JP2020087551A - 複合撚線導体及び耐屈曲電線 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐屈曲性を確保しつつ形状安定性を向上させることが可能な複合撚線導体及び耐屈曲電線を提供する。【解決手段】複合撚線導体10は、中心集合撚線11aと、中心集合撚線11aの周囲に重なって設けられる第1層複合撚線11bと、第1層複合撚線11bの周囲に重なって設けられる第2層複合撚線11cとを備えている。中心集合撚線11aは、第1方向に下撚りされており、第1層複合撚線11bは、第1方向と反対となる第2方向に下撚り及び本撚りされており、第2層複合撚線11cは、第1方向に下撚り及び本撚りされている。中心集合撚線11a、第1層複合撚線11b、及び第2層複合撚線11cは、下撚りピッチが略同じとされ、第2層複合撚線11cの本撚りピッチを第1層複合撚線11bの本撚りピッチで割り込んだピッチ倍率が1.00以上2.44以下とされている。【選択図】図1

Description

本発明は、複合撚線導体及び耐屈曲電線に関する。
従来、屈曲への耐久性と形状の安定性とを改善することを目的とした撚線導体が提案されている。この撚線導体は、金属素線を撚って形成された内層と、内層上に金属素線を撚って形成された外層とを備えた2層構造となっている。内層と外層との金属素線は同じ方向に撚られているが、その撚り角度が異なっている(例えば特許文献1参照)。
特開2014−137876号公報
本件発明者は、導電性の素線を複数本撚る下撚りによって形成される集合撚線を更に複数本撚る本撚りによって形成される複合撚線導体及び複合撚線導体を備える耐屈曲電線について研究している。
ここで、特許文献1においては、「隣り合う層間での素線同士の接触が軽減されると共に、内側の層において隣り合う素線同士の間隙に、外側の層の素線が入り込むことが抑制されるので撚線導体の屈曲への耐久性と形状の安定性とを改善できる」と述べられている。しかし、実際には撚り方向が同じであることから、素線が隣り合う層の素線間に入ってしまい、少なくとも形状安定性を改善させるとは言い難い。
このため、特許文献1に記載の技術を複合撚線導体に適用したとしても、同様に、耐屈曲性を確保しつつ形状安定性を向上させることができない。
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、耐屈曲性を確保しつつ形状安定性を向上させることが可能な複合撚線導体及び耐屈曲電線を提供することにある。
本発明は、中心集合撚線と、中心集合撚線の周囲に重なって設けられる第1層複合撚線と、第1層複合撚線の周囲に重なって設けられる第2層複合撚線とを備えている。中心集合撚線は、第1方向に下撚りされており、第1層複合撚線は、第1方向と反対となる第2方向に下撚り及び本撚りされており、第2層複合撚線は、第1方向に下撚り及び本撚りされている。中心集合撚線、第1層複合撚線、及び第2層複合撚線は、下撚りピッチが略同じとされ、第2層複合撚線の本撚りピッチを第1層複合撚線の本撚りピッチで割り込んだピッチ倍率が1.00以上2.44以下とされている。
本発明によれば、第1層複合撚線は第2方向に下撚り及び本撚りされ、且つ、第2層複合撚線は第1方向に下撚り及び本撚りされているため、第1層及び第2層複合撚線のそれぞれは下撚り方向と本撚り方向とが一致することとなる。これにより、各層の下撚り同士の素線は、隣り合う下撚りの素線間に入り込み接触が軽減され、耐屈曲性を確保することができる。
また、中心集合撚線は第1方向に下撚りされており、第2層複合撚線は第1方向に下撚り及び本撚りされているのに対し、第1層複合撚線は、反対となる第2方向に下撚り及び本撚りされている。このため、中心集合撚線を構成する金属素線及び第2層複合撚線の集合撚線を構成する金属素線は、第1層複合撚線の金属素線間に入り難くなる。これにより、撚り合わせ後の導体形状が扁平を起こし難く、形状安定性を向上させることができる。
加えて、本実施形態において中心集合撚線、第1層複合撚線、及び第2層複合撚線は下撚りピッチが略同じとされている。このため、屈曲時の下撚りつぶれを各層で均等にし、電線の扁平を抑制することができる。
特に、第2層複合撚線の本撚りピッチを第1層複合撚線の本撚りピッチで割り込んだピッチ倍率が1.00以上2.44以下とされているため、ピッチ倍率が1未満となって製造不可となってしまうこともなく、ピッチ倍率が2.44を超えて撚り浮きの発生頻度を抑えて撚り浮きによる耐屈曲特性の低下の可能性を低減させることができる。
