JP2016169418A - 塗装かつ犠牲防食効果を利用した耐穴あき性に優れた自動車用部材および自動車用給油管 - Google Patents

塗装かつ犠牲防食効果を利用した耐穴あき性に優れた自動車用部材および自動車用給油管 Download PDF

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Abstract

【課題】塗装かつ犠牲防食効果を利用した耐穴あき性に優れた自動車用部材および給油管を提供する。【解決手段】質量%で、CとN≦0.015%、Cr:10.5〜18.0%、Si:0.01〜0.80%、Mn:0.01〜0.80%、Mo:0.6%以下、Al:0.010〜0.100%を含有し、更にTiとNb:0.03〜0.30%の1種又は2種を含有するフェライト系ステンレス鋼を素材としためっきを有しない部材と、部材に取り付けられる犠牲防食型のめっき鋼板から成型された金具部品との間において、塩害環境に曝される隙間構造部を有し、隙間構造部における金具部品のめっき付着量が20g/m2以上150g/m2以下であり、隙間構造部以外の部材および金具部品の表面が塗膜で被覆され、部材表面における−0.8V vs SSE印加時のカソード電流値が10-7A/cm2以上になる自動車用部材。【選択図】図5

Description

本発明は、自動車用部材に関する。特に、融雪塩のような自動車への付着塩分が高い地域で使用される優れた耐食性を確保した給油管に関する。
自動車用の給油管には、米国の法規制で15年間もしくは15万マイル走行の寿命保証が義務付けられており、ステンレス鋼(SUS436L:17Cr−1.2Mo)を素材とした給油管が既に実用化されている。
北米や欧州地区を走行する自動車は融雪塩環境に曝されるので給油管に適用される素材には優れた塩害耐食性が求められ、従来SUS436Lが適用されてきた。昨今の資源価格高騰を背景として、コスト低減の要求が生じている。コスト低減の課題に対して、安価な素材を適用するのではなく、一体成型による部品数の低減により解決を図った場合、主要部品であるインレットパイプに直接金具部品が取り付けられることとなる。そのため、インレットパイプと取り付けられた部品との間に隙間構造が形成されてしまう。
隙間部は一般部に比べ腐食が生じやすいため、塩害環境に曝される給油管外面側では隙間腐食を生じる。燃料が通過するインレットパイプに隙間腐食が生じ、穴あきに至った場合、燃料漏れにより深刻な事故を引き起こす可能性がある。
従来、隙間部の塩害耐食性を向上させる手段としてカチオン電着塗装などの塗装が用いられてきた。
例えば、特許文献1では、SUS436パイプを素材としてプロジェクション溶接を用いて組み立てた給油管にカチオン電着塗装を施す製造方法が開示されている。しかしながら、この技術ではSUS436を素材としたものであり、発明者らの知見によればSUS436においても防錆が完全とはいえない。
また、特許文献2では、SUS436を素材として組み立てた給油管に静電塗装を施して隙間腐食を防止する技術が開示されている。あるいは、特許文献3では、ステンレス鋼製給油管に耐チップ塗装を施し、チッピングを受けても十分な防錆性を確保する技術が示されている。しかしながら、これらの技術は電着塗装の場合よりも塗装コストがかかる。一方、隙間内部には塗装できないため、隙間部の十分な防錆効果が得られる保証はない。
また、隙間内部に塗装するための技術として、特許文献4では隙間形成前に電着塗装し、ボルトナットによって機械的に締結をする技術が開示されている。さらに、隙間内部に塗装するために、特許文献5では、隙間形成部品に突起を設け、隙間の開口量を制御する技術も開示されている。
一方、塗装以外の防錆方法についても提示されている。例えば、特許文献6では、ステンレス鋼製給油管の組み立てにおける溶接、ロウ付け、塑性加工などによって不働態皮膜が損なわれた部位や隙間部位に亜鉛の犠牲陽極を配して犠牲防食する技術が開示されている。しかしながら、腐食懸念部位の全てに亜鉛を配するのは煩雑であるし手間がかかる。さらに、特許文献7には、インレットパイプに亜鉛メッキ鋼板を用い、隙間部を溶融させた亜鉛で埋めることで、隙間部を無くしている。しかしながら、給油口がインレットパイプの中に入り込んでいる構造上、溶解した亜鉛はインレットパイプ内に侵入しやすく、水分と反応することで、水酸化亜鉛等の腐食生成物を形成し、燃料噴射装置の目詰まりの原因となる可能性がある。
