JP3815813B2 - 排ガス中の一酸化窒素酸化触媒、およびこれを用いた排ガス中の窒素酸化物除去方法 - Google Patents

排ガス中の一酸化窒素酸化触媒、およびこれを用いた排ガス中の窒素酸化物除去方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排ガス中の一酸化窒素酸化触媒、およびこれを用いた排ガス中の窒素酸化物除去方法に係わり、特に排ガス温度が150〜300℃の低温域で効率的に排ガス中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素に酸化することができる触媒、その製造方法およびこれを用いた排ガス中の窒素酸化物除去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
発電所、各種工場、自動車などから排出される排煙中のNOxは、光化学スモッグや酸性雨の原因物質であり、その効果的な除去方法として、アンモニア(NH3)を還元剤とした選択的還元による排煙脱硝法が幅広く用いられている。特に近年、ゴミ焼却炉の燃焼排ガスや廃熱回収ボイラ排ガスなど、従来の事業用ボイラ排ガスに比べ温度の低い150〜300℃での排ガス脱硝へのニーズが増大している。このような低温度域で高活性な触媒としては、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、およびこれらを組み合わせた触媒などが知られており、なかでも特にMnはより低温活性に優れるものである(特開昭50−131848号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来技術は、Mn以外の触媒中の含有成分による低温活性発現の阻害といったことに対しては十分な配慮がされておらず、改良すべき点が多かった。そのひとつには、活性成分であるMnをどのような形態で担持するかという点があげられる。例えば、Mnの原料として硫酸マンガンを用いる場合では、硫酸マンガンは850℃まで安定であるため触媒中ではマンガンは硫酸マンガンの形態をとっている。しかし、マンガンは硫酸塩ではほとんど脱硝に不活性であるため脱硝活性は得られない。また、硝酸マンガンを用いる場合では、触媒焼成時の条件によって種々の形態のマンガン酸化物(MnO、MnO2 、Mn2 3 、Mn3 4 など)が生成し、高活性な触媒が得られる場合もあれば、逆に活性がほとんどない場合もあるという問題点を有していた。
【0004】
本発明の目的は、マンガン触媒の活性発現機構を解明し、150〜300℃といった低温の排ガス温度域で効率よくNOをNO に酸化することができる酸化触媒、および該酸化触媒によって生成したNO を利用して、アンモニア接触還元触媒により、効率よく排ガス中の窒素酸化物を除去することができる方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本願で特許請求する発明は以下のとおりである。
(1)硫酸根の含有量が0.1重量%以下であるチタン酸化物を担体とし、これにマンガンを硝酸塩で混練および/または含浸担持し、これを200〜450℃で焼成したことを特徴とする排ガス中の一酸化窒素酸化触媒。
【0006】
2)(1)に記載の一酸化窒素酸化触媒を脱硝触媒を設置した排ガス煙道の上流域に配置し、これにより排ガス中のNOの一部をNO2 に変換し、その後アンモニアを注入して前記脱硝触媒上で排ガス中のNOxを接触還元することを特徴とする排ガス中の窒素酸化物除去方法。
3)硫酸根を含有するチタンの酸化物を、あらかじめ500〜700℃の温度範囲で焼成することにより、またはアルカリ液に浸漬して洗浄することにより、チタンの酸化物の硫酸根含有量を0.1重量%以下とし、これにマンガンを硝酸塩で混練および/または含浸し、さらに、これを200〜450℃で焼成することを特徴とする排ガス中の一酸化窒素酸化触媒の製造方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明における排ガス中の一酸化窒素酸化触媒は、(1)硫酸根の含有量が0.1wt%以下のチタニア(TiO2)を担体とし、(2)活性成分として担持するマンガン塩として硝酸塩を用いて、かつ(3)200〜450℃の温度域で焼成するというものである。
