JP3853868B2 - 水中油型乳化組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、皮膚に塗布したときの使用感にこくがあり、低温での安定性に優れ、かつ高度な安全性を有する乳化組成物に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
クリームや乳液等の化粧用の乳化組成物は、その製造過程において、水分と油分同士の分散系であるエマルションを形成させるための乳化を行うことが必須である。
乳化を行う目的で乳化組成物中に配合する乳化剤としては、現在種々の界面活性剤が一般的に用いられている。
この界面活性剤を乳化剤として用いる際の選択基準として、優れた乳化力を有することが望ましいことは勿論であるが、使用者の安全を十分に保証し得る安全性が確保された界面活性剤を用いることが肝要である。
そのため、現在乳化力及び安全性に優れた界面活性剤が乳化剤として乳化組成物中に配合されている。
【0003】
そして、なお一層の高度な安全性を追求するために、界面活性剤を配合することなしに乳化を行う試み、例えば界面活性剤を配合する代わりに、安全性が高くかつ乳化力を有する特定のアルキル変性カルボキシビニルポリマーを乳化組成物中に添加することで乳化を行う試みも現在なされている。
しかしながら、このようにして得られる乳化組成物には、乳化組成物の属性として一般的に望まれる「使用時のこく」に欠ける面があることは否めなかった。
この問題を解決するために、室温で固形状の油性成分を乳化組成物の製造工程において、配合する試みがなされてはいるが、この固形状の油性成分は、長期間低温下に放置すると結晶化が進行し、乳化組成物中に析出する傾向が強い。そのため、寒冷地等で低温で保存される可能性がある乳化組成物に関する試みとしては、不都合な面があることも否めなかった。
【0004】
【発明が解決すべき課題】
そこで、本発明が解決すべき課題は、高度な安全性を確保する目的から敢えて界面活性剤を乳化手段としては用いる必要のない乳化組成物において、「こくのある使用感」が十分に保持されており、なおかつ低温での安定性に優れた乳化組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題の解決のために鋭意検討を行った。その結果、水中油型乳化組成物において、上記の従来技術と同様に、乳化手段として特定のアルキル変性カルボキシビニルポリマーを配合し、かつ「こくのある使用感」を付与する目的から室温で固形状の油性成分を配合した場合であっても、内相の油性成分の数平均粒子径を1μm 以下とすることにより、上記の課題を解決し得ることを見出し本発明を完成した。
【0006】
すなわち本発明者は、以下の成分(A)及び(B)を含有し、かつ、実質的に界面活性剤を含有せず、乳化した結果、形成される内相の油性成分の数平均粒子径が、1μm以下である、水中油型乳化組成物を提供する。
(A)アルキル変性カルボキシビニルポリマー
(B)高級アルコール、高級脂肪酸及び高級脂肪酸塩からなる群から選ばれる、1種又は2種以上の室温で固形状である油性成分
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。(A)成分のアルキル変性カルボキシビニルポリマーは、通常増粘剤として用いられるカルボキシビニルポリマー〔例えば、CARBOPOL941(BFGoodrich社製)、ハイビスワコー105(和光純薬社製)等〕と異なり、その配合により、油分を安定して乳化することのできる乳化力を有するものであることが必要である。
【0008】
このような性質を有するアルキル変性カルボキシビニルポリマーとしては、例えばアクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体を例示することができる。
【0009】
また、このような性質を有するアルキル変性カルボキシビニルポリマーとして、通常公知の方法により合成したものを適宜本発明水中油型乳化組成物(以下、本発明乳化組成物ともいう。)における(A)成分とすることも必要であるが、市販品を用いることも可能である。このような市販品としては、代表的なものとして、PEMULEN TR−1又はPEMULEN TR−2(共に、BFGoodrich社製)を挙げることができる。
【0010】
上記のアルキル変性カルボキシビニルポリマーは、それらの1種を単独で本発明乳化組成物中に配合することも可能であり、2種以上を適宜組み合わせて配合することも可能である。
【0011】
また、上記のアルキル変性カルボキシビニルポリマーの本発明乳化組成物における配合量は、具体的な本発明乳化組成物の剤形等の諸条件に応じて個別具体的に決定されるべきものであり、本発明の所期の効果を発揮し得る限りにおいて特に限定されるべきではないが、組成物全体の0.01重量%以上、同10重量%以下が好ましい。すなわち、組成物全体の0.01重量%未満を配合しても乳化力が弱く、逆に同10重量%を越えて配合しても配合量の増大に見合った乳化作用及び低温での乳化安定性の向上を図ることが困難であり好ましくない。
【0012】
また、可能な限り「こくのある使用感」を本発明乳化組成物に付与することが望ましいことを鑑みれば、組成物全体の0.05重量%以上、同5重量%以下の範囲で配合することが特に好ましい。
【0013】
上記アルキル変性カルボキシビニルポリマーを配合することにより、実質的に界面活性剤を含まない本発明乳化組成物が提供される。
