JP4025255B2 - 振りローラの振り量調整装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷機のインキ装置における振りローラの振り量調整装置に係り、一層詳細には、モータを用いて遠隔・自動で調整が行える一方で印刷に悪影響を及ぼさないと共に省スペース化が図れるようにした振り量調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
印刷機のインキ装置は、インキ溜まりのインキが呼出しローラを介して多数の練りローラ群に順次送られ、ここで平均に練られて版胴の周面に支持された刷版に転移されるようになっている。前記多数の練りローラ群は金属ローラとゴムローラの組み合わせよりなり、そのうちの金属ローラは振りローラと称され、回転しながら揺動装置(振り機構)により左右(ローラ軸方向)に揺動運動してインキを平均に練るようになっている。
【0003】
そして、レインボー印刷を行う時や機械速度を変更した時などには、前記振りローラの振り量を調整することが重要となってくる。従来、この振り量を遠隔・自動で調整する振り量調整装置として特許文献1に開示されたものがあるが、これは、回転ドラム,シャフト,レバー及びリンクプレート等からなる大掛かりな駆動系を有するため、スペース的に大きなスペースが必要となり、ローラ配列や他の装置との関係上、設けることが困難になる場合がある、という問題点があった。
【0004】
また、前記特許文献1の振り量調整装置は、複数の振りローラを、そのローラ間をレバーで交互に連繋することで、ローラ軸方向に揺動させていたため、複数の振りローラが同時に揺動端の位置で停止することになるのでインキ膜厚にムラが発生し易いと共に、同時に複数の振りローラが停止して逆方向に動き出すので負荷的なショックが大きくなり、印刷に悪影響を及ぼすという問題もあった。
【0005】
そこで、前記問題点を解決するために、前記特許文献2に開示された、各振りローラの揺動運動における位相を、円盤の味噌摺り運動により異ならせるようにした振り機構を採用することが考えられる。
【0006】
ところで、前記特許文献2に開示された振り機構において、振りローラの振り量を調整するのにあたっては、特許文献3に開示された方法を採用している。即ち、図9に示すように、先ず回転軸100の傾斜軸部101に該傾斜軸部101の軸芯に対して傾斜する外周面を有した円筒状のスリーブ102が回動可能に嵌装され、このスリーブ102に回転自在に支持された円盤103に複数本の振りローラ104a,104b・・・の軸端がそれぞれ回転自在に支持される。
【0007】
従って、回転軸100が印刷機械の原動モータ等に連動して回転すると、回転軸100の傾斜軸部101は軸芯を傾斜させているので首振り運動し、これにスリーブ102を介して軸装された円盤103は所謂味噌摺り運動をする。この際、振りローラ104a,104b・・・はそれぞれ軸方向に揺動するが、振りローラ104a,104b・・・の配列順序に従って順次位相をずらせて揺動することになる。
【0008】
そして、振りローラ104a,104b・・・の振り量を調整するのにあたっては、印刷機械の駆動を一旦停止し、オペレータが、手で調整ボルト105を弛め、スリーブ102の穴102aに工具を差し込んでスリーブ102を所定角度だけ回動させた後、調整ボルト105を締め込んでスリーブ102を回転軸100に再度固定することで行っていた。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−199051公報
【特許文献2】
特公昭54−3763号公報
【特許文献3】
特公昭56−6864号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前述した特許文献3に開示された振り量調整装置にあっては、停止中の全ての振りローラ104a,104b・・・を移動させながらスリーブ102を手動で回動させなければならないため、オペレータに負担がかかると共に、調整精度はオペレータの個々の技術力如何によることから、その調整後、印刷機械を駆動させて確認した結果、うまく調整ができていない場合、再度印刷機械を停止させて調整し直さなければならないため、時間がかかるという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、モータ等を用いて遠隔・自動で調整が行える一方で印刷に悪影響を及ぼさないと共に省スペース化が図れる振りローラの振り量調整装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
