JP3653900B2 - 鍵盤装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、簡易な構成で双方向の力を付与することができる鍵盤装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鍵盤楽器のうち電子楽器には、人が指で鍵盤を演奏する手動演奏モードと、電子楽器自体が鍵盤を駆動する自動演奏モードを有するものがあった。ところで、自然楽器のピアノの鍵盤は、鍵操作によってハンマを駆動し、弦を叩いて楽音を発生させる。一方、電子楽器の鍵盤はハンマ等の機械的要素を駆動する必要がないので、簡易な構成で作られるのが一般である。このため、電子楽器を演奏した場合、鍵盤のタッチ感が、自然楽器とかなり異なったものとなってしまう。そこで、手動演奏モードにあっては、電子楽器の鍵盤のタッチ感を自然楽器の鍵盤のタッチ感に近づけるため、鍵盤への反力をアクチュエータを用いて制御することが行われる。なお、鍵盤への反力は人の指に力覚を与えるものであるので、本明細書では力覚の観点からこのモードを力覚制御モードと称する。一方、自動演奏モードにあっては、楽曲の進行に合わせて鍵盤をアクチュエータを用いて駆動することが行われる。
【0003】
このような電子楽器に用いられるアクチュエータの駆動方式としては、上下2個のアクチュエータを設け、これらを個別に駆動制御する方式が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般にアクチュエータは、コイル、ヨークおよびプランジャから構成される。上述した方式に用いられる上下2個のアクチュエータでは、プランジャは共通に使用できるが、コイルおよびヨークは別個に設ける必要がある。このため、部品点数が多く、構造が複雑になり、しかも外形が大きいものになってしまう。特に、コイルに用いられる銅の量が2倍必要となる。さらに、アクチュエータを個々に駆動するため、駆動回路を2系統設ける必要がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、自動演奏モードおよび力覚制御モードの両方に対応できる鍵盤装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、鍵と、コイルと、当該コイルへの給電に応じて前記鍵に対し、当該鍵の押下方向またはその反対方向の力を与えるプランジャ備えるアクチュエータと、前記鍵を前記押下方向に付勢する第1の弾性体と、前記鍵を前記反対方向に付勢する第2の弾性体と前記鍵を演奏者が操作する手動操作の場合と、前記鍵を演奏データに従って自動操作する自動操作の場合とで、前記コイルに給電がなされていない場合における前記コイルと前記プランジャの相対的な位置を異ならせる機構部とを備え、当該機構部は、前記位置を異ならせることで、前記第1の弾性体と前記第2の弾性体によって付勢されている前記鍵に対し、前記コイルへの給電に応じて前記プランジャが与える力の方向を、前記手動操作の場合は前記反対方向、前記自動操作の場合は前記押下方向に切り換えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、前記手動操作の場合において前記プランジャが前記鍵に与えるべき力を第1の指令値として算出する一方、前記自動操作の場合において前記プランジャが前記鍵に与えるべき力を第2の指令値として算出する演算手段と、前記手動操作の場合には前記第1の指令値に基づいて前記コイルに給電を行う一方、前記自動操作の場合には前記第の指令値に基づいて前記コイルに給電を行う給電手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係わる一実施形態を説明する。
1.鍵盤およびその駆動機構
図1は、鍵盤およびその駆動機構を説明するための断面図である。図1(A),(B)において、10は鍵盤であって、支点Aを中心として上下に回動できるように軸支されており、上方向の回動は図示を省略したストッパによって規制されている。また、20はプランジャ21と一体に構成される突き上げヘッドである。アクチュエータは、プランジャ21、ソレノイドヨーク22、およびソレノイドコイル23で構成される。ソレノイドヨーク22とソレノイドコイル23は一体に構成されており、ソレノイドコイル23に電流が給電されると、ソレノイドコイル23とプランジャ21の間に電磁力が作用し、プランジャ21が移動するようになっている。なお、図1(A),(B)にあっては、ソレノイドコイル23に電流が給電されていないものとする。
