JP3163508B2 - 精密寸法仕上げのされた合成樹脂部材並びにその製造方法 - Google Patents

精密寸法仕上げのされた合成樹脂部材並びにその製造方法

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  • Processing And Handling Of Plastics And Other Materials For Molding In General (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の目的】
【産業上の利用分野】本発明は、例えばいわゆるエンジ
ニアリングプラスチックと称される合成樹脂によって機
械部品を構成した場合における寸法精度を得る手法に関
するものである。
【0002】
【発明の背景】一般に金属素材によって構成されていた
機械装置や機械部品をいわゆるエンジニアリングプラス
チックと称される機械適性の優れた材料で構成すること
が行われている。しかしながら例えば部品等の表面精度
が極めて厳しく要求されているものにあっては、その要
求に応じきれず、従来は実施が困難なものと認識され、
積極的な開発への取り組みがされていなかった。
【0003】その一例として例えばスクロール流体機械
が存在するものであって、このものの場合には流体を作
動させるための主要部材である一組の渦巻状ラップが重
要な構成となっており、相互に接するラップ同士の接点
におけるシール状況がその性能の良否を決定している。
このため従来のスクロール流体機械は、金属を主体と
し、鍛造成形後、ラップの表面研磨が入念に行われて製
造されていた。しかしながらこの表面研磨作業は、ラッ
プ自体が複雑な渦巻状であるため、数値制御によるいわ
ゆるNCラッピングマシンによるとしても極めて手間の
かかる作業を必要としていた。
【0004】ところで先に述べたようにエンジニアリン
グプラスチックはコスト面、メンテナンス面で相応の優
位性があり、前述のようなスクロール流体機械について
もエンジニアリングプラスチックを用いることにより、
多くの改善点がもたらされるであろうことは予想できる
ものの、すでに述べたようにスクロール流体機械のラッ
プの仕上げは極めて高い精度が要求されている一方、エ
ンジニアリングプラスチックにあっては、成形時に材料
のヒケやヤセという現象が不可避で、要求される精度に
仕上げられないことが隘路となって実現が阻まれてい
た。
【0005】
【開発を試みた技術的事項】本発明者はこのような特に
精密な寸法仕上げの要求される機械部品にも、いわゆる
エンジニアリングプラスチックの利用の途をひらくべ
く、特にその精密寸法仕上げの手法について開発を試み
たものである。
【0006】
【発明の構成】
【目的達成の手段】即ち本出願に係る第一の発明たる精
密寸法仕上げのされた合成樹脂部材は、合成樹脂材料か
ら成る部材の芯部にくり抜き部が設けられるとともに、
このくり抜き部には寸法補正用充填材が設けられている
ことを特徴として成るものである。
【0007】また本出願に係る第二の発明たる精密寸法
仕上げのされた合成樹脂部材は、前記要件に加え、前記
合成樹脂材料は、エンジニアリングプラスチックである
ことを特徴として成るものである。
【0008】更にまた本出願に係る第三の発明たる精密
寸法仕上げのされた合成樹脂部材の製造方法は、合成樹
脂材料から成る部材の芯部にくり抜き部を形成し、次い
でこのくり抜き部に寸法補正用充填材を充填し、この寸
法補正充填材が一定の内圧を有することにより部材外形
を撓ませ、要求される寸法を得るようにしたことを特徴
として成るものである。
【0009】更にまた本出願に係る第四の発明たる精密
寸法仕上げのされた合成樹脂部材の製造方法は、前記要
件に加え、前記合成樹脂材料は、エンジニアリングプラ
スチックであることを特徴として成るものである。これ
ら発明により前記目的を達成しようとするものである。
【0010】
【発明の作用】本発明は部材の芯部にくり抜き部を設け
るとともに、そこに寸法補正用充填材を充填することに
より樹脂成形時に生じがちなヤセ、歪み等がそれによっ
て補正され、精度の高い仕上げがなされる。
【0011】
【実施例】以下本発明を図示の実施例に基づいて具体的
に説明するが、その説明にあたっては本発明をスクロー
ル流体機械に適用した場合を例示して説明する。符号1
は本発明を適用するスクロール流体機械であって、この
ものについて概説すると、まず外筐部材としてほぼ円筒
状のハウジング2を具える。このハウジング2内には主