斯かる目的を達成する本発明に係る振りローラの振り量調整装置は、軸方向に揺動される振りローラと、フレームに回動自在に支持され、前記振りローラの軸芯に対して傾斜させる傾斜軸部を有する回転軸と、前記回転軸の傾斜軸部に回動可能に嵌装され、傾斜軸部の軸芯に対して傾斜した外周面を有する円筒状のスリーブと、前記スリーブに回転自在に支持され、前記振りローラに係合する係合部を備えた振りローラ係合部材と、前記回転軸を回転させる第1の駆動手段と、を備えた振りローラ揺動装置において、前記スリーブに設けられた係合部と、前記振りローラの軸芯に対して平行な軸芯を有する平行軸部と、前記平行軸部に回転自在に支持され、前記スリーブの係合部に係合する被係合部を備えた回転部材と、前記回転軸に対して前記回転部材を回動させる第2の駆動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、前記平行軸部が、前記回転軸に設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、前記回転部材と前記第1の駆動手段との間の駆動経路に差動機構が設けられ、前記差動機構は、前記第2の駆動手段により前記回転部材と前記第1の駆動手段との間の回転位相を調整することを特徴とする。
【0015】
また、前記第1の駆動手段及び前記第2の駆動手段がモータであることを特徴とする。
【0016】
また、前記第1の駆動手段及び前記第2の駆動手段のうち、一方の駆動手段が専用モータであり、他方の駆動手段が機械全体を駆動する原動モータであることを特徴とする。
【0017】
また、前記振りローラの揺動量を設定する振り量設定器と、前記第2の駆動手段の駆動量を検出する駆動量検出器と、前記振り量設定器からの信号と前記駆動量検出器からの信号に応じて前記第2の駆動手段を制御する制御装置を備えたことを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る振りローラの振り量調整装置を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
「第1実施例」
図1は本発明の第1実施例を示す印刷機におけるインキ装置の振りローラ揺動装置の正断面図、図2は同じく要部側面図、図3は同じく制御ブロック図、図4は同じく振り量・振り位相制御のフロー図、図5は同じく振り量・振り位相制御のフロー図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、インキ装置のフレーム1には4個の振りローラ2a,2b,2c,2dが回動自在に軸支されている。これら振りローラ2a,2b,2c,2dより概ね等距離にある中央部には、フレーム1に設けられた軸受3とフレーム1に螺着された第1支持プレート4の軸受5とに回動自在に軸支された回転軸6が設けられている。
【0021】
前記回転軸6は、振りローラ2a,2b,2c,2dの軸芯に対して傾斜させる傾斜軸部7と振りローラ2a,2b,2c,2dの軸芯に対して平行な軸芯を有する平行軸部8とを隣接してなり、この平行軸部8において前記第1支持プレート4に軸支されると共に円盤サーボモータ等からなるロータリ・エンコーダ9(図3参照)内蔵の振り駆動モータ(第1の駆動手段、専用モータ)10に直結される。この振り駆動モータ10は、前記第1支持プレート4に螺着された第2支持プレート11に横向きに取り付けられている。
【0022】
前記回転軸6の傾斜軸部7には、当該傾斜軸部7の軸芯に対して傾斜した外周面を有する円筒状のスリーブ12が回動可能でかつ軸方向には移動不能に嵌装される。このスリーブ12の外周面に軸受13を介して円盤(振りローラ係合部材)14が回転自在でかつ軸方向には移動不能に支持され、この円盤14の外周部に設けた球面軸受(係合部)15に前記各振りローラ2a,2b,2c,2dの軸端に設けた球面体16がそれぞれ嵌合している。
【0023】
前記スリーブ12の外周一部には嵌合溝(係合部)17が形成され、この嵌合溝17に嵌合する嵌合突部(角ピン、丸ピン、カムフォロア等の被係合部)18を有する回転部材19が前記回転軸6の平行軸部8に軸受20を介して回転自在に支持される。
【0024】
