JP4693516B2 - 重量測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、計量台上を走行する車両の全重量等を測定する重量測定方法に関し、詳しくは計量台の荷重センサから出力される重量信号から正確な重量値を求める方法に関するものである。
例えば、図6に示されるように、4個の荷重センサ51,52,53,54にて支持される計量台50上に3個の車軸55,56,57を有する車両58が乗り込み、この計量台50上を走行して降りる場合について考えると、4個の荷重センサ51〜54の出力の和で示される車両58の重量は、図7に示されるようになる。図7において、記号A〜Eで示される各区間は、新たな車軸の計量台50上への乗り降りがなく、計測対象となる1個の車軸または複数個の車軸が計量台50上に滞在している区間であり、区間Aは第1車軸55の荷重、区間Bは第1車軸55と第2車軸56との合計荷重、区間Cは第1車軸55と第2車軸56と第3車軸57との合計荷重、区間Dは第2車軸56と第3車軸57との合計荷重、区間Eは第3車軸57の荷重による重量信号を表している。また、図7における区間A〜区間Eのそれぞれ時間長さを順にTa,Tb,Tc,Td,Teとし、区間A〜区間Eのそれぞれの重量信号から求めた重量測定値を順にWa,Wb,Wc,Wd,Weとすると、車両58の全重量、つまり全車軸55〜57の合計重量は、Wc,(Wa+Wd),(Wb+We)のいずれかの値から求めることができる。
なお、一般に、車両58が計量台50上に乗り降りした際に生成される重量信号は、図7に示されるような減衰振動信号となり、急激に立ち上がって素早く安定するような過渡応答とはならない。すなわち、計量器は計量器構造と車両58の質量で決まる2次の振動系をなすので、車軸55〜57の重量負荷がステップ信号状に入力しても出力される重量信号の過渡応答は立ち上がりに遅れを生じ、かつ振動信号が現れる。この過渡応答振動信号には、計量器と車両58の質量とによって発生する固有振動や、車両58のばね系に加わる衝撃力によって車両58から与えられる成分が大きく含まれる。この過渡応答振動信号は時間の経過と共に減衰するので、計測対象となる1個の車軸または複数個の車軸の計量台50上での滞在時間が長ければ長いほど正確な測定値を得ることができる。
従来、図7に示される重量信号に基づき車両58の全重量(車両58の全車軸55〜57の合計重量)を求めるものとして、例えば特許文献1にて提案されている自動計重システムがある。この自動計重システムでは、区間A〜区間Eの時間長さの関係がTaまたはTd>Tc>TbまたはTeである場合に、区間の時間長さが比較的長い区間Aおよび区間Dの重量測定値Wa,Wdを合計することにより、車両58の全重量を高精度で求めるようにされている。
特開平1−148917号公報
図7に示されるように、区間Aおよび区間Dの時間長さTa,Tdのいずれもが区間Cの時間長さTcよりも長い場合であっても、合計重量測定値(Wa+Wd)の方が重量測定値Wcより高い精度であるとは限らない。例えば、区間Aの時間長さTaに対するWaの繰り返し測定値の標準偏差および区間Dの時間長さTdに対するWdの繰り返し測定値の標準偏差がそれぞれsで、区間Cの時間長さTcに対するWcの繰り返し測定値の標準偏差が1.2sであったとすると、合計重量測定値(Wa+Wd)のばらつきの大きさは、
(s+s1/2=(2s1/2=1.414s
となり、重量測定値Wcの単独のばらつきの大きさ1.2sよりも大きくなる。つまり、重量測定値Wcの値をもって車両58の全重量値とした方がより高い精度で車両58の全重量を求めることができる。したがって、前記特許文献1に係る自動計重システムでは、車両58の全重量を高い精度で求めることができない場合があるという問題点がある。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、車両の全重量等をより高い精度で求めることのできる重量測定方法を提供することを目的とするものである。
前記目的を達成するために、第1発明による重量測定方法は、
車両の車軸が計量台上に乗り降りした際に生成される時系列サンプリング重量信号に対して安定領域を設定するとともに、この安定領域内にある時系列サンプリング重量信号の中に重量値取得区間を設定し、この重量値取得区間における時系列サンプリング重量信号から計量台上にある1個の車軸または複数個の車軸の重量測定値を求め、この重量測定値もしくはその重量測定値の組み合わせ演算結果から前記車両における特定の車軸の重量値または全車軸の合計重量値を求める重量測定方法において、
