JP2733610B2 - 医療用固定材 - Google Patents

医療用固定材

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Description

【発明の詳細な説明】 《産業上の利用分野》 この発明は、医療用固定材に関する。
さらに詳しくは、軟化点50〜60℃を有する熱可塑性ポ
リカプロラクトン樹脂にエチレン−酢酸ビニル共重合体
樹脂をブレンドして自己粘着性がない医療用固定材に関
する。
本発明の医療用固定材とは従来から用いられている公
知の熱可塑性ポリカプロラクトン樹脂単独のものが有す
る特性を損なうことなく自己粘着性が改良されているの
で作業時間が著しく短縮される。
《従来技術》 従来、骨折の治療など整形外科分野の治療において,
患部を固定する際にはギプスまたはスプリント材などを
用いるのが一般的であった。
ギプスとしてはセッコウを水に溶いてこれを包帯など
支持体に含浸させ一定時間放置することにより固化させ
る方法が一般的であった。
しかしながら,セッコウを使用する方式は以下のよう
な不都合があった。
すなわち, 適用された患者に取っては「かさばる」「患部が重
い」 簡単なやり直しが利かない セッコウの粉末が飛散する そのままX線検査ができない そこで上記の問題点を解消したギプスとして軟化温度
が低い熱可塑性ポリカプロラクトン樹脂組成物,トラン
スポリイソプレン樹脂組成物などを一定のサイズの網状
体,織布又は不織布などに含浸させたものがある。
これは保管中は硬化した状態であり,使用時に温水ま
たは温風などで軟化させて患部に巻き付けた後再び硬化
させるという手順で使用される。
また,スプリント材というのは副木とも呼ばれ,短冊
状の軟質金属または上記軟化温度が低い熱可塑性樹脂組
成物がそのまま用いられていた。
ギプス,スプリント材として軟化温度が低い熱可塑性
の樹脂を用いる開示例としては特開昭51−53545,特開昭
52−64192,特開昭54−122354,特開昭56−43957,特開昭5
5−88767,特開昭59−81042,特開昭59−108059,特開昭59
−207156号公報などがある。
《発明が解決しようとする課題》 しかしながら,前記のような軟化温度が低い熱可塑性
ポリカプロラクトン樹脂を医療用固定材として用いる
際,以下のような問題が生じる。
すなわち,上記の材料,特にポリカプロラクトン樹脂
組成物からなるギプスまたはスプリント材はそれを軟化
させて患者に対して適用する作業を行う際,軟化した樹
脂表面同志がお互いに付着し易く,作業の途中で一旦付
着してしまうとそれを剥がしてやり直すには長時間を要
する。
また,このようなやり直し作業を行うと仕上がり状態
も良くない。
また,前記各種の公報に開示されている医療用固定材
用ポリカプロラクトン樹脂組成物は主要樹脂成分である
1種類のポリカプロラクトン樹脂に他の樹脂および/ま
たは安定剤や無機の充填剤,着色剤のような添加剤がブ
レンドされたものである。しかしながら,上記の樹脂組
成物だけからなる医療用固定材では未だ充分なものとは
言えない。
このような状況に鑑み,本発明者は鋭意検討した結
果,本発明を完成させた。
《発明の構成》 すなわち,本発明は 「(a)ポリカプロラクトン樹脂 70〜90重量% (b)エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂 10〜30重量% をブレンドした樹脂組成物および必要に応じて充填剤を
ブレンドした組成物からなる医療用固定材」である。
本発明のポイントは前記のポリカプロラクトン樹脂に
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を一定量ブレンドする
ことにより他の特性を損なうことなく樹脂組成物の軟化
時の自己粘着性を緩和したところにある。
また,2種類の異なったグレードのポリカプロラクトン
樹脂をブレンドすることにより相当する相対粘度の単独
の樹脂では若干不足している曲げ強度を改良したところ
にもある。
なお、本発明で述べる相対粘度とは毛細管粘度計(ウ
ベローデ粘度計)を用いて測定した粘度とする。測定法