従って、耐屈曲性を確保しつつ形状安定性を向上させることができる。
本発明によれば、耐屈曲性を確保しつつ形状安定性を向上させることが可能な複合撚線導体及び耐屈曲電線を提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る複合撚線導体を含む耐屈曲電線の一例を示す斜視図である。 図1に示した複合撚線導体を模式的に示す断面図であり、(a)は第1の例を示し、(b)は第2の例を示している。 本実施形態に係る複合撚線導体の撚り方向を示す図表である。 耐屈曲電線の断面を示す図であり、(a)は全ての撚り方向が同一方向とされたときの耐屈曲電線の断面を示し、(b)は図2及び図3に示した第1の例に係る耐屈曲電線の断面を示している。 本実施形態の実施例及び比較例に係る複合撚線導体の詳細を示す図表である。 実施例1〜3及び比較例1に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線の屈曲回数と扁平率を示す図表である。 実施例1〜3及び比較例1に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線の屈曲回数と扁平率を示すグラフである。 実施例2及び比較例2,3に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線の屈曲回数と扁平率を示す図表である。 実施例2及び比較例2,3に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線の屈曲回数と扁平率を示すグラフである。 実施例2,4,5及び比較例2,4に係る耐屈曲電線を示す図表である。 実施例2,4,5及び比較例2,4に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線の屈曲回数と扁平率を示す図表である。 実施例2,4,5及び比較例2,4に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線の屈曲回数と扁平率を示すグラフである。
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
図1は、本発明の第1実施形態に係る複合撚線導体を含む耐屈曲電線の一例を示す斜視図であり、図2は、図1に示した複合撚線導体を模式的に示す断面図であり、(a)は第1の例を示し、(b)は第2の例を示している。図1に示すように、耐屈曲電線1は、複合撚線導体10と、複合撚線導体10上に設けられる絶縁体20とから構成されている。
複合撚線導体10は、導電性の金属素線12が複数本下撚りされて形成された集合撚線11を複数本備えた構成となっている。ここで、本実施形態における集合撚線11は、例えば純銅からなる金属素線12を126本撚り合わせることにより構成されている。金属素線12の径は例えば0.08mm又はこれ未満である。このような金属素線12を撚り合わせて集合撚線11を構成する際の撚りを下撚りという。
本実施形態において複合撚線導体10は、中心集合撚線11aと、第1層複合撚線11bと、第2層複合撚線11cとの3層構造となっている。中心集合撚線11aは、最も断面中心側に位置する集合撚線11である。第1層複合撚線11bは、中心集合撚線11aの周囲に重なって設けられる複数本の集合撚線11が撚られて形成されたものである。第2層複合撚線11cは、第1層複合撚線11bの周囲に重なって設けられる複数本の集合撚線11が撚られて形成されたものである。ここで、複数本の集合撚線11から第1層複合撚線11bや第2層複合撚線11cを形成する際の撚りを本撚りという。
本実施形態において、例えば第1層複合撚線11bは6本の集合撚線11が本撚りされて構成されており、第2層複合撚線11cは12本の集合撚線11が本撚りされて構成されている。しかしながら、集合撚線11の本数は上記に限られるものではなく、例えば、第1層複合撚線11bは図1に示すように8本の集合撚線11が本撚りされて構成されていてもよい。さらに、第2層複合撚線11cも12本に限らず、18本等により構成されていてもよい。
加えて、本実施形態において複合撚線導体10は以下のような撚り構成となっている。図3は、本実施形態に係る複合撚線導体10の撚り方向を示す図表である。
図3に示すように、第1の例(図2(a)の例)において、中心集合撚線11aはS撚りとされている。また、第2層複合撚線11cについても、下撚り及び本撚りの双方でS撚りとされている。これに対して第1層複合撚線11bは、下撚り及び本撚りの双方でZ撚りとされている。すなわち、3層のうち、1層目と3層目とは同じ方向(第1方向)に下撚り及び本撚りされ、2層目がこの方向と反対となる方向(第2方向)に下撚り及び本撚りされている。