【0008】
すなわち、硫酸根の含有量が0.1wt%以下のTiO2 とは、アナターゼタイプおよび/またはルチルタイプのTiO2 であって、硫酸法により生成したTiO2 を500℃以上、好ましくは550〜700℃の温度範囲内で焼成することによって含有硫酸根量を低減させたもの、またはNH3 水などの水溶液中で残留する硫酸根を洗浄・除去したものを意味する。また、硝酸マンガンは、上記TiO2 と一緒にニーダを用いて混練してもよく、また、あらかじめTiO2 の成型体に硝酸マンガンの水溶液を含浸させてもよい。マンガンの担持量は特に限定されるものではないが、Tiに対して1〜20原子%の範囲内で用いると好結果が得られる。1原子%以下だと十分な活性が得られないし、20原子%より多いと細孔が閉塞するなどの問題を生じるため好ましくない。
【0009】
さらに、触媒の焼成温度は特に重要で、200〜450℃、好ましくは250〜400℃の範囲内である。これは、後述する触媒中のMn酸化物の形態が、触媒の低温活性と極めて密接な関係にあることに起因している。
本発明者らは、触媒の低温活性の発現機構について検討した結果、低温活性は、触媒による排ガス中のNOのNO2 への酸化活性と密接に関連があることを見いだした。すなわち、排ガス中にNOとNO2 が共存すると通常の脱硝反応(2)より極めて早い反応(1)が進行するが、(1)の反応速度は300℃以下の低温でより早いことが知られている。そこで、触媒が脱硝機能とあわせて排ガス中のNOをNO2 へ酸化する機能を有していれば、触媒上で下記反応式(3)式によりNOの一部がNO2 になるため触媒上ではNOとNO2 が共存した状態になり、より早い脱硝反応(1)式が(2)式の反応と同時に進行することになり、150〜300℃の低温でも高い脱硝活性を得ることができるのである。
【0010】
脱硝反応
NO+NO2 +2NH3 → 2N2 +3H2 O (1)式
NO+NH3 +1/4 O2 → N2 +3/2 H2 O (2)式
NOの酸化反応
NO+1/2 O2 → NO2 (3)式
これを指標にして、各種マンガン触媒のNOのNO2 への酸化活性について調べたところ、表1に示すようにマンガンの原料として硫酸塩類および有機酸塩類を用いた場合はNOのNO2 への酸化に不活性な形態となることがわかった。
【0011】
【表1】
Figure 0003815813
【0012】
このように、マンガンは、その出発物質とそれを調製する方法、ならびに加熱等の後処理条件によって種々の構造をとり、それに伴なって化学的活性も異なってくる。したがって触媒の調製過程で、活性成分であるマンガンが硫酸塩化することを防止し、かつシュウ酸マンガンの熱分解生成物であるMnOの生成を低減させ、活性なMnO2 となるような手段をとることが重要であり、これに注目して触媒調製を行なうことではじめて高活性なマンガン触媒を得ることができる。
すなわち、本発明では、担体には低硫酸根含有量のチタニアを用いることによってマンガンの硫酸塩化を防止し、マンガンの原料には硝酸マンガンを使用することでNOをNO2 に酸化するのに高活性なMnO2 を生成しやすくした。さらに、焼成温度は、200〜450℃という。NOのNO2 への酸化に活性なMnO2 を多量に生成させることのできる温度を選定した。このような特定な条件のもとで得たマンガン触媒は、150〜300℃の排ガス温度域でも高い活性の触媒を得ることができる。
【0013】
以下、具体的実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
実施例1
酸化チタン(ローヌプーラン製、硫酸根含有量0.67wt%)100gを600℃で2時間大気中で焼成した。焼成後の酸化チタン中の硫酸根含有量を蛍光X線分析装置を用いて調べたところ、0.01wt%の検出限界以下であった。
【0014】
硝酸マンガン(Mn(NO3)2 ・6H2 O)38.8gを30gの水に溶かした触媒液を調製し、これに上記酸化チタン100gを加え100℃以上の砂浴上で蒸発乾固した。これを150℃で2時間乾燥後、大気中400℃で2時間焼成した。得られた触媒を乳鉢で粉砕し、油圧プレスを用い3ton/cm2 の圧力でペレット状に成形し、さらにこれを破砕して10〜20メッシュの触媒を得た。
【0015】
