JP2020059169A - 積層体、及び、積層体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このような事情に鑑み、機能素子を形成するための高分子フィルムと無機基板との積層体として、耐熱性に優れ強靭で薄膜化が可能なポリイミドフィルムを、シランカップリング剤を介して無機基板に貼り合わせた積層体が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
耐熱高分子フィルムと、接着層と、無機基板とがこの順で積層されおり、
前記接着層が、前記無機基板に由来する官能基と前記耐熱高分子フィルムに由来する官能基とが化学結合することを抑制する結合抑制剤、及び、シランカップリング剤を含む混合物により形成されていることを特徴とする。
本発明者らは、その理由として、以下のように推察している。
耐熱高分子フィルムと無機基板との間に設けられるシランカップリング剤を含む層は、非常に薄く形成される。そのため、高温に曝されると、無機基板表面の官能基(例えば、−OH基(ヒドロキシ基))と耐熱高分子フィルム表面の官能基(例えば、−COOH基(カルボキシ基))とが反応し化学結合する場合がある。そのため、シランカップリング剤を含む層を介在させていたとしても、より高温に曝されたり、より長時間高温に曝されたりすると、耐熱高分子フィルムと無機基板との間の接着力が上昇する。そこで、シランカップリング剤を含む層に結合抑制剤を含有させると、無機基板に由来する官能基と耐熱高分子フィルムに由来する官能基とが化学結合することが抑制される。その結果、より高温に曝されたり、より長時間高温に曝されたりしても、耐熱高分子フィルムと無機基板との間の接着力が上昇することを抑制することができる。
耐熱高分子フィルムと、接着層と、無機基板とがこの順で積層された積層体の製造方法であって、
前記無機基板に由来する官能基と前記耐熱高分子フィルムに由来する官能基とが化学結合することを抑制する結合抑制剤、及び、シランカップリング剤を含む混合物を、無機基板に塗布して接着層を形成する工程Aと、
前記接着層に、耐熱高分子フィルムを貼り合わせる工程Bと
を有することを特徴とする。
本実施形態に係る積層体は、
耐熱高分子フィルムと、接着層と、無機基板とがこの順で積層されおり、
前記接着層が、前記無機基板に由来する官能基と前記耐熱高分子フィルムに由来する官能基とが化学結合することを抑制する結合抑制剤、及び、シランカップリング剤を含む混合物により形成されている。
無機基板に対してポリイミドフィルムを90°の角度で引き剥がす。
5回測定を行い、平均値を測定値とする。
測定温度 ; 室温(25℃)
剥離速度 ; 100mm/min
雰囲気 ; 大気
測定サンプル幅 ; 1cm
より詳細には、実施例に記載の方法による。
また、前記90°剥離強度Bは、0.03N/cm以上であることが好ましく、0.05N/cm以上であることがより好ましい。前記90°剥離強度Bが0.45N/cm以下であると、デバイス形成後に、無機基板と高分子フィルムとを剥離しやすい。また、前記90°剥離強度Bが0.03N/cm以上であると、デバイス形成中の途中等、意図していない段階での無機基板と高分子フィルムとの剥離を防止することができる。
また、前記90°剥離強度Cは、0.03N/cm以上であることが好ましく、0.05N/cm以上であることがより好ましい。前記90°剥離強度Cが0.5N/cm以下であると、デバイス形成後に、無機基板と高分子フィルムとを剥離しやすい。また、前記90°剥離強度Cが0.03N/cm以上であると、デバイス形成中の途中等、意図していない段階での無機基板と高分子フィルムとの剥離を防止することができる。
本明細書において、耐熱高分子とは、融点が400℃以上、好ましくは500℃以上であり、ガラス転移温度が250℃以上、好ましくは320℃以上、さらに好ましくは380℃以上の高分子である。以下、煩雑さを避けるために単に高分子とも称する。本明細書において、融点、及び、ガラス転移温度は、示差熱分析(DSC)により求めるものである。なお、融点が500℃を越える場合には、該当温度にて加熱した際の熱変形挙動を目し観察することで融点に達しているか否かを判断して良い。
ただし、前記高分子フィルムは、450℃以上の熱処理を伴うプロセスに用いられることが前提であるため、例示された高分子フィルムの中から実際に適用できる物は限られる。前記高分子フィルムのなかでも好ましくは、所謂スーパーエンジニアリングプラスチックを用いたフィルムであり、より具体的には、芳香族ポリイミドフィルム、芳香族アミドフィルム、芳香族アミドイミドフィルム、芳香族ベンゾオキサゾールフィルム、芳香族ベンゾチアゾールフィルム、芳香族ベンゾイミダゾールフィルム等が挙げられる。
