JP2009263893A - コンクリート改修層構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】既設コンクリート表面に塗付される打ち継ぎ用接着剤層と、これに接して塗付される下塗りとしてのモルタル又はポリマー配合モルタル層と、当該モルタル又はポリマー配合モルタル層に貼り付ける補強用網材と、当該補強用網材と下塗りのモルタル又はポリマー配合モルタル層に塗付されるモルタル層間接着組成物層と、当該モルタル層間接着組成物層に接して塗付されるモルタル又はポリマー配合モルタル層とから成る既設コンクリート改修層構造において、モルタル層間接着組成物がエポキシ樹脂と水分散性ポリアミンエポキシアダクトと水硬性セメントとポリオレフィン樹脂系パルプ状物質とから成ることを特徴とするコンクリート改修層構造である。
【効果】モルタル又はポリマー配合モルタルのセメント分の水和を阻害せず、補強用網材部分でモルタル組成物の層間剥離が生じないコンクリート改修層構造となる。
【選択図】図1
【効果】モルタル又はポリマー配合モルタルのセメント分の水和を阻害せず、補強用網材部分でモルタル組成物の層間剥離が生じないコンクリート改修層構造となる。
【選択図】図1
Description
本発明は、鉄筋コンクリート造建築物や構造部材、又はコンクリート製の2次製品の改修によってコンクリート表面に形成されるコンクリート改修層構造であって、詳しくは既設コンクリート表面に打ち継ぎ用接着剤を塗付し、下塗りとしてモルタル又はポリマー配合モルタルを塗付し、補強用網材を貼り付けた後、モルタル層間接着組成物を塗付し、当該モルタル接着組成物に接してモルタル又はポリマー配合モルタルを塗付することによって形成されるコンクリート改修層構造に関するものである。
従来、鉄筋コンクリート造建築物や構造部材、又は農水路等に使用されるコンクリート製の2次製品である水路の改修は、建造物の壁面の亀裂を防止する表装方法として、建造物の壁面にガラス繊維製織物塗装下地材を貼着し、ついでその貼着された下地材の表面に塗材を施すことから成り、ガラス繊維製塗装下地材を建造物の壁面に貼着するための接着剤として、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いた溶剤溶液型接着剤、水溶液型接着剤又は水性分散液型接着剤やセメントなどの無機質系接着剤が使用でき、壁面に貼着したガラス繊維製塗装下地剤の表面に塗装する塗材として、有機系、無機系、エマルジョン系、水性系、溶剤系などの塗材や、エマルジョン塗料、樹脂入りセメント系塗材が使用できることが開示されている(特許文献1)。
また無機質硬化物である外壁の改修工法として、改修部分全面に合成樹脂を混入した中塗り用モルタル組成物を塗着する共に無機質硬化物を補強する網材を点付けして押圧することにより網材を埋設した後、透湿性を有する上塗りモルタル組成物を塗着することからなる改修方法が開示されている(特許文献2)。
さらには、下地コンクリート表面に樹脂系水性接着剤を塗付し、同樹脂系水性接着剤が乾燥した後に酢酸ビニル‐エチレン共重合体エマルジョンを含有するモルタルを塗工する下地塗工工程と、同下地塗工工程にて塗工した下地塗工面にガラス繊維製ネットを張設する補強工工程と、同補強工工程にて張設したガラス繊維製ネット上に酢酸ビニル‐エチレン共重合体エマルジョンを含有するモルタルを塗工する仕上塗工工程から成る改修方法が開示されている(特許文献3)。
しかし、これらの特許文献1乃至特許文献3に開示されている方法では、既存コンクリート表面に形成される塗装材の断面構造としては、モルタル組成物内にガラス繊維製網材が層状に介在することとなり、モルタル組成物はガラス繊維製網材部分で断面欠損を生じ、結果としてガラス繊維製網材部分が強度的に弱くなる。このため、例えばコンクリート構造材内部のアルカリ骨材反応等によりコンクリート構造材表面で膨張破壊が生じて、一体的に形成されたモルタル組成物とガラス繊維製網材の複合体に曲げ方向の強い力が加わると、ガラス繊維製網材部分でモルタル組成物の層間剥離が生じるという課題があった。
