JP2022137926A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】少なくともタイヤ内腔面が熱可塑性樹脂で構成された空気入りタイヤにおいて、走行時の発熱に伴うタイヤの変形を抑制する。【解決手段】トレッド部2を有する空気入りタイヤである。少なくともタイヤ内腔面5が熱可塑性樹脂で構成されている。トレッド部2は、トレッド部2の厚さの中心位置よりもタイヤ半径方向内側にトレッド補強層10を含む。トレッド部2の最表面には、複数の溝11が設けられている。複数の溝11を全て埋めた仮想接地面積に対する、複数の溝11の総開口面積の比率であるネガティブ率は、20%~50%である。【選択図】図2
Description
本発明は、空気入りタイヤに関する。
一般に、空気入りタイヤは、主にゴム材料によって構成されるが、ゴム材料は、リサイクルが難しいという問題がある。近年、リサイクル性に優れた材料で構成された部材を含む空気入りタイヤが種々提案されている。例えば、下記特許文献1には、タイヤ骨格体に熱可塑性樹脂が用いられたタイヤが提案されている。
上記特許文献1のタイヤは、タイヤ内腔面が熱可塑性樹脂で構成されている。このようなタイヤは、走行時の発熱によってタイヤ内腔面が可塑化して変形することが懸念される。具体的には、タイヤ内腔面が可塑化すると、タイヤ内圧によるタイヤ外径の成長やトレッド部の局所的かつ塑性的な変形が生じ、転がり抵抗が悪化することが懸念される。
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、少なくともタイヤ内腔面が熱可塑性樹脂で構成された空気入りタイヤにおいて、走行時の発熱に伴うタイヤの変形を抑制し、連続走行時の転がり抵抗の悪化を抑制することを主たる課題としている。
本発明は、トレッド部を有する空気入りタイヤであって、少なくともタイヤ内腔面が熱可塑性樹脂で構成されており、前記トレッド部は、前記トレッド部の厚さの中心位置よりもタイヤ半径方向内側にトレッド補強層を含み、前記トレッド部の最表面には、複数の溝が設けられ、前記複数の溝を全て埋めた仮想接地面積に対する、前記複数の溝の総開口面積の比率であるネガティブ率は、20%~50%である。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド補強層のタイヤ軸方向の長さは、タイヤ最大幅の25%~81%であるのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド補強層は、熱可塑性樹脂を含むのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド補強層の引張弾性率は、100MPa以上であるのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド補強層は、前記タイヤ内腔面を構成する前記熱可塑性樹脂に覆われているのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド補強層は、有機繊維又は金属からなる複数のコードを含むのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部の最表面から前記トレッド補強層までの距離は、前記トレッド部の厚さの80%~90%であるのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部の最表面には、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝が設けられ、前記仮想接地面積に対する、前記複数の周方向溝の総開口面積の比率である周方向溝ネガティブ率は、10%~40%であるのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部の最表面には、タイヤ軸方向に延びる複数の幅方向溝が設けられ、前記仮想接地面積に対する、前記複数の幅方向溝の総開口面積の比率である幅方向溝ネガティブ率は、10%~40%であるのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記複数の溝の総容積は、前記トレッド部の体積の2.0%~10.0%であるのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部は、熱可塑性樹脂を含むのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤは、上記の構成を採用したことによって、走行時の発熱に伴うタイヤの変形を抑制することができる。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図1は、本実施形態の空気入りタイヤ1(以下、単にタイヤ1という場合がある。)の子午線断面図である。図1は、タイヤ1の正規状態におけるタイヤ回転軸を含む横断面図である。図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車の空気入りタイヤとして用いられる。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、自動二輪車用の空気入りタイヤや、カート用の空気入りタイヤに適用されても良い。