また、第2の例(図2(b)の例)のように、中心集合撚線11a、及び、第2層複合撚線11cについて、下撚り及び本撚りの双方でZ撚りとされ、第1層複合撚線11bが下撚り及び本撚りの双方でS撚りとされていてもよい。
このような構成とすることにより、本実施形態に係る耐屈曲電線1は複合撚線導体10が楕円状となり難いようになっている。図4は、耐屈曲電線の断面を示す図であり、(a)は全ての撚り方向が同一方向とされたときの耐屈曲電線の断面を示し、(b)は図2及び図3に示した第1の例に係る耐屈曲電線1の断面を示している。
図4(a)に示すように、中心集合撚線11a、第1層複合撚線11b、及び第2層複合撚線11cの下撚り及び本撚りの全ての撚り方向が同一方向である場合には、金属素線12が他の金属素線12間に入り易くなってしまい、撚り合わせ後の導体形状が扁平を起こしている。
これに対して、本実施形態では、中心集合撚線11aを構成する金属素線12及び第2層複合撚線11cの集合撚線11を構成する金属素線12は、第1層複合撚線11bの金属素線12間に入り難くなる。この結果、図4(b)に示すように、撚り合わせ後の導体形状が扁平を起こし難く、断面視して真円に近いものとすることができる。
さらに、本実施形態においては、第1層複合撚線11b及び第2層複合撚線11cのそれぞれは下撚り方向と本撚り方向とが一致しているため、各層の下撚り同士の素線12は、隣り合う下撚りの素線12間に入り込み接触が軽減され、耐屈曲性を向上させることができる。
加えて、本実施形態において中心集合撚線11a、第1層複合撚線11b、及び第2層複合撚線11cは下撚りピッチが略同じ(誤差11%以内)とされている。このため、屈曲時の下撚りつぶれを各層で均等にし、電線1の扁平を抑制することができる。
さらには、本実施形態に係る耐屈曲電線1において、第2層複合撚線11cの本撚りピッチを、第1層複合撚線11bの本撚りピッチで割り込んだピッチ倍率が1.00以上2.44以下とされている。
ピッチ倍率が1未満であると製造不可となるからである。また、ピッチ倍率が2.44を超えると、撚り浮きが発生し易くなり、撚り浮きによる耐屈曲特性の低下が発生し易くなってしまうからである。
次に、実施例と比較例とを説明する。図5は、本実施形態の実施例及び比較例に係る複合撚線導体の詳細を示す図表である。
図5に示すように、実施例1〜3及び比較例1に係る複合撚線導体は導体サイズが全て12sqである。金属素線には純銅を用いた。
実施例1〜3及び比較例1については、径が0.08mmとなる金属素線を126本下撚りして集合撚線とし、この集合撚線を19本用いて複合撚線導体を構成した。なお、中心撚線は1本の集合撚線で構成し、第1層集合撚線は6本の集合撚線で構成し、第2層複合撚線は12本の集合撚線で構成した。このような導体部の断面積は12.03mmとなり、導体外径は5.20mmとなった。
このような実施例1〜3及び比較例1については、中心撚線の下撚り方向をS方向とし、第1層集合撚線の下撚り方向及び本撚り方向をZ方向とし、第2層集合撚線の下撚り方向及び本撚り方向をS方向とした。中心撚線、第1層集合撚線及び第2層集合撚線の下撚りピッチを全て15mmとした。また、第1層集合撚線の本撚りピッチを34mmとした。さらに、第2層複合撚線の本撚りピッチについては実施例1で34mmとし、実施例2で56mmとし、実施例3で77mmとし、比較例1で102mmとした。このため、ピッチ倍率は実施例1で「1.00」であり、実施例2で「1.65」であり、実施例3で「2.26」であり、比較例1で「3.00」であった。
このような実施例1〜3及び比較例1に係る複合撚線導体に絶縁体Aを被覆した耐屈曲電線に対して、所定の屈曲試験を行った。なお、絶縁体Aとしては、樹脂(DOW Chemical社製 品名:ENGAGE8452)に対してエラストマー(住友化学社製 品名:エスプレンEPDM6101)及び難燃剤(臭素系難燃剤+三酸化アンチモン)を配合したものを使用した。樹脂とエラストマーの比率は8:2〜6:4である。また、難燃剤の配合量は40phrである。
また、屈曲試験については、円筒形マンドレル屈曲試験器を用いて、それぞれの耐屈曲電線を真直ぐに伸ばした状態から、常温で0°から120°の角度範囲で曲げ半径30mmの曲げを繰り返し行い、素線が断線したとき(すなわち導体部の抵抗が屈曲前より10%上昇したとき)の曲げ往復回数(屈曲回数)を測定した。屈曲試験は、無負荷で屈曲速度は1回/sとした。また、屈曲時の環境温度はマイナス40度とした。
