JP2019017255A - 評価用基材の製造方法、及び評価用基材の製造装置 - Google Patents
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Abstract
Description
また、培養容器に形成された複数の培養空間内で、株化肝細胞を12時間以上72時間以内で培養して相当直径が50μm以上200μm未満の複数のスフェロイドを作製する工程等を含む化合物のスクリーニング方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
本発明の評価用基材の製造方法は、基材に、固定材Aを含有する溶液を付与する固定材A含有溶液付与工程と、前記固定材Aに対して混合(若しくは反応)が可能な固定材B及び細胞を含有する懸濁液を付与する固定材B及び細胞含有懸濁液付与工程と、を含み、前記固定材Aと、前記固定材Bとのそれぞれ少なくとも一部が混合(若しくは反応)されてハイドロゲルを形成し、前記細胞が、前記ハイドロゲルを介して前記基材に固定され、前記固定材A及び前記固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する工程を含むことが好ましく、更に必要に応じて、培地を付与する工程、その他の工程を含む。
本発明の評価用基材の製造方法は、従来の基体の製造方法、及び化合物のスクリーニング方法では、試験をする前準備として試験に使用する細胞を培養容器に播種して、細胞が培養容器に自ら接着するまで約24時間の培養時間を必要とするという問題があるという知見に基づくものである。
また、本発明の評価用基材の製造方法は、従来の基体の製造方法、及び化合物のスクリーニング方法では、少ない細胞数で培養容器に播種すると培養容器に接着する細胞が想定よりも少ない細胞数となり、正確な試験結果を得られないことがあり、かつ薬効乃至毒性の評価における試験時間や細胞数にかなり制約があるという問題があるという知見に基づくものである。さらに、1つの試験を行うためには、細胞が培養容器に接着するまでの時間を確保しなければならず、細胞数を一定数以上担保することが難しい細胞において、薬効乃至毒性試験をすることができず、試験方法や試験を行う細胞種に制限があるという問題があるという知見に基づくものである。
本発明の評価用基材の製造方法によれば、図1Aに示すように、基材2上に、固定材A及び固定材Bのそれぞれ少なくとも一部が混合されて形成されたハイドロゲル3に、細胞4が所望の位置に配置された評価用基材1を得ることができる。また、図1Bに示すように、細胞4は、ハイドロゲル3に固定されることにより、ハイドロゲルを介して、基材2に接着することができる。これにより、細胞が培養されて基材に接着する時間を短縮することができ、短時間で評価用基材1を得ることができる。
また、本発明の評価用基材の製造方法によれば、所望の位置に細胞を配置した評価用基材を得ることができる。
固定材A含有溶液付与工程は、基材に、固定材Aを含有する溶液を付与する工程である。
固定材A含有溶液付与手段は、基材に、固定材Aを含有する溶液を付与する手段である。
固定材A含有溶液付与工程は、固定材A含有溶液付与手段により好適に実施することができる。
基材としては、細胞の活性や増殖を阻害しないものであれば、その大きさ、形状、構造、材質等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
基材の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディッシュ、マルチプレート、フラスコ、セルインサート等の立体形状;ガラスプレート、スライドガラス、カバーガラス等の平板状;平膜状などが挙げられる。
基材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多孔質構造、メッシュ構造、凹凸構造、ハニカム構造などが挙げられる。
基材の材質としては、例えば、有機材料、無機材料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
有機材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリイミド(PI)、ナイロン(Ny)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ウレタンアクリレート等のアクリル系材料、セルロースなどが挙げられる。
無機材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス、セラミックスなどが挙げられる。
固定材Aを含有する溶液は、固定材Aを含み、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
