JP2024161057A - コンクリート構造物補強用繊維シート - Google Patents

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JP2024161057A
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智弘 山下
裕章 西村
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Abstract

【課題】高い下地視認性を有し、かつ十分な補強性能が得られる補強方法の提供。
【解決手段】フィラメントを組み合わせた多軸メッシュシート(A)と、マトリックス樹脂(B)とが一体化された構造を有し、且つ多軸メッシュシート(A)の目付量が500g/m2~1000g/m2である、コンクリート構造物補強用繊維シート。
【選択図】なし

Description

本発明は、コンクリート構造物補強用繊維シートに関する。
既設のコンクリート構造物の補強には一般に、劣化したコンクリートの除去、ひび割れ補強剤の注入、覆工コンクリートの打設といった手順が取られるが、高所での重作業が多く、簡便な方法が求められている。
これに対して、合成繊維製の織物や編物、不織布等を補強対象部に貼り、その上から樹脂を塗布・硬化させるという、いわゆるFRP(fiber reinforced plastic)を形成する補強方法が提案されている。
その補強を繊維シートで行う場合には、繊維シートとしてアラミド系繊維や炭素繊維が用いられてきた。
しかし、こうした従来の方法で補強を行ったコンクリート構造物の表面は不透明な樹脂やシート部材等の補強層で被覆され、外部からコンクリート構造物の素地の状態を目視によって観察することが困難であった。近年、コンクリート構造物の表面の補強を行った後に、構造物の経時変化の監視も必要となるケースが多いが、その要請に簡単に対応できない問題があった。
従来は、素地の状態を外部から目視によって観察する必要が出た際には、表面に施された既存の補強層の一部を除去し、素地を露出させるための点検用窓を形成せざるを得なかった。
しかし、そのように点検用窓を形成すると、その箇所の強度が低下してしまう懸念や、点検用窓の部分が補強層の劣化の起点となり得るという懸念が更に生じてしまった。
接着剤と繊維メッシュシートを用いて施工後のコンクリート構造物の素地を観察可能な施工方法として、特許文献1では、コンクリート構造物表面に1mmの厚みにおいて平行光線透過率75%以上のアクリル樹脂に塗りつけた後に、ナイロン繊維又はビニロン繊維を貼り付けることを特徴とする補修工法が記載されている。特許文献2では透明ポリウレタン樹脂溶液を塗り付けた後にガラス繊維シートを貼着し、その上から透明ポリウレタン樹脂溶液を塗り付けてガラス繊維シートに含浸させ、これを乾燥させることで固化させて透明又は半透明のコーティング層を形成するコンクリート構造物表面の強化コーティング方法が提案されている。
特開2006-342538号公報 特開2010-001707号公報
しかしながら、上記の特許文献1~2に記載の方法は、あくまでコンクリート構造物表面の劣化した構造物片のはく落の抑制を想定したものである。このため、コンクリート構造物の補強に必要な、高い引張強度を有するFRP構造物を得ることはできなかった。
本発明は、上記課題に鑑みて、高い下地視認性を有し、且つ十分な補強性能が得られる補強方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、検討を重ねた結果、目付量500g/m2~1000g/m2の多軸メッシュシートとマトリックス樹脂とから作成した繊維シートを用いることで、高い引張強度等の優れた補強性能に加え、下地視認性を確保できることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、以下の(1)~(18)を提供できる。
(1)
コンクリート構造物の補強方法に用いられるコンクリート構造物補強用繊維シートであり、
フィラメントを組み合わせた多軸メッシュシート(A)と、マトリックス樹脂(B)とが一体化された構造を有し、且つ
前記多軸メッシュシート(A)の目付量が500g/m2~1000g/m2である、コンクリート構造物補強用繊維シート。
(2)
前記多軸メッシュシート(A)の目開きが1~25mmである(1)に記載のコンクリート構造物補強用繊維シート。
(3)
前記多軸メッシュシート(A)が、少なくとも一軸方向に熱可塑性樹脂を含有する(1)又は(2)に記載のコンクリート構造物補強用繊維シート。
(4)
前記多軸メッシュシート(A)が含有する熱可塑性樹脂の含有量が、50g/m2以下である(3)に記載のコンクリート構造物補強用繊維シート。
(5)
前記多軸メッシュシート(A)が、少なくとも二軸以上のガラス繊維シートであり、前記ガラス繊維シートが、少なくともZrO2を12質量%以上、及びR2O(RはLi、Na及びKからなる群から選択される少なくとも1種)を10質量%以上含有する(1)~(4)の何れか一項に記載のコンクリート構造物補強用繊維シート。
(6)
前記マトリックス樹脂(B)が、(メタ)アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種以上の成分を、少なくとも50質量%以上含む(1)~(5)の何れか一項に記載のコンクリート構造物補強用繊維シート。
(7)
前記マトリックス樹脂(B)の含有量が、20g/m2~400g/m2である(1)~(6)の何れか一項に記載のコンクリート構造物補強用繊維シート。
(8)
前記多軸メッシュシート(A)と前記マトリックス樹脂(B)の屈折率の差が、JIS K 7142:2014の第4.1節に係るA法に従って、波長589nmの光源を用いて測定した際に0.04以下である(1)~(7)の何れか一項に記載のコンクリート構造物補強用繊維シート。
(9)
目開きが1~25mmである(1)~(8)の何れか一項に記載のコンクリート構造物補強用繊維シート。
(10)
フィラメントを組み合わせた目付量が500g/m2~1000g/m2である多軸メッシュシート(A)に、マトリックス樹脂(B)を含浸させるステップと、
含浸させた前記マトリックス樹脂(B)を、加熱処理及び/又は活性エネルギー線照射処理によって硬化及び/又は非流動化させることで、前記多軸メッシュシート(A)と前記マトリックス樹脂(B)とを一体成型し、繊維シートを得るステップと
を含む、コンクリート構造物補強用繊維シートの製造方法。
(11)
前記マトリックス樹脂(B)が非重合性の高分子量体であって、
高分子量体である前記マトリックス樹脂(B)を、前記マトリックス樹脂(B)を溶解可能である有機溶剤(C)により希釈するステップと、
前記多軸メッシュシート(A)に前記マトリックス樹脂(B)を含浸させた後に、加熱処理により前記有機溶剤(C)を揮発させるステップと
を更に含む、(10)に記載の製造方法。
(12)
前記マトリックス樹脂(B)がラジカル重合性樹脂であり、
加熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤(D-1)を、前記マトリックス樹脂(B)に添加するステップと、
