JP2022130815A - 光改質装置及び光改質方法 - Google Patents

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Abstract

Figure 2022130815000001
【課題】低コストで単純な構造で、厚い表面改質層を形成できる光改質装置及び光改質方法を提供する。
【解決手段】本発明の光処理装置は、ワークの表面を改質する処理室と、主たる発光波長が243nm以下の波長域にある紫外光で前記処理室内のワークを照射する紫外光源と、前記処理室内のワークを、前記処理室の外側の室温より高い温度まで加熱する、少なくとも一つの加熱器と、を備える。本発明の光改質方法は、ワークを処理室内に搬入し、前記処理室の外側の室温より高い温度の前記ワークを、主たる発光波長が243nm以下の波長域にある紫外光で照射して、前記ワークの表面を改質する。
【選択図】図1

Description

この発明は、ワークを表面改質するための光改質装置及び光改質方法に関する。
近年、自動車又は建設機械等の窓に使用するケイ酸ガラスの代替材料として、透明合成樹脂を用いる樹脂グレージングが注目されている。樹脂グレージングに用いられる透明合成樹脂は、ガラスと同程度の高い可視光透過性を有しつつ、ケイ酸ガラスに比べて半分程度の質量(比重)を呈する。さらに、樹脂グレージングに用いられる透明合成樹脂は、成形性、耐衝撃性又は断熱性が高いという特徴を有する。このような透明合成樹脂の具体材料として、ポリカーボネートが例示される。
しかしながら、ポリカ―ボネート等の透明合成樹脂の耐摩耗性又は耐候性は、ケイ酸ガラスよりも低い。そこで、透明合成樹脂の耐摩耗性及び耐候性を高めるために、透明合成樹脂上に、ポリシロキサン系のハードコート膜を成膜する技術が知られている。
さらに、このようなハードコート膜を改良する技術が知られている。例えば、特許文献1には、主たる発光波長が172nmの真空紫外光でハードコート膜を照射し、その後に、222nm、248nm、308nmなどの近紫外光でハードコート膜を照射して、ハードコート膜の表面に二酸化ケイ素を主成分とする硬化層を形成する表面改質方法が開示されている。
特開2016-183235号公報
特許文献1に記載の表面改質方法では、真空紫外光を放射する光源の他に、近紫外光を放射する光源を準備する必要があり、装置が高コスト化又は複雑化する。そこで、本発明は、低コストで単純な構造で、厚い表面改質層を形成できる光改質装置及び光改質方法を提供することを目的とする。
本発明の光改質装置は、ワークの表面を改質する処理室と、
主たる発光波長が243nm以下の波長域にある紫外光で前記処理室内のワークを照射する紫外光源と、
前記処理室内のワークを、前記処理室の外側の室温より高い温度まで加熱する、少なくとも一つの加熱器と、を備える。
本発明は、「主たる発光波長が243nm以下の波長域にある紫外光」によりワークの表面の高分子材料を改質する。詳細は後述するが、この紫外光による表面改質は、次に示すメカニズムにより行われると推定される。まず、「主たる発光波長が243nm以下の波長域にある紫外光」が、ワーク表面の高分子材料の原子間結合を光開裂するとともに、当該高分子材料に含まれる酸素分子を光分解する。そして、光開裂した原子に、光分解によって生じた励起状態の酸素原子が結合し、前記高分子材料が硬化した硬化層を形成する。
本発明者らは、鋭意研究の結果、以下の知見を得た。光分解により高分子材料で構成される膜内の酸素分子が減少すると、処理室内の雰囲気ガスに含まれる酸素分子が当該高分子材料に浸入し、高分子材料内部へ拡散する。このとき、高分子材料中での酸素分子の拡散速度を大きくすると、酸素分子が高分子材料のより奥まで到達するため、硬化層の厚みが増すことがわかった。よって、ワーク中での酸素分子の拡散速度を高めるために、ワークを、処理室の外側の室温(例えば、25℃)より高い温度まで加熱する。
ワークを加熱する加熱器には種々の態様が考えられる。また、加熱器の態様は一種類でも構わないし、複数種類を組合せても構わない。加熱器の例として、発熱体をワークの下方に配置し、ワークを加熱しても構わない。発熱体は、例えば、電熱線や、加熱流体を通流させる配管である。