固定材Aとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コラーゲン、エラスチン、ゼラチン、フィブロイン等の生体由来ポリマー;フィブリノーゲン等の凝固因子;フィブロネクチン、ラミニン、リコンビナントペプチド等の接着因子;アルギン酸、ジェランガム等の多糖化合物金属塩;ポリ乳酸等の合成ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、凝固因子が好ましく、フィブリノーゲンがより好ましい。
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培地、架橋剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤などが挙げられる。
固定材B及び細胞含有懸濁液付与工程は、固定材Aに対して混合が可能な固定材B及び細胞を含有する懸濁液を付与する工程である。
固定材B及び細胞含有懸濁液付与手段は、固定材Aに対して混合が可能な固定材B及び細胞を含有する懸濁液を付与する手段である。
固定材B及び細胞含有懸濁液付与工程は、固定材B及び細胞含有懸濁液付与手段により好適に実施することができる。
固定材B及び細胞含有懸濁液付与工程、並びに固定材B及び細胞含有懸濁液付与手段としては、インクジェット法を好適に用いることができる。
固定材Aに対して混合が可能な固定材B及び細胞を含有する懸濁液は、固定材B、及び細胞を含み、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
固定材Bとしては、固定材Aと固定材Bとが混合されてハイドロゲルを形成するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、固定材A及び固定材Bが、混合により増粘することが好ましい。
細胞は、その種類等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、分類学的に、例えば、真核細胞、原核細胞、多細胞生物細胞、単細胞生物細胞を問わず、すべての細胞について使用することができる。
真核細胞としては、例えば、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、動物細胞が好ましく、前記細胞が細胞集合体を形成する場合は、細胞と細胞とが互いに接着し、物理化学的な処理を行わなければ単離しない程度の細胞接着性を有する接着性細胞がより好ましい。
分化した細胞としては、例えば、肝臓の実質細胞である肝細胞;星細胞;クッパー細胞;血管内皮細胞;類道内皮細胞、角膜内皮細胞等の内皮細胞;繊維芽細胞;骨芽細胞;砕骨細胞;歯根膜由来細胞;表皮角化細胞等の表皮細胞;気管上皮細胞;消化管上皮細胞;子宮頸部上皮細胞;角膜上皮細胞等の上皮細胞;乳腺細胞;ペリサイト;平滑筋細胞、心筋細胞等の筋細胞;腎細胞;膵ランゲルハンス島細胞;末梢神経細胞、視神経細胞等の神経細胞;軟骨細胞;骨細胞などが挙げられる。前記接着性細胞は、組織や器官から直接採取した初代細胞でもよく、又はそれらを何代か継代させたものでもよい。
未分化の細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、未分化細胞である胚性幹細胞、多分化能を有する間葉系幹細胞等の多能性幹細胞;単分化能を有する血管内皮前駆細胞等の単能性幹細胞;iPS細胞などが挙げられる。
正常ヒト皮膚線維芽細胞としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、商品名:CC2507(Lonza社製)などが挙げられる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培地、架橋剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤などが挙げられる。
サーマル方式は、局所的な加熱が発生するため生体材料である細胞への影響や、ヒーター部への焦げ付き(コゲーション)が懸念される。熱による影響は、含有物や基材の用途に依存するため、一概に除外する必要はないが、圧力印加方式は、サーマル方式よりヒーター部への焦げ付きの懸念がないという点から好ましい。
図2Aは、電磁バルブ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。電磁バルブ方式の吐出ヘッドは、電動機13a、電磁弁112、液体収容部としての液室を構成する液室壁11a、懸濁液300a、及びノズル111aを有する。
電磁バルブ方式の吐出ヘッドとしては、例えば、TechElan社のディスペンサなどを好適に用いることができる。
また、図2Bは、ピエゾ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。ピエゾ方式の吐出ヘッドは、圧電素子13b、液体収容部としての液室を構成する液室壁11b、懸濁液300b、及びノズル111bを有する。
ピエゾ方式の吐出ヘッドとしては、Cytena社のシングルセルプリンターなどを好適に用いることができる。