図6は、実施例1〜3及び比較例1に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線の屈曲回数と扁平率を示す図表であり、図7は、実施例1〜3及び比較例1に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線の屈曲回数と扁平率を示すグラフである。なお、扁平率については、断面視したときの複合撚線導体の外形寸法について最小値Xと最大値Yとを測定し、X/Y×100なる式から算出した。
図6及び図7に示すように、実施例1に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線について、屈曲回数は230万回であり、扁平率は95.2%となった。実施例2に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線について、屈曲回数は250万回であり、扁平率は95.0%となった。実施例3に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線について、屈曲回数は220万回であり、扁平率は93.4%となった。また、比較例1に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線について、屈曲回数は200万回であり、扁平率は88.8%となった。
ここで、本実施形態においては上記屈曲試験における目標値を215万回とし、扁平率の目標値を92%とすると、図6に示すように、ピッチ倍率が「1.00」「1.65」「2.26」である実施例1〜3については目標値を達成し、ピッチ倍率が「3.00」となる比較例1については目標値を達成できなかった。また、実施例による図示等を省略するが、ピッチ倍率については「2.44」以下であれば目標値を達成できることがわかった。これは、ピッチ倍率が「2.44」以下であると撚り浮きが発生し難くなり、撚り浮きによる耐屈曲特性の低下が発生し難くなるからである。なお、上記したように、製造の関係上ピッチ倍率は「1.00」未満とできない。よって、ピッチ倍率が「1.00」以上「2.44」以下であると目標値を達成できることがわかった。
さらに、図5に示す実施例2及び比較例2,3に係る複合撚線導体について説明する。実施例2については上記の通りである。比較例2に係る複合撚線導体は、導体サイズが12sqである。金属素線には純銅を用いた。
また、比較例2については、径が0.32mmとなる金属素線を22本下撚りして集合撚線とし、この集合撚線を7本用いて複合撚線導体を構成した。なお、中心撚線は1本の集合撚線で構成し、第1層集合撚線は6本の集合撚線で構成した。なお、比較例2については第2層複合撚線を有しないものとしている。このような導体部の断面積は12.39mmとなり、導体外径は5.00mmとなった。
このような比較例2については、中心撚線の下撚り方向をS方向とし、第1層集合撚線の本撚り方向をZ方向とした。中心撚線、及び第1層集合撚線の下撚りピッチを全て34mmとした。また、第1層集合撚線の本撚りピッチを85mmとした。なお、この比較例2は、JASO D624に準拠するものであり、絶縁体Bを被覆して耐屈曲電線を構成した。なお、絶縁体Bとしては、樹脂(ARKEMA社製 品名:LOTRYL24MA005)に対してエラストマー及び難燃剤(水酸化マグネシウム)を配合したものを使用した。難燃剤の配合量は40〜80phrである。
さらに、比較例3については、径が0.10mmとなる金属素線を80本下撚りして集合撚線を構成した。この点以外は実施例2と同じとした。比較例3についても絶縁体Aを被覆して耐屈曲電線を構成した。
図8は、実施例2及び比較例2,3に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線の屈曲回数と扁平率を示す図表であり、図9は、実施例2及び比較例2,3に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線の屈曲回数と扁平率を示すグラフである。図8に示す図表及び図9に示すグラフにおいては、上記と同じ屈曲試験を行うと共に、扁平率についても上記と同じ算出式で算出した。
