JP3694811B2 - 車両用空調装置 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、冷却用熱交換器を下方から上方に向かって送風空気が通過するようにした車両用空調装置に関する。
背景技術
従来、図6に示すように、空調ユニット2の体格をコンパクトにするために、蒸発器(冷却用熱交換器)21を略水平方向に配置し、蒸発器21を下方から上方に向かって送風空気が通過するようにした車両用空調装置が特開平9−123748号公報にて提案されている。
この従来装置では、蒸発器21での凝縮水の排水性を向上させるために、蒸発器21を水平方向から微小角度θだけ傾斜配置するとともに、蒸発器21下側へ送風機(図示せず)により送風されてくる送風空気の流入方向Aと、蒸発器21の傾斜方向および蒸発器21のチューブ長手方向Bとを同一方向(車両幅方向)に設定している。
すなわち、蒸発器21下側へ送風されてくる送風空気の送風前方側へ向かって蒸発器21が下方へ傾斜するように配置するとともに、蒸発器21における冷媒通路を形成するチューブ21aの長手方向Bが送風空気の流れ方向Aと同一方向に延びるように配置している。
これにより、蒸発器21で発生する凝縮水が重力の影響および送風空気の風圧によりチューブ21a表面上を蒸発器21の傾斜下端部Cに向かって移動し、蒸発器21の傾斜下端部Cに凝縮水Dが集まって、ここから凝縮水Dを下方へ落下させるようにしている。
しかしながら、本発明者の実験検討によると、従来装置では、以下の理由から蒸発器21の凝縮水の排水性が悪化することが判明した。
すなわち、従来装置によると、蒸発器21の傾斜下端部Cに凝縮水Dが集まるのであるが、この蒸発器21の傾斜下端部Cは送風空気の流れ方向Aの延長線上の奥まった部位に位置しているので、送風空気流れの主流(空気流速の高い流れ)が傾斜下端部Cに向かって流れる。その結果、傾斜下端部Cの周辺に送風空気の主流による高圧力領域Eが形成される。
従って、凝縮水の自重と、凝縮水を押し上げようとする送風空気の圧力とがバランスして、凝縮水が下方へ落下できず、蒸発器21のフィン21bの間に滞留したままとなる。さらに、送風機の高速(Hi)運転により、凝縮水の自重よりも、凝縮水に加わる送風空気の圧力の方が上回ると、蒸発器21後流側(上方側)へ凝縮水が飛散するという不具合が生じる場合がある。
以上のように凝縮水の排水性が悪化する結果、車室内への吹出空気への水分量が増えて車両窓ガラスが曇ったり、車室内への吹出空気の白霧現象が生じる等の不具合を招く。
本発明は上記点に鑑み、冷却用熱交換器を下方から上方に向かって送風空気が通過するようにした車両用空調装置において、冷却用熱交換器での凝縮水の排水性を向上させることを目的とする。
発明の開示
上記目的を達成するために、本発明では、冷却用熱交換器(21)をチューブ(21a)の長手方向(B)と同一方向に傾斜するとともに、冷却用熱交換器(21)の下側に流入する空気の流れ方向(A)とチューブ(21a)の長手方向(B)とが直交するように、冷却用熱交換器(21)を配置したことを特徴としている。
これによると、冷却用熱交換器(21)のチューブ(21)の長手方向(B)と蒸発器傾斜方向とが一致しているので、冷却用熱交換器(21)で発生した凝縮水はチューブ表面をチューブ長手方向(B)に沿って冷却用熱交換器(21)の傾斜下端部(C)に向かって重力により移動し、傾斜下端部(C)に凝縮水(D)が集まる。
一方、冷却用熱交換器(21)の下側への送風空気流れの主流(空気流速の高い流れ)はケース(20)内部の最も深まった部位に向かって流れるので、冷却用熱交換器(21)下側の最も奥まった部位に送風空気の主流による高圧力領域(E)が形成される。
その際、冷却用熱交換器(21)の下側の空気流れ方向(A)とチューブ(21a)の長手方向(B)とが直交しているので、冷却用熱交換器(21)の傾斜下端部(C)は図5(b)に示すように空気流れ方向(A)と平行に延びる。そのため、冷却用熱交換器(21)の傾斜下端部(C)が高圧力領域(E)と一致(重合)する部位は、極く一部のみとなり、傾斜下端部(C)の大部分は高圧力領域(E)からずれた部位に位置する。
