JP3084998B2 - 船舶における居住区の建造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は船舶における居住区の建
造方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般商船の如き船舶において、居住区を
建造する場合、従来は、船体上甲板上に、鋼壁とその防
撓材により１段目の甲板室を殻構造として構築し、以後
同様な手順で、１段目の甲板室上に２段目、３段目と殻
構造の甲板室を構築して、全体的に５乃至７段（階）の
甲板室構造体を居住区殻構造として構築し、次に、各甲
板室に必要な鉄艤品を取り付け、しかる後、多数の板材
等の部材を各甲板室に持ち込み、大工技能者や他の多く
の職種の技能者が入り混じって作業手順に従い作業す
る、いわゆる木艤作業により内装工事を行って各キャビ
ンを形成し、居住区を完成させるようにしてある。

【０００３】上記木艤作業は、概略的には、下部ブロッ
クや上部ブロックの搭載、殻取り付け、溶接、歪取り、
塗装、舗床、居室防熱、仕切り及び間仕切り、扉取り付
け、壁内張り根太設置、壁内張り、天井根太設置、家具
取り付け、床敷物、船室用具、装飾、椅子の配置、船室
仕上げの如き順序で船内にて熟練者によって行うもので
ある。

【０００４】しかしながら、上記の木艤作業によると、
作業ステップが非常に多いこと、多くの職種が重複して
作業に入っていること、多数の大工技能者等の熟練の技
能者が要求されるが、かかる熟練技能者が不足して来て
いて木艤作業のための人材確保が困難になっているこ
と、船内での作業が多く作業環境が悪いこと、手作業に
よる部材の運搬が多く、作業能率が悪いこと、等の問題
がある。

【０００５】そのため、上記木艤作業に代り、図８にそ
の一例の概略を示す如く、各甲板室ａ内に区画形成する
キャビンをユニット化するように地上の工場にて組み立
てたユニットキャビンｂを、甲板室外壁ｃに開口させた
孔ｄを通して各階の甲板ｅ上に搭載して据え付けること
により居住区ｆを完成させるようにするユニットキャビ
ン工法が最近提案されている。なお、ｇは船体を示す。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところが、上記ユニッ
トキャビン工法を採用して居住区を建造する場合、作業
環境の改善と大幅な工数削減に寄与することができる
が、ユニットキャビンｂが、壁と天井で構成された床の
ない五面体であることから、据え付け後に外壁や甲板等
の殻構造に対する取合工事が船内作業として残存する課
題がある。又、上記ユニットキャビンｂは甲板室ａ内に
引き込む型式であることから、引込ステージが必要とな
り、この引込ステージの設置作業と撤去作業を各階毎に
行わなければならない。

【０００７】そこで、本発明は、上記最近提案されてい
るユニットキャビン工法を更に一歩進めて、引込ステー
ジ等を用いることなくユニットキャビンを搭載できるよ
うにし、しかも殻構造に対する船内での取合工事をなく
すことができるような船舶における居住区の建造方法を
提供しようとするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するために、四隅に立てた柱材の上端間と下端間を梁
材で連結してなる直方体形状の骨組枠の側面部に、殻部
材を取り付けると共に、上下面部の少なくとも一方に、
甲板部材を取り付け、且つ上記骨組枠の内側に、天井パ
ネル、床板、壁パネル、扉、窓の如き内装艤装を施工
し、更に、上記各梁材に上下方向のボルト孔と水平方向
のボルト孔を設けてなる殻艤一体構造のユニットキャビ
ンを、建造すべき居住区の各階、各位置のキャビン区画
にそれぞれ対応させて、予め地上にて製作しておき、該
各ユニットキャビンを船体上の所定位置に搭載し、水平
方向に隣接するユニットキャビン同士の結合を、水平方
向に接する各骨組枠の梁材同士を水平方向のボルト孔に
ボルトを通して結合することと、柱材同士を溶接結合す
ることにより行い、又、上下方向に隣接するユニットキ
ャビン同士の結合を、上下方向に接する各骨組枠の梁材
同士を上下方向のボルト孔にボルトを通して結合するこ
とと、該梁材の重合部を溶接結合することにより行って
居住区を建造することを特徴とする船舶における居住区
の建造方法とする。