一方、既設コンクリート又はモルタル等下地に新たなコンクリート又はモルタルを打ち継ぐ方法として、エポキシ樹脂と、ポリアミン系硬化剤とを含有し、またはエポキシ樹脂と、ポリアミン系硬化剤と、ポリサルファイドポリマーと、3級アミン化合物とを含有し、ポリアミン系硬化剤をエポキシ樹脂1当量に対し、0.1〜0.6当量配合したプライマー組成物を既設コンクリート面に塗付する方法が開示されている(特許文献4、特許文献5)。
しかしポリアミン系硬化剤では、下塗りとして塗付しているモルタル及び上塗りとして塗付するモルタルの水和を阻害する場合があり、また下地表面の含水率が高いコンクリート等に対しては打ち継ぎ部の接着性が不十分であり、下塗りとしてモルタルを既設コンクリート面に塗付した後、補強用網材を介在させて上塗りとしてモルタルを更に塗付するという本発明にかかるコンクリートの改修においては、下塗りを十分に乾燥することができないことより、下塗りのモルタルは湿潤状態にあり、また未水和部分が残っている場合もあり、このモルタルに上記プライマー組成物を塗付しても、下塗りのモルタルと上塗りのモルタルは十分には接着せず、補強用網材部分でモルタル組成物の層間剥離が生じるという課題があった。
同様に、硬化コンクリートに新たなコンクリートを打ち継ぐ場合において、硬化コンクリートの打ち継ぎ面に、分散質としてアクリル酸エステル系単量体単位、メタアクリル酸エステル系単量体単位、スチレン系単量体単位及びジエン系単量体単位の中から選ばれた少なくとも一種の単量体単位からなる単独重合体又は共重合体を含有し、かつ分散剤として末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール系重合体を含有する水性エマルジョンからなるセメントモルタル用打ち継ぎ材を打ち継ぎ面に塗付し、皮膜の高い耐アルカリ性によって新たに打設されるコンクリートの水分の既設コンクリート側への移行を抑制し、新たなコンクリートの接着力を向上させることが開示されている(特許文献6)。
しかしこの方法によるモルタルの打ち継ぎは、既設コンクリート表面が湿潤している場合は塗付された水性エマルションの造膜が十分に行われず、その状態で新たなモルタルが打設されると、造膜が不十分な部分が脆弱層となり、打ち継ぎ部におけるモルタルの接着性が低下し、上記同様下塗りとしてモルタルを既設コンクリート面に塗付した後、補強用網材を層状に介在させて上塗りとしてモルタルを更に塗付するという本発明にかかるコンクリートの改修においては、下塗りを十分に乾燥することができないことより、下塗りのモルタルは湿潤状態にあり、このモルタルに上記エマルジョンを塗付しても、下塗りのモルタルと上塗りのモルタルは十分には接着せず、補強用網材部分でモルタル組成物の層間剥離が生じるという課題があった。
特開昭59-72349号公報
特許第2913275号公報
特許第3749833号公報
特開2000−273354号公報
特開2000−345101号公報
特開平6−184489号公報
本発明の課題は、下塗りとして塗付したモルタル又はポリマー配合モルタルの乾燥が不十分であっても、また十分に水和凝固していない状態であっても、下塗りとして塗付したモルタル又はポリマー配合モルタルと、これに貼り付けた補強用網材と、更に上塗りとして塗付するモルタル又はポリマー配合モルタルを強固に接着させ、補強用網材が層状に介在したモルタル組成物として一体化させること出来、既設コンクリートの表面に膨張破壊が生じて一体化されたモルタル組成物に曲げ方向に強い力が加わっても、補強用網材部分でモルタル組成物の層間剥離が生じることのないコンクリート改修層構造を提供することである。