そのため、傾斜下端部(C)に溜まる凝縮水(D)の大部分は、高圧力領域(E)の圧力により押し上げられるということがなくなるので、下方へスムースに落下できる。以上の結果、冷却用熱交換器(21)を下方から上方に向かって送風空気が通過する車両用空調装置においても、凝縮水の排水性を格段と向上できる。
また、本発明では、冷却用熱交換器(21)は、チューブ(21a)を車両幅方向に複数積層して構成され、チューブ(21a)の積層方向の一端部に、冷却流体の出入口を持つ配管ジョイント(21f)を配置し、冷却用熱交換器(21)の傾斜下端部とケース(20)の底面部(20c)との間に、冷却用熱交換器(21)で発生した凝縮水の落下を案内する案内部材を設置する構成を備えている。
この案内部材の設置によって、凝縮水の落下を促進できるので、凝縮水の排水性をさらに向上できる。
また、本発明では、冷却用熱交換器(21)下側の空気流れ方向(A)を車両幅方向とし、チューブ(21a)の長手方向(B)を車両前後方向とすることにより、空調装置を車室内前部の計器盤部の狭隘なスペース内に設置する場合でも、空気流れ方向(A)とチューブ長手方向(B)との直交関係を良好に実現できる。
また、本発明では、請求項2記載のように、空気を送風する送風機ユニット(1)と、送風機ユニット(1)からの空気を温度調整して車室内へ吹き出す空調ユニット(2)とを有し、空調ユニット(2)内の冷却用熱交換器(21)を水平方向から微小角度(θ)傾斜して配置し、空気を冷却用熱交換器(21)の下方から導入して上方へ導出するようにした車両用空調装置において、
冷却用熱交換器(21)をチューブ(21a)の長手方向(B)と同一方向に傾斜するとともに、チューブ(21a)の長手方向(B)を車両前後方向とし、送風機ユニット(1)から冷却用熱交換器(21)の下側に流入する送風空気の流れ方向(A)を車両幅方向とし、
冷却用熱交換器(21)は、チューブ(21a)を車両幅方向に複数積層して構成され、チューブ(21a)の積層方向の一端部に、冷却流体の出入口を持つ配管ジョイント(21f)を配置し、冷却用熱交換器(21)の傾斜下端部とケース(20)の底面部(20c)との間に、冷却用熱交換器(21)で発生した凝縮水の落下を案内する案内部材を設置する構成にすることができる。
これによると、送風機ユニット(1)と空調ユニット(2)とを有するものにおいて、冷却用熱交換器(21)の下側の送風空気流れ方向(A)を車両幅方向とし、チューブ長手方向(B)を車両前後方向とする配置レイアウトにより、空気流れ方向(A)とチューブ長手方向(B)との直交関係を実現でき、その結果、請求項1と同様に、凝縮水の排水性を向上できる。
しかも、請求項1と同様に、空調装置を車室内前部の計器盤部の狭隘なスペース内に設置する場合でも、上記直交関係を良好に実現できる。
本発明は、請求項3記載のように、具体的には、送風機ユニット(1)を車室内前部において助手席側にオフセットして配置し、空調ユニット(2)を車室内前部の中央部に配置することができる。
本発明は、請求項4記載のように、冷却用熱交換器(21)の上方側で車両前方側の部位に、空気を加熱する加熱用熱交換器(22)を略水平状態に配置し、
ケース(20)の上面部で車両後方側の部位に、車室内の上方側に向けて空気を吹出すフェイス開口部(28)を開口し、
ケース(20)の上面部で車両前方側の部位に、車両フロントガラス内面に向けて空気を吹出すデフロスタ開口部(29)を開口し、
ケース(20)のうち、加熱用熱交換器(22)の上方部に形成された温風通路(25)の上方の位置で、かつケース(20)の車両幅方向の両側面に、車室内の乗員足元に向けて空気を吹出すフット開口部(30)を開口し、
フェイス開口部(28)、デフロスタ開口部(29)及びフット開口部(30)を、2つの吹出モード切替ドア(31、32)で開閉する構成にすることができる。
