられる第2リテーナ35に取り付けられるようになっている。また、第2リテーナ35には、モータ10の回転軸10aが貫通する貫通孔35aが穿設されている。このモータ10は、車両速度や車両加速度等の車両走行状態の情報あるいはブレーキペダル踏込速度やアクセルペダル踏込速度等の車両運転状態の情報等の車両の各種情報に基づいて前述のモータ制御装置101によって駆動制御されるようになっている。
動力伝達歯車機構11は、モータ10の回転軸10aに一体回転可能に取り付けられたはす歯歯車からなるモータギヤ36と、このモータギヤ36に常時噛合した、はす歯歯車からなる大径コネクトギヤ37aと、この大径コネクトギヤ37aに同心にかつ一体に形成され、大径コネクトギヤ37aより小径の小径コネクトギヤ37bとからなるコネクトギヤ37とを備えている。
図2および図5に示すように、減速機構12は、円環状ディスクからなる第1キャリヤ38と、2個のプラネタリギヤ39,40および2個のアイドルギヤ41,42と、サンギヤ43と、リング状のインターナルギヤ44と、減速ギヤ45とを備えている。
第1キャリヤ38は、中心に正6角形の貫通孔38aが穿設されているとともに、円周方向に等間隔を置いて穿設された4つの支持孔38b,38c,38d,38eが穿設されている。
プラネタリギヤ39,40は、それぞれともに大径の大プラネタリギヤ39a,40aとこれらより小径の小プラネタリギヤ39b,40bとを備えている。大プラネタリギヤ39a,40aおよび小径の小プラネタリギヤ39b,40bは、それぞれ一体にかつ同心に形成されているとともに、小プラネタリギヤ39b,40bはアイドルギヤ41,42と同寸法に形成されている。これらのプラネタリギヤ39,40は、それぞれ第1キャリヤ38の相対向する2つの支持孔38b,38dに相対回転可能に支持されている。なお、図2には、小プラネタリギヤ39b,40bは明記されていない。
アイドルギヤ41,42は、それぞれ第1キャリヤ38の相対向する他の2つの支持孔38c,38eに相対回転可能に支持されている。
サンギヤ43は、トーションバー26の第1軸部26fに相対回転可能に支持されている。
インターナルギヤ44は内周に内歯44aを有し、かつ外周にラチェット歯44bを有している。更に、減速ギヤ45は内周に内歯45aを有し、かつ外周に外歯45bを有している。
そして、2個のプラネタリギヤ39,40の各大プラネタリギヤ39a,40aがともにサンギヤ43に常時噛合しているとともに、各小プラネタリギヤ39b,40bがともにインターナルギヤ44の内歯44aに常時噛合している。また、2個のアイドルギヤ41,42がともにインターナルギヤ44の内歯44aに常時噛合している。更に、減速ギヤ45の内歯45aがサンギヤ43に常時噛合しているとともに、減速ギヤ45の外歯45bがコネクトギヤ37の小径コネクトギヤ37bに常時噛合している。
図2および図3に示すように、動力伝達経路切替機構13は、スイッチギヤ46と、プランジャ47と、スプリング48と、係止レバー49とを備えている。図8(a)ないし(d)に示すように、スイッチギヤ46は第2リテーナ35の取付孔35bに取り付けられた支持軸50に回転可能にかつ軸方向に所定距離移動可能に支持され、はす歯歯車からなる歯車部46aと截頭円錐台形状の傾斜面46bとからなっている。プランジャ47は、第2リテーナ35の取り付けられたシリンダハウジング51に摺動可能に設けられている。その場合、シリンダハウジング51の長手方向のガイド溝51aにプランジャ47の軸方向突条47aが摺動可能に嵌合されることで、プランジャ47のその長手方向軸まわりの回転止めがされている。
また、プランジャ47の先端には、截頭円錐台形状の傾斜面46bと同傾斜の傾斜面47bを有する当接部47cが設けられている。スプリング48はプランジャ47とシリンダハウジング51との間に縮設されており、このスプリング48のばね力により、プランジャ47がスイッチギヤ46の方へ常時付勢されていて、当接部47cがスイッチギヤ46に常時当接している。その場合、モータ10の非駆動時は、図8(b)に示すようにスイッチギヤ46が図の右限位置に設定され、このときはプランジャ47が最大に突出して、当接部47cの傾斜面47bの前面がスイッチギヤ46の傾斜面46bの前面に当接した状態となる。これらの傾斜面46bと傾斜面47bとにより、スイッチギヤ46の軸方向の移動にしたがってプランジャ47を移動するカム機構が構成されている。