【0010】
また、24はガイドプレートであり、ソレノイドヨーク22と摺接しており、アクチュエータを上下方向に移動可能に保持している。また、巻きバネ50は、鍵盤10と固定端51との間に配設され、鍵盤10を下方向に付勢する。一方、巻きバネ60は、ガイドプレート24の下辺とプランジャ21との間に配設され、プランジャ21を上方向に付勢する。ここで、巻きバネ60を巻きバネ50に比して強いバネとし、ソレノイドコイル23に電流が給電されない場合には、鍵盤10は上方向に付勢される。この場合、上述したように、鍵盤10の上方向の回動はストッパにより規制されるので、ソレノイドコイル23に電流が給電されない場合には、鍵盤10は、ストッパにより規制される位置(=レスト位置)に位置する。
【0011】
また、30はセンサであって、これにより、プランジャ21の位置や速度が検出される。なお、プランジャ21と突き上げヘッド20は、上述したように一体として構成されており、また、鍵盤10は巻きバネ50および巻きバネ60によって上下の両方向から付勢されているため、突き上げヘッド20は常に鍵盤10に当接しているので、センサ30の検出結果は、鍵盤10の位置情報として利用できる。また、40は支点Bを中心に回動自在に設けられた昇降カムであり、ソレノイドヨーク22の下側に設けられている。ここで、昇降カム40を右側に回動させると、図1(A)に示す状態から図1(B)に示す状態へ変化する。この場合、昇降カム40回動に連動して、ソレノイドヨーク22およびソレノイドコイル23は次第に上昇し、昇降カム40が停止ピン41と当接すると、その上昇が停止する。なお、カム40の駆動は、演奏者の操作に応じて、機械的に行うようにしてもよく、またモーター等により電気的に行うようにしてもよい。
【0012】
図1(A)に示す状態では、プランジャ21がソレノイドヨーク22から突出している。この状態でソレノイドコイル23に電流を給電すると、プランジャ21には下向きの力が加わる。この力は巻きバネ60の付勢力の一部を相殺するように作用するため、鍵盤10は、巻きバネ50の付勢力によって押し下げられる。したがって、ソレノイドコイル23に給電する電流の値を調整すれば、鍵盤10の位置を制御することができる。
【0013】
一方、図1(B)に示す状態では、プランジャ21がソレノイドヨーク22の中に引き込まれている。この状態でソレノイドコイル23に電流を給電すると、プランジャ21には上向きの力が加わる。この力は、突き上げヘッド20を介して鍵盤10に伝達される。したがって、人が指で鍵盤10を押し下げた場合に、上向きの力を反力として指に付与することができる。
【0014】
この例にあっては、自動演奏モードでは図(A)に示す状態となり、力覚制御モードでは図(B)に示す状態となるように、昇降カム40が図示せぬ駆動機構によって駆動される。これにより、一つのソレノイドコイル23によって、プランジャ21を双方向に駆動させることが可能となる。
【0015】
2.駆動回路
次に、アクチュエータの駆動回路について図面を参照しつつ説明する。図2は、駆動回路の主要部を示す回路図である。図において、100は自動演奏テーブルであって、そこにはMIDI演奏データMDを第1のPWM指令値P1に変換するテーブルが格納されている。200は力覚制御テーブルであって、そこには、プランジャ21の位置情報X,速度情報X'および加速度情報X''と反力として付与する力覚との関係を規定するテーブルが格納されており、このテーブルを参照することによって第2のPWM指令値P2が生成される。具体的には、運動方程式の各項の値を示すパラメータが格納されている。運動方程式は、例えば、F=MX”+ρX’+kXで与えられる。ここで、Xは位置情報、X’は速度情報、X”は加速度情報、Mは質量、ρは粘性係数、kはバネ係数であり、また、MX”,ρX’,kXは、パラメータの組である。そして、MX”,ρX’,kXを加算した値Fに基づいて第2のPWM指令値P2が生成される。