また、本発明は請求項5記載のように、請求項4において、加熱用熱交換器(22)の車両後方側の部位に、加熱用熱交換器(22)をバイパスして空気を流すバイパス通路(23)を形成し、冷却用熱交換器(21)と加熱用熱交換器(22)との間に、加熱用熱交換器(22)を通過する空気とバイパス通路(23)を通過する空気との風量割合を調整するエアミックスドア(24)を配置した構成とすることができる。
これによると、ケース(20)内において、冷却用熱交換器(21)後流から車両後方側のバイパス通路(23)を通って車両後方側のフェイス開口部(28)に至る空気流路を直線的に形成でき、フェイスモード時の通風抵抗を効果的に減少できる。
また、本発明は、請求項6記載のように、冷却用熱交換器(21)を車両前方側が高くなり、車両後方側が低くなるように傾斜配置すれば、車両前方側が高くなる車両床面とケース(20)底面との干渉を容易に回避できる。また、このような冷却用熱交換器(21)の傾斜により、請求項5におけるエアミックスドア(24)の作動スペースの確保も容易となる。
また、本発明は、請求項7記載のように、冷却用熱交換器(21)を車両前方側が低くなり、車両後方側が高くなるように傾斜配置してもよい。
また、本発明は、請求項8記載のように、空気通路を形成するケース(20)と、
ケース(20)内に配置され、空気を冷却する冷却用熱交換器(21)とを有し、
冷却用熱交換器(21)は冷却流体の流れる通路を形成するチューブ(21a)を有し、
冷却用熱交換器(21)は、ケース(20)内に水平方向から微小角度(θ)傾斜して配置され、空気を下方から導入して上方へ導出するようにした車両用空調装置において、
冷却用熱交換器(21)をチューブ(21a)の長手方向(B)と同一方向に傾斜するとともに、
冷却用熱交換器(21)の下側に流入する空気の流れ方向(A)とチューブ(21a)の長手方向(B)とが直交するように、冷却用熱交換器(21)を配置し、
冷却用熱交換器(21)は、チューブ(21a)を複数積層して構成され、
チューブ(21a)の積層方向の一端部に、冷却流体の出入口を持つ配管ジョイント(21f)を配置し、
冷却用熱交換器(21)の傾斜下端部とケース(20)の底面部(20c)との間に、冷却用熱交換器(21)で発生した凝縮水の落下を案内する案内部材を設置する構成にすることができる。
このようにしても、請求項1と同様の作用効果を発揮できる。
なお、本発明において、「直交」という用語は、空気流れ方向(A)とチューブ長手方向(B)とが厳密に90°の角度で交差する関係に限定するものではなく、90°近傍の角度関係で空気流れ方向(A)とチューブ長手方向(B)とが交差する関係をも包含する意味で用いている。同様に、請求項6における「水平方向」という用語も、厳密な水平方向のみに限定せず、水平方向近傍の配置を包含する意味で用いている。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の一実施形態における車両用空調装置の車両搭載図である。図2は、上記一実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す要部断面正面図である。図3は、上記一実施形態における空調ユニット部の側面断面図である。図4は、上記一実施形態における蒸発器の全体構成を示す斜視図である。図5は、上記一実施形態における蒸発器部の断面配置図である。図6は、従来技術における蒸発器部の断面配置図である。
発明を実施するための最良の形態
図1は本実施形態の車両用空調装置の車両搭載状態を例示するもので、車両用空調装置は、送風機ユニット1と空調ユニット2の2つの部分に大別され、送風機ユニット1は、車室内前部のインストルメントパネルPの中央部から助手席側にオフセット(右ハンドル車では車両幅方向の左側にオフセット)した位置に配置されている。これに対し、空調ユニット2は、車室内前部のインストルメントパネルPの中央部に配置されている。