これらの吐出ヘッドのいずれも用いることが可能であるが、電磁バルブによる圧力印加方式では高速に繰り返し液滴を形成することができないため、評価用基材の製造のスループットを上げるためにはピエゾ方式を用いることが好ましい。また、一般的な圧電素子13bを用いたピエゾ方式の吐出ヘッドでは、沈降によって細胞濃度のムラが発生することや、ノズル詰まりが生じることが問題として生じることがある。
このため、より好ましい構成として図2Cに示した構成などが挙げられる。図2Cは、図2Bにおける圧電素子を用いたピエゾ方式の吐出ヘッドの変形例の模式図である。図2Cの吐出ヘッドは、圧電素子13c、液体収容部としての液室を構成する液室壁11c、懸濁液300c、及びノズル111cを有する。
図2Cの吐出ヘッドでは、図示していない制御装置からの圧電素子13cに対して電圧印加することにより、紙面横方向に圧縮応力が加わりメンブレンを紙面上下方向に変形させることができる。
吐出ヘッドは、圧電素子に形成された上下電極に、パルス状の電圧を印加することにより液滴を吐出することができる。図4A〜図4Cは、それぞれのタイミングにおける液滴の状態を示す模式図である。図4Aは、まず、圧電素子13cに電圧を印加することにより、メンブレン12cが急激に変形することによって、液室壁11cとノズル部が形成されるメンブレン12cとによって形成される液室内に保持された懸濁液とメンブレン12cとの間に高い圧力が発生し、この圧力によってノズル部から液滴が外に押し出される。次に、図4Bに示すように、圧力が上方に緩和するまでの時間、ノズル部からの液押し出しが続き液滴が成長する。最後に、図4Cに示すように、メンブレン12cが元の状態に戻る際に懸濁液とメンブレン12cとの界面近傍の液圧力が低下し、液滴310’が形成される。
図5は、液滴形成装置の一例を示す模式図である。図5に示すように、液滴形成装置1Aは、吐出ヘッド(液滴吐出手段)10と、駆動手段20と、制御手段70とを有する。
液滴吐出手段10Bは、液室壁11Bと、メンブレン12Bと、駆動素子13Bとを有している。液室壁11Bにより構成される液室は、液室内を大気に開放する大気開放部115を上部に有しており、懸濁液300中に混入した気泡を大気開放部115から排出可能に構成されている。
ハイドロゲルとしては、固定材Aと、固定材Bとのそれぞれ少なくとも一部が混合(反応)されて形成される。
細胞の周囲は、固定材Aと、固定材Bとのそれぞれ少なくとも一部が混合されてハイドロゲルを形成していればよく、ハイドロゲル以外にも、固定材A及び固定材Bが共存している状態でもよい。
ハイドロゲルは、基材上において、細胞を基材に固定する。
ハイドロゲルは、細胞の少なくとも一部を被覆することが好ましく、細胞の全体を被覆することがより好ましい。ハイドロゲルが、細胞の少なくとも一部を被覆することにより、細胞の乾燥を防止することができる。
固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する工程は、固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液に少なくとも一部が被覆された細胞が乾燥する時間に達した場合に、固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する工程である。
固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する手段は、固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液に少なくとも一部が被覆された細胞が乾燥する時間に達した場合に、固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する手段である。
固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する工程は、固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する手段により好適に実施することができる。
固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する工程は、基材上に付与された細胞の表面の少なくとも一部が露出している(被覆されていない)場合に、実施することが好ましい。固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与することにより、細胞の乾燥を防止することができる。
固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液としては、少なくとも一部が露出している細胞の表面に付与することが好ましい。
固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液に少なくとも一部が被覆された細胞が乾燥する時間としては、例えば、予め細胞の乾燥時間を実験により求めておくことなどが挙げられる。
