JP3974720B2 - 有機el素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機EL(電界発光)素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機EL素子は、蛍光性有機化合物を含む薄膜を陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、薄膜に電子および正孔を注入して再結合させることにより、励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光する素子である。
【0003】
有機EL素子は、10V以下の低電圧で100〜100,000cd/m2 程度の高輝度の面発光が可能である。また、蛍光物質の種類を選択することにより、青色から赤色までの発光が可能である。
【0004】
一方、有機EL素子の問題点は、発光寿命が短く、保存耐久性、信頼性が低いことであり、この原因としては、
【0005】
(1)有機化合物の物理的変化
(結晶ドメインの成長などにより界面の不均一化が生じ、素子の電荷注入能の劣化・短絡・絶縁破壊の原因となる。特に分子量500以下の低分子化合物を用いると結晶粒の出現・成長が起こり、膜性が著しく低下する。また、陽極に用いられるITO等の界面が荒れていても、顕著な結晶粒の出現・成長が起こり、発光効率の低下や、電流のリークを起こし、発光しなくなる。また、部分的非発光部であるダークスポットの原因にもなる。)
【0006】
(2)陰極の酸化・剥離
(電子の注入を容易にするために、陰極には仕事関数の小さな金属としてNa・K・Li・Mg・Ca・Al等が用いられてきたが、これらの金属は大気中の水分や酸素と反応したり、有機層と陰極との剥離が起こり、電荷注入ができなくなる。特に、高分子化合物などを用い、スピンコートなどで成膜した場合、成膜時の残留溶媒・水分や分解物が電極の酸化反応を促進し、電極の剥離が起こり、部分的な非発光部を生じさせる。)
【0007】
(3)発光効率が低く、発熱量が多いこと
(有機化合物中に電流を流すので、高い電界強度下に有機化合物を置かねばならず、発熱からは逃れられない。その熱のため、有機化合物の溶融・結晶化・熱分解などにより、素子の劣化・破壊が起こる。)
【0008】
(4)有機化合物層の光化学的変化・電気化学的変化
(有機物に電流を流すことで有機物が劣化し、電流トラップ・励起子トラップ等の欠陥を生じ、駆動電圧の上昇、輝度の低下等の素子劣化が起こる。)
などが挙げられる。
【0009】
また、実用の発光デバイスでは色々な環境下で用いられるが、特に高温の環境下では、有機化合物の物理的変化である結晶化・有機物の移動・拡散等の有機分子の再配列を起こし、表示品位の低下や、素子の破壊を引き起こす。
【0010】
また、有機材料と無機材料の界面である陽極や陰極界面、特に陽極界面は成膜時の有機物層の膜性に大きな影響を及ぼし、状態によっては陽極上に有機物層が不均一に成膜されたり、良好な界面が形成できない等の不具合を生じる。
【0011】
このため、有機EL発光素子の陽極界面に、フタロシアニン、ポリフェニレンビニレン、アミン多量体等の材料を用いることが報告されている。しかしながら、フタロシアニン(米国特許第4720432号明細書あるいは特開昭63-295695号公報)を用いると、フタロシアニン自身が微結晶性で上に載せる材料の結晶化を促進するため、初期状態では良好でも長期的にはダークスポットや発光ムラ等の原因となり、好ましくない。
【0012】
また、ポリフェニレンビニレンはスピンコート等のウエットプロセスを用いるため、水分等空気中の不純物を巻き込んだり、前駆体から変換する際の脱離基等のイオン性不純物が混入したりするため、電極の酸化が速く、著しい輝度劣化や駆動電圧の上昇の原因となる。
【0013】
また、アミン系多量体としては、デンドリマー材料(特開平4-308688号公報)やテトラアミン材料(米国特許第439627号明細書)やトリアミン材料(特開平8-193191号公報)等が報告されているが、十分な耐熱性、特に高温保存状態において陽極上での膜の均一性・安定性は得られていない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、駆動電圧が低く、高効率で、信頼性の高い有機EL素子を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
(1) 陽極と、この陽極上に直接設けられた発光帯と、陰極とを有し、
上記発光帯が、下記式で表されるいずれかの骨格を有する化合物と、蛍光性物質とを含有する有機EL素子。
【0016】
【化1】
【0017】
【化2】
【0018】
【化3】
【0019】
【化4】
【0020】
【化5】
【0021】
【化6】
【0022】
(2) 上記発光帯と上記陰極との間に、電子注入輸送帯を有する上記(1)の有機EL素子。
(3) 上記発光帯が上記蛍光性物質を2種類以上含有する上記(1)または(2)の有機EL素子。
(4) 上記発光帯が、発光波長の異なる2層以上から構成されるか、発光波長の異なる領域を有する上記(1)〜(3)のいずれかの有機EL素子。
(5) 上記発光帯が、上記陽極側に上記式で表されるいずれかの骨格を有する化合物を含有し、上記陰極側に下記式(3)で表されるテトラアリールベンジジン誘導体を含有する上記(1)〜(4)のいずれかの有機EL素子。
【0023】
【化11】
【0024】
[式(3)において、R101、R102、R103およびR104は、それぞれアリール基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはハロゲン原子を表し、
R101、R102、R103およびR104のうちの少なくとも1個はアリール基であり、
r101、r102、r103およびr104は、それぞれ0または1〜5の整数であり、
r101、r102、r103およびr104の和は1以上の整数であり、
少なくとも1個のアリール基がR101〜R104として存在し、
R105およびR106は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、
r105およびr106は、それぞれ0または1〜4の整数である。]
【0025】
(6) 上記式で表されるいずれかの骨格を有する化合物は、HIM34、または、HIM38であり、
上記式(3)で表されるテトラアリールベンジジン誘導体のR 101 〜R 104 はアリール基であり、r 101 〜r 104 は1である上記(5)の有機EL素子。
【0027】
【作用】
本発明の有機EL素子は、陽極と、この陽極上に直接設けられた発光帯と、陰極とを有し、発光帯が、上記式(I)で表される骨格を有する化合物(テトラアリールフェニレンジアミン誘導体)と、蛍光性物質とを含有する。または、陽極と、この陽極上に直接設けられた発光帯と、陰極とを有し、発光帯が、上記式(1)で示される構造を有する化合物、上記式(1)で示される構造と上記式(2)で示される構造とを有する化合物および上記式(2)で示される構造を有する化合物(ポリチオフェン、チオフェン誘導体)のうちの少なくとも1種以上と、蛍光性物質とを含有する。発光帯と陰極との間には、電子注入輸送帯を有していてもよい。
【0028】
ここで、発光帯とは、正孔と電子の再結合により励起子を生成させ、この励起子が失活する際の光の放出によって発光する層、つまり、発光層のことをいう。ただし、この発光帯は、他の機能を有していてもよく、例えば、正孔注入輸送性化合物を含有し、正孔注入輸送機能を有する発光層や、電子注入輸送性化合物を含有し、電子注入輸送機能を有する発光層等も含む。発光帯は2層以上の発光層が積層されていてもよく、例えば、正孔注入性発光層、正孔輸送性発光層、電子注入輸送性発光層が積層されている構成としてもよい。
【0029】
電子注入輸送帯とは、陰極からの電子の注入を容易にする機能、電子を輸送する機能および正孔を妨げる機能を有する層、つまり、電子注入輸送層のことをいう。ただし、この電子注入輸送帯は、他の機能を有していてもよい。
【0030】
このような素子構成とすることにより、10mA/cm2の定電流駆動で駆動電圧が2〜6Vと低くすることができる。また、輝度も300〜1000cd/m2で、従来のものと同等である。
【0031】
さらには、信頼性も高く、例えば、大気中、10mA/cm2の定電流で500〜5000時間連続駆動しても駆動電圧の大きな上昇は見られない。また、ダークスポットやリーク電流の発生も少ない。
【0032】
しかも、発光面の均一性が高く、高品位な表示が可能となる。
【0033】
【発明の実施の形態】
<テトラアリールフェニレンジアミン誘導体>
本発明の有機EL素子は、陽極と、この陽極上に直接設けられた発光層と、陰極とを有し、発光層が、下記式(I)で表される骨格を有する化合物(テトラアリールフェニレンジアミン誘導体)と、蛍光性物質とを含有する。必要に応じて、発光層と陰極との間に電子注入輸送層を設けてもよい。
【0034】
【化13】
【0035】
上記式(I)について説明すると、式(I)において、2つのΦはフェニレン基を表す。Φ−Φのビフェニレン基としては、4,4’−ビフェニレン基、3,3’−ビフェニレン基、3,4’−ビフェニレン基のいずれであってもよいが、特に4,4’−ビフェニレン基が好ましい。
【0036】
また、R01,R02,R03およびR04は、それぞれ、ジアリールアミノフェニレン基、
【0037】
【化14】
【0038】
のいずれかを表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。化14において、R11,R12,R13,R14,R15,R16およびR17は、それぞれ、無置換または置換基を有するアリール基を表す。
【0039】
R11,R12,R13,R14,R15,R16およびR17で表されるアリール基としては、単環または多環のものであってよく、総炭素数6〜20のものが好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基およびo−,m−またはp−ビフェニル基等が挙げられる。これらアリール基はさらに置換されていてもよく、このような置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、無置換または置換基を有するアリール基またはアルコキシ基、アリーロキシ基および
【0040】
【化15】
【0041】
基等が挙げられる。ここで、R21およびR22は、それぞれ、無置換または置換基を有するアリール基を表す。
【0042】
R21およびR22で表されるアリール基としては、単環または多環のものであってよく、総炭素数6〜20のものが好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基およびo−,m−またはp−ビフェニル基等が挙げられ、特に好ましくはフェニル基が挙げられる。これらアリール基はさらに置換されていてもよく、このような置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、無置換または置換基を有するアリール基等が挙げられる。前記アルキル基としては好ましくはメチル基が挙げられ、前記アリール基としては好ましくはフェニル基が挙げられる。
【0043】
また、R01,R02,R03およびR04で表されるジアリールアミノフェニレン基は、ジアリールアミノ基が式(I)で表される骨格に対してメタ位(3位)またはパラ位(4位)に結合しているものが好ましい。
【0044】
フェニレン基は、さらに置換基を有していてもよいが、ジアリールアミノ基のみを有することが好ましい。
【0045】
アリール基としては、単環または多環のものであってよく、総炭素数6〜20のものが好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基およびo−,m−またはp−ビフェニル基等が挙げられ、特に好ましくはフェニル基が挙げられる。これらアリール基はさらに置換されていてもよく、このような置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、無置換または置換基を有するアリール基等が挙げられる。前記アルキル基としては好ましくはメチル基が挙げられ、前記アリール基としては好ましくはフェニル基が挙げられる。また、アリール基の置換基としては、
【0046】
【化16】
【0047】
も好ましい。
【0048】
化16のR11,R12,R13,R14,R15,R16およびR17は、化14のR11,R12,R13,R14,R15,R16およびR17と同義である。
【0049】
置換基を2以上有する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。また、置換基は、Nの結合位置に対してメタ位あるいはパラ位に結合していることが好ましい。
【0050】
また、式(I)において、r01,r02,r03およびr04は、それぞれ、0〜5、好ましくは0〜2の整数を表すが、特に0または1であることが好ましい。そして、r01+r02+r03+r04は、1以上、特に1〜4、さらには2〜4が好ましい。前記R01,R02,R03およびR04は、Nの結合位置に対してメタ位あるいはパラ位に結合し、R01,R02,R03およびR04の全てがメタ位、R01,R02,R03およびR04の全てがパラ位、あるいは、R01,R02,R03およびR04がメタ位あるいはパラ位に結合していても、これらが混在していてもよい。r01,r02,r03またはr04が2以上である場合、R01同士,R02同士,R03同士またはR04同士は同一でも異なっていてもよい。
【0051】
このような化合物の好ましい具体例を下記の式(II)〜(IV)に示す。
【0052】
【化17】
【0053】
また、前記R01,R02,R03およびR04の好ましい具体例を以下の表1〜表43に示す。なお、上記式(II)〜(IV)を一般式として表す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
【表7】
【0061】
【表8】
【0062】
【表9】
【0063】
【表10】
【0064】
【表11】
【0065】
【表12】
【0066】
【表13】
【0067】
【表14】
【0068】
【表15】
【0069】
【表16】
【0070】
【表17】
【0071】
【表18】
【0072】
【表19】
【0073】
【表20】
【0074】
【表21】
【0075】
【表22】
【0076】
【表23】
【0077】
【表24】
【0078】
【表25】
【0079】
【表26】
【0080】
【表27】
【0081】
【表28】
【0082】
【表29】
【0083】
【表30】
【0084】
【表31】
【0085】
【表32】
【0086】
【表33】
【0087】
【表34】
【0088】
【表35】
【0089】
【表36】
【0090】
【表37】
【0091】
【表38】
【0092】
【表39】
【0093】
【表40】
【0094】
【表41】
【0095】
【表42】
【0096】
【表43】
【0097】
テトラアリールフェニレンジアミン誘導体の化合物は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0098】
また、上記のようなテトラアリールフェニレンジアミン誘導体と蛍光物質とを含有する発光層を2層以上積層することも好ましい。この場合、陰極側にR01,R02,R03またはR04がジアリールアミノフェニレン基であるテトラアリールフェニレンジアミン誘導体を含有する層を、陽極上にそれ以外のテトラアリールフェニレンジアミン誘導体を含有する層を設けることが好ましい。特に、陰極側にR01、R02、R03およびR04はそれぞれジアリールアミノフェニレン基である式(I)で表されるテトラアリールフェニレンジアミン誘導体を含有する層を、陽極上にR01、R02、R03およびR04はそれぞれ
【0099】
【化18】
【0100】
である式(I)で表されるテトラアリールフェニレンジアミン誘導体を含有する層を設けることが好ましい。ここで、化18のR11,R12,R13,R14,R15,R16およびR17は、化14のR11,R12,R13,R14,R15,R16およびR17と同義である。このような積層順とすることによって、駆動電圧が低下し、電流リークの発生やダークスポットの発生・成長を防ぐことができる。また、この場合、各層の間に、各層を形成する各々の成分で濃度勾配を設けた傾斜構造層を形成することも好ましい。