要部材である固定スクロール10Aと旋回スクロール1
0Bとが設けられるものであって、一例としてハウジン
グ2のエンドプレートを直接利用して固定スクロール1
0Aを形成する。これら固定スクロール10Aと旋回ス
クロール10Bとが互いに噛み合って流体の処理空間を
幾つか形成するものであり、これらの空間を作動室3と
する。
【0012】そしてハウジング2の一部を成す固定スク
ロール10Aには吸入口4と吐出口5とが設けられる。
一方吸入口4及び吐出口5とが設けられた反対側からは
偏心駆動軸6がハウジング2の中心に設けられ、その先
端に旋回スクロール10Bを取り付け、その旋回運動を
行わせる。更に偏心駆動軸6の他端側はハウジング2か
ら外部側に突出し、ここに適宜直接駆動モータあるいは
図示の実施例のようにプーリ7を設けて回転が伝達され
るように構成される。尚、符号8は偏心駆動軸6によっ
て旋回する旋回スクロール10Bが回転(自転)しない
ように設けられた回転止めである。
【0013】尚これらの基本構成については従来のスク
ロール流体機械を踏襲するものであり、すでに公知のあ
るいは以後改良し得るスクロール流体機械の適宜の構成
が本発明に適用し得ることはいうまでもない。そして流
体を直接作動させるための固定スクロール10Aと旋回
スクロール10Bとはそれぞれほぼ相似した形状を有す
るものであり、固定スクロール10Aは鏡板11Aに対
し渦巻状のラップ12Aを具えるとともに、旋回スクロ
ール10Bの鏡板11Bと渦巻状のラップ12Bを具え
る。そして互いに相接する部材である鏡板11A、11
B及びラップ12A、12Bにおいて本発明の特徴的構
成である精密寸法仕上構造を適用するのである。
【0014】尚以下の説明において、固定スクロール1
0Aと旋回スクロール10Bとを区別して表示する必要
のない場合にはスクロール10と、また同様に鏡板11
A、11B、及びラップ12A、12Bについても鏡板
11、ラップ12として表示する。
【0015】以下寸法仕上げのための手法について説明
する。まず合成樹脂材料としては、ポリフェニレンサル
ファイド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリイミ
ド、ポリトリアジン、ポリアセタール等を主成分とした
いわゆるエンジニアリングプラスチックを用いる。そし
てこの種の合成樹脂を冷却後、型抜きすると当然ながら
材料のヤセ、あるいは歪み等によってその寸法精度が異
なってくるが、図4(b)に示すようにこれをあらかじ
め見込んでラップ12に形成したくり抜き部15に対し
寸法補正用充填材18を充填し、ラップ12の厚み寸法
が要求される寸法仕様に設定されるように構成する。こ
の寸法補正用充填材18は単なる圧縮空気であってもよ
いし、流体更には溶融後硬化するような樹脂あるいは後
述するようなゲル状物質等であってもよい。
【0016】このものを構成するには図4(a)に示す
ようにラップ12に対し鏡板11側から溝状のくり抜き
部15を形成した後、そこに蓋をあてがうようにしてそ
れと一体となった渦巻状の蓋状のバルブユニット60を
例えば圧入状態に一体化するように構成する。そしてそ
の一部に注入路61を開口させ、その途中にバルブ62
を設けるのである。このバルブ62はバルブスプリング
63によって注入路61を閉塞するものであり、外部か
らの注入を許容し、且つ内部からの戻りを防止するいわ
ゆる逆止タイプのものである。そしてこのようなバルブ
ユニットにおける注入路61の外側に注入ノズル65を
あてがい、適宜寸法補正用充填材18たる気体あるいは
液体更にはゲル状物質等の吸振材あるいは溶融状態から
冷却後固化する熱可塑性樹脂であってもよい。このよう
な寸法補正用充填材18が充填されたラップ12におけ
るくり抜き部15は内圧が与えられ、これによって図4
(b)に示すような成形後歪んでいたラップ12を正規
の寸法設定とする。
【0017】ここですでに述べた寸法補正充填材18と
してゲル状物質は、一例としてシリコーンゲルを用いる
ことができる。このようなシリコーンゲルについて詳し
く説明すると、このものは次式[1]で示されるジオル
ガノポリシロキサン(以下A成分という): RR1 2SiO−(R2 2SiO)n SiR1 2R・・・[1] [ただし、Rはアルケニル基であり、R1 は脂肪族不飽
和結合を有しない一価の炭化水素基であり、R2 は一価
の脂肪族炭化水素基(R2 のうち少なくとも50モル%
はメチル基であり、アルケニル基を有する場合にはその
