JP3874813B2 - 計量コンベヤ用フィルタ及びそのフィルタ定数算出装置 - Google Patents

計量コンベヤ用フィルタ及びそのフィルタ定数算出装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば重量選別機等に用いられる計量コンベヤのデジタル計量信号に含まれる定周期振動ノイズを減衰させる計量コンベヤ用フィルタ、及びそのフィルタ定数を算出するフィルタ定数算出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、デジタル秤(以下、秤と称す。)の計量信号に含まれている定周期振動ノイズを減衰させる方法として、特公昭63−052684号公報に示されるような方法がある。この方法は、定周期振動ノイズの減衰手段として移動平均フィルタを用い、定周期振動ノイズの略整数周期分に相当するサンプリング数をこの移動平均フィルタのフィルタ定数、即ちタップ数とするものである。即ち、この移動平均フィルタによって濾波処理された計量信号は、定周期振動ノイズの略整数周期分、例えば一周期分に相当するサンプリングデータの平均値になるため、結果的に定周期振動ノイズ成分を除去することができる。
【0003】
そして、このフィルタ定数(タップ数)を決定する方法として、特開平3−21826号公報に示されるような方法がある。この方法では、減衰の対象とする定周期振動ノイズを秤系の固有振動ノイズと定め、この固有振動ノイズの周波数fを数1によって算出し、この固有振動周波数fの逆数を固有振動ノイズ、即ち定周期振動ノイズの周期Tとし、この周期Tの略整数周期分、例えば1周期分に相当するサンプリング数をフィルタ定数としている。
【0004】
【数1】
f=(1/2π)・{g・K/(WI +WT )}1/2
ここで、WI は初期荷重(計量部分の重量)、WT は被計量物の荷重、gは重力加速度、Kはロードセルのばね定数である。
【0005】
従って、上記数1に、既知数であるWI 、WT 、g、Kの値を各々代入して固有振動周波数fを算出し、この固有振動周波数fの逆数(1/f)である周期Tの1周期分に相当するサンプリング数を求めることによって、フィルタ定数を決定することができる。そして、このフィルタ定数を用いた移動平均フィルタで計量信号を濾波処理することによって、固有振動ノイズ、即ち定周期振動ノイズを減衰させることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、実際の秤系においては、上記数1のパラメータである初期荷重WI については、計量載台の重量と、この計量載台とロードセルとの接続金具の重量だけでなく、正確にはロードセル自体の重量も一部含まれるため、この初期荷重WI の正確な値を定めるのは非常に困難である。また、ロードセルのばね定数Kについても、ロードセルだけでなく、秤系を構成する部材、例えばロードセル支持金具、計量載台とロードセルとの接続金具、計量載台自体等の有するばね定数も加わった秤系全体としてのばね定数になるため、その正確な値を定めるのは非常に困難である。従って、これらの初期荷重WI 及びロードセルのばね定数Kについては、近似的な値を代入せざるを得なくなるため、正確な固有振動周波数、ひいては適切なフィルタ定数を算出することができなくなってしまう。これによって、計量信号に含まれている固有振動ノイズ、即ち定周期振動ノイズを十分に減衰させることができず、結果的に、高い計量精度を得ることができないという問題がある。
【0007】
また、秤、例えば計量コンベヤの計量信号には、上記固有振動ノイズのみならず、ベルトプーリ等のプーリや、このプーリを駆動するモータの回転によって発生する振動ノイズ、また計量コンベヤ枠の捻じれ振動によって発生する振動ノイズ等、種々の周波数成分を有する定周期振動ノイズが重畳されている。従って、上記従来技術のように、計量信号に含まれている秤系の固有振動ノイズのみを減衰させても、それ以外の定周期振動ノイズが存在しているため、これらの定周期振動ノイズの影響によって高い計量精度を得ることができないという問題がある。この問題を解決する手段として、従来、時定数の非常に大きいローパスフィルタを設けたり、移動平均フィルタリングを単に多重化していたが、これによって、フィルタの応答遅れが大きくなると共に、その度合いが大きいと計量信号の過渡応答部分のデータ、即ち無効データも濾波処理の対称としてしまうため秤の計量精度を悪化させてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、重量選別機等に用いられる計量コンベヤの計量信号に含まれている定周期振動ノイズのうち成分の大きいものは、秤系の固有振動ノイズの他に、プーリやモータの回転によって発生する振動ノイズ、及び計量コンベヤ枠の捻じれ振動によって発生する振動ノイズが殆どであることに着目し、これらの定周期振動ノイズ成分を減衰させる計量コンベヤ用フィルタと、そのフィルタ定数を算出するフィルタ定数算出装置を提供することを目的とする。また、計量の際に、被計量物の種類やコンベヤの搬送速度等の計量条件を設定することによって、その計量条件に応じたフィルタ定数が自動的に選択される計量コンベヤ用フィルタを提供することも本発明の目的である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
第1の発明のフィルタ定数算出装置は、定周期振動ノイズを含む計量信号を所定のサンプリング周期でサンプリングしてデジタル化したデジタル計量信号の当該定周期振動ノイズを、該デジタル計量信号に対し移動平均フィルタリングを行うことによって減衰させる計量コンベヤ用フィルタのタップ数であるフィルタ定数を算出するフィルタ定数算出装置において、
上記定周期振動ノイズの周期を検出する周期検出手段と、該周期検出手段が検出した上記周期の略整数周期分に相当するサンプリング数を算出するサンプリング数算出手段と、該サンプリング数算出手段が算出した上記サンプリング数を計量コンベヤ用フィルタのフィルタ定数として出力するフィルタ定数出力手段と、
上記フィルタ定数出力手段の出力した上記フィルタ定数を用いて上記周期検出手段に入力された信号に対し移動平均フィルタリングを行う濾波手段と、
該濾波手段の濾波処理回数を計数する計数手段と、
少なくとも上記計数手段の計数が所定の数に達するまで上記濾波手段によって濾波処理された信号を上記濾波処理前のデジタル計量信号に替えて上記周期検出手段に帰還入力させる帰還手段と、
上記フィルタ定数出力手段から出力される上記フィルタ定数の略総和が予め定めた値以上であるか否かを判定する判定手段とを、
具備し、
上記周期検出手段が上記デジタル計量信号を入力すると共にこの入力した信号に含まれている上記定周期振動ノイズのうち最も振幅の大きい定周期振動ノイズの周期を検出し、少なくとも上記計数手段の計数が所定の数に達するまで又は上記判定手段が上記フィルタ定数出力手段から出力される上記フィルタ定数の略総和が上記予め定めた値以上であると判定するまで、上記濾波手段によって濾波処理された信号を上記濾波処理前のデジタル計量信号に替えて上記周期検出手段に帰還入力させることを特徴とする。
【0014】
第2の発明のフィルタ定数算出装置は、第1発明のフィルタ定数算出装置において、上記周期検出手段が、上記定周期振動ノイズの周期を検出する際、該定周期振動ノイズの極大値間または極小値間の時間を測定することによって該定周期振動ノイズの周期を決定することを特徴とするものである。
【0015】
第3の発明のフィルタ定数算出装置は、第1又は第2の発明のフィルタ定数算出装置において、上記周期検出手段が、上記定周期振動ノイズの周期を検出する際、該定周期振動ノイズを含む信号の上記サンプリングデータに対して複数の予め定めた上記サンプリング数分の移動平均フィルタリングを行い、該移動平均フィルタリングされた後の各サンプリングデータ列のうちバラツキの最も少ないサンプリングデータ列を算出する上記移動平均フィルタリングに使用された上記サンプリング数に対応する時間を、上記定周期振動ノイズの周期とすることを特徴とするものである。
【0016】
第4の発明のフィルタ定数算出装置は、第1、第2又は第3の発明のフィルタ定数算出装置において、上記周期検出手段が、上記定周期振動ノイズの周期を検出する際、該定周期振動ノイズを含む信号の上記サンプリングデータに対してフーリエ変換演算を行うことによって該定周期振動ノイズの存在する周波数を求め、該周波数に対応する周期を、上記定周期振動ノイズの周期とすることを特徴とするものである。