【0101】
テトラアリールフェニレンジアミン誘導体は、特願平8−358416号公報等に従って合成すればよく、1級または2級の芳香族アミンと、芳香族ヨウ化物とを銅などの触媒を用いて縮合するウルマン反応で合成することができる。または、パナジウムのトリアルキルホスヒィン錯体等を用いて縮合してもよい。また、R01,R02とR03,R04とが非対称(ビフェニルの両側が非対称)の場合には、R01,R02とR03,R04とが、それぞれ対応するアミンを合成し、ビフェニル部を最後にカップリングしてもよい(グリニャールカップリング、Ni(dppp)Cl2 等)。
【0102】
以下の(A)〜(C)に具体的な合成例を挙げる。(A)では、4,4'- ジヨードビフェニルと式(VII)で表される化合物とを用い、(B)では、式(VIII)で表される化合物と式(IX)で表される化合物とを用い、銅を触媒としてカップリングして、それぞれ式(X)で表される非対称化合物を得ている。(C)では、式(XI)で表される化合物と式(XII)で表される化合物とをNi(dppp)Cl2 を用いてカップリングし、式(XIII)で表される非対称化合物を得ている。ここで、下記(VII)〜(XIII)におけるR30,R41およびR45は、それぞれ式(I)におけるR01,R02,R03およびR04と同義であり、R32,R33,R42,R43,R46およびR47は、それぞれ式(I)におけるR11,R12,R13,R14,R15,R16およびR17と同義である。
【0103】
【化19】
【0104】
【化20】
【0105】
テトラアリールフェニレンジアミン誘導体は、質量分析、赤外吸収スペクトル(IR)、 1H,13C核磁気共鳴スペクトル(NMR)等によって同定することができる。
【0106】
これらの化合物は、500〜2000程度の分子量をもち、190〜300℃の高融点、80〜200℃の高ガラス転移温度を示し、通常の真空蒸着等によって透明で室温以上でも安定なアモルファス状態を形成し、平滑で良好な膜が得られ、しかもそれが長期間に渡って維持される。なお、これらの化合物の中には融点を示さず、高温においてもアモルファス状態を呈するもの、例えば、下記のHIM34、HIM38、HIM35、HIM73、HIM74、HIM78等もある。従って、バインダー樹脂を用いることなく、それ自体で安定で均一な薄膜を得ることができる。
【0107】
【化21】
【0108】
【化22】
【0109】
【化23】
【0110】
【化24】
【0111】
【化25】
【0112】
【化26】
【0113】
上記のテトラアリールフェニレンジアミン誘導体は、発光層に用いる。この化合物は、正孔注入性が良好であり、電極等に用いられるITOなどの無機材料上に均一に成膜されるので、通常有機EL素子で設けられる正孔注入層あるいは正孔注入輸送層を設けなくてよい。上記のテトラアリールフェニレンジアミン誘導体は、フェニレンジアミン骨格とベンジジン骨格とを共に有することで耐熱性を犠牲にせず、イオン化ポテンシャルを自由にコントロールでき、組み合わせる材料に応じて正孔注入効率を最適化できる。また、正孔移動度が大きく、発光層膜厚を数百nm〜1μm 程度と厚膜にしても15V以内の実用的な駆動電圧で使用できる。
【0114】
<ポリチオフェン、チオフェン誘導体>
本発明の有機EL素子は、陽極と、この陽極上に直接設けられた発光層と、陰極とを有し、発光層が、下記式(1)で示される構造を有する重合体(以下、「重合体I」ともいう。)、下記式(1)で示される構造と下記式(2)で示される構造とを有する共重合体(以下、「共重合体II」ともいう。)、下記式(2)で示される構造を有する重合体(以下、「重合体III」ともいう。)および下記式(1)で示される構造および/または下記式(2)で示される構造を有するチオフェン誘導体のうちの少なくとも1種以上と、蛍光性物質とを含有する。必要に応じて、発光層と陰極との間に電子注入輸送層を設けてもよい。
【0115】
【化27】
【0116】
【化28】
【0117】
まず、重合体Iについて説明する。重合体Iは化27の構造単位を有し、例えば化29で示されるものである。
【0118】
【化29】
【0119】
化27、化29について記すと、R1 およびR2 はそれぞれ水素原子、芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。
【0120】
R1 およびR2 で表される芳香族炭化水素基としては、無置換であっても置換基を有するものであってもよく、炭素数6〜15のものが好ましい。置換基を有するときの置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基等が挙げられる。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、トリル基、メトキシフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0121】
R1 およびR2 で表される脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基等が挙げられ、これらのものは無置換でも置換基を有するものであってもよい。中でも、炭素数1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0122】
R1 、R2 としては、水素原子、芳香族炭化水素基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0123】
用いる重合体Iの平均重合度(化29のm)は4〜100、さらに好ましくは5〜40、特に5〜20が好ましい。この場合、化27で示される繰り返し単位が全く同一の重合体(ホモポリマー)であっても、化27においてR1 とR2 の組合せが異なる構造単位から構成される共重合体(コポリマー)であってもよい。共重合体としては、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体等のいずれであってもよい。
【0124】
また、重合体Iの重量平均分子量は300〜10000程度、好ましくは500〜2000程度である。
【0125】
重合体Iの末端基(化29のX1 およびX2 )は、水素原子、または塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子である。X1 およびX2 は、それぞれ同一でも異なるものであってもよい。この末端基は、一般に、重合体Iの合成の際の出発原料に依存して導入される。さらには、重合反応の最終段階で他の置換基を導入することもできる。例えば、重合反応の最終段階でモノハロゲン化体等を導入することで、フェニル基等のアリール基を末端基として導入することができる。
【0126】
なお、重合体Iは化27の構造単位のみで構成されることが好ましいが、他のモノマー成分を含有していてもよい。その場合、他のモノマー成分は50モル%以下とすることが好ましい。なお、化27で表されるチオフェンモノマーの総数mは、前述の通り、4〜100、さらに好ましくは5〜40、特に5〜20が好ましい。
【0127】
重合体Iの具体例を化30に示す。化30は、化27ないし化29のR1 、R2 の組合せで示している。
【0128】
【化30】
【0129】
次に、共重合体IIについて説明する。共重合体IIは化27の構造単位と化28の構造単位とを有し、例えば化31で示されるものである。
【0130】
【化31】
【0131】
化27については重合体Iのものと同様である。従って、化31中のR1 、R2 は化27のものと同様である。
【0132】
また、化28について記すと、R3 およびR4 は、それぞれ水素原子、芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。
【0133】
R3 、R4 で表される芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基の具体例は、化27のR1 、R2 のところで挙げたものと同様のものを挙げることができる。また、R3 、R4 の好ましいものもR1 、R2 と同様である。さらに、R3 とR4 とは互いに結合して環を形成し、チオフェン環に縮合していてもよい。この場合の縮合環としては、ベンゼン環等が挙げられる。このR3 、R4 については、化31においても同様である。
【0134】
用いる共重合体IIの平均重合度(化31におけるv+w)は、重合体Iと同様に、4〜100、さらに好ましくは5〜40、特に5〜20が好ましい。また、化27の構造単位と化28の構造単位との比率は、化27の構造単位/化28の構造単位(v/w)が、モル比で10/1〜1/10程度である。
【0135】
また、共重合体IIの重量平均分子量は300〜10000程度、好ましくは500〜2000程度である。
【0136】
共重合体IIの末端基(化31におけるX1 およびX2 )は、それぞれ同一でも異なるものであってもよく、重合体Iと同様のものであり、一般に、共重合体IIの合成の際の出発原料ないしその比率に依存する。さらには、重合反応の最終段階で他の置換基を導入することもできる。
【0137】
なお、共重合体IIは、重合体Iと同様に、化27の構造単位と化28の構造単位とで構成されることが好ましいが、他のモノマー成分を含有していてもよい。その場合、他のモノマー成分は50モル%以下とすることが好ましい。なお、化27、化28で表されるチオフェンモノマーの総数v+wは、前述の通り、4〜100、さらに好ましくは5〜40、特に5〜20が好ましい。
【0138】
また、共重合体IIは、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体等のいずれであってもよく、化31の構造式はこのような構造を包含するものである。さらに、化27、化28の構造単位同士は、それぞれ同一であっても異なるものであってもよい。
【0139】
共重合体IIの具体例を化32に示す。化32は、化27のR1 、R2 の組合せ、化28のR3 、R4 の組合せ、すなわち化31のR1 、R2 、R3 、R4 の組合せで示している。
【0140】
【化32】
【0141】
次に、重合体IIIについて説明する。重合体IIIは化28の構造単位を有し、例えば化33で示されるものである。
【0142】
【化33】
【0143】
化33について記すと、R3 およびR4 は化28のものと同義であり、好ましいものも同様である。
【0144】
化33のnは平均重合度を表し、重合体I、共重合体IIと同様に、4〜100、さらに好ましくは5〜40、特に5〜20が好ましい。この場合、化28で示される繰り返し単位が全く同一の重合体(ホモポリマー)であっても、化28においてR3 とR4 の組合せが異なる構造単位から構成される共重合体(コポリマー)であってもよい。共重合体としては、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体等のいずれであってもよい。
【0145】
また、化33の場合、重合体IIIの重量平均分子量は300〜10000程度、好ましくは500〜2000程度である。
【0146】
重合体IIIの末端基(化33のX1 およびX2 )は、それぞれ同一でも異なるものであってもよく、重合体I、共重合体IIの末端基と同様のものである。X1 およびX2 は重合体IIIの合成の際の出発原料に依存する。さらには、重合反応の最終段階で他の置換基を導入することもできる。
【0147】
なお、重合体IIIは化28の構造単位のみで構成されることが好ましいが、他のモノマー成分を含有していてもよい。その場合、他のモノマー成分は50モル%以下とすることが好ましい。なお、化28で表されるチオフェンモノマーの総数nは、前述の通り、4〜100、さらに好ましくは5〜40、特に5〜20が好ましい。
【0148】
化33で表される重合体IIIの具体例を化34に示す。化34は、化28ないし化33のR3 、R4 の組合せで示している。
【0149】
【化34】
【0150】
また、上記化27で示される構造を有する化合物、上記化27で示される構造と上記化28で示される構造とを有する化合物、上記化28で示される構造を有する化合物としては、m+nが2〜20程度、好ましくは4〜18程度のオリゴマー、チオフェン誘導体も好ましい。つまり、上記化27で示される構造を有する化合物としてはmが、上記化27で示される構造と上記化28で示される構造とを有する化合物としてはm+nが、上記化28で示される構造を有する化合物としてはnが、2〜20程度、好ましくは4〜18程度であることが好ましい。mは1分子内の化27で示されるチオフェンモノマーの総数、nは1分子内の化28で示されるチオフェンモノマーの総数を表し、間に他のモノマー成分を有していてもよい。また、この場合、末端は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基、好ましくは炭素数4〜30のアリール基、好ましくは炭素数4〜30のアリーロキシ基またはアミノ基であることが好ましい。また、このような化合物は、他のモノマー成分、好ましくはアリール基、特にフェニル基を含有していることも好ましい。
【0151】
末端のアルキル基としては、直鎖状でも分岐を有するものであってもよく、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基が好ましい。特に、炭素数1〜4の無置換のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、(n−,i−)プロピル基、(n−,i−,s−,t−)ブチル基等が挙げられる。
【0152】
アルコキシ基としては、アルキル基部分の炭素数が1〜6のものが好ましく、具体的にはメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。アルコキシ基は、さらに置換されていてもよい。
【0153】
アリール基としては、単環または多環のものであってよく、総炭素数4〜30のものが好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基およびo−,m−またはp−ビフェニル基等が挙げられ、特に好ましくはフェニル基が挙げられる。これらアリール基はさらに置換されていてもよく、このような置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、無置換または置換基を有するアリール基等が挙げられる。
【0154】
アリーロキシ基としては炭素数4〜30のものが好ましく、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−(t−ブチル)フェノキシ基等が挙げられる。
【0155】
アミノ基としては、無置換でも置換基を有するものであってもよいが、置換基を有するものが好ましく、具体的にはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジビフェニリルアミノ基、N−フェニル−N−トリルアミノ基、N−フェニル−N−ナフチルアミノ基、N−フェニル−N−ビフェニリルアミノ基、N−フェニル−N−アントリルアミノ基、N−フェニル−N−ピレニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ジアントリルアミノ基、ジピレニルアミノ基等が挙げられる。
【0156】
このようなオリゴマー、チオフェン誘導体としては、上記化28で示される構造を有する化合物が好ましく、下記のものが好ましく挙げられる。なお、ここでは、化28においてR3 およびR4 が水素原子であるものを例示したが、この場合も、R3 およびR4 が前述の芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基であってよい。
【0157】
【化35】
【0158】
化35のn1は2〜10の整数である。R5 およびR6 は、それぞれ同一でも異なるものであってもよく、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数4〜30のアリール基または炭素数4〜30のアリーロキシ基である。R5 およびR6 は、無置換でも、置換基を有していてもよい。
【0159】
また、下記のようなものも好ましい。
【0160】
【化36】
【0161】