前記回転部材19の外周には環状歯車21が嵌着され、この環状歯車21には前記第1支持プレート4に組み付けられた差動機構としてのハーモニックドライブ(登録商標)装置22の出力ギア22aが噛合している。一方、ハーモニックドライブ装置22の入力ギア22bは前記回転軸6の平行軸部8に固設された円盤状歯車23に噛合している。そして、ハーモニックドライブ装置22のウェーブジェネレータ22cには、ウォームホイール24a及びウォーム24bを介して前記第2支持プレート11に縦向きに取り付けられたポテンショ・メータ25(図3参照)内蔵の振り量調整モータ(第2の駆動手段、専用モータ)26の回転が伝達されるようになっている。
【0025】
前記ハーモニックドライブ装置22は、ウェーブジェネレータ22cとこのウェーブジェネレータ22cの外周に嵌合したフレクスプライン(図示せず)とこのフレクスプラインの外周に噛合した一対のサーキュラスプライン22dとを基本要素とし、サーキュラスプライン22dの歯数がフレクスプラインの歯数より2枚多くなっていると共に、サーキュラスプライン22dの一方に前記出力ギア22aが、また他方に前記入力ギア22bが螺着してなり、フレクスプライン及びサーキュラスプライン22dの歯数によって減速比が決定される公知の差動機構である。
【0026】
従って、通常運転時は、振り量調整モータ26が停止されることで、振り駆動モータ10の回転が円盤状歯車23→ハーモニックドライブ装置22→環状歯車21及び回転部材19へと1:1の割合で伝わり、回転部材19と一体的に回転するスリーブ12が回転軸6と同じ回転数で回転する。一方、振り量調整モータ26を回転させることで、ハーモニックドライブ装置22の減速作用により振り駆動モータ10で回転される円盤状歯車23と環状歯車21及び回転部材19との間にわずかな回転差が生じ、これにより回転軸6(傾斜軸部7)とスリーブ12との位相調整が行われて各振りローラ2a,2b,2c,2dの振り量が調整されることになる。調整後、振り量調整モータ26を停止すると、スリーブ12はもとの回転数(回転軸6と同一回転数)になる。
【0027】
前記振り駆動モータ10と振り量調整モータ26は、図3に示すように、印刷機全体を駆動するロータリ・エンコーダ27内蔵の原動モータ28と共に、制御装置30Aにより駆動制御される。
【0028】
前記制御装置30Aは、CPUとROMとRAMの他に、振り量用メモリ、振り位相用メモリ、原動モータ回転数用メモリ、振り駆動モータの回転数用メモリ、現在の振り量用メモリ、回転偏差用メモリ、振り位相の差用メモリ、原動モータの現在の回転数用メモリが各入出力装置31a〜31jと共に母線BUSで接続されてなる。
【0029】
入出力装置31aには、スタート・スイッチやキーボード等の入力装置32とCRTやディスプレイ等の表示装置33とプリンタやフロッピー(登録商標)ディスクドライブ等の出力装置34とが接続される。また、入出力装置31bには、振りローラ2a,2b,2c,2dの振り量を設定する振り量設定器35と振りローラ2a,2b,2c,2dの振り位相を設定する振り位相設定器36と原動モータ28の回転数を設定する原動モータ回転数設定器37とが接続される。
【0030】
また、入出力装置31cには、原動モータ28が原動モータ用モータ・ドライバ38を介して接続される。また、入出力装置31dには、原動モータ用ロータリ・エンコーダ27がF/V変換器39及びA/D変換器40を介して接続される。また、入出力装置31eには回転偏差検出用カウンタ41が接続され、この回転偏差検出用カウンタ41はフリップ・フロップ回路42を介して原動モータ用ロータリ・エンコーダ27と振り駆動モータ用ロータリ・エンコーダ9に接続されている。尚、前記原動モータ用ロータリ・エンコーダ27の検出信号(クロック・パルス)は原動モータ用モータ・ドライバ38と回転偏差検出用カウンタ41に入力される。
【0031】
また、入出力装置31fには、回転偏差検出用カウンタ41と振り駆動モータ用ロータリ・エンコーダ9が接続される。また、入出力装置31gには、振り駆動モータ用ロータリ・エンコーダ9がF/V変換器43及びA/D変換器44を介して接続される。また、入出力装置31hには、振り駆動モータ10が振り駆動モータ用モータ・ドライバ45を介して接続される。尚、振り駆動モータ用モータ・ドライバ45には、振り駆動モータ用ロータリ・エンコーダ9の検出信号(クロック・パルス)が入力される。
【0032】