「正規状態」とは、各種の規格が定められたタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。規格に定められていないタイヤの場合には、「正規リム」は、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、正規内圧は、乗用車用タイヤであれば250kPa、乗用車よりも正規荷重が大きいタイヤは350kPaとする。
ここで、乗用車用タイヤとは4輪走行を行う自動車に装着されるタイヤであって、正規荷重が1000kg以下のものを指す。
また、上記した「正規荷重」とはそのタイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定める最大負荷能力であり、例えば、JATMA規格(日本自動車タイヤ協会規格)であれば、ロードインデックス(LI)に基づく最大負荷能力、TRAであれば表 ”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES” に記載の最大値、ETRTOであれば ”LOAD CAPACITY”である。規格に定められていないタイヤの場合には、タイヤ断面幅Lt(mm)、タイヤ外径Dt(mm)、タイヤ断面高さHt(mm)及び円周率から求めたタイヤのリムを除く仮想体積V(mm3)に基づき、以下の計算式により求めた値を正規荷重(kg)として取り扱う。
正規荷重(kg) = 0.000011×V+175
V = {(Dt2-Ht2)/4}×π×Lt
正規荷重(kg) = 0.000011×V+175
V = {(Dt2-Ht2)/4}×π×Lt
タイヤ断面幅Lt(mm)、タイヤ断面高さHt(mm)、タイヤ外径Dt(mm)は、実物のタイヤから直接測定するか、または、CT等の撮影画像から測定することができる。
タイヤ外径Dtとは、タイヤの正規状態における外径であり、タイヤ断面幅Ltとは、正規状態におけるタイヤ側面の模様や文字など全てを含むサイドウォール間の直線距離(タイヤの総幅)からタイヤの側面の模様、文字などを除いた幅である。タイヤ断面高さHtはタイヤ断面におけるタイヤの高さであり、タイヤ外径Dtからリム径(mm)を差し引き、2で除することで算出することができる。
タイヤ1は、トレッド部2、一対のサイドウォール部3及び一対のビード部4を含む。サイドウォール部3は、トレッド部2のタイヤ軸方向の端部からタイヤ半径方向内側に延びている。ビード部4は、サイドウォール部3のタイヤ半径方向内側に連なっている。また、タイヤ1のトレッド部2において、少なくともタイヤ内腔面5が熱可塑性樹脂で構成されている。
本明細書において、「熱可塑性樹脂」とは、温度上昇により材料が流動性を持ち、再び冷却すると比較的硬く強度のある状態に可逆的になる高分子化合物であって、一般的なタイヤ用ゴム部材のような加硫工程を経ることなく成形できるものを指す。したがって、本明細書が意味する熱可塑性樹脂は、一般的なタイヤ用ゴム部材(加硫ゴム)を含むものではなく、リサイクル可能な樹脂材料である。熱可塑性樹脂を用いたタイヤであるか否かは、タイヤ部材の弾性率の温度依存性などから判別することができる。
また、本明細書において、熱可塑性樹脂は、冷却状態においてゴム状弾性を有しない非弾性熱可塑性樹脂と、冷却状態においてゴム状弾性を有する熱可塑性エラストマーとを含む。熱可塑性エラストマーは、温度上昇とともに材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になり、かつ、ゴム状弾性を有する。本明細書において、特に断りの無い場合、熱可塑性樹脂として、非弾性熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーのいずれもが適用することができ、これらが併用されても良い。但し、より望ましい態様では、熱可塑性樹脂として熱可塑性エラストマーが適用される。
熱可塑性エラストマーとしては、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを挙げることができ、これらが単独で或いは組み合わせて採用され得る。
図2には、トレッド部2の拡大断面図が示されている。図2に示されるように、トレッド部2は、トレッド部2の厚さの中心位置よりもタイヤ半径方向内側にトレッド補強層10を含む。この構成は、少なくともタイヤ赤道面C上において、トレッド補強層10が前記中心位置よりもタイヤ半径方向内側に配されていることを意味する。望ましい態様では、
トレッド補強層10の体積の50%以上、より望ましくは80%以上が、前記中心位置よりもタイヤ半径方向内側に配されている。さらに望ましい態様として、本実施形態では、トレッド補強層10の全体が前記中心位置よりもタイヤ半径方向内側に配されている。
トレッド補強層10の体積の50%以上、より望ましくは80%以上が、前記中心位置よりもタイヤ半径方向内側に配されている。さらに望ましい態様として、本実施形態では、トレッド補強層10の全体が前記中心位置よりもタイヤ半径方向内側に配されている。