また、特許文献7や特許文献8では犠牲防食と電着塗装を組み合わせた給油管が開示されている。しかしながら、犠牲防食作用と塗装を組み合わせた場合、被防食金属上の塗膜剥離が生じてしまう。これは、犠牲防食金属表面で腐食反応が生じると、被防食金属表面では酸素の還元反応が生じpHが上昇する。電着塗装は高pH環境に弱く、密着性が失われ剥離する。塗膜の剥離が生じた場合、外観が悪くなるうえ、剥離した塗膜と部品との間に新たに隙間が形成され、隙間腐食による穴あきを誘発する可能性もある。さらに、ステンレス素材の成分やめっき素材の成分の記載が無いため、具体的な環境を想定しているとは言い難く、外観の劣化についても考慮されていない。
特開2002−242779号公報 特開2004−21003号公報 特開2006−231207号公報 特開2012−197071号公報 特開2012−012005号公報 特開2005−206064号公報 特開2012−96570号公報 特開2007−216935号公報
真木 純:表面技術、Vol.62(2011)、No.1、20−24
本発明は、SUS436L同等以下の材料を用いて、インレットパイプと部品との間に隙間構造があることにより、ステンレス鋼の弱点である塩害耐食性、特に隙間部における耐食性を確保し、かつ塗膜の膨れによって生じる隙間腐食の発生を防止することを目的とする。
特許文献8の技術では、ステンレス鋼からなる鋼管部材と取り付けられたZnめっき鋼板製の部品からなる給油管において、隙間部の腐食を抑制するためZnめっきの犠牲防食作用を適用するとともに電着塗装で被覆している。このような犠牲防食かつ塗装による耐食性の確保を狙った構造では、所謂カソード膨れにより電着塗装が膨れ、新たな隙間構造を生み出し、隙間腐食を生じてしまう。カソード膨れは、被犠牲防食材料であるステンレス製給油管本体と塗装界面で酸素の還元反応(カソード反応)が生じ、反応によりpHが上昇することで、塗装の密着性が低下し膨れに至る。すなわち、鋼管部材と部品の材料が異種の材料であり、通常の条件の塗装で覆われた構造の場合、カソード膨れによる外観の劣化は避けられない。本発明では、めっきによる犠牲防食を利用し、隙間部の耐食性を確保するとともに、塗装の剥離を防止することにより、使用中の新たな隙間腐食の発生を抑制する技術を提供することを目標とする。
本発明者らは、隙間部の耐食性を確保するための手段として、めっきによる犠牲防食および塗装を適用することを前提に塗装のカソード膨れを抑制する技術を検討した。まずは電着塗装とカソード膨れとの関係性を考えるため、電着塗装の厚みを変化させ、カソード膨れの発生を検証した。その結果、通常は耐食性が劣化するため想起し得ない電着塗装の薄膜化により、カソード膨れが抑制することが判明した。しかしながら、同時に電着塗装が有する物質の遮断性が失われ、部品と給油管本体と間の隙間腐食が促進してしまうことが分かった。そこでめっきの付着量を適正化することで、所定の耐食寿命を得るためのめっき付着量の必要条件を解明した。
本発明は前記知見に基づいて構成したものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)質量%で、C:≦0.015%、N:≦0.015%、Cr:10.5〜18.0%、Si:0.01〜0.80%、Mn:0.01〜0.80%、P≦0.050%、S:≦0.010%、Mo:0.6%以下、Al:0.010〜0.100%、を含有し、更に、Ti≦0.30%、Nb≦0.30%であって0.03%≦Tiと0.03%≦Nbの一方又は両方を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物より成るフェライト系ステンレス鋼を素材としためっきを有しない部材と、前記部材に取り付けられる犠牲防食型のめっき鋼板から成型された金具部品との間において、塩害環境に曝される隙間構造部を有し、前記隙間構造部の隙間部に当たる面における金具部品のめっき付着量が20g/m2以上150g/m2以下であり、前記隙間構造部以外の部材および金具部品の表面が塗膜で被覆され、塗装後のめっきを有しない部材表面における−0.8V vs SSE印加時のカソード電流値が10-7A/cm2以上になることを特徴とする自動車用部材。
(2)質量%で、さらにB:0.0002〜0.0050%、Sn:0.005〜0.50%の1種または2種を含有することを特徴とする(1)に記載の自動車用部材。
(3)質量%で、さらにCu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜0.5%、Sb:0.005〜0.5%、Zr:0.005〜0.5%、Co:0.005〜0.5%、W:0.005〜0.5%、V:0.03〜0.5%、Ga:0.001〜0.05の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の自動車用部材。
