JP4305681B2

JP4305681B2 - Seamless steel pipe manufacturing method

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Publication number: JP4305681B2
Application number: JP2008539962A
Authority: JP
Inventors: 邦彰友松; 朋彦大村; 勇次荒井; 俊治阿部
Original assignee: Sumitomo Metal Industries Ltd
Current assignee: Nippon Steel Corp
Priority date: 2007-03-30
Filing date: 2008-03-28
Publication date: 2009-07-29
Anticipated expiration: 2028-03-28
Also published as: UA90947C2; CA2650208A1; AU2008221597A1; US20090047166A1; BRPI0802627A2; EP2133442A4; EP2133442A1; JPWO2008123422A1; CN101542002A; BRPI0802627B1; EA200870436A1; CN101542002B; WO2008123422A1; AU2008221597B8; EP2133442B1; AU2008221597B2; EA012256B1; MX2008016193A; ATE543922T1; MY145393A

Abstract

A low alloy steel comprising, by mass %, C : 0.10 to 0.20%, Si : 0.05 to 1.0%, Mn : 0.05 to 1.5%, Cr : 1.0 to 2.0%, Mo : 0.05 to 2.0%, Al : 0.10 % or less and Ti : 0.002 to 0.05%, and with a Ceq value obtained by the following formula (1) of 0.65 or more, with the balance being Fe and impurities, wherein in the impurities, P is 0.025% or less, S is 0.010% or less, N is 0.007% or less, and B is less than 0.0003%, and the number per unit area of M 23 C 6 type precipitates (M: a metal element) whose grain diameter is 1 µm or more is 0.1/mm 2 or less. This invention provides a low alloy steel possessing both hardenability and toughness and improves the resistance to sulfide stress corrosion cracking. Ceq = C + Mn / 6 + Cr + Mo + V / 5 where C, Mn, Cr, Mo and V in the formula (1) denote the mass % of respective elements.

Description

【技術分野】
【０００１】
本発明は、高圧の硫化水素を含有する腐食性の高い深井戸に用いるのに適した継目無鋼管の製造方法に関する。
【０００２】
過酷な油井環境、高温環境等で使用される鋼には、強度、靱性、耐サワー性等の各種性能の向上が求められている。油井の更なる深井戸化によって、油井用鋼には更に高い強度、さらに優れた耐応力腐食割れ性が要求される。
【０００３】
鋼材は、強度を高めるにしたがって硬度が高くなり、その結果、転位密度が上昇し、鋼材に進入する水素量が増加して応力に対して脆弱化する。このため、鋼材を高強度化すると、耐硫化物応力腐食割れ性が悪くなるのが一般的である。特に「降伏強度／引張強度」の比（以下、「降伏比」という。）が低い鋼材は、所望の降伏強度の部材を製造すると、引張強度および硬度が高くなりやすく、耐硫化物応力腐食割れ性が著しく低下する。従って、鋼材の強度を上昇させるに際し、硬度を低く保つためには降伏比を高めることが肝要である。
【０００４】
鋼の降伏比を高めるためには、鋼材を均一な焼戻しマルテンサイト組織とするのが好ましい。また、旧オーステナイト粒の微細化も有効である。
【０００５】
例えば、特許文献１および２には、Ｖ、Ｎｂ、Ｔｉ、ＣｒおよびＭｏといった炭化物形成元素の含有量のバランスを調整することにより、結晶粒界でのＭ₂₃Ｃ₆型の炭化物の析出を抑制して耐硫化物応力腐食割れ性を向上させた継目無鋼管に関する発明が開示されている。また、特許文献３には結晶粒微細化による耐硫化物応力腐食割れ性の改善が開示されている。更に、特許文献４には、所定の化学組成を有し、０．０００３〜０．００５％のＢを含有させ、靭性を向上させた油井用継目無鋼管に関する発明が開示されている。
【０００６】
【特許文献１】
特許第３４４９３１１号公報
【特許文献２】
特開平２０００−１７３８９号公報
【特許文献３】
特開平９−１１１３４３号公報
【特許文献４】
ＷＯ２００５／０７３４２１Ａ１
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
上記文献は、いずれも１ａｔｍ程度の硫化水素環境で使用される低合金鋼についての耐サワー性能を詳細に検討したものである。しかし、本発明者らの研究により、１ａｔｍ程度の低圧硫化水素環境における低合金鋼の耐サワー性能の挙動は、より高圧の硫化水素環境とは異なることが判明した。
【０００８】
本発明者らが、各種の低合金鋼に４点曲げにより硫化物応力腐食割れ試験を実施した結果等に基づき、本発明者らは下記の知見を得た。この実験で用いた低合金鋼は、質量％で、０．５〜１．３％のＭｎ、０．２〜１．１％のＣｒおよび０〜０．７％のＭｏを含有するものである。
【０００９】
（１）腐食速度は、２ａｔｍ以上、特に、５〜１０ａｔｍ硫化水素で特に高くなるが、１５ａｔｍ硫化水素では、低くなる。
（２）硫化物応力腐食割れは、従来、環境中の硫化水素の分圧が１ａｔｍ付近のところで生じやすいとされてきた。しかしながら、本実験で、むしろ硫化水素の分圧が２ａｔｍ以上、特に、５〜１０ａｔｍで生じ易いことが初めて明らかになった。また、硫化水素の分圧が１５ａｔｍまで高くなると、硫化物応力腐食割れは逆に生じにくくなった。
【００１０】
以上の知見に基づき、本発明者らは、まず、２ａｔｍ以上、特に、５〜１０ａｔｍ硫化水素環境で用いられる可能性がある低合金鋼については、Ｃｒ含有量を１．０％以上に高めることで、高圧硫化水素環境における腐食速度を低減することとした。
【００１１】