【0020】
【作用】
第1の発明によれば、周期検出手段が、デジタル計量信号に含まれている定周期振動ノイズの周期を検出し、サンプリング数算出手段が、この周期検出手段によって検出された上記周期の1周期分に相当するサンプリング数を算出する。そして、フィルタ定数出力手段が、このサンプリング数算出手段によって算出されたサンプリング数をタップ数であるフィルタ定数として出力する。つまり、このフィルタ定数は、デジタル計量信号に含まれている定周期振動ノイズの1周期分のサンプリング数に相当する。従って、デジタル計量信号に対して、このフィルタ定数をタップ数とする移動平均フィルタリングを行うことによって、減衰の対象としている定周期振動ノイズの1周期分に相当するサンプリングデータの平均値を得ることができ、これによって、定周期振動ノイズ成分を減衰させることができる。
【0021】
上記周期検出手段は、デジタル計量信号に含まれている定周期振動ノイズのうち最も振幅の大きい定周期振動ノイズの周期を検出する。そして、この周期検出手段によって検出された上記周期の1周期分に相当するサンプリング数がサンプリング数算出手段によって算出され、このサンプリング数算出手段によって算出されたサンプリング数がフィルタ定数の1つとしてフィルタ定数出力手段から出力される。ここで、濾波手段が、フィルタ定数出力手段によって出力されたフィルタ定数を用いて上記周期検出手段に入力された信号に対して移動平均フィルタリングを行う。そして、この濾波手段によって濾波処理された信号は、濾波手段の濾波処理回数が計数手段によって少なくとも所定の数、例えば減衰の対象とする定周期振動ノイズの個数だけ計数されるまで、帰還手段によって、繰り返し周期検出手段に帰還入力される。なお、これ以降、周期検出手段は、上記デジタル計量信号に替えて、帰還手段から帰還入力される信号、即ち濾波手段によって濾波処理された信号に対してその処理を行う。
【0022】
つまり、フィルタ定数出力手段からは、デジタル計量信号に含まれている各定周期振動ノイズに対応するフィルタ定数が、これらの定周期振動ノイズの振幅の大きさの順に、上記計数手段の計数する所定の数だけ、例えば減衰の対象とする定周期振動ノイズの個数だけのフィルタ定数が順次出力される。即ち、デジタル計量信号に含まれている定周期振動ノイズの中でも振幅の大きい秤系の固有振動ノイズ、プーリやモータの回転によって発生する振動ノイズ、及び計量コンベヤ枠の捻じれ振動によって発生する振動ノイズ等を減衰の対象とするフィルタ定数から順次出力される。これらのフィルタ定数は、上記のように、デジタル計量信号に含まれている各定周期振動ノイズの1周期分のサンプリング数に相当する。従って、デジタル計量信号に対して、これらのフィルタ定数をタップ数とする移動平均フィルタリングを行うことによって、各定周期振動ノイズの1周期分に相当するサンプリングデータの平均値を得ることができ、これによって、各定周期振動ノイズ成分を効率良く減衰させることができる。
【0023】
なお、濾波手段は、フィルタ定数出力手段から出力されたフィルタ定数を用いて移動平均フィルタリングを行っているが、この移動平均フィルタリングは、その原理から、減衰の対象とする周波数の近傍、及びその周波数の整数倍、更にはその整数倍の周波数の近傍の周波数成分に対しても比較的に大きい減衰特性を有する。従って、もし、この濾波手段によって濾波処理される信号に、この濾波手段の減衰の対象とする定周期振動ノイズの周波数の近傍、又はその周波数の整数倍、或いはその整数倍の周波数の近傍に比較的大きな振幅を有する他の定周期振動ノイズ成分が含まれているとしても、この濾波手段の濾波処理によって、上記他の定周期振動ノイズも、上記減衰の対象とする定周期振動ノイズと共に、無視できる程度の小さいレベルに減衰される。よって、既に出力されているフィルタ定数によって十分減衰させることのできる周波数成分に対して減衰特性を有するフィルタ定数が、新たに出力されることはない。つまり、同一の周波数成分に対して十分な減衰特性を有するフィルタ定数が重複して出力されることはないので、不必要にフィルタ定数、即ちタップ数が増加することはない。
【0024】
判定手段が、フィルタ定数出力手段が出力するフィルタ定数の略総和、即ち全タップ数の略総和が予め定めた値以上であるか否かを判定する。そして、少なくともこの判定手段によって全タップ数の略総和が上記予め定めた値以上であると判定されるか、又は上記計数手段が所定の数だけ計数するまで、濾波手段によって濾波処理された信号は、帰還手段によって周期検出手段に帰還入力され、その後の処理を繰り返される。つまり、判定手段が、フィルタ定数出力手段が出力するフィルタ定数との略総和が予め定めた値以上であると判定した場合、これ以降、フィルタ定数は出力されない。
【0025】
第2の発明によれば、上記周期検出手段は、定周期振動ノイズの極大値間または極小値間の時間を測定し、この測定した時間を上記定周期振動ノイズの周期としている。
【0026】
第3の発明によれば、上記周期検出手段は、まず、定周期振動ノイズを含む信号のサンプリングデータに対し、複数の予め定めたサンプリング数分、即ちフィルタ定数で移動平均フィルタリングを行う。そして、これらの移動平均フィルタリングのうち、その出力データ列のバラツキが最も少ない移動平均フィルタリングのフィルタ定数、即ちサンプリング数に対応する時間を、上記定周期振動ノイズの周期としている。
【0027】
第4の発明によれば、上記周期検出手段は、定周期振動ノイズを含む信号のサンプリングデータに対してフーリエ変換演算を行うことによって、上記定周期振動ノイズの存在する周波数を求め、この周波数に対応する周期を上記定周期振動ノイズの周期としている。
【0028】
【実施例】
本発明に係る計量コンベヤ用フィルタの第1実施例を図1及び図2を参照して説明する。図2は、計量コンベヤを用いた秤の概略構成を示すブロック図であり、本第1実施例の計量コンベヤ用フィルタは、同図における操作部と、表示部25と、I/O26と、演算制御部27と、メモリ28とによって構成される。なお、同図における1が計量コンベヤ、5は送り込みコンベヤ、6は送り出しコンベヤであり、被計量物13、14の搬送方向は矢印7、7に示す通りである。
【0029】
ここで、この計量コンベヤ用フィルタの構成要素の1つである操作部24は、オペレータがこの操作部24を操作することによって、この計量コンベヤ用フィルタの電源をON/OFFしたり、被計量物13、14の種類や計量コンベヤ1の搬送速度等の計量条件を入力する等、種々の命令や情報を入力することができるものである。
【0030】
表示部25は、操作部24によって入力された命令内容や、被計量物13、14の計量結果等を表示するものである。
【0031】
I/O26は、操作部24から入力した種々の命令やA/D変換器23を介して入力したデジタル計量信号を演算制御部27に出力する機能と、演算制御部27で算出した計量結果等を表示部25に出力する機能とを備えている。
【0032】
演算制御部27は、例えばマイクロコンピュータ(CPU)やデジタル信号処理装置(DSP)等によって構成されており、図1に示すフローチャートで表されているプログラムに従って動作することによって、選択手段、濾波手段、計量条件設定手段、及び制御信号出力手段の有する各機能を果たすことができる。そしてI/O26から送られてきたデジタル計量信号に対しての処理を行い、被計量物13、14の計量値を算出するものである。
【0033】
メモリ28は、例えばROMやRAM等によって構成されており、種々のフィルタ定数を書き込んだり、削除することができ、記憶手段としての機能を果たすものである。また、図1に示すフローチャートで表されているプログラムについても、このメモリ28に記憶されている。
【0034】
次に、図1に示すフローチャートに従って、この計量コンベヤ用フィルタの動作について説明する。まず、後述するフィルタ定数算出装置によって算出された種々のフィルタ定数を記憶する(ステップS302)。ここで、計量コンベヤ1、即ちロードセル21から出力される計量信号には、秤系の固有振動ノイズ、プーリ2及びモータ4の回転により発生する回転ノイズ、計量コンベヤ1枠の捻じれにより発生する振動ノイズ等、比較的に振幅の大きい定周期振動ノイズが含まれており、これらの定周期振動ノイズの振幅及び周波数成分は、被計量物14の種類(重量)及び計量コンベヤ1の搬送速度V等の計量条件の差異によって変化する。従って、このステップS302においては、後述するフィルタ定数算出装置によって算出されたこれらの様々な計量条件の下で発生する上記各定周期振動ノイズに対応するフィルタ定数を記憶する。なお、このステップS302が、記憶手段に対応する。
