JP3666526B2 - 小胞体分散液の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、膜形成成分からなる二分子膜多層構造に炭化水素、エステル油、シリコーンオイル、油溶性抗菌剤などの油分を安定に封入させることができる小胞体分散液の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、二分子膜多層構造を有する粒子としてリポソームがあるが、これは、特に水溶性物質を膜内に保持する目的であり、リポソームの一般的な製造方法では油分を包むことはできない。
【0003】
一方、特開平6−269656号公報には、水中油型エマルジョンの製造方法として、ベシクル構造中に油分を保持することが記載されているが、この製造方法で得られた水中油型エマルジョンは、保存条件下では完全に油分を保持することが困難であった。また、特公昭63−33414号公報には、二分子膜多層構造を有する粒子の分散液の製造方法が提案されているが、この方法の場合、得られる分散液の二分子膜多層構造に取り込まれているのは水相であり、油分が取り込まれたものについては、何ら開示されていない。さらに、特開平5−194989号公報には、香料を非イオン性活性剤で乳化して、香料を取り囲んだ液晶構造を含む構造化エマルジョンを形成し、この構造化エマルジョンを洗剤組成物中に分散させる方法が提案されているが、この方法の場合、水性相全量に直接非水性相を分散させ、これを低剪断条件下で混合して構造化エマルジョンを形成しているため、比較的大きな粒子しか製造することができないのみならず、分散液中の粒子の高温での安定性が悪いという問題があった。
【0004】
本発明は、上記事情を解決するためになされたもので、二分子膜多層構造に油分が包含されてなる小胞体の保存安定性が良く、且つ細かい粒径の小胞体を得ることができる小胞体分散液の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定比率の膜形成成分と油分と水相の一部とを、全体を混合しながら特定の高剪断を付加して混練することによって、膜形成成分による二分子膜多層構造に油分が微小単位に分散された、特定粘度の液晶組成物が形成され、さらにこの液晶組成物と残りの水相とを混合して小胞体分散液を製造することによって、分散液中に油分を二分子膜多層構造により包含した小胞体を安定的に形成できるのみならず、特に、平均粒径が0.1〜0.5μm程度の微細で均一な小胞体が形成されることを知見し、本発明をなすに至った。
【0006】
従って、本発明は、膜形成成分と油分と水相の一部とからなる系を、膜形成成分の相転移以上の温度下において高剪断を付加した状態で混練して、液晶組成物を形成させた後、該液晶組成物に水相の残量を添加・混合して膜形成成分からなる二分子膜多層構造に上記油分が取り込まれた小胞体分散液を形成させることを特徴とする小胞体分散液の製造方法を提供する。
【0007】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の小胞体分散液の製造方法は、膜形成成分、油分、水相成分を用いるものである。
【0008】
ここで、膜形成成分としては、二分子膜多層を形成するものであれば、その種類は特に制限されないが、下記一般式(1)で示される第4級アンモニウム塩,第3級アミン塩,イミダゾリン塩,イミダゾリニウム塩,アミノ酸系カチオン界面活性剤などのカチオン界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上か、あるいは上記カチオン界面活性剤と下記一般式(2)で示される高級アルコールとの混合物が好適に使用され、これらの中でも特に第4級アンモニウム塩が好適である。
【0009】
【化1】
(但し、式中R1は炭素数10〜24のアルキル基又はアルケニル基、R2は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数10〜24のアルキル基又はアルケニル基であり、R1及びR2はそれぞれ無置換であってもよく、−O−,−CONH−,−COO−等の官能基で分断もしくは−OH等の官能基で置換されていてもよい。R3は炭素数1〜3のアルキル基、R4は炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基であり、Xはハロゲン原子又はモノアルキル硫酸基である。)
R5−OH …(2)
(但し、式中R5は炭素数12〜22のアルキル基である。)
【0010】