本明細書において、25℃での前記高分子フィルムの引張弾性率は、前記高分子フィルムを100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とし、引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(R)、機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で測定した値をいう。
前記脂環式ジアミン類としては、例えば、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルシクロヘキシルアミン)等が挙げられる。
芳香族ジアミン類以外のジアミン(脂肪族ジアミン類および脂環式ジアミン類)の合計量は、全ジアミン類の20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。換言すれば、芳香族ジアミン類は全ジアミン類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
脂環式テトラカルボン酸類は、透明性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
芳香族テトラカルボン酸類は、耐熱性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
フィルムの厚さ斑(%)
=100×(最大フィルム厚−最小フィルム厚)÷平均フィルム厚
前記高分子フィルムは表面活性化処理されていてもよい。高分子フィルムに表面活性化処理を行うことによって、高分子フィルムの表面は官能基が存在する状態(いわゆる活性化した状態)に改質され、シランカップリング剤を介した無機基板に対する接着性が向上する。
本明細書において表面活性化処理とは、乾式又は湿式の表面処理である。乾式の表面処理としては、例えば、真空プラズマ処理、常圧プラズマ処理、紫外線・電子線・X線などの活性エネルギー線を表面に照射する処理、コロナ処理、火炎処理、イトロ処理等を挙げることができる。湿式の表面処理としては、例えば、高分子フィルム表面を酸ないしアルカリ溶液に接触させる処理を挙げることができる。
接着層は、結合抑制剤、及び、シランカップリング剤を含む混合物を用いて形成された層である。接着層は、無機基板に前記混合物を塗布することより形成された層であってもく、高分子フィルムに前記混合物を塗布することより形成された層であってもよい。接着層の形成方法の詳細は、後に、積層体の製造方法の項にて説明する。
前記無機基板としては無機物からなる基板として用いることのできる板状のものであればよく、例えば、ガラス板、セラミック板、シリコンウエハ、金属等を主体としているもの、および、これらガラス板、セラミック板、シリコンウエハ、金属の複合体として、これらを積層したもの、これらが分散されているもの、これらの繊維が含有されているものなどが挙げられる。
前記無機基板の厚さは特に制限されないが、取り扱い性の観点より10mm以下の厚さが好ましく、3mm以下がより好ましく、1.3mm以下がさらに好ましい。厚さの下限については特に制限されないが、好ましくは0.07mm以上、より好ましくは0.15mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上である。
前記高分子フィルムと前記無機基板との間には、前記接着層以外に、さらに他の層が形成されていてもよい。例えば、前記積層体は、無機基板/他の層/接着層/高分子フィルムという構成であってもよい。
上記積層体は、先に無機基板に接着層を形成し、その後、接着層に高分子フィルムを貼り合わせることにより、製造することができる。以下、この製方法を第1実施形態に係る積層体の製造方法ともいう。
また、上記積層体は、先に高分子フィルムに接着層を形成し、その後、接着層に無機基板を貼り合わせて製造することもできる。以下、この製造方法を2実施形態に係る積層体の製造方法ともいう。
第1実施形態に係る積層体の製造方法は、
結合抑制剤、及び、シランカップリング剤を含む混合物を、無機基板に塗布して接着層を形成する工程Aと、
前記接着層に、耐熱高分子フィルムを貼り合わせる工程Bと
を少なくとも有する。
工程Aにおいては、結合抑制剤、及び、シランカップリング剤を含む混合物を、無機基板に塗布することより接着層を形成する。
前記シランカップリング剤は、無機基板と高分子フィルムとの間に物理的ないし化学的に介在し、両者間の接着力を高める作用を有する。
前記シランカップリング剤は、特に限定されるものではないが、アミノ基あるいはエポキシ基を持ったシランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤の好ましい具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、クロロメチルフェネチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