また、入出力装置31iには、振り量調整モータ26が振り量調整モータ用モータ・ドライバ46を介して接続される。また、入出力装置31jには、振り量調整モータ用ポテンショ・メータ(駆動量検出器)25がA/D変換器47を介して接続される。
【0033】
このように構成されるため、通常運転時は、振り量調整モータ26が停止された状態で、振り駆動モータ10が回転される。これにより、前述したようにスリーブ12が回転軸6(傾斜軸部7)と同じ回転数で回転し、傾斜軸部7の首振り運動で円盤14が味噌摺り運動をする。この結果、振りローラ2a,2b,2c,2dは順次異なった位相でかつ所定の振り量で軸方向に揺動される。
【0034】
この際、振り駆動モータ10の原点と原動モータ28の原点との原点合わせを行った後、振り駆動モータ10の原点を原動モータ28の原点に対し所定量ずらすことで各振りローラ2a,2b,2c,2dの振り位相が所定の振り位相に調整される。
【0035】
そして、上記状態下で振り量調整モータ26を回転させることで、ハーモニックドライブ装置22の作用により振り駆動モータ10で回転される円盤状歯車23と環状歯車21及び回転部材19との間にわずかな回転差が生じ、これにより回転軸6(傾斜軸部7)とスリーブ12との位相調整が行われて各振りローラ2a,2b,2c,2dの振り量が振り量調整モータ26の回転量だけ変化し、各振りローラ2a,2b,2c,2dの振り量が所定の振り量に調整される。
【0036】
このような振りローラ2a,2b,2c,2dの振り量・振り位相制御を図4及び図5のフロー図にしたがって詳述する。
【0037】
先ず、ステップP1で振り量用メモリに振り量が記憶されているか、及び振り位相用メモリに振り位相が記憶されているか、及び原動モータ回転数用メモリに原動モータ回転数が記憶されているか否かを判断し、記憶されていなければ、ステップP2で振り量設定器35に振り量を入力すると、ステップP3で振り量設定器35に入力された振り量が読み込まれ、振り量用メモリに記憶される。同様に、ステップP4及びステップP5が実行されて振り位相用メモリに振り位相が記憶されると共に、ステップP6及びステップP7が実行されて原動モータ回転数用メモリに原動モータ回転数が記憶される。
【0038】
ステップP1で記憶されていれば、ステップP8でスタート・スイッチがONされて振りローラ2a,2b,2c,2dの振り量制御が開始される。
【0039】
次に、ステップP9で原動モータ回転数用メモリより、原動モータ回転数が読み込まれた後、ステップP10で前記読み込んだ原動モータ回転数より、振り駆動モータ10の回転数を演算し、演算で求めた振り駆動モータ10の回転数を振り駆動モータの回転数用メモリに記憶する。次に、ステップP11で前記読み込んだ原動モータ回転数を原動モータ用モータ・ドライバ38に出力すると共に、ステップP12で前記演算で求めた振り駆動モータ10の回転数を振り駆動モータ用モータ・ドライバ45に出力する。
【0040】
次に、ステップP13で振り量用メモリより、設定振り量を読み込んだ後、ステップP14で振り量調整用ポテンショ・メータ25の値を読み込み、次いで、ステップP15で前記読み込んだ振り量調整用ポテンショ・メータ25の値より、現在の振り量を演算し、演算で求めた現在の振り量を現在の振り量用メモリに記憶する。
【0041】
次に、ステップP16で現在の振り量と設定振り量とが一致しているか否かを判断し、一致していなければ、ステップP17で現在の振り量が設定振り量より小さいか否かを判断する。ここで小さければ、ステップP18で振り量調整モータ用モータ・ドライバ46に正転信号を出力し、逆に大きければ、ステップP19で振り量調整モータ用モータ・ドライバ46に逆転信号を出力する。
【0042】
次に、ステップP20で振り量調整用ポテンショ・メータ25の値を読み込んだ後、ステップP21で前記読み込んだ振り量調整用ポテンショ・メータ25の値より、現在の振り量を演算し、演算で求めた現在の振り量を現在の振り量用メモリに記憶する。次いで、ステップP22で現在の振り量が設定振り量と一致したか否かを判断し、一致したらステップP23で振り量調整モータ用モータ・ドライバ46に停止信号を出力して振り量制御を停止し、ステップP24に移行する。
【0043】