前記処理室にガスを供給するガス供給口を備え、
前記加熱器の少なくとも一つは、前記ガスを加熱するガス加熱器であっても構わない。
処理室に供給するガスとは、空気等の酸素を含むガスでも構わないし、窒素ガス等の不活性ガスでも構わない。
前記加熱器の少なくとも一つは、赤外光で前記ワークを照射する赤外光源であっても構わない。
前記ワークの温度を測定するセンサと、
前記センサで測定した前記ワークの温度に基づいて、前記加熱器の少なくとも一つから出力される加熱エネルギーを制御する制御部と、を備えても構わない。
前記制御部は、前記紫外光源の点灯中に前記加熱エネルギーを減少させても構わない。紫外光源のエネルギーを受けてワークが昇温することがあるので、加熱エネルギーを減少させても、ワークが処理室の外側の室温より高い状態を維持できる。
本発明の光改質方法は、ワークを処理室内に搬入し、
前記処理室の外側の室温より高い温度を示す前記ワークを、主たる発光波長が243nm以下の波長域にある紫外光で照射して、前記ワークの表面を改質する。
前記ワークは、前記ワークの下方に配置された発熱体、ガス加熱器によって加熱された、前記処理室内に供給される加熱ガス、赤外光で前記ワークを照射する赤外光源、の少なくとも一つによって加熱されても構わない。
前記紫外光源の点灯中に、前記加熱器の加熱エネルギーを減少させても構わない。
前記ワークを前記処理室に搬入する前に、前記ワークを加熱しても構わない。
前記ワークは、可視光透過性の合成樹脂からなる基材と、ポリシロキサン系の膜とを含む積層体であっても構わない。
これにより、低コストで単純な構造で、厚い表面改質層を形成できる光改質装置及び光改質方法を提供できる。
光改質装置の第一実施形態の構成を模式的に示す断面図である。 ワークの一例を模式的に示す断面図である。 ハードコート膜のガラス化が進行する様子を示す模式図である。 SiO層の温度とSiO層中のOの拡散係数との関係を示すグラフである。 ワークの温度とSiOを主成分とする表面改質層の厚みとの関係を示すグラフである。 光改質装置の第二実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
図面を参照しながら各実施形態を説明する。なお、本明細書に開示された各図面は、あくまで模式的に図示されたものである。すなわち、図面上の寸法比と実際の寸法比とは必ずしも一致しておらず、また、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
以下において、各図面は、適宜、XYZ座標系を参照しながら説明される。なお、本明細書において、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「X方向」と記載されている場合には、「+X方向」と「-X方向」の双方が含まれる。Y方向及びZ方向についても同様である。+Z方向は、重力の作用する方向である。
<第一実施形態>
[光改質装置の概要]
図1は、光改質装置の第一実施形態を模式的に示す断面図である。光改質装置100は、ワーク3の表面を改質する処理室2と、紫外光源10と、制御部5と、ワーク3を加熱する加熱器6と、搬送部4と、を備える。ワーク3は、処理室2内で表面の改質が行われる対象物であり、詳細は後述される。
本実施形態において、処理室2は、搬送方向(図面上X方向)に沿って実質的に等間隔に配置された複数の紫外光源10を取り付けるためのランプハウスによって構成される。ワーク3が処理室2内に搬入された状態において、ワーク3と紫外光源10との間には、図面上のZ方向に離間距離が確保されている。そして、ランプハウスである処理室2に取り付けられた複数の紫外光源10から、ワーク3に向けて紫外光L1が出射される。紫外光L1がワーク3を照射することで、ワーク3の表面が改質される。
紫外光源10は、主たる発光波長が243nm以下の波長域にある紫外光L1を放射する光源である。「主たる発光波長が243nm以下の波長域にある紫外光」は、真空紫外光又は深紫外光と言われる波長帯域に属する。