また、固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液以外にも、細胞の乾燥防止の点から、露出した細胞を被覆することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培地などを用いることもできる。
培地を付与する工程は、細胞が、ハイドロゲルを介して前記基材に固定された後に、ハイドロゲル上に培地を付与する工程である。
培地を付与する工程は、培地を付与する手段により好適に実施することができる。
培地としては、組織体の形成と維持に必要な成分を含み、乾燥を防ぎ、浸透圧などの外部環境を整える溶液であり、当該分野で公知のものを適宜選択することができる。常時培地液内に浸しておく必要のない場合においては適宜除去してもよい。
そこで、図9Cに示すように、(ハイドロゲルに被覆されていない)細胞上に、固定材A及び固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を液滴24’にてインクジェットヘッド23’からインクジェット法により吐出して、細胞26の(ハイドロゲルに被覆されていない)表面に付与して、固定材A、固定材B、ハイドロゲル、又はこれらの混ざった被覆膜24”を形成する。これにより、細胞26のハイドロゲルに被覆されていない表面が乾燥することを防止することができる。なお、細胞26の乾燥防止については、例えば、予め細胞26の乾燥時間を実験により求めておき、その実験データから得られた乾燥時間に基づいて、適切な時間間隔(タイミング)で、該当する細胞に対し、固定材B(又は固定材A)を吐出させることにより、細胞の乾燥を防止する方法が一例として考えられる。
次に、図9Dに示すように、細胞26を含有するハイドロゲル28上に、培地27をマイクロピペット22により滴下して、ハイドロゲル28の乾燥防止や評価の前準備をすることができる。
毒性の評価を行う試薬としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化亜鉛、1−ブタノール、安息香酸、エチルバニリン、4−ヒドロキシ安息香酸、スルファニル酸、酒石酸、サリチル酸メチル、サリチル酸、ラウリル硫酸ナトリウム、乳酸、ベンジルアルコール、デキストラン、ジエチルフタレート、グリセロール、プロピルパラベン、Tween80、ジメチルイソフタレート、フェノール、クロロベンゼン、スルファニルアミド、オクタン酸などが挙げられる。
<固定材Aを含有する溶液の調製>
Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline(商品名:DPBS(1×)、Life technologies製)1mLに、固定材Aとしてフィブリノーゲン(商品名:Fibrinogen from bovine plasma、Sigma−Aldrich社製)25mgを添加して、25mg/mLフィブリノーゲン水溶液(固定材Aを含有する溶液)を調製した。
市販の正常ヒト皮膚線維芽細胞(商品名:CC2507、Lonza社製、以下、「NHDF」とも称することがある)2×104個/mLを、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(商品名:DMEM(1×)、Life technologies製)10mL入れた100mmディッシュに添加して、インキュベーター(装置名:KM−CC17RU2、パナソニック株式会社製、37℃、5%CO2環境)内で、72時間培養した。培養した正常ヒト皮膚線維芽細胞を含有する培養液を除去し、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(以下「DPBS」とも称することがある)を2mL添加して洗浄した。DPBSを除去し、トリプシン(商品名:0.05% Trypsin−EDTA(1×)、Life technologies社製)2mLを加えて、インキュベーター内(37℃、5%CO2環境)で5分間、トリプシン処理して細胞を単離した。
単離した細胞を、トロンビン(商品名:Thrombin from bovine Plasma、Sigma−Aldrich社製)20U/mLに、細胞数が4×106個/mLの濃度になるように添加して、固定材B及び細胞を含有する懸濁液を得た。
実施例1において、固定材Aを含有する溶液を、フィブリノーゲン(固定材A)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、固定材Aを含まない溶液を得た。
次に、実施例1において、固定材Aを含有する溶液を固定材Aを含有しない溶液に変更した以外は、実施例1と同様にして、評価用基材を得た。
実施例1において、固定材B及び細胞を含有する懸濁液を、トロンビン(固定材B)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、細胞を含有する懸濁液を得た。
次に、実施例1において、固定材B及び細胞を含有する懸濁液を細胞を含有する懸濁液(固定材Bを含まない)に変更した以外は、実施例1と同様にして、評価用基材を得た。