このときの組成はMn/Ti=1/9(原子比)であった。
実施例2
実施例1の硝酸マンガン39.9gを19.9gに替えて、後は同様に触媒を調製した。このときの組成はMn/Ti=5/95(原子比)であった。
実施例3
酸化チタン(ローヌプーラン製TiO2 、硫酸根含有量0.67wt%)200gを10%のアンモニア水1リットルに投入し、80℃で攪拌しながら一昼夜置いた。これを濾過した後水洗し、150℃で5時間乾燥した。得られたTiO2 の硫酸根含有量を蛍光X線分析装置を用いて調べたところ、0.05wt%であった。このようにして得られたTiO2 の100gを用い、その他は実施例1と同様にして触媒を調製した。このときの組成はMn/Ti=1/9(原子比)であった。
【0016】
実施例4
酸化チタン(ローヌプーラン製、硫酸根含有量0.67wt%)150gを600℃で2時間大気中で焼成した。焼成後の酸化チタン中の硫酸根含有量を蛍光X線分析装置を用いて調べたところ、0.01wt%の検出限界以下であった。これを油圧プレスを用い3ton/cm2 の圧力でペレット状に成形し、さらにこれを破砕して10〜20メッシュとした。
【0017】
硝酸マンガン(Mn(NO3)2 ・6H2 O)39.9gを200gの水に溶かした触媒液を調製し、これに上記成型した酸化チタン100gを加えて含浸させた。これを150℃で2時間乾燥後、大気中400℃で2時間焼成して触媒を得た。このときの組成はMn/Ti=1/9(原子比)であった。
比較例1
TiO2 (ローヌプーラン製TiO2 、硫酸根含有量0.67wt%)100gを未処理のまま用いて、後は実施例1と同様に触媒を調製した。
比較例2
実施例1の硝酸マンガンを硫酸マンガン(MnSO4 ・5H2 O)33.5gに替え、後は同様に触媒を調製した。このときの組成はMn/Ti=1/9(原子比)であった。
比較例3
実施例1の硝酸マンガンをシュウ酸マンガン(MnC2 4 ・2H2 O)24.9gに替え、後は同様に触媒を調製した。このときの組成はMn/Ti=1/9(原子比)であった。
【0018】
比較例4
実施例1の硝酸マンガンに替えて、硝酸マンガン(Mn(NO3)2 ・6H2 O)42.2gとメタバナジン酸アンモニウム(NH4 VO3)8.6gとし、後は同様に触媒を調製した。このときの組成はMn/V/Ti=10/5/85(原子比)であった。
比較例5〜7
実施例1のTiO2 をそれぞれSiO2 (マイコンF)、Al2 3 、モルデナイト(東ソー社製TSZ650)に替えて、後は実施例1と同様に触媒を調製した。
実験例1
実施例1〜4および比較例1〜7の触媒3mlを反応器に充填し、表2に示した条件で反応器の入口と出口で検出されるNOxおよびNOの濃度を測定し、NOのNO2 への酸化率を測定した。
【0019】
【表2】
Figure 0003815813
なお、NO2 変換率は次のとおりに定義する。
【0020】
【数1】
Figure 0003815813
【0021】
さらに、実施例1〜4および比較例1〜7の触媒4.5mlを反応器に充填し、表2の条件の下、アンモニアをNOxの1.2倍モル添加して脱硝率を測定し、参考値として示した。
表3に、結果をまとめて示す。
【0022】
【表3】
Figure 0003815813
【0023】
表から明らかなように、本発明による実施例の触媒は、NOのNO2 への酸化率が10〜20%あり、さらに脱硝率は59〜70%で従来にはない高い脱硝活性を示している。これに対し、比較例の触媒はNO2 への酸化活性がほとんどなく、脱硝率も低い。このように本発明による調製法で得られたマンガン触媒は、優れたものであることがわかる。
実施例5、6
実施例1のマンガン担持TiO2 の焼成温度をそれぞれ250、450℃とし、その他は実施例1と同様にして触媒を得た。
比較例8、9
実施例1のマンガン担持TiO2 の焼成温度をそれぞれ150、500℃とし、その他は実施例1と同様にして触媒を得た。
【0024】
実施例5、6および比較例8、9の触媒を用い、実験例1と同じ試験を行ない、NO酸化活性および脱硝活性を測定した。
結果をまとめて表4に示す。
【0025】
【表4】
Figure 0003815813