含有率は10モル%以下である)であり、nはこの成分
の25℃における粘度が100〜100000cSt にな
るような数である]と、25℃における粘度5000cS
t 以下であり、1分子中に少なくとも2個のSi原子に直
接結合した水素原子を有するシリコーンゲルの原液たる
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B成分)とか
らなり、且つこのB成分中のSi原子に直接結合してい
る水素原子の合計量に対するA成分中に含まれるアルケ
ニル基の合計量の比(モル比)が0.1〜0.2になる
ように調整された混合物を硬化させることにより得られ
る付加反応型シリコーンコポリマーであって、JIS K(K-
2207-1980 50g 荷重)で測定した針入度が5〜250の
硬化物である。
【0018】このシリコーンゲルについてさらに詳しく
説明すると、上記A成分は直鎖状の分子構造を有し、分
子の両末端にあるアルケニル基RがB成分中のSi原子に
直接結合した水素原子と付加して架橋構造を形成するこ
とができる化合物である。この分子末端に存在するアル
ケニル基は、低級アルケニル基であることが好ましく、
反応性を考慮するとビニル基が特に好ましい。
【0019】また分子末端に存在するR1 は、脂肪族不
飽和結合を有しない一価の炭化水素基であり、このよう
な基の具体例としてはメチル基、プロピル基及びヘキシ
ル基等のようなアルキル基、フェニル基並びにフロロア
ルキル基を挙げることができる。
【0020】上記[1]式においてR2 は一価の脂肪族
炭化水素であり、このような基の具体的な例としては、
メチル基、プロピル基及びヘキシル基等のようなアルキ
ル基並びにビニル基のような低級アルケニル基を挙げる
ことができる。ただしR2 のうち少なくとも50モル%
はメチル基であり、R2 がアルケニル基である場合に
は、アルケニル基は10モル%以下の量であることが好
ましい。アルケニル基の量が10モル%を越えると架橋
密度が高くなり過ぎて高粘度になりやすい。またnは、
このA成分の25℃における粘度が通常は100〜10
0000cSt 、好ましくは200〜20000cSt の範
囲内になるように設定される。
【0021】上記のB成分は、A成分の架橋剤でありSi
原子に直接結合した水素原子がA成分中のアルケニル基
と付加してA成分を硬化させる。B成分は上記のような
作用を有していればよく、B成分としては直鎖状、分岐
した鎖状、環状あるいは網目状などの種々の分子構造の
ものが使用できる。
【0022】また、B成分中のSi原子には水素原子の
他、有機基が結合しており、この有機基は通常メチル基
のような低級アルキル基である。さらに、B成分の25
℃における粘度は通常は5000cSt 以下、好ましくは
500cSt 以下である。このようなB成分の例として
は、分子両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された
オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ジオルガノシ
ロキサンとオルガノハイドロジェンシロキサンとの共重
合体、テトラオルガノテトラハイドロジェンシクロテト
ラシロキサン、HR1 2SiO 1/2単位とSiO 4/2単位とか
らなる共重合シロキサン、及びHR1 2SiO 1/2単位とR
1 3SiO 1/2単位とSiO 4/2単位とからなる共重合体ポリ
シロキサンを挙げることができる。ただし上記式におい
てはR1 は前記と同じ意味である。
【0023】そして上記のB成分中のSiに直接結合して
いる水素原子の合計モル量に対するA成分中のアルケニ
ル基の合計モル量との比率が通常は0.1〜2.0、好
ましくは0.1〜1.0の範囲内になるようにA成分と
B成分とを混合して硬化させることにより製造される。
【0024】この場合の硬化反応は、通常は触媒を用い
て行われる。ここで使用される触媒としては、白金系触
媒が好適であり、この例としては微粉砕元素状白金、塩
化白金酸、酸化白金、白金とオレフィンとの錯塩、白金
アルコラート及び塩化白金酸とビニルシロキ酸との錯塩
を挙げることができる。このような錯塩はA成分とB成
分との合計重量に対して通常は0.1ppm ( 白金換算
量、以下同様 )以上、好ましくは0.5ppm 以上の量で
使用される。このような触媒の量の上限については特に
制限はないが、例えば触媒が液状である場合、あるいは
溶液として使用することができる場合には200ppm 以
下の量で十分である。