ここで、前掲の特許文献４に記載される油井用継目無鋼管などにおいては、焼入性を向上させて耐硫化物応力腐食割れ性を向上させることを目的としてＢが添加されている。しかし、特許文献４に記載の発明のようにインラインで焼入れを実施して油井用継目無鋼管を製造する場合、オーステナイト粒が細粒化しにくい。この場合、Ｃｒ含有量が高い合金中にＢが存在すると、合金中のＭ₂₃Ｃ₆型の炭化物が、焼入れ後の熱処理工程において旧オーステナイト粒界に析出粗大化し、引いては、耐硫化物応力腐食割れ性が低下する。従って、本発明においては、Ｂを添加しないこととし、焼入性および靭性を確保することとした。
【００１２】
なお、インラインで焼入れを実施するとは、マンネスマン製管法などにより得た継目無管をインラインで補熱後、急冷することを意味する（以下、「インライン焼入れ」と呼ぶ。但し、焼入れ後に必要に応じて実施される焼戻し、焼なまし、焼き均しといった熱処理は、オフラインで行っても良い。
【００１３】
インライン焼入れでは、別工程で再加熱してから焼入れ等を実施するよりも、製造コストを低く抑えることができ、また、製管後、そのまま焼入れする、いわゆる直接焼入れに比べて、焼入れ温度を確保できる点において優れている。しかし、インライン焼入れでは、上述のように、低合金中のＭ₂₃Ｃ₆型の粒界炭化物が粗大化する傾向がある。そのような製造方法で製造される鋼中にＢが含まれると、粒界炭化物の粗大化がより顕著となる。
【００１４】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、Ｃｒ量を増加させると共に、通常添加されるＢを非添加とすることで、焼入れ性および靭性を確保して、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させた継目無鋼管の製造方法を提供することを目的とする。本発明によって得られる継目無鋼管では、その降伏強度（ＹＳ）を６５４〜７９３ＭＰａ（９５〜１１５ｋｓｉ）とすることを目標とするが、必ずしも満足しなくてもよい。
【００１５】
なお、本発明によって得られる継目無鋼管は、既に述べたように、２ａｔｍ以上、特に、５〜１０ａｔｍ硫化水素という最も硫化物応力腐食割れが生じやすい環境で用いることができるが、これよりも低圧の硫化水素環境でも、これよりも高圧の硫化水素環境でも用いることができるのはいうまでもない。
【００１６】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記の（Ａ）〜（Ｃ）に示す継目無鋼管の製造方法を要旨とする。
【００１７】
（Ａ）質量％で、Ｃ：０．１０〜０．２０％、Ｓｉ：０．０５〜１．０％、Ｍｎ：０．０５〜１．５％、Ｃｒ：１．０〜２．０％、Ｍｏ：０．０５〜２．０％、Ａｌ：０．１０％以下およびＴｉ：０．００２〜０．０５％を含有し、残部がＦｅおよび不純物からなり、不純物中のＰが０．０２５％以下、Ｓが０．０１０％以下、Ｎが０．００７％以下およびＢが０．０００３％未満である化学組成を有し、かつ、下記の式（１）で求められるＣｅｑの値が０．６５以上である鋼片を熱間で穿孔し、延伸圧延した後、最終圧延温度を８００〜１１００℃となるように製管し、得られた鋼管をインラインでＡｒ _３変態点から１０００℃までの温度域で補熱し、かつＡｒ _３変態点以上の温度から焼入れし、次いで、Ａｃ _１変態点よりも低い温度で焼戻すことを特徴とする継目無鋼管の製造方法。
Ｃｅｑ＝Ｃ＋（Ｍｎ／６）＋（Ｃｒ＋Ｍｏ＋Ｖ）／５・・・・（１）
但し、（１）式中のＣ、Ｍｎ、Ｃｒ、ＭｏおよびＶは、それぞれの元素の含有量（質量％）を意味する。
【００１８】
（Ｂ）鋼片の化学組成が、Ｆｅの一部に代えて、Ｖ：０．０３〜０．２％およびＮｂ：０．００２〜０．０４％の一方または両方を含有することを特徴とする上記（Ａ）に記載の継目無鋼管の製造方法。
【００１９】
（Ｃ）鋼片の化学組成が、Ｆｅの一部に代えて、Ｃａ：０．０００３〜０．００５％、Ｍｇ：０．０００３〜０．００５％およびＲＥＭ：０．０００３〜０．００５％から選択される１種以上を含有することを特徴とする上記（Ａ）または（Ｂ）に記載の継目無鋼管の製造方法。
【００２２】
本発明によれば、継目無鋼管の焼入れ性および靭性を確保して耐硫化物応力腐食割れ性を向上させることができる。本発明によって得られる継目無鋼管は、２ａｔｍ以上、特に、５〜１０ａｔｍ硫化水素という最も硫化物応力腐食割れが生じやすい環境で用いられる場合に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２３】
本発明によって得られる継目無鋼管は、既に述べたとおり、Ｃｒ含有量を高めることで高圧硫化水素環境における腐食速度を低減するとともに、Ｂを非添加として焼入れ性および靭性を確保して、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させたものである。以下、各成分の限定理由を説明する。
【００２４】
Ｃ：０．１０〜０．２０％
Ｃは、鋼の強度を高める効果を有する元素である。Ｃの含有量が０．１％未満の場合、所望の強度を得るためには低温の焼戻しが必要となる。その結果、耐硫化物応力腐食割れ性が低下する。焼戻し軟化抵抗を向上させる成分を添加して焼戻し温度を向上させることによりこれを補おうとすると、高価な元素を多量に添加することが必要となる。一方、Ｃの含有量が０．２０％を超えると降伏比が低下する。この過剰のＣ含有量のままで所望の強度を得ようとすると、硬度が上昇し、耐硫化物応力腐食割れ性が低下する。従って、Ｃ含有量は０．１０〜０．２０％とした。Ｃ含有量の好ましい下限値は０．１４％である。また、Ｃ含有量の好ましい上限値は０．１８％である。
【００２５】
Ｓｉ：０．０５〜１．０％
Ｓｉは、脱酸作用を有する元素である。また、この元素は、鋼の焼入れ性を高めて、強度を向上させる元素である。この効果を得るためにはＳｉが０．０５％以上含まれていることが必要である。しかし、その含有量が１．０％を超えると、耐硫化物応力腐食割れ性が低下する。従って、Ｓｉの含有量は、０．０５〜１．０％とした。Ｓｉ含有量の好ましい下限値は０．１％である。また、好ましい上限値は０．６％である。
【００２６】
Ｍｎ：０．０５〜１．５％
Ｍｎは、脱酸作用を有する元素である。また、この元素は、鋼の焼入れ性を高めて強度を向上させる元素である。この効果を得るためにはＭｎを０．０５％以上含有させる必要がある。しかし、その含有量が１．５％を超えると、耐硫化物応力腐食割れ性が低下する。従って、Ｍｎの含有量を０．０５〜１．５％とした。
【００２７】
Ｃｒ：１．０〜２．０％
Ｃｒは、鋼の焼入れ性を高めて耐硫化物応力腐食割れ性を向上させるのに有効な元素である。その効果を発揮させるためには１．０％以上含有させる必要がある。しかし、その含有量が２．０％を超えると、かえって耐硫化物応力腐食割れ性の低下を招く。従って、Ｃｒの含有量は１．０〜２．０％とした。Ｃｒ含有量の好ましい下限値は１．１％であり、より好ましいのは１．２％である。また、Ｃｒ含有量の好ましい上限値は１．８％である。
【００２８】
Ｍｏ：０．０５〜２．０％