はJIS K6726に準じて行なった。ただし,溶剤としてト
ルエン濃度1%,温度25℃プラスマイナス0.05℃で測定
した値とする。
本発明で述べるポリカプロラクトン樹脂ブレンド物の
中で相対粘度1.50〜2.80を有するポリカプロラクトン樹
脂とは代表例として第2図のGPCチャートに示されてい
るような分子量分布を有する物である。
また,本発明で述べるポリカプロラクトン樹脂ブレン
ド物の中で相対粘度1.15〜1.50を有するポリカプロラク
トン樹脂とは代表例として第3図のGPCチャートに示さ
れているような分子量分布を有するグレードのものであ
る。
本発明の医療用固定材に用いられるブレンドされた樹
脂組成物の一方の樹脂である軟化点50〜80℃を有し,か
つ,室温で固形である熱可塑性ポリカプロラクトン樹脂
は以下のようにして製造される。
すなわち,ε−カプロラクトンモノマーなどのラクト
ンモノマーを活性水素基を有する開始剤および触媒の存
在下で開環付加重合させることにより得られる。
この反応に用いられる触媒としては有機スズ化合物,
有機チタン化合物,有機ハロゲン化スズ化合物などが一
般的であり,その使用量は出発原料に対して0.1〜5000p
pm,好ましくは10〜100ppmである。
反応温度は100〜230℃が適当であり,不活性ガス中で
行なうのがよい。
反応温度は230℃以上にすることは好ましくない。と
いうのはポリカプロラクトンの解重合温度が約220〜230
℃であるため、これ以上の高温度で反応を行なうと重合
物が分解し、分子量が大きくならないからである。
反対に反応温度が100℃以下では反応速度が遅く,効
率が悪い。
この熱可塑性ポリカプロラクトン樹脂は常温で液体の
ものから固体状のもの迄種々の分子量(すなわち,相対
粘度)を有するものがあり,各種の用途に用いられてい
るが,本発明の医療用固定材として用いるためには相対
粘度1.50〜2.80を有するポリカプロラクトン樹脂が最も
好ましい。なお,相対粘度1.50〜2.80を有するポリカプ
ロラクトン樹脂は各種の用途向けに市販されており,た
とえば,倍力操作用物体(特開昭60−240692),プラス
チック粘土(特開昭61−42679),医療用ギプス(特開
昭58−81042),医療用固定材,放射線照射用フェイス
マスク,かつらの型取材(特開昭60−215018)などに用
いられている。
相対粘度1.15〜〜〜2.80を有するポリカプロラクトン
樹脂の具体的な例としてはダイセル化学工業(株)で製
造され,市販されているカプロラクトンH−1,−5,−7
などがある。
中でも相対粘度1.15〜1.50を有するポリカプロラクト
ン樹脂も各種の用途向けに市販されており,一般的な樹
脂の改質剤などに用いられている。
その具体的な例としてはダイセル化学工業(株)で製
造され,市販されているカプロラクトンH−1などがあ
る。
したがって,これら市販のものを購入して用いても良
い。
上記のような2種類の異なる相対粘度(すなわち,2種
類の異なる分子量分布)のポリカプロラクトン樹脂を所
定の割合でブレンドした場合の樹脂組成物の分子量分布
パターンは第1図のGPCチャートに示されたようなもの
となる。
第1図に示されたGPCチャートにおいて示されている
ように,ブレンド樹脂組成物の分子量分布パターンの特
徴はメインピークにおいて,単独の場合と比較して複数
のピークに別れていることである。
複数のピークに別れていることによってブレンドされ
ていることを確認することができる。
なお,第4図はブレンド樹脂組成物と同等の粘度(す
なわち,分子量分布)を有しているグレードにもののGP
Cチャートである。
第5図は単独の樹脂のGPCチャートの横軸の位置を一
致させて3種類合成したものである。
上記のような2種類の異なる相対粘度(すなわち,分
子量分布)を有するポリカプロラクトン樹脂を所定の割
合でブレンドするには以下の方法による。
すなわち,後述するエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂
およびそれぞれのグレードの樹脂ペレットまたはフレー
ク,粉末などを購入し,押出し機にかけてブレンドすれ
ば良い。