化36のn2は2〜6の整数である。R05 およびR06 は、それぞれ、アルキル基、無置換または置換基を有するアリール基を表し、同一でも異なるものであってもよい。r05 およびr06 は、それぞれ、0〜5、好ましくは0〜2の整数を表すが、特に0または1であることが好ましい。前記R05およびR06は、メタ位あるいはパラ位に結合していることが好ましい。r05 またはr06 が2以上である場合、R05同士、R06同士は同一でも異なっていてもよい。
【0162】
【化37】
【0163】
化37のn3は2〜6の整数である。R05、R06、R07およびR08は、それぞれ同一でも異なるものであってもよく、化36のR05 およびR06 と同義である。r05、r06、r07 およびr08は、化36のr05 およびr06 と同義であり、好ましいものも同様である。
【0164】
また、他のモノマー成分を含有するものとして、下記のブロック共重合体が好ましく挙げられる。
【0165】
【化38】
【0166】
【化39】
【0167】
【化40】
【0168】
化38のaおよびcはそれぞれ1〜6の整数、bは1〜4の整数であり、R5 およびR6 は、それぞれ同一でも異なるものであってもよく、化35のR5 およびR6 と同義である。
【0169】
化39のd、fおよびhはそれぞれ1〜6の整数、eおよびgはそれぞれ1または2であり、R5 およびR6 は、それぞれ同一でも異なるものであってもよく、化35のR5 およびR6 と同義である。
【0170】
化40のiおよびkはそれぞれ1〜6の整数、jは1〜4の整数であり、R5 およびR6 は、それぞれ同一でも異なるものであってもよく、化35のR5 およびR6 と同義である。
【0171】
また、下記のものも好ましい。
【0172】
【化41】
【0173】
【化42】
【0174】
【化43】
【0175】
化41、化42、化43について記すと、p1、p2、p3およびp4はそれぞれ1〜6の整数であり、R5 、R6 、R7 およびR8 は、それぞれ同一でも異なるものであってもよく、化35のR5 およびR6 と同義である。
【0176】
【化44】
【0177】
化44のq1、q2およびq3はそれぞれ2〜6の整数であり、R5 、R6 およびR7 は、それぞれ同一でも異なるものであってもよく、化35のR5 およびR6 と同義である。
【0178】
本発明で用いる重合体I、共重合体II、重合体IIIおよびチオフェン誘導体は、米国特許5540999号明細書(特願平6−170312号対応)等に従って合成すればよく、ジハロゲン化アリール化合物を縮重合することで得られる。好ましくは、(1)グリニャール反応を行い、ジクロロ(2,2′−ビピリジン)ニッケル[NiCl2(bpy)]などのNi錯体などを用いて重合する方法[ T.Yamamoto ,et al., Bull.Chem.Soc.Jpn.,56,1497(1983)] や、(2)ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル[Ni(cod)2]を用いて重合する方法[ T.Yamamoto,et al., Polym.J.,22,187(1990)] などにより得られる。
【0179】
このような化合物の同定は、元素分析、赤外吸収スペクトル(IR)、核磁気共鳴スペクトル(NMR)等によって行うことができる。
【0180】
また、平均重合度、重量平均分子量は、光散乱法、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、液体クロマトグラフィー、マススペクトル等によって求めることができる。
【0181】
これらの化合物は、融点が300℃以上、または融点を持たないものであり、真空蒸着によりアモルファス状態あるいは微結晶状態の良質な膜が得られる。
【0182】
<本発明の有機EL素子構成>
本発明の有機EL素子は、陽極の上に直接、少なくとも1層以上の発光層を有し、その上に、電子注入輸送層、陰極を有する。なお、発光層の機能により、電子注入輸送層はなくてもよい。本発明の有機EL素子の構成例を図1に示す。同図に示される有機EL素子は、基板1上に、陽極2、発光層3、電子注入輸送層4、陰極5を順次有する。通常、有機EL素子は陽極と発光層との間に正孔注入層、正孔注入輸送層を設けるが、本発明では発光層に用いる上記の化合物の正孔注入輸送機能が高く、電極上に均一な薄膜を形成する能力が高いので、これらの層を設けなくてよい。なお、本発明では、前述の通り、発光層は他の機能を有するものであってもよく、例えば、正孔注入輸送性発光層、電子注入輸送性発光層としてもよい。
【0183】
<発光層>
発光層は、正孔(ホール)および電子の注入機能、それらの輸送機能、正孔と電子の再結合により励起子を生成させる機能を有するものである。発光層は2層以上積層してもよい。
【0184】
発光層には比較的電子的にニュートラルな層を用いることが好ましい。ニュートラルな層の構成方法は、ニュートラルな材料を単体、もしくは組み合わせてもよいし、電子注入輸送性化合物とホール注入輸送性化合物とを組み合わせて層全体としてニュートラルにしてもよい。ただし、組み合わせる材料の電子受容性と電子供与性とが極端に強い場合はエキサイプレックス等の蛍光性の低下もしくは発光波長のシフト現象が見られ、好ましくない。電子注入輸送性化合物とホール注入輸送性化合物とを組み合わせた混合層については後述する。
【0185】
本発明の有機EL素子の発光層は、上記式(I)で表される骨格を有する化合物(テトラアリールフェニレンジアミン誘導体)、上記式(1)で示される構造を有する化合物、上記式(1)で示される構造と上記式(2)で示される構造とを有する化合物および上記式(2)で示される構造を有する化合物(ポリチオフェン、チオフェン誘導体)を含有する。これらの化合物は薄膜性が良好なので、親水性にバラツキのあるITO透明電極表面上でも均一な薄膜を形成することができ、発光効率が向上し、信頼性も向上する。
【0186】
これらは、後述する蛍光性物質と組み合わせてドーパントのホスト物質として用いられる。このように蛍光性物質(ドーパント)と組み合わせて使用することによって、ホスト物質の発光波長特性を変化させることができ、長波長の発光が可能になるとともに、素子の発光効率や安定性が向上する。
【0187】
上記のテトラアリールフェニレンジアミン誘導体または上記のポリチオフェン、チオフェン誘導体の含有量は30〜99.9wt%、特に60〜98wt%であることが好ましい。蛍光性物質の含有量は0.01〜50wt%、さらには0.01〜20wt%であることが好ましい。
【0188】
また、本発明の有機EL素子の発光層は、発光波長の異なる2層以上を積層することも好ましく、その際、陽極上に、薄膜性が良好な上記のテトラアリールフェニレンジアミン誘導体または上記のポリチオフェン、チオフェン誘導体を含有する層を積層することが好ましい。また、各層を形成する各々の成分で濃度勾配を設けた傾斜構造層を形成し、駆動電圧の低下と耐久性の向上を図ることも好ましい。この場合、混合部分は全体の1/99〜99/1であることが好ましい。
【0189】
また、発光層が発光波長の異なる領域を有する構成としてもよい。
【0190】
発光層は、上記一般式(I)で表される骨格を有する化合物(テトラアリールフェニレンジアミン誘導体)と蛍光物質とを含有する層と、後述するテトラアリールベンジジン誘導体と蛍光物質とを含有する層とから成ることが特に好ましい。蛍光物質としては、ルブレン等のナフタセン誘導体が好ましい。この場合、陽極上に、テトラアリールフェニレンジアミン誘導体を含有する層を設けることが好ましい。このような積層順とすることによって、駆動電圧が低下し、電流リークの発生やダークスポットの発生・成長を防ぐことができる。この場合も、テトラアリールフェニレンジアミン誘導体と蛍光物質とを含有する層と、テトラアリールベンジジン誘導体と蛍光物質とを含有する層との間に、各層を形成する各々の成分で濃度勾配を設けた傾斜構造層を形成することも好ましい。
【0191】
<混合層>
また、本発明の発光層としては、少なくとも1種以上の正孔注入輸送性化合物と少なくとも1種以上の電子注入輸送性化合物との混合層とすることも好ましく、この混合層中に蛍光性物質をドーパントとして含有させることが好ましい。このような混合層における蛍光性物質ドーパントの含有量は、0.01〜20wt% 、さらには0.1〜15wt% とすることが好ましい。混合層は、化合物同士が均一に混合している方が好ましいが、場合によっては、化合物が島状に存在するものであってもよい。
【0192】
混合層では、キャリアのホッピング伝導パスができるため、各キャリアは極性的に有利な物質中を移動し、逆の極性のキャリア注入は起こりにくくなるので、有機化合物がダメージを受けにくくなり、素子寿命がのびるという利点がある。また、蛍光性物質をこのような混合層に含有させることにより、混合層自体のもつ発光波長特性を変化させることができ、発光波長を長波長に移行させることができるとともに、発光強度を高め、かつ、素子の安定性が向上する。
【0193】
発光層を少なくとも1種以上の正孔注入輸送性化合物と少なくとも1種以上の電子注入輸送性化合物との混合層とする場合の混合比は、それぞれのキャリア移動度とキャリア濃度によるが、一般的には、正孔注入輸送性化合物/電子注入輸送性化合物の重量比が、1/99〜99/1、さらには10/90〜90/10、特に20/80〜80/20程度となるようにすることが好ましい。
【0194】
また、混合層の厚さは、分子層一層に相当する厚みから、有機化合物層の膜厚未満とすることが好ましく、具体的には1〜1000nm、さらには5〜600nm、特に5〜500nmとすることが好ましい。
【0195】
混合層に用いられる電子注入輸送性化合物としては、後述する電子注入輸送層用の化合物の中から選択すればよい。中でも、キノリン誘導体、さらには8−キノリノールないしその誘導体を配位子とする金属錯体、特にトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(AlQ3)を用いることが好ましい。また、後述するフェニルアントラセン誘導体、テトラアリールエテン誘導体、テトラアリールアミン誘導体を用いることも好ましい。これらの化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0196】
混合層に用いられる正孔注入輸送性化合物には、例えば、特開昭63−295695号公報、特開平2−191694号公報、特開平3−792号公報、特開平5−234681号公報、特開平5−239455号公報、特開平5−299174号公報、特開平7−126225号公報、特開平7−126226号公報、特開平8−100172号公報、EP0650955A1等に記載されている各種有機化合物を用いることができる。例えば、テトラアリールベンジジン化合物(トリアリールジアミンないしトリフェニルジアミン:TPD)、芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体等である。これらの化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0197】
正孔注入輸送性の化合物としては、強い蛍光を持ったアミン誘導体、例えばテトラアリールベンジジン誘導体、トリアリールアミン誘導体を用いることが好ましい。さらには、スチリルアミン誘導体、芳香族縮合環を持つアミン誘導体を用いてもよい。特にテトラアリールベンジジン誘導体誘導体を用いることが好ましい。
【0198】
<テトラアリールベンジジン誘導体>
テトラアリールベンジジン誘導体は、下記式(3)で表される。
【0199】
【化45】
【0200】
化45について説明すると、R101 〜R104 は、それぞれアリール基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。また、R101 〜R104 のうちの少なくとも1個はアリール基である。r101〜r104は、それぞれ0または1〜5の整数であり、r101〜r104は同時に0になることはない。従って、r101+r102+r103+r104は1以上の整数であり、少なくとも1つのアリール基が存在する条件を満たす数である。R105 およびR106 は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。r105およびr106は、それぞれ0または1〜4の整数である。
【0201】
R101 〜R104 で表されるアリール基としては、単環もしくは多環のものであってよく、縮合環や環集合も含まれる。総炭素数は6〜20のものが好ましく、置換基を有していてもよい。この場合の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。具体的には、フェニル基、(o−,m−,p−)トリル基、ピレニル基、ペリレニル基、コロネニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニリル基、フェニルアントリル基、トリルアントリル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましく、アリール基、特にフェニル基の結合位置は3位(Nの結合位置に対してメタ位)または4位(Nの結合位置に対してパラ位)であることが好ましい。
【0202】
R101 〜R104 で表されるアルキル基としては、直鎖状でも分岐を有するものであってもよく、炭素数1〜10のものが好ましく、置換基を有していてもよい。この場合の置換基としてはアリール基と同様のものが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、(n−,i−)プロピル基、(n−,i−,s−,t−)ブチル基等が挙げられる。
【0203】
R101 〜R104 で表されるアルコキシ基としては、アルキル部分の炭素数1〜6のものが好ましく、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。アルコキシ基はさらに置換されていてもよい。
【0204】
R101 〜R104 で表されるアリールオキシ基としては、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−(t−ブチル)フェノキシ基等が挙げられる。
【0205】
R101 〜R104 で表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0206】
R101 〜R104 のうちの少なくとも1個はアリール基であるが、特にR101 〜R104 として1分子中にアリール基が2〜4個存在することが好ましく、r101〜r104の中の2〜4個が1以上の整数であることが好ましい。特に、アリール基は分子中に総計で2〜4個存在し、好ましくはr101〜r104の中の2〜4個が1であり、さらに好ましくはr101〜r104が1であり、含まれるR101 〜R104 のすべてがアリール基であることが好ましい。すなわち、分子中のR101 〜R104 が置換していてもよい4個のベンゼン環には総計で2〜4個のアリール基が存在し、2〜4個のアリール基は4個のベンゼン環の中で同一のものに結合していても、異なるものに結合していてもよいが、特に2〜4個のアリール基がそれぞれ異なるベンゼン環に結合していることが好ましい。そして、さらに少なくとも2個のアリール基がNの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合していることがより好ましい。また、この際アリール基としては少なくとも1個がフェニル基であることが好ましく、すなわちアリール基とベンゼン環が一緒になってN原子に対し4−または3−ビフェニリル基を形成することが好ましい。特に2〜4個が4−または3−ビフェニリル基であることが好ましい。4−または3−ビフェニリル基は一方のみでも両者が混在していてもよい。また、フェニル基以外のアリール基としては、特に(1−,2−)ナフチル基、(1−,2−,9−)アントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、コロネニル基などが好ましく、フェニル基以外のアリール基もNの結合位置に対しパラ位またはメタ位に結合することが好ましい。これらのアリール基もフェニル基と混在していてもよい。
【0207】
化45において、R105 、R106 で表されるアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子としては、R101 〜R104 のところで挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0208】