前記重量測定値もしくはその重量測定値の組み合わせ演算結果から前記特定の車軸の重量値または前記全車軸の合計重量値を算出する算出法を複数種類設定し、前記時系列サンプリング重量信号の中に設定された重量値取得区間の時間長さに応じて現れる重量測定値のばらつきの大きさに基づいて、前記複数種類の算出法の中から前記特定の車軸の重量値または前記全車軸の合計重量値を最も高精度に求めることのできる算出法を選択し、この選択された算出法によって前記特定の車軸の重量値または複数個の前記全車軸の合計重量値求めることを特徴とするものである。
また、第2発明による重量測定方法は、
車両の車軸が計量台上に乗り降りした際に生成される時系列サンプリング重量信号に対して安定領域を設定するとともに、この安定領域内にある時系列サンプリング重量信号の中に重量値取得区間を設定し、この重量値取得区間における時系列サンプリング重量信号から計量台上にある1個の車軸または複数個の車軸の重量測定値を求め、この重量測定値もしくはその重量測定値の組み合わせ演算結果から前記車両における特定の車軸の重量値または全車軸の合計重量値を求める重量測定方法において、
前記重量測定値もしくはその重量測定値の組み合わせ演算結果から求められる複数個の前記特定の車軸の重量値または複数個の前記全車軸の合計重量値と、この複数個の前記特定の車軸の重量値または複数個の前記全車軸の合計重量値の組み合わせ平均演算によって求められる平均値とにおけるそれぞれの値のばらつきの大きさを比較してそのばらつきの大きさが最小である値を選択することを特徴とするものである。
第1発明または第2発明において、前記ばらつきの大きさの比較は、前記重量値取得区間の時間長さに応じて設定される基準ばらつき量を基にして行われるのが好ましい(第3発明)。
第3発明において、前記基準ばらつき量は、前記重量値取得区間における時系列サンプリング重量信号に含まれる振動信号の周期数の大きさに応じて決定されるのが好ましい(第4発明)。
第1発明においては、例えば、図7に示される重量信号に基づく重量測定値もしくはその重量測定値の組み合わせ演算結果から車両の全車軸の合計重量値としてWc,(Wa+Wd)が求められるとともに、このWcと(Wa+Wd)との平均値(Wc+Wa+Wd)/2が求められる。ここで、区間Aの時間長さTaに対するWaの繰り返し測定値の標準偏差および区間Dの時間長さTdに対するWdの繰り返し測定値の標準偏差がそれぞれsで、区間Cの時間長さTcに対するWcの繰り返し測定値の標準偏差が1.2sであったとすると、(Wa+Wd)のばらつきの大きさは、
(s+s1/2=(2s1/2=1.414s
となる。さらに、Wcと(Wa+Wd)との平均値のばらつきの大きさは、
[{(1.2s)+2s}1/2]/2=(3.44s1/2/2=1.85s/2=0.925s
となり、Wc単独のばらつきの大きさ(=1.2s)や、(Wa+Wd)のばらつきの大きさ(=1.414s)よりも小さくなる。したがって、車両の全重量を従来よりも高い精度で求めることができる。なお、これと同様の考え方により、車両の特定の車軸重量を従来よりも高い精度で求めることができる。この第1発明によれば、重量測定値もしくはその重量測定値の組み合わせ演算結果から特定の車軸の重量値または全車軸の合計重量値を算出する算出法が数種類設定され、この複数種類の算出法の中から特定の車軸の重量値または全車軸の合計重量値を最も高精度に求めることのできる算出法が選択され、この選択された算出法によって特定の車軸の重量値または全車軸の合計重量値が求められるので、特定の車軸の重量値または全車軸の合計重量値をより高い精度で求めることができる。
第2発明によれば、重量測定値もしくはその重量測定値の組み合わせ演算結果から求められる複数個の特定の車軸の重量値または複数個の全車軸の合計重量値と、この複数個の特定の車軸の重量値または複数個の全車軸の合計重量値の組み合わせ平均演算によって求められる平均値とにおけるそれぞれの値のばらつきの大きさが比較されてそのばらつきの大きさが最小である値が選択されるので、特定の車軸の重量値または全車軸の合計重量値をより高い精度で求めることができる。ここで、重量値取得区間の時間長さに応じて設定される基準ばらつき量、より具体的に言えば重量値取得区間における時系列サンプリング重量信号に含まれる振動信号の周期数の大きさに応じて決定される基準ばらつき量を基にして前記ばらつきの大きさの比較が行われるようにすることにより、車軸間距離や計量台寸法、車両の走行速度等の変化に応じて特定の車軸の重量値または全車軸の合計重量値をより高い精度で求めることができる。