前記多軸メッシュシート(A)に前記マトリックス樹脂(B)を含浸させた後に、加熱処理により前記マトリックス樹脂(B)をラジカル重合させるステップと
を更に含む(10)に記載の製造方法。
(13)
前記マトリックス樹脂(B)がラジカル重合性樹脂であり、
活性エネルギー線照射によりラジカルを発生する光重合開始剤(D-2)を、前記マトリックス樹脂(B)に添加するステップと、
前記多軸メッシュシート(A)に前記マトリックス樹脂(B)を含浸させた後に、活性エネルギー線照射処理により前記マトリックス樹脂(B)をラジカル重合させるステップと
を更に含む(10)に記載の製造方法。
(14)
前記繊維シートをロール状に巻き取るステップ
を更に含む、(10)~(13)の何れか一項に記載の製造方法。
(15)
(1)~(9)の何れか一項に記載の繊維シート、又は(10)~(14)の何れか一項に記載の製造方法により得られた繊維シートに、コンクリート構造物用接着剤(E)を適用するステップと、
前記繊維シートをコンクリート構造物表面に設置して、前記コンクリート構造物用接着剤(E)を硬化させ、前記コンクリート構造物表面に補強層を形成するステップと
を含み、
前記補強層の引張強度が、JIS A 1191:2004に準拠した方法で作製したB形試験片を用いて測定した際に、単位長さあたり少なくとも150kN/m以上である、コンクリート構造物の補強方法。
(16)
前記補強層の、JIS K 7375:2008に記載の方法で測定した全光線透過率が、少なくとも5%以上である、(15)に記載の補強方法。
(17)
前記多軸メッシュシート(A)と前記コンクリート構造物用接着剤(E)の屈折率の差が、JIS K 7142:2014の第4.1節に係るA法に従って、波長589nmの光源を用いて測定した際に、0.04以下である(15)又は(16)に記載の補強方法。
(18)
前記コンクリート構造物用接着剤(E)が、(メタ)アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択された少なくとも1種以上の成分を、少なくとも50質量%以上含む(15)~(17)の何れか一項に記載の補強方法。
本発明の実施形態で提供する繊維シートをコンクリート構造物補強用途に供することで、高い下地視認性を保ちつつ、しかも十分な補強性能が得られる。
本明細書における量(部)及び比率(%)は、別段の断わりがない限りは質量基準である。本明細書における数値範囲は、別段の断わりがない限りはその上限値と下限値を含む。特段の記載がない限り、本明細書におけるコンクリートとは、セメントペースト、モルタル、コンクリートを総称するものとする。
<コンクリート構造物補強用繊維シート>
本発明の実施形態に係るコンクリート構造物補強用繊維シート(以下、単に「繊維シート」とも称する)は、フィラメントを組み合わせた多軸メッシュシート(A)と、マトリックス樹脂(B)とが一体化された構造を有する。当該繊維シートの製造にあたっては、多軸メッシュシート(A)に対して流動体の状態(流動状態)にあるマトリックス樹脂(B)を含浸した後、加熱処理及び/又は活性化エネルギー照射によりマトリックス樹脂(B)を硬化及び/又は非流動化し、一体成型できる。当該繊維シートを、後述するコンクリート構造物用接着剤(E)と組み合わせることで、補強層としてのFRP構造物を作成できる。
<多軸メッシュシート(A)>
多軸メッシュシート(A)の目付量は、500~1000g/m2であり、500~800g/m2であることが好ましい。目付量が500g/m2未満であると、コンクリート構造物の補強方法に必要な引張耐荷重性能が発揮できない。また目付量が1000g/m2を超えると、マトリックス樹脂(B)の含浸が阻害され、コンクリート構造物下地の視認性が低下する。
多軸メッシュシート(A)の目開きは、1~25mmであることが好ましく、2~10mmの目開きであることがより好ましい。当該範囲内の目開きのメッシュシートを使用することで、コンクリート構造物との優れた付着性が得られ、FRP引張強度の向上、ひいては延焼性抑制等の効果を有する。
多軸メッシュシート(A)は、少なくとも一軸方向に熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。熱可塑性樹脂は例えば熱融着糸として使用する。熱可塑性樹脂を含有することで、交差するフィラメント同士を接着でき、多軸メッシュシートが解れることを抑制できる。熱可塑性樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル(塩ビ)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、(メタ)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、(メタ)アクリロニトリル・スチレン、ポリメチル(メタ)アクリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド(ナイロン等)、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))等が挙げられる。
多軸メッシュシート(A)が含有する熱可塑性樹脂の含有量は、50g/m2以下が好ましく、20g/m2以下がより好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が50g/m2以下であると、コンクリート構造物下地の視認性が向上する。
多軸メッシュシート(A)は少なくとも二軸以上であることが好ましく、二軸以上のガラス繊維シートがより好ましく、二軸のガラス繊維シートが最も好ましい。多軸メッシュシート(A)が二軸のガラス繊維シートであると、コンクリート構造物の補強に必要な強度と、コンクリート構造物下地の視認性とを共に向上できる。
ガラス繊維シートの製造方法は限定されない。二軸のガラス繊維シートの製造方法としては、例えば、ガラスヤーンやガラスロービングといった長繊維を一定の本数束ねた繊維束を形成し、この繊維束を経方向と緯方向に配列させ、交差する繊維束を織り込む、又は接着する等の方法をとってよい。
ガラス繊維は少なくともZrO2を12質量%以上、及びR2O(RはLi、Na及びKからなる群から選択される少なくとも1種)を10質量%以上含有することが好ましい。ZrO2及びR2Oの量が上記範囲内であれば、コンクリート構造物由来のアルカリ成分によってガラス繊維シートが劣化しづらいという効果が得られる。ガラス繊維はZrO2を30質量%以下、及びR2Oを25質量%以下含有することが好ましい。
多軸メッシュシート(A)は、その他の成分を含有しても良い。その他の成分とは、繊維以外の成分、熱可塑性樹脂以外の成分をいう。その他の成分としては、例えば、ガラス以外の成分からなる長繊維、熱硬化性樹脂、無機化合物、金属等が挙げられ、これらを組み合わせて使用しても良い。この中で、ウレタン樹脂やアクリル樹脂の水溶媒ディスパージョンである集束剤、サイジング材は特に好適に用いられる。その他の成分の含有量は50g/m2以下が好ましく、50g/m2未満がより好ましい。その他の成分の含有量を50g/m2以下にすることにより、下地視認性を高めることができる。
<マトリックス樹脂(B)>