R105 、R106 で表されるアミノ基としては、無置換でも置換基を有するものであってもよいが、置換基を有するものが好ましく、具体的にはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジビフェニリルアミノ基、N−フェニル−N−トリルアミノ基、N−フェニル−N−ナフチルアミノ基、N−フェニル−N−ビフェニリルアミノ基、N−フェニル−N−アントリルアミノ基、N−フェニル−N−ピレニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ジアントリルアミノ基、ジピレニルアミノ基等が挙げられる。
【0209】
r105、r106は、ともに0であることが好ましく、2つのアリールアミノ基を連結するビフェニレン基は無置換のものが好ましい。
【0210】
なお、r101〜r104が2以上の整数のとき、各R101 〜R104 同士は各々同一でも異なるものであってもよい。また、r105、r106が2以上の整数のとき、R105 同士、R106 同士は同一でも異なるものであってもよい。
【0211】
化45の化合物の中でも、下記の化46または化47で表される化合物が好ましい。
【0212】
【化46】
【0213】
【化47】
【0214】
まず、化46について説明すると、A1 〜A4 は、それぞれNの結合位置に対してパラ位(4位)またはメタ位(3位)に結合するフェニル基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。これらのフェニル基はさらに置換基を有していてもよく、この場合の置換基としてはR101 〜R104 で表されるアリール基のところで挙げた置換基と同様のものを挙げることができる。
【0215】
R107 〜R110は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。これらの具体例としては化45のR101 〜R104 のところで挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0216】
r107〜r110は、それぞれ0または1〜4の整数であり、r107〜r110は0であることが好ましい。
【0217】
なお、r107〜r110が各々2以上の整数であるとき、各R107 〜R110同士は同一でも異なるものであってもよい。
【0218】
また、化46において、R105 、R106 、r105およびr106は化45のものと同義であり、r105=r106=0であることが好ましい。
【0219】
次に、化47について説明すると、Arは、Nの結合位置のパラ位(4位)またはメタ位(3位)に結合するアリール基を表す。アリール基としては、化45のR101 〜R104 で表されるアリール基のところで例示したものと同様のものを挙げることができ、特にフェニル基が好ましい。この場合、アリール基はさらに置換されていてもよく、このような置換基としてはR101 〜R104 のところで例示したものを挙げることができる。置換基としてはアミノ基が好ましい。ただし、アミノ基は、場合によっては環化して複素環基となっていてもよい。具体的には化45のR105 、R106 で表されるアミノ基の中から選択することができる。
【0220】
Z1 、Z2 およびZ3 は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。これらの具体例としては化45のR101 〜R104 のところで挙げたものと同様のものを挙げることができる。ただし、Z1 、Z2 およびZ3 のうちの少なくとも1個はNの結合位置のパラ位またはメタ位に結合するアリール基を表すが、Ar、Z1 〜Z3 のすべてが同時にNの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合するフェニル基となることはなく、4個のベンゼン環の2〜3個がパラ位またはメタ位にそれぞれ1個のアリール基を有することが好ましい。従って、Z1 〜Z2 のうちの1個または2個がこのようなアリール基であることが好ましい。アリール基としては、(1−,2−)ナフチル基、(1−,2−,9−)アントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、コロネニル基等も好ましいが、フェニル基が最も好ましい。
【0221】
また、Z1 〜Z3 で表される上記アリール基は置換基を有していてもよく、置換基としてはR101 〜R104 のところで例示したものを挙げることができる。特に、置換基としてはアミノ基が好ましく、具体的にはR105 、R106 で表されるアミノ基から選択することができる。s1〜s3は、それぞれ0または1〜5の整数であるが、これらは同時に0になることはなく、その和は1以上の整数である。s1〜s3は、それぞれ0または1であることが好ましく、さらにはs1〜s3の1個または2個が1であり、残りが0であるような組合せが好ましい。この場合、s1〜s3が1であるときに含まれるZ1 〜Z3 は、Nの結合位置に対してパラ位またはメタ位に結合するアリール基、特にフェニル基であることが好ましい。
【0222】
なお、s1〜s3が2以上の整数のとき、各Z1 〜Z3 同士は同一でも異なるものであってもよい。
【0223】
また、化47のR100 およびr100は化46のR107 およびr107と各々同義であり、化47のR105 、R106 、r105およびr106は化46のものと各々同義であり、好ましいものも同様である。
【0224】
化46の化合物の中でも、化48〜化53で表される化合物が好ましい。
【0225】
【化48】
【0226】
【化49】
【0227】
【化50】
【0228】
【化51】
【0229】
【化52】
【0230】
【化53】
【0231】
化48〜化53の各々において、R111〜R114は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基またはハロゲン原子を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。これらの具体例としてはR101 〜R104 のところで挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0232】
r111〜r114はそれぞれ0または1〜5の整数であり、r111〜r114は、化48〜化53のいずれにおいても0であることが好ましい。
【0233】
なお、r111〜r114が各々2以上の整数であるとき、各R111〜R114同士は同一でも異なるものであってもよい。
【0234】
化48〜化53の各々において、R105 〜R110およびr105〜r110は、それぞれ化46のものと同義であり、好ましいものも同様である。
【0235】
一方、化47の化合物の中でも化54〜化59で表される化合物が好ましい。
【0236】
【化54】
【0237】
【化55】
【0238】
【化56】
【0239】
【化57】
【0240】
【化58】
【0241】
【化59】
【0242】
化54〜化59の各々において、Ar1 〜Ar6 はそれぞれアリール基を表し、化54のAr1 とAr2 、化55のAr1 とAr3 、化56のAr1 とAr2 とAr3 、化57のAr4 とAr5 、化58のAr4 とAr6 、化59のAr4 とAr5 とAr6 とは、それぞれ同一でも異なるものであってもよい。アリール基の具体例としては化45のR101 〜R104 のところで挙げたものと同様のものを挙げることができ、フェニル基が特に好ましい。
【0243】
化54〜化59のR115、化54、化56、化57、化59のR116、化55、化56、化58、化59のR120は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基またはハロゲン原子を表し、化54、化57のR115とR116、化55、化58のR115とR120、化56、化59のR115とR116とR120とはそれぞれ同一でも異なるものであってもよい。これらの具体例としては化45のR101 〜R104 のところで挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0244】
化54〜化59のr115、化54、化56、化57、化59のr116、化55、化56、化58、化59のr120は、0または1〜4の整数であるが、r115、r116、r120は0であることが好ましい。
【0245】
化54、化57のR117、化54〜化59のR118、化55、化58のR119は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはハロゲン原子を表し、化54、化57のR117とR118、化55、化58のR118とR119とはそれぞれ同一でも異なるものであってもよい。これらの具体例としては化45のR101 〜R104 のところで挙げたものと同様のものを挙げることができる。
【0246】
化54、化57のr117、化54〜化59のr118、化55、化58のr119は、0または1〜5の整数であるが、r117、r118、r119は0であることが好ましい。
【0247】
なお、化54〜化59において、r115、r116、r120が2以上の整数であるとき、R115同士、R116同士、R120同士は各々同一でも異なるものであってもよく、r117、r118、r119が2以上の整数であるとき、R117同士、R118同士、R119同士は各々同一でも異なるものであってもよい。
【0248】
化54〜化59の各々において、R105 、R106 、r105およびr106は化45のものと同義であり、r105=r106=0であることが好ましい。
【0249】
以下に、化45の化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、化60、化62、化64、化66、化69、化72、化75、化79、化84、化88、化92、化96は一般式であり、化61、化63、化65、化67〜68、化70〜71、化73〜74、化76〜78、化80〜83、化85〜87、化89〜91、化93〜95、化97〜100にR101 等の組合せで具体例を示している。この表示において、Ar1 〜Ar6 を除いて、すべてHのときはHで示しており、置換基が存在するときは置換基のみを示すものとし、他のものはHであることを意味している。
【0250】
【化60】
【0251】
【化61】
【0252】
【化62】
【0253】
【化63】
【0254】
【化64】
【0255】
【化65】
【0256】
【化66】
【0257】
【化67】
【0258】
【化68】
【0259】
【化69】
【0260】
【化70】
【0261】
【化71】
【0262】
【化72】
【0263】
【化73】
【0264】
【化74】
【0265】
【化75】
【0266】
【化76】
【0267】
【化77】
【0268】
【化78】
【0269】
【化79】
【0270】
【化80】
【0271】
【化81】
【0272】
【化82】
【0273】
【化83】
【0274】
【化84】
【0275】
【化85】
【0276】
【化86】
【0277】
【化87】
【0278】
【化88】
【0279】
【化89】
【0280】
【化90】
【0281】
【化91】
【0282】
【化92】
【0283】
【化93】
【0284】
【化94】
【0285】
【化95】
【0286】
【化96】
【0287】
【化97】
【0288】
【化98】
【0289】
【化99】
【0290】
【化100】
【0291】
テトラアリールベンジジン誘導体は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0292】
テトラアリールベンジジン誘導体は、Jean Piccard, Herr. Chim. Acta., 7, 789(1924) 、Jean Piccard, J. Am. Chem. Soc., 48, 2878(1926) 等に記載の方法に従って、あるいは準じて合成することができ、特開平8−48655号公報等に従って合成すればよい。具体的には、目的とする化合物に応じて、ジ(ビフェニル)アミン化合物とジヨードビフェニル化合物、あるいはN,N’−ジフェニルベンジン化合物とヨードビフェニル化合物、などの組合せで、銅の存在下で加熱すること(ウルマン反応)によって得られる。また、パナジウムのトリアルキルホスヒィン錯体の存在下でも同様に得ることができる。
【0293】
テトラアリールベンジジン誘導体は、質量分析、赤外吸収スペクトル(IR)、 1H、13C核磁気共鳴スペクトル(NMR)等によって同定することができる。
【0294】
これらのテトラアリールベンジジン誘導体は、640〜2000程度の分子量をもち、190〜300℃の高融点、80〜200℃の高ガラス転移温度を示し、通常の真空蒸着等によって透明で室温以上でも安定なアモルファス状態を形成し、平滑で良好な膜が得られ、しかもそれが長期間に渡って維持される。なお、これらの化合物の中には融点を示さず、高温においてもアモルファス状態を呈するもの、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス[−4’−(N−フェニル−N−3−メチルフェニルアミノ)ビフェニル−4−イル]ベンジジンなどもある。従って、バインダー樹脂を用いることなく、それ自体で薄膜化することができる。
【0295】
<発光層蛍光物質>
本発明では、発光層に発光機能を有する化合物である蛍光物質を含有させる。このような蛍光性物質としては、例えば、特開昭63−264692号公報に開示されているような化合物、例えばキナクリドン、ルブレン、スチリル系色素等の化合物が挙げられる。また、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム等の8−キノリノールないしその誘導体を配位子とする金属錯体色素などのキノリン誘導体、テトラフェニルブタジエン、アントラセン、ペリレン、コロネン、12−フタロペリノン誘導体等が挙げられる。さらには、特開平8−12600号のフェニルアントラセン誘導体、特開平8−12969号のテトラアリールエテン誘導体等も挙げられる。蛍光性物質は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0296】
発光層蛍光物質としては、キノリン誘導体が好ましく、さらには8−キノリノールないしその誘導体を配位子とするアルミニウム錯体が好ましい。このようなアルミニウム錯体としては、特開昭63−264692号、特開平3−255190号、特開平5−70733号、特開平5−258859号、特開平6−215874号等に開示されているものを挙げることができる。
【0297】
具体的には、まず、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム、ビス(ベンゾ{f}−8−キノリノラト)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウムオキシド、トリス(8−キノリノラト)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノラト)カルシウム、5,7−ジクロル−8−キノリノラトアルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、ポリ[亜鉛(II)−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリニル)メタン]等がある。
【0298】