【0035】
次に、オペレータが、被計量物14の重量や計量コンベヤ1の搬送速度V等の計量条件を設定する(ステップS304)。なお、このステップS304が、計量条件設定手段に対応する。
【0036】
そして、この設定された計量条件に対応するフィルタ定数が、上記ステップS302において記憶したフィルタ定数の中から選択されるように制御する制御信号を出力し(ステップS306)、この制御信号に応じてフィルタ定数が選択される(ステップS308)。なお、このステップS306及びステップS308が、各々制御信号出力手段及び選択手段に対応する。
【0037】
そして、上記ステップS308において選択されたフィルタ定数を用いて、デジタル計量信号を濾波処理する(ステップS310)。なお、この選択されたフィルタ定数は、上記計量条件の下で発生する定周期振動ノイズの各1周期に相当するサンプリング数そのものであり、このステップS310においては、このサンプリング数をタップ数として移動平均フィルタリングを行う。従って、上記ステップS304においてオペレータが設定した計量条件と同じ条件で計量を行うことによって、この計量条件の下で発生する定周期振動ノイズを除去することができる。このステップS310が、請求項1に記載の濾波手段に対応する。
【0038】
上記のように構成されているので、この計量コンベヤ用フィルタは、計量する際に、被計量物14の重量や計量コンベヤ1の搬送速度等の計量条件を入力することによって、常に、上記計量条件の下で発生する定周期振動ノイズを減衰させるべくフィルタ定数が自動的に選択されるように構成されている。そして、この選択されたフィルタ定数は、上記定周期振動ノイズの1周期分に相当するサンプリング数そのものであるため、上記定周期振動ノイズを効率よく減衰させることができる。従って、この計量コンベヤ用フィルタは、計量条件に応じて、常に、確実かつ高速な濾波処理を行うことができるので、このフィルタを秤に適用することによって、高精度かつ高速で計量を実現する秤を構成することができる。
【0039】
なお、本第1実施例において、計量条件の1つとして、計量コンベヤ1の搬送速度Vを設定したが、この搬送速度Vの代わりに、被計量物14の単位時間当たりの計量個数を設定してもよい。即ち、搬送速度Vにおいて、長さLの計量コンベヤ1によって単位時間当たりに計量可能な被計量物14の個数をQとしたとき、これらの関係はQ=V/Lになるので、計量条件の1つとして、この単位時間当たりの計量個数Qを設定してもよい。もちろん、この場合、この計量個数Qから搬送速度Vを算出する手順は、メモリ28に記憶されており、演算制御部27がその動作を行う。
【0040】
本発明に係るフィルタ定数算出装置の第2実施例を図2から図13を参照して説明する。図2は、計量コンベヤを用いた秤の概略構成を示すブロック図であり、本第2実施例のフィルタ定数算出装置は、同図に示す秤そのものによって構成することができる。即ち、この秤は、物品の重量を計量するという本来の秤として機能できるのは勿論のこと、本来の秤として機能する際に計量信号の濾波処理に用いるフィルタ定数を算出するフィルタ定数算出装置としても機能することができるように構成されている。
【0041】
この秤がフィルタ定数算出装置として機能するとき、このフィルタ定数算出装置は、同図における操作部24と、表示部25と、入出力インターフェース(以下、I/Oという。)26と、演算制御部27と、メモリ28とによって構成される。そして、最初に被計量物13のサンプルデータ(以下、サンプルデータという。)を採取し、このサンプルデータを基に、上記第1実施例における計量コンベヤ用フィルタに適用するフィルタ定数を算出する。なお、このサンプルデータとは、実際に被計量物13を計量コンベヤ1に流し、このときロードセル21から得られた計量信号を増幅器22で増幅し、A/D変換器23でデジタル化したデジタル計量信号であって、まだ上記第1実施例における計量コンベヤ用フィルタによって濾波処理されていないデジタル計量信号のことである。
【0042】
ここで、このフィルタ定数算出装置の構成要素の1つである操作部24は、オペレータがこの操作部24を操作することによって、このフィルタ定数算出装置の電源をON/OFFしたり、このフィルタ定数算出装置にサンプルデータを採取する命令等の種々の命令を入力したりすることができるものである。
【0043】
表示部25は、操作部24によって入力された命令内容や、算出されたフィルタ定数等を表示するものである。
【0044】
I/O26は、操作部24から入力した種々の命令やA/D変換器23を介して採取したサンプルデータを演算制御部27に出力する機能と、演算制御部27で算出したフィルタ定数の算出結果等を表示部25に出力する機能とを備えている。
【0045】
演算制御部27は、例えばマイクロコンピュータ(CPU)やデジタル信号処理装置(DSP)等によって構成されており、I/O26から送られてきたサンプルデータの処理を行い、フィルタ定数を算出するものである。
【0046】
メモリ28は、例えばROMやRAM等によって構成されており、サンプルデータ等の各種データを書き込んだり、削除することができる。また、このメモリ28には、図3に示すフローチャートで表されているプログラムが記憶されており、演算制御部27は、これらのプログラムに従ってフィルタ定数を算出することができる。
【0047】
次に、上記のように構成されているフィルタ定数算出装置の動作手順を、図3に示すフローチャートに従って説明する。なお、図2に示す秤において、被計量物14を計量コンベヤ1に流しているときにロードセル21が出力する計量信号に含まれている定周期振動ノイズのうち成分の大きいものは、秤系の固有振動ノイズの他に、計量コンベヤ1のプーリ2の回転によって発生する振動ノイズ、プーリ2の駆動用モータ4の回転によって発生する振動ノイズ、及び計量コンベヤ1枠の捻じれ振動によって発生する振動ノイズが殆どである。従って、本実施例では、主に、上記4種類の比較的に振幅の大きい定周期振動ノイズ成分を減衰させる計量コンベヤ用フィルタのフィルタ定数を算出する場合について説明する。
【0048】
まず、オペレータが操作部24から計量コンベヤ1の搬送速度Vを設定する(ステップS2)。ここで、プーリ2の半径をr、回転数をf1 とし、V=r・ω=r・2πf1 の関係から、プーリ2の回転周期T1 を算出する(ステップS4)。この算出式は、数2で表される。
【0049】
【数2】
1 =1/f1 =2πr/V
【0050】
次に、このプーリ2の回転周期T1 に略相当するサンプリング数n1 を算出する(ステップS6)。このサンプリング数n1 は、アナログ計量信号をデジタル化する際のサンプリング周期をτとすると、T1 /τ≒n1 −1の関係から、数3によって算出される
【0051】
【数3】
1 ≒(T1 /τ)+1
【0052】
ここで、計量コンベヤ1のプーリ2の回転によって発生する振動ノイズは、プーリ2の重心がその回転中心から偏心していることによって生じるため、プーリ2の回転周期T1 がその定周期振動ノイズの周期となる。従って、このプーリ2の回転周期T1 に相当するサンプリング数n1 をタップ数として移動平均フィルタリングを行うことによって、このプーリ2の回転により発生する定周期振動ノイズの一周期分に相当するサンプリングデータの平均値が得られ、これによって、この定周期振動ノイズ成分を除去することができる。つまり、数3によって算出されたサンプリング数n1 が、このプーリ2の回転によって発生する定周期振動ノイズを減衰させることができる移動平均フィルタのフィルタ定数となる。よって、このサンプリング数n1 を、プーリ2の回転によって発生する定周期振動ノイズに対応するフィルタ定数として出力する(ステップS8)
【0053】
なお、このフィルタ定数n1 をタップ数とする移動平均フィルタは、減衰の対象としている定周期振動ノイズ、即ちプーリ2の回転によって発生する振動ノイズだけではなく、この振動ノイズの周波数の近傍、及びその周波数の整数倍、更にはその整数倍の周波数の近傍の周波数成分に対しても比較的に大きい減衰特性を有する。従って、もし、このプーリ2の回転によって発生する振動ノイズの周波数の近傍、又はその周波数の整数倍、或いはその整数倍の周波数の近傍に比較的大きな振幅を有する他の定周期振動ノイズ成分が存在しているとしても、このフィルタ定数n1 をタップ数として移動平均フィルタリングを行うことによって、プーリ2の回転によって発生する振動ノイズは勿論のこと、上記他の定周期振動ノイズについても無視できる程度の小さいレベルに減衰させることができる。