評価用基材の作製において、溶液に、懸濁液を添加した後、37℃のCO2インキュベーター内に静置した。その後、96ウェルプレートを手で振盪し、目視で細胞が固定されていて動かないかを確認することによりハイドロゲルが形成されるまでの時間を測定した。結果を下記表1に示す。
一方、比較例1及び2では、ハイドロゲルは形成されず、細胞は固定されなかった。
Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(商品名:DMEM(1X)、Life technologies社製)10mL入れた容器(商品名:Tissue Culture Dish、旭硝子株式会社製)に、NHDF(商品名:CC2507、Lonza社製)を5×104個/mLとなるように添加し、インキュベーター(装置名:KM−CC17RU2、パナソニック株式会社製、37℃、5%CO2環境)内で、10時間培養した。培養時間が0時間後、3時間後、及び10時間後に、光学顕微鏡(装置名:CKX53、オリンパス株式会社製)を用いて、細胞を観察した。結果を図11A(0時間後)、図11B(3時間後)、及び図11C(10時間後)に示す。図11A〜図11Cの結果から、培養時間が0時間後及び3時間後では、細胞は基材に接着していないが、10時間後には、細胞は基材にほぼ全て接着していることが分かる。
実施例1及び比較例3の評価用基材に、被験物質として、0μM、100μM、160μM、及び220μMの4つの濃度条件の塩化亜鉛をそれぞれ添加したダルベッコ変法イーグル培地(和光純薬工業株式会社製、以下、「D−MEM」とも称することがある)をマイクロピペットで100μL加え、一晩(20時間)、37℃のCO2インキュベーター内に静置した。
次に、塩化亜鉛による細胞生存率への影響を評価するため、WST−1試薬(商品名:Premix WST−1 Cell Proliferation Assay System、タカラバイオ株式会社製)を1ウェルあたり10μL添加し、1時間、37℃のCO2インキュベーターに静置して反応させた。その後、プレートリーダー(装置名:Cytation5、BioTek社製)を用いて、450nm、リファレンスの値として570nmの吸光度を測定して、「細胞生存率」を評価した。結果を図12に示す。
細胞生存率の評価と同様にして、塩化亜鉛を添加したD−MEMを添加して、一晩(20時間)、37℃のCO2インキュベーター内に静置した。
塩化亜鉛による細胞膜損傷への影響を評価するため、マイクロピペットを用いて、培地のみ回収し、96ウェルプレートに入れ、さらに、LDH測定試薬(商品名:Cytotoxicity Detection Kit、Roche社製)をそれぞれ添加し、室温(23℃)にて5分間反応させた。その後、プレートリーダーを用いて492nm、リファレンスの値として620nmの吸光度を測定して、「細胞膜損傷率」を評価した。結果を図13に示す。
細胞生存率の評価と同様にして、塩化亜鉛を添加したD−MEMを添加して、一晩(20時間)、37℃のCO2インキュベーター内に静置した。
塩化亜鉛による炎症物質の分泌量への影響を評価するため、マイクロピペットを用いて、培地のみ回収した。タンパク質測定キット(商品名:Human IL−8 ELISA Ready−SET−Go!(登録商標)、affymetrix社製)を用いて、ELISA法にてIL−8の分泌量を、プレートリーダーを用いて450nm、リファレンスの値として570nmの吸光度を測定した。結果を図14に示す。
<1> 基材に、固定材Aを含有する溶液を付与する固定材A含有溶液付与工程と、
前記固定材Aに対して混合が可能な固定材B及び細胞を含有する懸濁液を付与する固定材B及び細胞含有懸濁液付与工程と、を含み、
前記固定材Aと前記固定材Bとのそれぞれ少なくとも一部が混合されてハイドロゲルを形成し、
前記細胞が、前記ハイドロゲルを介して前記基材に固定されることを特徴とする評価用基材の製造方法である。
<2> 前記細胞の少なくとも一部が前記ハイドロゲルに被覆される前記<1>に記載の評価用基材の製造方法である。
<3> 前記固定材A及び前記固定材Bが、混合により増粘する前記<1>から<2>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法である。
<4> 前記固定材A及び前記固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液に少なくとも一部が被覆された細胞が乾燥する時間に達した場合に、前記固定材A及び前記固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する工程をさらに含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法である。
<5> 前記評価用基材を別容器に浸漬し、前記ハイドロゲルを介して固定された細胞を培養する前記<1>から<4>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法である。