すなわち、従来乳化手段として汎用されている界面活性剤、すなわち陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤として通常分類される界面活性剤を配合することなしに、エマルションが形成された本発明乳化組成物が提供される。
【0014】
(B)成分の「室温で固形状である油性成分」は、室温、すなわち、30℃程度でも固形状を呈している、化粧料用組成物に配合可能な油性成分を意味するもので、例えば、「こくのある使用感」を可能な限り向上させるべきであることを鑑みると、高級アルコール、高級脂肪酸又は高級脂肪酸塩(特に、無機塩)等が挙げられる。
【0015】
高級アルコールとしては、例えばラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖高級アルコール;グリセリルモノステアリルエーテル(バチルアルコール)又はグリセリルモノセチルエーテル(キミルアルコール)等の分岐鎖高級アルコール等を挙げることができる。
【0016】
高級脂肪酸としては、例えばカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、2−パルミトレイン酸、エルカ酸等を挙げることができる。また、高級脂肪酸塩としては、上記高級脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の無機塩基塩;トリエタノールアミン塩、トリプロパノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;アルミニウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、カルシウム塩等の金属石鹸;アルギニン塩、リジン塩等の塩基性アミノ酸塩等の塩等を挙げることができる。
【0017】
可能な限り「こくのある使用感」を本発明乳化組成物に付与することが望ましいことを鑑みれば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸又はベヘン酸あるいはこれらの塩を本発明乳化組成物中に配合するのが好ましい。
【0018】
なお、これらの例示した脂肪酸塩の中には、本来は油性成分ではないものも含まれているが、これらの成分も通常の乳化物中で長期間保存すると、一部が脂肪酸の状態となり、固体物質が乳化組成物中で析出するおそれがあるが、後述のごとく、このような場合でも本発明乳化組成物中においては、所期の効果を奏し得る。
【0021】
これらの「室温で固形状である油性成分」の本発明乳化組成物における配合量は、組成物全体の0.5重量%以上、同20重量%以下の範囲で配合され得る。組成物全体の0.5重量%未満の配合では、「こくのある使用感」の向上効果が発揮されず、同20重量%を越えて配合しても配合量の増大に見合った「こくのある使用感」の向上がもはや見られない。また、こくがあり、しかもべたつきがない使用感が得られるという点から、組成物全体の1重量%以上、同10重量%以下の範囲で配合するのが特に好ましい。
【0022】
本発明乳化組成物において、乳化した結果形成される内相(以下、乳化粒子ともいう)の油性成分の数平均粒子径は1μm (直径)以下であることを特徴とする。
このように、本発明乳化組成物中で分散して微粒子状をなす液体部である「内相」の油性成分の数平均粒子径を1μm 以下とするための手段は、特に限定されず、この微粒子化を行うことが可能である限り、あらゆる手段を採ることができる。
【0023】
通常、油性成分と水性成分とを乳化してエマルションを形成させる際には、例えば非水乳化法(鈴木 喬:特公昭57−29213号公報)、D相乳化法(H.Sagitani:J. Am. Oil Chem. Soc.,58,738(1981)) 、転相温度乳化法(K.Shinoda:J.Colloid Interface Sci.,24,4(1969)他) 等の界面科学的乳化法に従うことにより、各種の汎用されている乳化機、例えばホモミキサー、ホモディスパー、ホモジナイザー、コロイドミル、ペブルミル、超音波乳化機等によっても所望する1μm 以下の乳化粒子を調製することができる。しかしながら、かかる手段でこの乳化粒子を調製する場合には、保湿剤の配合や界面活性剤の選定等に際して処方上の制約を受ける点で必ずしも有利とはいえない面がある。
【0024】
これらの従来から汎用されている乳化機とは異なり、100〜1000bar の高圧下で液体をノズルから噴射させることによって乳化を行う「高圧乳化機」は、上記の処方上の制約を受けないという点で本発明乳化組成物を調製する手段とするのに有利である。具体的には、マイクロフルダイザー、ナノマイザー、マントンゴウリン(いずれも商標名)等の市販品を挙げることができる。これらの市販の高圧乳化機の中でも、ナノマイザーは連結溝を有するノズルから高圧下で油性成分と水性成分とを衝突させて微細な乳化粒子を得る装置であり、通常調製される乳化粒子径は1μm 以下と非常に微細であるため、本発明乳化組成物を調製する際の乳化手段として特に好ましい乳化機である。
【0025】
上記の必須成分を含んでなり、かつ乳化粒子が上記範囲の粒子径である本発明乳化組成物は、皮膚に塗布したときの使用感にこくがあり、かつ低温での安定性に優れ、かつ高度な安全性を有する非常に優れた特性を有する。
【0026】
本発明乳化組成物は、水中油型(O/W型)エマルションの形態を基本とする化粧料としての剤形を採り得る。具体的には、乳液,クリーム,クレンジングクリーム,乳化ファンデーション等の剤形や形態を採ることができる。
