JP3968451B2 - 光ファイバ用母材の製造方法およびその製造装置 - Google Patents

光ファイバ用母材の製造方法およびその製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、火炎加水分解反応させて気相状態から酸化物をガラス微粒子として合成し焼結させる光ファイバ用母材の製造方法およびその製造装置に係り、特に火炎加水分解する際にガス供給装置でガス流をコア材などの出発部材の下方からチャンバーの上方に向けて吹きつけてガラス微粒子を堆積させる光ファイバ用母材の製造方法およびその製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、光ファイバ用母材を製造するために、火炎加水分解反応させて気相状態から酸化物をガラス微粒子として合成し焼結させる光ファイバ用母材の製造方法が知られている。
【0003】
この製造方法は図3(a)、(b)に示すように、外付け法によってコア用ガラス棒101の外周に多孔質ガラスを堆積するために、堆積用バーナー噴出口102およびエアカーテンガス噴出口103を各々独立して設け、多孔質ガラス母材の形成と同時にコア用ガラス棒101の全長に清浄なガス流を吹きつけながらガラス微粒子を堆積させることによりスート堆積体104から成る光ファイバ用母材を形成することができる(特開平5−116979号公報参照)。このエアカーテンガス噴出口103を堆積用バーナー噴出口102とは別個に設けることにより、(1)異物や気泡の元となる未堆積スートの塊をスート堆積体から吹き飛ばすことができる、(2)生成されたガラス微粒子の流れを大きく広がらないように押さえ込むことができるので、ガラス微粒子をスート堆積体104にきれいに導くことができる、(3)スート堆積体104を冷却し堆積用バーナー噴出口102からの火炎との温度差を拡大することにより堆積効率を上げることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような光ファイバ用母材の製造方法では、(1)エアカーテンガス噴出口103から吹きつけられるガス流110によりスート堆積体104が急速に冷却されるので、堆積中や堆積終了後に亀裂が発生しやすくなる、(2)エアカーテンガス噴出口103から吹きつけられるガス流110により堆積スートが吹き飛ばされて堆積効率が低下する、(3)堆積用バーナー噴出口102からの火炎の火力を強くしたり、図3(b)に示すようにスート堆積体104の径が太くなったりすると、エアカーテンガス噴出口103からのガス流110の強さより堆積用バーナー噴出口102からの火炎流111の強さのほうが強くなるので、ガス流110で火炎流111を抑えきれなくなるなどの難点があった。
【0005】
なお、(3)においてガス流110をさらに強くすれば(3)の難点は解消できるが、(1)(2)の影響はさらに強く出るようになる。
【0006】
本発明は、このような従来の難点を解決するためになされたもので、ガス供給装置のガス流をスート堆積体に直接吹きつけないようにコア材などの出発部材の下方からチャンバーの上方へと導くことができる光ファイバ用母材の製造方法およびその製造装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の光ファイバ用母材の製造方法は、チャンバー内で水平に保持された出発部材上に、酸水素火炎バーナーで四塩化ケイ素を火炎加水分解させて生成するガラス微粒子を堆積させることにより外層部を成膜して光ファイバ用母材を形成するにあたり、ガス供給装置でガス流を出発部材の下方からチャンバーの上方に向けて吹きつけてガラス微粒子を堆積させるOVD法による光ファイバ用母材の製造方法において、ガス供給装置のガス流を出発部材の下方から斜め上方のチャンバーの壁面に向けて吹きつけてガス供給装置のガス流によるエアカーテンをチャンバーの上方へと導くことができるものである。
【0008】