上記送風機ユニット1は、その上方部に車室内空気と車室外空気とを切替導入する内外気切替箱11を有し、この内外気切替箱11には外気導入口12と内気導入口13が開口しており、その内部にはこれら両導入口12、13を開閉する内外気切替ドア(図示せず)が設置されている。
内外気切替箱11の下方には、送風機14が配置されており、この送風機14は図2に示すように、遠心式多翼ファン(シロッコファン)からなる送風ファン15、ファン駆動用モータ16、およびスクロールケーシング17から構成されている。
ファン15の回転軸は略上下方向に向くように配置され、このファン15の回転により内外気切替箱11からスクロールケーシング17上部のベルマウス状吸入口(図示せず)を通して吸入された空気はスクロールケーシング17の出口に向かって略水平方向に(図1から理解されるように車室の左側から右側へ向かって)送風されるようになっている。
一方、空調ユニット2は図2、3に示す構成になっており、図3は図2の左側から見た側面の断面配置図である。空調ユニット2は樹脂製のケース20を有し、このケース20は縦長の概略箱状の全体形状に成形され、以下説明する機器を収納するために複数の分割ケース体を結合して構成される。
このケース20内の助手席側(車両左側)の側面において、最も下方側の部位に、空気入口20aが開口している。この空気入口20aは車両前後方向に細長の偏平な断面形状を有するもので、スクロールケーシング17の出口部に接続ダクト18を介して接続され、送風機14の送風ファン15の送風空気が流入する。
そして、ケース20内部において、最も下方側の部位には空気入口20aからの送風空気が流入する空気流入空間20bが車両幅方向の全長にわたって形成されている。この空気流入空間20bの上方に冷凍サイクルの蒸発器(冷却用熱交換器)21が略水平状態に設置されている。このため、蒸発器21に対して、その下方より送風機ユニット1からの送風空気が導入され、上方に導出される。
ここで、蒸発器21の具体的構成およびその配置形態について詳述すると、図4は蒸発器21の具体的構成を例示するもので、アルミニュウム等の耐食性に優れた一対(2枚)の金属薄板を最中合わせ状に接合して構成される偏平状のチューブ21aを有しており、この偏平状のチューブ21aの長手方向は図4の上下方向であり、チューブ21a内には、その長手方向に冷媒が流れる冷媒通路が形成される。
このチューブ21aは図4の左右方向にコルゲートフィン21bを介在して多数積層され、公知の積層型蒸発器を構成する。このチューブ21aとコルゲートフィン21bとにより空気冷却部をなすコア部21cが構成される。送風空気はこのコア部21cの空隙部を通過して冷却される。
そして、このコア部21cの両端側に、多数のチューブ21aへの冷媒の分配もしくは多数のチューブ21aからの冷媒の合流を行うタンク部21d、21eを配置している。このタンク部21d、21eは、チューブ21aを構成する金属薄板の両端部に一体成形された突出部により構成されている。また、チューブ21a(金属薄板)の積層方向の一端部(図4の左端部)には冷媒出入口を持つ配管ジョイント21fが配置されており、蒸発器21の全体構造はアルミニュウムの一体ろう付けにより組み立てられる。
そして、蒸発器21は、図3に示すように、配管ジョイント21fが位置する一方のタンク部21d側が車両前方側に位置し、他方のタンク部21e側が車両後方側に位置するようにして、しかも、車両前方側のタンク部21d側が高くなり、車両後方側のタンク部21e側が低くなるように微小角度θ(例えば、25°)傾斜配置している。
蒸発器21をこのように配置するため、蒸発器21のチューブ21aの長手方向(冷媒流れ方向)Bは、蒸発器21下側での空気流れ方向(図3の紙面垂直方向)Aと直交する関係となる。
ケース20の底面部20cは蒸発器21の傾斜角度θに沿って車両前方から後方側へ向かって低くなるように形成されており、そして、車両後方側の最も低くなる部位(蒸発器21の傾斜下端部の下方側)に排水パイプ20dが開口している。この排水パイプ20dは樹脂製ケース20の底面部20cに一体成形することができ、その下端部には排水ホース(図示せず)が接続される。よって、ケース20の底面部20c上に落下した凝縮水は、排水パイプ20d、およびこれに接続される排水ホース(図示せず)を介して車外へ排出できる。