また、8−キノリノールないしその誘導体のほかに他の配位子を有するアルミニウム錯体であってもよく、このようなものとしては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(オルト−クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(メタークレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(オルト−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(メタ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,3−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,6−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,4−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,5−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,6−ジフェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,4,6−トリフェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,3,6−トリメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,3,5,6−テトラメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(1−ナフトラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(オルト−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(メタ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(3,5−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラト)(パラ−クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラト)(オルト−クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−6−トリフルオロメチル−8−キノリノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(III) 等がある。
【0299】
このほか、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 等であってもよい。
【0300】
これらの中でも、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(AlQ3)を用いることが好ましい。
【0301】
この他、発光層蛍光物質としては、特開平8−12600号公報に記載のフェニルアントラセン誘導体や特開平8−12969号公報に記載のテトラアリールエテン誘導体なども好ましい。
【0302】
フェニルアントラセン誘導体は、下記の式(4)で表されるものである。
【0303】
式(4)
A41−L4−A42
【0304】
式(4)について説明すると、A41 およびA42 は、それぞれモノフェニルアントリル基またはジフェニルアントリル基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。
【0305】
A41 、A42 で表されるモノフェニルアントリル基またはジフェニルアントリル基は、無置換でも置換基を有するものであってもよく、置換基を有する場合の置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの置換基はさらに置換されていてもよい。これらの置換基については後述する。また、このような置換基の置換位置は特に限定されないが、アントラセン環ではなく、アントラセン環に結合したフェニル基であることが好ましい。
【0306】
また、アントラセン環におけるフェニル基の結合位置はアントラセン環の9位、10位であることが好ましい。
【0307】
式(4)において、L4は単結合または二価の基を表すが、L4で表される二価の基としてはアルキレン基等が介在してもよいアリーレン基が好ましい。このようなアリーレン基については後述する。
【0308】
式(4)で示されるフェニルアントラセン誘導体の中でも、下記の式(5)、式(6)で示されるものが好ましい。
【0309】
【化101】
【0310】
【化102】
【0311】
式(5)について説明すると、式(5)において、R510 およびR520 は、各々アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基または複素環基を表す。
【0312】
R510 、R520 で表されるアルキル基としては、直鎖状でも分岐を有するものであってもよく、炭素数1〜10、さらには1〜4の置換もしくは無置換のアルキル基が好ましい。特に、炭素数1〜4の無置換のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、(n−,i−)プロピル基、(n−,i−,s−,t−)ブチル基等が挙げられる。
【0313】
R510 、R520 で表されるシクロアルキル基としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
【0314】
R510 、R520 で表されるアリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、さらにはフェニル基、トリル基等の置換基を有するものであってもよい。具体的には、フェニル基、(o−,m−,p−)トリル基、ピレニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、フェニルアントリル基、トリルアントリル基等が挙げられる。
【0315】
R510 、R520 で表されるアルケニル基としては、総炭素数6〜50のものが好ましく、無置換のものでも置換基を有するものであってもよいが、置換基を有することが好ましい。このときの置換基としては、フェニル基等のアリール基が好ましい。具体的には、トリフェニルビニル基、トリトリルビニル基、トリビフェニルビニル基等が挙げられる。
【0316】
R510 、R520 で表されるアルコキシ基としては、アルキル基部分の炭素数が1〜6のものが好ましく、具体的にはメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。アルコキシ基は、さらに置換されていてもよい。
【0317】
R510 、R520 で表されるアリーロキシ基としては、フェノキシ基等が挙げられる。
【0318】
R510 、R520 で表されるアミノ基は、無置換でも置換基を有するものであってもよいが、置換基を有することが好ましく、この場合の置換基としてはアルキル基(メチル基、エチル基等)、アリール基(フェニル基等)などが挙げられる。具体的にはジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジ(m−トリル)アミノ基等が挙げられる。
【0319】
R510 、R520 で表される複素環基としては、ビピリジル基、ピリミジル基、キノリル基、ピリジル基、チエニル基、フリル基、オキサジアゾイル基等が挙げられる。これらは、メチル基、フェニル基等の置換基を有していてもよい。
【0320】
式(5)において、r510およびr520は、各々、0または1〜5の整数を表し、特に0または1であることが好ましい。r510およびr520が、各々、1〜5の整数、特に1または2であるとき、R510 およびR520 は、各々、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基であることが好ましい。
【0321】
式(5)において、R510 とR520 とは同一でも異なるものであってもよい。R510 とR520 とが各々複数存在するとき、R510 同士、R520 同士は各々同一でも異なるものであってもよく、R510 同士あるいはR520 同士は結合してベンゼン環等の環を形成していてもよい。
【0322】
式(5)において、L5 は単結合またはアリーレン基を表す。L5 で表されるアリーレン基としては、無置換であることが好ましく、具体的にはフェニレン基、ビフェニレン基、アントリレン基等の通常のアリーレン基の他、2個ないしそれ以上のアリーレン基が直接連結したものが挙げられる。L5 としては、単結合、p−フェニレン基、4,4′−ビフェニレン基等が好ましい。
【0323】
また、L5 で表されるアリーレン基は、2個ないしそれ以上のアリーレン基がアルキレン基、−O−、−S−または−NR−が介在して連結するものであってもよい。ここで、Rはアルキル基またはアリール基を表す。アルキル基としてはメチル基、エチル基等が挙げられ、アリール基としてはフェニル基等が挙げられる。中でも、アリール基が好ましく、上記のフェニル基のほか、A41 、A42 であってもよく、さらにはフェニル基にA41 またはA42 が置換したものであってもよい。また、アルキレン基としてはメチレン基、エチレン基等がこの好ましい。
【0324】
このようなアリーレン基の具体例を以下に示す。
【0325】
【化103】
【0326】
次に、式(6)について説明すると、式(6)において、R610 およびR620 は式(5)におけるR510 およびR520 と、またr610およびr620は式(5)におけるr510およびr520と、さらにL6 は式(5)におけるL5 とそれぞれ同義であり、好ましいものも同様である。
【0327】
式(6)において、R610 とR620 とは同一でも異なるものであってもよい。R610 とR620 とが各々複数存在するとき、R610 同士、R620 同士は各々同一でも異なるものであってもよく、R610 同士あるいはR620 同士は結合してベンゼン環等の環を形成していてもよい。
【0328】
式(4)で表される化合物を以下に例示するが、これらに限定されるものではない。なお、化104、化106、化108、化110、化112、化114、化116では一般式を示し、化105、化107、化109、化111、化113、化115、化117〜118で、各々対応する具体例をR511〜R515、R521〜R525あるいはR611〜R615、R621〜R625の組合せで示している。
【0329】
【化104】
【0330】
【化105】
【0331】
【化106】
【0332】
【化107】
【0333】
【化108】
【0334】
【化109】
【0335】
【化110】
【0336】
【化111】
【0337】
【化112】
【0338】
【化113】
【0339】
【化114】
【0340】
【化115】
【0341】
【化116】
【0342】
【化117】
【0343】
【化118】
【0344】
【化119】
【0345】
【化120】
【0346】
【化121】
【0347】
【化122】
【0348】
上記のフェニルアントラセン誘導体は、
(1)ハロゲン化ジフェニルアントラセン化合物を、Ni(cod)2 〔cod:1,5−シクロオクタジエン〕でカップリング、もしくはジハロゲン化アリールをグリニャール化し、NiCl2 (dppe)[dppe:ジフェニルフォスフィノエタン]、NiCl2 (dppp)〔dppp:ジフェニルフォスフィノプロパン〕等のNi錯体などを用いてクロスカップリングする方法、
(2)アントラキノン、ベンゾキノン、フェニルアンスロンもしくはビアントロンとグリニャール化したアリールもしくはリチオ化したアリールとの反応および還元によりクロスカップリングする方法、
等により合成できる。
【0349】
また、発光層蛍光物質として好ましいテトラアリールエテン誘導体は、下記の一般式(7)で表される化合物である。
【0350】
【化123】
【0351】
一般式(7)において、Ar71 、Ar72 およびAr73 は、各々芳香族残基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。Ar71 〜Ar73 で表される芳香族残基としては、芳香族炭化水素基(アリール基)、芳香族複素環基が挙げられる。
【0352】
芳香族炭化水素基としては、単環もしくは多環の芳香族炭化水素基であってよく、縮合環や環集合も含まれる。芳香族炭化水素基は、総炭素数が6〜30のものが好ましく、置換基を有するものであってもよい。置換基を有する場合の置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基等が挙げられる。この置換基については後述する。芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アリールフェニル基、アリーロキシフェニル基、アミノフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、ペリレニル基等が挙げられる。
【0353】
また、芳香族複素環基としては、ヘテロ原子としてO、N、Sを含むものが好ましく、5員環であっても6員環であってもよい。具体的には、チエニル基、フリル基、ピローリル基、ピリジル基等が挙げられる。
【0354】
Ar71 〜Ar73 で表される芳香族残基としては、特にフェニル基が好ましい。
【0355】
n7は2〜6の整数であり、特に2〜4の整数であることが好ましい。
【0356】
L7はn価の芳香族残基を表すが、特に芳香族炭化水素、芳香族複素環、芳香族エーテル(芳香族チオエーテルを含む。)または芳香族アミンから誘導される2〜6価、特に2〜4価の残基であることが好ましい。これらの芳香族残基は、さらに置換基を有するものであってもよい。
【0357】
なお、この中で、発光材料とするとき、L7は、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、イミノ基(−NRO −:RO はアリール基)、複素環ジイル基、アルケニレン基およびアルキレン基のうちの1種以上が介在したアリーレン基、炭素数が21以上、好ましくは21〜100、さらに好ましくは24〜50のアリーレン基、芳香族炭化水素の3〜6価の残基または芳香族複素環、芳香族エーテルもしくは芳香族アミンの2〜6価の残基であるものが好ましい。
【0358】
化123の中でも化124で示されるテトラアリールエテン誘導体が好ましい。
【0359】
【化124】
【0360】
化124について説明すると、R701 、R702 およびR703 は、各々、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基またはアミノ基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。
【0361】
R701 〜R703 で表されるアルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、直鎖状であっても分岐を有するものであってもよく、さらには置換基を有するものであってもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0362】
R701 〜R703 で表されるアリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、置換基を有するものであってもよく、例えばフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
【0363】
R701 〜R703 で表されるアルコキシ基としては、アルコキシ基のアルキル基部分の炭素数が1〜6のものが好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0364】
R701 〜R703 で表されるアリーロキシ基としては、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−(t−ブチル)フェノキシ基等が挙げられる。
【0365】
R701 〜R703 で表されるアミノ基としては、置換基を有するものが好ましく、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(ビフェニル)アミノ基等が挙げられる。
【0366】
s、tおよびuは、各々、0または1〜5の整数であり、s、t、uが2以上の整数であるとき、R701 同士、R702 同士、R703 同士は、各々同一でも異なるものであってもよい。
【0367】
化124において、s、tおよびuは、各々、0または1であることが好ましく、特に0であること、すなわち無置換のフェニル基であることが好ましい。
【0368】