【０００９】

【作用】ユニットキャビンが殻艤一体構造であることか
ら、殻構造に対する取合工事が不要となる。又、船体上
の所定位置に搭載されたユニットキャビンの結合を、水
平方向に隣接するユニットキャビン同士では、各骨組枠
の梁材同士を水平方向のボルト孔にボルトを通して結合
することと、柱材同士を溶接結合することにより行い、
又、上下方向に隣接するユニットキャビン同士では、各
骨組枠の梁材同士を上下方向のボルト孔にボルトを通し
て結合することと、該梁材同士を溶接結合することによ
り行うことによって居住区が完成するので、ユニットキ
ャビンを水平方向に引き込むなどの作業がなく、合理的
に建造作業を進めることができる。

【００１０】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
する。

【００１１】図１の（イ）（ロ）は本発明の建造方法の
概要を示すもので、地上の工場において、予め、建造す
べき居住区１の各階、各位置のキャビン区画にそれぞれ
対応させて、各側面部に取り付ける側壁のうち、所要の
側面部に、外壁となる殻部材２を取り付けると共に、天
井部に、甲板となる甲板部材３を取り付け且つ内側に内
装艤装を施工して殻艤一体構造としてなる直方体形状の
ユニットキャビン４を製作しておき、該各ユニットキャ
ビン４を、船体５の上甲板６上に予め構築しておいた甲
板室７上に搭載し、上下及び水平方向で隣接するユニッ
トキャビン４同士を結合することにより、上記各殻部材
２によって居住区外殻（外壁）８が形成されるようにす
ると共に上記各甲板部材３によって各階の居住区甲板９
が形成されるようにして、居住区１を完成させるように
する。

【００１２】上記ユニットキャビン４は、図２に示す如
く、角パイプ製の柱材１０を四隅に立て、各柱材１０の
各上端間及び各下端間を溝型鋼製の梁材１１により連結
し、上下の柱材１１間の所要位置に補強材１２を取り付
けてなる直方体形状の骨組枠１３を有し、且つ該骨組枠
１３の所要の外側面部に、殻部材２を取り付け、且つ上
記骨組枠１３の天井部に、甲板部材３を取り付け、更
に、内側に内装１４（図３参照）を施工するようにして
ある。なお、図２においては、図１の（ロ）に示す居住
区１のコーナー部のキャビン区画に対応させるために、
骨組枠１３の直角に位置する２つの外側面部に殻部材２
を取り付けるようにした場合を示している。したがっ
て、コーナー部以外に用いる場合には殻部材２を１つの
外側面部に取り付けるだけでよい。

【００１３】ユニットキャビン４の内装１４の一例は図
３に示す如くであり、天井パネル１５、床板１６、壁パ
ネル１７、扉１８、窓１９や、その他図示してないが必
要な配管類等からなる。なお、２０は殻部材２（及び甲
板部材）３の防撓材（アングル材）、２１は通路側の仕
切りとなる内壁部材を示す。

【００１４】上記構成としたユニットキャビン４の結合
方式は、内側をボルトアップ結合とし、外側を溶接結合
とするようにしてある。すなわち、図４に示す如く、骨
組枠１３を構成する梁材１１の端部に上下方向のボルト
孔２４を設けておくと共に、梁材１１の端部及び中間部
に水平方向のボルト孔２５を設けておき、上下に隣接す
るユニットキャビン４の骨組枠１３同士を、ボルト孔２
４を用いた内側からのボルトアップ結合により取り合わ
せ、水平方向で隣接するユニットキャビン４の骨組枠１
３同士を、ボルト孔２５を用いた内側からのボルトアッ
プ結合により取り合わせるようにしてある。又、図５及
び図６に示す如く、隣接するユニットキャビン４の骨組
枠１３同士の境界部を外側から溶接（溶接線２２ａ，２
２ｂ）するようにし、更に、各殻部材２間にパテ２３を
充填して仕上げるようにしてある。なお、図７に示す如
く、殻部材２を予め骨組枠１３の柱材１０から張り出さ
せておいて、その張り出し部を隣りの骨組枠１３の柱材
１０に溶接するようにしてもよい。