ステップP16で一致していたら、即振り量制御を停止してステップP24に移行し、今度は振り位相制御を行う。即ち、ステップP24で原動モータ回転数設定器37に原動モータ28の回転数が再入力されたか否かを判断し、再入力されたらステップP25で原動モータ回転数設定器37に入力された原動モータ回転数を読み込み、原動モータ回転数用メモリに記憶する。次いで、ステップP26で原動モータ回転数用メモリより、原動モータ回転数を読み込んだ後、ステップP27で前記読み込んだ原動モータ回転数を原動モータ用モータ・ドライバ38に出力する。
【0044】
次に、ステップP28で原動モータ用ロータリ・エンコーダ27の出力周波数(クロック・パルス)を読み込んだ後、ステップP29で前記読み込んだ原動モータ用ロータリ・エンコーダ27の出力周波数より、現在の原動モータ28の回転数を演算し、演算で求めた現在の原動モータ28の回転数を原動モータの現在の回転数用メモリに記憶する。
【0045】
次に、ステップP30で前記演算で求めた現在の原動モータ28の回転数より、振り駆動モータ10の回転数を演算し、演算で求めた振り駆動モータ10の回転数を振り駆動モータの回転数用メモリに記憶する。次いで、ステップP31で前記演算で求めた振り駆動モータ10の回転数を振り駆動モータ用モータ・ドライバ45に出力した後、ステップP32に移行する。
【0046】
ステップP24で再入力されなかったら、前記ステップP32に直に移行する。そして、ステップP32では振り駆動モータ用ロータリ・エンコーダ9より、原点信号が出力されたか否かを判断し、出力されたらステップP33で回転偏差検出用カウンタ41より、カウント値を読み込んだ後、ステップP34で回転偏差検出用カウンタ41にリセット信号を出力する。
【0047】
次に、ステップP35で前記読み込んだカウント値より、原動モータ用ロータリ・エンコーダ27の原点信号と振り駆動モータ用ロータリ・エンコーダ9の原点信号の偏差を演算し、回転偏差用メモリに記憶した後、ステップP36で振り位相用メモリより設定振り位相を読み込む。
【0048】
次に、ステップP37で前記演算で求めた原動モータ用ロータリ・エンコーダ27の原点信号と振り駆動モータ用ロータリ・エンコーダ9の原点信号の偏差と前記読み込んだ設定振り位相の差を演算し、振り位相の差用メモリに記憶した後、ステップP38で原動モータ用ロータリ・エンコーダ27の出力周波数を読み込む。
【0049】
次に、ステップP39で前記読み込んだ原動モータ用ロータリ・エンコーダ27の出力周波数より、現在の原動モータ28の回転数を演算し、原動モータの現在の回転数用メモリに記憶した後、ステップP40で演算で求めた現在の原動モータ28の回転数が0(零)か否かを判断し、0であれば、ステップP41で振り駆動モータ用モータ・ドライバ45に停止信号を出力して振り位相制御を終了する。
【0050】
ステップP40で0でなければ、ステップP42で前記演算で求めた原動モータ用ロータリ・エンコーダ27の原点信号と振り駆動モータ用ロータリ・エンコーダ9の原点信号の偏差と設定振り位相の差及び演算で求めた現在の原動モータ28の回転数より、振り駆動モータ10の回転数を演算し、振り駆動モータの回転数用メモリに記憶した後、ステップP43で前記演算で求めた振り駆動モータ10の回転数を振り駆動モータ用モータ・ドライバ46に出力してステップP24に戻り、振り位相制御を続行する。
【0051】
このようにして本実施例では、スリーブ12と係合して回転軸6の平行軸部8に回転自在に支持された回転部材19を振り量調整モータ26で回転させることで、振りローラ2a,2b,2c,2dの振り量を調整することができるので、モータを用いて遠隔・自動で振り量調整が高精度に行え、大幅な作業時間短縮化が図れる。
【0052】
また、通常運転時は、傾斜軸部7の首振り運動により円盤14が味噌摺り運動をするので、振りローラ2a,2b,2c,2dはそれぞれ軸方向に揺動するが、振りローラ2a,2b,2c,2dの配列順序に従って順次位相をずらせて揺動することになり、インキ練りは、それぞれ異なった位相で行われ、かつ揺動が個々に行われるので、ショックの無い高品質の印刷が可能となる。加えて、振り機構がコンパクトで省スペース化が図れる。
【0053】
また、回転軸6を専用モータである振り駆動モータ10で回転するようにしたので、この振り駆動モータ10の原点と原動モータ28の原点との原点合わせを行った後、振り駆動モータ10の原点を原動モータ28の原点に対し所定量ずらすことで各振りローラ2a,2b,2c,2dの振り位相も所定の振り位相に任意に調整することができる。
【0054】