L71 は、アリーレン基、アレーントリイル基、アレーンテトライル基、複素環ジイル基、複素環トリイル基、複素環テトライル基、トリアリールアミンもしくはその多量体のジイル基、トリアリールアミンもしくはその多量体のトリイル基、トリアリールアミンもしくはその多量体のテトライル基、アリール置換複素環ジイル基、アリール置換複素環トリイル基またはアリール置換複素環テトライル基を表す。これらはさらに置換されていてもよい。L71 で表されるアリーレン基、アレーントリイル基、アレーンテトライル基は、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、イミノ基(−NRO −:RO はフェニル基等のアリール基)、複素環ジイル基、アルケニル基およびアルキレン基のうちの1種以上が介在していてもよい。
【0369】
このようなアリーレン基、アレーントリイル基、アレーンテトライル基は、総炭素数が6以上、さらには21以上、特に21〜100、さらに特には24〜50であることが好ましい。L71 で表されるアリーレン基として、具体的にはフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、ジフェニルエーテルジイル基、ジフェニルチオエーテルジイル基、ジフェニルメチルジイル基、ジフェニルオキサジアゾールジイル基、テルフェニレン基等が挙げられる。アレーントリイル基としては、ベンゼントリイル基、クアテルフェニルトリイル基等が挙げられる。アレーンテトライル基としては、テトラフェニルエテンテトライル基等が挙げられる。このような基にはフェニルエチリル基等が置換されていてもよい。
【0370】
L71 で表される複素環ジイル基としては、チオフェンジイル基、フランジイル基、ピリジンジイル基、ビチオフェンジイル基、ビフランジイル基、ビピリジンジイル基、ピラジンジイル基、ピロールジイル基、ビピロールジイル基、キノリンジイル基、オキサジアゾールジイル基、キノキサリンジイル基、ジフェニルキノキサリンジイル基等が挙げられる。複素環トリイル基としてはイソキノリントリイル基等が挙げられ、複素環テトライル基としては、キノキサリンテトライル基等が挙げられる。これらの基は、さらにメトキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0371】
L71 で表されるトリアリールアミンまたはその多量体のジイル基としては、トリフェニルアミンジイル基等が挙げられ、トリアリールアミンまたはその多量体のトリイル基としては、トリフェニルアミントリイル基等が挙げられる。また、トリアリールアミンまたはその多量体のテトライル基としては、N,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノ−1,1’−ビフェニルテトライル基等が挙げられる。なお、トリアリールアミンの多量体は通常2〜4量体程度のものである。
【0372】
L71 で表されるアリール置換複素環ジイル基としては、ジフェニルオキサジアゾールジイル基等が挙げられ、アリール置換複素環トリイル基としては、ジフェニルオキサジアゾールトリイル基、ジフェニルキノキサリントリイル基等が挙げられ、アリール置換複素環テトライル基としては、ジフェニルキノキサリンテトライル基等が挙げられる。
【0373】
L71 の好適例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0374】
【化125】
【0375】
【化126】
【0376】
【化127】
【0377】
【化128】
【0378】
【化129】
【0379】
【化130】
【0380】
化124において、n71はL71 の価数によるが、2〜4の整数であり、好ましくは2または3、特に2であることが好ましい。
【0381】
なお、正孔注入輸送性化合物として用いるときのL71 としては、複素環ジイル基、複素環トリイル基、複素環テトライル基、トリアリールアミン誘導体ジイル基、トリアリールアミン誘導体トリイル基、トリアリールアミン誘導体テトライル基またはイミノ基(−NRO −:RO はアリール基)が介在してもよいアリーレン基、アレーントリイル基またはアレーンテトライル基であることが好ましい。
【0382】
また、電子注入輸送性化合物として用いるときのL71 としては、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、複素環ジイル基およびアルキレン基のうちの1種以上が介在していてもよいアリーレン基、アレーントリイル基もしくはアレーンテトライル基、複素環ジイル基、複素環トリイル基、複素環テトライル基、アリール置換複素環ジイル基、アリール置換複素環トリイル基またはアリール置換複素環テトライル基であることが好ましい。
【0383】
また、発光材料として用いるときのL71 としては、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、イミノ基(−NRO −:RO はアリール基)、複素環ジイル基、アルケニレン基およびアルキレン基のうちの1種以上が介在したアリーレン基、炭素数が21以上、さらに好ましくは21〜100、特に好ましくは24〜50のアリーレン基、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、イミノ基(−NRO −:RO はアリール基)、複素環ジイル基、アルケニレン基およびアルキレン基のうちの1種以上が介在してもよいアレーントリイル基もしくはアレーンテトライル基、複素環ジイル基、複素環トリイル基、複素環テトライル基、トリアリールアミンもしくはその多量体のジイル基、トリアリールアミンもしくはその多量体のトリイル基、トリアリールアミンもしくはその多量体のテトライル基、アリール置換複素環ジイル基、アリール置換複素環トリイル基またはアリール置換複素環テトライル基であるものが好ましい。
【0384】
このようなテトラアリールエテン誘導体の好適例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。なお、化131は一般式であり、化132〜化139では化131の表示を用いて示している。R711〜R715、R721〜R725、R731〜R735については、すべて水素のときはHとし、いずれかが置換基のときは置換基のみを示すものとする。なお、併せて、化合物の属性を記す。正孔注入輸送性化合物のときはh、電子注入輸送性化合物のときはeとし、特に示さないものは弱い電子輸送性もしくはニュートラル(バイポール)とする。この中の化合物のうち、青色発光材料とできるのは化合物No.1〜4、14、21、23〜26、32、42、43、47〜59等である。
【0385】
【化131】
【0386】
【化132】
【0387】
【化133】
【0388】
【化134】
【0389】
【化135】
【0390】
【化136】
【0391】
【化137】
【0392】
【化138】
【0393】
【化139】
【0394】
【化140】
【0395】
【化141】
【0396】
上記のテトラアリールエテン誘導体は、
(1)ハロゲン化トリフェニルエテン化合物等の芳香族残基三置換ハロゲン化エーテルをグリニャール化し、NiCl2(dppp)〔dppp:ジフェニルフォスフィノプロパン〕等のNi錯体などを用いて、ジハロゲン化アリール誘導体等のジ、トリ、テトラ、ペンタもしくはヘキサハロゲン化芳香族化合物とクロスカップリングする方法、
(2)ジハロゲン化アリール誘導体等のジ、トリ、テトラ、ペンタもしくはヘキサハロゲン化芳香族化合物をグリニャール化し、NiCl2(dppp)等のNi錯体などを用いてハロゲン化トリフェニルエテン誘導体等の芳香族残基三置換ハロゲン化エテンとクロスカップリングする方法、
等により合成できる。
【0397】
<ナフタセン誘導体>
本発明の有機EL素子では、発光層蛍光物質として、特に、ルブレン等のナフタセン誘導体を用いることが好ましい。ナフタセン誘導体等の縮合環芳香族炭化水素化合物としては、特開平8−311442号公報、PCT−JP−02869号明細書、特願平10−137505号公報等に記載の化合物が挙げられる。ナフタセン誘導体はバイポーラな輸送性を有しており、これをドープすると、バイポーラに安定なナフタセン誘導体でもキャリア再結合が起こるので、その分さらにホスト有機化合物が受けるダメージは少なくなる。また、ナフタセン誘導体がキャリア再結合領域近傍に存在するため、ホストの励起子からナフタセン誘導体へのエネルギー移動が起こり、非放射的失活が少なくなり、その結果、安定した高効率の発光が得られ、かつ、素子の寿命が大幅に向上する。
【0398】
ルブレン等のナフタセン誘導体は、下記式(8)で表される基本骨格を有する化合物である。
【0399】
【化142】
【0400】
式(8)において、Ra、Rb、RcおよびRdはそれぞれ非置換、または置換基を有するアルキル基、アリール基、アミノ基、複素環基およびアルケニル基のいずれかを表し、アリール基、アミノ基、複素環基およびアルケニル基のいずれかであることが好ましい。
【0401】
Ra、Rb、RcおよびRdで表されるアリール基としては、単環もしくは多環のものであってよく、縮合環や環集合も含まれる。総炭素数は、6〜30のものが好ましく、置換基を有していてもよい。
【0402】
Ra、Rb、RcおよびRdで表されるアリール基としては、好ましくはフェニル基、(o−,m−,p−)トリル基、ピレニル基、ペリレニル基、コロネニル基、(1−,2−)ナフチル基、アントリル基、(o−,m−,p−)ビフェニリル基、ターフェニル基、フェナントリル基等である。
【0403】
Ra、Rb、RcおよびRdで表されるアミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基等いずれでもよい。これらは、総炭素数1〜6の脂肪族、および/または1〜4環の芳香族炭素環を有することが好ましい。具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビスジフェニリルアミノ基、ビスナフチルアミノ基等が挙げられる。
【0404】
Ra、Rb、RcおよびRdで表される複素環基としては、ヘテロ原子としてO,N,Sを含有する5員または6員環の芳香族複素環基、および炭素数2〜20の縮合多環芳香複素環基等が挙げられる。芳香族複素環基および縮合多環芳香複素環基としては、例えばチエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、キノキサリル基等が挙げられる。
【0405】
Ra、Rb、RcおよびRdで表されるアルケニル基としては、少なくとも置換基の1つにフェニル基を有する(1−、および2−)フェニルアルケニル基、(1,2−、および2,2−)ジフェニルアルケニル基、(1,2,2−)トリフェニルアルケニル基等が好ましいが、非置換のものであってもよい。
【0406】
Ra、Rb、RcおよびRdが置換基を有する場合、これらの置換基のうちの少なくとも2つがアリール基、アミノ基、複素環基、アルケニル基およびアリーロキシ基のいずれかであることが好ましい。アリール基、アミノ基、複素環基およびアルケニル基については上記Ra、Rb、RcおよびRdと同様である。
【0407】
Ra、Rb、RcおよびRdの置換基となるアリーロキシ基としては、総炭素数6〜18のアリール基を有するものが好ましく、具体的には(o−,m−,p−)フェノキシ基等が挙げられる。
【0408】
これら置換基の2種以上が縮合環を形成していてもよい。また、さらに置換されていてもよく、その場合の好ましい置換基としては上記と同様である。
【0409】
Ra、Rb、RcおよびRdが置換基を有する場合、少なくともその2種以上が上記置換基を有することが好ましい。その置換位置としては特に限定されるものではなく、メタ、パラ、オルト位のいずれでもよい。また、RaとRd、RbとRcはそれぞれ同じものであることが好ましいが、異なっていてもよい。
【0410】
Re、Rf、RgおよびRhは、それぞれ水素または置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、アミノ基およびアルケニル基のいずれかを表す。
【0411】
Re、Rf、RgおよびRhで表されるアルキル基としては、炭素数が1〜6のものが好ましく、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。アルキル基の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、(n,i)−プロピル基、(n,i,sec,tert)−ブチル基、(n,i,neo,tert)−ペンチル基等が挙げられる。
【0412】
Re、Rf、RgおよびRhで表されるアリール基、アミノ基、アルケニル基としては、上記Ra、Rb、RcおよびRdの場合と同様である。また、ReとRf、RgとRhは、それぞれ同じものであることが好ましいが、異なっていてもよい。
【0413】
ただし、これらのうち、Ra、Rb、RcおよびRdがフェニル基であって、Re、Rf、RgおよびRhが水素であるものは含まれない。
【0414】
また、本発明で用いるナフタセン誘導体は、下記の式(9)で表される基本骨格を有するルブレン誘導体が好ましい。
【0415】
【化143】
【0416】
上記式(9)中、Ra1〜Ra3、Rb1〜Rb3、Rc1〜Rc3およびRd1〜Rd3は水素、アリール基、アミノ基、複素環基、アリーロキシ基およびアルケニル基のいずれかである。また、これらのうちの少なくとも1群中にはアリール基、アミノ基、複素環基およびアリーロキシ基のいずれかを置換基として有することが好ましい。これらの2種以上が縮合環を形成していてもよい。あるいは、これらの全てが水素である場合にはRe,Rf,RgおよびRhのいずれかにはアルキル基、またはアリール基を有することが好ましい。
【0417】
アリール基、アミノ基、複素環基およびアリーロキシ基の好ましい態様としては上記Ra、Rb、RcおよびRdと同様である。また、Ra1〜Ra3とRd1〜Rd3、Rb1〜Rb3とRc1〜Rc3は、それぞれ同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。
【0418】
Ra1〜Ra3、Rb1〜Rb3、Rc1〜Rc3およびRd1〜Rd3の置換基となるアミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基等いずれでもよい。これらは、総炭素数1〜6の脂肪族、および/または1〜4環の芳香族炭素環を有することが好ましい。具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビスビフェニリルアミノ基等が挙げられる。
【0419】
形成される縮合環としては、例えばインデン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、キノクサリン、フェナジン、アクリジン、インドール、カルバゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、ベンゾチアゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、アクリドン、ベンズイミダゾール、クマリン、フラボン等を挙げることができる。
【0420】
特に好適なルブレン等のナフタセン誘導体を以下に示す。なお、化144〜化147では化142、式(8)のRa〜Rhの表示を用いて示している。
【0421】
【化144】
【0422】
【化145】
【0423】
【化146】
【0424】
【化147】
【0425】
これらの中でも、No.2、3、4、11、12、15、20、24、27、44のナフタセン誘導体が好ましい。
【0426】
ナフタセン誘導体は、特開平8−311442号公報、PCT−JP−02869号明細書、特願平10−137505号公報等に従って合成すればよい。
【0427】
前述したように、蛍光性物質は、それ自体で発光が可能なホスト物質と組み合わせて使用することが好ましく、ドーパントとしての使用が好ましい。このような場合の発光層における蛍光性物質の含有量は0.01〜50wt% 、さらには0.01〜20wt% であることが好ましい。なお、本発明で用いる上記のテトラアリールフェニレンジアミン誘導体および上記のポリチオフェン、チオフェン誘導体は、それ自体で発光が可能なホスト物質として機能する。
【0428】
<電子注入輸送層>
電子注入輸送層は、陰極からの電子の注入を容易にする機能、電子を輸送する機能および正孔を妨げる機能を有するものである。電子注入輸送層は、発光層へ注入される電子を増大・閉じ込めさせ、再結合領域を最適化させ、発光効率を改善する。電子注入輸送層は、発光層に用いる化合物の電子注入、電子輸送の各機能の高さを考慮し、必要に応じて設けられる。発光層に用いる化合物の電子注入輸送機能が高い場合には、電子注入輸送層を設けずに、発光層が電子注入輸送層を兼ねる構成とすることができる。また、電子注入輸送層は、注入機能を持つ層と輸送機能を持つ層とに別個に設けてもよい。