トレッド補強層10は、タイヤ内腔面5を構成する熱可塑性樹脂よりも高剛性な部材であり、タイヤ外径の成長を抑制することができる。また、トレッド部2の最表面には、複数の溝11が設けられる。複数の溝11は、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝と、タイヤ軸方向に延びる複数の幅方向溝の両方を含む。
なお、上記したトレッド部2の厚さとは、タイヤの半径方向断面において、トレッド部2の最表面からタイヤ内腔面までのタイヤ法線方向の距離である。トレッド部2の最表面に溝11が存在する場合、トレッド部2の厚さは、溝11を埋めた仮想の状態で測定されるものとする。
本発明において、複数の溝11を全て埋めたトレッド部2の仮想接地面積に対する、複数の溝11の総開口面積の比率であるネガティブ率は、20%~50%である。前記仮想接地面積とは、複数の溝11が全て埋められたトレッド部2を有するタイヤを前記正規状態にして、前記トレッド部2を平面にキャンバー角0°で押し付けたときに接地するタイヤ全周に亘る接地面積の合計を指す。同様に、溝部の面積は、上記のタイヤ全周の接地面において、溝部の面積を求めることにより算出することができる。これらは簡易的にはタイヤ表面にインクなどを塗り、転写させることにより測定することが可能である。
本発明では、上記の構成を採用したことにより、走行時の発熱に伴うタイヤ1の変形を抑制し、連続走行時の転がり抵抗の悪化を抑制することができる。その理由としては、以下のメカニズムが推察される。
タイヤ内腔面5は、タイヤに充填された空気によって常時圧力が作用している。このため、タイヤ内腔面5が熱可塑性樹脂で構成されたタイヤは、走行時の発熱によってタイヤ内腔面が可塑化して変形し、ひいてはタイヤ外径の成長やトレッド部の局所的かつ塑性的な変形が生じる。これにより、とりわけ転がり抵抗の悪化が懸念される。このような問題に対し、本発明では、トレッド補強層10をよりタイヤ半径方向内側に配することで、タイヤ外径の成長を防ぎつつ、トレッド部2の全体で変形を吸収することができる。
また、本発明では、トレッド部2のネガティブ率が20%以上であることにより、溝11の壁面からトレッド部2の熱を逃がし易くしている。さらに、前記ネガティブ率が50%以下であることにより、トレッド部2の最表面の局所的な変形が抑制され、その発熱を防ぐことができる。本発明では、このようなメカニズムにより、少なくともタイヤ内腔面5が熱可塑性樹脂で構成された空気入りタイヤにおいて、走行時の発熱に伴うタイヤの変形を抑制でき、ひいては転がり抵抗の悪化を抑制できると考えられる。
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
図1に示されるように、トレッド部2はトレッド接地要素8及び内腔表面部材14により構成されている。本実施形態のトレッド接地要素8は、例えば、単一の組成物から形成された単層構造とされる。他の実施形態において、トレッド接地要素8は、例えば、ベーストレッド部やアンダートレッド部などの異なる組成物を用いた複数の層構造で形成されても良い。
本実施形態では、トレッド接地要素8と内腔表面部材14とが別の組成物で構成された二層構造とされている。トレッド接地要素8は、例えば、内腔表面部材14とは異なる熱可塑性エラストマーで構成されている。別の態様では、トレッド接地要素8は、ゴム組成物で構成されても良い。また、本発明は上述の態様に限定されるものではなく、トレッド部2は、トレッド接地要素8と内腔表面部材14とが同一の組成物で形成された単層の構造でも良い。この場合、トレッド部2は、全体が熱可塑性樹脂により構成されるのが望ましい。
本実施形態のように、トレッド接地要素8と内腔表面部材14とが異なる組成物で構成される場合、タイヤ内部に空気を保持させる観点から、内腔表面部材14の空気透過係数がトレッド接地要素8の空気透過係数よりも低いことが好ましい。
また、トレッド部2のタイヤ軸方向外側には1対のサイド部13が備えられている。図1に示される実施形態では、サイド部13は単一の組成物による単層構造であり、サイドウォール部3及びビード部4を構成している。また、ビード部4には勘合性を高めるため、ビードワイヤーが含まれている。別の実施形態において、操縦安定性や乗り心地など、用途に応じて求められる性能達成させる為、サイド部13を複数の部材に分け、通常の空気入りタイヤの様にビードエイペックスやラバーチェーファーなどの役割を持たせても良い。
図2に示されるように、トレッド補強層10は、例えば、複数のコード16と、コード16を被覆する被覆部17とを含む。
コード16には、例えば、有機繊維コード又はスチールコードが用いられる。本実施形態のコード16は、例えば、タイヤ周方向に対して5°以下の角度で螺旋状に巻回されている。このようなコード16は、タイヤ外径の成長を確実に抑制することができる。但し、このような態様に限定されるものではなく、コード16は、例えば、一般的なタイヤのベルトコードのように、タイヤ周方向に対して30~60°に傾斜するものでも良い。また、トレッド補強層10は、タイヤ周方向に対して第1方向に傾斜した複数のコード16からなる層と、前記第1方向とは逆向きの第2方向に傾斜した複数のコード16からなる層とを含むものでも良い。