【0016】
また、300はPWM回路であって、自動演奏モードでは第1のPWM指令値P1に基づいて、一方、力覚制御モードでは第2のPWM指令値P2に基づいて、PWM信号P3を生成する。このPWM信号P3のデューティが高くなる程、FET301に流れ込む電流は増加し、その電流がソレノイドコイル23に電源Vccから給電される。一方、PWM信号のデューティが低くなると、FET301はオフ状態に近づき、デューティ0%にてソレノイドコイル23への給電は停止される。なお、ソレノイドコイル23はインダクタンス成分を有するため、PWM信号P3の状態が急に変化すると、FET301とソレノイドコイル23の接続点の電圧がコイルのキックバック電圧によって電源Vccの電圧を大幅に上回ることがある。ダイオード302は、このような大振幅の電圧によって、前記接続点の電圧がFET301の耐圧を越えないように保護するための保護回路として機能する。
【0017】
ここで、上述の駆動回路によって付与されるストローク量Xとプランジャ21の推力Fとの関係を図3,4を用いて説明する。なお、ストローク量Xは、プランジャ21の移動距離の絶対値を表すものである。図3に自動演奏モードにおける関係を示し、図4には力覚制御モードにおける関係を示す。図3,4において、X1は、プランジャ21が各々図1(A),(B)の状態にある場合(鍵盤10がレスト位置にある場合)のストローク量である。また、図3のX2は、プランジャ21が引き込まれる限界におけるストローク量であり、図4のX2は、プランジャ21が突出できる限界におけるストローク量である。したがって、斜線部分がアクチュエータの使用範囲となる。ここで両図を比較すると、両者は全く逆特性になっていることが判る。これは、ソレノイドコイル23に給電する電流値を両者で等しくすると、プランジャ21に付与される推力Fが、ソレノイドコイル23とプランジャ21との相対的な位置関係によって定まるからである。
【0018】
このように、ソレノイドコイル23とプランジャ21の相対的な位置を昇降カム40によって変動させたので、アクチュエータを双方向駆動とすることができる。この場合、ソレノイドコイル23は単一で足りるから、部品点数を削減し、小型化を図ることができる。また、電流の向きを切り換えることなく、双方向駆動を実現できるから、駆動回路を簡易に構成することができる。
また、ソレノイドコイル23に給電されない場合には、レスト位置で一定の上方向のバネ負荷を残しながら鍵盤10が釣り合うように巻きバネ50,60のバネ定数が設定されるので、低消費電力で鍵盤10を双方向に駆動することができる。
なお、本実施形態においては図示せぬ電子音源を有しており、センサ30により検出される鍵盤10の位置に応じて鍵盤10の押離鍵を判別し、対応する楽音を電子的に発生するようになっている。
【0019】
次に、図2の動作を説明する。まず、使用者は、力覚制御モードと自動演奏モードのいずれかを選択する。また、これに応じてカム40を駆動する。
まず、自動演奏モードが選択された場合の動作を説明する。このとき、図示せぬ記憶装置に記憶されたMIDI演奏データMDが読み出され、あるいは、外部からMIDI演奏データMDが供給される。このMIDI演奏データMDは、押鍵を指示するイベントの場合には、押鍵を示すキーオンデータ、押す鍵を示すキーコード、押鍵速度を示すベロシティデータ等からなり、離鍵を指示するイベントの場合には、離鍵を示すキーオフデータ、離す鍵を示すキーコード等からなる。なお、記憶装置にMIDI演奏データMDを記憶する場合には、各イベントの発生タイミングを示すタイミングデータをも記憶し、このタイミングデータの示すタイミングで各イベントのデータが読み出す。
【0020】
記憶装置から読み出され、あるいは、外部から供給されたMIDI演奏データMDが押鍵を指示するイベントである場合には、自動演奏テーブル100をMIDI演奏データMDに含まれるベロシティデータを参照してPWM指令値P1を得、このPWM信号指令値P1に応じたPWM信号P3を生成し、このPWM信号P3をMIDI演奏データMDに含まれるキーコードが示す鍵に対応するソレノイドコイル23に供給する。これにより、MIDI演奏データMDに含まれるキーコードが示す鍵がMIDI演奏データMDに含まれるベロシティデータに示される速度で駆動される。