本明細書において「主たる発光波長」とは、ある波長λに対して±10nmの波長域Z(λ)を発光スペクトル上で規定した場合において、発光スペクトル内における全積分強度に対して40%以上の積分強度を示す波長域Z(λi)における、波長λiを指す。例えばXeなどの発光ガスが封入されているエキシマランプのように、半値幅が極めて狭く、且つ、特定の波長においてのみ光強度を示す光源においては、通常は、相対強度が最も高い波長(主ピーク波長)をもって、主たる発光波長として構わない。
本実施形態では、紫外光源10として、Xeを含む発光ガスが封入されたXeエキシマランプを使用している。Xeエキシマランプは、主たる発光波長が172nmのエキシマ光を放射する。発光ガスの材料を替えることで、主たる発光波長を異ならせることができる。例えば、Krガスの場合には146nmであり、ArBrガスの場合には165nmであり、ArFガスの場合には193nmである。なお、Si-C結合及びO-O結合の結合エネルギーよりも高い光エネルギーを示す波長の紫外線を発する構成であれば、紫外光源10はエキシマランプには限定されず、例えばLED等の固体光源であっても構わない。また、紫外光源10は、上記で例示した発光ガスが封入された発光管の管壁等に蛍光体を塗布してなる誘電体バリア放電ランプであっても構わない。
本実施形態において、搬送部4は、ワーク3を保持した状態で、処理室2内に搬入したり、処理室2からワーク3を搬出したりするのみならず、表面改質中のワーク3を保持する。本実施形態の搬送部4は、それぞれモータMに接続された複数のローラ41で構成されている。モータMは、制御部5によって制御される。ローラ41の回転により、ワーク3の搬入搬出を行う。なお、搬送部4は、ローラ以外の公知の手段で構成しても構わない。そのような公知の手段として、例えば、ベルトコンベアやロボットアームが挙げられる。
加熱器6はワーク3を加熱し、ワーク3の温度を、処理室2の外側の室温より高くする。ワーク3を加熱する目的は、表面改質を促進し、表面改質層の厚みを増加させることにある。ワーク3を加熱する目的の詳細及び加熱器6の具体例は、後述する。
[ワーク]
図2は、ワーク3の一例を模式的に示す断面図である。ワーク3は、可視光透過性の合成樹脂からなる基材31と、基材31の保護膜として使用されるハードコート膜33と、基材31とハードコート膜33との接合を強化するプライマー層32とを含む積層体である。ワーク3の形状や寸法は、様々な態様が考えられる。ワーク3は、例えば、長辺が1500mmを呈する矩形の板状体である。
基材31の材料は特に限定されないが、本実施形態では、基材31の材料は、ポリカーボネートである。基材31とハードコート膜33の間のプライマー層32は、アクリル樹脂を主成分とする材料である。本実施形態では、プライマー層32として、トプロン社のASプライマーを使用している。なお、プライマー層は設けなくても構わない。
ハードコート膜33は、シロキサン結合で構成された主鎖に、側鎖として有機基が結合した、ポリシロキサン系の高分子材料である。このような高分子材料として、例えば、ジメチルポリシロキサンを主とする材料が挙げられる。本実施形態では、トプロン社のAS100を使用している。
ワーク3は、例えば、以下のようにして製造される。まず、基材31を洗浄して表面に付着しているゴミを取り除く。基材31をプライマー液に浸漬するか、又は、スプレーガンを使用してプライマーの溶液を基材31に吹きつけて塗装し、所定の温度で一定時間乾燥させて、プライマー層32を形成する。
その後、ポリシロキサン系の高分子材料の溶液に浸漬するか、又は、スプレーガンで吹きつけて塗装し、所定の温度で一定時間乾燥させて、ハードコート膜33を形成する。プライマー液又はハードコート膜の液の塗装は、上述の方法の他に、流し塗り(フローコート)しても構わない。
[表面改質メカニズム]
ワーク3の表面改質メカニズムについて説明する。上述したように、ワーク3の表面は、ジメチルポリシロキサンを主とするハードコート膜33で覆われている。主たる発光波長が243nm以下の波長域にある紫外光(hν)でワーク3の表面を照射すると、以下の(1)式に示す化学反応が生じる。
Figure 2022130815000002
この化学反応は、以下のメカニズムによって起こることが知られている。まず、紫外光(hν)が、ジメチルポリシロキサンの側鎖におけるSi-CH結合を光開裂させる。なお、紫外光(hν)が、ジメチルポリシロキサンの主鎖に作用する場合には、主鎖を開裂させて低分子量化を誘起する。