また、上記目的を達成する本発明の光ファイバ用母材の製造装置は、チャンバー内で水平に保持された出発部材上に、当該出発部材の下方に設置された酸水素火炎バーナーで四塩化ケイ素を火炎加水分解させて生成するガラス微粒子を堆積させることにより外層部を成膜して光ファイバ用母材を形成するにあたり、ガス供給装置でガス流を出発部材の下方からチャンバーの上方に向けて吹きつけてガラス微粒子を堆積させるOVD法による光ファイバ用母材の製造装置において、ガス供給装置は、ガス供給装置のガス流を出発部材の下方から斜め上方のチャンバーの壁面に向けて吹きつけてガス供給装置のガス流によるエアカーテンをチャンバーの上方へと導くように、出発部材の軸方向から見て酸水素火炎バーナーの両側にそれぞれ設置されているものである。
【0009】
このような光ファイバ用母材の製造方法およびその製造装置によれば、ガス供給装置のガス流を出発部材の下方から斜め上方のチャンバーの壁面に向けて吹きつけて当該ガス供給装置のガス流をチャンバーの上方へと導くことができるので、当該ガス供給装置のガス流が直接スート堆積体に当たらないようになる。
【0010】
また、本発明の光ファイバ用母材の製造装置においてガス供給装置は、ガス供給装置のガス流を出発部材の下方から斜め上方のチャンバーの壁面に向けて吹きつけてガス供給装 置のガス流によるエアカーテンをチャンバーの上方へと導くためのルーバを備えていることが好ましい。これにより、ガス供給装置のガス流を整流することが可能になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光ファイバ用母材の製造方法およびその製造装置を適用したその好ましい実施の形態例について、図面にしたがって説明する。
【0012】
本発明の光ファイバ用母材の製造方法が適用される好ましい実施の形態例としての製造装置は、例えば図1(a)、(b)に示すように、出発部材4に所定の外層部3をOVD法(外付け法)で堆積する装置で、光ファイバ用母材を製造するための反応炉となるチャンバー2と、チャンバー2内で出発部材4を水平に保持して回転させる回転機構5と、回転機構5によって回転している出発部材4上に、四塩化ケイ素を火炎加水分解させて生成するガラス微粒子から成る外層部3を堆積させる酸水素火炎バーナー6と、ガス流でエアカーテン70を設けるガス供給装置7と、酸水素火炎バーナー6と対向配置され当該酸水素火炎バーナー6による火炎加水分解反応で生成された排気ガスを排気する排気フード8と、排気フード8に接続される排気移動ダクト9と、排気移動ダクト9が挿嵌されチャンバー2の外側面2aに連結される排気固定ダクト10とを備えている。
【0013】
回転機構5は、チャンバー2外に設けられたモータなどの回転駆動部50によって出発部材4を回転させることができるので、チャンバー2を小型化させることが可能になっている。
【0014】
酸水素火炎バーナー6は、四塩化ケイ素、酸素ガスおよび水素ガスを所定の配分量で供給して点火することにより、酸水素火炎中で四塩化ケイ素を火炎加水分解させてガラス微粒子を生成するもので、回転機構5の出発部材4の下方に位置するチャンバー2内に配置され当該出発部材4の軸方向に往復直線運動できるようになっている。
【0015】
ガス供給装置7は、この装置で製造することが可能な光ファイバ用母材のための外層部3の最大長さに亘ってガス流のエアカーテン70を実質的に形成できるように、ガス供給装置自体を横型の長方形角型に形成させ、また、複数のガス供給部を一列に配置させるとよいが、形状、構造はこれらには限られない。また、このガス供給装置7は図1(b)に示すように、ガス流を回転機構5に取付けられた出発部材4の下方から斜め上方のチャンバー2の壁面2bに向けて吹きつけて当該ガス流をチャンバー2の上方へと導くように、チャンバー2内で回転機構5の出発部材4の軸方向から見て酸水素火炎バーナー6の両側にそれぞれ設置されている。これにより、ガス供給装置7のガス流を出発部材4の下方からチャンバー2の上方に向けて吹きつける際、ガス流による幕、即ち、エアカーテン70が直接スート堆積体に当たらないようにすることができる。
【0016】
また、ガス供給装置7は、ガス流を出発部材4の下方から斜め上方のチャンバー2の壁面2bに向けて吹きつけて当該ガス流をチャンバー2の上方へと導くためのルーバ71を備えている。これにより、ガス流を整流することが可能になる。なお、このガス供給装置7から流出させるガスは、フィルタなどで濾過した清浄なものであれば、エア(空気)の他、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの不活性ガスなどの何れでもよい。
【0017】