マトリックス樹脂(B)を多軸メッシュシート(A)に含浸し、繊維シートを形成することで、補強層形成後にコンクリート構造物下地の視認性を高められる。
マトリックス樹脂(B)は、多軸メッシュシート(A)に含浸可能なものであればよい。マトリックス樹脂(B)は例えば、(メタ)アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂からなる群から選択された少なくとも1種の成分を、少なくとも50質量%以上含むことが好ましい。マトリックス樹脂(B)としては、ラジカル重合性樹脂、エポキシ樹脂からなる群の1種以上が好ましい。これらの成分は、多軸メッシュシート(A)と一体化しやすく、コンクリート構造物補強方法(以下、単に「補強方法」とも称する)に用いられた際、高い下地視認性が発現される。
マトリックス樹脂(B)に含まれる樹脂(群)はモノマー、オリゴマー、ポリマー問わず選定でき、これらを組み合わせて使用しても良い。
マトリックス樹脂(B)には性能を低下させない範囲で、無機充填材、オイル、ゴム、粘度調整剤、顔料、染料、可塑剤、重合開始剤、増感剤、触媒、重合禁止剤、ワックス、粘着付与剤、シランカップリング材、酸化防止剤、難燃剤、有機溶剤等を添加してもよい。
繊維シートが含むマトリックス樹脂(B)の含有量(含浸量)は、20g/m2~400g/m2が好ましく、50g/m2~200g/m2がより好ましい。マトリックス樹脂(B)の質量が20g/m2以上であると、多軸メッシュシート(A)の繊維間に十分な樹脂が含浸され、補強方法に用いられた際、下地視認性が向上する。マトリックス樹脂(B)の質量が400g/m2以下であると、多軸メッシュシート(A)の質量を低減でき、補強方法に用いられた際にシートが脱落せず、施工性が向上する。
<コンクリート構造物補強用繊維シート>
多軸メッシュシート(A)と、マトリックス樹脂(B)の屈折率の差は、JIS K 7142:2014の第4.1節に係るA法に従って、波長589nmの光源を用いて計測した際に、0.04以下であることが好ましく、0.025以下であることがより好ましい。当該屈折率の差が0.04以下であると、補強方法に用いられた際、下地視認性が向上する。
繊維シートの目開きは、1~25mmが好ましく、3~10mmがより好ましい。当該範囲内の目開きであると、コンクリート構造物との優れた付着性が得られ、補強方法に用いられた際、高い補強性能を発揮できる。
<繊維シートの製造方法>
当該製造方法では上述したように、流動体の状態にあるマトリックス樹脂(B)を多軸メッシュシート(A)に含浸させた後、それを硬化及び/又は非流動化させる。
加熱処理を採る場合には一例として、非重合性の高分子量体であるマトリックス樹脂(B)を、そのマトリックス樹脂(B)を溶解可能な有機溶剤(C)で希釈して溶液を得てよい。そしてその溶液を多軸メッシュシート(A)に含浸した後に、加熱処理により有機溶剤(C)を揮発させて、マトリックス樹脂(B)と多軸メッシュシート(A)とを一体化できる。
マトリックス樹脂(B)を有機溶剤(C)で希釈した溶液の、ブルックフィールド型回転粘度計を用いて計測した粘度は、23℃、20rpmにおいて、2,000mPa・s以下が好ましく、500mPa・s以下がより好ましい。当該粘度が2,000mPa・s以下であると、多軸メッシュシート(A)への含浸が十分に行われ、補強方法に用いられた際に下地視認性が向上する。粘度は、23℃、20rpmにおいて、1mPa・s以上であることがさらに好ましい。
高分子量体であるマトリックス樹脂(B)を溶解可能な有機溶剤(C)は、加熱により揮発可能な有機溶剤であれば制限なく使用することができ、2種以上を組み合わせて使用しても良い。加熱により揮発可能な有機溶剤の例としては、アセトン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール(2-プロパノール)、イソペンチルアルコール(イソアミルアルコール)、エチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(セロソルブアセテート)、エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、オルト-ジクロルベンゼン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソペンチル (酢酸イソアミル)、酢酸エチル、酢酸ノルマル-ブチル、酢酸ノルマル-プロピル、酢酸ノルマル-ペンチル(酢酸ノルマル-アミル)、酢酸メチル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,1,1-トリクロルエタン、トルエン、ノルマルヘキサン、1-ブタノール、2-ブタノール、メタノール、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノン、メチル-ノルマル-ブチルケトン、ガソリン、コールタールナフサ、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレビン油、ミネラルスピリットが挙げられる。
マトリックス樹脂(B)と、マトリックス樹脂(B)が溶解可能な有機溶剤(C)との配合比に制限はなく、任意の割合で混ぜて使用できる。しかし、有機溶剤(C)の使用量は、ラジカル重合性樹脂100質量部に対して、200質量部以下が好ましく、10~150質量部がより好ましい。
加熱処理を採る場合の別の例として、マトリックス樹脂(B)としてラジカル重合性樹脂(流動体)を使用し、加熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤(D-1)をマトリックス樹脂(B)に添加する工程を行ってもよい。そして得られた溶液を、多軸メッシュシート(A)に含浸した後に、加熱処理によりマトリックス樹脂(B)をラジカル重合させて硬化し、マトリックス樹脂(B)と多軸メッシュシート(A)とを一体化できる。熱重合開始剤(D-1)の使用量は、ラジカル重合性樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましい。
流動体の状態にあるラジカル重合性樹脂であるマトリックス樹脂(B)と、熱重合開始剤(D-1)とを含んだ溶液の粘度は、ブルックフィールド型回転粘度計により計測して、23℃、20rpmにおいて、2,000mPa・s以下が好ましく、500mPa・s以下がより好ましい。当該粘度が2,000mPa・s以下であると、多軸メッシュシート(A)への含浸が十分に行われ、補強方法に用いられた際、下地視認性が向上する。粘度は、23℃、20rpmにおいて、1mPa・s以上であることがさらに好ましい。
マトリックス樹脂(B)には非ラジカル重合性の樹脂が含まれていても良い。
加熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤(D-1)に制限はなく、例えばジハロゲン系、アゾ化合物系、有機過酸化物系等を単独、又は組み合わせて使用できる。これらの中では、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物の中では、クメンヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイルからなる1種以上が好ましい。