本発明者らは、前記課題について検討し、請求項1記載の発明は、既設コンクリート表面に塗付される打ち継ぎ用接着剤層と、これに接して塗付される下塗りとしてのモルタル又はポリマー配合モルタル層と、当該モルタル又はポリマー配合モルタル層に貼り付ける補強用網材と、当該補強用網材と下塗りのモルタル又はポリマー配合モルタル層に塗付されるモルタル層間接着組成物層と、当該モルタル層間接着組成物層に接して塗付されるモルタル又はポリマー配合モルタル層とから成る既設コンクリート改修層構造において、モルタル層間接着組成物がエポキシ樹脂と水分散性ポリアミンエポキシアダクトと水硬性セメントとポリオレフィン樹脂系パルプ状物質とから成ることを特徴とするコンクリート改修層構造であり、下塗りとして塗付したモルタル又はポリマー配合モルタルの乾燥が不十分であっても、また十分に水和凝固していない状態であっても、下塗りとして塗付したモルタルと、これに貼り付けた補強用網材と、更に上塗りとして塗付するモルタル又はポリマー配合モルタルを強固に接着させ、補強用網材が層状に介在したモルタル組成物として一体化させることが出来、既設コンクリートの表面に膨張破壊が生じて一体化されたモルタル組成物に曲げ方向に強い力が加わっても、補強用網材部分でモルタル組成物の層間剥離が生じることのないコンクリート改修層構造となる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のコンクリート改修層構造において、水分散性ポリアミンエポキシアダクトが、(A)ポリアミンに、ポリアミンの第一アミノ基の10〜50%と反応する量のモノエポキシドと、ポリアミンの残留第一アミノ基の5〜65%と反応する量のポリエポキシドとの混合物を添加反応させて形成した、水相溶性のポリアミン‐エポキシアダクト0.25〜4重量部および(B)第一アミノ基を有するポリアミンとモノエポキシド又はポリエポキシドとの反応によって得られた樹脂相溶性のポリアミン‐エポキシアダクト1重量部とからなり、ポリアミンの残留アミノ基の少なくとも25%がホルムアルデヒドと反応し、ポリアミンは引き続いて酸との反応によって少なくとも部分的に中和されている前記水相溶性のポリアミン‐エポキシアダクトと前記樹脂相溶性ポリアミン‐エポキシアダクトとの混合物であることを特徴とするモルタル層間接着組成物であり、下塗りとして塗付したモルタル又はポリマー配合モルタルの乾燥が不十分であっても、また十分に水和凝固していない状態であっても、下塗りとして塗付したモルタルと、これに貼り付けた補強用網材と、更に上塗りとして塗付するモルタル又はポリマー配合モルタルを強固に接着させ、補強用網材が層状に介在したモルタル組成物として一体化させることが出来、既設コンクリートの表面に膨張破壊が生じて一体化されたモルタル組成物に曲げ方向に強い力が加わっても、補強用網材部分でモルタル組成物の層間剥離が生じることのないコンクリート改修層構造となる。
請求項3記載の発明は、請求項1記載の補強用網材がビニロン三軸連続繊維シートであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンクリート改修層構造であり、下塗りとして塗付したモルタル又はポリマー配合モルタルの乾燥が不十分であっても、また十分に水和凝固していない状態であっても、下塗りとして塗付したモルタルと、これに貼り付けた補強用網材と、更に上塗りとして塗付するモルタル又はポリマー配合モルタルを強固に接着させ、補強用網材が層状に介在したモルタル組成物として一体化させること出来、既設コンクリートの表面に膨張破壊が生じて一体化されたモルタル組成物に曲げ方向に強い力が加わっても、補強用網材部分でモルタル組成物の層間剥離が生じることのないコンクリート改修層構造となる。
請求項4記載の発明は、請求項1記載の補強用網材がガラスメッシュであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンクリート改修層構造であり、下塗りとして塗付したモルタル又はポリマー配合モルタルの乾燥が不十分であっても、また十分に水和凝固していない状態であっても、下塗りとして塗付したモルタルと、これに貼り付けた補強用網材と、更に上塗りとして塗付するモルタル又はポリマー配合モルタルを強固に接着させ、補強用網材が層状に介在したモルタル組成物として一体化させること出来、既設コンクリートの表面に膨張破壊が生じて一体化されたモルタル組成物に曲げ方向に強い力が加わっても、補強用網材部分でモルタル組成物の層間剥離が生じることのないコンクリート改修層構造となる。