上記膜形成成分としては、具体的に式(1)の第4級アンモニウム塩としてステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジ牛脂アルキルジメチルアンモニウムブロマイド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、オレイルトリメチルアンモニウムクロライド等、アミノ酸系カチオン界面活性剤としてヤシ油脂肪酸L−アルギニンエチル−DL−ピロリドンカルボン酸、4−グアニジノブチルラウリルアミド酢酸等が例示され、第3級アミン塩としてジステアリルメチルアミン塩酸塩、ジオレイルメチルアミン塩酸塩、ジステアリルメチルアミン硫酸塩等が例示され、これらの第3級アミン塩の場合、アルキル鎖は、−COO−,−CONH−等の官能基で分断されていてもよい。また、イミダゾリン塩として1−オクタデカノイルアミノエチル−2−ヘプタデシルイミダゾリン塩酸塩、1−オクタデセノイルアミノエチル−2−ヘプタデセニルイミダゾリン塩酸塩等、イミダゾリニウム塩としてメチル−1−牛脂アミドエチル−2−牛脂アルキルイミダゾリニウムメチルサルフェート、メチル−1−ヘキサデカノイルアミドエチル−2−ペンタデシルイミダゾリニウムクロライド、エチル−1−オクタデセノイルアミドエチル−2−ヘプタデセニルイミダゾリニウムエチルサルフェート等、式(2)の高級アルコールとしてセトステアリルアルコール,ドデシルアルコール,セチルアルコール,ステアリルアルコール,ベヘニルアルコール等が例示される。これらの膜形成成分は、製造される小胞体分散液の用途、目的により適宜選定することができ、例えば上記分散液が衣料用仕上げ剤又は化粧料である場合、衣料用仕上げ剤基剤として使用されるカチオン界面活性剤又は化粧料の基剤として使用されるカチオン界面活性剤と高級アルコール等が好適に使用される。
【0011】
上記膜形成成分の使用量は分散液全体に対して1〜40重量%程度、好ましくは3〜30重量%程度である。配合量が少なすぎると油分の内包が困難となる場合があり、一方、過剰量配合すると、小胞体形成が困難となる場合がある。
【0012】
本発明では、上記膜形成成分による膜形成を容易にするために、上記膜形成成分と共にエチレングリコール,プロピレングリコール,グリセリン等の多価アルコールやエタノール,イソプロピルアルコール等の低級アルコールなどの有機溶剤、ステアリン酸,オレイン酸等の脂肪酸及びポリオキシエチレンアルキルエーテル,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の各種乳化剤などの添加剤を通常の使用量で配合することもできる。
【0013】
次に、油分としては、衣料用仕上げ剤、化粧料、医薬品、洗浄剤などの各種分野の製品に使用されている疎水性の油分を使用することができるが、通常、衣類の風合いを変える、皮膚に保湿効果を与える、髪に栄養を与える、抗菌・殺菌効果を与えるなどの機能を持つものが好適に使用される。具体的には、例えばシリコーンオイル,環状シリコーン,変性シリコーンなどの合成油、流動パラフィン,流動イソパラフィン,パラフィンワックスなどの鉱油、ホホバ油,オリーブ油,オリーブスクワラン,ヒマシ油,カルナウバワックスなどの植物油、ラノリン,スクワラン,ミンク油などの動物油、ラウリン酸ヘキシル,パルミチン酸イソプロピル,オレイン酸,ステアリン酸などを挙げることができ、さらに具体的機能として、トリクロサン,ヒノキチオール,トリクロカルバン,イソプロピルメチルフェノールなどの油溶性の抗菌・殺菌剤、ブチルパラベン,プロピルパラベン,安息香酸,サリチル酸,ソルビン酸などの油溶性の防腐剤、ジブチルヒドロキシトルエン,ブチルヒドロキシアニソール,トコフェロールなどの油溶性の酸化防止剤、リナロール,シトロネロール,ゲラニオール,ゲラニルアセテートなどの油溶性の香料、その他油溶性のUV吸収剤,防虫剤,保湿剤等を挙げることができ、これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0014】
上記油分の使用量は、分散液全体に対して0.1〜20重量%程度とすると好適であり、上記膜形成成分に対する比率は、膜形成成分に対して油分を1:1以下とすることが望ましく、膜形成成分より油分が多くなると二分子膜多層構造での包含が不十分となる場合がある。なお、使用する油分の融点が高い場合は、上記のような低級アルコールなどの有機溶媒や他の液体油分に溶かして用いてもよい。
【0015】