マトリックス樹脂(B)に還元剤が含まれていても良い。還元剤を、有機過酸化物等の熱重合開始剤(D-1)と併用すると、熱重合開始剤(D-1)を還元し、ラジカル重合の反応速度や重合生成物であるマトリックス樹脂(B)の物性が向上する。還元剤の中では、オクチル酸コバルトが好ましい。
加熱処理の方法は限定されない。一例として、流動体の状態にあるマトリックス樹脂(B)を含浸した多軸メッシュシート(A)の片面或いは両面から熱風を当て、対流により熱を与える方式を採ってもよい。又は、赤外線ヒーターやマイクロ波照射器等の電磁波の放射により熱を与える方式も一般的である。
活性エネルギー線照射を採る場合の例として、マトリックス樹脂(B)としてラジカル重合性樹脂(流動体)を用い、活性エネルギー線照射によりラジカルを発生する光重合開始剤(D-2)をそのマトリックス樹脂(B)に添加する工程を行ってもよい。そして得られた溶液を、多軸メッシュシート(A)に含浸した後に、活性エネルギー線照射によってマトリックス樹脂(B)をラジカル重合させて硬化し、マトリックス樹脂(B)と多軸メッシュシート(A)とを一体化できる。
流動体の状態にあるラジカル重合性樹脂であるマトリックス樹脂(B)と、光重合開始剤(D-2)とを含んだ溶液の粘度は、ブルックフィールド型回転粘度計により計測して、23℃、20rpmにおいて、2,000mPa・s以下が好ましく、500mPa・s以下がより好ましい。当該粘度が2,000mPa・s以下であると、多軸メッシュシート(A)への含浸が十分に行われ、補強方法に用いられた際、下地視認性が向上する。粘度は、23℃、20rpmにおいて、1mPa・s以上であることがさらに好ましい。
活性エネルギー線照射によりラジカルを発生する光重合開始剤(D-2)に制限はなく、例えばアルキルフェノン誘導体、ジハロゲン系、アゾ化合物系を単独、又は組み合わせて使用できる。これらの中では、アルキルフェノン誘導体が好ましい。アルキルフェノン誘導体の中では、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。
マトリックス樹脂(B)に還元剤が含まれていても良い。還元剤を光重合開始剤(D-2)と併用すると、光重合開始剤(D-2)を還元し、ラジカル重合の反応速度や重合生成物であるマトリックス樹脂(B)の物性が向上する。光重合開始剤(D-2)の使用量は、ラジカル重合性樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましい。
活性エネルギー線の種類は限定されず、例えば紫外線(UV)、電子線(EB)等を選択的に発する照射器や活性エネルギー線を含むあらゆるエネルギー源が使用できる。活性エネルギー線を含む照射器の例として、波長365nmの紫外線(UV)を好適に発するブラックライトやUV-LEDライト等が挙げられる。マトリックス樹脂(B)には非ラジカル重合性の樹脂が含まれていても良い。
繊維シートの製造工程においては、繊維シートをロール状に巻き取る工程を含むことが好ましい。このようにすると、高い可搬性を発揮できるだけでなく、長尺の繊維シートを製造しやすいので、補強方法を行う現場で好適に使用できる。
繊維シートをロール状に巻き取る工程においては、繊維シート上に剥離紙を積層し、同時に巻き取るようにしてもよい。剥離紙を積層することで、シート間のブロッキングが抑制できる。
繊維シートの製造工程において多軸メッシュシート(A)に、流動体の状態にあるマトリックス樹脂(B)を含浸するための設備は、特に限定されず任意のものを使用できる。含浸させる設備としては、グラビアコーター、ディップコーター、コンマコーター、トップフィードコーター、バーコーター、ナイフコーター、ダイコーター、リバースコーター、含浸コーター、スロットダイコーター、バキュームダイコーター等が挙げられる。この中で多軸メッシュシート(A)へのマトリックス樹脂(B)の含浸性が良好なため、含浸コーターが好適である。
また繊維シートの製造工程において、多軸メッシュシート(A)にマトリックス樹脂(B)を含浸させ一体化させる方法や設備は、2種以上の異なる方式を組み合わせて使用しても良い。
<コンクリート構造物用接着剤(E)>
コンクリート構造物用接着剤(E)(以下、単に「接着剤(E)」とも称する)を、上記繊維シートに適用して一体化することで、コンクリート構造物表面に補強層を形成できる。
繊維シートと接着剤(E)を用いて得られる補強層としてのFRPシートの引張強度は、JIS A 1191:2004に準拠した方法で作製したB形試験片を用いて測定した場合、単位長さあたり少なくとも150kN/m以上が好ましく、175kN/m以上がより好ましい。引張強度が150kN/m以上であることで、従来の炭素繊維シートやアラミド繊維シートを用いたコンクリート構造物の補強方法に匹敵する補強性能を発現できる。
繊維シートが含む多軸メッシュシート(A)と接着剤(E)との屈折率の差は、JIS K 7142:2014の第4.1節に係るA法に従って、波長589nmの光源を用いて計測した際に、0.04以下であることが好ましく、0.025未満であることがより好ましい。当該屈折率の差が0.04以下であると、補強方法に用いられた際、下地視認性が向上する。
接着剤(E)は、(メタ)アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の成分を、少なくとも50質量%以上含むことが好ましい。接着剤(E)としては、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂からなる群の1種以上が好ましい。これらの樹脂は、繊維シートと一体化してFRPを形成した際に、高い引張強度を発現できる。(メタ)アクリル樹脂としては、ラジカル重合性樹脂である(メタ)アクリル樹脂であるマトリックス樹脂(B)と同様の成分が挙げられる。またエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ化合物100質量部と硬化剤10~100質量部を混合したものであってよい。エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等が挙げられる。硬化剤としては、変性アミン等のアミン系硬化剤等が挙げられる。
接着剤(E)は、性能を低下させない範囲で、無機充填材、オイル、ゴム、粘度調整剤、顔料、染料、可塑剤、重合開始剤、増感剤、触媒、重合禁止剤、ワックス、粘着付与剤、シランカップリング材、酸化防止剤、難燃剤、有機溶剤等を添加できる。
接着剤(E)の硬化方法は限定されない。接着剤(E)の硬化方法としては、揮発成分が揮発することで塗膜を形成する方法、樹脂の成分が空気中の水分と反応することで硬化する方法、主剤と硬化剤の二剤(乃至はそれ以上)を混合させ化学反応により硬化させる方法、熱や光等の外部エネルギーを与えて硬化させる方法等を用いてよい。これらの中では、施工後の強度や、コンクリート面への施工性の点で、二剤を混合させ化学反応により硬化させる方法が好ましい。
接着剤(E)としては2種以上を併用できる。2種以上を併用する場合、2種以上の接着剤を混合して使用しても良いし、或いは、1種目の接着剤を塗工した後に続けて2種目以降を更に適用しても良い。
