JP3552908B2 - ウェーハの研磨方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコンウェーハ(以下、単にウェーハとも称する)の研磨に係り、特に高い平坦度と所望の面粗さが得られ、研磨装置にかかる負荷の軽減、研磨速度の向上を可能とするウェーハの研磨方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体素子の小型軽量化、高集積化は目覚ましく、このため母体となるウェーハの高品質化と大口径化が進み、直径300 mmを超えるものも現れ、要求されるウェーハの平坦度や表面粗さはますます厳しさを増している。
従来、ウェーハの鏡面研磨は、ウェーハの片面を硬質な単層研磨布を用いて粗研磨した後、軟質な単層研磨布を用いて仕上げ研磨を行い、所望の平坦度や面粗さを得ている。
【0003】
また、半導体デバイス工程において、ウェーハ上に素子を形成するため酸化膜、金属膜あるいはポリシリコン等の薄膜が層状に形成される。そして多層に配線して行くと層の表面に凹凸を生じる。この層間絶縁膜の表面を平坦にするためCMP技術(化学機械的研磨;Chemical Mechanical Polishing )が提案されている。この研磨技術は、多層弾性研磨パッドを用いるもので均一な研磨代が得られる。
【0004】
しかしながら、近年、半導体デバイスの高集積化に伴い、従来の半導体デバイス用の鏡面研磨ウェーハを製造する研磨方法では、最先端の半導体デバイス製造に必要な平坦度の仕様を満足することが困難になってきている。そこで、両面研磨や平面研削等によって高度に平坦化した後、得られた平坦度を保持しつつ所定の面粗さをもつ鏡面研磨ウェーハに仕上げるため、均一な研磨代が得られる前記CMP技術が鏡面研磨ウェーハを製造する工程でも使用されている。
【0005】
つまり、CMP技術は、ケミカルエッチングされたウェーハの研磨にも使用され、平滑で無歪みの鏡面加工がなされている。CMP技術は原理的には化学的作用と機械的作用により研磨するものであり、例えば、コロイダルシリカをアルカリ溶液中に分散させた研磨剤を供給しながら、所定の荷重下で、ウェーハと研磨布との間の相対運動により研磨が行われる。
このようなウェーハの鏡面研磨は、アルカリ溶液によってウェーハ表面に軟質のシリカ水和膜が形成され、この水和膜を除去することにより研磨が進行する。これは片面研磨であれ、両面研磨であれ同じである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一方、研磨するウェーハが、例えば有機性の汚れやパーティクルを除去するためのSC−1洗浄(アンモニア、過酸化水素、水の混合液による洗浄)など、過酸化水素水を含む溶液で洗浄された場合、ウェーハ表面には酸化膜が形成される。また、複数段で研磨を行う場合、始めの研磨(一次研磨)の後、ウェーハを水中で保管し、再び研磨(二次研磨等)を行うことがある。この場合、保管する水中の溶存酸素によってもウェーハ表面が酸化されることが知られている。また、大気中に放置されたウェーハにも自然酸化膜が形成される。これらの酸化膜は、フッ酸を含む薬液で洗浄すると除去され、ウェーハ表面に酸化膜が存在しない状態となる。
【0007】
このように、研磨されるウェーハの表面は、酸化膜の有無や表面状態が異なっている。このため、表面に酸化膜が存在しているウェーハを研磨する際、ウェーハと研磨布との間に大きな摩擦力が生じ、両面研磨ではウェーハキャリア内で、片面ワックスフリー研磨ではウェーハ保持部材内でウェーハが激しく振動し、装置に大きな負荷がかかり、平坦度を悪化させることがあった。
【0008】
一方、フッ酸洗浄が施されたウェーハや、研磨直後でまだ表面に殆ど酸化膜が形成されていない場合は、上記のような問題は生じなかった。このことから装置にかかる負荷の原因は、ウェーハの表面、特にウェーハ表面の酸化膜によることが推察された。
【0009】
通常、シリコンウェーハの研磨には、コロイダルシリカをアルカリ溶液中に分散したスラリー(研磨剤)が使用されるが、このスラリーはシリコンに比べ、シリコン酸化膜に対する研磨速度は遅く、研磨圧力の上昇に伴い、装置にかかる負荷も次第に大きくなり、上記したようなウェーハの振動が生じる。
【0010】
特に、一次研磨、二次研磨、仕上げ研磨等、多段階で研磨を行う場合の一次研磨などでは研磨の削り代が多いため、スラリーに研磨促進剤であるアミノアルコールを添加することが多い。このアミノアルコールを添加したスラリーでは、シリコンに対する研磨速度は上昇するものの、酸化膜に対する研磨速度はアミノアルコールを添加していないときより更に低下することが知られている。従って、研磨の負荷も大きくなる。
【0011】
特にウェーハを固着させないで保持する両面研磨や、片面ワックスフリー研磨では、研磨初期における不安定な挙動は、ウェーハの破損等にもつながるため、避けなければならない。