【0027】
本発明乳化組成物には、上記の必須成分の他に、通常化粧料用組成物に用いられる各種の薬剤及び/又は基剤成分等を付与する薬効や上記の剤形に応じて、その配合により本発明の所期の効果を損なわない限りにおいて配合することができる。
以下、これらの薬剤及び基剤成分等を例示するが、これらに本発明乳化組成物に配合可能な薬剤及び基剤成分等が限定されるものではないことは勿論である。
【0028】
保湿剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、D−マンニット、ソルビット等を本発明乳化組成物中に配合することができる。
【0029】
また、紫外線吸収剤としては、例えばパラアミノ安息香酸等の安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸メチル等のアントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸オクチル,サリチル酸フェニル等のサリチル酸系紫外線吸収剤;パラメトキシケイ皮酸イソプロピル,パラメトキシケイ皮酸オクチル,ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;ウロカニン酸、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-tert-ブチル- 4’- メトキシベンゾイルメタン等を本発明乳化組成物中に配合することができる。
【0030】
また、抗菌剤としては、安息香酸,サリチル酸,石炭酸,ソルビン酸,パラオキシ安息香酸エステル,パラクロルメタクレゾール,塩化クロルヘキシジン,トリクロロカルバニリド,フェノキシエタノール等を本発明乳化組成物中に配合することができる。
【0031】
また、一般薬剤としては、ビタミンA油,レチノール,パルミチン酸レチノール,イノシット,塩酸ピリドキシン,ニコチン酸ベンジル,ニコチン酸アミド,ニコチン酸DL−α−トコフェロール,アスコルビン酸リン酸マグネシウム、ビタミンD2(エルゴカシフェロール),dl-α-トコフェロール,酢酸dl-α-
トコフェロール,パントテン酸,ビオチン等のビタミン類;エストラジオール,エチニルエストラジオール等のホルモン類;アルギニン,アスパラギン酸,シスチン,システイン,メチオニン,セリン,ロイシン,トリプトファン等のアミノ酸;アラントイン,アズレン等の抗炎症剤;アルブチン等の美白剤;塩化亜鉛,タンニン酸等の収斂剤;L−メントール,カンフル等の清涼剤;イオウ,塩化リゾチーム,塩酸ピリドキシン,γ−オリザノール等を本発明乳化組成物中に配合することができる。
【0032】
また、各種の抽出液としては、ドクダミエキス,オウバクエキス,メリロートエキス,オドリコソウエキス,カンゾウエキス,シャクヤクエキス,サボンソウエキス,ヘチマエキス,キナエキス,ユキノシタエキス,クララエキス,コウホネエキス,ウイキョウエキス,サクラソウエキス,バラエキス,ジオウエキス,レモンエキス,シコンエキス,アロエエキス,ショウブ根エキス,ユーカリエキス,スギナエキス,セージエキス,タイムエキス,茶エキス,海藻エキス,キューカンバーエキス,チョウジエキス,キイチゴエキス,メリッサエキス,ニンジンエキス,マロニエエキス,モモエキス,桃葉エキス,クワエキス,ヤグルマギクエキス,ハマメリス抽出液,プラセンタエキス,胸腺抽出物,シルク抽出液等を本発明乳化組成物中に配合することができる。
【0033】
さらに、本発明乳化組成物中に配合し得る基剤成分のうち、液体油脂としては、アマニ油,ツバキ油,マカデミアナッツ油,トウモロコシ油,ミンク油,オリーブ油,アボガド油,サザンカ油,ヒマシ油,サフラワー油,ホホバ油,ヒマワリ油,アーモンド油,ナタネ油,ゴマ油,大豆油,落花生油,トリグリセリン,トリオクタン酸グリセリン,トリイソパルミチン酸グリセリン等を本発明乳化組成物中に配合することができる。
【0034】
また、エステル油としては、オクタン酸セチル,ラウリン酸ヘキシル,ミリスチン酸イソプロピル,パルミチン酸オクチル,ステアリン酸イソセチル,イソステアリン酸イソプロピル,イソパルミチン酸オクチル,オレイン酸イソデシル,トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル,テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット,コハク酸2−エチルヘキシル,セバシン酸ジエチル等を本発明乳化組成物中に配合することができる。
【0035】
また、炭化水素油としては、流動パラフィン,スクワラン,スクワレン,パラフィン,イソパラフィン,セレシン等を本発明乳化組成物中に配合することができる。
【0036】
また、シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン,メチルフェニルポリシロキサン,メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン;オクタメチルシクロテトラシロキサン,デカメチルシクロペンタシロキサン,ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン等を本発明乳化組成物中に配合することができる。
【0037】