また、振り量調整モータ26の駆動経路にハーモニックドライブ装置22を介装したので、専用モータである振り量調整モータ26は振り量調整時に一時的に回転させれば良く、省電力化が図れる。また、回転部材19を支持する平行軸部8を回転軸6と一体形成したので、装置の簡略化と組付性の向上が図れる。
【0055】
尚、上記実施例において、専用の振り駆動モータ10を用いずに、回転軸6を歯車機構を介して原動モータ28で回転・駆動しても良い。また、回転軸6と平行軸部8とは別体に形成しても良い。
【0056】
「第2実施例」
図6は本発明の第2実施例を示す印刷機におけるインキ装置の振りローラ揺動装置の正断面図、図7は同じく制御ブロック図、図8は同じく振り量制御のフロー図である。
【0057】
この実施例は、第1実施例におけるスリーブ12を傾斜軸部7において回転自在に支持する回転軸6を歯車50を介して印刷機全体を駆動する原動モータにより回転・駆動すると共に、前記スリーブ12に係合して回転軸6の平行軸部8に回転自在に支持された回転部材19を歯車21,51を介してロータリ・エンコーダ52(図7参照)内蔵の振り量調整モータ26で回転駆動するように概略構成される。
【0058】
また、第1支持プレート4には回転軸6の平行軸部8において原動モータ(振りローラ2a,2b,2c,2d)の原点信号を検出する光学センサ等の振りローラ原点検出器53が付設される。また、本実施例では、振りローラ2a,2b,2c,2dの軸端を支持する軸支持部(係合部,被係合部)イ,ロとして、カムフォロアと溝車を採用した軸支持部イと、ベアリングと球面すべり軸受とを採用した軸支持部ロとが例示されている。
【0059】
そして、図7に示すように、前記制御装置30Bは、各振りローラ2a,2b,2c,2dの振り量(揺動量)を設定する振り量設定器35からの信号と、前記振り量調整モータ26の駆動量を検出する振り量調整モータ用ロータリ・エンコーダ52からの信号に応じて前記振り量調整モータ26を制御し、各振りローラ2a,2b,2c,2dの振り量を調整するようになっている。
【0060】
即ち、入出力装置31mには振りローラ原点検出器53が接続されると共に、入出力装置31nには振り量調整モータ用ロータリ・エンコーダ52がF/V変換器54,A/D変換器55を介して接続される。そして、振りローラ原点検出器53と振り量調整モータ用ロータリ・エンコーダ52はフリップ・フロップ回路42を介して回転偏差検出用カウンタ41に接続される。その他の構成は第1実施例と同様なので、重複する説明は省略する。
【0061】
従って、振りローラ2a,2b,2c,2dの振り量を調整する場合は、原動モータと振り量調整モータ26とが同一回転数で回転している状態で、振り量調整モータ26の回転数を原動モータの回転数に対して早めたり又は遅めたりすることで、回転軸6に対するスリーブ12の回転位相が変化して、振りローラ2a,2b,2c,2dの振り量が調整可能となるのである。調整後は、振り量調整モータ26の回転数を元に戻す。
【0062】
このような振りローラ2a,2b,2c,2dの振り量制御を図8のフロー図にしたがって詳述する。
【0063】
先ず、ステップP50で振り量設定器35に振り量が入力されると、ステップP51で前記入力された振り量が読み込まれ、振り量用メモリに記憶される。次に、ステップP52でスタート・スイッチがONされると振りローラ2a,2b,2c,2dの振り量制御が開始される。
【0064】
次に、ステップP53で原動モータ用ロータリ・エンコーダ27の出力周波数(クロック・パルス)を読み込んだ後、ステップP54で前記読み込んだ原動モータ用ロータリ・エンコーダ27の出力周波数より、現在の原動モータ28の回転数を演算し、演算で求めた現在の原動モータ28の回転数を原動モータの現在の回転数用メモリに記憶する。
【0065】
次に、ステップP55で前記演算で求めた現在の原動モータ28の回転数が0(零)か否かを判断し、0(零)であれば、振り量制御を中止する。0(零)でなければ、ステップP56で前記演算で求めた現在の原動モータの回転数より、振り量調整モータ26の回転数を演算し、演算で求めた振り量調整モータ26の回転数を振り量調整モータの回転数用メモリに記憶した後、ステップP57で前記演算で求めた振り量調整モータ26の回転数を振り量調整モータ用モータ・ドライバ46に出力する。
【0066】