そして、蒸発器21の空気下流側(車室内上側)で、車両前方側の部位に、ヒータコア(加熱用熱交換器)22が略水平状態にして設置してある。このヒータコア22は蒸発器21とは逆方向に、車両前方側が低く、車両後方側が高くなるように微小角度で傾斜配置されている。このヒータコア22は、エンジン冷却水(温水)を熱源として送風空気を加熱するものであって、このヒータコア22に対して車両後方側の側方にはバイパス通路23が形成されている。
蒸発器21とヒータコア22との間には、ヒータコア22を通過して加熱される温風の風量と、バイパス通路23を通過する冷風の風量との割合を調整するエアミックスドア24が回転軸24aにより回動可能に配置されている。このエアミックスドア24は上記の温風と冷風との風量割合の調整により車室内への吹出空気温度を調整する温度調節手段の役割を果たすものである。
ヒータコア22の上方部には、ヒータコア22通過後の温風が矢印Cのように車両前方側から車両後方側へ向かって流れる温風通路25がケース20の壁部26により構成されている。この温風通路25からの温風とバイパス通路23からの冷風が空気混合室27で混合して、所定温度の空気となる。
ケース20の上面部で車両後方側の部位にはフェイス開口部28が開口しており、このフェイス開口部28は車室内の上方側(乗員頭部側)に向けて空気を吹出すフェイス吹出口(図示せず)に連通する。ここで、フェイス開口部28はバイパス通路23を介して蒸発器21の上方(空気下流側)に略直線的に位置しているので、最大冷房時に小さな通風抵抗で蒸発器21通過後の冷風をフェイス開口部28に導入できる。
また、ケース20の上面部で車両前方側の部位にはデフロスタ開口部29が開口しており、このデフロスタ開口部29は車両フロントガラス内面に向けて空気を吹出すデフロスタ吹出口(図示せず)に連通する。
また、ケース20のうち、温風通路25の直ぐ上方の位置で、かつ、ケース20の左右の側面(図2参照)にはフット開口部30が開口しており、このフット開口部30は車室内の乗員足元に向けて空気を吹出すフット吹出口(図示せず)に連通する。そして、これらの開口部28〜30を開閉するために、2つの吹出モード切替ドア31、32が回転軸31a、32aにより回動可能に配置されている。
一方の吹出モード切替ドア31はフェイス開口部28と、連通路33の入口部を切替開閉する。ここで、連通路33は空気混合室27からの空気をデフロスタ開口部29とフット開口部30の両方へ導入する共通の空気導入通路であり、他方の吹出モード切替ドア32はこの連通路33とデフロスタ開口部29との間、およびこの連通路33とフット開口部30との間を切替開閉する。
なお、図3において、40は車両の車室、41は車両のエンジンルーム、42は車室40とエンジンルーム41とを仕切るダッシュボード(ファイヤーウォール)、43は車室40の床板である。前述したケース20の底面部20cの傾斜は、床板43の車両前後方向の傾斜との干渉を回避する役割も果たしている。
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。図1、2の内外気切替箱11から流入した空気は送風ファン15によってスクロールケーシング17内を略水平方向に流れ、接続ダクト18を介して空気入口20aから矢印Aのように蒸発器21下部の空気流入空間20bへ流入する。そして、送風空気はここから上方へ方向転換して蒸発器21を通過し、ここで除湿・冷却されて冷風となる。
この冷風は次にエアミックスドア24の回動位置に応じて、ヒータコア22に導入される冷風とバイパス通路23に導入される冷風とに振り分けられ、ヒータコア22で加熱された温風とバイパス通路23からの冷風が空気混合室27で混合されて所望温度となる。次に、この所望温度の空調空気は、2つの吹出モード切替ドア31、32の通路切替作用により、フェイス開口部28とデフロスタ開口部29とフット開口部30のいずれか1つ、または複数を通過して車室内へ吹き出して、車室内を空調する。