被覆部17は、例えば、粘着性を有したトッピングゴムで構成される。これにより、トレッド補強層10の剥離が効果的に抑制される。但し、このような態様に限定されるものではなく、被覆部17は、熱可塑性樹脂で構成されるものでも良い。この場合、被覆部17は、熱可塑性エラストマーで構成されるのがより望ましい。これにより、タイヤのリサイクル性能がさらに向上する。
図3には、他の実施形態のトレッド部2の拡大断面図が示されている。図3に示されるように、この実施形態のトレッド補強層10は、熱可塑性樹脂を含み、より望ましくは全体が熱可塑性樹脂で構成されている。すなわち、このトレッド補強層10は、コードを含んでいない。これにより、リサイクル性能がさらに向上する。なお、トレッド補強層10の熱可塑性樹脂は、タイヤ内腔面5を構成する熱可塑性樹脂よりも高剛性であるのは言うまでもない。また、トレッド補強層10の熱可塑性樹脂には、熱可塑性エラストマーが適用されるのがより望ましい。
図4には、さらに他の実施形態のトレッド部2の拡大断面図が示されている。図4に示されるように、この実施形態のトレッド補強層10は、タイヤ内腔面5を構成する熱可塑性樹脂に覆われている。より具体的には、トレッド補強層10を構成する複数のコード16が、タイヤ内腔面5を構成する熱可塑性樹脂の内部に埋設されている。このような実施態様は、トレッド補強層10の被覆部として、タイヤ内腔面5を構成する熱可塑性樹脂が利用されるため、タイヤの製造コストを低減させ得る。
図2に示されるように、トレッド補強層10のタイヤ軸方向の長さL1は、タイヤ最大幅W1の25%~81%である。なお、図3及び図4に示される実施態様でも、トレッド補強層10の長さは同様に規定される。このようなトレッド補強層10は、タイヤの製造コストやタイヤ重量の増加を抑制しつつ、タイヤ外径の成長を抑制できる。
トレッド部2の最表面からトレッド補強層10までの距離d2は、例えば、トレッド部2の厚さd1の65~95%であり、望ましくは80%~90%である。これにより、上述の効果がさらに確実に発揮される。前記距離d2は、トレッド部2の最表面からトレッド補強層10のタイヤ半径方向外側の外面までのタイヤ法線方向の距離に相当する。また、トレッド補強層10の外面とは、図2に示される実施形態では、トレッド補強層10の被覆部17の外面を意味し、図4に示される実施形態では、コード16の外面を意味する。
トレッド補強層10の引張弾性率Adは、タイヤ内腔面5を構成する熱可塑性樹脂の引張弾性率よりも大きい。具体的には、トレッド補強層10の引張弾性率Adは、100MPa以上であるのが望ましい。これにより、トレッド部2の変形が確実に抑制され、転がり抵抗の悪化を抑制することができる。なお、トレッド補強層10の引張弾性率は、トレッド補強層10から幅10mmでタイヤ周方向40mm以上延びるテストサンプルを採取し、引張試験機でテストサンプルの幅10mm、長さ40mmの領域に引張変形させ、その際の応力の傾きから算出される。この際、サンプルの変形速度は200mm/min、測定温度は室温である。得られた応力歪み曲線の0.05%および0.25%変形時の応力値から、傾きを算出し、引張弾性率として求める。なお、トレッド補強層がコードと熱可塑性樹脂との複合体などである場合にはそれらの複合状態で算出するものとする。
トレッド部2の最表面からトレッド補強層10までの距離d2が小さい程、トレッド部2の補強のために要求されるトレッド補強層10の引張弾性率Adは大きくなる。このような観点から、トレッド部2を十分に補強するために、前記引張弾性率Ad(MPa)に、トレッド部2の厚さd1に対するトレッド部2の最表面からトレッド補強層10までの距離d2の比率d2/d1を乗じた値Ad×d2/d1(MPa)は、望ましくは100MPa以上であり、より望ましくは200MPa以上である。
トレッド部2のネガティブ率は、望ましくは25%~40%であり、望ましくは25%~35%である。このようなトレッド部2は、局所的な変形が抑制されつつ、優れた放熱性を発揮することができる。
本実施形態の複数の溝11は、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝と、タイヤ軸方向に延びる複数の幅方向溝(図示省略)とを含む。仮想接地面積に対する、複数の周方向溝の総開口面積の比率である周方向溝ネガティブ率は、10%~40%であるのが望ましい。また、仮想接地面積に対する、複数の幅方向溝の総開口面積の比率である幅方向溝ネガティブ率は、10%~40%であるのが望ましい。これにより、トレッド部2のタイヤ周方向の剛性とタイヤ軸方向の剛性とがバランス良く確保される。
複数の溝11の総容積は、トレッド部2の体積の2.0%~10.0%であるのが望ましい。これにより、ウェット性能と操縦安定性とがバランス良く向上する。なお、トレッド部2の体積は、トレッド部2の最表面のタイヤ軸方向の端を通るタイヤ法線で区画されたトレッド部2の総体積を意味する。
トレッド接地要素8は、路面と接地するための部位であり、本実施形態では一般的なタイヤ用加硫ゴムで構成されている。また、本実施形態のトレッド接地要素8には、公知のトレッドゴムの組成を適用することができる。但し、リサイクル性を高めるために、トレッド接地要素8は、熱可塑性樹脂を一部に含むことができ、トレッド接地要素8の全体が熱可塑性樹脂で構成されることも可能である。この場合、トレッド接地要素8は、全体が熱可塑性エラストマーで構成されるのがより望ましい。