また、水相成分としては、水の他に乳化剤,分散安定剤,低温安定化剤,無機塩類,色素及びその他の各種水溶性有効成分等が例示される。具体的には、乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル,ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル,グリセリン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,脂肪酸ポリエチレングリコール等の非イオン界面活性剤など、分散安定剤としてポリアクリル酸,カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマーなど、低温安定化剤としてエチレングリコール,プロピレングリコール,グリセリンなど、無機塩類として塩化ナトリウム,塩化カルシウム等の塩酸塩,硫酸ナトリウム塩等の硫酸塩など、色素としてアシッドレッド138,アシッドブルー9,アシッドイエロー141,リアクティブブルー、その他の各種水溶性有効成分としてイソチアゾロンなどの抗菌剤、ヒドロキシエタンジホスホン酸などの酸化防止剤などが挙げられる。なお、上記水相成分の使用量は通常量とすることができる。
【0016】
本発明の製造方法では、上述した膜形成成分と油分と水相の一部とを混合しながら高剪断を付加して混練することによって液晶組成物を形成させた後、該液晶組成物に水相の残量を添加・混合することによって、上記膜形成成分からなる二分子膜多層構造に上記油分が包含された小胞体分散液を製造する。この場合、連続相は水相となる。
【0017】
ここで、液晶組成物の形成温度は、膜形成成分の相転移温度(Tc)以上であることを必要とする。液晶組成物形成温度がTcに満たないと、液晶が形成されない。液晶組成物の形成温度とTcとの温度差は、特に制限されるものではなく、液晶形成が可能な温度範囲内で適宜選定することができるが、通常、液晶組成物の形成温度がTcよりも5〜20℃、特に10〜15℃程度高いことが望ましい。
【0018】
また、液晶組成物を形成するために上記膜形成成分及び油分と共に混合される水相量は、使用する膜形成成分と油分の種類によって適宜選定されるが、通常、使用される水相の全量の10〜50%であって、液晶組成物中における油相(膜形成成分及び油分):水相=1:0.5〜1:2となる量である。そして、上記膜形成成分と油分と水相の一部とを混合する場合、容器内にこれらを添加する順序は特に制限されず、全部を同時に添加してもよい。
【0019】
上記各成分を混合しながら、高剪断を付加して混練する装置は、その機種は特に制限されないが、系の粘度が液晶組成物が形成されるに従って高くなることを考慮すれば、高粘度物を全体混合でき、且つ剪断力の高い羽根を有するものが望ましい。ここで、撹拌装置のタイプとしては、1組の羽根によって上記撹拌特性を確保できる装置と複数組の羽根によって上記撹拌特性を確保できる装置との2種類に大別できるので、以下、それぞれの装置に分けて本発明の製造方法において付加される剪断について説明する。
【0020】
まず、1組の羽根で全体混合と高剪断力を確保できる装置について図面を用いて説明する。このタイプの装置の場合、図1に示すように、通常、攪拌特性を考えると、剪断力は撹拌槽1内での羽根2先端の周速が支配的であり、全体混合については、撹拌槽1全体における単位液体積当たりの羽根2の回転による動力や撹拌槽1全体における単位液体積当たりの羽根2の吐出流量が支配的である。従って、本発明において高剪断を付加するには、羽根2先端の周速に着目する必要があり、本発明の場合、羽根2先端の周速Ut[m/s]のレベルが、装置の大きさにはかかわらず、5m/s以上25m/s以下、好ましくは7m/s以上25m/s以下、より好ましくは10m/s以上25m/s以下とすることによって、高剪断を付加することができる。なお、羽根2先端の周速Utは、下記式により算出することができる。
【0021】
Ut=π×n×d
n:羽根回転数[rps],d:羽根径[m]
【0022】
この場合、上記周速Utによって剪断の程度は規定できるが、全体混合力を確保するには、装置の大きさに関するファクターを考慮する必要があり、そのためには下記式で定義される見掛けの剪断速度によって規定することが望ましい。
【0023】
見掛けの剪断速度=Ut/(D−d)
Ut:剪断速度[m/s],d:羽根径[m],D:撹拌槽径[m]
【0024】