【0054】
次に、プーリ2と、このプーリ2とベルト3によって回動自在に結合されているモータ4との回転速度比をE、モータ4の回転数をf2 とし、f2 =E・f1 の関係から、モータ4の回転周期T2 を算出する(ステップS10)。この算出式は、数4で表される。
【0055】
【数4】
2 =T1 /E=2πr/EV
【0056】
そして、このモータ4の回転周期T2 に略相当するサンプリング数n2 を算出する(ステップS12)。このサンプリング数n2 は、T2 /τ≒n2 −1の関係から、数5によって算出される
【0057】
【数5】
2 ≒(T2 /τ)+1
【0058】
ここで、このモータ4の回転によって発生する振動ノイズは、モータ4の重心がその回転中心から偏心していることによって生じるため、モータ4の回転周期T2 がその定周期振動ノイズの周期となる。従って、このモータ4の回転周期T2 に相当するサンプリング数n2 をタップ数として移動平均フィルタリングを行うことによって、このモータ4の回転により発生する定周期振動ノイズの一周期分に相当するサンプリングデータの平均値が得られ、これによって、この定周期振動ノイズ成分を除去することができる。つまり、数5によって算出されたサンプリング数n2 が、このモータ4の回転によって発生する定周期振動ノイズを減衰させることができる移動平均フィルタのフィルタ定数となる。よって、このサンプリング数n2 を、モータ4の回転によって発生する定周期振動ノイズに対応するフィルタ定数として出力する(ステップS14)
【0059】
なお、このフィルタ定数n2 をタップ数とする移動平均フィルタについても、モータ4の回転によって発生する振動ノイズだけではなく、この振動ノイズの周波数の近傍、及びその周波数の整数倍、更にはその整数倍の周波数の近傍の周波数成分に対しても比較的に大きい減衰特性を有する。従って、もし、このモータ4の回転によって発生する振動ノイズの周波数の近傍、又はその周波数の整数倍、或いはその整数倍の周波数の近傍に比較的大きな振幅を有する他の定周期振動ノイズ成分が存在しているとしても、このフィルタ定数n2 をタップ数として移動平均フィルタリングを行うことによって、モータ4の回転によって発生する振動ノイズは勿論のこと、上記他の定周期振動ノイズについても比較的に無視できる程度の小さいレベルに減衰させることができる。
【0060】
次に、実際に被計量物14を計量コンベヤ1上に流して上記ステップS2において設定した速度Vで搬送させ、このときの被計量物14の重量を計量する。そして、図4(a)に示すように、この計量によって得られたアナログ計量信号Wをサンプリング周期τでデジタル化し、このデジタル化した時系列の離散計量データを読み込み、そのうちW1 、W2 、・・・、WN のN個分のデータをサンプルデータとしてメモリ28に記憶させる(ステップS16)。なお、このサンプルデータの読み込み開始のタイミングについては、フォトセンサ15によって被計量物14が計量コンベヤ1上に載上したことを検出した時点とする。
【0061】
そして、図4(b)に示すように、このメモリ28に記憶されているデータ列W1 、W2 、・・・、WN に対してフィルタ定数n1 で移動平均フィルタリングを行いデータ列W11、W21、W31・・・を求め、更に、このデータ列W11、W21、W31・・・に対してフィルタ定数n2 で移動平均フィルタリングを行いデータ列W12、W22、W32・・・を求める(ステップS18)。そして、このステップS18において、サンプルデータW1 、W2 、・・・、WN に含まれているプーリ2及びモータ4により発生する振動ノイズ成分、及びこれらの振動ノイズの周波数の近傍、またその周波数の整数倍、更にはその整数倍の周波数の近傍に比較的大きな振幅を有する他の定周期振動ノイズ成分が減衰される。つまり、サンプルデータW1 、W2 、・・・、WN に対し、フィルタ定数n1 、n2 で移動平均フィルタリングした後のデータ列W12、W22、W32・・・に残っている定周期振動ノイズ成分の殆どは、秤系の固有振動ノイズと、計量コンベヤ1枠の捻じれ振動によって発生する振動ノイズになる。(但し、秤系の固有振動ノイズ、又は計量コンベヤ1枠の捻じれ振動によって発生する振動ノイズの周波数が、プーリ2及びモータ4により発生する振動ノイズの周波数の近傍、またその周波数の整数倍、或いはその整数倍の周波数の近傍に存在する場合、これらの秤系の固有振動ノイズ、又は計量コンベヤ1枠の捻じれ振動によって発生する振動ノイズも、このステップS18において減衰される。)
【0062】
ここで、この秤系の固有振動ノイズと、計量コンベヤ1枠の捻じれ振動によって発生する振動ノイズについても、上記と同様に、各々の1周期分に相当するサンプリング数をフィルタ定数として移動平均フィルタリングを行うことによって除去できることが推測できる。そこで、まず、データ列W12、W22、W32・・・に残っている定周期振動ノイズ成分、即ち秤系の固有振動ノイズと、計量コンベヤ1枠の捻じれ振動によって発生する振動ノイズのうち、最も振幅の大きい定周期振動ノイズの周期Tm を算出する(ステップS20)。ここで、計量コンベヤ1枠の捻じれ振動により発生する振動ノイズについては、計量コンベヤ1枠に剛性を持たせるような構造にすることによって、その振幅を秤系の固有振動ノイズの振幅よりも小さく抑えることができる。従って、このステップS20においては、まず最初に秤系の固有振動ノイズの周期T3 が算出される。なお、このステップS20が、周期検出手段に対応する。また、この周期Tm の算出方法の詳細については後述する。
【0063】
そして、この定周期振動ノイズの周期Tm に相当するサンプリング数nm 、即ちここでは秤系の固有振動ノイズの周期T3 に相当するサンプリング数n3 を算出する(ステップS22)。なお、このサンプリング数nm の算出式は、数6で表され、このステップS22が、サンプリング数算出手段に対応する。
【0064】
【数6】
m ≒(Tm /τ)+1
【0065】
そして、このサンプリング数nm 、即ちここではn3 を、秤系の固有振動ノイズに対応するフィルタ定数として出力する(ステップS24)。なお、このステップS24が、フィルタ定数出力手段に対応する。
【0066】
次に、ステップS18において、フィルタ定数n1 、n2 で移動平均フィルタリングした後のデータ列W12、W22、W32・・・に対して、更に、ステップS24において出力されたフィルタ定数nm 、即ち、ここではn3 を用いて移動平均フィルタリングを行う(ステップS26)。従って、このステップS26において移動平均フィルタリングを行った後のデータ列W13、W23、W33・・・は、プーリ2及びモータ4により発生する振動ノイズと、秤系の固有振動ノイズとが減衰されている。更に、これらの振動ノイズの周波数の近傍、及びその周波数の整数倍、またその整数倍の周波数の近傍に比較的大きな振幅を有する他の定周期振動ノイズ成分についても減衰されている。よって、データ列W13、W23、W33・・・に含まれている定周期振動ノイズのうち振幅の大きい定周期振動ノイズとしては、計量コンベヤ1枠の捻じれ振動によって発生する振動ノイズのみが残された状態になっている。(但し、計量コンベヤ1枠の捻じれ振動によって発生する振動ノイズの周波数が、プーリ2及びモータ4により発生する振動ノイズと、秤系の固有振動ノイズとの周波数の近傍、またその周波数の整数倍、或いはその整数倍の周波数の近傍に存在する場合、この計量コンベヤ1枠の捻じれ振動によって発生する振動ノイズについてもここで同時に減衰される。)なお、このステップS26が、請求項3に記載の濾波手段に対応する。
【0067】
そして、ステップS26における移動平均フィルタリングの回数をカウントする(ステップS28)。ここで、この回数が所定の回数、例えばプーリ2及びモータ4により発生する振動ノイズを除く定周期振動ノイズのうち減衰の対象とする定周期振動ノイズ(秤系の固有振動ノイズと計量コンベヤ1枠の捻じれ振動ノイズ)の数と同じ数だけの回数、即ち2回に達したときは、フィルタ定数の算出動作を終了する。一方、この回数に達しないときは、ステップS30に進む。なお、このステップS28が、計数手段に対応する。
【0068】