この対策として、研磨の進行とともに上昇させる研磨圧力の上昇速度を低下させ、低い圧力でゆっくりと研磨することで対処することもできるが、研磨初期の研磨効率が悪くなりスループット量を減じ、生産効率が下がる。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、酸化膜の有無に関わらず、研磨装置に加わる負荷を軽減し、平坦度を悪化させることなく、所望の面粗さを得ることができる研磨方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明のウェーハの研磨方法は、ウェーハを化学機械的に研磨する研磨工程において、第一の研磨剤を用いてウェーハ表面の酸化膜を除去する第一の研磨処理後、速やかに第二の研磨剤を用いて第二の研磨処理を行い、面粗さを改善することを特徴とし、前記第一の研磨剤はアルカリ溶液中にヒュームドシリカ、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及び酸化クロムから選択した少なくとも1種、好ましくはヒュームドシリカを分散させたものであり、前記第二の研磨剤はアルカリ溶液中にコロイダルシリカを分散させたものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のウェーハの研磨方法は、先ず、ウェーハの表面に存在する酸化膜を、ヒュームドシリカ、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及び酸化クロムから選択した少なくとも1種、好ましくはヒュームドシリカをアルカリ溶液中に分散させた第一の研磨剤を用いて、研磨の初期段階に、つまり第一の研磨処理で表面の酸化膜を一挙に除去し、その後、引き続き面粗さを改善するため、コロイダルシリカをアルカリ溶液に分散させた第二の研磨剤を用いて、通常の研磨処理に相当する第二の研磨処理を行うものである。
このように、第一の研磨処理工程でウェーハの表面から研磨初期に酸化膜を除去しておくことにより、第二の研磨処理工程において研磨装置にかかる負荷は極めて軽減され、研磨速度が向上するとともに、高い平坦度と所望の面粗さが保証される。
【0015】
上記第一、第二の研磨処理に使用するアルカリ溶液は、アルカリとして水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、アルカリ溶液の濃度はpH8〜11の範囲が好ましい。
【0016】
第一の研磨剤であるヒュームドシリカの一次粒径は20〜150nm程度が好ましい。ヒュームドシリカはシリカ粒子が凝集して存在するもので実効的な粒径は大きくなる。なお、一次粒径とは凝集前のシリカ粒子単体の粒径である。酸化セリウム、酸化ジルコニウム及び酸化クロムの好ましい粒径は、20〜100nmである。
また、第二の研磨剤であるコロイダルシリカの粒径は20〜150nm程度が好ましい。第二の研磨処理工程において、ウェーハの研磨速度はコロイダルシリカの粒径に依存し、特に20nm未満の細粒では、研削能力が小さく研磨速度は遅くなる。一方、80nmを超えると研磨速度は速くなり、さらに150nmを超えるとひっかき傷が残る等の弊害を生じる。
【0017】
研磨剤の研磨速度は、シリコン(Si)と酸化膜(SiO )のように化学組成が異なると、研磨剤によるエッチング作用(研磨における化学的要素)が異なるため、それぞれの研磨速度は異なったものとなる。このとき研磨速度は相対的に酸化膜の方が遅くなる。このため、ウェーハの表面に酸化膜が偏在する状態で研磨すると、研磨速度の遅い酸化膜の影響を受け、ウェーハの平坦度が悪化する。
【0018】
本発明の研磨方法では、同一の研磨装置を用い、研磨を2段階に分け、酸化膜の研削能力の高い第一の研磨剤、例えば、ヒュームドシリカを第一の研磨処理で用いてウェーハの平坦度を悪化させることなく酸化膜を速やかに除去し、コロイダルシリカによる第二の研磨処理で面粗さを改善することを特徴としている。なお、従来の研磨では、ヒュームドシリカはウェーハの表面に傷が残りやすいため、通常使用されなかったものである。
【0019】
【実施例】
本発明のウェーハの研磨方法を実施例にもとづきさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
図1は、本実施例で使用したウェーハ両面研磨装置の主要部を示す概略断面図であり、図2は、図1から上定盤を取り外した状態での部分平面図である。
ウェーハWは、キャリア1の保持孔2内に保持され、逆回転する上定盤3と下定盤4との間で所定圧の下に挟持されている。上定盤3と下定盤4には、ウェーハWと接する側の面にそれぞれ研磨布5、6が貼付され、上定盤3に設けられた注入孔7から適量の研磨剤が滴下される。研磨剤を供給するスラリータンク(図示を省略)は切り替え手段によって、供給する研磨剤の種類を選択できるようになっている。
【0020】
キャリア1は、その外周に歯車8を有し、下定盤4に設けられた太陽ギア9とインターナルギア10に噛み合って自転と公転をなすように設置され、下定盤4の回転により太陽ギア9が矢印Aの方向に回転すると、キャリア1は、矢印Bの方向に回転(自転)するとともに、インターナルギア10により矢印Cの方向に回転しながら移動(公転)し、ウェーハWの両面が同時に効率よく研磨される。
【0021】