Ｍｏは、鋼の焼入れ性を高めて高強度を確保するのに有効な元素である。また、この元素は、耐硫化物応力腐食割れ性を高める効果も有する。これらの効果を得るには、Ｍｏは０．０５％以上の含有量とする必要がある。しかし、Ｍｏの含有量が２．０％を超えると、旧オーステナイト粒界に粗大な炭化物を形成し、耐硫化物応力腐食割れ性が低下する。従って、Ｍｏの含有量は０．０５〜２．０％とするのがよい。Ｍｏ含有量の好ましい範囲は、０．１〜０．８％である。
【００２９】
Ａｌ：０．１０％以下
Ａｌは、脱酸作用を有する元素である。この元素は、鋼の靱性および加工性を高めるのにも有効である。しかし、その含有量が０．１０％を超えると、地疵の発生が著しくなる。従って、Ａｌの含有量を０．１０％以下とした。Ａｌ含有量は不純物レベルであってもよいが、０．００５％以上とすることが好ましい。Ａｌ含有量の好ましい上限値は、０．０５％である。なお、本発明にいうＡｌ含有量とは、酸可溶Ａｌ（いわゆるｓｏｌ．Ａｌ）の含有量を指す。
【００３０】
Ｔｉ：０．００２〜０．０５％
Ｔｉは、鋼中のＮを窒化物として固定して焼入れ性向上させるのに有効な元素である。この効果を得るには０．００２％以上のＴｉを含有させる必要がある。しかし、Ｔｉの含有量が０．０５％を超えると、粗大な窒化物が生成し、硫化物応力割れが生じやすくなる。従って、Ｔｉの含有量は０．００２〜０．０５％とした。好ましい下限値は０．００５％であり、好ましい上限値は０．０２５％である。
【００３１】
本発明によって得られる継目無鋼管の一つは、上記の各元素を含み、残部はＦｅおよび不純物からなる化学組成を有するものである。また、本発明によって得られる継目無鋼管には、炭化物等の微細析出のために、上記の各元素に加え、さらに、Ｖ：０．０３〜０．２％およびＮｂ：０．００２〜０．０４％の一方または両方を含有させてもよい。
【００３２】
Ｖ：０．０３〜０．２％
Ｖは、焼戻し時に微細な炭化物として析出し、継目無鋼管の強度を高める効果を有する元素である。この効果を得るためには、Ｖを０．０３％以上含有させるのが好ましい。しかし、Ｖの含有量が０．２％を超えると靭性が低下するおそれがある。従って、Ｖを添加する場合には、その含有量を０．０３〜０．２％とするのが好ましい。
【００３３】
Ｎｂ：０．００２〜０．０４％
Ｎｂは、高温域で炭窒化物を形成して、結晶粒の粗大化を抑制し、耐硫化物応力腐食割れ性を向上させるのに有効な元素である。その効果を得るためにはＮｂを０．００２％以上含有させるのが好ましい。しかし、その含有量が０．０４％を超えると、炭窒化物が粗大になりすぎて、かえって硫化物応力割れを生じさせやすくする。従って、Ｎｂを添加する場合には、その含有量を０．００２〜０．０４％とするのが好ましい。好ましい上限値は０．０２％である。
【００３４】
本発明によって得られる継目無鋼管には、鋼の耐硫化物応力腐食割れ性の向上のために、上記の各元素に加え、さらに、Ｃａ：０．０００３〜０．００５％、Ｍｇ：０．０００３〜０．００５％およびＲＥＭ：０．０００３〜０．００５％から選択される１種以上を含有させてもよい。
【００３５】
Ｃａ：０．０００３〜０．００５％
Ｍｇ：０．０００３〜０．００５％
ＲＥＭ：０．０００３〜０．００５％
Ｃａ、ＭｇおよびＲＥＭは、いずれも鋼中のＳと反応して硫化物を形成することにより介在物の形態を改善し、鋼の耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる効果を有する。このような効果を得るためには、Ｃａ、ＭｇおよびＲＥＭ（希土類元素、即ち、Ｃｅ、Ｌａ、Ｙなど）のうちから選ばれた１種以上を添加することができる。しかし、上記の効果は、これらの元素の含有量がそれぞれ０．０００３％以上の場合に顕著となる。一方、いずれの元素もその含有量が０．００５％を超えると、鋼中の介在物量が増大、鋼の清浄度が低下するので、硫化物応力割れが生じやすくなるおそれがある。従って、これらの元素を添加する場合には、それぞれの含有量を０．０００３〜０．００５％とするのが好ましい。
【００３６】
本発明によって得られる継目無鋼管においては、不純物中のＰ、Ｓ、ＮおよびＢは、下記の範囲に制限しなければならない。
【００３７】
Ｐ：０．０２５％以下
Ｐは、不純物として鋼中に存在する元素である。この元素は、靱性を低下させ、特に、その含有量が０．０２５％を超えると、耐硫化物応力腐食割れ性の低下が著しくなる。したがって、Ｐの含有量は０．０２５％以下に抑えることとした。好ましいＰの含有量は０．０２０％以下であり、より好ましいのは０．０１５％以下である。
【００３８】
Ｓ：０．０１０％以下
Ｓも不純物として鋼中に存在する元素である。その含有量が０．０１０％を超えると、耐硫化物応力腐食割れ性の劣化が大きくなる。したがって、Ｓの含有量は０．０１０％以下に制限することとした。Ｓの含有量は０．００５％以下とするのが好ましい。
【００３９】
Ｎ：０．００７％以下
Ｎも不純物として鋼中に存在する元素である。Ａｌ、ＴｉまたはＮｂと結合して窒化物を形成する。Ｎが多量に存在すると、ＡｌＮ、ＴｉＮの粗大化を招く。従って、Ｎの含有量は０．００７％以下に制限することとした。
【００４０】
Ｂ：０．０００３％未満
Ｂも不純物として鋼中に存在する元素である。Ｂは、合金中のＣｒ含有量を高めた場合に、合金中のＭ₂₃Ｃ₆型の粒界炭化物を粗大化させ、靭性の低下、引いては、耐硫化物応力腐食割れ性の低下を招く。従って、Ｂの含有量は０．０００３％未満に制限することとした。
【００４１】
Ｃｅｑ：０．６５以上
上記の化学組成を有する場合であっても、焼入性に劣る場合があるため、本発明によって得られる継目無鋼管においては、下記の（１）式で表されるＣｅｑを０．６５以上となるように、化学組成を調整しなければならない。
Ｃｅｑ＝Ｃ＋（Ｍｎ／６）＋（Ｃｒ＋Ｍｏ＋Ｖ）／５・・・・（１）
但し、（１）式中のＣ、Ｍｎ、Ｃｒ、ＭｏおよびＶは、それぞれの元素の含有量（質量％）を意味する。
【００４２】
ここで、Ｃは、焼入れ性の向上に有効な元素であるが、Ｃ含有量を増加させると、硬度が上昇し、ＹＲを低下させてしまう。このため、本発明においては、Ｃ以外の焼入れ性の向上に寄与する元素（Ｍｎ、Ｃｒ、ＭｏおよびＶ）の関係式（１）から得られるＣｅｑを焼入れ性確保のための指標として用いる。ここで、上記（１）式から求められるＣｅｑが０．６５未満の場合、焼入れ性が不十分となり、特に厚肉製品において、耐硫化物応力腐食割れ性能が低下する。このため、本発明では、Ｃｅｑを０．６５以上に調製することとした。
【００４３】
粒径が１μｍ以上のＭ₂₃Ｃ₆系析出物は、靭性および耐サワー性を低下させるため、本発明によって得られる継目無鋼管においては、その単位面積あたりの個数が０．１個／ｍｍ²以下とする必要がある。
【００４４】
本発明によって得られる継目無鋼管は、主な組織が焼戻しマルテンサイトで、旧オーステナイト結晶粒度がＪＩＳＧ０５５１に規定される粒度番号で７番以下であるような粗粒組織であっても、降伏比が高く耐硫化物応力腐食割れ性に優れるものである。従って、上記の化学組成を有する鋼の鋼塊を素材とすれば、継目無鋼管の製造方法の選択の自由度が高い。以下、本発明に係る継目無鋼管の製造方法を説明する。
【００４５】