本発明のコンクリート改修層構造は、既設コンクリート表面に塗付される打ち継ぎ用接着剤層と、これに接して塗付される下塗りとしてのモルタル又はポリマー配合モルタル層と、当該モルタル又はポリマー配合モルタル層に貼り付ける補強用網材と、当該補強用網材と下塗りのモルタル又はポリマー配合モルタル層に塗付されるモルタル層間接着組成物層と、当該モルタル層間接着組成物層に接して塗付されるモルタル又はポリマー配合モルタル層とから成る既設コンクリート改修層構造において、補強用網材及び下塗りとして塗付したモルタル又はポリマー配合モルタル表面に塗付するモルタル層間接着組成物が、エポキシ樹脂と水分散性ポリアミンエポキシアダクトと水硬性セメントとポリオレフィン樹脂系パルプ状物質とから成ることを特徴するコンクリート改修層構造であり、水分散性ポリアミンエポキシアダクトが(A)ポリアミンに、ポリアミンの第一アミノ基の10〜50%と反応する量のモノエポキシドと、ポリアミンの残留第一アミノ基の5〜65%と反応する量のポリエポキシドとの混合物を添加反応させて形成した、水相溶性のポリアミン‐エポキシアダクト0.25〜4重量部および(B)第一アミノ基を有するポリアミンとモノエポキシド又はポリエポキシドとの反応によって得られた樹脂相溶性のポリアミン‐エポキシアダクト1重量部とからなり、ポリアミンの残留アミノ基の少なくとも25%がホルムアルデヒドと反応し、ポリアミンは引き続いて酸との反応によって少なくとも部分的に中和されている前記水相溶性のポリアミン‐エポキシアダクトと前記樹脂相溶性ポリアミン‐エポキシアダクトとの混合物であり、補強用網材がビニロン三軸連続繊維シート又はガラスメッシュであることにより、下塗りとして塗付したモルタル又はポリマー配合モルタル、及び補強用網材を貼り付けた後に塗付するモルタル又はポリマー配合モルタルのセメント分の水和を阻害することが無く、補強用網材が層状に介在したモルタル組成物として一体化させ、既設コンクリートの表面に膨張破壊が生じて一体化されたモルタル組成物に曲げ方向に強い力が加わっても、補強用網材部分でモルタル組成物の層間剥離が生じることのないという効果がある。
また、既設コンクリートに塗付する下塗り及び上塗りのモルタル又はポリマー配合モルタルの塗付面が水平面ではなく、壁状または天井面であっても、本発明に係るモルタル層間接着組成物が垂れることがなく、ローラー刷毛等で容易に補強用網材及び下塗りとして塗付したモルタル又はポリマー配合モルタル表面に塗付することが可能であり、作業性が極めて良好であるという効果がある。特に塗付した後は、モルタル層間接着組成物中の水分がモルタル層間接着剤組成物中の水硬性セメントの水和に急速に消費され、又は空気中に揮発することによってモルタル層間接着組成物の粘度の増加が短時間で著しい。このため壁状又は天井面等の水平上面ではない既設コンクリートに塗付した当該モルタル層間接着組成物が垂れることなくその部位に留まることは確実であり、この効果は大きい。さらにはポリオレフィン樹脂系パルプ状物質を配合させることでそのタレ止め効果は増幅される効果がある。ポリオレフィン樹脂系パルプ状物質は水分が揮発等したモルタル層間接着組成物自身の凝集力を高める効果もあり、新たに塗付されるモルタル又はポリマー配合モルタルにモルタル層間接着組成物が引っ張られても、ポリオレフィン樹脂系パルプ状物質によってモルタル層間接着組成物がせん断破壊することがなく持ち応え、この効果によって新たに塗付されるモルタル又はポリマー配合モルタルが流下、落下したりすることがない。従って大面積な壁状又は天井面等の水平上面でない既設コンクリートを改修する際には極めて有効なコンクリート改修層構造である。
本発明のコンクリート改修層構造は、図1に示すように既設コンクリート1の表面に打ち継ぎ用接着剤を塗付して打ち継ぎ用接着剤層2と成し、当該打ち継ぎ用接着剤に接して下塗りとしてのモルタル又はポリマー配合モルタルを塗付してモルタル又はポリマー配合モルタル層3と成し、当該モルタル又はポリマー配合モルタル層に貼り付ける補強用網材4と、当該補強用網材4と下塗りのモルタル又はポリマー配合モルタル層3にモルタル層間接着組成物を塗付してモルタル層間接着組成物層5と成し、当該モルタル接着組成物層5に接してモルタル又はポリマー配合モルタルを塗付してモルタル又はポリマー配合モルタル層6から成るコンクリート改修層構造であり、モルタル層間接着組成物が、エポキシ樹脂と水分散性ポリアミンエポキシアダクトと水硬性セメントとポリオレフィン樹脂系パルプ状物質を混合したものから成っている。