また、低級アルコールとしては、メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール等を本発明乳化組成物中に配合することができる。
【0038】
また、水溶性高分子としては、アラビアゴム,カラギーナン,ペクチン,カンテン,クインスシード(マルメロ),デンプン,アルゲコロイド(褐藻エキス)等の植物性高分子;デキストラン,プルラン等の微生物系高分子;コラーゲン,カゼイン,ゼラチン等の動物性高分子;カルボキシメチルデンプン,メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子;メチルセルロース,ニトロセルロース,エチルセルロース,メチルヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系高分子;アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸系高分子;カルボキシビニルポリマー(CARBOPOL等)のビニル系高分子;ポリオキシエチレン系高分子;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子;ポリアクリル酸ナトリウム,ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子;ベントナイト,ケイ酸アルミニウムマグネシウム,ラポナイト等の無機系水溶性高分子等を本発明乳化組成物中に配合することができる。
【0039】
また、金属イオン封鎖剤としては、エデト酸ナトリウム塩,メタリン酸ナトリウム等を本発明乳化組成物中に配合することができる。
【0040】
また、中和剤としては、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール,水酸化カリウム,水酸化ナトリウム,トリエタノールアミン,炭酸ナトリウム等を本発明組成物中に配合することができる。
【0041】
また、酸化防止剤としては、アスコルビン酸,α−トコフェロール,ジブチルヒドロキシアニソール等を本発明乳化組成物中に配合することができる。
【0042】
なお、上記薬剤及び基剤成分は、遊離の状態で使用される他、造塩可能なものは、酸若しくは塩基の塩の型で、またカルボン酸基を有するものはそのエステルの形で使用することができる。
さらに、本発明乳化組成物には、必要に応じて適当な香料,色素等を本発明の所期の効果を損なわない範囲で添加することができる。
本発明の具体的な処方については、後述する実施例において説明する。
【0043】
【実施例】
以下、実施例等により本発明をより具体的に説明する。しかしながら、これらの実施例等により本発明の技術的範囲が限定的に解釈されるべきものではない。なお、以下に重量%とあるのは、特に断らない限り組成物全体に対する重量%を意味する。
【0044】
まず、本実施例等における乳化組成物の評価法について説明する。
<女性専門パネルによる官能試験>
乳化組成物の使用感(こく)について、女性専門パネル10名による官能試験を行った。
「こく」の評価基準
◎:非常に良(10名中9名以上が良と評価)
○:良(10名中7名以上8名以下が良と評価)
△:やや良(10名中3名以上6名以下が良と評価)
×:劣る(10名中2名以下が良と評価)
【0045】
<低温安定性試験1>
乳化組成物を0℃の恒温槽に静置し、6ヵ月後の状態を偏光顕微鏡で観察した。
低温安定性の評価基準
○:結晶の存在が全く認められない。
△:結晶の存在がわずかに認められる。
×:結晶の存在が明確に認められる。
【0046】
<数平均乳化粒子径の測定方法>
調製直後のエマルションを、光学顕微鏡写真撮影装置により写真撮影し、目視により観察した。
【0047】
〔実施例1,2、比較例1〜3〕
第1表に示す処方の乳化組成物を製造し、上記の基準に基づき「使用に際してのこく」及び低温安定性について評価し、数平均乳化粒子径を測定した。これらの評価等の結果も併せて第1表に示す。
【0048】
Figure 0003853868
【0049】
<製法>
油相成分を加熱して液状にし、これを水相成分に添加して、回転式乳化機(ホモミキサー:HM)又は高圧乳化機(ナノマイザー)で乳化した。
【0050】
実施例1及び実施例2共、こく,低温安定性の両者共良好であった。なお、実施例1は、実施例2の処方に加えて、本発明において配合するのに好適な脂肪酸の一つであるステアリン酸が配合してある故、「こくのある使用感」に特に優れていた。
【0051】
また、配合成分が実施例1と同様であっても乳化粒子径が5μm である比較例1は、「こくのある使用感」においては実施例1と同等であるが、低温安定性に関しては劣っていた。このことより、乳化粒子径を1μm 以下に調整することは、本発明乳化組成物に低温安定性を付与するために必要であることが判明した。
【0052】
さらに、「室温で固形状である油性成分」を添加しない比較例2は、低温安定性には優れるが、「こくのある使用感」は劣っていた。このことより、「室温で固形状である油性成分」を配合することは、「こくのある使用感」を本発明乳化組成物に付与するために必要であることが判明した。
次に、上記の実施例1について、その低温安定性についてさらに検討した。
【0053】
<低温安定性試験2>
X線回析測定
上記実施例1及び比較例1のX線回析測定を行った。なお、このX線回析は、その結果によって主に脂肪酸の結晶化の進行度合いを判断することができる。
第1図は、実施例1の乳化組成物を0℃で6ヵ月保存し、この保存後のX線回析の結果を示す図である。