例えば、マンネスマン−マンドレルミル製管法によって穿孔し、延伸圧延されて成形された鋼管を、冷却することなく、仕上げ圧延機の後段に設けられた熱処理設備に供給してＡｒ₃変態点以上の温度に保持して、焼入れ処理し、その後、例えば６００〜７５０℃で焼戻し処理することによって製造する、省エネルギー型のインライン製管−熱処理プロセスを選択したとしても降伏比の高い鋼管が製造でき、所望の高強度で高耐硫化物応力腐食割れ性の鋼管が得られる。
【００４６】
また、熱間仕上げ成形された鋼管を、一旦室温まで冷却した後、焼入れ炉で再加熱して９００℃〜１０００℃の温度範囲で均熱して水焼入れし、その後６００〜７５０℃で焼戻し処理することによって製造する、オフライン製管−熱処理プロセスを選択すれば、旧オーステナイト粒径の細粒効果と相まってより高い降伏比を有する鋼管を製造でき、より高強度で高耐硫化物応力腐食割れ性の鋼管が得られる。
【００４７】
しかしながら、以下に述べる製造方法が最も望ましい。その理由は、製管から焼入れまでの間で管が高温に保たれるので、ＶやＭｏのような元素を固溶状態のままに保つことが容易であり、耐硫化物応力腐食割れ性の向上に有利な高温焼戻しにおいて、これらの元素が微細炭化物として析出し、鋼管の高強度化に寄与するからである。
【００４８】
本発明の継目無鋼管の製造方法は、延伸圧延の最終圧延温度、および圧延終了後の熱処理に特徴がある。以下、それぞれについて説明する。
【００４９】
（１）延伸圧延の最終圧延温度
この温度は、８００〜１１００℃とする。８００℃よりも低いと鋼管の変形抵抗が大きくなりすぎて、工具摩耗の問題が生じる。一方、１１００℃よりも高いと結晶粒が粗大になりすぎて、耐硫化物応力腐食割れ性が劣化する。なお、延伸圧延よりも前の穿孔工程は、通常の方法、例えばマンネスマン穿孔法でよい。
【００５０】
（２）補熱処理
延伸圧延を終えた鋼管は、インラインで、即ち、一連の鋼管製造ライン内に設けられた補熱炉に装入して、Ａｒ₃点から１０００℃までの温度域で補熱する。この補熱の目的は、鋼管の長手方向の温度のバラツキをなくし、組織を均一化することにある。
【００５１】
補熱の温度がＡｒ₃点よりも低いとフェライトが生成しはじめて均一な焼入れ組織が得られない。一方、１０００℃よりも高いと結晶粒成長が促進されて、粗粒化による耐硫化物応力腐食割れ性の劣化がおきる。補熱の時間は、管の肉厚全体が均一な温度になるのに必要な時間とする。およそ５〜１０分程度でよい。なお、延伸圧延の最終圧延温度がＡｒ₃点から１０００℃までの温度域にある場合には、補熱工程は省略してもよいが、管の長手方向と肉厚方向の温度バラツキを小さくするために、補熱を行うのが望ましい。
【００５２】
（３）焼入れ焼戻し
上記の工程を経てＡｒ₃点から１０００℃までの温度域にある鋼管を焼入れする。焼入れは、管の肉厚全体がマルテンサイト組織になるのに十分な冷却速度で行う。通常は水冷でよい。焼戻しは、Ａｃ₁点よりも低い温度で行う。望ましいのは、６００〜７００℃である。焼戻し時間は、管の肉厚にもよるが、概ね２０〜６０分でよい。
【００５３】
以上により焼戻しマルテンサイトからなる、優れた性質の継目無鋼管が得られる。
【００５４】
表１に示す化学組成を有する低合金鋼からなるビレットを製造し、これをマンネスマン−マンドレル製管法によって外径２７３．１ｍｍ、肉厚１６．５ｍｍの継目無鋼管に成形し、この鋼管の温度がＡｒ₃点を下回らないうちに、直ちに補熱炉に装入し、９５０℃で１０分間均熱した後、水焼き入れを施し、さらに、焼戻し熱処理を施し、鋼管の長手方向の降伏強度（ＹＳ）が、ＡＰＩで規定される弧状引張試験において、１１０ｋｓｉ付近になるように調整した。
【００５５】
１０ａｔｍの高圧硫化水素環境における腐食試験については、以下の方法で実施した。上記のように成形および熱処理した鋼管の長手方向から、各供試材から厚さ２ｍｍ、幅１０ｍｍ、長さ７５ｍｍの応力腐食試験片を採取した。試験片には、ＡＳＴＭ―Ｇ３９に規定される方法に従って４点曲げにより所定量のひずみを付与することにより、上記降伏応力の９０％の応力を負荷した。この状態の試験片を試験治具ごとオートクレーブ中に封入した後、オートクレーブ中に脱気した５％の食塩水を、気相部を残して注入した。その後、オートクレーブ内に１０ａｔｍの硫化水素ガスを加圧封入し、液相の攪拌によりこの高圧の硫化水素ガスを液相に飽和させた。オートクレーブを封じた後、液を攪拌しつつ、２５℃で７２０時間保持し、その後減圧して試験片を取り出した。
【００５６】
試験後、試験片の硫化物応力腐食割れ（ＳＳＣ）の有無を目視で観察した。表１中の「耐ＳＳＣ」の「×」は、ＳＳＣが発生したことを示し、「○」はＳＳＣが発生しなかったことを示す。
【００５７】
粒径が１μｍ以上のＭ₂₃Ｃ₆系析出物（Ｍは金属元素）の単位面積あたりの個数は、次のように測定した。上記のように製管・焼入れ・焼戻して製造された鋼管の任意の位置から、炭化物観察用の抽出レプリカ試料（一枚のレプリカ試料の視野面積は３ｍｍ²）を１０枚採りだし、ＴＥＭにて各旧γ粒界について観察し、粒界炭化物の大きさが径で１μｍあれば、その炭化物の回折パターンからＭ₂₃Ｃ₆型なのか否かを判定し、Ｍ₂₃Ｃ₆型であればその個数をカウントして、観察視野の合計面積で除して単位面積あたりの個数とした。
【００５８】
表１中の「Ｍ₂₃Ｃ₆の個数」の「○」は、粒径が１μｍ以上のＭ₂₃Ｃ₆系析出物（Ｍは金属元素）の単位面積あたりの個数が０．１個／ｍｍ²以下であったことを意味し、「×」は、０．１個／ｍｍ²を超えたことを意味する。
【００５９】
均一なマルテンサイト組織が得られているかどうかは、次の方法で判定した。表１に示す化学組成を有する低合金鋼からなるビレットを製造し、これをマンネスマン−マンドレル製管法によって外径２７３．１ｍｍ、肉厚１６．５ｍｍの継目無鋼管に成形し、この鋼管の温度がＡｒ₃点を下回らないうちに、直ちに補熱炉に装入し、９５０℃で１０分間均熱した後、水焼き入れを施して、焼入れままの鋼管を作製した。なお、水焼入れにおける８００〜５００℃における平均冷却速度は、鋼管長手方向中央の肉厚中央部において１０℃／秒程度であった。この焼入れままの鋼管の肉厚中央部の硬度をロックウェル硬度試験で測定し、その値が各鋼の９０％マルテンサイト率に対応する硬度のロックウェルＣ硬度の予測値である「（Ｃ％×５８）＋２７」の値より高い場合を焼き入れ組織が良好、低い場合を焼き入れ組織が不良とした。
【００６０】
【表１】

【００６１】
表１に示すように、本発明で規定される条件を満足したＮｏ．１〜６では、硫化物応力腐食割れ（ＳＳＣ）が発生しなかった。本発明で規定される条件を満足しなかったＮｏ．７〜１０では、硫化物応力腐食割れ（ＳＳＣ）が発生した。
【００６２】
本発明によれば、継目無鋼管の焼入れ性および靭性を確保して耐硫化物応力腐食割れ性を向上させることができる。本発明によって得られる継目無鋼管は、２ａｔｍ以上、特に、５〜１０ａｔｍ硫化水素という最も硫化物応力腐食割れが生じやすい環境で用いられる場合に有用である。【Technical field】
[0001]
The present invention relates to a method for producing a welt steel pipe suitable for use in high deep wells corrosive containing hydrogen sulfide of a high pressure.