次に、本発明による重量測定方法の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る重量測定装置のブロック図が示されている。本実施形態は、図6に示される従来装置と同様、4個の荷重センサにて支持される計量台上に3個の車軸を有する車両が乗り降りした際に生成される時系列サンプリング重量信号波形を例に挙げ、特定の車軸の重量値または全車軸の合計重量値の求め方を説明するものである。なお、装置構成図については図6に示される従来例と同様であるため省略する。
本実施形態の重量測定装置1は、図1に示されるように、4個の荷重センサ(ロードセル)51,52,53,54にて検出された歪み量に応じたアナログ荷重信号をそれぞれ増幅する増幅器2,3,4,5と、そのアナログ荷重信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換器(A/D変換器)6,7,8,9と、それらデジタル信号がI/O回路10を介して入力される計測ユニットとしての演算処理装置(CPU)11とを備えている。ここで、演算処理装置11は、所定プログラムを実行することにより所要の演算処理を行うように構成されている。
前記演算処理装置11は、前記プログラムおよび各種データを記憶するROM,RAM,EEPROM等からなるメモリ12に接続されるとともに、I/O回路10を介して、各種データの入力等を行うキースイッチ(入力手段)13および各種のデータを表示する表示器14に接続されている。
このように構成される重量測定装置1において、荷重センサ51〜54より出力される重量信号は、被計量物の質量を含む計量台50(図6参照)の固有振動数および車両58のばねによる振動ノイズ信号の周期に比べて、十分短い時間間隔でA/D変換器6〜9から生ずるサンプリング重量信号(サンプリング重量値)Wsとして連続的に生成されているものとする。また、このサンプリング重量値Wsは、予め計量台50の自重等の風袋分が差し引かれ、計量台50上の被計量物そのものの重量値を示すものとする。
車両58の車軸が計量台50上に乗り降りした際に4個の荷重センサ51〜54の出力の和で表される時系列サンプリング重量信号は、図7のグラフで示されるようになる。本実施形態では、この図7に示される時系列サンプリング重量信号に対して安定領域を設定するとともに、この安定領域内にある時系列サンプリング重量信号の中に重量値取得区間を設定し、この重量値取得区間における時系列サンプリング重量信号から計量台上にある1個の車軸または複数個の車軸の重量測定値が求められる。この図7において、記号A〜Eで示される各区間は、新たな車軸の計量台50上への乗り降りがなく、計測対象となる1個の車軸または複数個の車軸が計量台50上に滞在している区間であり、区間Aは第1車軸55の荷重、区間Bは第1車軸55と第2車軸56との合計荷重、区間Cは第1車軸55と第2車軸56と第3車軸57との合計荷重、区間Dは第2車軸56と第3車軸57との合計荷重、区間Eは第3車軸57の荷重による重量信号を表している。ここで、図7における区間A〜区間Eのそれぞれ時間長さを順にTa,Tb,Tc,Td,Teとし、区間A〜区間Eのそれぞれの重量信号から求めた重量測定値を順にWa,Wb,Wc,Wd,Weとする。なお、安定領域と重量値取得区間の設定方法については後に詳述することとする。
前記重量測定値もしくはその重量測定値の組み合わせ演算結果から車両58における特定の車軸の重量値または全車軸の合計重量値を複数個求めることができる。すなわち、複数個の全車軸の合計重量値m01,m02,m03は次の(1)〜(3)式により、また複数個の第1車軸重量値m11,m12,m13は次の(4)〜(6)式により、また複数個の第2車軸重量値m21,m22,m23は次の(7)〜(9)式により、また複数個の第3車軸重量値m31,m32,m33は次の(10)〜(12)式により、それぞれ求められる。
m01=Wc ・・・(1)
m02=Wa+Wd ・・・(2)
m03=Wb+We ・・・(3)
m11=Wa ・・・(4)
m12=Wc−Wd ・・・(5)
m13=Wb−(Wd−We) ・・・(6)
m21=Wd−We ・・・(7)
m22=Wb−Wa ・・・(8)
m23=Wc−(Wa+We) ・・・(9)
m31=We ・・・(10)
m32=Wc−Wb ・・・(11)
m33=Wd−(Wb−Wa) ・・・(12)
さらに、複数個の前記全車軸の合計重量値m01,m02,m03の組み合わせ平均演算によって求められる平均値は次の(13)〜(16)式で表される。
(m01+m02)/2 ・・・(13)
(m01+m03)/2 ・・・(14)
(m02+m03)/2 ・・・(15)
(m01+m02+m03)/3 ・・・(16)
また、複数個の前記第1車軸重量値m11,m12,m13の組み合わせ平均演算によって求められる平均値は、次の(17)〜(20)式で表される。
(m11+m12)/2 ・・・(17)