また、モータ10の駆動時は、図8(d)に示すようにスイッチギヤ46が左方へ移動して図の左限位置に設定され、このときはプランジャ47が最大に引っ込んで、当接部47cの先端がスイッチギヤ46の歯車部46aの外周面に当接した状態となる。このとき、当接部47cの先端がスイッチギヤ46の歯車部46aの歯に噛み込まないようになっている。これらのスイッチギヤ46およびプランジャ47の図8(b)から図8(d)への動作およびその逆の動作については後述する。
更にプランジャ47には、係止レバー作動部47dが設けられている。
係止レバー49は、回転軸49aと、二股状の操作レバー部49bと、係止爪49cとを備えている。回転軸49aは第2リテーナ35に回転可能に支持されている。また、操作レバー部49bの股間部がプランジャ47の係止レバー作動部47dに係合していて、プランジャ47によって係止レバー49が回転軸49aまわりに回転可能となっている。更に、係止爪49cはインターナルギヤ44のラチェット歯44bに対して係脱可能になっている。そして、プランジャ47が図8(b)に示す状態では、図9に示すように係止爪49cがインターナルギヤ44のラチェット歯44bに係合しない位置に設定され、また、プランジャ47が図8(d)に示す状態では、図10に示すように係止爪49cがラチェット歯44bに係合可能な位置に設定される。
そして、このように構成された動力伝達経路切替機構13により、動力伝達歯車機構11および減速機構12からなる、リール4とモータ10との間の動力伝達経路が、モータ10の非駆動時にはオフに設定されてリール4とモータ10とが互いに回転的に自由にされるとともに、モータ10の駆動時にはオンに設定されてリール4とモータ10とが回転的に連結されるようになっている。
図2および図5に示すように、スプリング手段14は、第2カバー52と、ブッシュ53と、リターンスプリング54と、スプリングカバー55とを備えている。第2カバー52は、動力伝達歯車機構11、減速機構12、および動力伝達経路切替機構13を覆うようにして第2リテーナ52に取り付けられている。また、この第2カバー52には減速機構12と反対側に環状突起52aが設けられており、この環状突起52a内にリターンスプリング54が収容されている。更に、この環状突起52a内には、スプリング取付部52bが設けられている。更に、第2カバー52には、ブッシュ53を介してトーションバー26の第1軸部26fを回転可能に支持する支持孔52cが穿設されている。
ブッシュ53は、軸受部53aと、スプリング取付部53bとを備えている。このブッシュ53はトーションバー26の先端のスプライン溝26eにスプライン嵌合されてトーションバー26と一体に回転可能となっている。その場合、ブッシュ53の軸受部53aは第2カバー52の支持孔52cに回転可能に支持されるとともに、トーションバー26の第1軸部26fを支持している。
リターンスプリング54はぜんまいばねからなり、その外周端54aが第2カバー52のスプリング取付部52bに連結されているとともに、その内周端54bがブッシュ53のスプリング取付部53bに連結されている。そして、このリターンスプリング54のばね力により、ブッシュ53およびトーションバー26を介してリール4が常時ベルト巻取方向CCWに付勢されている。
図3および図7に示すように、第2キャリヤ56は、断面正6角形の筒状の第1軸部56aと、この第1軸部56aより外形形状が一まわり小さくかつ第1軸部56aと同心に設けられ、外形断面形状が正6角形で内径断面形状が円形の筒状の第2軸部56b(図7にのみ図示)とを備えている。
第1軸部56aの外周には、リール4の貫通孔4dにおける側壁15側の端部が相対回転不能に嵌合され、また、第1軸部56aの内周には、トーションバー26の第2トルク伝達部26dが相対回転不能に嵌合されており、これにより、リール4と第2キャリヤ56とトーションバー26の第2トルク伝達部26dとが一体回転するようになっている。また、第2軸部56bの外周には、第1キャリヤ38の貫通孔38aが相対回転不能に嵌合され、また、第2軸部56bの内周には、トーションバー26の第1軸部26fが嵌合されており、これにより、第1および第2キャリヤ38,56が一体回転するようになっている。