[0002]
Steels used in harsh oil well environments, high temperature environments, and the like are required to improve various performances such as strength, toughness, and sour resistance. With the deepening of wells, oil well steels are required to have higher strength and better stress corrosion cracking resistance.
[0003]
The steel material becomes harder as the strength is increased. As a result, the dislocation density increases, the amount of hydrogen entering the steel material increases, and the steel material becomes weak against stress. For this reason, when steel materials are strengthened, the resistance to sulfide stress corrosion cracking generally deteriorates. In particular, a steel material having a low ratio of “yield strength / tensile strength” (hereinafter referred to as “yield ratio”) tends to have high tensile strength and hardness when a member having a desired yield strength is produced, and is resistant to sulfide stress corrosion cracking. Remarkably deteriorates. Therefore, when increasing the strength of the steel material, it is important to increase the yield ratio in order to keep the hardness low.
[0004]
In order to increase the yield ratio of steel, it is preferable that the steel material has a uniform tempered martensite structure. Further, refinement of prior austenite grains is also effective.
[0005]
For example, in Patent Documents 1 and 2, precipitation of M ₂₃ C ₆ type carbides at grain boundaries is suppressed by adjusting the balance of the contents of carbide forming elements such as V, Nb, Ti, Cr and Mo. Thus, an invention relating to a seamless steel pipe having improved resistance to sulfide stress corrosion cracking is disclosed. Patent Document 3 discloses improvement of resistance to sulfide stress corrosion cracking by crystal grain refinement. Furthermore, Patent Document 4 discloses an invention related to a seamless steel pipe for oil wells having a predetermined chemical composition, containing 0.0003 to 0.005% B, and improving toughness.
[0006]
[Patent Document 1]
Japanese Patent No. 3449311 [Patent Document 2]
JP 2000-17389 A [Patent Document 3]
JP-A-9-111343 [Patent Document 4]
WO 2005/073421 A1
DISCLOSURE OF THE INVENTION
[Problems to be solved by the invention]
[0007]
All of the above documents have examined in detail the sour resistance performance of low alloy steels used in a hydrogen sulfide environment of about 1 atm. However, the inventors' research has revealed that the behavior of sour resistance of low alloy steel in a low-pressure hydrogen sulfide environment of about 1 atm is different from that of a higher-pressure hydrogen sulfide environment.
[0008]
Based on the results of the inventors conducting a sulfide stress corrosion cracking test by four-point bending on various low alloy steels, the inventors obtained the following knowledge. The low alloy steel used in this experiment contains 0.5 to 1.3% Mn, 0.2 to 1.1% Cr and 0 to 0.7% Mo in mass%. .
[0009]
(1) The corrosion rate is 2 atm or higher, particularly high with 5 to 10 atm hydrogen sulfide, but lower with 15 atm hydrogen sulfide.
(2) Sulfide stress corrosion cracking has conventionally been considered to occur easily when the partial pressure of hydrogen sulfide in the environment is around 1 atm. However, in this experiment, it became clear for the first time that the partial pressure of hydrogen sulfide is more likely to occur at 2 atm or more, particularly 5 to 10 atm. On the other hand, when the partial pressure of hydrogen sulfide increased to 15 atm, sulfide stress corrosion cracking hardly occurred.
[0010]
Based on the above findings, the present inventors first increase the Cr content to 1.0% or more for low alloy steels that may be used in a hydrogen sulfide environment of 2 atm or more, particularly 5 to 10 atm hydrogen sulfide. Therefore, it was decided to reduce the corrosion rate in the high-pressure hydrogen sulfide environment.
[0011]
Here, in the oil well seamless steel pipe described in the above-mentioned Patent Document 4, B is added for the purpose of improving the hardenability and improving the resistance to sulfide stress corrosion cracking. However, when a seamless steel pipe for oil wells is produced by in-line quenching as in the invention described in Patent Document 4, austenite grains are difficult to refine. In this case, if B is present in the alloy having a high Cr content, the M ₂₃ C ₆ type carbide in the alloy precipitates and becomes coarse at the prior austenite grain boundaries in the heat treatment step after quenching, and in turn pulls it out. Stress corrosion cracking is reduced. Therefore, in the present invention, B is not added, and hardenability and toughness are secured.
[0012]
The term “in-line quenching” means that the seamless pipe obtained by the Mannesmann pipe manufacturing method is in-line heated and then rapidly cooled (hereinafter referred to as “in-line quenching”. However, it is necessary after quenching. The heat treatment such as tempering, annealing, and leveling performed accordingly may be performed off-line.
[0013]
With in-line quenching, manufacturing costs can be kept lower than when quenching is performed after reheating in a separate process, and the quenching temperature is ensured compared to so-called direct quenching, where tube quenching is performed as it is. It is excellent in that it can be done. However, in-line quenching tends to coarsen the M ₂₃ C ₆ type grain boundary carbide in the low alloy as described above. When B is contained in steel produced by such a production method, coarsening of grain boundary carbides becomes more prominent.
[0014]
The present invention has been made on the basis of such findings. By increasing the amount of Cr and not adding B, which is usually added, hardenability and toughness are ensured, and sulfide stress resistance is ensured. and to provide a method for producing a welt steel pipe with improved corrosion cracking resistance. The seamless steel pipe obtained by the present invention aims to have a yield strength (YS) of 654 to 793 MPa (95 to 115 ksi), but it is not necessarily satisfied.