前記シランカップリング剤としては、前記のほかに、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプト−2−ブタノール、3−メルカプトプロピオン酸ブチル、3−(ジメトキシメチルシリル)−1−プロパンチオール、4−(6−メルカプトヘキサロイル)ベンジルアルコール、11−アミノ−1−ウンデセンチオール、11−メルカプトウンデシルホスホン酸、11−メルカプトウンデシルトリフルオロ酢酸、2,2’−(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、11−メルカプトウンデシトリ(エチレングリコール)、(1−メルカプトウンデイック−11−イル)テトラ(エチレングリコール)、1−(メチルカルボキシ)ウンデック−11−イル)ヘキサ(エチレングリコール)、ヒドロキシウンデシルジスルフィド、カルボキシウンデシルジスルフィド、ヒドロキシヘキサドデシルジスルフィド、カルボキシヘキサデシルジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリブトキシモノステアレート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、2,3−ブタンジチオール、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、シクロヘキサンチオール、シクロペンタンチオール、1−デカンチオール、1−ドデカンチオール、3−メルカプトプロピオン酸−2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸エチル、1−ヘプタンチオール、1−ヘキサデカンチオール、ヘキシルメルカプタン、イソアミルメルカプタン、イソブチルメルカプタン、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸−3−メトキシブチル、2−メチル−1−ブタンチオール、1−オクタデカンチオール、1−オクタンチオール、1−ペンタデカンチオール、1−ペンタンチオール、1−プロパンチオール、1−テトラデカンチオール、1−ウンデカンチオール、1−(12−メルカプトドデシル)イミダゾール、1−(11−メルカプトウンデシル)イミダゾール、1−(10−メルカプトデシル)イミダゾール、1−(16−メルカプトヘキサデシル)イミダゾール、1−(17−メルカプトヘプタデシル)イミダゾール、1−(15−メルカプト)ドデカン酸、1−(11−メルカプト)ウンデカン酸、1−(10−メルカプト)デカン酸などを使用することもできる。
前記結合抑制剤は、前記無機基板に由来する官能基と前記耐熱高分子フィルムに由来する官能基とが化学結合することを抑制する作用を有する。前記無機基板に由来する官能基としては、−OH基(ヒドロキシ基)、−NH2基(アミノ基)等が挙げられる。前記耐熱高分子フィルムに由来する官能基としては、−COOH基(カルボキシ基)、−NH2基(アミノ基)等が挙げられる。
(上記式(2)中、R1、R2及びR3は、上記式(1)と同様であり、R4は、水素原子、又は飽和若しくは不飽和アルキル基を表し、R5は、水素原子、飽和若しくは不飽和アルキル基、飽和若しくは不飽和シクロアルキル基、アセチル基、又は飽和若しくは不飽和ヘテロシクロアルキル基を表す。R4及びR5は、互いに結合して窒素原子を有する飽和又は不飽和へテロシクロアルキル基を形成してもよい。)
(上記式(3)中、R1、R2及びR3は、上記式(1)と同様であり、R6は、水素原子、メチル基、トリメチルシリル基、又はジメチルシリル基を表し、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に水素原子又は有機基を表し、R7、R8及びR9に含まれる炭素原子の合計の個数は1個以上である。)
接着層の形成方法としては、結合抑制剤、及び、シランカップリング剤を含む混合物溶液を前記無機基板に塗布する方法、気相塗布法などを用いることができる。接着層の形成は高分子フィルムのいずれの表面に行っても良く、両方の表面に行っても良い。
混合物溶液を塗布する方法としては混合物をアルコールなどの溶媒で希釈した溶液を用いて、スピンコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スリットダイコート法、グラビアコート法、バーコート法、コンマコート法、アプリケーター法、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
混合物を加温する環境は、加圧下、常圧下、減圧下のいずれでも構わないが、混合物の気化を促進する場合には常圧下ないし減圧下が好ましい。多くのシランカップリング剤は可燃性液体であるため、密閉容器内にて、好ましくは容器内を不活性ガスで置換した後に気化作業を行うことが好ましい。