通常の混練装置の場合、羽根2先端の周速Utを一定にすると、装置が大きくなるにつれて羽根2と撹拌槽1との間の距離が大きくなり、見掛けの剪断速度の値は小さくなるものである。このような見掛けの剪断速度を用いて本発明の高剪断を規定する場合、見掛けの剪断速度が100〜1000[s-1]程度であることが好ましい。
【0025】
また、剪断力と全体混合の同時確保をするには、羽根径dと撹拌槽径Dとの比d/Dを0.7以上にすることが好ましい。なお、その上限は0.9以下であることが好ましい。このような撹拌特性を有する具体的な装置としては、例えばラインミキサー、パワーミキサー、スパイラルミキサーなどを使用すると好適である。
【0026】
次に、複数組の羽根を備えた装置としては、図2に示すように、高剪断を与えることができる羽根2とその周囲を囲う内径D´のステーター3、全体混合を行なうことができる掻き取り型の羽根4とを備えた装置が使用される。このような装置の場合、本発明の高剪断を付加するには、羽根2先端の周速Ut[m/s]のレベルを5m/s以上、好ましくは7m/s以上25m/s以下、より好ましくは10m/s以上25m/s以下とすると共に、上記Dに代えてステーター3の内径D´を用いて算出された見掛けの剪断速度を1,000〜10,000[s-1]程度とすることが好ましい。また、複数組の羽根を備えた装置の場合、上記装置とは別に図3に示すように、通常高剪断を与えることができる羽根2と全体混合を行なうことができる掻き取り型の羽根4とを備えた装置も使用される。このような装置の場合、本発明の高剪断を付加するには、上記と同様に羽根2先端の周速に着目する必要があり、その程度は、5m/s以上、好ましくは7m/s以上25m/s以下、より好ましくは10m/s以上25m/s以下とすることによって、高剪断を付加することができる。
【0027】
上記のような複数組の羽根を備えた装置において、上記撹拌特性を付与できる羽根2としては、ホモミキサー、ディスパーミキサーなどが例示されるが、通常これらの羽根径と撹拌槽径との比d/Dは、0.2〜0.4程度であり、系の粘度が液晶組成物が形成されるに従って高くなることを考慮すれば、このような羽根2のみでは撹拌槽の全体を混合するには力不足である。そこで、高粘度物の混合に適した掻き取り型の羽根4が好適に併用されるが、この場合、高剪断を付加する羽根2に効率的に液を供給するためには、掻き取り型の羽根4の先端の周速として1m/s以上の流動を付加することが好ましい。
【0028】
これらの撹拌特性を有する具体的な装置としては、例えばアジホモミキサー、逆流ミキサー、ハイブリッドミキサーなどを使用すると好適である。
【0029】
本発明は、このような混練工程によって、膜形成成分と油分と水相の一部とからなる混合液から液晶組成物を形成するものであるが、かかる工程において液晶組成物が形成されたか否かは、液晶組成物が形成された場合、系の粘度が数100〜数万P(ポイズ)と高くなるので、この粘度変化を利用して確認することができる。
【0030】
ここで、このような液晶組成物が形成された系を凍結した後に裁断し、その裁断表面の型を取って、透過型電子顕微鏡で観察したところ、多層構造の存在が認められた。この多層構造は、膜形成成分による二分子膜と水層とにより形成されたものであり、この場合、膜形成成分の分子は、互いにその疎水基を膜の内側に向けて配列するので、油分はこのような二分子の疎水基間に微小単位で分散されていると考えられる。
【0031】
本発明の製造方法は、上記液晶組成物と水相の残部とを混合して、目的とする小胞体分散液を得るものであるが、この場合、混合温度は、上記膜形成成分の相転移温度以下でも製造可能であるが、膜形成成分が固まってくることを考慮すれば、上記相転移温度以上で行なうことが好ましい。また、液晶組成物と残りの水相の添加順序は、特に問わず、例えば同時に添加してもよい。そして、この混合・分散工程における剪断力は、特に制限されず、通常の乳化分散工程における程度の剪断力、即ち、通常の乳化分散に使用される機械の通常使用範囲であればよいが、本発明の場合、液晶組成物の粘度が高いという点を考慮すれば、滞留時間を長くして、剪断のかかる時間を増やすことが望ましい。
【0032】
従って、本発明の上記混合・分散工程においては、通常の乳化分散用の装置が使用されるが、このような装置としては、通常、高剪断型分散装置が使用され、具体的には、ホモミキサー、マイルダー、クレアミックス、ラインミキサー、アジホモミキサー、ホモミックラインフロー、ディスパーミキサー、逆流ミキサーなどを挙げることができ、これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。また、この場合、系の粘度は、数10〜数100cP(センチポイズ)程度であるので、掻き取り羽根はあっても無くてもよい。