図8及び図9に示すように、実施例2に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線について、屈曲回数は250万回であり、扁平率は95.0%となった。比較例2に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線について、屈曲回数は1万回であり、扁平率は96.1%となった。比較例3に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線について、屈曲回数は210万回であり、扁平率は95.2%となった。
よって、金属素線の径が0.08mmである実施例2のみが、目標値(屈曲回数215万回以上及び扁平率92%以上)を達成できることがわかった。また、図示等を省略するが、径が0.08mmよりも小さくなると屈曲回数が大きくなることもわかった。よって、金属素線の径は0.08mm以下であるとよいことがわかった。
なお、金属素線の径が0.08mmを超える場合(例えば比較例3の場合)であっても、ピッチやピッチ倍率の調整等によって、目標値を達成できる場合もある。例えば、比較例3のピッチ倍率を小さい値にすることによって屈曲回数を高めて、目標値を達成させることができる。よって、金属素線の径は0.08mm以下に限定されるものではない。
図10は、実施例2,4,5及び比較例2,4に係る耐屈曲電線を示す図表である。実施例4,5については、実施例2と絶縁体の種類のみが異なるものである。実施例2は上記した複合撚線導体に対して絶縁体Aを被覆したものである。実施例4については、実施例2と同じ複合撚線導体に対して絶縁体Cを被覆したものであり、実施例5については、実施例2と同じ複合撚線導体に対して絶縁体Dを被覆したものである。
絶縁体Cとしては、樹脂(Dowchemical社製 品名:ENGAGE8452)に対してエラストマー(住友化学社製 品名:エスプレンEPDM6101)及び難燃剤(臭素系難燃剤+三酸化アンチモン)を配合したものを使用した。難燃剤の配合量は40phrである。
絶縁体Dとしては、樹脂(DOW Chemical社製 品名:ENGAGE8452)に対して難燃剤(臭素系難燃剤+三酸化アンチモン)を配合したものを使用した。なお、難燃剤の配合量は40phrである。
比較例2については上記と同じものである。比較例4について複合撚線導体は実施例2と同じものとし、絶縁体Eを被覆した。絶縁体Eは、樹脂(日本ポリエチレン社製 品名:レクスパールA4250及びレクスパールA1150を8:2で配合したもの)に対して難燃剤(臭素系難燃剤+三酸化アンチモン)を配合したものである。なお、難燃剤の配合量は35phrである。
また、上記のような耐屈曲電線について、各絶縁体の弾性率は、実施例2(絶縁体A)で9.0MPaであり、実施例4(絶縁体C)で3.9MPaであり、実施例5(絶縁体D)で18MPaであり、比較例1(絶縁体B)で44MPaであり、比較例5(絶縁体E)で32MPaであった。
図11は、実施例2,4,5及び比較例2,4に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線の屈曲回数と扁平率を示す図表であり、図12は、実施例2,4,5及び比較例2,4に係る複合撚線導体を用いた耐屈曲電線の屈曲回数と扁平率を示すグラフである。図11に示す図表及び図12に示すグラフにおいては、上記と同じ屈曲試験を行うと共に、扁平率についても上記と同じ算出式で算出した。
図11及び図12に示すように、実施例4に係る耐屈曲電線について屈曲回数は280万回であり、扁平率は94.8%となった。実施例2に係る耐屈曲電線について屈曲回数は250万回であり、扁平率は95.0%となった。実施例5に係る耐屈曲電線について屈曲回数は220万回であり、扁平率は94.2%となった。比較例1に係る耐屈曲電線について屈曲回数は1万回であり、扁平率は96.1%となった。比較例4に係る耐屈曲電線について屈曲回数は200万回であり、扁平率は94.6%となった。
よって、弾性率が18MPa以下の絶縁体で被覆した耐屈曲電線のみが、目標値(屈曲回数215万回以上及び扁平率92%以上)を達成できることがわかった。なお、図示を省略するが、弾性率が18MPaを超える場合(例えば比較例4の場合)であっても、ピッチやピッチ倍率の調整等によって、目標値を達成できる場合もある。例えば、比較例4のピッチ倍率を小さい値にすることによって屈曲回数を高めて、目標値を達成させることができる。よって、絶縁体の弾性率は18MPa以下に限定されるものではない。