また,それぞれのグレードのポリカプロラクトン樹脂
を重合後重合缶より排出させた時点でそれぞれの高粘度
物の状態の樹脂を押出し機にかけて混合しておいても良
い。
これらの方法は原料樹脂メーカーか原料を購入して加
工する加工業者かの違いにより適宜選定される。
原料樹脂メーカーにおいては生産量との関係により適
宜選定される。
本発明の医療用固定材に用いられるブレンドされた樹
脂組成物のもう一方の樹脂であるエチレン−酢酸ビニル
共重合樹脂は特に制限されることはなく,通常の成形品
に用いられるグレードのものならどれでも良い。
上記のようなエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂はエ
チレンモノマーと酢酸ビニルモノマーとを共重合反応さ
せることによって製造される。
共重合反応は懸濁法,乳濁法などがあるが,本発明で
用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂はいずれ
の製法で作られたものでも使用し得る。
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂とは広義にはエチ
レンモノマーと酢酸ビニルモノマーとの共重合比率がエ
チレンモノマーが60%以上90%程度のものとされている
が,本発明で用いるもののグレードは市販されている標
準品グレード,即ち,エチレン部分の含有量が80〜86%
程度のもので軟化点(ビカット法)が60〜85℃が特に好
ましい。
具体的な例としては三井ポリケミカル株製エバフレッ
クス550,エバフレックス560,エバフレックスP−0803,
住友化学エパテートD−2011,エパテートD−3011,エパ
テートD−3022などがある。
ポリカプロラクトンとエチレン−酢酸ビニル共重合体
樹脂を均一に混合させる方法としては特に限定はされな
いが、押出機、ニーダー、ハンバリーミキサー等による
溶融混練が例示できる。
ポリカプロラクトン樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重
合体樹脂とのブレンド比は70〜30重量%〜90〜10重量%
が適している。
ポリカプロラクトン樹脂に対するエチレン−酢酸ビニ
ル共重合体樹脂のブレンド比が10%に満たないと自己粘
着性の改善効果が充分でない。
また,30重量%を越えると軟化時の粘度および軟化温
度が高くなり過ぎることとまた,硬化速度が速くなり過
ぎるため取り扱い難くなる。
ポリカプロラクトン樹脂に対するエチレン−酢酸ビニ
ル共重合体樹脂のブレンド比と軟化温度、硬化速度との
間には強い相関が認められる。
すなわち,ポリカプロラクトン樹脂に対するエチレン
−酢酸ビニル共重合体樹脂のブレンド比が大きいほど軟
化温度は上昇し、硬化速度は速くなる。硬化速度はポリ
カプロラクトン樹脂に対するエチレン−酢酸ビニル共重
合体樹脂のブレンド比だけでなくポリカプロラクトンの
分子量によってもコントロールすることができる。
このようにしてブレンドされた樹脂組成物を本発明の
用途に適用する場合,以下の方法によれば良い。
すなわち,樹脂成形加工メーカーにおいて,上記のよ
うなブレンド樹脂ペレットを短冊状かまたは2〜10mm,
好ましくは3〜5mmの厚さを有する板状に成形しておい
ても良い。
本発明に用いるブレンド樹脂組成物は白色のままでも
良いが,ブルーなどに着色したものを用いても差し支え
はない。
上記の短冊状の医療用固定材を実際に使用する場合は
軟化点程度の温度を有する温水を準備するか,または電
熱を用いたヘヤードライヤー様の加温器で樹脂を軟化さ
せ,前述のように用いる。
また,以上のような方法で製造された樹脂でも数ケ月
の期間は保管したり,運搬したりすることは可能である
が,一方の樹脂であるポリカプロラクトン樹脂がポリエ
ステル樹脂であるためエステル結合特有の加水分解によ
る分子量低下が生じて脆くなる。
これを防止するために前述の開始剤となる微量の水分
の代りに一部エポキシ樹脂を添加して重合させると得ら
れた樹脂は著しく耐加水分解性が改善される。
《発明の効果》 本発明の,ポリカプロラクトン樹脂とエチレン−酢酸
ビニル共重合樹脂がブレンドされた熱可塑性樹脂組成物