【0429】
電子注入輸送層には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(AlQ3)等の8−キノリノールないしその誘導体を配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等を用いることができる。特にトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(AlQ3)等を使用することが好ましい。
【0430】
電子注入輸送層を電子注入層と電子輸送層とに分けて設層する場合は、電子注入輸送層用の化合物の中から好ましい組合せを選択して用いることができる。このとき、陰極側から電子親和力の大きい化合物の順に積層することが好ましく、陰極に接して電子注入層、発光層に接して電子輸送層を設けることが好ましい。電子親和力と積層順との関係については、電子注入輸送層を2層以上設けるときも同様である。
【0431】
<発光層、電子注入輸送層の膜厚>
発光層の厚さおよび電子注入輸送層の厚さは特に限定されず、再結合領域・発光領域の設計や形成方法によっても異なるが、通常、5〜1000nm程度、特に10〜200nmとすることが好ましい。
【0432】
電子注入輸送層の厚さは、再結合・発光領域の設計にもよるが、発光層の厚さと同程度もしくは1/10〜10倍程度とすればよい。電子の注入層と輸送層とを分ける場合は、注入層は1nm以上、輸送層は20nm以上とするのが好ましい。このときの注入層、輸送層の厚さの上限は、通常、注入層で100nm程度、輸送層で1000nm程度である。このような膜厚については、注入輸送層を2層設けるときも同じである。
【0433】
また、組み合わせる発光層や電子注入輸送層のキャリア移動度やキャリア密度(イオン化ポテンシャル・電子親和力により決まる)を考慮し、膜厚をコントロールすることで、再結合領域・発光領域を自由に設計することができ、発光色の設計や、両電極の干渉効果による発光輝度・発光スペクトルの制御や、発光の空間分布の制御を可能にできる。
【0434】
<陰極>
本発明において、陰極には、仕事関数の小さい材料、例えば、Li、Na、K、Mg、Al、Ag、In、あるいは、これらの1種以上を含む合金を用いることが好ましい。特に、これらの酸化物、ハロゲン化物を界面に数nm以下積層し、Al等の配線電極を用いることが好ましい。特に好ましい材料としては、酸化リチウム、フッ化リチウム、フッ化カリウム、酸化カルシウム、塩化ナトリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の化合物が好ましい。また、陰極は、結晶粒が細かいことが好ましく、特にアモルファス状態であることが好ましい。陰極の厚さは10〜1000nm程度とすることが好ましい。
【0435】
また、陰極界面の有機物層にLi等の金属をドープしてもよい。
【0436】
また、電極形成の最後にAlや、フッ素系化合物を蒸着・スパッタすることで封止効果が向上する。
【0437】
<陽極>
有機EL素子を面発光させるためには、少なくとも一方の電極が透明ないし半透明である必要があり、上記のように陰極の材料には制限があるので、好ましくは発光光の透過率が80%以上となるように陽極の材料および厚さを決定することが好ましい。具体的には、例えば、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、IZO(亜鉛ドープ酸化インジウム)、SnO2 、Ni、Au、Pt、Pd、ドーパントをドープしたポリピロールなどを陽極に用いることが好ましく、特にITO、IZOが好ましい。ITOは、通常In2 O3 とSnOとを化学量論組成で含有するが、酸素量は多少これから偏倚していてもよい。IZOは、通常In2 O3 とZnO2 とを化学量論組成で含有するが、酸素量は多少これから偏倚していてもよい。In2 O3 に対するSnO2 の混合比は、1〜20wt%、さらには5〜12wt%が好ましい。また、IZOでのIn2 O3 に対するZnO2 の混合比は、通常、12〜32wt%程度である。また、陽極の厚さは10〜500nm程度とすることが好ましい。また、素子の信頼性を向上させるために駆動電圧が低いことが必要であるが、好ましいものとして10〜30Ω/□または10Ω/□以下(通常0.1〜10Ω/□)のITOが挙げられる。
【0438】
また、ディスプレイのような大きいデバイスにおいては、ITOの抵抗が大きくなるのでAl配線をしてもよい。
【0439】
<基板材料>
基板材料に特に制限はないが、図示例では基板側から発光光を取り出すため、ガラスや樹脂等の透明ないし半透明材料を用いる。また、基板にカラーフィルター膜や蛍光性物質を含む蛍光変換フィルター膜、あるいは誘電体反射膜を用いたり、基板自身に着色したりして発光色をコントロールしてもよい。
【0440】
なお、基板に不透明な材料を用いる場合には、図1に示される積層順序を逆にしてもよい。
【0441】
カラーフィルター膜には、液晶ディスプレイ等で用いられているカラーフィルターを用いればよいが、有機EL素子の発光する光に合わせてカラーフィルターの特性を調整し、取り出し効率・色純度を最適化すればよい。
【0442】
また、EL素子材料や蛍光変換層が光吸収するような短波長の外光をカットできるカラーフィルターを用いれば、素子の耐光性・表示のコントラストも向上する。
【0443】
また、誘電体多層膜のような光学薄膜を用いてカラーフィルターの代わりにしてもよい。
【0444】
蛍光変換フィルター膜は、EL発光の光を吸収し、蛍光変換膜中の蛍光体から光を放出させることで、発光色の色変換を行うものであるが、組成としては、バインダー、蛍光材料、光吸収材料の三つから形成される。
【0445】
蛍光材料は、基本的には蛍光量子収率が高いものを用いればよく、EL発光波長域に吸収が強いことが好ましい。実際には、レーザー色素などが適しており、ローダミン系化合物・ペリレン系化合物・シアニン系化合物・フタロシアニン系化合物(サブフタロシアニン等も含む)・ナフタロイミド系化合物・縮合環炭化水素系化合物・縮合複素環系化合物・スチリル系化合物・クマリン系化合物等を用いればよい。
【0446】
バインダーは基本的に蛍光を消光しないような材料を選べばよく、フォトリソグラフィー・印刷等で微細なパターニングができるようなものが好ましい。また、ITOの成膜時にダメージを受けないような材料が好ましい。
【0447】
光吸収材料は、蛍光材料の光吸収が足りない場合に用いるが、必要のない場合は用いなくてもよい。光吸収材料は、蛍光性材料の蛍光を消光しないような材料を選べばよい。
【0448】
<有機EL素子の製造方法>
次に、本発明の有機EL素子の製造方法を説明する。
【0449】
陽極は、蒸着法やスパッタ法等の気相成長法により形成することが好ましい。
【0450】
陰極は、蒸着法やスパッタ法で形成することが可能であるが、有機層上に成膜する点を考慮すると、有機層へのダメージの少ない蒸着法が好ましい。
【0451】
発光層および電子注入輸送層の形成には、均質な薄膜が形成できることから真空蒸着法を用いることが好ましい。真空蒸着法を用いた場合、アモルファス状態または結晶粒径が0.1μm 以下(通常、下限値は0.001μm 程度である。)の均質な薄膜が得られる。結晶粒径が0.1μm を超えていると、不均一な発光となり、素子の駆動電圧を高くしなければならなくなり、電荷の注入効率も著しく低下する。
【0452】
真空蒸着の条件は特に限定されないが、10-3Pa以下の真空度とし、蒸着速度は0.1〜1nm/sec 程度とすることが好ましい。また、真空中で連続して各層を形成することが好ましい。真空中で連続して形成すれば、各層の界面に不純物が吸着することを防げるため、高特性が得られる。また、素子の駆動電圧を低くしたり、ダークスポットの発生・成長を抑えたりすることができる。
【0453】
これら各層の形成に真空蒸着法を用いる場合において、混合層等、1層に複数の化合物を含有させる場合、化合物を入れた各ボートを個別に温度制御して異なる蒸着源より蒸発させる共蒸着が好ましいが、蒸気圧(蒸発温度)が同程度あるいは非常に近い場合には、予め同じ蒸着ボード内で混合させておき、蒸着することもできる。
【0454】
また、この他、溶液塗布法(スピンコート、ディップ、キャスト等)、ラングミュア・ブロジェット(LB)法などを用いることもできる。溶液塗布法では、ポリマー等のマトリックス物質(樹脂バインダー)中に各化合物を分散させる構成としてもよい。
【0455】
本発明の有機EL素子は、通常、直流駆動型のEL素子として用いられるが、交流駆動またはパルス駆動することもできる。印加電圧は、通常、2〜10V 程度と従来のものよりも低い。
【0456】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0457】
<実施例1>
ガラス基板上に、ITO透明電極(陽極)をスパッタ法にて100nm成膜した。
【0458】
そして、ITO透明電極を成膜したガラス基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄した。その基板を煮沸エタノール中から引き上げて乾燥し、UV/O3 洗浄した後、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定して、真空槽を1×10-4Pa以下まで減圧した。
【0459】
まず、上記のN,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM34)と、発光中心として下記のルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で100nmの厚さに蒸着し、発光層とした。
【0460】
【化148】
【0461】
次いで、下記のトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(AlQ3)を蒸着速度0.2nm/secで20nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0462】
【化149】
【0463】
さらに、減圧を保ったまま、Li2Oを蒸着速度0.05nm/sec で、0.5nmの厚さに蒸着して陰極とした。
【0464】
そして、配線電極兼保護層としてAlを200nm蒸着し、有機EL素子を得た。
【0465】
この有機EL素子に、直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で駆動させたところ、駆動電圧は4.03V、輝度は405cd/m2であった。発光色は黄橙色であった。さらに、この素子を50mA/cm2 の定電流密度で連続駆動させたところ、初期の輝度は1800cd/m2、駆動電圧は5.8Vであり、500時間後には輝度は1500cd/m2、駆動電圧は8.2Vとなった。
【0466】
<実施例2>
実施例1と同様に、ガラス基板上にITO透明電極(陽極)を成膜し、真空蒸着装置にセットした。
【0467】
まず、上記のN,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM34)と、発光中心となる上記のルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で80nmの厚さに共蒸着し、第一の発光層とした。
【0468】
次いで、N,N,N’,N’−テトラキス(3−ビフェニリル)ベンジジン(化合物No.I−1)と、発光中心となるルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で20nmの厚さに共蒸着し、第二の発光層とした。
【0469】
次いで、AlQ3を蒸着速度0.2nm/secで20nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0470】
そして、実施例1と同様に、Li2O、Alを蒸着し、有機EL素子を得た。
【0471】
この有機EL素子に、直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で駆動させたところ、駆動電圧は4.4V、輝度は617cd/m2であった。発光色は黄橙色であった。さらに、この素子を50mA/cm2 の定電流密度で連続駆動させたところ、初期の輝度は3320cd/m2、駆動電圧は5.95Vであり、500時間後には輝度は2710cd/m2、駆動電圧は9.4Vとなった。
【0472】
<実施例3>
実施例1と同様に、ガラス基板上にITO透明電極(陽極)を成膜し、真空蒸着装置にセットした。
【0473】
まず、上記のN,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-1-ナフチル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM38)と、発光中心となるルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で80nmの厚さに共蒸着し、第一の発光層とした。
【0474】
次いで、N,N,N’,N’−テトラキス(3−ビフェニリル)ベンジジン(化合物No.I−1)と、発光中心となるルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で20nmの厚さに共蒸着し、第二の発光層とした。
【0475】
次いで、AlQ3を蒸着速度0.2nm/secで35nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0476】
そして、実施例1と同様に、Li2O、Alを蒸着し、有機EL素子を得た。
【0477】
この有機EL素子に、直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で駆動させたところ、駆動電圧は5.4V、輝度は760cd/m2であった。発光色は黄橙色であった。さらに、この素子を50mA/cm2 の定電流密度で連続駆動させたところ、初期の輝度は3250cd/m2、駆動電圧は6.43Vであり、500時間後には輝度は2340cd/m2、駆動電圧は8.7Vとなった。
【0478】
<実施例4>
実施例1と同様に、ガラス基板上にITO透明電極(陽極)を成膜し、真空蒸着装置にセットした。
【0479】
まず、上記のN,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM34)と、発光中心となるルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で80nmの厚さに共蒸着し、第一の発光層とした。
【0480】
次いで、N,N,N’,N’−テトラキス(3−ビフェニリル)ベンジジン(化合物No.I−1)と、発光中心となるルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で20nmの厚さに共蒸着し、第二の発光層とした。
【0481】
次いで、AlQ3を蒸着速度0.2nm/secで50nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0482】
そして、実施例1と同様に、Li2O、Alを蒸着し、有機EL素子を得た。
【0483】
この有機EL素子に、直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で駆動させたところ、駆動電圧は5.6V、輝度は857cd/m2であった。発光色は黄橙色であった。さらに、この素子を50mA/cm2 の定電流密度で連続駆動させたところ、初期の輝度は3640cd/m2、駆動電圧は7.7Vであり、1000時間後には輝度は3040cd/m2、駆動電圧は12.2Vとなった。
【0484】
<実施例5>
実施例1と同様に、ガラス基板上にITO透明電極(陽極)を成膜し、真空蒸着装置にセットした。
【0485】
まず、上記のN,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-1-ナフチル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM38)と、発光中心として下記のナフタセン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で80nmの厚さに共蒸着し、第一の発光層とした。
【0486】
【化150】
【0487】