図5には、本発明の別の実施形態のタイヤ1の子午線断面図が示されている。図5に示されるように、この実施形態のタイヤ1は、例えば、一対のビード部4を含むトロイド状のタイヤ骨格部材7と、トレッド部2の最表面を構成するトレッド接地要素8とを含む。少なくとも具える。タイヤ骨格部材7は、ビード部4及びサイドウォール部3を構成している。また、タイヤ骨格部材7は、トレッド接地要素8のタイヤ半径方向内側に配されるアンダートレッド部2dを含む。アンダートレッド部2dは、トレッド接地要素8を支持する部材であり、両側のサイドウォール部3と連なっている。このように、本発明は、図1~図4で示される態様に限定されるものではなく、トレッド部2のタイヤ内腔面5が熱可塑性樹脂で構成されていれば、図5で示される態様も含むものとする。
以上、本発明の一実施形態の空気入りタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
図1に示す構造を有するの乗用車用の空気入りタイヤが、表1~5の仕様に基づいて試作された。比較例のタイヤとして、図1の構造を有し、かつ、ネガティブ率が10%であるタイヤが試作された。比較例のタイヤは、上記の事項を除き、実施例のタイヤと実質的に同じである。各テストタイヤについて、トレッド部の変形度合いを評価するために、転がり抵抗がテストされた。共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
タイヤサイズ:195/65R15
リム:15×6.0J
タイヤ内圧:250kPa
タイヤサイズ:195/65R15
リム:15×6.0J
タイヤ内圧:250kPa
<転がり抵抗>
ドラム試験機上でテストタイヤを走行させたときの転がり抵抗が測定された。結果は、転がり抵抗の逆数で示され、比較例を100とする指数で示されている。数値が大きい程、転がり抵抗が小さいことを示す。
テストの結果は表1に示される。
ドラム試験機上でテストタイヤを走行させたときの転がり抵抗が測定された。結果は、転がり抵抗の逆数で示され、比較例を100とする指数で示されている。数値が大きい程、転がり抵抗が小さいことを示す。
テストの結果は表1に示される。
表1~5に示されるように、実施例のタイヤは、転がり抵抗が低く、走行時の発熱に伴うタイヤの変形を抑制していることが確認できた。
2 トレッド部
5 タイヤ内腔面
10 トレッド補強層
11 溝
5 タイヤ内腔面
10 トレッド補強層
11 溝
Claims (11)
- トレッド部を有する空気入りタイヤであって、
少なくともタイヤ内腔面が熱可塑性樹脂で構成されており、
前記トレッド部は、前記トレッド部の厚さの中心位置よりもタイヤ半径方向内側にトレッド補強層を含み、
前記トレッド部の最表面には、複数の溝が設けられ、
前記複数の溝を全て埋めた仮想接地面積に対する、前記複数の溝の総開口面積の比率であるネガティブ率は、20%~50%である、
空気入りタイヤ。 - 前記トレッド補強層のタイヤ軸方向の長さは、タイヤ最大幅の25%~81%である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッド補強層は、熱可塑性樹脂を含む、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッド補強層の引張弾性率は、100MPa以上である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッド補強層は、前記タイヤ内腔面を構成する前記熱可塑性樹脂に覆われている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッド補強層は、有機繊維又は金属からなる複数のコードを含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッド部の最表面から前記トレッド補強層までの距離は、前記トレッド部の厚さの80%~90%である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッド部の最表面には、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝が設けられ、
前記仮想接地面積に対する、前記複数の周方向溝の総開口面積の比率である周方向溝ネガティブ率は、10%~40%である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 - 前記トレッド部の最表面には、タイヤ軸方向に延びる複数の幅方向溝が設けられ、
前記仮想接地面積に対する、前記複数の幅方向溝の総開口面積の比率である幅方向溝ネガティブ率は、10%~40%である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。 - 前記複数の溝の総容積は、前記トレッド部の体積の2.0%~10.0%である、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッド部は、熱可塑性樹脂を含む、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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