(m11+m13)/2 ・・・(18)
(m12+m13)/2 ・・・(19)
(m11+m12+m13)/3 ・・・(20)
また、複数個の前記第2車軸重量値m21,m22,m23の組み合わせ平均演算によって求められる平均値は、次の(21)〜(24)式で表される。
(m21+m22)/2 ・・・(21)
(m21+m23)/2 ・・・(22)
(m22+m23)/2 ・・・(23)
(m21+m22+m23)/3 ・・・(24)
また、複数個の前記第3車軸重量値m31,m32,m33の組み合わせ平均演算によって求められる平均値は、次の(25)〜(28)式で表される。
(m31+m32)/2 ・・・(25)
(m31+m33)/2 ・・・(26)
(m32+m33)/2 ・・・(27)
(m31+m32+m33)/3 ・・・(28)
このように本実施形態においては、車両58の全車軸の合計重量値の求め方として前記(1)〜(3)式および前記(13)〜(16)式で表される7通りの算出法が設定され、車両58の第1車軸重量値の求め方として前記(4)〜(6)式および前記(17)〜(20)式で表される7通りの算出法が設定され、車両58の第2車軸重量値の求め方として前記(7)〜(9)式および前記(21)〜(24)式で表される7通りの算出法が設定され、車両58の第3車軸重量値の求め方として前記(10)〜(12)式および前記(25)〜(28)式で表される7通りの算出法が設定される。なお、これら(1)〜(28)式は予めメモリ12に記憶される。
次に、図7に示される時系列サンプリング重量信号に対する安定領域と重量値取得区間の設定方法について以下に説明することとする。
本実施形態において、4個の荷重センサ51〜54の出力の和で表されるサンプリング重量値Wsは、前述したように、図7のグラフで示されるようになる。図2には、本実施形態の重量測定装置において、被計量物(車両58)の重量値の零付近の状態と、第1車軸が計量台上に乗り込んだときの重量信号の変化状態が示されている。
前記メモリ12内に最大値レジスタwmaxと最小値レジスタwminとを設けるとともに、計量台50上の被計量物(車両58)のサンプリング重量値Wsの零値近傍に±Wzuの範囲を設定する。そして、サンプリング重量値Wsが次式
|Ws|<Wzu ・・・(29)
を満たせば、計量台上には被計量物がない状態であると判定する。そして、この(29)式が成立すると、サンプリング重量値Wsは零付近にあるとし、その場合に、最大値レジスタwmaxにWsを入れ、最小値レジスタwminに−Wzuを入れる。こうして、新たなサンプリング重量値Wsが測定されるたびに、最大値レジスタwmaxに記憶されているwmaxの値とサンプリング重量値Wsの値とを比較し、Ws>wmaxなら、そのサンプリング重量値Wsを最大値レジスタwmaxに入れて最大値レジスタwmaxを更新する。なお、最小値レジスタwminについては、更新せずに−Wzuのまま固定しておく。
また、最大値レジスタwmaxの値が更新されるたびに、その値wmaxと最小値レジスタwminの値との偏差が設定値Whを越えるか否かの判定、言い換えれば(30)式が成立するか否かの判定を行う。
wmax−wmin>Wh ・・・(30)
ここで、設定値Whは、車軸が計量台50上へ乗り込んだこと、あるいは計量台50から降りたことを判定するのに十分な大きさの重量値(例えば、最も軽い車軸重量の1/2の値)が設定される。
図2において、t=tで(30)式が成立したとすると、第1車軸55が計量台50上に乗り込んだと判定し、この時点から時間経過とともに計量台50上に第1車軸55が完全に乗り込んだときに現れるサンプリング重量信号(サンプリング重量値)の極大値Wmax1(図3参照;以下、「第1極大値Wmax1」という。)を検出する作業に入る。すなわち、時間経過に応じて生成されて時系列に記憶されるサンプリング重量値Wsの大小比較を行うことにより第1極大値Wmax1を検出する。なお、図3(a)(b)(c)には、計量台上に車両が走行しながら乗り込んだときの車両の速度(もしくは第1車軸55と第2車軸56との距離、または計量台寸法)によってサンプリング重量値Wsの波形が変化する様子が示されている。(a)は車軸の乗り込みが遅い場合で、(b)は(a)より速い場合、(c)は(b)より速い場合をそれぞれ示している。
本実施形態においては、車軸の乗り込み時に生じるピーク信号である第1極大値Wmax1を回避し、この第1極大値Wmax1の次に生成される極小値(第1極小値)Wmin1を安定領域の始端(t=0)に定めている。その理由は、第1極小値Wmin1以前に生成される重量信号は、車軸の乗り込みによる大きな衝撃外乱ノイズを含んでいるからである。ただし、第1極小値Wmin1は、重量値取得区間の開始点ではなく終了限界点とする。