ところで、上述した空調ユニットレイアウトでは、蒸発器21を略水平方向に配置し、かつその下方から上方へ向かって、送風空気を送風するので、凝縮水の落下方向と送風方向とが対向するようになり、そのため、蒸発器21で発生する凝縮水の排水性改善が課題となる。
そこで、本実施形態では以下のごとき工夫を講じることにより、凝縮水の排水性を良好にしている。すなわち、蒸発器21は、図3に示すように、水平面よりチューブ21aの長手方向Bと同一方向に微小角度θだけ傾斜配置してある。ここで、蒸発器21の傾斜角度θは、蒸発器21での保水量低減のために、10°程度より大きくすることが好ましく、また、蒸発器21設置のための上下方向スペース低減のために、30°程度より小さくすることが好ましい。
そして、この蒸発器21の傾斜配置に加えて、チューブ21aの長手方向Bが蒸発器21の下側への送風空気流れ方向Aに対して直交するように、蒸発器21が配置してある。つまり、蒸発器21の下側への送風空気流れ方向Aは図2、図5(b)のごとく車両幅方向であり、これに対して、蒸発器21のチューブ21aの長手方向Bは図3、図5(a)のごとく車両前後方向である。
従って、蒸発器21の下側への送風空気流れの主流(空気流速の高い流れ)はケース20内部の最下部に形成される空気流入空間20bにおいて、その最も奥まった右側部位に向かって流れることになる。その結果、空気流入空間20bの最も奥まった右側部位に送風空気の主流による高圧力領域Eが形成される。
一方、蒸発器21で発生した凝縮水は、チューブ21aの長手方向Bと蒸発器傾斜方向とが一致しているので、チューブ表面をチューブ長手方向Bに沿って蒸発器21の傾斜下端部Cに向かって重力により移動し、傾斜下端部Cに凝縮水Dが集まる。その際、蒸発器21の傾斜下端部Cは車両後方側に位置し、空気流入空間20bの車両幅方向の略全長に延びるので、蒸発器21の傾斜下端部Cが空気流入空間20bの高圧力領域Eと一致(重合)する部位は、図5(b)に示すごとく車両右側の極く一部のみとなり、傾斜下端部Cの大部分は高圧力領域Eからずれた部位に位置する。
そのため、傾斜下端部Cに溜まる凝縮水Dの大部分は、高圧力領域Eの圧力により押し上げられるということがなくなるので、図5(b)の矢印Fのごとく下方へスムースに落下できる。
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、送風機ユニット1の送風機14の回転軸を略上下方向に向くように配置して、送風機14の上方部に内外気切替箱11を配置する構成としているが、送風機14の回転軸を略車両前後方向(水平方向)に向くように配置して、送風機14の車両前方側に内外気切替箱11を配置する構成としてもよい。
このような配置とすれば、内外気切替箱11を送風機14と同一レベルの高さに配置することができるので、上記実施形態に比較して外気導入口12の位置を低くすることができる。従って、車両側からの要求により外気導入口12を低い位置に設定する必要がある場合に有利である。
また、上記実施形態では、蒸発器21は前述した積層型のものに限らず、多穴偏平チューブを蛇行状に曲げ形成し、この蛇行状チューブにコルゲートフィンを組み合わせた、いわゆるサーペインタイプのものなど、他の形式であってもよい。
また、上記実施形態では、蒸発器21として、チューブ21aの長手方向Bの両端部にタンク部21d、21eを形成するダブルタンクのタイプについて説明したが、タンク部(21d、21e)をチューブ21aの長手方向Bの一端部のみに形成するシングルタンクタイプの蒸発器21を使用することもできる。
また、上記実施形態では、蒸発器21を図3に示すようにチューブ21aの長手方向Bの車両前方側が高く、車両後方側が低くなるように傾斜しているが、これとは逆に、蒸発器21をチューブ21aの長手方向Bの車両前方側が低く、車両後方側が高くなるように傾斜してもよい。