この第2キャリヤ56は、トーションバー26の第1軸部26fに取り付けられたEリング57により、第2トルク伝達部26dとの間に軸方向に固定されている。そして、モータ10、動力伝達歯車機構11、減速機構12、動力伝達経路切替機構13およびモータ制御装置101により、シートベルト3のベルトテンションを制御するベルトテンション制御機構が構成されている。
次に、このように構成されたベルトテンション制御機構の作動について説明する。
(1)シートベルトリトラクタの非作動状態(シートベルト格納状態)
シートベルトリトラクタ1の非作動状態では、スプリング手段14によってシートベルト3がリール4に巻き取られている。また、モータ10が非作動となっている。この非作動状態では、図9に示すようにモータギヤ36、コネクトギヤ37、スイッチギヤ46が回転しないので、スイッチギヤ46が図8(a)および(b)に示す位置に設定され、プランジャ47は最大に突出して、当接部47cの傾斜面47bの前面がスイッチギヤ46の傾斜面46bの前面に当接した状態となっている。この状態では、係止レバー49は係止爪49cがインターナルギヤ44のラチェット歯44bに係合しない位置に設定されて、動力伝達経路がオフに設定されている、これにより、インターナルギヤ44はベルト引出方向CWおよびベルト巻取方向CCWのいずれの方向にも回転自由となっている。したがって、ベルトテンション制御機構は非作動状態となっている。
(2)シートベルト引出動
ートベルトリトラクタ1の前述の非作動状態から、シートベルト3を引き出すと、リール4がベルト引出方向CWに回転する。すると、図7においてトーションバー26の第2トルク伝達部26dおよび第2キャリヤ56がともにベルト引出方向CWに回転する。すると、第1キャリヤ38が同方向CWに回転するので、各プラネタリギヤ39,40がサンギヤ43のまわりを同方向CWに公転しようとする。このため、各プラネタリギヤ39,40の各大プラネタリギヤ39a,40aはベルト引出方向CWに回転しようとしてサンギヤ43をベルト巻取方向CCW方向に回転させようとし、一方、各小プラネタリギヤ39b,40bはベルト巻取方向CCWに回転しようとしてインターナルギヤ44をベルト引出方向CW方向に回転させようとする。このとき、サンギヤ43には減速ギヤ45が常時噛合し、この減速ギヤ45にはコネクトギヤ37の小径コネクトギヤ37bが常時噛合し、この小径コネクトギヤ37bと一体の大径コネクトギヤ37aにはモータギヤ36とスイッチギヤ46とが常時噛合しているので、サンギヤ43には所定の回転抵抗が付与されているのに対して、インターナルギヤ44は前述のように回転が自由となっており、インターナルギヤ44が自由に回転し、サンギヤ43は回転しない。このときには、各小プラネタリギヤ39b,40bもそれぞれ各大プラネタリギヤ39a,40aとともにベルト引出方向CWに回転するようになる。
サンギヤ43が回転しないことから、シートベルト3の引出時におけるリール4のベルト引出方向CWの回転はスイッチギヤ46には伝達されないので、動力伝達経路切替機構13は作動しなく、リール4とモータ10との間の動力伝達経路はオフに保持されたままとなり、リール4の回転がモータ10に伝達されなく、モータ10はこのリール4の回転の影響を受けることはない。また、このときは、モータ10が駆動しないでの、ベルトテンション制御機構は非作動状態が保持されたままとなっている。
なお、ベルト引出時には、第2トルク伝達部26dが回転することにより、スプリング手段14のリターンスプリング54は巻き締められ、ばね力がベルト引出量に応じて次第に増大する。
(3)モータ駆動トルクによるシートベルトの巻取動
ール4がベルト巻取方向CCWに回転するようにモータ10が駆動されると、図9においてモータギヤ36がベルト巻取方向CCWに回転し、コネクトギヤ37がベルト引出方向CWに減速されて回転する。すると、減速ギヤ45がベルト巻取方向CCWに更に減速されて回転するので、サンギヤ43が同方向CCWに減速ギヤ45と同速度で回転する。このサンギヤ43の回転で各プラネタリギヤ39,40がベルト引出方向CWに更に減速されて自転し、インターナルギヤ44が同方向CWに回転する。このとき、インターナルギヤ44が回転するため、各プラネタリギヤ39,40は公転しない。