排気フード8は、酸水素火炎バーナー6の移動と同期して往復直線運動するもので、当該排気フード8の往復直線運動方向に実質的に平行配置されるようにチャンバー2の外側面2aに連結される排気固定ダクト10に挿嵌される排気移動ダクト9によって往復直線運動が行われる。また、排気移動ダクト9は、排気固定ダクト10内で排気フード8の往復直線運動方向に直線移動する部分が直管で構成されている。これにより、排気固定ダクト10内でスムーズに直線移動させることができる。
【0018】
このような排気移動ダクト9を排気固定ダクト10内で直線移動させる移動機構(図示せず)は、例えば排気移動ダクト9近傍に排気フード8の往復直線運動方向に対して平行なレールを設置し、排気移動ダクト9に取付けた車輪を介して排気移動ダクト9をレールに沿って移動させる方法などが考えられ、また、この排気移動ダクト9および酸水素火炎バーナー6の往復移動を同期させるために、それぞれ制御装置(図示せず)に接続されている。なお、この同期方法は、これに限らず、機械的に同期させてもよい。
【0019】
また、排気固定ダクト10と当該排気固定ダクト10に挿嵌されている排気移動ダクト9との間には、排気移動ダクト9から排気された排気ガスが排気固定ダクト10を介してチャンバー2内に戻らないように排気気密手段11が設けられている。これにより、未堆積スート(生成されたガラス微粒子)や未反応のガラス原料がチャンバー2内に浮遊してしまうことを防げる。このような排気気密手段11としては、例えばテフロン(登録商標)製円筒形シール部材を排気移動ダクト9と排気固定ダクト10との間に嵌め込むことなどが考えられる。
【0020】
なお、回転機構5の回転駆動部50はチャンバー2の外から出発部材4を回転させているが、この際、チャンバー2外からチャンバー2内に塵・埃が侵入しないように、チャンバー2の各貫通部はそれぞれエアシールされている。
【0021】
このように構成された光ファイバ用母材の製造装置1の動作について以下に説明する。
【0022】
まず、回転機構5に出発部材4をセットする。なお、出発部材4は、コア材や、コア材だけではなく薄いクラッド部を有するコア材なども含むものとする。次に、回転機構5の回転駆動部50によって出発部材4を回転し、酸水素火炎バーナー6で四塩化ケイ素を火炎加水分解させてクラッドなどのガラス微粒子から成る外層部3を生成する。この火炎加水分解により生成されたガラス微粒子を回転している出発部材4に付着、堆積させると共に、酸水素火炎バーナー6を出発部材4の軸方向に平行に往復直線運動させてガラス微粒子を出発部材4の軸方向に平均に堆積させてクラッド部となる外層部3を成膜する。これにより、クラッド部を有するスート積層体から成る光ファイバ用母材ができる。
【0023】
また、酸水素火炎バーナー6の両側に設置されている各ガス供給装置7が、それぞれガス流を回転機構5に取付けられた出発部材4の下方から斜め上方のチャンバー2の壁面2bに向けて吹きつけて当該ガス流をチャンバー2の上方へと導くことができるので、エアカーテン70が直接スート堆積体に当たらないようにすることができる。これにより、(1)各ガス供給装置7のガス流によるエアカーテン70が直接スート堆積体に当たらず、酸水素火炎バーナー6の火炎温度の急速な低下をなくすことができるので、スート積層体に亀裂が入りにくくなる、(2)酸水素火炎バーナー6からのガラス微粒子が吹き飛ばされずにスート堆積体に当たるので、堆積効率が向上する、(3)チャンバー2の壁面にガス供給装置7のガス流が吹きつけられるので、壁面へのスートの付着が少なくなり、気泡の原因となるスートの脱落が減少し掃除を容易となるなどの特有の効果を得ることができる。
【0024】
【実施例】
さらに、以下のような条件でガラス微粒子の堆積実験を行ない、実施例と比較例とを比較した。なお、実施例および比較例は共に、酸水素火炎バーナーに送り込む四塩化ケイ素、酸素ガスおよび水素ガスの各供給量、およびガス供給装置から噴出させるガス流の噴出量は同じなので、説明を省略する。
【0025】
実施例
実施例は図1に示す製造装置1を用いて堆積実験を行なった。
【0026】
比較例1
比較例1は図2(a)に示す製造装置200Aで、酸水素火炎バーナー201の火炎と共にガス供給装置202のガス流(エア)を、外層部3に直接吹きつけた。
【0027】
比較例2
