JP2902032B2 - 球状多孔性炭素粒子及びその製造方法 - Google Patents

球状多孔性炭素粒子及びその製造方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、球状多孔性炭素粒子に関する。更に詳しく
は、気体や有機物質の吸着剤、機能性物質の固定化用担
体及び液体クロマトグラフィー用充填剤等として有用な
球状多孔性炭素粒子に関する。
〔従来の技術及び発明が解決しようとする課題〕
従来より多孔性炭素粒子は触媒用担体、吸着剤などの
用途に用いられている。又、最近では医療用として人工
肝臓や人工腎臓などの人工臓器として、更には多孔性炭
素粒子の下記の特性によって液体クロマトグラフィー用
充填剤として注目されこれらに用いることが検討され始
めている。
以下に多孔性炭素粒子の一般的特性を示す。
(1)機械的強度が大きい。
(2)比表面積は、50〜500m2/gで相応の液体クロマト
グラフィーにおける試料の保持時間をもつ。
(3)5nm以上の微細孔をもち、物質移動しやすい。
(4)相互作用部位が粒子表面に均一に分布する。
(5)広いpH領域の緩衝液が使用でき、化学的安定性が
高い。
(6)理論的に無極性不活性である。
(7)耐熱性がよい。
(8)形態安定性がある。
以上の特長は、液体クロマトグラフィー用充填剤等の
上記用途に要請される条件をほとんど満たしている。本
発明はこの液体クロマトグラフィー用充填剤等に用いる
ことのできる炭素粒子を提供するものである。
多孔性炭素粒子の製造方法は、一般的には、カーボン
ブラックと樹脂バインダーとを押圧成形した後炭化焼成
し焼成後得られた成形体を破砕して所望の粒径の粒子と
する。しかしながら、成形体を破砕することにより得ら
れる粒子は、破砕品のため球状とは言えず、液体クロマ
トグラフィー用充填剤としては不十分であった。この欠
点を解消すべくカーボンブラックを予め球状化し、バイ
ンダーを含浸させ焼成する方法あるいは炭素源として、
ポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フェノール
樹脂、ポリ塩化ビニール等の合成重合物の球状粒子を用
い加熱処理し炭素化する方法が提案されている(特開昭
53-48989号公報、特開昭54-41296号公報)。
しかし、いずれの方法においても焼成加熱処理する際
バインダーあるいは合成重合物の融解による粒子間の固
着、壊化、凝集化が起こり、粒状粒子を得ることは困難
であった。
加熱処理における融解を防止する為には、例えば特開
昭53-48989号公報に記載されているように、スルホン
化、ニトロ化などの処理が行われているが、効果が充分
とはいえなかった。
又、この様な方法で得られた炭素粒子には、樹脂から
の炭素化過程における融解の為細孔の大きいものは得ら
れず蛋白質の巨大分子を分離するには、はなはだ不適当
であった。
特開昭59-128207号公報、特開昭51-116193号公報で
は、細孔の大きい炭素粒子を得る為には炭素原料に第2
成分を加え、造粒炭化する過程において加えた第2成分
を除去する方法が記されているが、操作が繁雑な上に第
2成分が合成樹脂系のものであるため、先に述べた様に
球状粒子を得ることは困難であった。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者等は、セルロースが加熱によって溶融あるい
は軟化することがない物質であることに着目し、セルロ
ースを炭素源として用いれば加熱処理における粒子の変
形、固着等の問題が解決でき、セルロース球状粒子を脱
水縮合処理し、ついで加熱処理することにより球状炭素
粒子が容易に得られること、また使用する球状セルロー
スの性状によって得られた球状炭素粒子の多孔性をコン
トロールできることを先に見い出した(特願平1-240564