[0015]
Note that seamless steel pipe obtained by the present invention, as already mentioned, more than 2 atm, particularly, but most sulfide stress corrosion cracking that 5~10atm hydrogen sulfide Ru can be used in a prone environment, than this Needless to say, it can be used in a low-pressure hydrogen sulfide environment or a higher-pressure hydrogen sulfide environment.
[0016]
The present invention has been made to solve the above problems, is summarized as a manufacturing method of the shown to welt steel pipe in the following (A) ~ (C).
[0017]
(A) By mass%, C: 0.10 to 0.20%, Si: 0.05 to 1.0%, Mn: 0.05 to 1.5%, Cr: 1.0 to 2.0% , Mo: 0.05~2.0%, Al: 0.10% or less and Ti: containing from 0.002 to 0.05%, the remaining part being Fe and impurities, P in the impurities 0. 025% or less, S is 0.010% or less, N has a chemical composition is less than 0.0003% 0.007% or less and B, and the value of Ceq obtained by the following formula (1) A steel slab having a thickness of 0.65 or more was hot pierced and stretch-rolled, and then piped so that the final rolling temperature was 800 to 1100 ° C., and the obtained steel pipe was 1000 ° C. from the Ar ₃ transformation point in- line. Heat complement in a temperature range of up to and quenched from Ar ₃ transformation point or more of the temperature, and then, at a temperature lower than the Ac ₁ transformation point Seamless steel pipe production method, wherein the back.
Ceq = C + (Mn / 6) + (Cr + Mo + V) / 5 (1)
However, C, Mn, Cr, Mo and V in the formula (1) mean the content (mass%) of each element.
[0018]
(B) The chemical composition of the steel slab is characterized by containing one or both of V: 0.03-0.2% and Nb: 0.002-0.04% instead of a part of Fe. The manufacturing method of the seamless steel pipe as described in said (A) .
[0019]
(C) The chemical composition of the steel slab is replaced with a part of Fe, Ca: 0.0003 to 0.005%, Mg: 0.0003 to 0.005%, and REM: 0.0003 to 0.005% 1 or more types selected from these , The manufacturing method of the seamless steel pipe as described in said (A) or (B) characterized by the above-mentioned .
[0022]
ADVANTAGE OF THE INVENTION According to this invention, the hardenability and toughness of a seamless steel pipe can be ensured and sulfide stress corrosion cracking resistance can be improved. The seamless steel pipe obtained by the present invention is useful when used in an environment where sulfide stress corrosion cracking is most likely to occur, such as 2 atm or more, particularly 5 to 10 atm hydrogen sulfide.
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
[0023]
As described above, the seamless steel pipe obtained by the present invention reduces the corrosion rate in the high-pressure hydrogen sulfide environment by increasing the Cr content, and also ensures hardenability and toughness without adding B, thereby preventing sulfidation. those with improved things stress corrosion cracking resistance. Hereinafter, the reason for limitation of each component is demonstrated.
[0024]
C: 0.10 to 0.20%
C is an element having an effect of increasing the strength of steel. When the C content is less than 0.1%, low temperature tempering is required to obtain the desired strength. As a result, the resistance to sulfide stress corrosion cracking is reduced. In order to compensate for this by adding a component for improving the temper softening resistance and improving the tempering temperature, it is necessary to add a large amount of an expensive element. On the other hand, if the C content exceeds 0.20%, the yield ratio decreases. If the desired strength is obtained with this excessive C content, the hardness increases and the resistance to sulfide stress corrosion cracking decreases. Therefore, the C content is set to 0.10 to 0.20%. A preferable lower limit of the C content is 0.14%. Moreover, the preferable upper limit of C content is 0.18%.
[0025]
Si: 0.05-1.0%
Si is an element having a deoxidizing action. Moreover, this element is an element which improves the hardenability of steel and improves strength. In order to obtain this effect, it is necessary that 0.05% or more of Si is contained. However, when the content exceeds 1.0%, the resistance to sulfide stress corrosion cracking is lowered. Therefore, the Si content is set to 0.05 to 1.0%. A preferable lower limit of the Si content is 0.1%. Moreover, a preferable upper limit is 0.6%.
[0026]
Mn: 0.05 to 1.5%
Mn is an element having a deoxidizing action. Moreover, this element is an element which improves the hardenability of steel and improves strength. In order to obtain this effect, it is necessary to contain 0.05% or more of Mn. However, when the content exceeds 1.5%, the resistance to sulfide stress corrosion cracking is lowered. Therefore, the Mn content is set to 0.05 to 1.5%.
[0027]
Cr: 1.0-2.0%
Cr is an element effective for enhancing the hardenability of steel and improving the resistance to sulfide stress corrosion cracking. In order to exhibit the effect, it is necessary to contain 1.0% or more. However, when the content exceeds 2.0%, the resistance to sulfide stress corrosion cracking is lowered. Therefore, the Cr content is set to 1.0 to 2.0%. The preferable lower limit of the Cr content is 1.1%, and more preferably 1.2%. Moreover, the preferable upper limit of Cr content is 1.8%.
[0028]
Mo: 0.05-2.0%
Mo is an element effective for increasing the hardenability of steel and ensuring high strength. This element also has the effect of increasing the resistance to sulfide stress corrosion cracking. In order to obtain these effects, the Mo content needs to be 0.05% or more. However, if the Mo content exceeds 2.0%, coarse carbides are formed at the prior austenite grain boundaries, and the resistance to sulfide stress corrosion cracking is reduced. Therefore, the Mo content is preferably 0.05 to 2.0%. A preferable range of the Mo content is 0.1 to 0.8%.
[0029]
Al: 0.10% or less Al is an element having a deoxidizing action. This element is also effective in increasing the toughness and workability of steel. However, if the content exceeds 0.10%, the generation of ground will become remarkable. Therefore, the Al content is set to 0.10% or less. The Al content may be at the impurity level, but is preferably 0.005% or more. A preferable upper limit of the Al content is 0.05%. In addition, Al content said to this invention refers to content of acid-soluble Al (what is called sol.Al).
[0030]
Ti: 0.002 to 0.05%
Ti is an element effective for fixing N in steel as a nitride and improving hardenability. In order to obtain this effect, it is necessary to contain 0.002% or more of Ti. However, if the Ti content exceeds 0.05%, coarse nitrides are formed, and sulfide stress cracking is likely to occur. Therefore, the Ti content is set to 0.002 to 0.05%. A preferable lower limit is 0.005%, and a preferable upper limit is 0.025%.
[0031]
One of the seamless steel pipes obtained by the present invention contains the above-mentioned elements, and the balance has a chemical composition composed of Fe and impurities. In addition to the above elements, the seamless steel pipe obtained by the present invention , in addition to the above-mentioned elements, for fine precipitation of carbides and the like, V: 0.03-0.2% and Nb: 0.002-0. One or both of 04% may be included.
[0032]
V: 0.03-0.2%
V is an element that precipitates as fine carbides during tempering and has the effect of increasing the strength of the seamless steel pipe . In order to acquire this effect, it is preferable to contain V 0.03% or more. However, if the V content exceeds 0.2%, the toughness may be reduced. Therefore, when V is added, its content is preferably 0.03 to 0.2%.