次に、現時点で算出されているフィルタ定数を用いた数7に示す条件が満足しているか否かを判定する(ステップS30)。これは、図5に示すように、このフィルタ定数算出手装置が算出した全てのフィルタ定数を上記第1実施例における計量コンベヤ用フィルタに適用して多重移動平均フィルタリングを行う際に、そのタップ数が増加することによって、ロードセル21から得られる計量信号WのサンプリングデータW1 、W2 、W3 、・・・のうち、同図のWN+1 以降のデータのように、被計量物14が計量コンベヤ1上に存在する時間領域T以外のサンプリングデータについても濾波処理の対象としてしまうことを防ぐためである。なお、数7において、Lは計量コンベヤ1の長さ、lは計量コンベヤ1の搬送方向(矢印7の方向)における被計量物14の寸法、Vは計量コンベヤ1の搬送速度、Mは算出されたフィルタ定数の全数である。そして、このステップS30が、判定手段に対応する。
【0069】
【数7】
N>n1 +n2 +・・・+nM −(M−1)
ここで、N=(T/τ)+1 ∵ T=(L−l)/V
【0070】
ここで、上記数7の条件が満足されないときは、フィルタ定数の算出動作を終了する。一方、数7の条件が満足されるときは、ステップS26において移動平均フィルタリングを行った後のデータ列W13、W23、W33・・・を、ステップS18において二重移動平均フィルタリングを行った後のデータ列W12、W22、W32・・・に替えて、ステップS20に帰還入力させる。即ち、数7の条件が満足したときは、上記秤系の固有振動ノイズに対応するフィルタ定数n3 を算出した手順と同様に、ステップS20、S22、S24に従って計量コンベヤ1枠の捻じれ振動によって発生する振動ノイズに対応するフィルタ定数n4 を算出する。従って、ステップS30は、帰還手段にも対応する。
【0071】
そして、上記ステップS20からステップS26までの動作は、ステップS28においてステップS26の移動平均フィルタリングの回数が所定の回数までカウントされるか、即ち減衰の対象とする定周期振動ノイズに対応するフィルタ定数が全て算出されるか、または、ステップS30において数7に示す条件が満足されないと判定される、即ち出力された全てのフィルタ定数を用いて多重移動平均フィルタリングを行う際に測定誤差を招くような大きい応答遅れを生じてしまうと判定されるまで繰り返される。
【0072】
上記のように、本第2実施例のフィルタ定数算出装置は、計量信号に含まれている定周期振動ノイズ、例えばその中でも振幅の大きい秤系の固有振動ノイズ、プーリ3及びモータ4の回転によって発生する定周期振動ノイズ、計量コンベヤ1枠の捻じれ振動ノイズ等の各周期の1周期分に相当するサンプリング数をフィルタ定数として算出している。従って、計量信号に対し、これらのフィルタ定数をタップ数として移動平均フィルタリングを行うことによって、各定周期振動ノイズ成分を効率よく除去することができる。つまり、各定周期振動ノイズを確実に、かつ高速で減衰させることができる移動平均フィルタのフィルタ定数を算出することができる。
【0073】
また、少なくとも減衰の対象とする定周期振動ノイズに対応するフィルタ定数を、振幅の大きい定周期振動ノイズに対応するフィルタ定数から順次出力するように構成されている。従って、計量信号に含まれている定周期振動ノイズのうち振幅の大きい定周期振動ノイズ、即ちプーリ3及びモータ4の回転によって発生する定周期振動ノイズ、秤系の固有振動ノイズ、計量コンベヤ枠の捻じれ振動によって発生する振動ノイズ等に対応するフィルタ定数から確実に算出する。
【0074】
つまり、本第2実施例において算出したフィルタ定数n1 、n2 、n3 、n4 をタップ数とする多重移動平均フィルタを上記第1実施例における計量コンベヤ用フィルタに適用することによって、従来のフィルタでは減衰の対象としなかったプーリ2及びモータ4の回転によって発生する振動ノイズや、計量コンベヤ枠の捻じれ振動によって発生する振動ノイズ等についても減衰させることができる。
【0075】
なお、1つのフィルタ定数は、それが本来減衰の対象としている周波数成分の他に、この周波数の近傍、またその周波数の整数倍、更にはその整数倍の周波数の近傍の周波数成分に対しても減衰特性を有するので、上記の比較的に振幅の大きい定周期振動ノイズのうち複数の定周期振動ノイズが、ある1つのフィルタ定数によって減衰される場合がある。このような場合があるので、必ずしも定周期振動ノイズの振幅の大きい順に各定周期振動ノイズに対応するフィルタ定数が順次算出されるとは限らない。従って、既に算出されたフィルタ定数によって減衰させることのできる周波数成分に対して減衰特性を有するフィルタ定数が、上記既に算出されたフィルタ定数とは別個に、即ち重複して算出されることはない。これによって、不必要にフィルタ定数、即ちタップ数が増加することを防ぐことができ、ひいては移動平均フィルタリングの際の応答遅れを防止することができる。
【0076】
更に、このフィルタ定数算出装置が算出した全てのフィルタ定数によって多重移動平均フィルタリングを行う際に、被計量物が完全に計量コンベヤ上に存在している時間領域にあるサンプリングデータに対してのみ、そのフィルタリング処理が行われるように、フィルタ定数の総数、即ちタップ数を制限するように構成されている。従って、上記第1実施例における計量コンベヤ用フィルタに、このフィルタ定数算出装置が算出した全てのフィルタ定数を適用しても、その応答遅れによって秤の計量精度を悪化させてしまうということはない。
【0077】
なお、本第2実施例においては、プーリ2の回転によって発生する振動ノイズ、モータ4の回転によって発生する振動ノイズ、秤系の固有振動ノイズ、及び計量コンベヤ1枠の捻じれ振動ノイズの4つの定周期振動ノイズに対応するフィルタ定数を算出したが、上記数7を満足する場合は、図3のステップS20からステップS30を繰り返すことによって、更に多くのフィルタ定数を算出してもよい。
【0078】
さて、ここで、上記ステップS20において、最も振幅の大きい定周期振動ノイズの周期Tm を算出する方法について、その詳細をいくつか説明する。まず、最初に、上記定周期振動ノイズのピーク値、即ち極大値又は極小値を検出し、この各極大値間又は極小値間の時間を算出することによって上記定周期振動ノイズの周期を求める方法について、図6を参照すると共に、図7から図9に示すフローチャートに従って説明する。なお、図7における▲1▼及び▲2▼は図8における▲1▼及び▲2▼に、また、図8における▲3▼及び▲4▼は図9における▲3▼及び▲4▼に夫々つながる。そして、この図7から図9に示すフローチャートについても、メモリ28に記憶されており、このメモリ28に記憶されている内容に従って演算制御部27が処理を行う。また、上記定周期振動ノイズについては、予め計量信号をシンクロスコープ等で測定することによって、その周期Tm の大まかな代表値TS を認識しておく。
【0079】
まず、演算処理に用いる各レジスタを初期化する(ステップS102)。ここで、Wmax 及びWmin は極大値及び極小値記憶レジスタ、RA 及びRB ’は極大値及び極小値取得タイミングレジスタ、Rは取得タイミング一時記憶レジスタ、A及びBはRA 及びRB ’用アドレスポインタ、nはサンプリング数カウンタである。そして、この初期化によって、定周期振動ノイズの極大値又は極小値を検出する動作に入るスタート点S(サンプリング数n=0、データW0 のポイント)が設定される。
【0080】
次に、サンプリング数nを1個増加させて(ステップS104)、この増加させたサンプリング数nに対応するデータWn の値と、既に記憶されているWmax の値とを比較する(ステップS106)。そして、Wn がWmax よりも大きいとき、Wmax の値をWn の値に更新すると共に、RA (ここではR0 )の値を現在のサンプリング数nの値に更新する(ステップS108)。一方、Wn がWmax よりも小さいとき、このWn の値と、既に記憶されているWmin の値とを比較する(ステップS110)。そして、Wn がWmin よりも小さいとき、Wmin の値をWn の値に更新すると共に、RB ’(ここではR0 ’)の値を現在のサンプリング数nの値に更新する(ステップS112)。上記ステップS104からステップS112までの動作は、サンプリング数nのカウント値が、定周期振動ノイズの大まかな周期TS に対応するサンプリング数NS (NS =(TS /τ)+1)の1/2から1の間、例えば3/4に達するまで繰り返される(ステップS114)。
【0081】