一方、コネクトギヤ37の回転で同時にスイッチギヤ46もベルト巻取方向CCWに回転するようになる。その場合、コネクトギヤ37の大径コネクトギヤ37aとスイッチギヤ46とは、はす歯歯車の噛み合いであるので、スイッチギヤ46は軸方向のスラスト力が作用されるようになる。このスラスト力でスイッチギヤ46が軸方向に移動して図8(d)に示す左限位置に設定される。このとき、このスイッチギヤ46が軸方向に移動するにしたがって、プランジャ47の当接部47cの傾斜面47bがスイッチギヤ46の傾斜面46bに沿って摺動し、プランジャ47がスイッチギヤ46から離れる方向に移動してシリンダハウジング51内に引き込まれる。
そして、最終的にはスイッチギヤ46が第2リテーナ35にスラスト方向に支持されるので、スイッチギヤ46の軸方向移動が停止して、図8(d)に示す左限位置に設定される。この状態では、前述のようにプランジャ47がシリンダハウジング51内に最大に引き込まれて、当接部47cの先端がスイッチギヤ46の歯車部46aの外周面に当接した状態となる。このプランジャ47の引込み動作で、図10に示すように係止レバー作動部47dが係止レバー49の操作レバー部49bを押圧するので、前述のように係止レバー49が回転軸49aまわりに回転し、係止爪49cがラチェット歯44bに係合可能な位置に設定される。
すると、インターナルギヤ44のベルト引出方向CWの回転で、ラチェット歯44bと係止爪49cとが互いに係合し、インターナルギヤ44のこの回転が停止する。このように、モータ10が駆動されると、迅速に係止レバー49が作動してインターナルギヤ44のベルト引出方向CWの回転が阻止され、リール4とモータ10との間の動力伝達経路がオンされる。すなわち、ベルトテンション機構が作動状態に設定される。
これにより、前述のようにモータ10の駆動トルクで各プラネタリギヤ39,40が自転しているので、インターナルギヤ44の回転が停止することで、各プラネタリギヤ39,40はインターナルギヤ44の内歯44aに沿ってサンギヤ43のまわりをベルト巻取方向CCWに減速されて公転するようになる。したがって、第1および第2キャリヤ38,56が各プラネタリギヤ39,40の公転速度でベルト巻取方向CCWに回転し、リール4がベルト巻取方向CCWに回転する。こうして、リール4は、モータ10の回転が減速機構12により所定の減速比で減速されて伝達されることで回転するようになる。
このリール4のベルト巻取方向CCWの回転により、シートベルト3はモータ10の回転トルクによりリール4に強制的に巻き取られ、ベルトテンションが制御される。CPUは車両速度や車両加速度等の車両走行状態の情報あるいはブレーキペダル踏込速度やアクセルペダル踏込速度等の車両運転状態の情報等の車両の各種情報に基づいてモータ10を制御してシートベルト3の巻取量を所望の量に制御することで、ベルトテンションが所望の値に制御される。
なおこの場合、第2キャリヤ56がベルト巻取方向CCWに回転することで、リターンスプリング54の巻き緩められるので、リターンスプリング54のばね力は弱められる。
(4)シートベルトの強制巻取動作の解除動
述の(3)におけるシートベルトの強制巻取の状態で、モータ10が前述の(3)と逆回転方向、すなわちベルト引出方向CWに駆動されると、各ギヤ36,37,45,43,39,40、第1および第2キャリヤ38,56を介してリール4がベルト引出方向CWに回転し、シートベルト3の強制巻取が緩められる。コネクトギヤ37の回転でスイッチギヤ46も逆回転するが、このとき、大コネクトギヤ37aとスイッチギヤ46とがはす歯歯車で噛合しているので、スイッチギヤ46には大コネクトギヤ37aから前述の(3)と逆方向のスラスト力が作用する。すると、スイッチギヤ46は図8(d)にしめす状態から右方へ移動する。そしてスイッチギヤ46の移動で、スイッチギヤ46の傾斜面46bの上端がプランジャ47の傾斜面47bの下端位置を過ぎると、プランジャ47はスプリング48のばね力で傾斜面47bが傾斜面47bに当接しかつこの傾斜面47bに沿いながら突出してくる。このプランジャ47の突出動作で、プランジャ47の係止レバー作動部47dが係止レバー49を非作動位置の方へ回動する。
最終的に、スイッチギヤ46およびプランジャ47はともに図8(b)に示す非作動状態となる。この非作動状態では、係止レバー49は非作動位置となり、係止爪49cがインターナルギヤ44のラチェット歯44bと係合しない非係合位置に設定される。これにより、インターナルギヤ44が回動自由となり、リール4とモータ10とは互いに回転的に自由となる。