からなる医療用固定材を使用すれば自己粘着性が改良さ
れている結果,作業時間が著しく短縮されることと,曲
げ強度が著しく改善されており,溶融時の粘度も手頃で
あり,また,管理も簡単で,かつ,経時変化も無く,ま
た,患者に対しても不快感を与えないので好適である。
また本発明で用いるブレンドされた熱可塑性樹脂組成
物からなる医療用固定材は寸法安定性にもすぐれてい
る。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の効果を具体的
に説明する。
実施例−1〜6 表−1に示した各配合組成を選択し,ブラベンダープ
ラストグラフを用いて150℃で30分間混練した。
次いでこの樹脂を100℃の温度で3mm厚さになるように
プレス成形した。
プレス成形3〜5時間後に曲げ強度の測定を行った。
測定データを合わせて表−1に示した。
用いたポリカプロラクトン樹脂は市販のポリカプロラ
クトンH7(ダイセル化学工業株式会社製:相対粘度2.3
4),同じくプロラクトンH1(ダイセル化学工業株式会
社製:相対粘度1.28),エチレン−酢酸ビニル共重合樹
脂(以下EV:三井ポリケミカル株式会社製エバフレック
ス560),充填剤としてタルク,同酸化チタン,エポキ
シ樹脂としてエピコート828(以下EP)を使用した。
[曲げ強度の測定方法] JIS K7203に準ずる。
但し,支点間距離4cm,試験速度5mm/min,温度20プラス
マイナス2℃,湿度65プラスマイナス5%RHの条件で測
定し,5mm曲げたときの応力を求めた。
サンプル片長さ8cm,幅3cm,厚さ3mmである。
比較例 エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂をブレンドしない以
外は実施例1と全く同様に行なった。
結果を表−1に示した。
ただし,前記表−1中の曲げ応力(Kg/mm2)は以下の
通りである。
:3.10 :3.06 :2.91 :3.17 :3.31 :3.50 :2.97 [自己接着性の評価] 70℃の温水に浸漬して軟化させた樹脂板同志を押し付
けて2〜3秒後に引き剥がした時の状態によって〇×評
価を行なった。
〇:接着性なし ×:接着性あり 表−1の結果からエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を
ブレンドした実施例1と2の曲げ応力,自己接着性共に
優れていることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の医療用固定材に使用される2種類の異
なる相対粘度を有するポリカプロラクトン樹脂をブレン
ドした組成物のGPCのチャートである。 第2図〜第4図はそれぞれ単独の相対粘度を有するポリ
カプロラクトン樹脂のGPCのチャートである。 第5図は第2図〜第4図の相対粘度を有するポリカプロ
ラクトン樹脂のGPCのチャートを合成したものである。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)ポリカプロラクトン樹脂70〜90重量
    % (b)エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂 10〜30重量% をブレンドした樹脂組成物および必要に応じて充填剤を
    ブレンドした組成物からなる医療用固定材。
  2. 【請求項2】ポリカプロラクトン樹脂が相対粘度1.50〜
    2.80を有するポリカプロラクトン樹脂と相対粘度1.15〜
    1.50を有するポリカプロラクトン樹脂を重量比85/15〜3
    0/70でブレンドした樹脂組成物である請求項(1)記載
    の医療用固定材。
  3. 【請求項3】ポリカプロラクトン樹脂が開始剤の一部と
    してエポキシ樹脂を用いて重合されたものである請求項
    (1)記載の医療用固定材。
  4. 【請求項4】エポキシ樹脂がエピービス型のエポキシ樹
    脂である請求項(3)記載の医療用固定材。
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