【００１５】次に、上記ユニットキャビン４を用いた居
住区の建造方法を具体的に説明する。

【００１６】先ず、図１の（イ）に示す如く、ユニット
キャビン４をクレーン２６により吊って、船体５の上甲
板６上に構築された甲板室７上の所定位置に、１段目と
して水平方向に並べるように搭載して行く。なお、上記
甲板室７は居住区１の１階部分となるもので、従来工法
によって構築しておくものである。又、上記ユニットキ
ャビン４は、搬入時に、予め水平方向に複数個結合して
おいて一括して搬送させるようにしてもよい。この場
合、水平方向で隣接する各ユニットキャビン４同士は、
図４に示す如く、骨組枠１３の梁材１１同士を突き合わ
せて、各梁材１１に設けたボルト孔２５にボルトを通し
て内側から結合するようにすると共に、外側では、たと
えば、図５及び図６に示す如く、水平方向で隣接するユ
ニットキャビン４の骨組枠１３の柱材１０同士を突き合
わせて、接合部を溶接線２２ａとして上下方向に溶接結
合する。これにより、居住区１の２階部分が建造された
ことになる。この際、各ユニットキャビン４が水平方向
に結合されることによって、骨組枠１３の上面部に取り
付けておいた甲板部材３が水平方向に並ぶので、各甲板
部材３が１段目である２階部分と２段目となる３階部分
を仕切る居住区甲板９として配置されることになる。

【００１７】続いて、１段目の各ユニットキャビン４上
に、１段目と同様にして２段目のユニットキャビン４を
それぞれ搭載する。この２段目の各ユニットキャビン４
の水平方向の結合は１段目の場合と同様にして行うよう
にし、１段目と２段目のユニットキャビン４の上下方向
の結合は、骨組枠１３の梁材１１を上下方向に重ねた状
態で、図４に示す如く骨組枠１３を構成する梁材１１に
設けた上下方向のボルト孔２４にボルトを通すことによ
り内側からボルトアップ結合すると共に、図５に示す如
く、上下で接する骨組枠１３の梁材１１の重合部を溶接
線２２ｂとして外側から溶接結合するようにする。これ
により居住区１の３階部分が建造されたことになる。

【００１８】以後、３段目、４段目と同様な手順で居住
区１の各階部分を建造して行くことにより、図１の
（ロ）に示す如く、所要階数の居住区１を完成させる。
居住区１の完成時、各ユニットキャビン４の殻部材２は
上下、左右方向に一体化された状態となり、居住区外殻
８となる。なお、図１の（ロ）において、航海船橋２７
から上の部分は従来工法によって構築されるものであ
る。

【００１９】上記において、ユニットキャビン４は殻艤
一体構造として組み立ててあるため、すなわち、必要な
内装１４の他に、居住区外殻８の一部となる殻部材２と
居住区甲板９の一部となる甲板部材３とを一体に有する
構造としてあるため、船体５上に搭載した後に殻構造に
対する船内側からの取合工事を不要とすることができ、
しかもユニットキャビン４は積み重ねる型式であること
から、引込ステージが不要であり、引込ステージの設
置、撤去作業を行う必要がない。更に、上記ユニットキ
ャビン４は、殻部材２が取り付けてある面部の縁同士を
溶接するが、溶接線２２ａ，２２ｂは強度的に強い骨組
枠１３の部分であることから、溶接歪が発生する問題も
なく、又、この溶接線２２ａ，２２ｂは骨組枠１３の内
側に露出しないので、塗装上も有利になる。すなわち、
図８に示すユニットキャビン工法では、甲板室ａを予め
多段に構築しておく必要があるが、この場合、殻部材同
士の溶接となって溶接歪が発生するため、歪取り作業が
必要となり、又、溶接後に溶接部の内外面側を塗装する
ことになるが、本発明では、殻部材同士を溶接する必要
がないので歪取り作業が不要であり、溶接後の塗装も外
面側だけで済ますことができる利点がある。

【００２０】なお、上記実施例では、骨組枠１３の天井
部としての上面部に甲板部材３を取り付けた構成のユニ
ットキャビン４を示したが、骨組枠１３の下面部あるい
は上下面部に甲板部材３を取り付けた構成としてもよい
こと、又、図１の（ロ）においては、ユニットキャビン
４を左右に結合した状態で搬入させる場合を示している
が、上下に結合した状態で搬入させるようにしてもよい
こと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において
種々変更を加え得ることは勿論である。