号)が、これに使用されるセルロース球状粒子が架橋処
理してあれば、更に、粒子表面での細孔の直径が100Å
をこえる位置に粒子表面における細孔の数の分布(水銀
圧入法による)のピークを持つ球状多孔性炭素粒子が得
られることがわかり、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記のものを包含する。
(1).球状セルロースのセルロースの分子間を架橋剤
を用いて架橋した架橋球状セルロース粒子を原料とする
球状多孔性炭素粒子であって、平均粒径が1〜300μm
で、粒子表面での細孔の直径が100Åをこえる位置に粒
子表面における細孔の数の分布(水銀圧入法による)の
ピークを持つ球状多孔性炭素粒子。
(2).球状セルロース粒子のセルロース分子間を架橋
剤で架橋後、脱水縮合処理し、次いで炭化焼成すること
を特徴とする球状多孔性炭素粒子の製造方法。
本発明に用いられる球状セルロース粒子は、真球状で
ありその製造方法としては、次の様な例があるが特に限
定されるものではない。
特開昭53-86749号公報に記載の方法で、セルロース酢
酸エステルを有機溶媒中に溶解し、この溶液を水性溶媒
中に懸濁させて球状化し、有機溶媒を蒸発させてセルロ
ースエステル粒子を得、これをケン化後セルロース粒子
とする方法。
の方法の応用でセルロース酢酸エステルの溶液に脂
肪族高級アルコール等を加えて、多孔性を調節する特開
昭56-24429号公報に記載の方法。
セルロースをパラホルムアルデヒドとジメチルスルホ
キシドの混合溶媒にとかして造粒する特開昭57-159801
号公報、特公昭57-159802号公報に記載の方法。
セルロースを水酸化第2銅、塩化第1銅の濃アンモニ
ア水に溶解して造粒する特開昭52-11237号公報に記載の
方法。
ビスコースを変圧器油中に分散させて造粒する特開昭
51-5361号公報に記載の方法。
セルロースをチオシアン酸カルシウム塩溶液に溶解さ
せて造粒する特開昭55-44312号公報に記載の方法。
精製リンターを銅アンモニア溶液に溶解させて造粒す
る特開昭48-60754号公報に記載の方法。
ビスコースと水溶性アニオン性高分子化合物とを混合
してビスコースの分散液を生成せしめ加熱し凝固させる
特開昭61-241337号公報に記載の方法。
用いる球状セルロース粒子は平均粒子径が3〜300μ
mのものがよい。
次に、これら球状セルロース粒子に架橋を施す。球状
セルロース粒子に架橋を施すとセルロースの3次元構造
が架橋剤により著しく強化され後の加熱処理の際、粒子
間の固着、塊化、凝集化を引き起こさないばかりかポア
の保持がきわめて良好に行われる。
セルロースの架橋方法としては種々あるが、架橋反応
操作の容易さ、架橋後の架橋部分の安定性、非イオン性
であることなどから、アルカリ性物質の存在下に架橋剤
(ポリハロゲン化合物、ハロオキシラン化合物、ポリオ
キシラン化合物等)を作用させる方法が一般に行われて
いる。また、ポリアミン化合物、ポリイソシアナート化
合物等の多官能性架橋剤も有用である。例えば、特公昭
43-10059号公報にはセルロース粉末を水酸化ナトリウム
溶液で処理してアルカリセルロースとし、ついでエピク
ロルヒドリンで処理する方法が記載されており、日本化
学会誌1981(12)P1890〜1891にはセルロース球状粒子
を水酸化ナトリウム水溶液で処理し、ついでエピクロル
ヒドリンで処理する方法が記載されている。特開平1-21
7041号公報にはセルロースを水酸化カリウムの存在下で
架橋することにより耐圧密性に優れた架橋セルロースを
得る方法が記載されている。これらのいずれの方法も本
発明に使用しうる。
架橋球状セルロース粒子は、水等を含む場合は通常乾
燥して使用する。乾燥方法は特に限定されないが、例え
ば、ろ過して大部分の液体を除去した後加熱乾燥する方