【0033】
なお、本発明の製造方法は、上記工程によって得られた小胞体分散液に、さらに色素などを添加してもよく、また、分散工程後に冷却を行ってもよい。さらに、仕上げ段階(小胞体分散液が形成された段階)における温度は、膜形成成分の転移点以上であってもよく、相転移点以下となって二分子膜多層構造の二分子膜が固まっている状態となっていてもよい。
【0034】
本発明の製造方法によって得られた小胞体分散液は、この小胞体分散液のみで製品化することも可能であり、さらに他の製品にこの小胞体分散液を原料として配合することもできる。従って、これらの小胞体分散液は、衣料用仕上げ剤や化粧料,洗浄剤などとしてそのまま使用することもでき、またこれらの原料として他の原料を混ぜて使用することもできる。
【0035】
【発明の効果】
本発明の小胞体分散液の製造方法によれば、油分が二分子膜多層構造にしっかり包まれた小胞体を水中に安定的に分散させることができるので、O/W型エマルジョンに比べて油分包含の安定性が向上すると共に、他の成分の存在によって小胞体が容易に破壊されることがない小胞体分散液を得ることができる。また、本発明の小胞体分散液の製造方法によれば、保存中に分散液中に油分が分離することがなく保存安定性に優れる小胞体分散液が得られ、特に小胞体の平均粒径を0.1〜0.5μm程度に微細化できるのみならず、様々な油分を包含することができる。
【0036】
本発明の製造方法により製造された小胞体分散液は、油分が界面活性剤などからなる二分子膜多層構造に取り込まれているため、繊維や毛髪への吸着性能が高く、油分を無駄なく吸着させることができるので、例えば油分としてシリコーンや抗菌剤を使用して柔軟剤を調製すると、衣服にシリコーンによるすべり作用や抗菌剤による抗菌機能を付与することができる。また、例えば油分としてシリコーンや有効成分としてオリーブ油、スクワラン等を使用してヘアーリンスを調製すると、毛髪にシリコーンによるすべり作用や上記有効成分によるしっとり感を付与することができる。さらに、流動パラフィンを包んだ小胞体分散液を台所用洗剤などの洗浄剤に添加すると、皮膚を保護することができる。このように、本発明の製造方法により製造された小胞体分散液は、種々の用途に有効に利用することができる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0038】
[実施例1〜4、比較例1,2]
表1に示す膜形成成分と油分と水相成分の一部とを、あらかじめ50℃に加温しておき、これらを表1に示す液晶形成装置内に仕込み、表1に示す撹拌特性値下で表1に示す時間混練して、液晶組成物を得た。次いで、この液晶組成物と予め50℃に加熱した残りの水相とを表1に記載した分散装置の容器内に仕込み、高剪断下でこれらを分散させて、所定の小胞体分散液を得た。
【0039】
得られた小胞体分散液につき、以下の評価を行った。結果を表1に併記する。小胞体の確認
分散液を偏光顕微鏡を用いて直交偏光条件下で600倍で観察し、二分子膜多層構造を持つ小胞体の存在を示す十字ニコル像が現れたか否かを調べ、以下の判定基準によって判定した。
<判定基準>
〇:十字ニコルが広い範囲にわたって見える
△:十字ニコルが一部見える
×:十字ニコルが見えない
安定性の評価
分散液を室温に冷却し、1日間放置した後、分散液の10ヶ所以上をサンプリングして位相差顕微鏡で観察を行った。位相差顕微鏡の倍率は600倍で、1サンプルにつき10ヶ所以上の場所を観察し、二分子膜多層構造で包まれていない油分が存在するか否かを調べ、下記基準により判定した。また、同じ分散液を50℃の恒温槽に1ヶ月間及び3ヶ月間放置した後、液面に油分の浮きがあるか否かを目視観察し、下記基準により判定した。なお、実施例2の分散液及び比較例1の分散液を50℃3カ月保存した後の光学顕微鏡(倍率600倍)写真をそれぞれ図4(実施例2)及び図5(比較例1)に示す。なお、図5において、大きな粒子が油滴であり、図4及び図5によれば、本発明の小胞体分散液には比較例1の小胞体分散液(従来の小胞体分散液)に比べて、粒径の小さい小胞体が分散していることが認められる。
<位相差顕微鏡の判定基準>
〇:二分子膜多層構造で包まれていない油分が認められない
×:二分子膜多層構造で包まれていない油分が存在する
<保存安定性の判定基準>
〇:液面に油滴が存在しない
×:液面に油滴が存在する
【0040】
【表1】
【0041】