本発明に係るエポキシ樹脂は、液状であり、常温硬化するものであればよく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジアリールスルホン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂およびそれらの変性物などを単独あるいは併せて用いてもよく、また、希釈剤を用いて液状化してもよい。最も多く配合するエポキシ樹脂の軟化点は、35℃以下が好ましい。このような液状エポキシ樹脂としては、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂が、汎用性、コスト等で好ましい。
また本発明に係る水分散性ポリアミンエポキシアダクトである水系硬化剤は、前記エポキシ樹脂と混合し、また水分を良好に分散させることができるものであればよく、当該水分散性ポリアミンエポキシアダクトは、(A)ポリアミンに、ポリアミンの第一アミノ基の10〜50%と反応する量のモノエポキシドと、ポリアミンの残留第一アミノ基の5〜65%と反応する量のポリエポキシドとの混合物を添加反応させて形成した、水相溶性のポリアミン‐エポキシアダクト0.25〜4重量部および(B)第一アミノ基を有するポリアミンとモノエポキシド又はポリエポキシドとの反応によって得られた樹脂相溶性のポリアミン‐エポキシアダクト1重量部とからなり、ポリアミンの残留アミノ基の少なくとも25%がホルムアルデヒドと反応し、ポリアミンは引き続いて酸との反応によって少なくとも部分的に中和されている前記水相溶性のポリアミン‐エポキシアダクトと前記樹脂相溶性ポリアミン‐エポキシアダクトとの混合物であって、特許2661678号公報に記載されているものである。これに該当する水分散性ポリアミンエポキシアダクトには、ジョリシールJBX−140B(アイカ工業(株)製エポキシ樹脂硬化剤、商品名、活性水素当量380、固形分33%水溶液、粘度90mPas/23℃)がある。
水硬性成分はセメントであり、セメントとしては水硬性であれば特に限定されることはなく、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等の混合セメントや、アルミン酸石灰質セメント、ケイ酸アルミン酸石灰質セメント、リン酸セメント等が使用できる。特に白セメントすなわち白色ポルトランドセメントは、流動性が良い点で好ましい。当該水硬性セメントの配合量はエポキシ樹脂100重量部に対して好ましくは50重量部から250重量部を配合することで本発明の効果が顕著であるが、50重量部未満250重量部超であっても塗付作業性に支障がなく下塗りと上塗りのモルタル又はポリマー配合モルタルと補強用網材が一体化し、また塗付面における本発明のモルタル層間接着組成物に垂れを生じたり、さらには新たに塗付するモルタル又はポリマー配合モルタルが流下、落下することがなければ、その範囲で配合量を調整することが出来る。
ポリオレフィン樹脂系パルプ状物質は、ポリオレフィン系樹脂の極細繊維をフィブリル化したものであり、代表的な商品にケミベスト(三井化学株式会社、商品名)がある。当該製品は繊維の原料或いは後処理により、親水性と疎水性のタイプがあり、どちらも効果が得られ、また繊維長も各種あるが、ローラー刷毛での塗付作業性から繊維長0.1mmのものが好ましい。当該ポリオレフィン樹脂系パルプ状物質の配合量はエポキシ樹脂100部に対して好ましくは5重量部から10重量部を配合することで本発明の効果が顕著であるが、5重量部未満10重量部超であっても塗付作業性に支障がなく、また塗付面における本発明のモルタル層間接着組成物に垂れを生じたり、さらには新たに塗付するモルタル又はポリマー配合モルタルが流下、落下することがなければ、その範囲で配合量を調整することが出来る。