【0021】
一方、記憶装置から読み出され、あるいは、外部から供給されたMIDI演奏データMDが離鍵を指示するイベントである場合には、MIDI演奏データMDに含まれるキーコードが示す鍵に対応するソレノイドコイル23への給電を停止する。これにより、MIDI演奏データMDに含まれるキーコードが示す鍵が離鍵される。
【0022】
次に、力覚制御モードが選択された場合の動作を説明する。このとき、力覚制御テーブル200には、前述したように、演奏者により鍵盤10の押下げに抗する方向の力を、鍵盤10の位置、速度、加速度に応じて発生するためのパラメータが格納されている。そして、演奏者が鍵盤10を押し下げると、センサ30により、鍵盤10の位置が検知される。この鍵盤10の位置から鍵盤10の位置の時間変化(=速度)および鍵盤10の速度の時間変化(=加速度)を算出し、この位置情報、速度情報および加速度情報で力覚制御テーブルを参照することにより、PWM指令値P2を得、PWM指令値P2に応じたPWM信号P3を生成し、このPWM信号P3を押し下げられた鍵盤に対応するソレノイドコイル23に供給する。これにより、押し下げられた鍵盤10に対して鍵盤10の位置、速度、加速度に応じた反力が付与される。
【0023】
3.力覚制御の具体例
次に、上述した鍵盤装置における力覚制御の具体的構成を図面を用いて詳細に説明する。図5は、この鍵盤装置のブロック図である。図において、400は鍵盤部であって、上述した図1(B)に相当する。なお、電子楽器には、図示した鍵盤部400の他、同一構成のものが複数設けられているが、ここでは省略してある。101,102は微分回路であって、センサ30によって検出された鍵盤10の位置情報Xを順次微分して、速度情報X'と加速度情報X''を各々生成する。104,105,106は、マルチプレクサであって、複数の鍵盤部400からの位置情報X、速度情報X'または加速度情報X''を時分割多重して、A/D変換器107,108,109に出力する。これにより、A/D変換器107〜109から後段の構成は各鍵盤部400に対応して時分割で動作する。
【0024】
また、110は位置情報2次元テーブル群であって、そこには位置情報Xと力F1の関係を規定する複数のテーブルが格納されている。この位置情報2次元テーブル群110に速度情報X'が供給されると、速度情報X'に応じて複数のテーブルのうち一つが選択され、このテーブルを参照して、力F1を指示する第1の力覚データD1が出力される。例えば、速度情報X'の正負によって参照するテーブルを切り換えることができる。この場合には、鍵盤10が押し下げられる場合と押し戻される場合とで異なる力覚を指に付与することができる。
【0025】
また、111は速度情報2次元テーブル群であって、そこには速度情報X'と力F2の関係を規定する複数のテーブルが格納されている。速度情報2次元テーブル群111に位置情報Xが供給されると、位置情報Xに応じて複数のテーブルのうち一つが選択され、このテーブルを参照して、力F2を指示する第2の力覚データD2が出力される。
【0026】
112は加速度情報2次元テーブル群であって、そこには加速度情報X''と力F3の関係を規定する複数のテーブルが格納されている。加速度情報2次元テーブル群112に位置情報Xが供給されると、速度情報X'に応じて複数のテーブルのうち一つが選択され、このテーブルを参照して、力F3を指示する第3の力覚データD3が出力される。
【0027】
また、113は、CPU114の制御の下に例外処理を行うための2次元テーブル群であって、速度情報X'および加速度情報X''とは無関係な力F4を指示する力覚データD4を出力する。この2次元テーブル群113も複数のテーブルから構成され、位置情報Xに応じて複数のテーブルのうち一つが選択され、このテーブルを参照して、力覚データD4が出力される。例えば、ボリュームを操作するとその操作量に応じて外部入力EXTの値が変化するように構成し、2次元テーブル群114に所定の変数値を格納しておけば、操作量に応じてタッチ感を創出できる。
【0028】