次いで、第1極小値Wmin1を検出した後は、時間経過に応じて生成されるサンプリング重量値Wsをメモリ12に時系列に記憶させる。そして、最小値レジスタwminと最大値レジスタwmaxにその第1極小値Wmin1の値を入れ、順次生成されるサンプリング重量値Wsと最小値レジスタwmin、最大値レジスタwmaxの値とをそれぞれ比較し、Ws>wmaxであればWsの値を最大値レジスタwmaxに入れ、Ws<wminであればWsの値を最小値レジスタwminに入れる。なお、最小値レジスタwminについては、第1極小値Wmin1の値を入れるとそれ以降は更新させずに固定させても良い。また、第1極小値Wmin1が検出されると、この第1極小値Wmin1に適当な係数k(例えばk=1.05)を掛けた値k・Wmin1を最小値レジスタwminに入れてそれ以降は更新させずに固定させても良い。
前述の操作を繰り返しながら、第1極小値Wmin1以降のサンプリング重量値Wsにその第1極小値Wmin1より一定値Whを越える大きな値w〈p〉を検出すれば((30)式が成立すれば)、第2車軸56が計量台50上に乗り込んだと判断して、サンプリング重量値Wsの記憶操作を終了させる。
続いて、メモリ12に記憶されている時系列サンプリング重量値Wsを時間経過と反対方向に遡って、直前の極小値wmin0を検出する。そして、この極小値wmin0が生成された時点(あるいはその極小値の周辺の値、またはそれより時間的に古い記憶サンプリング重量値)を安定領域の終端と定義するとともに、重量値取得区間の開始点(一方端)と定義する。なお、この重量値取得区間の開始点は、車軸が計量台50上から降りることによって生ずる立下り信号の場合には極大値となる。
ここで、重量値w〈p〉を検出した後に極小値wmin0を検出するには、重量値w〈p〉が検出された時点から時系列に記憶されたサンプリング重量値のデータを時間的に古い方向へと逐次比較しながら遡り、単調減少していた古い時点の値が初めて増加に転じたとき、この増加に転じる直前のデータが極小値wmin0であるとする。以下、同様にしてwmin1,wmax1,・・・を検出するようにする。Wmin1をt=0のタイミングに置いておけば、wminx(x=1,2,3,・・・)を検出したタイミングがt=0であれば、wminx=Wminxであることを判定することができる。
安定領域の終端を上述のように定めるのは、次の車軸が新たに計量台上に乗り込むことによって重量信号が増加すると、この増加した重量信号はもはや重量測定に使用することができないからである。すなわち、新たな車軸が計量台上に乗り込むとサンプリング重量値は大きく単調増加するので、この単調増加する直前の極小値を検出すれば、少なくともその極小値の現れた時点においては、まだ次の車軸によってサンプリング重量値が確実に影響を受けていない最終の領域にあると判定することができるからである。
安定領域に入った重量信号が通常のノイズによる振動でなく大きく変化するのは車軸の乗り降りの場合のみであり、この車軸の乗り降りによって一旦重量信号が大きく変化を開始してしまえば、重量信号は単調減少または単調増加となって極値が現れることはない。したがって、重量信号が大きく変化する直前の極値は、少なくとも未だ計量台に対する車軸の乗り降りがない状態であることが確実に判定でき、しかも過渡応答振動が最小限に収束している最終のタイミングであると判定できる。
一方、重量値取得区間の終了点(他方端)は、重量値取得区間の開始点(極小値wmin0生成時点)から順次時間経過と反対方向に遡り、n(本実施形態においてはn=2)個目の極小値wmin2の生成時点とする。なお、nの値は任意の整数を設定できるものとする。こうして、過渡応答の開始点からできるだけ時間的に離れ、外乱信号ができるだけ収束する領域のサンプリング重量値を得ることができる。
なお、図3(b)に示されるように、極小値wmin0から遡って2個目の極小値wmin2が、終了限界点である第1極小値Wmin1と一致すればその終了限界点を重量値取得区間の終了点とし、また、図3(c)に示されるように、2個目の極小値を検出できない場合には、強制的に第1極小値Wmin1の生成時点を終了点に定めることとする。
また、次の車軸が乗り込むことによって重量信号が単調増加するタイミングは、振動信号の周期とは非同期であるため、図4の記号aにて示されるように振動信号が次の極小値に向う途中に生ずる場合がある。この場合、重量値取得区間の開始点wmin0と、その直前の極小値wmin1との間隔bは振動信号の1周期分cよりも短くなる。これを考慮し、重量値取得区間の開始点をwmin0ではなく、wmin1に指定する方が好ましい。しかし、終了限界点Wmin1から十分な時間が経過しておらず、しかも図3(c)に示されるように安定領域が短く、Wmin1=wmin1の場合にはwmin0を開始点とせざるを得ない。