紫外光(hν)は、ジメチルポリシロキサンの光開裂と同時に、ハードコート膜33中に含まれるOを光分解し、励起状態の酸素(以降、「酸素ラジカル」という。)を生成する。この光分解を以下の(2)式に示す。(2)式において、酸素ラジカルは、O(D)及びO(P)と示されている。
Figure 2022130815000003
そして、生成された酸素ラジカルが、Si-C結合の光開裂した部分に結合する。これにより、(1)式の右辺に示される化学構造が得られる。なお、(1)式における「O1/2」は、(1)式に示されるSiとともに、隣接するSiとも結合していることを表す。この化学反応は、ガラス化(SiO化)とも呼ばれる。このようにして、ハードコート膜33中の表面では、ハードコート膜33中に含まれるOを消費してガラス化が進行する。ワーク3の表面のガラス化が進行すると硬化して、ワーク3の耐摩耗性及び耐候性が向上する。
紫外光(hν)は、Si-C結合及びO-O結合の結合エネルギーよりも高い光エネルギーを示す波長成分を含む必要がある。Si-C結合の結合エネルギーは約3.2eVであり、波長換算で388nmである。また、O-O結合の結合エネルギーは約5.1eVであり、波長換算で約243nmである。主鎖を形成するSi-O結合の結合エネルギーは約4.7eVであり、波長換算で264nmである。よって、これらの結合を全て切断するには、243nm以下の波長域にある紫外光(hν)を要する。
図3は、ハードコート膜33のガラス化が進行する様子を示す模式図である。この模式図では、酸素分子とSiOのみを模式的に図示しており、他の分子や酸素ラジカルを図示していない。ガラス化に伴い、ハードコート膜33中に含まれているOが減少する。ハードコート膜33中には、Oが潤沢に存在しないため、紫外光でワークが照射されるに伴い、ハードコート膜33中に含まれているOが枯渇する。
しかしながら、本発明者らは、ハードコート膜33に接する雰囲気中にOがあれば、ハードコート膜33中に含まれるOが減少しても、当該雰囲気中のOがハードコート膜33中に浸入して拡散し、ガラス化が進行することを発見した。
ガラス化する前の領域に比べ、ガラス化したSiOの領域では、Oの拡散速度が小さい。Oが十分に拡散する前にガラス化が進行しすぎると、Oがハードコート膜33の内部まで拡散できず、その結果、ガラス化はハードコート膜33の表面近傍に留まってしまう。
そこで、ガラス化の進行に遅滞することなく、ハードコート膜33に接する雰囲気中のOを内部に拡散させる必要がある。そこで、ワーク3を昇温させて、ハードコート膜33中のガラス化したSiOの領域でのOの拡散速度を向上させる。これにより、ガラス化の進行に追従しながら、ハードコート膜33の内部までOを拡散させることができる。その結果、ガラス化した表面改質層の厚みを増加させることができる。
[ワークの温度と表面改質層の厚み]
SiO層の温度とSiO層中のOの拡散係数との関係を、シミュレーションにより求めた。図4Aは、SiO層の温度(単位:℃)を横軸に、SiO層中のOの拡散係数(単位:cm-1)を縦軸にプロットしたグラフである。図4Aから、温度が上昇するにつれてOの拡散係数が大きくなっていることが分かる。このグラフより、例えば、ワーク3の温度が75℃であるときのSiO層中でのOの拡散係数は、ワーク3の温度が25℃であるときのSiO層中でのOの拡散係数の、1500倍に到達することがわかる。
図4Bは、温度を異ならせた3つのワーク3に対し、上記紫外光による表面改質を施し、SiOを主成分とする表面改質層の厚み(単位:nm)をXPSにより求めた実験結果である。なお、全てのサンプルにおいて、ワーク3の温度以外の実験条件は全て統一している。例えば、処理室2内のO濃度は0.1%、照射距離は50mm、積算光量は3000mJ/cmに統一している。図4Bから、SiOを主成分とする表面改質層の厚みが、ワーク3の温度に対してほぼ線形に増加していることがわかる。よって、図4A及び図4Bにより、ワーク3の温度を高めると、ワーク3に含まれるSiO層中のOの拡散速度が向上し、表面改質層の厚みが増加することがわかる。