第1〜第3の力覚データD1〜D3が加算器115で加算されると、その出力データは、加算器116によって第4の力覚データD4と加算される。これにより、運動方程式の各項の値が加算される。この場合の運動方程式は、例えば、F=MX”+ρX’+kX+fであり、MX”=F3,ρX’=F2,kX=F1,f=F4である。
【0029】
こうして算出された加算結果は、第2のPWM指令値P2としてPWMテーブル117に供給される。PWMテーブル117は、ソレノイドコイル23、プランジャ21とヨーク22によって発生される推力のヒシテリシス特性を補正できるように複数のテーブルから構成され、このうちの一つが位置情報Xに基づいて選択される。このため、第2のPWM指令値P2がPWMテーブル117に供給されると、選択されたテーブルが参照され、第2のPWM指令値P2に補正が施された補正PWM指令値P2'が出力される。そして、PWMドライバ118は補正PWM指令値P2'に基づいてソレノイドコイル23を駆動する。なお、2次元テーブル110〜113は、図2に示す力覚制御テーブル200に相当し、また、PWMテーブル117とPWMドライバ118は、同図に示すPWM回路300、FET301、およびダイオード302に相当する。
【0030】
次に、図5を参照して、この電子楽器の動作を説明する。ここで、鍵盤10の質量をMk、突き上げヘッド20とプランジャ21の質量をMp、支点Aから鍵盤10上の巻きバネ50までの距離をL1、支点Aから鍵盤10上の突き上げヘッド20までの距離をL2、支点Aから鍵盤10上の指の位置までの距離をL3とする。また、巻きバネ50,60のバネ定数をK1,K2とし、指が鍵盤10を押し下げる力をFfとし、アクチュエータの推力をFaとする。
この場合、各要素のモーメントが釣り合っており、鍵盤10が静止しているとすると、これらのモーメントの関係は以下に示す式1で与えられる。ただし、摩擦力は無視するものとし、K1<K2とする。
Figure 0003653900
式1を変形すると、式2が導かれる。
Figure 0003653900
ここで、α=(L1/L2)2・K1、β=L3/L2、γ=−K2+(Mk+Mp)・gとおくと、定数α,β,γを用いて、FaはXとFfの関数で表され以下に示す式3で与えられる。
Fa=α・X+(β・Ff+γ) ………式3
【0031】
式3が成立するのは、例えば、鍵盤10を指でそっと押し下げて、レスト位置とエンド位置との間で鍵盤10を静止させた場合である。この場合には、指は鍵盤10から上向きの反力を力覚として感じる。Faは上述した2次元テーブル110〜113等によって生成される。
上述した応用例によれば、力覚制御モードにおいて、鍵盤10が押し下げられる場合と押し戻される場合とで異なる力覚を指に付与するといったように複雑な力覚を創出することが可能となる。
【0032】
4.変形例
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、以下に述べる各種の変形が可能である。
(1)上述した実施形態にあっては、ソレノイドコイル23とプランジャ21の相対的な位置を変化させるのに、昇降カムを用いてソレノイドヨーク22とソレノイドコイル2を上下方向に駆動したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ソレノイドコイル23とプランジャ21の相対的な位置を変化させる機構であればどのようなものを用いてもよい。例えば、図6に示すように、L型の部材LAを支点Aで軸支し、この部材LAの先端部にソレノイドヨーク22とソレノイドコイル2を固定して、部材LAを回動させることによりソレノイドコイル23とプランジャ21の相対的な位置を変化させるようにしてもよい。
【0033】
また、図7に示すように支点Cで軸支されるカム機構CMを設け、突き上げヘッド2とカム機構CMが水平に接触するように配置してもよい。この場合は、ソレノイドヨーク22とソレノイドコイル2を水平に移動させることによって、ソレノイドコイル23とプランジャ21の相対的な位置を変化させることができる。
【0034】
▲2▼上述した実施形態において、巻きバネ50は鍵盤10の上側に、巻きバネ60、アクチュエータおよび昇降カム40は鍵盤10の下側に配設されていたが、これらを逆に配置するようにしてもよい。また、巻きバネ50,60は、板バネ等の弾性体であってもよい。