次いで、ステップP58で振り量調整モータ用ロータリ・エンコーダ52より、原点信号が出力されたか否かを判断し、出力されたらステップP59で回転偏差検出用カウンタ41より、カウント値を読み込んだ後、ステップP60で回転偏差検出用カウンタ41にリセット信号を出力する。
【0067】
次に、ステップP61で前記読み込んだカウント値より、現在の振り量を演算し、演算で求めた現在の振り量を現在の振り量用メモリに記憶する。
【0068】
次に、ステップP62で振り量用メモリより、設定振り量を読み込んだ後、ステップP63で前記演算で求めた現在の振り量と前記読み込んだ設定振り量の差を演算し、演算で求めた現在の振り量と前記読み込んだ設定振り量の差を振り量の差用メモリに記憶し、その後、ステップP64で原動モータ用ロータリ・エンコーダ27の出力周波数を読み込む。
【0069】
次に、ステップP65で前記読み込んだ原動モータ用ロータリ・エンコーダ27の出力周波数より、現在の原動モータ28の回転数を演算し、原動モータの現在の回転数用メモリに記憶した後、ステップP66で演算で求めた現在の原動モータ28の回転数が0(零)か否かを判断し、0であれば、ステップP67で振り量調整モータ用モータ・ドライバ46に停止信号を出力して振り量制御を終了する。
【0070】
ステップP66で0でなければ、ステップP68で前記演算で求めた現在の振り量と設定振り量の差及び前記演算で求めた現在の原動モータ28の回転数より、振り量調整モータ26の回転数を演算し、演算で求めた振り量調整モータ26の回転数を振り量調整モータ用の回転数用メモリに記憶した後、ステップP69で演算で求めた振り量調整モータ26の回転数を振り量調整モータ用モータ・ドライバ46に出力してステップP58に戻り、振り量制御を続行する。
【0071】
このようにして本実施例では、第1実施例と同様に、スリーブ12と係合して回転軸6の平行軸部8に回転自在に支持された回転部材19を振り量調整モータ26で回転させることで、振りローラ2a,2b,2c,2dの振り量を調整することができるので、モータを用いて遠隔・自動で振り量調整が高精度に行え、大幅な作業時間短縮化が図れる。
【0072】
また、通常運転時は、傾斜軸部7の首振り運動により円盤14が味噌摺り運動をするので、振りローラ2a,2b,2c,2dはそれぞれ軸方向に揺動するが、振りローラ2a,2b,2c,2dの配列順序に従って順次位相をずらせて揺動することになり、インキ練りは、それぞれ異なった位相で行われ、かつ揺動が個々に行われるので、ショックの無い高品質の印刷が可能となる。加えて、振り機構がコンパクトで省スペース化が図れるということも第1実施例と同様である。特に、本実施例では、回転軸6を原動モータで回転・駆動するので、専用モータで回転・駆動する場合に比べて部品点数の削減でコストダウンが図れる。
【0073】
また、本実施例では、前記制御装置30Bが、振り量設定器35からの信号と振り量調整モータ用ロータリ・エンコーダ52からの信号に応じて前記振り量調整モータ26を制御し、各振りローラ2a,2b,2c,2dの振り量を調整するので、簡単な制御で済むという利点がある。
【0074】
尚、上記実施例において、振り量調整モータ26と原動モータの関係を逆にしても良い。
【0075】
尚、本発明は上記各実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能であることはいうまでもない。例えば、第1実施例におけるハーモニックドライブ装置22に代えて遊星ギア等により2軸を駆動し位相調整できる駆動手段を用いても良い。また、第1実施例における振り駆動モータ10に減速機付きモータを用いてギアに噛み合わすように構成しても良い。また、スリーブ12を回転部材19により摩擦駆動する構成にしても良い。
【0076】
【発明の効果】
以上、実施例に基づいて具体的に説明したように、本発明では、軸方向に揺動される振りローラと、フレームに回動自在に支持され、前記振りローラの軸芯に対して傾斜させる傾斜軸部を有する回転軸と、前記回転軸の傾斜軸部に回動可能に嵌装され、傾斜軸部の軸芯に対して傾斜した外周面を有する円筒状のスリーブと、前記スリーブに回転自在に支持され、前記振りローラに係合する係合部を備えた振りローラ係合部材と、前記回転軸を回転させる第1の駆動手段と、を備えた振りローラ揺動装置において、前記スリーブに設けられた係合部と、前記振りローラの軸芯に対して平行な軸芯を有する平行軸部と、前記平行軸部に回転自在に支持され、前記スリーブの係合部に係合する被係合部を備えた回転部材と、前記回転軸に対して前記回転部材を回動させる第2の駆動手段と、を備えたので、モータ等を用いて遠隔・自動で高精度な調整が行え、作業時間の大幅な短縮が図れる。また、各振りローラの振り位相も異ならせられるので印刷に悪影響を及ぼさないと共に、装置の簡略化により省スペース化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す印刷機におけるインキ装置の振りローラ揺動装置の正断面図である。