本実施形態では、過渡応答信号の立ち上がり完了時点から時間が経過した領域であって、次に新たに車軸が計量台上へ乗り込む直前の測定対象車軸の重量信号が最も安定しているサンプリング重量値を捉えて、この重量値を重量値取得区間の開始点とし、この開始点から時間経過を遡る方向に重量値取得区間を定めるようにされている。これにより、過渡応答開始付近の衝撃外乱ノイズの影響が大きい時間領域のサンプリング重量信号を排除することができ、測定精度をより高めることができる。
本実施形態においては、振動波の整数周期分を重量値取得区間に取り、この重量値取得区間におけるサンプリング重量値の平均値を求めることで、振動成分を効率良く除去することができるので、この重量値取得区間として、開始点が極小値の場合には終了点も極小値にし、開始点が極大値の場合には終了点も極大値にするように区間を設定するのが好ましい。こうすることで、高い精度で重量値を求めることができる。
上述の説明では、計量台50上へ車軸が乗り込む場合に計量台50上にある車軸重量を求める場合、すなわち区間A、区間Bおよび区間Cの重量測定値を求める場合の考え方を述べているが、計量台50から車軸が降りる場合に計量台上に残っている車軸の重量を求める場合、すなわち区間Dおよび区間Eの重量測定値を求める場合にも同様の考え方を適用することができる。
図5に示されるように、計量台50上から前の車軸が降りると、重量信号は大きく下降し、マイナス方向のピーク値(第1極小値)Wmin1が現れ、続いてプラス方向に第1極大値Wmax1が現れる。この場合には、第1極大値Wmax1以降を安定領域と定め、この安定領域以降のサンプリング重量値を時系列にメモリ12へ記憶させる。この後、計量対象になっている車軸が計量台50上から降りると、第1極大値Wmax1に対して設定値Wh以上小さいサンプリング重量値w〈p〉が現れるので、ここでサンプリング重量値の記憶を終了させ、メモリ12に記憶されているデータでもって時系列に時間経過を遡って極大値wmax0を検出し、この極大値wmax0を重量値取得区間の開始点とし、この極大値wmax0から遡って2番目の極大値wmax2までの間のサンプリング重量値から重量値を算出する。なお、安定領域の開始点は、もう1周期遅らせて第2極大値wmax2としても良い。
さらに、本実施形態においては、適当な荷重の荷物を積載したテスト車両を種々の速度で計量台50上を繰り返し走行させるテスト走行を実施することにより、重量値取得区間の時間長さと、その重量値取得区間の重量信号から求められる重量測定値のばらつき量との関係が予め求められる。すなわち、例えば、重量値取得区間の時間長さを、(a)振動信号の1周期未満の時間長さ、(b)振動信号の1周期分を確保できる時間長さ、(c)振動信号の2周期分以上を確保できる時間長さ、の3通りの場合に分けて定義する。区間A〜区間Eのいずれかの区間、例えばB区間における重量値取得区間が前記定義した(a)〜(c)の時間長さをそれぞれ複数回取るようにテスト車両の走行速度を変化させ、各時間長さ別に重量測定値の平均標準偏差を求める。過渡応答信号の性質から、前記(c)の時間長さの場合の重量信号が最も安定しているので、前記(c)の時間長さの場合における重量測定値の平均標準偏差σを基準にして、前記(a)の時間長さおよび前記(b)の時間長さのそれぞれの場合における重量測定値の平均標準偏差と比較する。これにより、前記(a)の時間長さの場合における重量測定値のばらつき量s1(以下、「基準ばらつき量s1」と称する。)、前記(b)の時間長さの場合における重量測定値のばらつき量s2(以下、「基準ばらつき量s2」と称する。)および前記(c)の時間長さの場合における重量測定値のばらつき量s3(以下、「基準ばらつき量s3」と称する。)はそれぞれ次の(31)式、(32)式および(33)式で表される。
s1=p2・σ ・・・(31)
s2=p1・σ ・・・(32)
s3=σ ・・・(33)
ここに、p1,p2は係数である。
なお、重量値取得区間の時間長さの場合分けとして、更に(d)振動信号の3周期分以上を確保できる時間長さの場合を設けて、その場合の平均標準偏差を基準にしてより詳細にばらつき量の程度を定義してもよい。
こうして、ある車両の重量信号を測定したときに現れる区間A〜区間Eにおける重量値取得区間の時間長さが前記(a)〜(c)の時間長さのいずれに属するかを判定することによって重量値取得区間の重量信号から求められる重量測定値Wa〜Weのばらつき量を判定することができる。