また、蒸発器21の傾斜下端部Cとケース20の底面部20cとの間に、凝縮水の落下を案内する案内部材を設置して、凝縮水の落下を促進するようにしてもよい。
また、冷凍サイクルの冷媒が流れる蒸発器21の代わりに、蒸発器21等の冷却手段により冷却された冷水が流れる冷却用熱交換器を使用することも可能である。
また、上記実施形態では、送風機ユニット1と空調ユニット2を車室内前部のインストルメントパネルPの下方部に配置する前席側の空調装置について説明したが、車室内後部に設置され、車室内後席側を空調する後席側の空調装置にも本発明を適用できることはもちろんである。その場合、要は、蒸発器21の下側に流入する空気流れ方向Aとチューブ21aの長手方向Bとが直交する関係に、蒸発器21を配置することが重要であって、その他の点は種々変形可能である。
また、上記実施形態では、空調の温度調整手段としてヒータコア22を通過する温風とヒータコア22のバイパス通路23を通過する冷風との風量割合を調整するエアミックスドア24を使用したエアミックス方式のものについて説明したが、空調の温度調整手段として、ヒータコア22への温水流量を制御する温水制御弁(図示せず)を備え、この温水制御弁によりヒータコア22への温水流量を制御して、ヒータコア22により空気加熱量を調整して車室内への吹出空気温度を調整するようにしてもよい。
産業上の利用可能性
本発明は、冷却用熱交換器を下方から上方に向かって送風空気が通過するようにした車両用空調装置における凝縮水の排水性を改善するものであり、搭載スペースの縮小化の要求が強い車両用空調装置において好適に実施できるものである。

Claims (8)

  1. 空気通路を形成するケース(20)と、
    前記ケース(20)内に配置され、空気を冷却する冷却用熱交換器(21)とを有し、
    前記冷却用熱交換器(21)は冷却流体の流れる通路を形成するチューブ(21a)を有し、
    前記冷却用熱交換器(21)は、前記ケース(20)内に水平方向から微小角度(θ)傾斜して配置され、空気を下方から導入して上方へ導出するようにした車両用空調装置において、
    前記冷却用熱交換器(21)を前記チューブ(21a)の長手方向(B)と同一方向に傾斜するとともに、
    前記冷却用熱交換器(21)の下側に流入する空気の流れ方向(A)と前記チューブ(21a)の長手方向(B)とが直交するように、前記冷却用熱交換器(21)を配置し、
    前記空気の流れ方向(A)が車両幅方向であり、前記チューブ(21a)の長手方向(B)が車両前後方向であり、
    前記冷却用熱交換器(21)は、前記チューブ(21a)を車両幅方向に複数積層して構成され、
    前記チューブ(21a)の積層方向の一端部に、前記冷却流体の出入口を持つ配管ジョイント(21f)を配置し、
    前記冷却用熱交換器(21)の傾斜下端部と前記ケース(20)の底面部(20c)との間に、前記冷却用熱交換器(21)で発生した凝縮水の落下を案内する案内部材を設置したことを特徴とする車両用空調装置。
  2. 空気を送風する送風機ユニット(1)と、前記送風機ユニット(1)からの空気を温度調整して車室内へ吹き出す空調ユニット(2)とを有し、
    前記空調ユニット(2)は、空気通路を形成するケース(20)と、
    前記ケース(20)内に配置され、空気を冷却する冷却用熱交換器(21)とを有し、
    前記冷却用熱交換器(21)は、前記ケース(20)内に水平方向から微小角度(θ)傾斜して配置され、空気を下方から導入して上方へ導出するようにした車両用空調装置において、
    前記冷却用熱交換器(21)は冷却流体の流れる通路を形成するチューブ(21a)を有し、前記冷却用熱交換器(21)を前記チューブ(21a)の長手方向(B)と同一方向に傾斜するとともに、
    前記チューブ(21a)の長手方向(B)を車両前後方向とし、前記送風機ユニット(1)から前記冷却用熱交換器(21)の下側に流入する送風空気の流れ方向(A)を車両幅方向とし、
    前記冷却用熱交換器(21)は、前記チューブ(21a)を車両幅方向に複数積層して構成され、