そして、この第1実施形態のシートベルトリトラクタ1においては、モータ制御装置101で制御したベルトテンション機構のモータ10の回転トルクで、車両内の乗員の状況、車両外の運転状況あるいはシートベルト3の操作状況に応じてシートベルト3のベルトテンションを制御するようになっている。
なお、この第1実施形態のシートベルトリトラクタ1におけるロック手段5、ロック作動機構6、EA機構7および減速度検知手段8は、それぞれ従来のそれらと全く同じ作動を行うが、一応、簡単に説明する。
シートベルト装置の装着状態で、車両に所定の減速度が作用すると、減速度検知手段8の慣性質量30が前方へ傾動してアクチュエータ31が回動し、係止爪31cがロックギヤ21の外歯21bに係合する位置になる。車両のこの減速度で、乗員の前方への慣性でシートベルト3が引き出されようとする。すると、リール4、トーションバー26、ロッキングベース19およびロックギヤ21がともにベルト引出方向CWに回転しようとするが、係止爪31cが外歯21bに係合してロック作動機構6のロックギヤ21のベルト引出方向CWの回転を阻止されるので、リール4、トーションバー26およびロッキングベース19のみが同方向CWに回転する。このため、ロッキングベース19とロックギヤ21との間に回転差(相対回転)が生じ、ロック手段5のパウル20が回動し、このパウル20の係止爪20bがフレーム2の内歯形成部材18の内歯18aに係合する。これにより、リール4のベルト引出方向CWの回転が停止されてシートベルト3の引出が阻止され、乗員の慣性移動が阻止される。
車両の減速度が大きくなると、乗員の慣性も大きくなるが、このときには、トーションバー26が第1および第2トルク伝達部26b,26dの間でねじれてリール4とロッキングベース19との間に回転差(相対回転)が生じるので、リール4のみが所定量ベルト引出方向CWに回転する。このトーションバー26のねじれによりEA機構7が作動して、シートベルト3から乗員に及ぼす衝撃が緩和される。また、このとき、リール4の回転でリール4の回転トルクが第2トルク伝達部27dに作用してストッパ27もロッキングベース19に対して相対回動するので、ストッパ27は軸方向に移動してロッキングベース19のディスク部19aに近づくが、ストッパ27の側面がディスク部19aに当接するまでには至らない。車両の減速度がきわめて大きくなると、乗員の慣性もきわめて大きくなるが、このときには、リール4とロッキングベース19との間の回転差がきわめて大きくなるので、ストッパ27はその回転量が大きくなって軸方向に大きく移動し、ストッパ27の側面がディスク部19aに当接する。すると、ストッパ27とロッキングベース19との相対回転が阻止されてストッパ27とロッキングベース19とが一体回転、つまりはリール4とロッキングベース19とが一体回転しようとし、EA機構7のEA作用(衝撃緩和作用)が終了される。
また、シートベルト装置の装着状態あるいは非装着状態に関係なく、シートベルト3が通常の速度で引き出された場合は、前述と同様にリール4、トーションバー26、ロッキングベース19およびロックギヤ21がともにベルト引出方向CWに回転するが、このとき、フライホイール22もロックギヤ21と一緒に回転し、ロックギヤ21はフライホイール22に対して相対回転しない。シートベルト3が通常の速度を越えて急激に引き出された場合は、同様にリール4、トーションバー26、ロッキングベース19およびロックギヤ21がともに回転するが、これらの回転は通常時よりも急激となる。すると、フライホイール22がロックギヤ21の回転に遅れを生じるようになり、ロックギヤ21に対して相対回転する。このため、フライホイール22の係止爪22cがリテーナ24の内歯24eに係合する位置となり、ロックギヤ21の更なる回転によりこの係止爪22cがリテーナ24の内歯24eに係合し、それ以上のロックギヤ21のベルト引出方向CWの回転が阻止される。ロックギヤ21のベルト引出方向CWの回転が阻止されると、前述の大きな減速度が発生した場合と同様にリール4のベルト引出方向CWの回転も阻止される。このようにして、シートベルト3の急激な引出は防止されるようになる。