重量測定値Wa,Wb,Wc,Wd,Weのばらつき量をそれぞれsa,sb,sc,sd,seとすると、例えば全車軸の合計重量を求める場合の各種算出法(前記(1)〜(3)式および前記(13)〜(16)式)によるばらつきの大きさq01,q02,q03,q04,q05,q06,q07は次の(34)〜(40)式で表される。
q01=sc ・・・(34)
q02=(sa+sd1/2 ・・・(35)
q03=(sb+se1/2 ・・・(36)
q04=(sc+sa+sd1/2/2 ・・・(37)
q05=(sc+sb+se1/2/2 ・・・(38)
q06=(sa+sd+sb+se1/2/2 ・・・(39)
q07=(sc+sa+sd+sb+se1/2/3 ・・・(40)
なお、これら(34)〜(40)式も予めメモリ12に記憶される。
車両速度(もしくは車軸間距離または計量台寸法)によって重量値取得区間の長さは変化し、この変化した重量値取得区間の重量信号から求められる重量測定値Wa〜Weのばらつき量sa〜seは変化する。ただし、重量測定値Wa〜Weのばらつき量sa〜seは車軸重量の大きさによっても変化するが、この場合は各軸の重量値がほぼ同時に増減するのでばらつき量sa〜seは相対的に同じ傾向をもって変化するとみなす。本実施形態においては、ばらつき量sa〜seを相対的に評価するのでそのばらつき量sa〜seが同じ傾向をもって増減する場合を考慮に入れない。しかし、より厳密な精度補償を目指す場合には、車両の積載荷重を増減させてA〜Eの各区間の重量測定値のばらつき量の増減を調べ、前記(a)〜(c)の各時間長さについてのばらつき量を測定した車軸重量の関数として取り扱っても良い。
前記(a)〜(c)の時間長さに対応する重量測定値の基準ばらつき量s1〜s3の値(p2・σ,p1・σ,σ)をメモリ12に記憶させた上で任意の車両に対して測定を開始する。3個の車軸を有する車両が計量台を乗り降りした際には図7に示されるような重量信号が現れる。しかし、車軸間距離や走行速度の状態、計量台の寸法によってA〜Eの各区間における重量値取得区間の時間長さは前記(a)〜(c)の時間長さのいずれであるかは個々の事例によって異なる。個々の事例毎に、A〜Eの各区間における重量値取得区間の時間長さが前記(a)〜(c)の時間長さのいずれであるかを判定し、その判定結果に対応する基準ばらつき量s1〜s3の値(p2・σ,p1・σ,σ)に基づいて重量測定値Wa〜Weのばらつき量sa〜seを求め、求められたばらつき量の値を(34)式〜(40)に代入し、全車軸の合計重量を求める各種算出法((1)〜(3)式および前記(13)〜(16)式)によるばらつきの大きさを比較する。ばらつきの大きさが最も小さい算出法が、今回の合計重量値を求める算出法として最適であるので、この算出法によって求められた合計重量値を最終的な計測結果として選択して表示器14等に出力する。
例えば、区間Aの時間長さTaに対するWaの繰り返し測定値の標準偏差および区間Dの時間長さTdに対するWdの繰り返し測定値の標準偏差がそれぞれsで、区間Cの時間長さTcに対するWcの繰り返し測定値の標準偏差が1.2sであったとすると、合計重量測定値(Wa+Wd)のばらつきの大きさは、
(s+s1/2=(2s1/2=1.414s
となり、重量測定値Wcの単独のばらつきの大きさ1.2sよりも大きくなる。つまり、重量測定値Wcの値をもって車両58の全重量値とした方がより高い精度で車両58の全重量を求めることができる。さらに、Wcと(Wa+Wd)との平均値のばらつきの大きさは、
[{(1.2s)+2s}1/2]/2=(3.44s1/2/2=1.85s/2=0.925s
となり、重量測定値Wcの単独のばらつきの大きさ(=1.2s)や、(Wa+Wd)のばらつきの大きさ(=1.414s)よりも小さくなる。したがって、この場合は、車両58の全重量値としてWcと(Wa+Wd)との平均値が選択される。しかし、車両速度等の変化によって区間Cの時間長さが先の例よりも短くなり、Wcの繰り返し測定値の標準偏差が先の例の1.2sから3sに変化した場合に、Wcと(Wa+Wd)との平均値のばらつきの大きさは、
[{(3s)+2s}1/2]/2=1.658s
となり、(Wa+Wd)のばらつきの大きさ(=1.414s)よりも大きくなる。したがって、この場合は、車両58の全重量値として(Wa+Wd)の値が選択される。
なお、第1車軸重量値〜第3車軸重量値のそれぞれの求め方についても、前述の全車軸の合計重量を求める場合と同様の考え方を適用することができる。すなわち、第1車軸重量値の求め方を例に挙げて説明すると、個々の事例毎に、A〜Eの各区間における重量値取得区間の時間長さが前記(a)〜(c)の時間長さのいずれであるかを判定し、その判定結果に対応する基準ばらつき量s1〜s3の値(p2・σ,p1・σ,σ)に基づいて重量測定値Wa〜Weのばらつき量sa〜seを求め、求められたばらつき量の値を基にして第1車軸重量値を求める各種算出法((4)〜(6)式および(17)〜(20)式)によるばらつきの大きさを比較する。そして、ばらつきの大きさが最も小さい算出法によって求められた第1車軸重量値を最終的な計測結果として選択して表示器14等に出力する。