次に、上記ウェーハ両面研磨装置を用いて次の予備実験を行った。
(予備実験1)
厚さ750μmの8インチウェーハをアルカリエッチングした後、直ちに、平均粒径80nmのコロイダルシリカを水酸化ナトリウムのアルカリ溶液(pH11)中に分散させた研磨剤で研磨した。特に問題なく、面粗さ0.25〜0.4nm、平坦度(最大厚さと最小厚さの差、TTV(Total Thickness Variation ))1μmのウェーハに研磨された。
【0022】
(予備実験2)
同じウェーハを同様にアルカリエッチングした後、今度は、SC−1洗浄を行ってウェーハの表面に酸化膜が形成したものを、コロイダルシリカによる研磨を行ったところ、キャリア内でウェーハの振動が観察された。
【0023】
(実施例1)
本実施例で研磨するウェーハ(厚さ750μmの8インチウェーハ)には、研磨洗浄後長期間放置されて表面に自然酸化膜が形成されている。
このウェーハをキャリアにセットした後、第一のスラリータンクより第一の研磨剤を滴下し研磨した。酸化膜の除去に必要な時間(予め測定して把握)研磨したところで第一の研磨処理を終え、第二のスラリータンクより第二の研磨剤を滴下して第二の研磨処理を行った。
なお、第一の研磨剤は、一次粒径80〜100nmのヒュームドシリカを水酸化ナトリウムのアルカリ溶液(pH11)中に分散させて調製し、第二の研磨剤は、平均粒径80nmのコロイダルシリカを水酸化ナトリウムのアルカリ溶液(pH11)中に分散させて調製した。
その結果、平坦度は、先の酸化膜のない予備実験1と同等ないしそれ以上であった。また、予備実験2のようにウェーハが振動することもなかった。
【0024】
(比較例1)
第二の研磨処理を除いた以外は、研磨に使用したウェーハをはじめとして、実施例1と同様にしてヒュームドシリカによる研磨を行った。
研磨の結果は、研磨初期にはウェーハは振動もなく研磨されていたが、研磨段階が酸化膜からシリコンに移ると研磨代が急に増し、研磨面に傷が残るものがあった。
【0025】
(比較例2)
第一の研磨処理を除いた以外は、研磨に使用したウェーハをはじめとして、実施例1と同様にしてコロイダルシリカによる研磨を行った。
結果は、研磨初期からウェーハがキャリア内で振動し、研磨装置によけいな負荷がかかっていることが観察された。さらに、ウェーハによっては平坦度の悪いものが観察された。
【0026】
なお、ウェーハの平坦度(TTV)は、TTV測定装置;ADEマイクロスキャン8300(ADE社製、製品名)により測定し、表面粗さは、光学干渉式粗さ計;WYKOTOPO−3D(WYKO社製、製品名)を用いて測定(平均二乗粗さ)した。
【0027】
上記実施例において、第一の研磨処理から第二の研磨処理への切り替えは時間で行ったが、定盤駆動モータやキャリア駆動モータに加わる負荷の変化を検知して切り替えるようにしてもよい。また、両面研磨に限定されず、片面研磨、ワックスフリー研磨の場合であっても本発明のウェーハ研磨方法を用いることができる。
【0028】
【発明の効果】
本発明のウェーハの研磨方法は、研磨の初期段階、つまり第一の研磨処理で表面の酸化膜を一挙に除去し、その後、面粗さを改善するため、第二の研磨剤を用いて第二の研磨処理を行うものである。
このように、研磨装置に負荷のかかる研磨初期に、第一の研磨処理工程でウェーハの表面から酸化膜を除去しておくことにより、第二の研磨処理工程では研磨装置にかかる負荷は極めて軽減され、高い平坦度と所望の面粗さが保証される。また、振動に起因するウェーハの破損トラブルも防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ウェーハ両面研磨装置の主要部を示す概略断面図である。
【図2】図1から上定盤を取り外した状態での部分平面図である。
【符号の説明】
1 ・・・・・・・・キャリア
2 ・・・・・・・・保持孔
3 ・・・・・・・・上定盤
4 ・・・・・・・・下定盤
5 ・・・・・・・・研磨布
6 ・・・・・・・・研磨布
7 ・・・・・・・・注入孔
8 ・・・・・・・・歯車
9 ・・・・・・・・太陽ギア
10 ・・・・・・・・インターナルギア
W ・・・・・・・・ウェーハ

Claims (2)

  1. シリコンウェーハを化学機械的に研磨する研磨工程において、アルカリ溶液中にヒュームドシリカを分散させた第一の研磨剤を用いてシリコンウェーハ表面の酸化膜を除去する第一の研磨処理後、速やかにアルカリ溶液中にコロイダルシリカを分散させた第二の研磨剤を用いて第二の研磨処理を行い、面粗さを改善することを特徴とするウェーハの研磨方法。
  2. シリコンウェーハを化学機械的に研磨する研磨工程において、アルカリ溶液中に酸化セリウム、酸化ジルコニウム及び酸化クロムから選択した少なくとも1種を分散させた第一の研磨剤を用いてシリコンウェーハ表面の酸化膜を除去する第一の研磨処理後、速やかにアルカリ溶液中にコロイダルシリカを分散させた第二の研磨剤を用いて第二の研磨処理を行い、面粗さを改善することを特徴とするウェーハの研磨方法。
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