表から明らかなように、マンガンを担持してからの焼成温度が本発明の範囲である250〜450℃であれば高いNO酸化活性および脱硝活性が発現するが、これを外れた温度では高すぎても低すぎても、高い活性が得られない。このように本発明の触媒は、従来の問題点を改良することによってマンガンを高活性化できた優れた触媒であることがわかる。
実施例7
繊維径9μmのEガラス製繊維1400本の捻糸を10本/インチの荒さで平織りした網状物にチタニア40%、シリカゾル20%、ポリビニールアルコール1%のスラリーを含浸し、150℃で乾燥して剛性を持たせ触媒基材を得た。
【0026】
これとは別に、TiO2 を20kg、硝酸マンガンを7.98kgにシリカ・アルミナ系無機繊維4.2kg、水11kgを加えてニーダで混練し、触媒ペーストを得た。上記基材2枚の間に調製したペースト状触媒混合物を置き加圧ローラを通過させることにより基材の編目間および表面に触媒を圧着して厚さ約1mmの板状触媒を得た。得られた触媒を、150℃で2時間乾燥後大気中、350℃で2時間焼成した。
実施例8
実施例7の板状触媒を、図1の系統を有する小型反応装置の脱硝触媒層の前段に4mmピッチで配し、表2の組成のガスを流して入口と出口のNOx濃度を測定して脱硝率を調べた。この時、脱硝用還元剤であるアンモニア5を実施例7の触媒層1と脱硝触媒層2の間で、NOxに対して1.2モルの割合で注入し、脱硝触媒2としてはTi−W−V系触媒(Ti/W/V原子比=95/4/5、厚さ1mm)の板状触媒を4mmピッチで配して用い、表5のような条件に維持した。また、実施例7の触媒層と脱硝触媒層の間でガスを採取してNOxおよびNO濃度を測定し、NOのNO2 への酸化率を調べた。
【0027】
【表5】
Figure 0003815813
その結果、図1における実施例7の触媒層出口でのNOのNO2 への酸化率は28%であり、その後、脱硝装置で処理して装置出口で測定した脱硝率は、83%であった。これは、実施例7の触媒を取り外して脱硝触媒のみで同様に試験した場合の脱硝率が66%であるのに対して非常に高かった。この結果から、本発明の触媒はNOのNO2 への酸化活性を有するので、脱硝触媒としてだけでなく、NOのNO2 への酸化触媒としても用いることができ、またこの酸化触媒装置を脱硝装置に前置すれば、高い脱硝効率が得られることが分った。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、最も高活性な状態のマンガン触媒を得ることができ、本触媒を用いることにより、150〜300℃といった低温域でも高いNOの酸化性能を得るとともに、脱硝装置に前置すれば、高い脱硝性能を得ることも可能になる。これにより、近年、ニーズの増大しているゴミ焼却炉排ガス等の低温排ガスなどを予熱することなく脱硝処理することが可能になり、極めて簡略で運転経費の少ない排ガス処理が実現できる。
【0029】
また、本触媒を脱硝触媒の前流に置くことによって従来の脱硝触媒の低温活性を大幅に改善することができるので、アンモニア還元排煙脱硝方法の適用範囲の拡大につながる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す系統図。
【符号の説明】
1…本発明の実施例7の触媒、2…Ti/W/V系脱硝触媒、3…煙道、4…NOx発生源(例:ゴミ焼却炉)、5…アンモニア。

Claims (3)

  1. 硫酸根の含有量が0.1重量%以下であるチタン酸化物を担体とし、これにマンガンを硝酸塩で混練および/または含浸担持し、これを200〜450℃で焼成したことを特徴とする排ガス中の一酸化窒素酸化触媒。
  2. 請求項1に記載の一酸化窒素酸化触媒を、脱硝触媒を設置した排ガス煙道の上流域に配置し、これにより排ガス中のNOの一部をNO2 に変換し、その後アンモニアを注入して前記脱硝触媒上で排ガス中のNOxを接触還元することを特徴とする排ガス中の窒素酸化物除去方法。
  3. 硫酸根を含有するチタンの酸化物を、あらかじめ500〜700℃の温度範囲で焼成することにより、またはアルカリ液に浸漬して洗浄することにより、チタンの酸化物の硫酸根含有量を0.1重量%以下とし、これにマンガンを硝酸塩で混練および/または含浸し、さらに、これを200〜450℃で焼成することを特徴とする排ガス中の一酸化窒素酸化触媒の製造方法。
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