接着剤(E)の粘度は特に限定されないが、ブルックフィールド型回転粘度計を用いて計測した粘度が、23℃、20rpmにおいて、20,000mPa・s以上であれば、コンクリート構造物の天井や壁面において接着剤(E)を必要な厚みを以って塗工でき、補強層の形成ができるため、好適である。
<補強層>
本発明の実施形態に係る補強方法では、上述した繊維シートを用いて、補強層をコンクリート構造物の表面に形成できる。
当該補強層は、JIS K 7375:2008に記載の方法で測定した全光線透過率が5%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましい。全光線透過率が5%以上であることで補強方法に用いられた際、十分な下地視認性を得られる。
補強層の形成に当たり、必要に応じて事前にコンクリートの下地処理を行うことが好ましい。下地処理を行うことで長期に亘って補強層の接着性を担保できる。下地処理は、レイタンスや表面の汚れ、劣化した素地の除去をするために行われるものであり、例えばウォータージェット処理、サンドブラスト処理、サンダーケレン処理、ワイヤーブラシ等の公知の技術を用いてよい。
補強層の形成に当たり、必要に応じて事前に構造物の断面修復を行うことが好ましい。断面修復を行うことで、補強層の接着性を担保できる。断面修復材料としては、コンクリート、モルタル、セメントペースト、グラウト材、ポリマーセメントモルタル、樹脂モルタル等の公知の材料が使用でき、これらを組み合わせて使用しても良い。
補強層の形成に当たり、必要に応じて、予めプライマーを構造物に塗工することが好ましい。プライマーを塗工することで、コンクリート構造物と補強層との接着性を向上させるだけでなく、ひび割れ等の劣化したコンクリート構造物にプライマーが含浸し、構造物を健全化する。コンクリート構造物より滲出する水分、アルカリ金属類、気体等を阻害し、長期に亘って補強層の性能を担保できる。プライマーとしては、アクリル樹脂系プライマー、エポキシ樹脂系プライマー、ビニルエステル樹脂系プライマー、シリコーン樹脂系プライマー、無機系プライマー等の公知の材料が使用でき、これらを組み合わせて使用しても良い。これらの中では、ガードナー色数8以下の材料が好ましい。プライマーの塗布量は、コンクリート構造物の状態により変わるが、一般的には、0.05~1.0kg/m2の範囲であってよい。塗布にあたっては、ローラー、刷毛、コテ、ヘラ等の塗付けや、スプレー塗装等公知の方法を使用して適宜行える。
補強層の形成に当たり、必要に応じて、事前に構造物の不陸調整を行うことが好ましい。不陸調整を行うことで、コンクリート構造物に対して補強層を均一に施工でき、大面積に亘り、安定的に補強性能を発揮できる。不陸調整に使用可能な不陸調整材には、樹脂と骨材を併用した樹脂モルタルやポリマーセメントモルタル等の公知の材料が使用でき、これらを組合せて使用しても良い。これらの中では、ガードナー色数8以下の材料が好ましい。また、不陸調整材の塗布量は、プライマー表面の凹凸状態により変わるが、一般的には、1.8kg/m2未満の範囲であってよい。不陸調整材は、コテやヘラによる塗付け、スプレー塗装等公知の方法を使用して適宜塗工できる。
補強層の形成にあたっては、液体状の接着剤(E)を硬化させ、コンクリート構造物補強用繊維シートを固定することで形成できる。液体状の接着剤(E)の施工方法には、ローラー、コテ、ヘラによる塗付け、スプレー塗装等の既知の方法を使用できる。液体状の接着剤(E)を塗工した後、硬化前に連続して繊維シートを貼り合わせ、繊維シートに接着剤(E)が含浸、硬化してFRP化することで、補強性能を発揮できる。接着剤(E)は一度に全工程分塗工しても良く、二度以上に分けて塗工しても良いが、二度以上に分けて塗工することが好ましい。二度以上に分けて塗工することで、液だれ等を防止しつつ、繊維シートのFRP化に必要な質量の樹脂を塗工できる。接着剤(E)の塗布量は、繊維シート1枚に対し、0.2~2.0kg/m2が好ましく、0.5~1.4kg/m2がより好ましい。塗布量が0.2kg/m2以上であると、繊維シートを適切に固定できる。塗布量が2.0kg/m2以下であると、補強方法に用いられた際、下地視認性が向上する。
繊維シートの貼り合わせの方法は限定されないが、脱泡ローラーを用いることが好ましい。脱泡ローラーを用いることで、接着剤(E)や繊維シート内の気泡が取り除かれ、接着剤(E)が含浸しやすくなり、補強方法に用いられた際、十分な下地視認性が得られる。
補強層の作成にあたっては、繊維シートを2枚以上積層して用いてもよく、繊維シートを2枚積層することがより好ましい。繊維シートを2枚以上積層することで、既存の炭素繊維シートやアラミド繊維シートを用いた補強方法と同等の補強性能を発揮できる。繊維シートは一度に2枚以上貼り付けてもよく、二度以上に分けて1枚ずつ貼り付けてもよいが、二度以上に分けて1枚ずつ貼り付けることが好ましい。二度以上に分けて1枚ずつ貼り付けることで、自重による繊維シートの落下を抑制できる。
補強層には、アンカーピン、アンカーボルト等の公知の技術を用いて、繊維シートの落下防止策を講じても良い。アンカーピン、アンカーボルトの使用点数(本数)は制限されないが、コンクリート構造物の下地視認性を考慮し、アンカーピン、アンカーボルトによって補強層が覆われる面積が、補強層全体の面積の20%未満となることが好ましく、10%未満となることがより好ましい。
補強層の外側には更に、保護層を形成しても良い。保護層は保護塗料を塗工することで形成できる。
保護塗料の硬化方法は限定されない。例えば揮発成分が揮発することで塗膜を形成する方法、樹脂の成分が空気中の水分と反応することで硬化する方法、2種以上の成分を混合させ化学反応により硬化させる方法、熱や光等の外部エネルギーを与えて硬化させる方法等を用いてよい。
保護塗料の塗布量は、固形分換算で0.01~1.0kg/m2の範囲が好ましく、0.02~0.2kg/m2の範囲がより好ましい。保護塗料は、ローラー、刷毛、コテ、ヘラによる塗付け、スプレー塗装等公知の方法を使用し適宜塗工できる。
或る実施形態では、上記補強層の他に、塗料、接着剤、繊維シート、フィルム、樹脂成形物等の材料の層、及びこれらを組合せた材料の層が積層されても良い。
好ましい実施形態では、上述した補強方法において得られる補強層を、日本国の建築基準法に基づく防耐火性能試験・評価業務方法書に定めるガス有害性試験(複数匹のマウスを用いる)に供した際に、マウスの平均行動停止時間が6.8分以上であるようにできる。マウスの平均行動停止時間とは、試験開始からマウスが行動を停止するまでの平均時間をいい、平均時間ということもある。マウスの平均行動停止時間が上記の範囲であれば、トンネル火災を想定した際に、避難者が有害な燃焼ガスに巻き込まれて生命の危険にさらされるおそれが少なく、トンネルでの使用に適切である効果が得られる。
好ましい実施形態では、上述した補強方法において得られる補強層を、NEXCO試験法738における延焼性試験に供した際に、消炎時間が30秒以下で、燃焼による火災の先端が着火点より600mm未満であるようにできる。その場合、トンネル火災を想定した際に、避難者が延焼により生じた火炎に巻き込まれて生命の危険にさらされるおそれが少なく、トンネルでの使用に適切である効果が得られる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<多軸メッシュシート>