配合物の混合形態として、エポキシ樹脂、水分散性ポリアミンエポキシアダクト、水、水硬性セメント及びポリオレフィン樹脂系パルプ状物質が主たる配合物であるが、2液、1粉体とするのが使用に際して好ましい。すなわち、エポキシ樹脂、水分散性ポリアミンエポキシアダクトと水とポリオレフィン樹脂系パルプ状物質、及び水硬性セメントとするのが、混合・分散不十分、特性の失活、計量ミス・誤差を防ぐには好ましいが、別個に配合しても構わない。
なお本発明のコンクリートの改修に使用されるモルタルは、一般的なセメントモルタルのほか、セメント、骨材、減水剤にビニロン等の短繊維が任意に配合される補強用モルタルが適用でき、ポリマー配合モルタルは、これらのモルタルに、アクリル系樹脂エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル共重合系エマルジョン、エチレン、酢酸ビニル、スチレン系、アクリル酸エステル系からなる多元系合成樹脂エマルジョン、SBRラテックス、エポキシ樹脂エマルジョン等が配合されたモルタルを使用することができる。
また、補強用網材は、二軸、三軸いずれの補強用網材が使用可能であり、ビニロン三軸連続繊維シート、ガラスメッシュの他に、補強用炭素繊維シート、補強用アラミド繊維シート、ポリエチレンメッシュ、ポリプロピレンメッシュ等が使用することが出来、ビニロン三軸連続シートあるいはガラスメッシュはモルタル層間接着組成物との密着性に優れ好ましい。
本発明のモルタル層間接着組成物は下塗りとして塗付したモルタル又はポリマー配合モルタルに補強用網材を貼り付けた後、0.05〜0.20kg/m2塗付するが、0.1kg/m2が塗付作業性の点で適当である。0.05kg未満/m2では均一に塗付することが難しい。0.2kg/m2以下の塗付量であればローラー刷毛で容易に塗付することが出来る。
以下、実施例及び比較例にて詳細に説明する。
先ず、攪拌機にJBX−140A(アイカ工業(株)製エポキシ樹脂、商品名、エポキシ当量180、固形分100%、粘度1300mPas/23℃)100重量部とジョリシールJBX−140B(アイカ工業(株)製水分散性ポリアミンエポキシアダクト、活性水素当量380、固形分33%水溶液、粘度90mPas/23℃、商品名)200重量部およびポリオレフィン樹脂系パルプ状物質(ケミベストFDDSS−50、繊維長0.1mm、三井化学株式会社製、商品名)8重量部と水道水42部を入れ、白色ポルトランドセメント150重量部を配合したモルタル層間接着組成物を調製した。次に、JISA 5334(鉄筋コンクリートU形用ふた)に規定するU形ふた、呼び名一種300(400×600×60mm)を既存コンクリート下地とし、その表面に打ち継ぎ用接着剤として前記JBX−140A(アイカ工業(株)製エポキシ樹脂、商品名、エポキシ当量180、固形分100%、粘度1300mPas/23℃)100重量部とジョリシールJBX−140B(アイカ工業(株)製水分散性ポリアミンエポキシアダクト、活性水素当量380、固形分33%水溶液、粘度90mPas/23℃、商品名)200重量部と普通ポルトランドセメント150重量部の混合物を0.4kg/m2をオモテ面全面に塗付し打ち継ぎ用接着剤層とした。なお本実施例ではこのような打ち継ぎ用接着剤を使用したが、既存コンクリート表面と下塗りとして塗付するモルタル又はポリマー配合モルタルの接着が良好であれば、市販の新旧コンクリート打ち継ぎ用接着剤を使用しても良い。
次に打ち継ぎ用接着剤に接して、下塗りモルタルとして、普通ポルトランドセメント150重量部、硅砂5号200重量部、硅砂7号100重量部、ビニロン繊維AB 6mm((株)ユニチカ製、商品名)0.2重量部、水道水70重量部、高性能減水剤Melflux1641F(BASFコンストラクション製、商品名)1重量部を混合したモルタルを10mm厚みに鏝塗りしてモルタル層と成し、塗付後直ちに補強用網材としてビニロン3軸連続シートKVT7226Y(日東紡製、商品名)を貼り付け、ブラシと鏝で下塗りモルタル表面に付着させた。その後2時間放置後、前記モルタル層間接着組成物を0.1kg/m2塗付してモルタル層間接着組成物層と成し、その30分後に上記下塗りモルタルと同配合のモルタルを上塗りモルタルとして10mm厚みに塗付してモルタル層と成してコンクリート改修層構造の実施例1とした。