第2図は、比較例1の乳化組成物を0℃で6ヵ月保存し、この保存後のX線回析の結果を示す図である。
【0054】
比較例1は、角度(2θ)15〜25付近に脂肪酸結晶の短面側の回析線が存在し、結晶化(不安定化)が進行していることがわかる。一方、実施例1では脂肪酸結晶の短面側の回析線はほとんど見られず、結晶化の進行が遅いことがわかる。
【0055】
以下に、種々の本発明乳化組成物の処方を記載する(それぞれの製法は、上記実施例1及び2と同様にして行った。)。なお、これらの乳化組成物に、上記の試験を行ったところ、いずれも「こくのある使用感」を有し、かつ低温安定性に優れるものであった。
【0056】
Figure 0003853868
【0057】
Figure 0003853868
【0058】
Figure 0003853868
【0059】
Figure 0003853868
【0060】
【発明の効果】
本発明により、高度な安全性を確保する目的から界面活性剤を敢えて乳化手段としては用いる必要のない乳化組成物において、「こくのある使用感」が十分に保持されており、なおかつ低温での安定性に優れた乳化組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の本発明乳化組成物のX線回析の結果を表した図である。
【図2】比較例1の乳化組成物のX線回析の結果を表した図である。

Claims (12)

  1. 以下の成分(A)及び(B)を含有し、かつ、実質的に界面活性剤を含有せず、乳化した結果、形成される内相の油性成分の数平均粒子径が、1μm以下である、水中油型乳化組成物。
    (A)アルキル変性カルボキシビニルポリマー
    (B)高級アルコール、高級脂肪酸及び高級脂肪酸塩からなる群から選ばれる、1種又は2種以上の室温で固形状である油性成分
  2. アルキル変性カルボキシビニルポリマーが、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体である、請求項1記載の水中油型乳化組成物。
  3. アルキル変性カルボキシビニルポリマーの配合量が、組成物全体の0.01〜10重量%である、請求項1又は2記載の水中油型乳化組成物。
  4. アルキル変性カルボキシビニルポリマーの配合量が、組成物全体の0.05〜5重量%である、請求項1又は2記載の水中油型乳化組成物。
  5. 高級アルコールが、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノステアリルエーテル及びグリセリルモノセチルエーテルからなる群から選ばれる1種又は2種以上の高級アルコールである、請求項1〜4のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
  6. 高級脂肪酸が、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、2−パルミトレイン酸及びエルカ酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上の高級脂肪酸である、請求項1〜5のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
  7. 高級脂肪酸が、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びアラキン酸からなる群から選ばれる1種又は2種以上の高級脂肪酸である、請求項1〜5のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
  8. 高級脂肪酸塩が、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、アラキン酸塩、ベヘン酸塩、リグノセリン酸塩、セロチン酸塩、2−パルミトレイン酸塩及びエルカ酸塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上の高級脂肪酸塩である、請求項1〜7のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
  9. 請求項8記載の高級脂肪酸塩が、高級脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、トリプロパノールアミン塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、カルシウム塩、アルギニン塩及びリジン塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上の高級脂肪酸塩である、水中油型乳化組成物。
  10. 室温で固形状である油性成分の配合量が、組成物全体の0.5〜20重量%である、請求項1〜9のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
  11. 室温で固形状である油性成分の配合量が、組成物全体の1〜10重量%である、請求項1〜9のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
  12. 高圧乳化機により乳化されてなる、請求項1〜11のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。
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