このようにして、本実施形態に係る複合撚線導体10によれば、第1層複合撚線11bは第2方向に下撚り及び本撚りされ、且つ、第2層複合撚線11cは第1方向に下撚り及び本撚りされているため、第1層及び第2層複合撚線11b,11cのそれぞれは下撚り方向と本撚り方向とが一致することとなる。これにより、各層の下撚り同士の素線12は、隣り合う下撚りの素線12間に入り込み接触が軽減され、耐屈曲性を確保することができる。
また、中心集合撚線11aは第1方向に下撚りされており、第2層複合撚線11cは第1方向に下撚り及び本撚りされているのに対し、第1層複合撚線11bは、反対となる第2方向に下撚り及び本撚りされている。このため、中心集合撚線11aを構成する金属素線12及び第2層複合撚線11cの集合撚線を構成する金属素線12は、第1層複合撚線11bの金属素線12間に入り難くなる。これにより、撚り合わせ後の導体形状が扁平を起こし難く、形状安定性を向上させることができる。
特に、第2層複合撚線11cの本撚りピッチを第1層複合撚線11bの本撚りピッチで割り込んだピッチ倍率が1.00以上2.44以下とされているため、ピッチ倍率が1未満となって製造不可となってしまうこともなく、ピッチ倍率が2.44を超えて撚り浮きの発生頻度を抑えて撚り浮きによる耐屈曲特性の低下の可能性を低減させることができる。
従って、耐屈曲性を確保しつつ形状安定性を向上させることができる。
また、金属素線12の径は0.08mm以下とされているため、素線径が大きくなって屈曲時における歪みが大きくなってしまう事態を抑制して耐屈曲性の向上に寄与することができる。
さらに、本実施形態に係る耐屈曲電線1によれば、絶縁体20は弾性率が18MPa以下とされている。ここで、導体部周囲の絶縁体20が硬過ぎることによる耐屈曲性の低下が抑制される。よって、絶縁体の弾性率を18MPa以下とすることで、耐屈曲性が極端に低下してしまうことを防止することができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
例えば、本実施形態に係る耐屈曲電線1は、最内層となる集合撚線11が例えば3本など、多数本によって構成されていてもよい。
また、本実施形態に係る耐屈曲電線1は必ずしも屈曲部に用いられるとは限らず、直線部等に設けられるものであってもよい。
加えて、本実施形態において各集合撚線11を構成する金属素線12の本数は全て同じであるが、これに限らず、各集合撚線11を構成する金属素線12の本数は一部異なっていてもよい。例えば、256本の金属素線12によって構成される集合撚線11と、80本の金属素線12によって構成される集合撚線11とが混在してもよい。
さらに、本実施形態において複合撚線導体10は純銅を素材とするものとして説明したが、これに限らず、他の種類の金属を素材とするものであってもよい。
1 :耐屈曲電線
10 :複合撚線導体
11 :集合撚線
11a :中心集合撚線
11b :第1層複合撚線
11c :第2層複合撚線
12 :金属素線
20 :絶縁体

Claims (3)

  1. 導電性の金属素線が複数本下撚りされて形成された集合撚線を複数本備えた複合撚線導体であって、
    最も断面中心側に位置する集合撚線である中心集合撚線と、
    前記中心集合撚線の周囲に重なって設けられる複数本の集合撚線が本撚りされて形成された第1層複合撚線と、
    前記第1層複合撚線の周囲に重なって設けられる複数本の集合撚線が本撚りされて形成された第2層複合撚線と、を備え、
    前記中心集合撚線は、第1方向に下撚りされており、
    前記第1層複合撚線は、前記第1方向と反対となる第2方向に下撚り及び本撚りされており、
    前記第2層複合撚線は、前記第1方向に下撚り及び本撚りされ、
    前記中心集合撚線、前記第1層複合撚線、及び前記第2層複合撚線は、下撚りピッチが略同じとされ、
    前記第2層複合撚線の本撚りピッチを前記第1層複合撚線の本撚りピッチで割り込んだピッチ倍率が1.00以上2.44以下とされている
    ことを特徴とする複合撚線導体。
  2. 前記中心集合撚線、前記第1層複合撚線、及び前記第2層複合撚線を構成する各金属素線の径は0.08mm以下とされている
    ことを特徴とする請求項1に記載の複合撚線導体。
  3. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の複合撚線導体と、
    前記複合撚線導体上に設けられる絶縁体を備え、
    前記絶縁体は、弾性率が18MPa以下とされている
    ことを特徴とする耐屈曲電線。
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