実施例2
実施例1において、補強用網材にガラスメッシュARCネットTDX(日本電気硝子株式会社製ガラスメッシュ、商品名)を使用し実施例2とした。
実施例1において、補強用網材にガラスメッシュARCネットTDX(日本電気硝子株式会社製ガラスメッシュ、商品名)を使用し実施例2とした。
比較例1
実施例1において、実施例1で使用したモルタル層間接着組成物を塗付せず、モルタル層間接着組成物層のないものを比較例1とした。
実施例1において、実施例1で使用したモルタル層間接着組成物を塗付せず、モルタル層間接着組成物層のないものを比較例1とした。
比較例2
実施例1において、実施例1で使用したモルタル層間接着組成物を塗付せずモルタル層間接着組成物層がなく、補強用網材にガラスメッシュARCネットTDX(日本電気硝子株式会社製ガラスメッシュ、商品名)を使用し比較例2とした。
実施例1において、実施例1で使用したモルタル層間接着組成物を塗付せずモルタル層間接着組成物層がなく、補強用網材にガラスメッシュARCネットTDX(日本電気硝子株式会社製ガラスメッシュ、商品名)を使用し比較例2とした。
比較例3
実施例1おいて、モルタル層間接着組成物に変えて、モルタル混和用アクリルエマルジョン(ウルトラゾールCMX−243、ガンツ化成株式会社製、商品名:アクリル酸エステル共重合体エマルション、固形分45%、PH5.0、粘度20mPas/25℃)、を水で希釈して固形分10%に調整した)を塗付し、比較例3とした。
実施例1おいて、モルタル層間接着組成物に変えて、モルタル混和用アクリルエマルジョン(ウルトラゾールCMX−243、ガンツ化成株式会社製、商品名:アクリル酸エステル共重合体エマルション、固形分45%、PH5.0、粘度20mPas/25℃)、を水で希釈して固形分10%に調整した)を塗付し、比較例3とした。
比較例4
実施例1において、モルタル層間接着組成物に換えて新旧コンクリート打ち継ぎ用エポキシ樹脂(ジョリシールJB−8A、アイカ工業株式会社製、商品名:ビスフェノールA型エポキシ樹脂52.5%)400重量部とポリアミン系硬化剤(ジョリシールJB−8B、アイカ工業株式会社製、商品名:変性脂肪族ポリアミン100%(内メタキシリレンジアミン4%、ポリチオール20%))100重量部を撹拌機に入れて混合し(混合物粘度5Pas/20℃、硬化物比重1.3)、塗付量は0.3kg/m2とし比較例4とした。
実施例1において、モルタル層間接着組成物に換えて新旧コンクリート打ち継ぎ用エポキシ樹脂(ジョリシールJB−8A、アイカ工業株式会社製、商品名:ビスフェノールA型エポキシ樹脂52.5%)400重量部とポリアミン系硬化剤(ジョリシールJB−8B、アイカ工業株式会社製、商品名:変性脂肪族ポリアミン100%(内メタキシリレンジアミン4%、ポリチオール20%))100重量部を撹拌機に入れて混合し(混合物粘度5Pas/20℃、硬化物比重1.3)、塗付量は0.3kg/m2とし比較例4とした。
表1に実施例及び比較例の結果を示す。
試験条件
既存コンクリート下地:JISA 5334(鉄筋コンクリートU形用ふた)に規定するU形ふた、呼び名一種300(400×600×60mm)を既存コンクリート下地とし、その中央部を直径100mmのコア抜き状に、裏面よりオモテ面方向に深さ55mmの切り込みを入れる。その後オモテ面を#80のサンドペーパーにて研磨し、試験体下地とした。
試験体の作製:上記試験体下地であるU形ふたを長手側を下側にして垂直に保持し、上記実施例1及び実施例2、比較例1乃至比較例4のコンクリート改修層構造を形成し23℃28日間養生し試験体とした。