上記ステップS114までの動作によって、サンプリング数n=0の時点から3/4NS の時点まで(図6のP0 の領域)における定周期振動ノイズの最大値(図6におけるWa )及び最小値(図6におけるWa')のうち、どちらか一方又は両方が検出される。即ち、この時点においては、少なくともWmax に記憶されている値が極大値であるかまたはWmin に記憶されている値が極小値であり、その時のタイミング(図6におけるa及びa’)がR0 及びR0 ’に各々記憶されている。
【0082】
そして、このR0 及びR0 ’に各々記憶されている値が0であるか、即ちサンプリング数n=0におけるデータW0 が極大値又は極小値のいずれかであるかを判定する(ステップS116、118)。また、R0 及びR0 ’に各々記憶されている値がどちらも0でないとき、即ちデータW0 が極大値又は極小値のどちらでもないとき、R0 とR0 ’とを比較する(ステップS120)。そして、R0 ’=0であるか、またはR0 がR0 ’よりも小さいとき、R0 に記憶されている値(図6におけるa)が、スタート点Sから最初の極大値(図6におけるWa )に対応するサンプリング数(タイミング)であるため、これ以降、スタート点Sから2番目以降の極大値(Wb 、Wc 、・・・)に対応するサンプリング数を検出する動作▲1▼に入る。一方、R0 =0であるか、またはR0 ’がR0 よりも小さいとき、R0 ’に記憶されている値(図6におけるa’)が、スタート点Sから最初の極小値(図6におけるWa')に対応するサンプリング数(タイミング)であるため、これ以降、スタート点Sから2番目以降の極大値(Wb'、Wc'、・・・)に対応するサンプリング数を検出する動作▲2▼に入る。
【0083】
ここで、スタート点Sから2番目以降の極大値Wb 、Wc 、・・・に対応するサンプリング数b、c、・・・を検出する動作▲1▼に入る場合について説明する。まず、R0 (図6におけるa)に対して更に3/4NS を加算した値(図6におけるa’’)を新たにサンプリング数nに入力し、この値(a’’)をスタート点Sから2番目の極大値を検出する動作に入るためスタート点とする(ステップS122)。そして、このサンプリング数n(a’’)に対応するデータWn (図6におけるWa'' )を新たにWmax に入力する(ステップS124)。
【0084】
次に、サンプリング数nを1個増加させて(ステップS126)、この増加させたサンプリング数nに対応するデータWn の値と、既に記憶されているWmax の値とを比較する(ステップS128)。そして、Wn がWmax よりも大きいとき、Wmax の値をWn の値に更新すると共に、このときのサンプリング数nの値をRに入力する(ステップS130)。一方、Wn がWmax よりも小さいときは、Wmax 及びRの値はそのままにしておく。上記ステップS126からステップS130までの動作は、サンプリング数nのカウント値が、現在のRA 、即ちR0 に記憶されている値aに、3/2NS を加算した値bに達するまで繰り返される(ステップS132)。
【0085】
上記ステップS132までの動作によって、サンプリング数n=a’’の時点から3/4NS の時点まで(図6のP1 の領域)における定周期振動ノイズの極大値が検出される。即ち、この時点でWmax に記憶されている値Wb がスタート点Sから2番目の極大値であり、その時のタイミングbがRに記憶されている。
【0086】
そして、この一時記憶レジスタであるRに記憶されている値を極大値取得タイミングレジスタRA に保存するために、そのアドレスポインタであるAの値を1つ更新した後(ステップS134)、Rの値bをRA 、即ちR1 に記憶する(ステップS136)。上記ステップS122からステップS136までの動作は、次の極大値を検出するための領域(RA +3/2NS )が、例えばメモリ28に記憶されているサンプルデータ数Nを越えない限り繰り返される(ステップS138)。従って、上記ステップS138までの動作によって、定周期振動ノイズの極大値Wa 、Wb 、Wc 、・・・が検出され、これらに対応するタイミングa、b、c、・・・が各々R0 、R1 、R2 、・・・、Rm に記憶される。そして、これらのタイミングR0 、R1 、R2 、・・・、Rm のうち、隣り合うタイミングの差分の平均Nm を算出する(ステップS140)。なお、この算出式は、数8で表される。
【0087】
【数8】
Figure 0003874813
【0088】
上記数8によって算出されたNm は、定周期振動ノイズの極大値間の時間、即ち周期Tm に対応するサンプリング数nm そのものである。つまり、このNm を数9に示す式に代入することによって、定周期振動ノイズTの周期Tm を求めることができる。
【0089】
【数9】
m ≒(nm −1)τ=(Nm −1)τ
【0090】
一方、ステップS116又はステップS120において、スタート点Sから2番目以降の極小値を検出する動作に入った場合は、ステップS122aからステップS140aに従って処理する。なお、この処理については、上記ステップS122からステップS140において、RA をRB ’に、Wmax をWmin に、AをBに夫々置き換え、ステップS128においてWn >Wmax としたのを、ステップS128aにおいてWn <Wmin と置き換えたものであり、これ以外については同等であるため、詳細な説明を省略する。なお、ステップS140aにおいて、定周期振動ノイズの極小値Wa'、Wb'、Wc'、・・・に対応するタイミングR0 ’、R1 ’、R2 ’、・・・、Rm ’のうち、隣り合うタイミングの差分の平均Nm を求める算出式は、数10で表される。
【0091】
【数10】
Figure 0003874813
【0092】
従って、上記数10によっても、定周期振動ノイズの極大値間の時間、即ち周期Tm に対応するサンプリング数nm に等価なNm を算出することができる。
【0093】
次に、定周期振動ノイズの極大値又は極小値を検出する方法として、この定周期振動ノイズを含む計量信号Wが単調に増加する領域と単調に減少する領域との間に極大値が存在し、計量信号Wが単調に減少する領域と単調に増加する領域との間に極小値が存在するということを基に、その極大値及び極小値を検出する方法について、図10を参照しながら図11に示すフローチャートに従って説明する。
【0094】
まず、演算処理に用いる各レジスタを初期化する(ステップS202)。ここで、Rは極大値取得タイミング一時記憶レジスタ、R’は極大値取得タイミング一時記憶レジスタ、Rc は極大値及び極小値取得タイミング記憶レジスタ、CはRc 用アドレスポインタ、nはサンプリング数カウンタである。そして、この初期化によって、定周期振動ノイズの極大値及び極小値を検出する動作に入るスタート点S0 (サンプリング数n=0、データW0 のポイント)が設定される。
【0095】
次に、サンプリング数nにおけるサンプリングデータWn の値、即ちここではステップS202の初期化において設定されたサンプリング数n=0におけるサンプリングデータW0 の値を極大値記憶レジスタWmax 及び極小値記憶レジスタWmin に各々記憶する(ステップS204)。
【0096】
そして、サンプリング数nを1個増加させて(ステップS206)、この増加させたサンプリング数nに対応するデータWn の値と、既に記憶されているWmax の値とを比較する(ステップS208)。そして、Wn がWmax よりも大きいとき、Wmax の値をWn の値に更新すると共に、Rの値を現在のサンプリング数nの値に更新する(ステップS210)。一方、Wn がWmax よりも小さいとき、このWn の値と、既に記憶されているWmin の値とを比較する(ステップS212)。そして、Wn がWmin よりも小さいとき、Wmin の値をWn の値に更新すると共に、R’の値を現在のサンプリング数nの値に更新する(ステップS214)。
【0097】
上記ステップS206からステップS214までの動作は、最初にWn がある回数(K回)以上連続して増加した上で引き続きある回数(K回)以上連続して減少するか、即ちステップS208における条件(Wn >Wmax )がK回以上成立した上で引き続きステップS212における条件(Wn <Wmax )がK回以上成立するか、或いは、最初にWn がある回数(K回)以上連続して減少した上で引き続きある回数(K回)以上連続して増加するまで、即ちステップS212における条件(Wn <Wmax )がK回以上成立した上で引き続きステップS208における条件(Wn >Wmax )がK回以上成立するまで繰り返される。
【0098】