【図2】同じく要部側面図である。
【図3】同じく制御ブロック図である。
【図4】同じく振り量・振り位相制御のフロー図である。
【図5】同じく振り量・振り位相制御のフロー図である。
【図6】本発明の第2実施例を示す印刷機におけるインキ装置の振りローラ揺動装置の正断面図である。
【図7】同じく制御ブロック図である。
【図8】同じく振り量制御のフロー図である。
【図9】従来例を示すインキ装置の振りローラ揺動装置の正断面図である。
【符号の説明】
1 フレーム
2a,2b,2c,2d 振りローラ
3 軸受
4 第1支持プレート
5 軸受
6 回転軸
7 傾斜軸部
8 平行軸部
9 振り駆動モータ用ロータリ・エンコーダ
10 振り駆動モータ
11 第2支持プレート
12 円筒状のスリーブ
13 軸受
14 円盤
15 球面軸受
16 球面体
17 嵌合溝
18 嵌合突部
19 回転部材
20 軸受
21 環状歯車
22a 出力ギア
22b 入力ギア
22c ウェーブジェネレータ
23 円盤状歯車
24a ウォームホイール
24b ウォーム
25 振り量調整モータ用ポテンショ・メータ
26 振り量調整モータ
27 原動モータ用ロータリ・エンコーダ
28 原動モータ
30A,30B 制御装置
31a〜31j,31m,31n 入出力装置
32 入力装置
33 表示装置
34 出力装置
35 振り量設定器
36 振り位相設定器
37 原動モータ回転数設定器
38 原動モータ用モータ・ドライバ
39 F/V変換器
40 A/D変換器
41 回転偏差検出用カウンタ
42 フリップ・フロップ回路
43 F/V変換器
44 A/D変換器
45 振り駆動モータ用モータ・ドライバ
46 振り量調整モータ用モータ・ドライバ
47 A/D変換器
50 歯車
51 歯車
52 振り量調整モータ用ロータリ・エンコーダ
53 振りローラ原点検出器
54 F/V変換器
55 A/D変換器
イ,ロ 軸支持部
Claims (6)
- 軸方向に揺動される振りローラと、
フレームに回動自在に支持され、前記振りローラの軸芯に対して傾斜させる傾斜軸部を有する回転軸と、
前記回転軸の傾斜軸部に回動可能に嵌装され、傾斜軸部の軸芯に対して傾斜した外周面を有する円筒状のスリーブと、
前記スリーブに回転自在に支持され、前記振りローラに係合する係合部を備えた振りローラ係合部材と、
前記回転軸を回転させる第1の駆動手段と、
を備えた振りローラ揺動装置において、
前記スリーブに設けられた係合部と、
前記振りローラの軸芯に対して平行な軸芯を有する平行軸部と、
前記平行軸部に回転自在に支持され、前記スリーブの係合部に係合する被係合部を備えた回転部材と、
前記回転軸に対して前記回転部材を回動させる第2の駆動手段と、
を備えたことを特徴とする振りローラの振り量調整装置。 - 前記平行軸部が、前記回転軸に設けられていることを特徴とする請求項1記載の振りローラの振り量調整装置。
- 前記回転部材と前記第1の駆動手段との間の駆動経路に差動機構が設けられ、前記差動機構は、前記第2の駆動手段により前記回転部材と前記第1の駆動手段との間の回転位相を調整することを特徴とする請求項1記載の振りローラの振り量調整装置。
- 前記第1の駆動手段及び前記第2の駆動手段がモータであることを特徴とする請求項1記載の振りローラの振り量調整装置。
- 前記第1の駆動手段及び前記第2の駆動手段のうち、一方の駆動手段が専用モータであり、他方の駆動手段が機械全体を駆動する原動モータであることを特徴とする請求項1記載の振りローラの振り量調整装置。
- 前記振りローラの揺動量を設定する振り量設定器と、前記第2の駆動手段の駆動量を検出する駆動量検出器と、前記振り量設定器からの信号と前記駆動量検出器からの信号に応じて前記第2の駆動手段を制御する制御装置を備えたことを特徴とする請求項1記載の振りローラの振り量調整装置。
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