下記表1に記載の原料(ヤーン)と糊剤(と、含む場合は熱融着糸としてのナイロン繊維と)を介して束ねて、集束剤(表中の「その他」に相当)としてビニルシラン系シランカップリング剤を含有するエマルジョンを用い、ビームを得た。ビームを逐次裁断しながら単軸、二軸、三軸のいずれかに裁縫した。その後、脱油、表面処理工程を経てロール状に巻き取って、No.1-1~1-13の多軸メッシュシートを得た。得られた多軸メッシュシートの目開きをノギスで計測し、下記表に示した。また、得られた多軸メッシュシートの屈折率を、JIS K 7142:2014の第4.1節に係るA法に従って、波長589nmの光源を用いて測定した。その結果を下記表に示す。
<ガラス繊維>
上述した多軸メッシュシートのうち、原料としてガラス繊維ヤーンを用いた。そのヤーンは下記表2に示すいずれかの組成のガラス繊維を溶融して紡糸して得た。表中のその他の成分は不純物であり、主にAl23であった。
<マトリックス樹脂>
下記表3に示す市販のモノマー又はポリマーベースの設計品を使用し、マトリックス樹脂No.3-1~3-9を得た。これを上記の多軸メッシュシート(A)と、表中に示す製造方法により一体形成させ、繊維シートを形成した。含浸溶液の粘度は、ブルックフィールド型回転粘度計を用いて、23℃、20rpmにおいて測定した。その結果を下記表に示す。
<アクリル樹脂重合体A>
ビスコート#160(商品名、大阪有機化学社製、ベンジルアクリレート)100質量部とナイパーNS(商品名、日油社製、過酸化ベンゾイルサスペンジョン溶液)2質量部の混合物を120℃で10分間加熱し形成した重合体。
<アクリル樹脂重合体B>
ビスコート#155(商品名、大阪有機化学社製、シクロヘキシルアクリレート)100質量部とナイパーNS(商品名、日油社製、過酸化ベンゾイルサスペンジョン溶液)2質量部の混合物を120℃で10分間加熱し形成した重合体。
<アクリル樹脂単量体>
ビスコート#160(商品名、大阪有機化学社製、ベンジルアクリレート)
<酢酸ビニール樹脂>
水の揮発によって硬化する一液硬化型接着剤CH18(商品名、コニシ社製、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン型接着剤)を製品荷姿のまま用いた。
上記表3に示す製造方法は以下のとおりである。またコンクリート構造物補強用繊維シートは下記の方法で作製した。また、コンクリート構造物補強用繊維シート形成後の目開きをノギスで計測し、下記表5に示した。
(※3-1)有機溶剤(C)での希釈及び揮発による方法
マトリックス樹脂(B)に有機溶剤(C)としてアセトン(大伸化学社製)を表3に示した量添加して希釈し、含浸溶液を得た。希釈したマトリックス樹脂をディップコーターに投入し、ロールに巻かれた幅1m×長さ30m多軸メッシュシート(A)を順次繰り出して、マトリックス樹脂(B)の固形分量が目標質量となるようディッピングし、その後ロールで搾り取った。続いて120℃の熱乾燥炉(赤外線ヒーター)で5分間加熱し、有機溶剤(C)を揮発させた。その後シート面が接触しないようにはく離処理したPETフィルムを巻き込みながら、再度ロール状に巻き取り、繊維シートを得た。
(※3-2)熱重合開始剤(D-1)の添加及び熱重合による方法
マトリックス樹脂(B)に熱重合開始剤(D-1)としてナイパーNS(商品名、日油社製、過酸化ベンゾイルサスペンジョン溶液)を表3に示した量添加して、含浸溶液を得た。開始剤を添加したマトリックス樹脂をディップコーターに投入し、ロールに巻かれた幅1m×長さ30m多軸メッシュシート(A)を順次繰り出して目標質量となるようディッピングし、その後ロールで搾り取った。続いて120℃の熱乾燥炉(赤外線ヒーター)で5分間加熱し、マトリックス樹脂(B)をラジカル重合させた。その後シート面が接触しないようにはく離処理したPETフィルムを巻き込みながら、再度ロール状に巻き取ることで繊維シートとした。
(※3-3)光重合開始剤(D-2)の添加及び活性エネルギー線照射による方法
マトリックス樹脂(B)に光重合開始剤(D-2)としてIrgacure 184(商品名、IGM Resins B.V.社製、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)を表3に示した量添加して、含浸溶液を得た。開始剤を添加したマトリックス樹脂をディップコーターに投入し、ロールに巻かれた幅1m×長さ30m多軸メッシュシート(A)を順次繰り出して目標質量となるようディッピングし、その後ロールで搾り取った。続いて酸素による重合阻害を防止するため、はく離処理したPETフィルムでシート両面を挟み込み、続いてピーク発光波長355nm、シート面の照度が1.1mW/cm2となるUV-LEDライトを用いて紫外光を5分間照射し、マトリックス樹脂(B)をラジカル重合させた。その後、再度ロール状に巻き取ることで繊維シートを得た。
(※3-4)併用系
上記(※3-1)と(※3-2)の手法を併用して、同様に繊維シートを得た。
<コンクリート構造物用接着剤>
下記表4に示す市販の接着剤或いはモノマーベースの設計品を使用し、接着剤(E)としてNo.4-1~4-7を得た。その屈折率を、JIS K 7142:2014の第4.1節に係るA法に従って、波長589nmの光源を用いて測定した。その結果も下記表に示す。
<アクリル系接着剤A>
ビスコート#160(商品名、大阪有機化学社製、ベンジルアクリレート)/パークミルH(商品名、日油社製、クメンヒドロペルオキシド)/オクチル酸コバルト(大崎工業社製)を質量部100/2/2の割合で配合し、レドックス重合によって硬化させる樹脂組成物を用いた。
<アクリル系接着剤B>
ビスコート#155(商品名、大阪有機化学社製、シクロヘキシルアクリレート)/パークミルH(商品名、日油社製、クメンヒドロペルオキシド)/オクチル酸コバルト(大崎工業社製)を質量部100/2/2の割合で配合し、レドックス重合によって硬化させる樹脂組成物を用いた。
<エポキシ系接着剤>
jER828(商品名、三菱ケミカル社製、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル)/ST11(商品名、三菱ケミカル社製、変性アミン)を質量部100/60の割合で配合し、グリシジル基とアミノ基の重付加反応によって硬化させる樹脂組成物。
<酢酸ビニール系接着剤>
水の揮発によって硬化する一液硬化型接着剤CH18(商品名、コニシ社製、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン型接着剤)を製品荷姿のまま用いた。
<水ガラス>
水の揮発によって乾燥硬化する、JIS K 1408:1966規定の3号水ガラス(富士化学株式会社製)を用いた。
<補強方法の施工>
補強層を施工する対象物として、下記に示す試験基材を作成した。
試験基材
(1)下地視認性評価用モルタル試験板 (JIS R 5201:2015に準拠)