[0033]
Nb: 0.002 to 0.04%
Nb is an element effective in forming carbonitrides in a high temperature range, suppressing coarsening of crystal grains, and improving resistance to sulfide stress corrosion cracking. In order to acquire the effect, it is preferable to contain 0.002% or more of Nb. However, if its content exceeds 0.04%, the carbonitride becomes too coarse, and it tends to cause sulfide stress cracking. Therefore, when Nb is added, its content is preferably 0.002 to 0.04%. A preferable upper limit is 0.02%.
[0034]
In order to improve the resistance to sulfide stress corrosion cracking of steel, the seamless steel pipe obtained by the present invention is further added with Ca: 0.0003 to 0.005%, Mg: 0.005%. One or more selected from 0003 to 0.005% and REM: 0.0003 to 0.005% may be contained.
[0035]
Ca: 0.0003 to 0.005%
Mg: 0.0003 to 0.005%
REM: 0.0003 to 0.005%
Ca, Mg, and REM all have the effect of improving the form of inclusions by reacting with S in the steel to form sulfides and improving the resistance to sulfide stress corrosion cracking of the steel. In order to obtain such an effect, one or more selected from Ca, Mg, and REM (rare earth elements, that is, Ce, La, Y, etc.) can be added. However, the above-mentioned effect becomes remarkable when the content of these elements is 0.0003% or more. On the other hand, if the content of any element exceeds 0.005%, the amount of inclusions in the steel increases, and the cleanliness of the steel decreases, so that sulfide stress cracking is likely to occur. Therefore, when adding these elements, it is preferable to make each content into 0.0003 to 0.005%.
[0036]
In the seamless steel pipe obtained by the present invention, P, S, N and B in impurities must be limited to the following ranges.
[0037]
P: 0.025% or less P is an element present in steel as an impurity. This element lowers toughness. In particular, when its content exceeds 0.025%, the resistance to sulfide stress corrosion cracking is significantly reduced. Therefore, the P content is limited to 0.025% or less. P content is preferably 0.020% or less, and more preferably 0.015% or less.
[0038]
S: 0.010% or less S is an element present in steel as an impurity. When the content exceeds 0.010%, the deterioration of the resistance to sulfide stress corrosion cracking increases. Therefore, the S content is limited to 0.010% or less. The S content is preferably 0.005% or less.
[0039]
N: 0.007% or less N is also an element present in steel as an impurity. Bonds with Al, Ti or Nb to form a nitride. When N is present in a large amount, it causes coarsening of AlN and TiN. Therefore, the N content is limited to 0.007% or less.
[0040]
B: Less than 0.0003% B is also an element present in steel as an impurity. B, when the Cr content in the alloy is increased, the M ₂₃ C ₆ type grain boundary carbide in the alloy is coarsened and the toughness is lowered, and in turn, the resistance to sulfide stress corrosion cracking is lowered. Invite. Therefore, the B content is limited to less than 0.0003%.
[0041]
Ceq: 0.65 or more Even if it has the above chemical composition, since it may be inferior in hardenability, in the seamless steel pipe obtained by the present invention , Ceq represented by the following formula (1) Must be adjusted to 0.65 or more.
Ceq = C + (Mn / 6) + (Cr + Mo + V) / 5 (1)
However, C, Mn, Cr, Mo and V in the formula (1) mean the content (mass%) of each element.
[0042]
Here, C is an element effective for improving the hardenability, but when the C content is increased, the hardness is increased and the YR is decreased. For this reason, in the present invention, Ceq obtained from the relational expression (1) of elements (Mn, Cr, Mo, and V) that contribute to improvement of hardenability other than C is used as an index for ensuring hardenability. Here, when Ceq calculated | required from the said (1) Formula is less than 0.65, hardenability will become inadequate and a sulfide stress corrosion cracking performance will fall especially in a thick product. Therefore, in the present invention, Ceq is adjusted to 0.65 or more.
[0043]
Since the M ₂₃ C ₆ -based precipitate having a particle size of 1 μm or more reduces toughness and sour resistance, the number per unit area of the seamless steel pipe obtained by the present invention is 0.1 / mm ^2. It is necessary to do the following.
[0044]
The seamless steel pipe obtained by the present invention has a yield structure even when the main structure is tempered martensite and the coarse grain structure is a grain size number of 7 or less as defined in JIS G 0551. The ratio is high and the resistance to sulfide stress corrosion cracking is excellent. Therefore, if a steel ingot having the above chemical composition is used as a raw material, the degree of freedom in selecting a method for producing a seamless steel pipe is high. Hereinafter , the manufacturing method of the seamless steel pipe concerning the present invention is explained.
[0045]
For example, a steel pipe that has been perforated by the Mannesmann-Mandrel Mill pipe manufacturing method and stretched and rolled is supplied to a heat treatment facility provided at the subsequent stage of the finishing mill without cooling, and the temperature is higher than the Ar ₃ transformation point. Even if the energy-saving type in-line pipe making and heat treatment process is selected, a steel pipe having a high yield ratio can be produced, for example, by tempering at 600 to 750 ° C. A steel pipe with high strength and high resistance to sulfide stress corrosion cracking can be obtained.
[0046]
In addition, the hot-finished steel pipe is once cooled to room temperature, then reheated in a quenching furnace, soaked in a temperature range of 900 ° C. to 1000 ° C. and water-quenched, and then tempered at 600 to 750 ° C. By selecting an off-line pipe-heat treatment process, a steel pipe with a higher yield ratio combined with a fine grain effect of the prior austenite grain size can be produced, with higher strength and higher resistance to sulfide stress corrosion cracking. A steel pipe is obtained.
[0047]
However, the manufacturing method described below is most desirable. The reason is that since the pipe is kept at a high temperature from pipe making to quenching, it is easy to keep elements such as V and Mo in a solid solution state, and resistance to sulfide stress corrosion cracking. This is because in high-temperature tempering advantageous for improvement, these elements are precipitated as fine carbides and contribute to increasing the strength of the steel pipe.
[0048]
The method for producing a seamless steel pipe according to the present invention is characterized by the final rolling temperature of stretch rolling and the heat treatment after the end of rolling. Each will be described below.
[0049]
(1) Final rolling temperature of stretch rolling This temperature is 800-1100 ° C. When the temperature is lower than 800 ° C., the deformation resistance of the steel pipe becomes too large, causing a problem of tool wear. On the other hand, when the temperature is higher than 1100 ° C., the crystal grains become too coarse and the resistance to sulfide stress corrosion cracking deteriorates. The piercing process prior to the drawing and rolling may be performed by a normal method, for example, Mannesmann piercing method.
[0050]
(2) Supplementary heat treatment The steel pipe that has been drawn and rolled is in-line, that is, charged in a reheating furnace provided in a series of steel pipe production lines, and reheated in the temperature range from Ar ₃ to 1000 ° C. To do. The purpose of this heat supplementation is to eliminate the temperature variation in the longitudinal direction of the steel pipe and to make the structure uniform.