<6> 前記固定材Aが、生体由来ポリマー、凝固因子、接着因子、多糖化合物金属塩、及び合成ポリマーから選択される少なくとも1種である前記<1>から<5>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法である。
<7> 前記生体由来ポリマーが、コラーゲン、エラスチン、ゼラチン、及びフィブロインから選択される少なくとも1種である前記<6>に記載の評価用基材の製造方法である。
<8> 前記凝固因子が、フィブリノーゲンである前記<6>から<7>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法である。
<9> 前記接着因子が、フィブロネクチン、ラミニン、及びリコンビナントペプチドから選択される少なくとも1種である前記<6>から<8>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法である。
<10> 前記多糖化合物金属塩が、アルギン酸、及びジェランガムの少なくともいずれかである前記<6>から<9>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法である。
<11> 前記固定材Bが、多糖類、多価金属塩、フィブリノーゲン、トロンビン、フィブロネクチン、ラミニン、リコンビナントペプチド、キトサン、及びキチンから選択される少なくとも1種である前記<1>から<10>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法である。
<12> 前記固定材Bが、トロンビンである前記<11>に記載の評価用基材の製造方法である。
<13> 培地を付与する工程をさらに含む前記<1>から<12>のいずれかに記載の評価用基材の製造方法である。
<14> 基材と、
前記基材に、固定材Aを含有する溶液を付与する固定材A含有溶液付与手段と、
前記固定材Aに対して混合が可能な固定材B及び細胞を含有する懸濁液を付与する固定材B及び細胞含有懸濁液付与手段と、を有し、
前記細胞が、前記固定材Aと、前記固定材Bとのそれぞれ少なくとも一部が混合されて形成されたハイドロゲルを介して前記基材に固定されることを特徴とする評価用基材の製造装置である。
<15> 前記固定材Aが、生体由来ポリマー、凝固因子、接着因子、及び多糖化合物金属塩、合成ポリマーから選択される少なくとも1種である前記<14>に記載の評価用基材の製造装置である。
<16> 前記固定材Aが、凝固因子である前記<15>に記載の評価用基材の製造装置である。
<17> 前記凝固因子が、フィブリノーゲンである前記<16>に記載の評価用基材の製造装置である。
<18> 前記固定材Bが、トロンビンである前記<14>から<17>のいずれかに記載の評価用基材の製造装置である。
<19> 培地を付与する手段をさらに有する前記<14>から<18>のいずれかに記載の評価用基材の製造装置である。
<20> 前記細胞が、正常ヒト皮膚線維芽細胞である前記<14>から<19>のいずれかに記載の評価用基材の製造装置である。
3、25、28 ハイドロゲル
4、26 細胞
22 固定材A含有溶液付与手段
23 固定材B及び細胞含有懸濁液付与手段
Claims (6)
- 基材に、固定材Aを含有する溶液を付与する固定材A含有溶液付与工程と、
前記固定材Aに対して混合が可能な固定材B及び細胞を含有する懸濁液を付与する固定材B及び細胞含有懸濁液付与工程と、を含み、
前記固定材Aと、前記固定材Bとのそれぞれ少なくとも一部が混合されてハイドロゲルを形成し、
前記細胞が、前記ハイドロゲルを介して前記基材に固定されることを特徴とする評価用基材の製造方法。 - 前記細胞の少なくとも一部が前記ハイドロゲルに被覆される請求項1に記載の評価用基材の製造方法。
- 前記固定材A及び前記固定材Bが、混合により増粘する請求項1から2のいずれかに記載の評価用基材の製造方法。
- 前記固定材A及び前記固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液に少なくとも一部が被覆された細胞が乾燥する時間に達した場合に、前記固定材A及び前記固定材Bの少なくともいずれかを含有する溶液を付与する工程をさらに含む請求項1から3のいずれかに記載の評価用基材の製造方法。
- 前記評価用基材を別容器に浸漬し、前記ハイドロゲルを介して固定された細胞を培養する請求項1から4のいずれかに記載の評価用基材の製造方法。
- 基材と、
前記基材に、固定材Aを含有する溶液を付与する固定材A含有溶液付与手段と、
前記固定材Aに対して混合が可能な固定材B及び細胞を含有する懸濁液を付与する固定材B及び細胞含有懸濁液付与手段と、を有し、
前記細胞が、前記固定材Aと、前記固定材Bとのそれぞれ少なくとも一部が混合されて形成されたハイドロゲルを介して前記基材に固定されることを特徴とする評価用基材の製造装置。
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