法、アルコール、エーテル、アセトン等の溶媒に置換後
減圧乾燥する方法等がある。
架橋球状セルロース粒子はまず加熱脱水縮合処理(予
備炭化)に付する。この処理は、100〜400℃、好ましく
は200〜300℃で3〜6時間行われ、真空又は不活性ガス
雰囲気下で実施できるが、酸性ガス、例えば乾燥塩化水
素ガスの存在下に実施することも反応の促進に有効であ
る。
架橋球状セルロース粒子を炭化焼成するには、電気炉
またはロータリーキルン等を用い、窒素、アルゴンなど
の不活性ガス雰囲気下で加熱焼成するのがよい。均一に
炭化焼成するためにはロータリーキルン、流動床炉等の
非固定式炉が望ましい。焼成温度は低すぎては炭化が進
まないし、高すぎても炭化の進行を促進することはない
ため、通常500〜3000℃が望ましい。特に2000〜3000℃
で行うとグラファイト化が起こることにより得られる球
状炭素粒子の硬度が上がり、炭素化工程中におこるセル
ロースの芳香族化が減少しクロマトグラフィー操作にお
いて、不要な非特異吸着が減少するという利点がある。
昇温速度については、速すぎると球状粒子の形状が保て
ないので、5〜1000℃/時間、望ましくは、50℃〜500
℃/時間が好適である。焼成時間は、昇温速度に依存す
る。50℃〜500℃/時間の昇温速度であれば希望する温
度に達したのち0.1〜24時間あれば炭化焼成は達成され
る。このようにして平均粒径が1〜300μmであり、粒
子表面での細孔の直径が100Åをこえる位置に粒子表面
における細孔の数の分布のピークを持つ球状多孔性炭素
粒子を得ることができる。
〔実施例〕
以下に実施例として、架橋球状セルロース粒子を出発
原料とした球状炭素粒子の製造方法と得られた粒子の使
用例を示すが本発明はかかる実施例のみに限定されるも
のではない。以下の例で、平均粒径の測定はコールター
カウンター(モデルTA II コールターエレクトロニク
ス社製)で測定した。
細孔のサイズは、ポアサイザー9310((株)島津製作
所製)を用い水銀圧入法により、細孔の直径の分布を測
定した。
(実施例1) 特開昭55-44312号公報の実施例1の方法で造粒したセ
ルロースゲルのサクションドライ品100gを300mlのヘプ
タン中に攪拌分散し50重量%水酸化ナトリウム水溶液36
gを添加して室温で6時間攪拌した。これに30gのエピク
ロルヒドリンを加え、更に50℃で6時間攪拌した。反応
終了後ろ過し水洗いして球状架橋セルロース粒子を得
た。
球状架橋セルロース粒子のサクションドライ品100gを
メタノール、エタノール、エーテルを用い各々240mlで
順次洗浄し溶媒置換を行った後ろ過しロータリーエバポ
レーターで真空乾燥を行った。得られた乾燥架橋セルロ
ース粒子を更に、乾燥塩化水素ガス雰囲気下300℃で3
時間加熱処理し、脱水縮合処理を行った。
得られた粒子をロータリーキルンを用い窒素気流中30
0℃まで4時間、300℃から1000℃まで14時間で昇温し、
この温度で4時間炭化焼成して球状炭素粒子10gを得
た。
得られた炭素粒子は固着、塊化、凝集がなく平均粒径
は28μm、粒子表面における細孔の数の分布のピークは
1100Åにあった。
(実施例2) 特開昭56-24429号公報の実施例1の方法で造粒したセ
ルロースゲルのサクションドライ品200gを600mlのジオ
キサン中に攪拌分散し、50重量%水酸化カリウム水溶液
120gを加え、次いで100gの1,3−ジクロロ−2−プロパ
ノールを加え70℃で6時間攪拌した。
反応終了後ろ過し、水洗いして球状架橋セルロース粒
子を得た。得られた球状架橋セルロース粒子のサクショ
ンドライ品190gをジオキサン及びエーテル各400mlで洗
浄し、溶媒置換を行った後ロータリーエバポレーターで
真空乾燥した。得られた乾燥セルロース粒子を更に乾燥