[0051]
If the temperature of the auxiliary heat is lower than the Ar ₃ point, ferrite starts to form and a uniform quenched structure cannot be obtained. On the other hand, when the temperature is higher than 1000 ° C., crystal grain growth is promoted, and the resistance to sulfide stress corrosion cracking due to coarsening is deteriorated. The time for supplementary heating is the time required for the entire thickness of the tube to reach a uniform temperature. About 5 to 10 minutes may be sufficient. In addition, when the final rolling temperature of the stretch rolling is in the temperature range from the Ar ₃ point to 1000 ° C., the heating step may be omitted, but the temperature variation in the longitudinal direction and the thickness direction of the pipe is reduced. Therefore, it is desirable to perform supplementary heat.
[0052]
(3) Quenching and tempering The steel pipe in the temperature range from the Ar ₃ point to 1000 ° C. is quenched through the above steps. Quenching is performed at a cooling rate sufficient for the entire wall thickness of the tube to be martensitic. Usually, water cooling is sufficient. Tempering is performed at a temperature lower than the Ac ₁ point. Desirable is 600 to 700 ° C. The tempering time may be approximately 20 to 60 minutes, although it depends on the wall thickness of the tube.
[0053]
As a result, a seamless steel pipe made of tempered martensite and having excellent properties is obtained.
[0054]
A billet made of a low alloy steel having the chemical composition shown in Table 1 was manufactured and formed into a seamless steel pipe having an outer diameter of 273.1 mm and a wall thickness of 16.5 mm by the Mannesmann-Mandrel pipe manufacturing method. Before the temperature falls below the Ar ₃ point, it was immediately charged into a reheating furnace, soaked at 950 ° C. for 10 minutes, then subjected to water quenching, further subjected to tempering heat treatment, and yield strength in the longitudinal direction of the steel pipe ( YS) was adjusted to be around 110 ksi in an arc-shaped tensile test defined by API.
[0055]
The corrosion test in a high-pressure hydrogen sulfide environment at 10 atm was performed by the following method. A stress corrosion test piece having a thickness of 2 mm, a width of 10 mm, and a length of 75 mm was collected from each specimen from the longitudinal direction of the steel pipe formed and heat-treated as described above. The test piece was subjected to a stress of 90% of the yield stress by applying a predetermined amount of strain by four-point bending according to the method specified in ASTM-G39. After the test piece in this state was enclosed in the autoclave together with the test jig, 5% saline solution degassed into the autoclave was injected leaving the gas phase portion. Thereafter, 10 atm hydrogen sulfide gas was pressurized and sealed in the autoclave, and the high-pressure hydrogen sulfide gas was saturated to the liquid phase by stirring the liquid phase. After sealing the autoclave, the liquid was stirred and held at 25 ° C. for 720 hours, and then the pressure was reduced and the test piece was taken out.
[0056]
After the test, the test piece was visually observed for the presence of sulfide stress corrosion cracking (SSC). “X” of “SSC resistance” in Table 1 indicates that SSC has occurred, and “◯” indicates that SSC has not occurred.
[0057]
The number per unit area of M ₂₃ C ₆ -based precipitates (M is a metal element) having a particle size of 1 μm or more was measured as follows. Ten extracted replica samples for observation of carbides (viewing area of one replica sample is 3 mm ² ) are taken from any position of the steel pipe manufactured by pipe making, quenching, and tempering as described above. was observed for each old γ grain boundaries, if 1μm in diameter the size of grain boundary carbides, determines whether from the diffraction pattern of the carbide M ₂₃ C ₆ type of the, if M ₂₃ C ₆ type thereof The number was counted and divided by the total area of the observation field to obtain the number per unit area.
[0058]
“◯” in “Number of M ₂₃ C ₆ ” in Table 1 indicates that the number per unit area of M ₂₃ C ₆ -based precipitates (M is a metal element) having a particle size of 1 μm or more is 0.1 / mm. It means that it was ² or less, and “x” means that it exceeded 0.1 / mm ² .
[0059]
Whether or not a uniform martensite structure was obtained was determined by the following method. A billet made of a low alloy steel having the chemical composition shown in Table 1 was manufactured and formed into a seamless steel pipe having an outer diameter of 273.1 mm and a wall thickness of 16.5 mm by the Mannesmann-Mandrel pipe manufacturing method. Before the temperature fell below the Ar ₃ point, it was immediately charged into a reheating furnace, soaked at 950 ° C. for 10 minutes, and then subjected to water quenching to produce an as-quenched steel pipe. In addition, the average cooling rate in 800-500 degreeC in water quenching was about 10 degreeC / second in the thickness center part of the steel pipe longitudinal direction center. The hardness at the center of the thickness of the as-quenched steel pipe is measured by the Rockwell hardness test, and the value is a predicted value of Rockwell C hardness corresponding to the 90% martensite ratio of each steel “(C% When the value was higher than the value of (× 58) +27 ”, the quenched structure was good, and when the value was low, the quenched structure was poor.
[0060]
[Table 1]

[0061]
As shown in Table 1, No. 1 satisfying the conditions defined in the present invention. In Nos. 1 to 6, sulfide stress corrosion cracking (SSC) did not occur. No. which did not satisfy the conditions defined in the present invention. In 7-10 , sulfide stress corrosion cracking (SSC) occurred.
[0062]
ADVANTAGE OF THE INVENTION According to this invention, the hardenability and toughness of a seamless steel pipe can be ensured and sulfide stress corrosion cracking resistance can be improved. The seamless steel pipe obtained by the present invention is useful when used in an environment where sulfide stress corrosion cracking is most likely to occur, such as 2 atm or more, particularly 5 to 10 atm hydrogen sulfide.

Claims

In mass%, C: 0.10 to 0.20%, Si: 0.05 to 1.0%, Mn: 0.05 to 1.5%, Cr: 1.0 to 2.0%, Mo: 0.05 to 2.0%, Al: 0.10% or less and Ti: 0.002 to 0.05%, the balance is made of Fe and impurities, and P in the impurities is 0.025% or less, It has a chemical composition in which S is 0.010% or less, N is 0.007% or less, and B is less than 0.0003% , and the Ceq value obtained by the following formula (1) is 0.65 or more The steel slab is pierced hot and stretch-rolled, and then the final rolling temperature is 800-1100 ° C., and the obtained steel pipe is in-line in the temperature range from the Ar ₃ transformation point to 1000 ° C. in heated auxiliary and quenched from Ar ₃ transformation point or more of the temperature, then tempered at a temperature lower than the Ac ₁ transformation point Seamless steel pipe manufacturing method characterized by and.
Ceq = C + (Mn / 6) + (Cr + Mo + V) / 5 (1)
However, C, Mn, Cr, Mo and V in the formula (1) mean the content (mass%) of each element.

The chemical composition of the steel slab contains one or both of V: 0.03 to 0.2% and Nb: 0.002 to 0.04% instead of a part of Fe. A method for producing a seamless steel pipe according to claim 1.

The chemical composition of the billet is selected from Ca: 0.0003 to 0.005%, Mg: 0.0003 to 0.005%, and REM: 0.0003 to 0.005% instead of part of Fe. The method for producing a seamless steel pipe according to claim 1, wherein at least one of the above is contained.