    前記チューブ(21a)の積層方向の一端部に、前記冷却流体の出入口を持つ配管ジョイント(21f)を配置し、
    前記冷却用熱交換器(21)の傾斜下端部と前記ケース(20)の底面部(20c)との間に、前記冷却用熱交換器(21)で発生した凝縮水の落下を案内する案内部材を設置したことを特徴とする車両用空調装置。
  3. 前記送風機ユニット(1)を車室内前部において助手席側にオフセットして配置し、前記空調ユニット(2)を車室内前部の中央部に設置したことを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
  4. 前記冷却用熱交換器(21)の上方側で車両前方側の部位に、空気を加熱する加熱用熱交換器(22)を略水平状態に配置し、
    前記ケース(20)の上面部で車両後方側の部位に、車室内の上方側に向けて空気を吹出すフェイス開口部(28)を開口し、
    前記ケース(20)の上面部で車両前方側の部位に、車両フロントガラス内面に向けて空気を吹出すデフロスタ開口部(29)を開口し、
    前記ケース(20)のうち、前記加熱用熱交換器(22)の上方部に形成された温風通路(25)の上方の位置で、かつ前記ケース(20)の車両幅方向の両側面に、車室内の乗員足元に向けて空気を吹出すフット開口部(30)を開口し、
    前記フェイス開口部(28)、前記デフロスタ開口部(29)及び前記フット開口部(30)を、2つの吹出モード切替ドア(31、32)で開閉するようにしたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
  5. 前記加熱用熱交換器(22)の車両後方側の部位に、前記加熱用熱交換器(22)をバイパスして空気を流すバイパス通路(23)を形成し、
    前記冷却用熱交換器(21)と前記加熱用熱交換器(22)との間に、前記加熱用熱交換器(22)を通過する空気と前記バイパス通路(23)を通過する空気との風量割合を調整するエアミックスドア(24)を配置したことを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
  6. 前記冷却用熱交換器(21)を車両前方側が高くなり、車両後方側が低くなるように傾斜配置したことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
  7. 前記冷却用熱交換器(21)を車両前方側が低くなり、車両後方側が高くなるように傾斜配置したことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
  8. 空気通路を形成するケース(20)と、
    前記ケース(20)内に配置され、空気を冷却する冷却用熱交換器(21)とを有し、
    前記冷却用熱交換器(21)は冷却流体の流れる通路を形成するチューブ(21a)を有し、
    前記冷却用熱交換器(21)は、前記ケース(20)内に水平方向から微小角度(θ)傾斜して配置され、空気を下方から導入して上方へ導出するようにした車両用空調装置において、
    前記冷却用熱交換器(21)を前記チューブ(21a)の長手方向(B)と同一方向に傾斜するとともに、
    前記冷却用熱交換器(21)の下側に流入する空気の流れ方向(A)と前記チューブ(21a)の長手方向(B)とが直交するように、前記冷却用熱交換器(21)を配置し、
    前記冷却用熱交換器(21)は、前記チューブ(21a)を複数積層して構成され、
    前記チューブ(21a)の積層方向の一端部に、前記冷却流体の出入口を持つ配管ジョイント(21f)を配置し、
    前記冷却用熱交換器(21)の傾斜下端部と前記ケース(20)の底面部(20c)との間に、前記冷却用熱交換器(21)で発生した凝縮水の落下を案内する案内部材を設置したことを特徴とする車両用空調装置。
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