モルタル試験板は、JIS R 5201:2015の第11.5節に係る供試体の作り方に準拠して作製した。150mm×70mm×10mmのモルタル片の被着面(150mm×70mmの面)を#150のペーパーサンダーにてケレンしてレイタンスを除去し、粉塵をエアブローで除去した。被着面の長手方向に対し0.2mm巾、0.5mm巾、1.0mm巾の3本のひび割れ模様を黒色、HBの鉛筆で書き込んだ。以下、この試験板を「視認性評価用モルタル片」と表記する。
(2)耐アルカリ性評価用モルタル試験板 (JIS R 5201:2015に準拠)
モルタル試験板は、JIS R 5201:2015の第11.5節に係る供試体の作り方に準拠して作製した。150mm×70mm×10mmのモルタル片の被着面(150mm×70mmの面)を#150のペーパーサンダーにてケレンしてレイタンスを除去し、粉塵をエアブローで除去した。以下、この試験板を「耐アルカリ性評価用モルタル片」と表記する。
(3)施工性評価用/コンクリート接着性評価用コンクリート平板 (JIS A 5371:2016に準拠)
コンクリート平板は、JIS A 5371:2016の附属書B(規定)舗装・境界ブロック類の平板に準拠して作製した。300mm×300mm×60mmのコンクリート平板の被着面(300mm×300mmの面)を#150のペーパーサンダーにてケレンしてレイタンスを除去し、粉塵をエアブローで除去した。こうして得た平板を以下、「コンクリート平板」と表記する。
(4)FRP強度評価用試験片
JIS A 1191:2004に準拠(後述)。
(5)ガス有害性評価用ケイ酸カルシウム板 (JIS A 5430:2018に準拠)
ケイ酸カルシウム板は、JIS A 5430:2018のケイ酸カルシウム板(タイプ2)である。220mm×220mm×10mmのケイ酸カルシウム板の被着面(220mm×220mmの面)表面の粉塵をエアブローで除去して得た。
(6)延焼性評価用ケイ酸カルシウム板 (JIS A 5430:2018に準拠)
ケイ酸カルシウム板は、JIS A 5430:2018のケイ酸カルシウム板(タイプ2)である。900mm×600mm×12mmのケイ酸カルシウム板の被着面(900mm×600mmの面)表面の粉塵をエアブローで除去して得た。
以下の表5に示す多軸メッシュシート、マトリックス樹脂、接着剤の組み合わせで、実施例1~実施例39及び比較例1~比較例4に係る補強層を、上記のいずれかの試験基材上にそれぞれ作成した。
まず表5に示す多軸メッシュシートとマトリックス樹脂の組み合わせ(表1~3も参照)にて、繊維シートを作成した。多軸メッシュシートの積層枚数も表5に示す。
表5に示す補強性能のうち、「下地の視認性」「耐アルカリ性」「施工性」「コンクリート接着性」「ガス有害性」「延焼性」を評価した試験体は、下記の手順で形成した。
プライマーとしてデンカ社製アクリル系ひび割れ注入補修材デンカDK550-003Rを、対応する試験基材にローラーで塗布した(塗布量0.15kg/m2)。
プライマー塗布後15分放置し、補強層を形成した。補強層はまず、下塗りとして表4、表5に示した接着剤をゴムベラ又は金ゴテで試験基材に施工し(塗布量0.6kg/m2)、ただちに、上述した繊維シートを接着し、脱泡ローラーでしごいて接着剤を繊維シートに含浸させた。
次に、直ちに繊維シート上に、上塗り樹脂として表4、表5に示した接着剤を更にゴムベラ又は金ゴテで施工し(塗布量0.6kg/m2)、20℃、24時間、硬化養生を行い、補強層を形成した。
補強方法の性能のうち「FRP強度」評価用の試験片は下記の手順で形成した。
JIS A 1191:2004のB形試験片の作製方法に従って、表4、表5に示すコンクリート構造物用接着剤を厚みが2mmになるよう流し込み、厚み方向の中央に表1、表2、表5に示す繊維シートが配置されるよう静置し、20℃、7日間硬化養生を行ったあと、引張試験用金属タブ(SPCC試験片)を鋼板用アクリル接着剤(デンカ社製「DKP63」)で取り付け、FRP試験片とした。
<補強性能の評価>
補強性能の評価として、表5に示すように「下地の視認性」「耐アルカリ性」「施工性」「コンクリート接着性」「FRP強度」「ガス有害性」「延焼性」の評価を実施した。評価結果はいずれも表5に示した。
<「下地の視認性」の評価方法>
補強層を形成した後、目視でひび割れを観察し、下記の基準で評価した。
○ 0.2mm、0.5mmのひび割れが全域に渡って目視確認可能であった。
△ 0.5mmのひび割れが全域に渡って目視確認可能であるが、0.2mmのひび割れは一部又は全部が目視確認できなかった。
× 0.2mm、0.5mmの何れのひび割れとも、一部又は全部が目視確認できなかった。
<「耐アルカリ性」の評価方法>
補強層を形成した耐アルカリ性評価用モルタル片を、飽和水酸化カルシウム溶液に28日間水没させ、引き上げたあと、表面に生じた変状を直ちに目視で観察し、下記の基準で評価した。
○ 補強層に変色、割れ、剥がれ、膨れ、亀裂、流出等の変状が見られなかった。
△ 補強層に変色、割れ、剥がれ、膨れ、亀裂、流出等の何れかの変状が見られた。
<「施工性」の評価方法>
補強層を形成したコンクリート平板の300mm×60mmの面を地面に接触させ、被着面(補強層の施工面)が地面と垂直となるように設置した。補強層形成中から、硬化が完了するまでの間の表面の状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○ シートのはがれ、ずり落ち、落下等が無く、樹脂のダレ等も発生しなかった。
△ 軽微なシートのずり落ち、樹脂のダレ等が観察された。
× シートのはがれ、落下、或いは重大なシートのずり落ち、樹脂のダレ等が観察された。
<「コンクリート接着性」の評価方法>
形成した補強層の最外層表面に、40mm×40mmの鋼製冶具をアクリル系樹脂モルタル接着剤(デンカ社製「デンカダイナN」)で貼り付けて、該冶具に沿ってコンクリート平板に達するまで切込みを入れた。その後、該冶具を、建研式引張接着試験器を用いて貼り付け面に対して垂直に引張り、付着強度(N/mm2)を測定した。下記の基準で評価した。
○ 2.0N/mm2以上 (阪神高速道路株式会社補修要領による表面保護工(中防食C種)適合基準)
△ 1.5N/mm2以上2.0N/mm2未満 (NEXCO橋梁構造物はく落防止工法適合基準)
× 1.5N/mm2未満
<「FRP強度」の評価方法>
FRP強度の試験はJIS A 1191:2004に準拠して実施し、FRP引張荷重(kN)を算出した。その後、単位長さ当たりのFRP引張強度(kN/m)を下記式1に従い算出した。
[式1]
単位長当たりのFRP引張強度(kN/m)
= FRP引張荷重(kN) × 試験片中の繊維束数 (本)
÷ 繊維シート1m巾あたりの引張方向に配列した繊維束数 (本/m)
更に補強層中のFRP強度を概算するため、下記式2の通り、式1の単位長当たりのFRP引張強度(kN/(m・枚))に、補強層中の繊維シートの貼り合わせ枚数(枚)を乗じた換算FRP引張強度(kN/m)も算出した。
[式2]
換算FRP引張強度(kN/m)
= [式1]で算出した単位長当たりのFRP引張荷重(kN/(m・枚))
× 繊維シートの貼り合わせ枚数 (枚)
FRP引張強度は下記の基準で評価した。
○ 換算FRP引張強度(kN/m)が350kN/m以上
△ 換算FRP引張強度(kN/m)が300kN/m以上350kN/m未満