また、前述の説明では3個の車軸を有する車両を例に挙げて車両重量の求め方を述べているが、車軸数が変化しても計量台寸法が変化しても同様の考え方を適用することができるのは言うまでもない。
本実施形態によれば、車両における特定の車軸の重量値または全車軸の合計重量値を求めるにあたり、予め重量値取得区間の時間長さ別にその重量値取得区間から得られる重量測定値の基準ばらつき量を求めて定義しておき、また予め特定の車軸の重量値または全車軸の合計重量値を求める各種算出法も定めておき、実際の計測時には得られた重量値取得区間毎に時間長さを判定して基準ばらつき量を決定し、決定した基準ばらつき量を基にして前記各種算出法によるばらつきの大きさを求め、このばらつきの大きさが最も小さい算出法によって求められた特定の車軸の重量値または全車軸の合計重量値を最終的な計測結果として選択するようにされているので、車軸間距離や計量台寸法、走行速度等によって重量値取得区間の時間長さが変化したとしても、特定の車軸の重量値または全車軸の合計重量値をより高い精度で求めることができる。
本発明の一実施形態に係る重量測定装置のブロック図 車両の第1車軸が計量台に乗り込む前後の重量信号の変化を示す波形図 計量台上に車両が走行しながら乗り込んだときの車両の速度等によって重量信号が変化する様子を示す波形図 重量信号が極小値を迎える前に急激に立ち上がる場合を説明する波形図 車軸が計量台から降りる場合の重量信号の変化を示す波形図 従来の重量測定装置の概略構成図 車両が走行して計量台上を移動する際の重量信号の変化を示す波形図
符号の説明
1 重量測定装置
11 演算処理装置
12 メモリ
50 計量台
51〜54 荷重センサ
55 第1車軸
56 第2車軸
57 第3車軸
58 車両

Claims (4)

  1. 車両の車軸が計量台上に乗り降りした際に生成される時系列サンプリング重量信号に対して安定領域を設定するとともに、この安定領域内にある時系列サンプリング重量信号の中に重量値取得区間を設定し、この重量値取得区間における時系列サンプリング重量信号から計量台上にある1個の車軸または複数個の車軸の重量測定値を求め、この重量測定値もしくはその重量測定値の組み合わせ演算結果から前記車両における特定の車軸の重量値または全車軸の合計重量値を求める重量測定方法において、
    前記重量測定値もしくはその重量測定値の組み合わせ演算結果から前記特定の車軸の重量値または前記全車軸の合計重量値を算出する算出法を複数種類設定し、前記時系列サンプリング重量信号の中に設定された重量値取得区間の時間長さに応じて現れる重量測定値のばらつきの大きさに基づいて、前記複数種類の算出法の中から前記特定の車軸の重量値または前記全車軸の合計重量値を最も高精度に求めることのできる算出法を選択し、この選択された算出法によって前記特定の車軸の重量値または複数個の前記全車軸の合計重量値求めることを特徴とする重量測定方法。
  2. 車両の車軸が計量台上に乗り降りした際に生成される時系列サンプリング重量信号に対して安定領域を設定するとともに、この安定領域内にある時系列サンプリング重量信号の中に重量値取得区間を設定し、この重量値取得区間における時系列サンプリング重量信号から計量台上にある1個の車軸または複数個の車軸の重量測定値を求め、この重量測定値もしくはその重量測定値の組み合わせ演算結果から前記車両における特定の車軸の重量値または全車軸の合計重量値を求める重量測定方法において、
    前記重量測定値もしくはその重量測定値の組み合わせ演算結果から求められる複数個の前記特定の車軸の重量値または複数個の前記全車軸の合計重量値と、この複数個の前記特定の車軸の重量値または複数個の前記全車軸の合計重量値の組み合わせ平均演算によって求められる平均値とにおけるそれぞれの値のばらつきの大きさを比較してそのばらつきの大きさが最小である値を選択することを特徴とする重量測定方法。
  3. 前記ばらつきの大きさの比較は、前記重量値取得区間の時間長さに応じて設定される基準ばらつき量を基にして行われる請求項1または2に記載の重量測定方法。
  4. 前記基準ばらつき量は、前記重量値取得区間における時系列サンプリング重量信号に含まれる振動信号の周期数の大きさに応じて決定される請求項3に記載の重量測定方法。
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