表1の結果によれば、液晶組成物形成時の周速(Ut)を5m/s以上とすると共に、見掛けの剪断速度を100〜1,000(s-1)として高剪断を付加した本発明の製造方法の場合(実施例1〜3)及びアジホモミキサーを使用して高剪断を付加した場合(実施例4)は、過酷保存条件下でも安定な小胞体分散液が得られるのに対して、液晶組成物を周速(Ut)5m/s未満の低剪断下で形成した場合(比較例1)は、得られた小胞体分散液が過酷保存条件下では耐えられないことが認められる。一方、各成分を手撹拌し、液晶組成物を形成せずに膜形成成分と油分とを水相中に分散した場合(比較例2)は、小胞体がある程度は形成されたようではあるが、油分は封入されなかった。
【0042】
[実施例5〜13]
表2に示す膜形成成分と油分と水相の一部とを、あらかじめ50℃に加温しておき、これらをラインミキサー(実施例1と同じ装置・撹拌特性値)に供給し、高剪断下で30秒間混練して、液晶組成物を得た。次いで、この液晶組成物と予め50℃に加熱した残りの水相とを表1に記載した分散装置の容器内に仕込み、高剪断下でこれらを分散させて、所定の小胞体分散液を得た。
【0043】
得られた小胞体分散液につき、小胞体の存在の確認及び小胞体の安定性を実施例1〜4と同様の方法で評価した。結果を表2に併記する。
【0044】
【表2】
【0045】
表2の結果によれば、本発明の製造方法によって、種々の油分を取り込んだ小胞体の分散液が得られ、これらの小胞体分散液は過酷保存条件下でも安定であることが認められる。
【0046】
[実施例14〜20]
上記実施例5〜13において、各組成に代えて表3に示す組成を用いる以外は、実施例5〜13と同様の方法によって分散液を調製し、得られた分散液の小胞体の存在の確認及び小胞体の安定性を実施例5〜13と同様の方法で評価した。結果を表3に併記する。
【0047】
【表3】
【0048】
表3の結果によれば、本発明の製造方法は、種々の膜形成成分によって油分を安定的に取り込んだ小胞体分散液が得られることが認められる。
【0049】
次に、上記実施例1で得られた小胞体分散液を衣料用柔軟剤として女性用ストッキングの処理を行い、対照として従来の柔軟剤処理によるストッキングとの使用感を10名のパネラーによって比較評価したところ、8名のパネラーが、実施例1による処理を行ったストッキングの方が、従来の柔軟剤処理によるストッキングよりも引っかからず、はきやすいという評価をした。
【0050】
また、上記実施例9で製造した小胞体分散液を衣料用柔軟剤として、靴下の処理を行い、対照として市販の柔軟剤(ライオン(株)製ソフランC)で処理を行ったものを左右別々に10名のパネラーが1日履いて、靴下を脱いだときのにおいを評価したところ、7名のパネラーが実施例9で処理したものが市販品よりもいやなにおいがしないという評価をした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において液晶組成物を形成する装置の一例の概略断面図である。
【図2】本発明において液晶組成物を形成する装置の他の例の概略断面図である。
【図3】本発明において液晶組成物を形成する装置のさらに他の例の概略断面図である。
【図4】実施例2の小胞体分散液の50℃3カ月保存後の光学顕微鏡写真である。
【図5】比較例1の小胞体分散液の50℃3カ月保存後の光学顕微鏡写真である。
Claims (2)
- 下記一般式(1)で示される第4級アンモニウム塩、第3級アミン塩、イミダゾリン塩、イミダゾリニウム塩及びアミノ酸系カチオン界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上のカチオン界面活性剤である膜形成成分と油分と水相の一部とからなり、その質量比が油相(膜形成成分及び油分):水相=1:0.5〜1:2の質量比である系を、膜形成成分の相転移以上の温度下で、羽根を有する撹拌槽において、羽根先端の周速(Ut)が5m/s以上25m/s以下の高剪断を付加した状態で混練して、粘度が数100〜数万P(ポイズ)の液晶組成物を形成させた後、該液晶組成物に水相の残量を添加・混合して、膜形成成分からなる二分子膜多層構造に上記油分が取り込まれた平均粒径が0.1〜0.5μmの小胞体分散液を形成させることを特徴とする小胞体分散液の製造方法。
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---|---|---|---|
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