前記無機基板を混合物に暴露する時間は特に制限されないが、20時間以内が好ましく、より好ましくは60分以内、さらに好ましくは15分以内、最も好ましくは3分以内である。
前記無機基板を混合物に暴露する間の前記無機基板の温度は、シランカップリング剤、及び、結合抑制剤の種類と、求める接着層の厚さにより−50℃から200℃の間の適正な温度に制御することが好ましい。
(1)液体の状態で結合抑制剤とシランカップリング剤とを混合し、2口ガラス瓶に満たし、所定温度とした水浴上に静置する。2口ガラス瓶の一方からは計装エアー導入口を接続し、もう一方はガス処理チャンバー(以下、チャンバーともいう)に接続する。次いで、無機基板を配置したチャンバー内に、計装エアーを導入し、チャンバー内を混合蒸気で満たした状態で所定期間保持して無機基板を混合蒸気へ暴露し、接着層を形成する(以下、「混合液塗布」ともいう)。
(2)液体の状態の結合抑制剤とシランカップリング剤とをそれぞれ別の2口ガラス瓶に満たし、所定温度の水浴上に静置する。計装エアー導入口、結合抑制剤を満たした瓶、シランカップリング剤を満たした瓶、チャンバーの順に、2つのガラス瓶とチャンバーとを直列に接続する。又は、計装エアー導入口、シランカップリング剤を満たした瓶、、結合抑制剤を満たした瓶、チャンバーの順に、2つのガラス瓶とチャンバーとを直列に接続する。次いで、無機基板を配置したチャンバー内に、計装エアーを導入し、チャンバー内を混合蒸気で満たした状態で所定期間保持して無機基板を混合蒸気へ暴露し、接着層を形成する(以下、「直列塗布」ともいう)。
(3)液体の状態の結合抑制剤とシランカップリング剤とをそれぞれ別の2口ガラス瓶に満たし、所定温度の水浴上に静置する。2つのガラス瓶を中間瓶に接続し、さらに中間瓶とチャンバーを接続する。前記中間瓶は、結合抑制剤の蒸気とシランカップリング剤との蒸気とを合流させるためのものである。次いで、計装エアーをそれぞれの瓶に対して導入し、チャンバー内を混合蒸気で満たした状態で所定期間保持して無機基板を混合蒸気へ暴露し、接着層を形成する(以下、「並列塗布」ともいう)。
工程Bにおいては、前記接着層に、高分子フィルムを貼り合わせる。具体的には、前記無機基板上に形成された前記接着層の表面と、前記高分子フィルムとを加圧加熱して、貼り合わせる。
また加圧加熱処理は、上述のように大気圧雰囲気中で行うこともできるが、全面の安定した剥離強度を得る為には、真空下で行うことが好ましい。このとき真空度は、通常の油回転ポンプによる真空度で充分であり、10Torr以下程度あれば充分である。
加圧加熱処理に使用することができる装置としては、真空中でのプレスを行うには、例えば井元製作所製の「11FD」等を使用でき、真空中でのロール式のフィルムラミネーターあるいは真空にした後に薄いゴム膜によりガラス全面に一度に圧力を加えるフィルムラミネーター等の真空ラミネートを行うには、例えば名機製作所製の「MVLP」等を使用できる。
第2実施形態に係る積層体の製造方法は、
高分子フィルムに、接着層を形成する工程Xと、
前記接着層に、無機基板を貼り合わせる工程Yと
を少なくとも有する。
工程Xにおいては、高分子フィルムに、前記混合物を塗布することより接着層を形成する。高分子フィルムに、接着層を形成する方法としては、無機基板に、接着層を形成する方法と同様とすることができる。詳細については、第1実施形態の項で説明したので、ここでの説明は省略する。
工程Yにおいては、前記接着層に、無機基板を貼り合わせる。具体的には、前記高分子フィルム上に形成された前記接着層の表面と、前記無機基板とを加圧加熱して、貼り合わせる。貼り合わせ条件(加圧加熱処理条件)としては、第1実施形態と同様とすることができる。
前記高分子フィルム上に前記接着層を形成するとともに、前記無機基板上に前記接着層を形成し、接着層同士を貼り合わせ面として貼り合わせて積層体を製造してもよい。
前記積層体を用いると、既存の電子デバイス製造用の設備、プロセスを用いて積層体の高分子フィルム上に電子デバイスを形成し、積層体から高分子フィルムごと剥離することで、フレキシブルな電子デバイスを作製することができる。
本明細書において電子デバイスとは、電気配線を担う片面、両面、あるいは多層構造を有する配線基板、トランジスタ、ダイオードなどの能動素子や、抵抗、キャパシタ、インダクタなどの受動デバイスを含む電子回路、他、圧力、温度、光、湿度などをセンシングするセンサー素子、バイオセンサー素子、発光素子、液晶表示、電気泳動表示、自発光表示などの画像表示素子、無線、有線による通信素子、演算素子、記憶素子、MEMS素子、太陽電池、薄膜トランジスタなどをいう。
前記高分子フィルムに切り込みを入れる方法としては、刃物などの切削具によって高分子フィルムを切断する方法や、レーザーと積層体を相対的にスキャンさせることにより高分子フィルムを切断する方法、ウォータージェットと積層体を相対的にスキャンさせることにより高分子フィルムを切断する方法、半導体チップのダイシング装置により若干ガラス層まで切り込みつつ高分子フィルムを切断する方法などがあるが、特に方法は限定されるものではない。例えば、上述した方法を採用するにあたり、切削具に超音波を重畳させたり、往復動作や上下動作などを付け加えて切削性能を向上させる等の手法を適宜採用することもできる。