以上より、ハードコート膜33は、処理室2の外側の室温(例えば、25℃)より高い温度になるまで加熱する。ワーク3の温度は、高くなるほど表面改質層の厚みが増加して、好ましい。ただし、加熱の上限温度は、ハードコート膜33に亀裂が入らず焼損しない温度、例えば100℃にするとよい。
[加熱器]
図1に戻り、加熱器6の詳細を説明する。本実施形態の加熱器6は、ワーク3を下方に配置された複数の発熱体61から構成される。それぞれの発熱体61は、搬送部4のローラ41の間に配置され、ワーク3を均等に加熱する。それぞれの発熱体61には、電熱線が内蔵されている。さらに、処理室2内には、ワーク3の温度を測る温度センサ(不図示)が配置されている。制御部5は、温度センサで測定したワーク3の温度に基づいて、ワーク3の温度が所望の範囲を保つように、発熱体61から出力される加熱エネルギーを制御する。
変形例として、発熱体61は電熱線を内蔵せず、加熱流体を流すための配管を内蔵してもよい。また、光改質装置100の処理室2内にワーク3を搬入する前に、処理室2の外で、別の加熱器を使用してワーク3を加熱し、加熱したワーク3が室温まで下がらないうちに処理室2の内部に搬入しても構わない。このような場合には、光改質装置100にとって、加熱器6は必須ではない。光改質装置100においてワーク3の加熱時間が不要となったり、ワーク3の加熱時間が短くなったりすると、光改質装置100のタクトタイムの短縮化を図ることができる。
[処理室]
処理室2の詳細を説明する。処理室2を構成するランプハウスは、X方向に並べられた複数のランプユニット20を備え、各ランプユニット20内に、X方向に離間して配置された複数の紫外光源10が取り付けられるように構成されている。ただし、処理室2に搭載されている全ての紫外光源10が、一つのランプユニット20として取り付けられるように構成されても構わない。各紫外光源10は、X方向とは異なる方向(ここではY方向とする。)に延伸する形状を呈している。また、以下では、+Z方向が鉛直下向きであるものとして説明するが、本発明は、光改質装置100が設置される向きを問わない。
処理室2は、X方向に係る一方の端部に開口端21を備える。本実施形態では、処理室2が開口端21を閉塞可能なシャッター22を備える。シャッター22の位置を移動させることで、開口端21が開放され、ワーク3を処理室2内に搬入可能な状態が実現される。
本実施形態では、処理室2は、X方向に係る他方の端部に閉塞端23を有する。すなわち、処理室2では、開口端21とは反対側の端部が閉塞されている。このため、ワーク3は、閉塞端23よりも+X側の位置に搬送されることがなく、言い換えれば、ワーク3は、+X側の方向に向かって処理室2の外側に搬出されることがない。
[ガス供給口]
本実施形態において、処理室2は、ランプユニット20に対応して配置された、ガス供給口71を有する。ガス供給口71は、処理ガス供給源70Aと不活性ガス供給源70Bとに接続される。そして、ガス供給口71から、処理室2内に、処理に使用する処理ガスと不活性ガスとを所望の割合で混合して供給できる。なお、処理ガスと不活性ガスを混合する混合部(不図示)を、ガス供給口71と、処理ガス供給源70A及び不活性ガス供給源70Bとの間に配置してもよい。
処理ガスは、空気等の、酸素を含むガスである。本実施形態では、処理ガスはCDA(クリーンドライエア)である。これにより、保護膜中に拡散させるためのOを供給できる。なお、処理室2内には、通常、大気で満たされており、保護膜中に拡散させるOはワーク3の周囲に存在するため、処理室内のOで十分である場合には、処理ガスを供給しなくてもよい。
不活性ガスは、例えば、窒素ガスである。紫外光源10が放射する光が、酸素を含むガスに吸収されやすく、不活性ガスに吸収されにくい場合には、不活性ガスを処理室2内に供給する。これにより、処理室2内の酸素濃度を全体的に低下させ、紫外光源10が放射する光の減衰を抑えて、ワーク3に所定強度の光を到達させることができる。
処理室2は、ランプユニット20に対応して配置された、排気口72を備えている。図1では、排気口72が開放状態である場合が図示されているが、排気口72は、開閉制御を可能とするものとしても構わない。