比較例2は図2(b)に示す製造装置200Bで、酸水素火炎バーナー201の火炎と共にガス供給装置202のガス流(エア)を、外層部3に直接吹きつけ、さらに、チャンバー203の左右の壁面203a、203bにそれぞれ給気口204を設けて、フィルタを通過させた清浄なエアを給気した。
【0028】
比較例3
比較例3は図2(c)に示す製造装置300で、酸水素火炎バーナー301の両端にガス供給装置302を設け、各ガス供給装置302はそれぞれガス流(エア)が外層部3に直接吹きつけるようにした。
【0029】
実験の結果、実施例では、スート堆積体には亀裂は発生せず、堆積速度は5.5g/分で、チャンバー内の汚れは少なかった。これに対して比較例1では、スートの堆積中に亀裂が発生し、堆積速度は3.4g/分となり、チャンバー内の汚れは多く、また、比較例2では、スートの堆積終了後に亀裂が発生し、堆積速度は5.0g/分となり、チャンバー内の汚れは多く、さらに、比較例3では、スート堆積体には亀裂は発生せず、堆積速度は5.5g/分となったが、チャンバー内の汚れは多くなることが確認できた。
【0030】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の光ファイバ用母材の製造方法およびその製造装置によれば、ガス供給装置のガス流を出発部材の下方から斜め上方のチャンバーの壁面に向けて吹きつけて当該ガス供給装置のガス流をチャンバーの上方へと導くことができ、当該ガス供給装置のガス流が直接スート堆積体に当たらないようになるので、スートの堆積中や堆積後に堆積体に亀裂が発生せず、堆積効率が良好になり、また、チャンバー内の汚れが少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光ファイバ用母材の製造方法およびその製造装置の好ましい実施の形態例を示す説明図で、(a)は説明図、(b)は(a)の断面による側面図。
【図2】 堆積実験による比較例を示す説明図。
【図3】 従来の光ファイバ用母材の製造方法を示す説明図で、(a)はスート積層体の径が小さい場合の図、(b)はスート積層体の径が大きい場合の図。
【符号の説明】
1……光ファイバ用母材の製造装置
2……チャンバー
3……外層部
4……出発部材
6……酸水素火炎バーナー
7……ガス供給装置
71……ルーバ

Claims (3)

  1. チャンバー内で水平に保持された出発部材上に、酸水素火炎バーナーで四塩化ケイ素を火炎加水分解させて生成するガラス微粒子を堆積させることにより外層部を成膜して光ファイバ用母材を形成するにあたり、ガス供給装置でガス流を前記出発部材の下方から前記チャンバーの上方に向けて吹きつけて前記ガラス微粒子を堆積させるOVD法による光ファイバ用母材の製造方法において、
    前記ガス供給装置の前記ガス流を前記出発部材の下方から斜め上方の前記チャンバーの壁面に向けて吹きつけて前記ガス供給装置の前記ガス流によるエアカーテンを前記チャンバーの上方へと導くことを特徴とする光ファイバ用母材の製造方法。
  2. チャンバー内で水平に保持された出発部材上に、当該出発部材の下方に設置された酸水素火炎バーナーで四塩化ケイ素を火炎加水分解させて生成するガラス微粒子を堆積させることにより外層部を成膜して光ファイバ用母材を形成するにあたり、ガス供給装置でガス流を前記出発部材の下方から前記チャンバーの上方に向けて吹きつけて前記ガラス微粒子を堆積させるOVD法による光ファイバ用母材の製造装置において、
    前記ガス供給装置は、前記ガス供給装置の前記ガス流を前記出発部材の下方から斜め上方の前記チャンバーの壁面に向けて吹きつけて前記ガス供給装置の前記ガス流によるエアカーテンを前記チャンバーの上方へと導くように、前記出発部材の軸方向から見て前記酸水素火炎バーナーの両側にそれぞれ設置されていることを特徴とする光ファイバ用母材の製造装置。
  3. 前記ガス供給装置は、前記ガス供給装置の前記ガス流を前記出発部材の下方から斜め上方の前記チャンバーの壁面に向けて吹きつけて前記ガス供給装置の前記ガス流によるエアカーテンを前記チャンバーの上方へと導くためのルーバを備えていることを特徴とする請求項2記載の光ファイバ用母材の製造装置。
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