このようにこのシートベルトリトラクタ1によれば、モータ10の回転トルクにより、動力伝達歯車機構11および減速機構12を介してリール4を回転制御することで、シートベルト3のベルトテンションの制御を確実にかつ容易に行うことができる。
しかも、リール4とモータ10との間の動力伝達経路のオン、オフをモータ10の回転トルクで作動する動力伝達経路切換機構13で制御するようにしているので、動力伝達経路切換機構13を作動させるための、例えば電磁ソレノイド等の他の動力による特別な専用のアクチュエータを用いる必要がない。したがって、動力伝達経路の切替機構を部品点数を少なくして、構造をより一層簡単にでき、かつコストをより一層削減できる。
次に、図1に示したこの実施形態のシートベルト装置100の動作について説明する。図11は、シートベルト装置100において、タングがバックルに装着されてバックルスイッチ103から装着状態を示す信号が出力された際のフィッティング動作時に呼び出されるサブルーチンであり、モータ制御装置101がシートベルト3の張力調節を行うための制御の流れを示すフローチャートである。なお、図中では、各工程のステップをSと省略して示す。
まず、ステップS1において、操作器102におけるスイッチやボリュームの操作状態から検出される乗員によるベルト張力に関する張力設定と、この時点でのモータ10の駆動状態が合致しているか判断する。合致している場合は、S2に示すようにモータ10によるリール4の巻取りの方向と回転駆動力に関するモータ設定をそのまま変更せずにS4へ進む。合致してない場合は、S3に進んでモータ10によるリール4の巻取り方向または回転駆動力のモータ設定を適切に変更してS4へ進む。そしてS4において、モータ設定にしたがってモータ10によるリール4の巻取り方向回転駆動力を発生させ、張力設定に応じたベルト張力を発生させる。
次に、S5に進んでベルト張力の調節制御を終了させる条件が成立したかどうか判断する。この終了条件としては、例えば、バックルが装着されてから(バックルスイッチ103から信号が出力されてから)一定時間が経過してフィッティング動作が終了した場合であったり、モータ電流検出装器104からモータ電流が所定値以上に上昇したことが検出されてベルト張力が過剰となったものと判定された場合であったり、又は操作器102に設けられた停止ボタンの押下が検出された場合などがあり、これらのうちのどれか一つを条件としてもよいし、また組み合わせてもよい。S5で終了条件が成立していないと判断された場合には、S1に戻って処理を繰り返し、終了条件が成立したと判断された場合には処理を終了する。
このようなフィードバック制御を行うこの実施形態のシートベルト装置100によれば、モータ制御装置101が任意の巻取り張力でシートベルト3を巻き取れるようモータ10の回転動力を制御でき、乗員が自分の好みに合わせた設定でシートベルト3の張力を可変操作することのできるようになり、通常運転時においてより快適に運転できるようになる。
また、動力伝達経路切換機構13が、モータとリールとの間の動力伝達経路に動力の伝達と伝達の停止を切り換えることのできるクラッチ機構として機能することにより、シートベルト3の引き出し時においてリール4とモータ10の連結を切り離すことができるため、引き出しによるモータ10への駆動力の逆入力を考慮する必要がなく、モータ制御の構成を簡素化することができる。なお、このクラッチ機構を備えずにモータ10が常に動力伝達歯車機構11を介してリール4に連結している構成としてもよく、その場合にはシートベルト3の引き出し時においてモータ10への電力供給を必ず停止させるようにする。
なお、上記の制御は、タング装着後のフィッティング動作時におけるベルト張力の初期設定という形で行ったが、通常運転中においても所定のタイミングで上記フィードバック制御を所定時間行うなどにより、好みに応じたベルト張力の変更、維持を行うことができる。
また、設定装置としての操作器102に備えるスイッチ類については、図12に示すように、ベルト張力調節制御の開始スイッチ102aや停止スイッチ102bを備えたり、ベルト張力を段階的に設定するための弱張力設定スイッチ102cや中張力設定スイッチ102dや強張力設定スイッチ102eを備えたり、又はベルト張力を連続的に可変設定するための張力設定ボリュームを備えたりすることができ、それぞれ対応する所定の操作を行うようモータ制御装置101に指令信号を出力するようにできる。