× 換算FRP引張強度(kN/m)が300kN/m未満
<「ガス有害性」の評価方法>
ガス有害性試験は、日本国の建築基準法に基づく防耐火性能試験・評価業務方法書に定める、マウスを使用したガス有害性試験において、マウスの平均行動停止時間(Xs)を算出し、下記の基準で評価した。上記の防耐火性能試験・評価業務方法書としては例えば、一般財団法人建材試験センターが公開しているものがある。
○ Xsが7.2分以上
△ Xsが6.8分以上7.2分未満
× Xsが6.8分未満
<「延焼性」の評価方法>
NEXCO試験法738に定める延焼性試験を用い、消炎時間及び燃焼による火災の先端の着火点を記録し、下記の基準で評価した。
○ 消炎時間が10秒以下で、且つ燃焼による火災の先端が着火点より500mm未満であった。
△ 消炎時間が30秒以下で、且つ燃焼による火災の先端が着火点より600mm未満であった。
× 消炎時間が30秒を超えるか、或いは燃焼による火災の先端が着火点より600mm以上であった。
(※1):FRPを形成できなかった
表5からわかるように、実施例はいずれも良好~優秀な補強性能を示した。一方、比較例1、3には下地視認性に欠陥があった。比較例2はFRP強度が不足した。比較例4はFRPを形成できなかった。すなわち比較例はいずれも、補強方法の実用に堪えないものであった。
本発明は、コンクリート構造物の補強、例えば、既設のコンクリート構造物の補強に使用できる。

Claims (18)

  1. コンクリート構造物の補強方法に用いられるコンクリート構造物補強用繊維シートであり、
    フィラメントを組み合わせた多軸メッシュシート(A)と、マトリックス樹脂(B)とが一体化された構造を有し、且つ
    前記多軸メッシュシート(A)の目付量が500g/m2~1000g/m2である
    コンクリート構造物補強用繊維シート。
  2. 前記多軸メッシュシート(A)の目開きが1~25mmである請求項1に記載のコンクリート構造物補強用繊維シート。
  3. 前記多軸メッシュシート(A)が、少なくとも一軸方向に熱可塑性樹脂を含有する請求項1又は請求項2に記載のコンクリート構造物補強用繊維シート。
  4. 前記多軸メッシュシート(A)が含有する熱可塑性樹脂の含有量が、50g/m2以下である請求項3に記載のコンクリート構造物補強用繊維シート。
  5. 前記多軸メッシュシート(A)が、少なくとも二軸以上のガラス繊維シートであり、前記ガラス繊維シートが、少なくともZrO2を12質量%以上、及びR2O(RはLi、Na及びKからなる群から選択される少なくとも1種)を10質量%以上含有する請求項1~請求項4の何れか一項に記載のコンクリート構造物補強用繊維シート。
  6. 前記マトリックス樹脂(B)が、(メタ)アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種以上の成分を、少なくとも50質量%以上含有する請求項1~請求項5の何れか一項に記載のコンクリート構造物補強用繊維シート。
  7. 前記マトリックス樹脂(B)の含有量が、20g/m2~400g/m2である請求項1~請求項6の何れか一項に記載のコンクリート構造物補強用繊維シート。
  8. 前記多軸メッシュシート(A)と前記マトリックス樹脂(B)の屈折率の差が、JIS K 7142:2014の第4.1節に係るA法に従って、波長589nmの光源を用いて測定した際に0.04以下である請求項1~請求項7の何れか一項に記載のコンクリート構造物補強用繊維シート。
  9. 目開きが1~25mmである請求項1~請求項8の何れか一項に記載のコンクリート構造物補強用繊維シート。
  10. フィラメントを組み合わせた目付量が500g/m2~1000g/m2である多軸メッシュシート(A)に、マトリックス樹脂(B)を含浸させるステップと、
    含浸させた前記マトリックス樹脂(B)を、加熱処理及び/又は活性エネルギー線照射処理によって硬化及び/又は非流動化させることで、前記多軸メッシュシート(A)と前記マトリックス樹脂(B)とを一体成型し、繊維シートを得るステップと
    を含むコンクリート構造物補強用繊維シートの製造方法。
  11. 前記マトリックス樹脂(B)が非重合性の高分子量体であり、
    高分子量体である前記マトリックス樹脂(B)を、前記マトリックス樹脂(B)を溶解可能である有機溶剤(C)により希釈するステップと、
    前記多軸メッシュシート(A)に前記マトリックス樹脂(B)を含浸させた後に、加熱処理により前記有機溶剤(C)を揮発させるステップと
    を更に含む請求項10に記載の製造方法。
  12. 前記マトリックス樹脂(B)がラジカル重合性樹脂であり、
    加熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤(D-1)を、前記マトリックス樹脂(B)に添加するステップと、
    前記多軸メッシュシート(A)に前記マトリックス樹脂(B)を含浸させた後に、加熱処理により前記マトリックス樹脂(B)をラジカル重合させるステップと
    を更に含む請求項10に記載の製造方法。
  13. 前記マトリックス樹脂(B)がラジカル重合性樹脂であり、
    活性エネルギー線照射によりラジカルを発生する光重合開始剤(D-2)を、前記マトリックス樹脂(B)に添加するステップと、
    前記多軸メッシュシート(A)に前記マトリックス樹脂(B)を含浸させた後に、活性エネルギー線照射処理により前記マトリックス樹脂(B)をラジカル重合させるステップと
    を更に含む請求項10に記載の製造方法。
  14. 前記繊維シートをロール状に巻き取るステップを更に含む、請求項10~13の何れか一項に記載の製造方法。
  15. 請求項1~請求項9の何れか一項に記載の繊維シート、又は請求項10~14の何れか一項に記載の製造方法により得られた繊維シートに、コンクリート構造物用接着剤(E)を適用するステップと、
    前記繊維シートをコンクリート構造物表面に設置して、前記コンクリート構造物用接着剤(E)を硬化させ、前記コンクリート構造物表面に補強層を形成するステップと
    を含み、
    前記補強層の引張強度が、JIS A 1191:2004に準拠した方法で作製したB形試験片を用いて測定した際に、単位長さあたり少なくとも150kN/m以上であるコンクリート構造物の補強方法。
  16. 前記補強層の、JIS K 7375:2008に記載の方法で測定した全光線透過率が、少なくとも5%以上である請求項15に記載の補強方法。
  17. 前記多軸メッシュシート(A)と前記コンクリート構造物用接着剤(E)の屈折率の差が、JIS K 7142:2014の第4.1節に係るA法に従って、波長589nmの光源を用いて測定した際に、0.04以下である請求項15又は16に記載の補強方法。
  18. 前記コンクリート構造物用接着剤(E)が、(メタ)アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択された少なくとも1種以上の成分を、少なくとも50質量%以上含有する請求項15~17の何れか一項に記載の補強方法。
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