試験方法:試験は、日本道路公団規格JHS424:2004 はく落防止の押し抜き試験に準拠した。詳しくは、上記試験体の裏面を上側として長手面の中央を中心に両側200mmを長手方向とは直角方向に平行に架台に支持させ、コア抜き状の切り込み中央部に鉄製ジグ(直径100mm×高さ100mm)をセットし、先ず、U形ふた中央部の円状の薄肉部(切り込みの最深部とU形ふたのオモテ面との5mm厚部分)が破壊するまで1mm/分の速度で鉄製ジグに載荷する。次に5mm/分の速度で載荷を続け、直径100mmのコア部分で押しぬき試験を行い、その最大荷重を測定すると共に、上塗りモルタルと下塗りモルタルの破壊状態を目視にて観察した。
評価方法
押し抜き最大荷重:上記押し抜き試験にける、最大荷重が6.0KN以上を○、3.0KN以上6.0KN未満を△、3.0KN未満を×とした。
破壊状況:U形ふたと下塗りモルタル、補強用網材、及び上塗りモルタルが一体化して接着し、上塗りモルタルと下塗りモルタルとの層間で剥離破壊が無いものを○とし、上塗りモルタルと下塗りモルタルが層間で剥離破壊したものを×とした。
上塗りモルタルの状態:垂直に保持して試験体を作製する当該作製時において、上塗りモルタルを10mm厚みに塗付後、その状態を保持して、ズレや落下がないものを○とし、ズレや落下が生じたものを×とした。
試験結果のまとめ:実施例1及び2のコンクリート改修層構造の押し抜き最大荷重が6.0KN以上あり、下塗りモルタル層及び上塗りモルタルの層間で剥離が生じることがなく、また、上塗りモルタルがモルタル層間接着組成物に接して塗付してもズレたり落下することが無かった。
1 既設コンクリート
2 打ち継ぎ用接着剤層
3 モルタル又はポリマー配合モルタル層
4 補強用網材
5 モルタル層間接着組成物層
6 モルタル又はポリマー配合モルタル層
2 打ち継ぎ用接着剤層
3 モルタル又はポリマー配合モルタル層
4 補強用網材
5 モルタル層間接着組成物層
6 モルタル又はポリマー配合モルタル層
Claims (4)
- 既設コンクリート表面に塗付される打ち継ぎ用接着剤層と、これに接して塗付される下塗りとしてのモルタル又はポリマー配合モルタル層と、当該モルタル又はポリマー配合モルタル層に貼り付ける補強用網材と、当該補強用網材と下塗りのモルタル又はポリマー配合モルタル層に塗付されるモルタル層間接着組成物層と、当該モルタル層間接着組成物層に接して塗付されるモルタル又はポリマー配合モルタル層とから成る既設コンクリート改修層構造において、モルタル層間接着組成物がエポキシ樹脂と水分散性ポリアミンエポキシアダクトと水硬性セメントとポリオレフィン樹脂系パルプ状物質とから成ることを特徴とするコンクリート改修層構造
- 前記水分散性ポリアミンエポキシアダクトが、(A)ポリアミンに、ポリアミンの第一アミノ基の10〜50%と反応する量のモノエポキシドと、ポリアミンの残留第一アミノ基の5〜65%と反応する量のポリエポキシドとの混合物を添加反応させて形成した、水相溶性のポリアミン‐エポキシアダクト0.25〜4重量部および(B)第一アミノ基を有するポリアミンとモノエポキシド又はポリエポキシドとの反応によって得られた樹脂相溶性のポリアミン‐エポキシアダクト1重量部とからなり、ポリアミンの残留アミノ基の少なくとも25%がホルムアルデヒドと反応し、ポリアミンは引き続いて酸との反応によって少なくとも部分的に中和されている前記水相溶性のポリアミン‐エポキシアダクトと前記樹脂相溶性ポリアミン‐エポキシアダクトとの混合物であることを特徴とする請求項1記載のコンクリート改修層構造
- 請求項1記載の補強用網材がビニロン三軸連続繊維シートであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンクリート改修層構造
- 請求項1記載の補強用網材がガラスメッシュであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンクリート改修層構造
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- 2008-04-22 JP JP2008111533A patent/JP2009263893A/ja active Pending
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