次に、本発明の第2の実施の形態に係るシートベルト装置について説明する。図13は第2実施形態に係るシートベルト装置の概略的な構成を示すブロック図である。この図13において、この第2実施形態のシートベルト装置400は、シートベルトリトラクタ201と、モータ制御装置401と、操作器402と、バックルスイッチ403と、モータ電流検出器404を備えており、またシートベルトリトラクタ201はモータ210と、リール204と、スプリング手段214とを備えて構成されている。
そして上記第1実施形態のシートベルト装置100の構成と相違する点は、シートベルトリトラクタ201においてモータ210は(モータ動力伝達装置105の代わりに)スプリング手段214を介してリール204と連結している点である。具体的には、その他の構成は第1の実施形態と同様の構成であるため説明を省略する。
次に、図13に示したこの実施形態のシートベルト装置400の動作について説明する。図14は、シートベルト装置400において、フィッティング動作時に呼び出されるサブルーチンであり、モータ制御装置401がシートベルトの張力調節を行うための制御の流れを示すフローチャートである。そして図11に示した第1の実施の形態の場合のフローチャートとはS2、S3、S4が、それぞれ図14におけるS2′、S3′、S4′の工程で相違している。以下、この相違する工程のみ説明する。
すなわちS2′では、モータ210によるスプリング手段214への付勢力の変更に関するモータ設定をそのまま変更せずにS4′へ進む。S3′では、モータ210によるスプリング手段214への付勢力の変更に関するモータ設定を適切に変更してS4′へ進む。そしてS4′において、モータ設定にしたがってモータ210によるスプリング手段214への付勢力を発生させ、張力設定に応じたベルト張力を発生させる。その他の工程については、上述した第1の実施形態の場合と同様である。
なお、モータ210の種類としては、特に限定されるものではない。例えば超音波モータを用いても良い。
このようなフィードバック制御を行うこの実施形態のシートベルト装置400によれば、上記第1の実施形態と同様に、乗員が自分の好みに合わせた設定でシートベルトの張力を可変操作することのできるようになり、通常運転時においてより快適に運転できるようになる。
本発明の第1の実施の形態に係るシートベルト装置の概略的な構成を示すブロック図である。 第1実施形態のシートベルトリトラクタを示す分解斜視図である。 図2に示すシートベルトリトラクタの一部を部分的に拡大して示す、部分拡大分解斜視図である。 図2に示すシートベルトリトラクタの更に他の一部を部分的に拡大して示す、部分拡大分解斜視図である。 図2に示すシートベルトリトラクタの更に他の一部を部分的に拡大して示す、部分拡大分解斜視図である。 図2に示す例のシートベルトリトラクタの組立状態のロック手段側の縦断面図である。 図2に示す例のシートベルトリトラクタの組立状態のスプリング手段側の縦断面図である。 図2に示すシートベルトリトラクタに用いられているスイッチギヤの作動を説明し、(a)はスイッチギヤの非作動状態を示す、リールの軸方向と同方向から見た図、(b)は(a)のVIIB−VIIB線に沿う部分断面図、(c)はスイッチギヤの作動状態を示す、リールの軸方向と同方向から見た図、(d)は(c)のVIID−VIID線に沿う部分断面図である。 図2に示すシートベルトリトラクタに用いられているモータ、動力伝達歯車機構、減速機構および動力伝達経路切替機構を非作動状態で一部切り欠いて示す側面図である。 図2に示すシートベルトリトラクタに用いられているモータ、動力伝達歯車機構、減速機構および動力伝達経路切替機構を作動状態で一部切り欠いて示す側面図である。 第1の実施形態のシートベルト装置において、フィッティング動作時にシートベルトの張力調節を行うための制御の流れを示すフローチャートである。 操作器に備えるスイッチ類の例を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係るシートベルト装置の概略的な構成を示すブロック図である。 第2の実施形態のシートベルト装置において、フィッティング動作時にシートベルトの張力調節を行うための制御の流れを示すフローチャートである。
1 シートベルトリトラクタ
2 フレーム
3 シートベルト
4 リール