処理室2は、排気口72の近くに、酸素濃度測定ポート74を有している。酸素濃度測定ポート74に酸素濃度計73を接続し、処理室2内の酸素濃度を測定できる。酸素濃度計73の測定結果を制御部5に送り、制御部5は、測定結果に基づいて、処理ガスの供給量と不活性ガスの供給量を制御できる。
具体的には、例えば、酸素濃度計73の測定結果が規定範囲よりも高い場合には、処理ガスの供給量を下げるか、不活性ガスの供給量を上げる。酸素濃度計73の測定結果が規定範囲よりも低い場合には、処理ガスの供給量を上げるか、不活性ガスの供給量を下げる。酸素濃度を規定範囲に保つことにより、紫外光源10が放射する紫外光の減衰を抑えて、ワーク3に所定強度の光を到達させつつ、ワーク3内に進入する酸素量を確保できる。
[光改質装置の変形例]
上述した例では、ワーク3は、搬送部4であるローラ41の上で改質処理されるが、変形例として、光改質装置100は、処理室2内にワーク3を載置するテーブルを、搬送部とは別に有していてもよい。そして、何らかの搬送部が、処理室2の外から当該テーブルへワーク3を搬入したり、当該テーブルから処理室2の外へワーク3を搬出したりする機構であっても構わない。
なお、ワーク3は、図示しないワーク保持体によって保持されており、搬送部4によってワーク保持体ごと搬送されることで、ワーク3が処理室2内に搬入されるものとしても構わない。
処理室2は、閉塞端23である端部にも、もう一つの開口端を設けても構わない。すなわち、処理室2はX方向に係る両方の端部に一つずつ開口端を備えても構わない。両方の端部に一つずつ開口端を使用するとき、例えば、異なる開口端からワーク3を交互に搬入及び搬出させてもよいし、一方の開口端をワーク3の搬入にのみ使用し、他方の開口端をワーク3の搬出にのみ使用してもよい。
[光改質方法]
光改質方法を説明する。処理室2のシャッター22を開け、搬送部4を使用してワーク3を処理室2内に搬入して、シャッター22を閉じる。処理室2に搬入されたワーク3は、加熱器6(発熱体61)を使用して直ちに加熱される。ワーク3が所定の温度まで昇温すると、紫外光源10が紫外光を放射して、ワーク3の表面改質を行う。
紫外光L1でワーク3を照射すると、紫外光L1のエネルギーを受けてワーク3が昇温することがある。そのため、紫外光でワーク3を照射する間、加熱器6によるワーク3の加熱を停止したり、加熱器6から出力される加熱エネルギーを紫外光の照射前に比べて減少させたりしても構わない。加熱エネルギーを減少させても、ワーク3が室温より高い状態を維持できる。
表面改質が終了すると、紫外光源10を消灯し、処理室2のシャッター22を開けて、搬送部4を使用してワーク3を処理室2内に搬出する。次に処理するワークがある場合は、当該ワークを処理室2内に搬入し、シャッター22を閉じる。
<第二実施形態>
図5は、光改質装置の第二実施形態を模式的に示す断面図である。以下に説明する以外の事項は、第一実施形態と同様に実施できる。
本実施形態の光改質装置200は、発熱体61の他に、二種類の態様の加熱器を追加している。一つは、ガス供給口71からワーク3の表面に向けて、加熱したガスを吹き付ける態様である。本実施形態では、ガス供給口71は、ガス加熱器67Aを介して処理ガス供給源70Aに接続されるとともに、ガス加熱器67Bを介して不活性ガス供給源70Bに接続される。ガス加熱器(67A,67B)は制御部5に接続され、それぞれのガスが所望の温度になるように制御される。加熱されたガスをワーク3に吹き付けることで、ワーク3を昇温させる。
本実施形態の光改質装置200は処理ガスと不活性ガスの両方を加熱制御するが、処理ガスと不活性ガスのいずれか一方を加熱制御しても構わない。ガスの加熱方法について、何らかのガス加熱室においてガスが加熱されても構わないし、ガス供給口71に接続されるガス供給配管の加熱により、ガスが加熱されても構わない。
もう一つの加熱器の態様は、二つの赤外光源68である。赤外光源68は、電源部を介して制御部5に接続され(不図示)、赤外光源68がワーク3に向けて所定の光量の赤外光L2を放射し、ワーク3を昇温させる。なお、一般に、赤外光源68は近紫外光源に比べて単純構造であり低コストである。なお、赤外光源68からの赤外光が、処理室23を透過する場合には、赤外光源68は処理室の外側に配置していても構わない。