次いで、N,N,N’,N’−テトラキス(3−ビフェニリル)ベンジジン(化合物No.I−1)と、発光中心となるナフタセン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で20nmの厚さに共蒸着し、第二の発光層とした。
【0488】
次いで、AlQ3を蒸着速度0.2nm/secで20nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0489】
そして、実施例1と同様に、Li2O、Alを蒸着し、有機EL素子を得た。
【0490】
この有機EL素子に、直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で駆動させたところ、駆動電圧は4.5V、輝度は557cd/m2であった。発光色は緑色であった。さらに、この素子を50mA/cm2 の定電流密度で連続駆動させたところ、初期の輝度は2950cd/m2、駆動電圧は5.90Vであり、500時間後には輝度は2200cd/m2、駆動電圧は8.4Vとなった。
【0491】
<実施例6>
実施例1と同様に、ガラス基板上にITO透明電極(陽極)を成膜し、真空蒸着装置にセットした。
【0492】
まず、上記のN,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM34)と、発光中心となるルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で80nmの厚さに共蒸着し、第一の発光層とした。
【0493】
次いで、N,N,N’,N’−テトラキス(3−ビフェニリル)ベンジジン(化合物No.I−1)と、発光中心となるナフタセン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で20nmの厚さに共蒸着し、第二の発光層とした。
【0494】
次いで、AlQ3を蒸着速度0.2nm/secで20nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0495】
そして、実施例1と同様に、Li2O、Alを蒸着し、有機EL素子を得た。
【0496】
この有機EL素子に、直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で駆動させたところ、駆動電圧は4.6V、輝度は580cd/m2であった。発光色は黄白色であった。さらに、この素子を50mA/cm2 の定電流密度で連続駆動させたところ、初期の輝度は3010cd/m2、駆動電圧は5.80Vであり、500時間後には輝度は2380cd/m2、駆動電圧は8.4Vとなった。
【0497】
<実施例7>
実施例1と同様に、ガラス基板上にITO透明電極(陽極)を成膜し、真空蒸着装置にセットした。
【0498】
まず、上記の重合体I−1[ポリ(チオフェン−2,4−ジイル)]と、発光中心となるルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で100nmの厚さに蒸着し、発光層とした。
【0499】
次いで、AlQ3を蒸着速度0.2nm/secで20nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0500】
そして、実施例1と同様に、Li2O、Alを蒸着し、有機EL素子を得た。
【0501】
この有機EL素子に、直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で駆動させたところ、駆動電圧は5.5V、輝度は305cd/m2であった。また、この素子は、比較例のものよりも駆動電圧の上昇、輝度の低下が小さく、実施例1〜7と同等の寿命が得られた。
【0502】
<実施例8>
実施例1と同様に、ガラス基板上にITO透明電極(陽極)を成膜し、真空蒸着装置にセットした。
【0503】
まず、上記の重合体III −1[ポリ(チオフェン−2,5−ジイル)]と、発光中心となるルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で100nmの厚さに蒸着し、発光層とした。
【0504】
次いで、AlQ3を蒸着速度0.2nm/secで20nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0505】
そして、実施例1と同様に、Li2O、Alを蒸着し、有機EL素子を得た。
【0506】
この有機EL素子に、直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で駆動させたところ、駆動電圧は4.3V、輝度は100cd/m2であった。また、この素子は、比較例のものよりも駆動電圧の上昇、輝度の低下が小さく、実施例1〜7と同等の寿命が得られた。
【0507】
<実施例9>
実施例1と同様に、ガラス基板上にITO透明電極(陽極)を成膜し、真空蒸着装置にセットした。
【0508】
まず、上記の共重合体II−1[チオフェン−2,4−ジイル−チオフェン−2,5−ジイル(1:1)共重合体]と、発光中心となるルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で100nmの厚さに蒸着し、発光層とした。
【0509】
次いで、AlQ3を蒸着速度0.2nm/secで20nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0510】
そして、実施例1と同様に、Li2O、Alを蒸着し、有機EL素子を得た。
【0511】
この有機EL素子に、直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で駆動させたところ、駆動電圧は4.5V、輝度は120cd/m2であった。また、この素子は、比較例のものよりも駆動電圧の上昇、輝度の低下が小さく、実施例1〜7と同等の寿命が得られた。
【0512】
<実施例10>
実施例1と同様に、ガラス基板上にITO透明電極(陽極)を成膜し、真空蒸着装置にセットした。
【0513】
まず、下記の化合物と、発光中心となるルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で100nmの厚さに蒸着し、発光層とした。
【0514】
【化151】
【0515】
次いで、AlQ3を蒸着速度0.2nm/secで20nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0516】
そして、実施例1と同様に、Li2O、Alを蒸着し、有機EL素子を得た。
【0517】
この有機EL素子に、直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で駆動させたところ、駆動電圧は4.5V、輝度は400cd/m2であった。また、この素子は、比較例のものよりも駆動電圧の上昇、輝度の低下が小さく、実施例1〜7と同等の寿命が得られた。
【0518】
<実施例11>
実施例1と同様に、ガラス基板上にITO透明電極(陽極)を成膜し、真空蒸着装置にセットした。
【0519】
まず、下記の化合物と、発光中心となるルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で100nmの厚さに蒸着し、発光層とした。
【0520】
【化152】
【0521】
次いで、AlQ3を蒸着速度0.2nm/secで20nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0522】
そして、実施例1と同様に、Li2O、Alを蒸着し、有機EL素子を得た。
【0523】
この有機EL素子に、直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で駆動させたところ、駆動電圧は4.5V、輝度は400cd/m2であった。また、この素子は、比較例のものよりも駆動電圧の上昇、輝度の低下が小さく、実施例1〜7と同等の寿命が得られた。
【0524】
<実施例12>
実施例1と同様に、ガラス基板上にITO透明電極(陽極)を成膜し、真空蒸着装置にセットした。
【0525】
まず、下記の化合物と、発光中心となるルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で100nmの厚さに蒸着し、発光層とした。
【0526】
【化153】
【0527】
次いで、AlQ3を蒸着速度0.2nm/secで20nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0528】
そして、実施例1と同様に、Li2O、Alを蒸着し、有機EL素子を得た。
【0529】
この有機EL素子に、直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で駆動させたところ、駆動電圧は4.8V、輝度は450cd/m2であった。また、この素子は、比較例のものよりも駆動電圧の上昇、輝度の低下が小さく、実施例1〜7と同等の寿命が得られた。
【0530】
<実施例13>
実施例1と同様に、ガラス基板上にITO透明電極(陽極)を成膜し、真空蒸着装置にセットした。
【0531】
まず、下記の化合物と、発光中心となるルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で100nmの厚さに蒸着し、発光層とした。
【0532】
【化154】
【0533】
次いで、AlQ3を蒸着速度0.2nm/secで20nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0534】
そして、実施例1と同様に、Li2O、Alを蒸着し、有機EL素子を得た。
【0535】
この有機EL素子に、直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で駆動させたところ、駆動電圧は4.7V、輝度は420cd/m2であった。また、この素子は、比較例のものよりも駆動電圧の上昇、輝度の低下が小さく、実施例1〜7と同等の寿命が得られた。
【0536】
<実施例14>
実施例1と同様に、ガラス基板上にITO透明電極(陽極)を成膜し、真空蒸着装置にセットした。
【0537】
まず、下記の化合物と、発光中心となるルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で100nmの厚さに蒸着し、発光層とした。
【0538】
【化155】
【0539】
次いで、AlQ3を蒸着速度0.2nm/secで20nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0540】
そして、実施例1と同様に、Li2O、Alを蒸着し、有機EL素子を得た。
【0541】
この有機EL素子に、直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で駆動させたところ、駆動電圧は5.0V、輝度は500cd/m2であった。また、この素子は、比較例のものよりも駆動電圧の上昇、輝度の低下が小さく、実施例1〜7と同等の寿命が得られた。
【0542】
<比較例1>
実施例1と同様に、ガラス基板上にITO透明電極(陽極)を成膜し、真空蒸着装置にセットした。
【0543】
まず、N,N,N’,N’−テトラキス(3−ビフェニリル)ベンジジン(化合物No.I−1)と、発光中心となるルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で100nmの厚さに共蒸着し、発光層とした。
【0544】
次いで、AlQ3を蒸着速度0.2nm/secで20nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0545】
そして、実施例1と同様に、Li2O、Alを蒸着し、有機EL素子を得た。
【0546】
この有機EL素子に、直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で連続駆動させたところ、初期の駆動電圧は6.8V、輝度は404cd/m2であった。そして、100時間程度で駆動電圧が12V以上になり、300時間後には絶縁破壊した。
【0547】
<比較例2>
実施例1と同様に、ガラス基板上にITO透明電極(陽極)を成膜し、真空蒸着装置にセットした。
【0548】
まず、N,N,N’,N’−テトラキス(3−ビフェニリル)ベンジジン(化合物No.I−1)を蒸着速度0.2nm/sec で50nmの厚さに蒸着し、正孔注入輸送層とした。
【0549】
次いで、AlQ3と、発光中心となるルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で70nmの厚さに共蒸着し、発光層とした。
【0550】
そして、実施例1と同様に、Li2O、Alを蒸着し、有機EL素子を得た。
【0551】
この有機EL素子に、直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で駆動させたところ、駆動電圧は9.5V、輝度は800cd/m2であった。さらに、この素子を50mA/cm2 の定電流密度で連続駆動させたところ、初期の輝度は3800cd/m2、駆動電圧は11.0Vであり、100時間後には駆動電圧が14V以上になった。そして、250時間後には駆動電圧が16Vになり、輝度が半減した。
【0552】
<比較例3>
実施例1と同様に、ガラス基板上にITO透明電極(陽極)を成膜し、真空蒸着装置にセットした。
【0553】
まず、N,N,N’,N’−テトラキス(3−ビフェニリル)ベンジジン(化合物No.I−1)と、発光中心となるルブレン誘導体とを重量比90:10、蒸着速度0.2nm/sec で70nmの厚さに共蒸着し、発光層とした。
【0554】
次いで、AlQ3を蒸着速度0.2nm/secで40nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした。
【0555】
そして、実施例1と同様に、Li2O、Alを蒸着し、有機EL素子を得た。
【0556】
この有機EL素子に、直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で駆動させたところ、駆動電圧は6.5V、輝度は835cd/m2であった。さらに、この素子を50mA/cm2 の定電流密度で連続駆動させたところ、初期の輝度は4200cd/m2、駆動電圧は7.8Vであり、150時間後には駆動電圧が12V以上になり、輝度が半減した。
【0557】
【発明の効果】
本発明によれば、駆動電圧が低く、高効率で、信頼性の高い有機EL素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機EL素子の構成例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 陽極
3 発光層
4 電子注入輸送層
5 陰極
Claims (6)
- 上記発光帯と上記陰極との間に、電子注入輸送帯を有する請求項1の有機EL素子。
- 上記発光帯が上記蛍光性物質を2種類以上含有する請求項1または2の有機EL素子。
- 上記発光帯が、発光波長の異なる2層以上から構成されるか、発光波長の異なる領域を有する請求項1〜3のいずれかの有機EL素子。
- 上記発光帯が、上記陽極側に上記式で表されるいずれかの骨格を有する化合物を含有し、上記陰極側に下記式(3)で表されるテトラアリールベンジジン誘導体を含有する請求項1〜4のいずれかの有機EL素子。
R101、R102、R103およびR104のうちの少なくとも1個はアリール基であり、
r101、r102、r103およびr104は、それぞれ0または1〜5の整数であり、
r101、r102、r103およびr104の和は1以上の整数であり、
少なくとも1個のアリール基がR101〜R104として存在し、
R105およびR106は、それぞれアルキル基、アルコキシ基、アミノ基またはハロゲン原子を表し、
r105およびr106は、それぞれ0または1〜4の整数である。] - 上記式で表されるいずれかの骨格を有する化合物は、HIM34、または、HIM38であり、
上記式(3)で表されるテトラアリールベンジジン誘導体のR 101 〜R 104 はアリール基であり、r 101 〜r 104 は1である請求項5の有機EL素子。
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