そして、ステップS208における条件(Wn >Wmax )がK回以上成立し(ステップS216)、これに引き続いてステップS212における条件(Wn <Wmax )がK回以上成立したとき(ステップS218)、極大値取得タイミング一時記憶レジスタRに記憶されている値がスタート点S0 から最初の極大値Wmax1に対応するサンプリング数(タイミング)になる。従って、このRに記憶されている値をスタート点S0 から最初の極大値Wmax1に対応するタイミングとしてRc (ここでは、R0 )に記憶する(ステップS220)。一方、ステップS212における条件(Wn <Wmax )がK回以上成立し(ステップS222)、これに引き続いてステップS208における条件(Wn >Wmax )がK回以上成立したとき(ステップS224)、極小値取得タイミング一時記憶レジスタR’に記憶されている値がスタート点S0 から最初の極小値Wmin1に対応するサンプリング数(タイミング)になる。従って、このR’に記憶されている値をスタート点S0 から最初の極小値Wmin1に対応するタイミングとしてRc (ここでは、R0 )に記憶する(ステップS226)。
【0099】
そして、Rc 用アドレスポインタCを1つ更新し(ステップS228)、このCの値が予め定めた値Dに達するまで、即ち予め定めた数だけの極大値及び極小値が算出されるまで、上記ステップS204からステップS228までの動作を繰り返す(ステップS230)。従って、レジスタR0 、R1 、R2 、・・・、Rm には、極大値Wmax1、Wmax2、・・・と、極小値Wmin1、Wmin2、・・・とが交互に記憶される。よって、各極大値間又は各極小値間、即ち計量信号Wに含まれている定周期振動ノイズの周期Tm に対応するサンプリング数Nm は、数11によって算出される(ステップS232)。
【0100】
【数11】
Figure 0003874813
【0101】
この数11によって算出されたNm は、上記数8及び数10によって算出されたNm と等価である。従って、この方法によっても、定周期振動ノイズの周期Tm に対応するサンプリングNm を算出することができる。
【0102】
また、定周期振動ノイズの周期Tm を検出する方法として、ステップS18で処理された後のデータ列W12、W22、W32、・・・に対して複数のタップ数で移動平均フィルタリングを行い、そのフィルタリング結果のバラツキが最も小さいタップ数に対応する時間を求めることによって、上記定周期振動ノイズの周期Tm を算出する方法について説明する。
【0103】
即ち、定周期振動ノイズの周期Tm が、少なくともある時間範囲内(TA <Tm <TB の範囲内)にあるとし、この各時間TA 及びTB に相当するサンプリング数を夫々nA 及びnB とする。そして、まずタップ数nA によってデータ列W12、W22、W32、・・・に対し移動平均フィルタリングを行い、この移動平均フィルタリング後のデータ列について、そのバラツキの度合いを示す標準偏差σA を算出する。次に、上記と同様に、タップ数nA に1タップを加えたタップ数nA +1によってデータ列W12、W22、W32、・・・に対し移動平均フィルタリングを行い、この移動平均フィルタリング後のデータ列について、その標準偏差σA+1 を算出する。以下、同様に、タップ数nA +2、nA +3、・・・nB によってデータ列W12、W22、W32、・・・に対し移動平均フィルタリングを行い、この移動平均フィルタリング後のデータ列について、その標準偏差σA+2 、σA+3 、・・・、σB を算出する。
【0104】
そして、算出された標準偏差σA 、σA+1 、σA+2 、σA+3 、・・・、σB のうち、最も値の小さい標準偏差σm を導き出すタップ数Nm に対応する時間が、定周期振動ノイズの周期Tm となる。なぜなら、定周期振動ノイズの周期Tm と、この周期Tm に対応するタップ数Nm とが近似するほど、移動平均フィルタリング結果の標準偏差値が小さくなるからであり、両者が完全に一致する場合は、移動平均フィルタリング結果の標準偏差値は常に0(一定)になるからである。なお、バラツキの度合いを求める方法としては、各移動平均フィルタリング結果の標準偏差値を比較する方法に限らず、各移動平均フィルタリング結果の最大値と最小値との差を比較してもよい。
【0105】
更に、上記の他に、定周期振動ノイズの周期Tm を検出する方法として、ステップS18で処理された後のデータ列W12、W22、W32、・・・に対してフーリエ変換演算を行い、このフーリエ変換の演算結果のうち、最大振幅を有する周波数成分の周期を上記定周期振動ノイズの周期Tm として算出する方法がある。即ち、データ列W12、W22、W32、・・・をx(u)(但し、u=0、1、2、・・・、U−1)とし、このx(u)に対してフーリエ変換を行う。この算出式は、数12で表される。
【0106】
【数12】
Figure 0003874813
【0107】
但し、数12において、kは周波数を示すインデックスで、k=0、1、2、・・・、U−1である。この数12によって、データ列W12、W22、W32、・・・は周波数の関数に変換され、図12に示すように、定周期振動ノイズの存在する周波数成分に大きな振幅が得られる。ここで、周波数をfk とすると、この周波数fk と振幅|X(fk )|との関係は、数13で表される。
【0108】
【数13】
X(fk )=|X(fk )|exp〔jθ(fk )〕
【0109】
従って、このフーリエ変換の演算結果X(fk )のうち、その振幅|X(fk )|の最大となる|X(fmax )|に対応する周波数fmax が、データ列W12、W22、W32、・・・に含まれる定周期振動ノイズのうち最も振幅の大きい定周期振動ノイズの周波数成分になる。よって、この定周期振動ノイズの周期Tm が、このfmax の逆数(1/fmax )になる。
【0110】
なお、本第2実施例においては、プーリ2及びモータ4の回転によって発生する振動ノイズに対応するフィルタ定数n1 、n2 については、プーリ2及びモータ4の回転周期を基に算出したが、このプーリ2及びモータ4の回転によって発生する振動ノイズに対応するフィルタ定数についても、上述した秤系の固有振動ノイズや計量コンベヤ1枠の捻じれ振動ノイズに対応するフィルタ定数を算出する方法と同様な方法で算出してもよい。つまり、全ての定周期振動ノイズに対応するフィルタ定数について、振幅の大きい定周期振動ノイズに対応するものから順に、上述した秤系の固有振動ノイズや計量コンベヤ1枠の捻じれ振動ノイズに対応するフィルタ定数を算出する方法と同様な方法で算出してもよい。
【0111】
また、フィルタ定数を算出する際、定周期振動ノイズの振幅の大きさの順に各定周期振動ノイズに対応するフィルタ定数を順次算出するのではなく、所望とするフィルタ定数を一括して算出してもよい。即ち、デジタル計量信号のサンプルデータW1 、W2 、W3 、・・・に対してフーリエ変換演算を行い、例えば図13に示すような結果が得られたとする。そして、同図に示すように、周波数f1 、f2 、f3 に所定の振幅レベル|XL |以上の振幅を有する定周期振動ノイズの存在が確認されたとする。ここで、この各周波数f1 、f2 、f3 の逆数が、上記所定の振幅レベル|XL |以上の振幅を有する定周期振動ノイズの周期を示すので、この各周波数f1 、f2 、f3 の逆数に相当するサンプリング数を上記各定周期振動ノイズに対応するフィルタ定数としてもよい。
【0114】
【発明の効果】
第1の発明のフィルタ定数算出装置は、定周期振動ノイズの1周期分に相当するサンプリング数をフィルタ定数として算出している。従って、計量信号に対し、このフィルタ定数をタップ数とする移動平均フィルタリングを行うことによって、定周期振動ノイズの1周期分に相当するサンプリングデータの平均値が得られ、これによって定周期振動ノイズ成分を効率よく減衰させることができる。つまり、定周期振動ノイズを確実に、かつ高速で減衰させることができる移動平均フィルタのフィルタ定数を算出することができるという効果がある。
【0115】
また、各定周期振動ノイズの1周期分に相当するサンプリング数を各々の定周期振動ノイズに対応するフィルタ定数として算出している。従って、計量信号に対し、これらのフィルタ定数をタップ数とする移動平均フィルタリングを行うことによって、各フィルタ定数に対応する各定周期振動ノイズの1周期分に相当するサンプリングデータの平均値が得られ、これによって各定周期振動ノイズ成分を効率良く減衰させることができる。また、同一の周波数成分に対して十分な減衰特性を有するフィルタ定数が複数、重複して算出されないように構成されているので、不必要にフィルタ定数、即ちタップ数が増加することを防ぐことができ、ひいては移動平均フィルタリングの際の応答遅れを防止することができる。つまり、このフィルタ定数算出装置は、各定周期振動ノイズを確実に、かつ高速で減衰させることができる移動平均フィルタのフィルタ定数を算出することができるという効果がある。