光改質装置200に開示された加熱器は、発熱体61、ガス加熱器(67A,67B)及び赤外光源68の三種類の加熱器を有しているが、光改質装置が三種類の加熱器を全て備えていなくても構わない。3種類の加熱器を選択的に備えているとよい。また、上述したように、既に昇温状態にあるワーク3を搬入する場合には、光改質装置が加熱器を備えていなくてもよい。
以上で二つの実施形態及び変形例を説明した。しかしながら、本発明は、上記した各実施形態及び変形例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、上記の各実施形態に種々の変更又は改良を加えたりすることができる。また、各実施形態を組み合わせても構わない。
例えば、上述した処理室2はランプハウスであり、処理室2の内部に紫外光源10を備えていたが、処理室2の外部に紫外光源を配置し、当該紫外光源から処理室2の内部に配置されたワーク3を改質処理しても構わない。
2 :処理室
3 :ワーク
4 :搬送部
5 :制御部
6 :加熱器
10 :紫外光源
20 :ランプユニット
21 :開口端
22 :シャッター
23 :閉塞端
31 :基材
32 :プライマー層
33 :ハードコート膜
41 :ローラ
61 :発熱体
67A,67B:ガス加熱器
68 :赤外光源
70A :処理ガス供給源
70B :不活性ガス供給源
71 :ガス供給口
72 :排気口
73 :酸素濃度計
74 :酸素濃度測定ポート
100,200:光改質装置
L1 :紫外光
L2 :赤外光
M :モータ

Claims (11)

  1. ワークの表面を改質する処理室と、
    主たる発光波長が243nm以下の波長域にある紫外光で前記処理室内のワークを照射する紫外光源と、
    前記処理室内のワークを、前記処理室の外側の室温より高い温度まで加熱する、少なくとも一つの加熱器と、を備えることを特徴とする光改質装置。
  2. 前記加熱器の少なくとも一つは、前記ワークの下方に配置された発熱体を有することを特徴とする、請求項1に記載の光改質装置。
  3. 前記処理室にガスを供給するガス供給口を備え、
    前記加熱器の少なくとも一つは、前記ガスを加熱するガス加熱器であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光改質装置。
  4. 前記加熱器の少なくとも一つは、赤外光で前記ワークを照射する赤外光源であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の光改質装置。
  5. 前記ワークの温度を測定するセンサと、
    前記センサで測定した前記ワークの温度に基づいて、前記加熱器の少なくとも一つから出力される加熱エネルギーを制御する制御部と、を備えることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の光改質装置。
  6. 前記制御部は、前記紫外光源の点灯中に前記加熱エネルギーを減少させることを特徴とする、請求項5に記載の光改質装置。
  7. ワークを処理室内に搬入し、
    前記処理室の外側の室温より高い温度を示す前記ワークを、主たる発光波長が243nm以下の波長域にある紫外光で照射して、前記ワークの表面を改質することを特徴とする光改質方法。
  8. 前記ワークは、前記ワークの下方に配置された発熱体、ガス加熱器によって加熱された、前記処理室内に供給される加熱ガス、赤外光で前記ワークを照射する赤外光源、の少なくとも一つによって加熱されることを特徴とする、請求項7に記載の光改質方法。
  9. 前記紫外光源の点灯中に、前記加熱器の加熱エネルギーを減少させることを特徴とする、請求項8に記載の光改質方法。
  10. 前記ワークを前記処理室に搬入する前に、前記ワークを加熱することを特徴とする、請求項7~9のいずれか一項に記載の光改質方法。
  11. 前記ワークは、可視光透過性の合成樹脂からなる基材と、ポリシロキサン系の膜とを含む積層体であることを特徴とする、請求項7~10のいずれか一項に記載の光改質方法。
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