5 ロック手段
6 ロック作動機構
7 フォースリミッタ機構(EA機構)
8 減速度検知手段
10 モータ
11 動力伝達歯車機構
12 減速機構
13 動力伝達経路切替機構
14 スプリング手段
54 リターンスプリング
100 第1の実施形態のシートベルト装置
101 モータ制御装置
102 操作器
103 バックルスイッチ
104 モータ電流検出器
105 モータ動力伝達装置
201 シートベルトリトラクタ
204 リール
210 モータ
214 スプリング手段
400 第2の実施形態のシートベルト装置
401 モータ制御装置
402 操作器
403 バックルスイッチ
404 モータ電流検出器

Claims (4)

  1. リールをベルト巻取方向に回転しシートベルトを巻き取るスプリングと、
    前記リールをベルト巻取方向に回転し前記シートベルトを巻き取り可能な回転動力を発生するモータと、
    ータ制御装置と、
    乗員が操作可能に設けられ、前記モータ制御装置に対し任意の巻取り張力を設定する指令信号を出力する設定装置と
    を有し、
    前記モータ制御装置は、
    前記設定装置から出力された前記指令信号による前記リールの巻取りの方向及び前記回転動力に関するモータ設定と、現時点の前記モータ設定とが、合致するかどうかを判断する判断手段と、
    前記判断手段による判断が不合致であった場合、前記指令信号によるモータ設定に合致するように、前記現時点の前記モータ設定を変更する変更手段と、
    前記変更手段による変更された前記モータ設定に基づく巻取り張力で前記シートベルトを巻き取るよう前記モータの回転動力を制御するフィードバック制御手段と
    を備えており、
    前記判断手段は、
    車両の通常運転中の所定のタイミングで、前記指令信号による前記モータ設定と、前記現時点の前記モータ設定とが、合致するかどうかを判断し、
    前記変更手段は、
    前記所定のタイミングで行う前記判断手段による判断が前記不合致であった場合に、前記モータ設定の変更を実行する
    ことを特徴とするシートベルトリトラクタ。
  2. 請求項1記載のシートベルトリトラクタにおいて、
    前記モータと前記リールとの間の動力伝達経路に、動力の伝達と伝達停止とを切り換えるクラッチ機構を備えたことを特徴とするシートベルトリトラクタ。
  3. 請求項1又は2記載のシートベルトリトラクタにおいて、
    前記シートベルトを巻き取る際には、前記モータが前記スプリングに連結して付勢させることにより前記任意の巻取り張力を発生させることを特徴とするシートベルトリトラクタ。
  4. シートベルトと、
    前記シートベルトに取り付けられたタングと、
    前記タングを任意に着脱可能なバックルと、
    前記シートベルトの一端を固定したリールをベルト巻取方向に回転しシートベルトを巻き取るスプリングと、
    前記リールをベルト巻取方向に回転し前記シートベルトを巻き取り可能な回転動力を発生するモータと、
    ータ制御装置と、
    乗員が操作可能に設けられ、前記モータ制御装置に対し任意の巻取り張力を設定する指令信号を出力する設定装置と
    を有し、
    前記モータ制御装置は、
    前記設定装置から出力された前記指令信号による前記リールの巻取りの方向及び前記回転動力に関するモータ設定と、現時点の前記モータ設定とが、合致するかどうかを判断する判断手段と、
    前記判断手段による判断が不合致であった場合、前記指令信号によるモータ設定に合致するように、前記現時点の前記モータ設定を変更する変更手段と、
    前記変更手段による変更された前記モータ設定に基づく巻取り張力で前記シートベルトを巻き取るよう前記モータの回転動力を制御するフィードバック制御手段と
    を備えており、
    前記判断手段は、
    車両の通常運転中の所定のタイミングで、前記指令信号による前記モータ設定と、前記現時点の前記モータ設定とが、合致するかどうかを判断し、
    前記変更手段は、
    前記所定のタイミングで行う前記判断手段による判断が前記不合致であった場合に、前記モータ設定の変更を実行する
    ことを特徴とするシートベルト装置。
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