【0035】
▲3▼上述した実施形態において、センサ30は、光学的に位置を検出するものの他、歪みゲージを用いて電気的に位置を検出するものであってもよい。また、上述した応用例にあっては、センサ30で位置情報Xのみを検出する例を説明したが、センサ30で速度、加速度を検出してもよい。また、センサ30は、力覚制御モードにおいて力覚を決定するための鍵盤位置(速度・加速度)情報を得るために用いたが、フィードバックサーボループで制御を行う自動演奏モードにおいて、センサ30を鍵盤位置(速度)のフィードバックセンサとして使用するようにしてもよい。
【0036】
▲4▼上述した実施形態において、複数の鍵盤10から構成される電子楽器鍵盤の一部を自動演奏モードとし、他の部分を力覚制御モードとなるようにしてもよい。この場合には、一部の鍵盤を図1(A)の状態とし、その他の鍵盤を図1(B)の状態になるように昇降カム40を制御すればよい。これにより、自動演奏モードで伴奏パートを自動演奏しつつ、力覚制御モードでメロディパートを手動演奏するといった連弾を行うことが可能となる。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の発明特定事項によれば、コイルとプランジャの相対的な位置を可変することによって、一つのアクチュエータで鍵盤を双方向に駆動できるようにしたので、簡易な構成で自動演奏と手動演奏を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係わる鍵盤およびその駆動機構を説明するための断面図である。
【図2】 同実施形態に用いられるアクチュエータの駆動回路の主要部を示す回路図である。
【図3】 同実施形態の力覚制御モードにおけるプランジャの推力とそのストローク量との関係を示すグラフである。
【図4】 同実施形態の自動演奏モードにおけるプランジャの推力とそのストローク量との関係を示すグラフである。
【図5】 同実施形態の応用例を説明するための回路図である。
【図6】 同実施形態に係わる鍵盤およびその駆動機構の変形例を説明するための断面図である。
【図7】 同実施形態に係わる鍵盤およびその駆動機構の変形例を説明するための断面図である。
【符号の説明】
10…鍵盤、23…ソレノイドコイル(コイル)、21…プランジャ、41…昇降カム(機構部)、50…巻きバネ(第1の弾性体)、60…巻きバネ(第2の弾性体)、100…自動演奏テーブル(第2の演算手段)、200…力覚制御テーブル(第1の演算手段)、P1…第1のPWM指令値(第2の指令値)、P2…第2のPWM指令値(第1の指令値)、300…PWM回路(給電手段)。

Claims (2)

  1. 鍵と、
    コイルと、当該コイルへの給電に応じて前記鍵に対し、当該鍵の押下方向またはその反対方向の力を与えるプランジャ備えるアクチュエータと、
    前記鍵を前記押下方向に付勢する第1の弾性体と、
    前記鍵を前記反対方向に付勢する第2の弾性体と
    前記鍵を演奏者が操作する手動操作の場合と、前記鍵を演奏データに従って自動操作する自動操作の場合とで、前記コイルに給電がなされていない場合における前記コイルと前記プランジャの相対的な位置を異ならせる機構部とを備え、当該機構部は、前記位置を異ならせることで、前記第1の弾性体と前記第2の弾性体によって付勢されている前記鍵に対し、前記コイルへの給電に応じて前記プランジャが与える力の方向を、前記手動操作の場合は前記反対方向、前記自動操作の場合は前記押下方向に切り換える
    とを特徴とする鍵盤装置。
  2. 前記手動操作の場合において前記プランジャが前記鍵に与えるべき力を第1の指令値として算出する一方、前記自動操作の場合において前記プランジャが前記鍵に与えるべき力を第2の指令値として算出する演算手段と、
    前記手動操作の場合には前記第1の指令値に基づいて前記コイルに給電を行う一方、前記自動操作の場合には前記第の指令値に基づいて前記コイルに給電を行う給電手段と
    を備えたことを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
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