また、剥離する部分に予め別の補強基材を貼りつけて、補強基材ごと剥離する方法も有用である。剥離するフレキシブル電子デバイスが、表示デバイスのバックプレーンである場合、あらかじめ表示デバイスのフロントプレーンを貼りつけて、無機基板上で一体化した後に両者を同時に剥がし、フレキシブルな表示デバイスを得ることも可能である。
(実施例1)
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−903)0.5質量%、及び、ヘキサメチルジシラザン(HMDS、(ナカライテスク社製))0.5質量%を含むようにイソプロパノールで希釈した混合溶液を調製した。また、ガラス基板を準備した。前記ガラス基板は、100mm×100mmサイズに切断した、厚さ0.7mmのOA10Gガラス(NEG社製)である。前記ガラス基板に紫外線を照射した後、紫外線照射面を上にして、前記ガラス基板をスピンコーター(ジャパンクリエイト社製、MSC−500S)に設置した。前記ガラス基板に前記混合溶液を5mL滴下し、回転数を2000rpmにて10秒間回転させ、前記混合溶液を前記ガラス基板に塗布した。次に、100℃に加熱したホットプレートに、前記ガラス基板を、塗布面が上になるように載せ、1分間加熱して、接着層を形成した。この工程は、本発明の工程Aに相当する。
KBM−903とHMDSとの混合比について、KBM−903を0.3質量%、HMDSを0.7質量%含むように変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る積層体を得た。
KBM−903とHMDSとの混合比について、KBM−903を0.7質量%、HMDSを0.3質量%含むように変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る積層体を得た。
KBM−903とHMDSとを、質量比1:1で混合して混合液を得た。前記混合液を2口のガラス瓶に満たし、40℃の水浴上に静置した。2口ガラス瓶の一方からは計装エアー導入口を接続し、もう一方はガス処理チャンバー(以下、チャンバーともいう)に接続した。
次いで、チャンバー内に、実施例1と同様のガラス基板を、紫外線照射面を上にして水平に保持し、チャンバーを閉じた。次いで計装エアーを10L/minで導入し、チャンバー内を混合蒸気で満たした状態で3分間保持してガラス基板を混合液の蒸気へ暴露し、接着層を形成した。この工程は、本発明の工程Aに相当する。
混合液の混合比をKBM−903:HMDS=3:7に変更したこと以外は、実施例4と同様にして実施例5に係る積層体を得た。
混合液の混合比をKBM−903:HMDS=7:3に変更したこと以外は、実施例4と同様にして実施例6に係る積層体を得た。
KBM−903(100質量部)とHMDS(100質量部)とをそれぞれ別の2口ガラス瓶に満たし、40℃の水浴上に静置した。計装エアー導入口、KBM−903を満たした瓶、HMDSを満たした瓶、チャンバーの順に、2つのガラス瓶とチャンバーとを直列に接続した。次いで、チャンバー内に、実施例1と同様のガラス基板を、紫外線照射面を上にして水平に保持し、チャンバーを閉じた。次いで計装エアーを10L/minで導入し、チャンバー内を混合蒸気で満たした状態で3分間保持してガラス基板を混合蒸気へ暴露し、接着層を形成した。この工程は、本発明の工程Aに相当する。
直列につなぐ2つのガラス瓶とチャンバーとの順番を、計装エアー導入口、HMDSを満たした瓶、KBM−903を満たした瓶、チャンバーの順に変更したこと以外は、実施例7と同様にして実施例8に係る積層体を得た。
チャンバー内に計装エアーを流す時間を2分に変更したこと以外は、実施例7と同様にして実施例9に係る積層体を得た。
チャンバー内に計装エアーを流す時間を4分に変更したこと以外は、実施例7と同様にして実施例10に係る積層体を得た。
KBM−903(100質量部)とHMDS(100質量部)とをそれぞれ別の2口ガラス瓶に満たし、40℃の水浴上に静置した。2つのガラス瓶をシリコンチューブを用いて中間瓶に接続し、さらに中間瓶とチャンバーを接続した。前記中間瓶は、KBM−903の蒸気とHMDS(100質量部)の蒸気とを合流させるためのものである。次いで、チャンバー内に、実施例1と同様のガラス基板を、紫外線照射面を上にして水平に保持し、チャンバーを閉じた。ガラス基板を設置したチャンバー内のステージ温度を18℃に設定した。次いで計装エアーをそれぞれの瓶に対して5L/minで導入し、チャンバー内を混合蒸気で満たした状態で3分間保持してガラス基板を混合蒸気へ暴露し、接着層を形成した。この工程は、本発明の工程Aに相当する。