【0116】
また、少なくとも計数手段が所定の数だけ、例えば減衰の対象とする定周期振動ノイズの個数だけ計数するまで、振幅の大きい定周期振動ノイズに対応するフィルタ定数から順次出力するように構成されている。従って、計量信号に含まれている定周期振動ノイズのうち、振幅の大きい秤系の固有振動ノイズは勿論のこと、プーリやモータの回転によって発生する振動ノイズ、及び計量コンベヤ枠の捻じれ振動によって発生する振動ノイズ等、振幅の大きい他の定周期振動ノイズについても、確実に、かつ高速で減衰させることができる移動平均フィルタのフィルタ定数を算出することができるという効果がある。
【0117】
つまり、これらのフィルタ定数をタップ数とする多重移動平均フィルタを計量コンベヤ用フィルタに適用することによって、従来のフィルタでは減衰の対象としなかった秤系の固有振動ノイズ以外の振幅の大きい定周期振動ノイズ、例えばプーリ及びモータの回転によって発生する振動ノイズや、計量コンベヤ枠の捻じれ振動によって発生する振動ノイズ等についても減衰させることができ、これによって、従来よりも高精度な計量を実現することができるという効果がある。
【0118】
更に、少なくとも判定手段が、フィルタ定数出力手段が出力するフィルタ定数の略総和、即ちタップ数の略総和が予め定めた値以上であると判定した場合は、それ以上、フィルタ定数出力手段からフィルタ定数を出力させないように構成されている。このように構成されているので、各フィルタ定数をタップ数とする多重の移動平均フィルタによって計量信号を濾波処理したとき、その処理時間を所定の時間内に抑えることができるため、大きい応答遅れを生じることがない。従って、計量信号の過渡応答部分のデータ、即ち無効データを濾波処理の対象とすることがないため、秤の計量精度を悪化させてしまうことがないという効果がある。
【0119】
第2の発明のフィルタ定数算出装置は、周期検出手段が、定周期振動ノイズの極大値間または極小値間の時間を測定することによって、その定周期振動ノイズの周期を検出するように構成されており、上記第1の発明と同様な効果を奏する。
【0120】
第3の発明のフィルタ定数算出装置は、周期検出手段が、定周期振動ノイズを含む信号のサンプリングデータに対し複数のフィルタ定数で移動平均フィルタリングを行い、その出力データ列のバラツキが最も少ない移動平均フィルタリングのフィルタ定数に対応する時間を上記信号の周期とするように構成されており、上記第1又は第2の発明と同様な効果を奏する。
【0121】
第4の発明のフィルタ定数算出装置は、周期検出手段が、定周期振動ノイズを含む信号のサンプリングデータに対してフーリエ変換演算を行うことによって、その信号の周波数、ひいては周期を検出するように構成されており、上記第1、第2又は第3の発明と同様な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る計量コンベヤ用フィルタの動作手順を示すフローチャートである。
【図2】同実施例に係る計量コンベヤ用フィルタを備えたデジタル秤の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第2実施例に係るフィルタ定数算出装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】同実施例の計量信号及びその処理状態を示す波形図である。
【図5】同実施例の計量信号及びその処理状態を示す波形図である。
【図6】同実施例の計量信号及びその処理手順を示す波形図である。
【図7】同実施例の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図7のフローチャートに続く処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図8のフローチャートに続く処理手順を示すフローチャートである。
【図10】同実施例の計量信号及びその処理手順を示す波形図である。
【図11】同実施例の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】同実施例の計量信号をフーリエ変換演算した周波数特性図である。
【図13】同実施例の計量信号をフーリエ変換演算した周波数特性図である。
【符号の説明】
1 計量コンベヤ
2 プーリ
4 モータ
13、14 被計量物
21 ロードセル
23 A/D変換器
24 操作部
25 表示部
26 入出力インターフェース
27 演算制御部
28 メモリ
ステップS302 種々のフィルタ定数を記憶
ステップS304 計量条件を設定
ステップS306 制御信号を出力
ステップS308 制御信号に従ってフィルタ定数を選択
ステップS310 選択されたフィルタ定数を用いて濾波処理

Claims (4)

  1. 定周期振動ノイズを含む計量信号を所定のサンプリング周期でサンプリングしてデジタル化したデジタル計量信号の上記定周期振動ノイズを、該デジタル計量信号に対し移動平均フィルタリングを行うことによって減衰させる計量コンベヤ用フィルタのタップ数であるフィルタ定数を算出するフィルタ定数算出装置において、
    上記定周期振動ノイズの周期を検出する周期検出手段と、
    該周期検出手段が検出した上記周期の略整数周期分に相当するサンプリング数を算出するサンプリング数算出手段と、
    該サンプリング数算出手段が算出した上記サンプリング数を上記計量コンベヤ用フィルタのフィルタ定数として出力するフィルタ定数出力手段と、
    上記フィルタ定数出力手段の出力した上記フィルタ定数を用いて上記周期検出手段に入力された信号に対し移動平均フィルタリングを行う濾波手段と、
    該濾波手段の濾波処理回数を計数する計数手段と、
    少なくとも上記計数手段の計数が所定の数に達するまで上記濾波手段によって濾波処理された信号を上記濾波処理前のデジタル計量信号に替えて上記周期検出手段に帰還入力させる帰還手段と、
    上記フィルタ定数出力手段から出力される上記フィルタ定数の略総和が予め定めた値以上であるか否かを判定する判定手段とを、
    具備し、
    上記周期検出手段が上記デジタル計量信号を入力すると共にこの入力した信号に含まれている上記定周期振動ノイズのうち最も振幅の大きい定周期振動ノイズの周期を検出し、少なくとも上記計数手段の計数が所定の数に達するまで又は上記判定手段が上記フィルタ定数出力手段から出力される上記フィルタ定数の略総和が上記予め定めた値以上であると判定するまで、上記濾波手段によって濾波処理された信号を上記濾波処理前のデジタル計量信号に替えて上記周期検出手段に帰還入力させることを特徴とするフィルタ定数算出装置。
  2. 請求項1に記載のフィルタ定数算出装置において、上記周期検出手段が、上記定周期振動ノイズの周期を検出する際、該定周期振動ノイズの極大値間または極小値間の時間を測定することによって該定周期振動ノイズの周期を決定することを特徴とするフィルタ定数算出装置。
  3. 請求項1又は2に記載のフィルタ定数算出装置において、上記周期検出手段が、上記定周期振動ノイズの周期を検出する際、該定周期振動ノイズを含む信号の上記サンプリングデータに対して複数の予め定めた上記サンプリング数分の移動平均フィルタリングを行い、該移動平均フィルタリングされた後の各サンプリングデータ列のうちバラツキの最も少ないサンプリングデータ列を算出する上記移動平均フィルタリングに使用された上記サンプリング数に対応する時間を、上記定周期振動ノイズの周期とすることを特徴とするフィルタ定数算出装置。
  4. 請求項1、2又は3に記載のフィルタ定数算出装置において、上記周期検出手段が、上記定周期振動ノイズの周期を検出する際、該定周期振動ノイズを含む信号の上記サンプリングデータに対してフーリエ変換演算を行うことによって該定周期振動ノイズの存在する周波数を求め、該周波数に対応する周期を、上記定周期振動ノイズの周期とすることを特徴とするフィルタ定数算出装置。
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