塩化水素雰囲気中で350℃4時間加熱処理し、脱水縮合
処理を行った。
得られたた粒子を流動床炉に入れアルゴンガス雰囲気
中1000℃まで20時間、更に2800℃まで21時間かけ昇温
し、2800℃で0.5時間炭化焼成して球状炭素粒子17gを得
た。
得られた炭素粒子は固着、塊化、凝集がなく平均粒径
は31μm、粒子表面における細孔の数の分布のピークは
250Åであった。
(実施例3) 市販されている真球状架橋セルロース粒子(セルロフ
ァイン(商標)GCL-1000タイプチッソ(株)製)のサク
ションドライ品500gをメタノール2l、エタノール1で
各々洗浄し、溶媒置換を行った後、ろ過しロータリーエ
バポレーターで真空乾燥を行った。得られた乾燥セルロ
ース粒子を更に乾燥塩化水素ガス雰囲気下300℃で6時
間加熱処理して、脱水縮合処理を行った後、この粒子を
アセトン2lで洗浄しろ過しロータリーエバポレーターで
真空乾燥した。
得られた粒子をロータリーキルンを用いアルゴンガス
雰囲気中で300℃まで4時間、300℃から1000℃まで14時
間、1000℃から2200℃まで5時間で昇温し、2200℃で2
時間炭化焼成して、球状炭素粒子50gを得た。
得られた炭素粒子は固着、塊化、凝集がなく平均粒径
は10μm、粒子表面における細孔の数の分布のピークは
560Åであった。
(比較例1) 実施例1において、セルロースゲルを架橋を行わずそ
のままサクションドライにして使用し、架橋の処置を除
き他を全く同様な条件で行い、炭素粒子8gを得た。
得られた炭素粒子の平均粒径は13μm、粒子表面にお
ける細孔の数の分布のピークは62Åであった。
(比較試験1) 実施例1及び比較例1で得られた粒子を比較する為
に、φ0.5mm×50mmのカラムに充填し、チログロブリン
(分子直径およそ190Å)溶液(100mg/0.01M リン酸バ
ッファー(pH7.0)+2M NaCl 1ml)を流し、更に0.01M
リン酸バッファー(pH7.0)+2M NaClを流して溶出さ
れてきた未吸着のチログロブリンを回収して、粒子に吸
着されたチログロブリンの量を求めた。
その結果を表1に示する。
〔発明の効果〕 以上詳細に説明した様に本発明によれば、粒子表面で
の細孔の直径が100Åをこえる位置に粒子表面における
細孔の数の分布のピークを持つ球状多孔性炭素粒子を固
着、塊化、凝集させることなく、高収率で製造すること
ができる。
この様にして得られた多孔性炭素粒子は、機械的強度
が大きく、蛋白質等の巨大分子を細孔内に取り込めるた
め吸着量、保存時間が大きく、球状であるから、高分子
物質の吸着剤、クロマトグラフィー用充填剤等に極めて
有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 栗崎 秀夫 熊本県水俣市築地4番218号 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C01B 31/02 B01J 20/20 G01N 30/48

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】球状セルロース粒子のセルロース分子間を
    架橋剤を用いて架橋した架橋球状セルロース粒子を原料
    とする球状多孔性炭素粒子であって、平均粒径が1〜30
    0μmで、粒子表面での細孔の直径が100Åをこえる位置
    に粒子表面における細孔の数の分布(水銀圧入法によ
    る)のピークを持つ球状多孔性炭素粒子。
  2. 【請求項2】球状セルロース粒子のセルロース分子間を
    架橋剤で架橋後、脱水縮合処理し、次いで炭化焼成する
    ことを特徴とする球状多孔性炭素粒子の製造方法。
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