【0025】上記のようなA成分、B成分及び触媒を混
合し、室温に放置するか、あるいは加熱することにより
硬化して本発明で使用されるシリコーンゲルが生成す
る。このようにして得られたシリコーンゲルは、JIS K
(K-2207-1980 50g 荷重)で測定した針入度が通常5〜
250を有する。尚このようなシリコーンゲルの硬度
は、上記A成分とB成分とにより形成された架橋構造に
よって変動する。
【0026】またシリコーンゲルの硬化前の粘度及び硬
化後の針入度は両末端がメチル基であるシリコーンオイ
ルを、得られるシリコーンゲルに対して5〜75重量%
の範囲内の量であらかじめ添加することにより調整する
ことができる。このようにシリコーンゲルは上記のよう
にして調整することもできるし、また市販されているも
のを使用することもできる。
【0027】本発明で使用することができる市販品の例
としては、CF5027、TOUGH−3、TOUGH
−4、TOUGH−5、TOUGH−6、TOUGH−
7、(トーレ・ダウコーニングシリコーン社製)やX3
2−902/cat 1300(信越化学工業株式会社
製)、F250−121(日本ユニカ株式会社製)等を
挙げることができる。
【0028】尚、上記A成分、B成分及び触媒の他に、
チクソトロピー性付与剤、顔料、硬化遅延剤、難燃剤、
充填剤等をシリコーンゲルの特性を損なわない範囲内で
配合することもでき、また微小中空球体のフィラーを混
入してなるシリコーンゲルを用いてもよく、このような
材料としては日本フィライト株式会社製造のフィライト
(登録商標)や同社販売のエクスパンセル(登録商標)
等が例示できる。
【0029】尚、本発明の応用事例は当然ながら前述の
スクロール流体機械のみならず、精密寸法仕上げが要求
されるあらゆる樹脂製の部材、部品に適用できる。また
くり抜き部の形状等は部材形状等に応じ、また特に寸法
補正の必要な部位等に応じ適宜の形状、位置に設けるこ
とが可能である。
【0030】
【発明の効果】本発明は以上述べたように合成樹脂材料
において不可避的に生じてしまう成形後のヤセ、歪み等
を、内部に寸法補正用充填材を充填することによって補
正したから、従来、寸法精度の出し難かった合成樹脂部
材であっても結果的に高い寸法精度が保たれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の合成樹脂部材を適用したスクロール流
体機械を示す分解斜視図である。
【図2】同上骨格的横断面図である。
【図3】同上縦断側面図である。
【図4】同上ラップ内部のくり抜き部に対し寸法補正用
充填材を充填するようにした本発明の合成樹脂部材を示
す縦断面図並びに、充填後寸法補正された状態を示す骨
格的縦断面図である。
【符号の説明】
1 スクロール流体機械 2 ハウジング 3 作動室 4 吸入口 5 吐出口 6 偏心駆動軸 7 プーリ 8 回転止め 10 スクロール 10A 固定スクロール 10B 旋回スクロール 11 鏡板 11A 鏡板 11B 鏡板 12 ラップ 12A ラップ 12B ラップ 15 くり抜き部 18 寸法補正用充填材 60 バルブユニット 61 注入路 62 バルブ 63 バルブスプリング 65 注入ノズル

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 合成樹脂材料から成る部材の芯部にくり
    抜き部が設けられるとともに、このくり抜き部には寸法
    補正用充填材が設けられていることを特徴とする精密寸
    法仕上げのされた合成樹脂部材。
  2. 【請求項2】 前記合成樹脂材料は、エンジニアリング
    プラスチックであることを特徴として成る請求項1記載
    の精密寸法仕上げのされた合成樹脂部材。
  3. 【請求項3】 合成樹脂材料から成る部材の芯部にくり
    抜き部を形成し、次いでこのくり抜き部に寸法補正用充
    填材を充填し、この寸法補正充填材が一定の内圧を有す
    ることにより部材外形を撓ませ、要求される寸法を得る
    ようにしたことを特徴とする精密寸法仕上げのされた合
    成樹脂部材の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記合成樹脂材料は、エンジニアリング
    プラスチックであることを特徴とする請求項3記載の精
    密寸法仕上げのされた合成樹脂部材の製造方法。
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