【００２１】

【発明の効果】以上述べた如く、本発明の船舶における
居住区の建造方法によれば、 四隅に立てた柱材の上端
間と下端間を梁材で連結してなる直方体形状の骨組枠の
側面部に、殻部材を取り付けると共に、上下面部の少な
くとも一方に、甲板部材を取り付け、且つ上記骨組枠の
内側に、天井パネル、床板、壁パネル、扉、窓の如き内
装艤装を施工し、更に、上記各梁材に上下方向のボルト
孔と水平方向のボルト孔を設けてなる殻艤一体構造のユ
ニットキャビンを、建造すべき居住区の各階、各位置の
キャビン区画にそれぞれ対応させて、予め地上にて製作
しておき、該各ユニットキャビンを船体上の所定位置に
搭載し、水平方向に隣接するユニットキャビン同士の結
合を、水平方向に接する各骨組枠の梁材同士を水平方向
のボルト孔にボルトを通して結合することと、柱材同士
を溶接結合することにより行い、又、上下方向に隣接す
るユニットキャビン同士の結合を、上下方向に接する各
骨組枠の梁材同士を上下方向のボルト孔にボルトを通し
て結合することと、該梁材の重合部を溶接結合すること
により行って居住区を建造するようにしてあるので、殻
艤一体構造のユニットキャビンを船体上の所定位置に搭
載した後に、各ユニットキャビン同士の結合を、水平方
向に隣接するユニットキャビン同士では、各骨組枠の梁
材同士を水平方向のボルト孔にボルトを通して結合する
ことと、柱材同士を溶接結合することにより行い、又、
上下方向に隣接するユニットキャビン同士では、各骨組
枠の梁材同士を上下方向のボルト孔にボルトを通して結
合することと、梁材同士を溶接結合することにより行う
ことによって居住区を完成することができ、殻構造の甲
板室構造体内に殻なしのユニットキャビンを引き込む工
法で必要であった船内での殻構造への取合工事を不要と
することができると共に、引込ステージの設置及び撤去
作業をなくすことができ、作業の合理化を図ることがで
きて建造工期の短縮化を図ることができる、という優れ
た効果を発揮する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の船舶における居住区の建造方法の一実
施例を示すもので、（イ）は建造途中の状態を、又、
（ロ）は完成状態をそれぞれ示す概要図である。

【図２】本発明で用いるユニットキャビンの分解斜視図
である。

【図３】ユニットキャビンの内装の一例を示す概要図で
ある。

【図４】ユニットキャビンのボルトアップ結合部を示す
斜視図である。

【図５】ユニットキャビンの溶接結合部の一例を示す斜
視図である。

【図６】図５のVI−VI矢視図である。

【図７】ユニットキャビンの溶接結合部の他の例を示す
断面図である。

【図８】最近提案されているユニットキャビン工法によ
り居住区を建造している状態の概略図である。

【符号の説明】

１ 居住区 ２ 殻部材 ３ 甲板部材 ４ ユニットキャビン ５ 船体 １４ 内装

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 出田 晃裕 兵庫県相生市相生5292番地 石川島播磨 重工業株式会社 相生第一工場内 (72)発明者 島 和男 兵庫県相生市相生5292番地 株式会社ア イ・エイチ・アイ・アムテック内 (56)参考文献 特開 昭63−13884（ＪＰ，Ａ) 特開 昭60−64090（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−343942（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B63B 9/06 B63B 29/02 E04B 1/348

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 四隅に立てた柱材の上端間と下端間を梁
   材で連結してなる直方体形状の骨組枠の側面部に、殻部
   材を取り付けると共に、上下面部の少なくとも一方に、
   甲板部材を取り付け、且つ上記骨組枠の内側に、天井パ
   ネル、床板、壁パネル、扉、窓の如き内装艤装を施工
   し、更に、上記各梁材に上下方向のボルト孔と水平方向
   のボルト孔を設けてなる殻艤一体構造のユニットキャビ
   ンを、建造すべき居住区の各階、各位置のキャビン区画
   にそれぞれ対応させて、予め地上にて製作しておき、該
   各ユニットキャビンを船体上の所定位置に搭載し、水平
   方向に隣接するユニットキャビン同士の結合を、水平方
   向に接する各骨組枠の梁材同士を水平方向のボルト孔に
   ボルトを通して結合することと、柱材同士を溶接結合す
   ることにより行い、又、上下方向に隣接するユニットキ
   ャビン同士の結合を、上下方向に接する各骨組枠の梁材
   同士を上下方向のボルト孔にボルトを通して結合するこ
   とと、該梁材の重合部を溶接結合することにより行って
   居住区を建造することを特徴とする船舶における居住区
   の建造方法。