ガラス基板を設置するチャンバー内のステージ温度を21℃に設定したこと以外は、実施例11と同様にして実施例12に係る積層体を得た。
KBM-903の代わりに、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−603)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして実施例13に係る積層体を得た。
KBM-903の代わりに、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン(東京化成工業社製、製品コード:A0876)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして実施例14に係る積層体を得た。
HMDSの代わりに、1,3−ジフェニルテトラメチルジシラザン(東京化成工業社製、製品コード:D1816)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして実施例15に係る積層体を得た。
HMDSの代わりに、N−(トリメチルシリル)ジエチルアミン(東京化成工業社製、製品コード:T0492)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして実施例16に係る積層体を得た。
HMDSの代わりに、N−(トリメチルシリル)ジメチルアミン(東京化成工業社製、製品コード:T0591)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして実施例17に係る積層体を得た。
KBM−903のみを2口ガラス瓶に満たしたこと以外は、実施例4と同様にして比較例1に係る積層体を得た。
HMDSのみを2口ガラス瓶に満たしたこと以外は、実施例4と同様にして積層体を作成しようとしたが、ガラス基板とポリイミドフィルムとを貼り合わせることができなかった(接着しなかった)。
上記積層体の作製で得られた積層体を、大気雰囲気下、110℃で10分間熱処理した。その後、ガラス基板とポリイミドフィルムとの間の90°剥離強度Aを測定した。結果を表1に示す。
90°剥離強度Aの測定条件は、下記の通りである。
ガラス基板に対してポリイミドフィルムを90°の角度で引き剥がす。
5回測定を行い、平均値を測定値とする。
測定装置 ; 剥離試験機(日本計測システム社、JSV−H1000)
測定温度 ; 室温(25℃)
剥離速度 ; 100mm/min
雰囲気 ; 大気
測定サンプル幅 ; 1cm
上記積層体の作製で得られた積層体を、大気雰囲気下、110℃で10分間熱処理した。さらに、窒素雰囲気下で500℃1時間加熱した。その後、ガラス基板とポリイミドフィルムとの間の90°剥離強度B測定した。結果を表1に示す。
90°剥離強度Bの測定条件は、90°剥離強度Aと同様とした。
上記積層体の作製で得られた積層体を、大気雰囲気下、110℃で10分間熱処理した。その後、窒素雰囲気下で500℃1時間加熱した。さらに、窒素雰囲気下で520℃1時間加熱した。その後、ガラス基板とポリイミドフィルムとの間の90°剥離強度Cを測定した。結果を表1に示す。
90°剥離強度Cの測定条件は、90°剥離強度Aと同様とした。
Claims (7)
- 耐熱高分子フィルムと、接着層と、無機基板とがこの順で積層されおり、
前記接着層が、前記無機基板に由来する官能基と前記耐熱高分子フィルムに由来する官能基とが化学結合することを抑制する結合抑制剤、及び、シランカップリング剤を含む混合物により形成されていることを特徴とする積層体。 - 前記結合抑制剤が、シリル化剤であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
- 前記シランカップリング剤が、アミノ基を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の積層体。
- 前記耐熱高分子フィルムが、ポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の積層体。
- 前記無機基板が、ガラス板、セラミック板、シリコンウエハのいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の積層体。
- 耐熱高分子フィルムと、接着層と、無機基板とがこの順で積層された積層体の製造方法であって、
前記無機基板に由来する官能基と前記耐熱高分子フィルムに由来する官能基とが化学結合することを抑制する結合抑制剤、及び、シランカップリング剤を含む混合物を、無機基板に塗布して接着層を形成する工程Aと、
前記接着層に、耐熱高分子フィルムを貼り合わせる工程Bと
を有することを特徴とする積層体の製造方法。
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