(4)質量%で、さらにMo:0.6%超〜1.5%を含有することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の自動車用部材。
(5)前記金具部品のめっきがZnめっき、Alめっき、Sn−Znめっきのいずれかであることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の自動車用部材。
(6)塗装がカチオン電着塗装で塗装厚みが1μm以上5μm未満である(1)乃至(5)のいずれかに記載の自動車用部材。
(7)塗装がスプレー塗装であり塗装厚みが1μm以上20μm以下である(1)乃至(5)のいずれかに記載の自動車用部材。
(8)前記金具部品の素材の組成が、前記部材と同一組成範囲であることを特徴とする(1)乃至(7)のいずれかに記載の自動車用部材。
(9)前記フェライト系ステンレス鋼を素材とした前記部材はインレットパイプおよび/またはブリーザーパイプであることを特徴とする(1)乃至(8)のいずれかに記載の自動車用燃料給油管。
本発明によって、めっきの犠牲防食効果かつ電着塗装による防食効果を得ながら、塗膜の膨れを抑制することで塩害耐食性を安定的に確保した給油管が提供できるので、産業上の効果は大きい。
すなわち、本発明の技術によって、SUS436L同等以下の素材からなる鋼管部材とめっき鋼板からなる金具部品からなり、塩害環境と接する面を塗装した給油管において、塗装を薄膜化することで犠牲防食作用に起因するカソード剥離を抑制することができる。さらに、塗装を薄くすることで低減した耐食性は、めっきの付着量を適正化することで所定の基準を達成可能にした。以上より、必要な耐食性を確保しつつ、カソード剥離による新たな隙間腐食発生を抑制することができる。
給油管の中央部に存在する隙間部の隙間構造例を示した図である。 給油管の給油口部に存在する隙間部の隙間構造例を示した図である。 電着塗装膜厚が隙間外最大腐食深さに及ぼす影響を示す図である。 スプレー塗装膜厚が隙間外最大腐食深さに及ぼす影響を示す図である。 カソード電流密度判定と隙間外最大腐食深さに及ぼす影響を示す図である。 めっき付着量が隙間内最大腐食深さに及ぼす影響を示す図である。 構造の検討に使用した試験片形状を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で言う部材とは、その内面が燃料環境に曝され外面が塩害環境に曝される部材の総称である。当該部材のうちで鋼管を成型したパイプ形状の部材を鋼管部材と称し、メインパイプ、ブリーザー、燃料配管などの部材が含まれる。メインパイプはインレットパイプとも呼ばれ、給油口から燃料タンクへ燃料を導入するパイプである。また、金具部品とは、塩害環境のみに曝され、部材あるいは鋼管部材との間に隙間部を構成する部品の総称であり、配管支持部材や例えばステー、ブラケットと称される金具やキャッププロテクターやリテーナーと称される部材などが含まれる。
本発明の自動車用部材あるいはその代表例である給油管には、例えば図1、図2に示すような隙間部が含まれる。図1は給油管の中央部を示す事例であり、図1(a)メインパイプ1a(鋼管部材1)とブリーザーチューブ1b(鋼管部材1)を結束して車体に固定するための金具部品2が溶接によって溶接部4で取り付けられている様子を示す斜視概念図であり、図1(b)はメインパイプ1aへの金具部品2取り付け部分の断面模式図である。いずれも、金具部品2と鋼管部材1であるメインパイプ1aあるいはブリーザーチューブ1bの溶接部4近傍に隙間部3が形成されている様子を示す。また、図2は給油管の給油口部を示す事例であり、ここではメインパイプをインレットパイプと呼ぶ。図2(a)はインレットパイプ11(鋼管部材11)にキャッププロテクター12(金具部品12)が溶接によって溶接部14で取り付けられている様子を示す斜視概念図であり、図2(b)はインレットパイプ11への金具部品12取り付け部分の断面模式図である。いずれも、金具部品12と鋼管部材11であるインレットパイプ11の溶接部14近傍に隙間部13が形成されている様子を示す。隙間部3や隙間部13を含む部分を本発明では隙間構造部とよぶ。また、図1および図2ともに塩害環境に接する部分に電着塗装が施されているが、隙間内には完全に電着塗装が施されていない。カソード膨れは、図1では1aまたは1bの表面上で生じ、図2では11の表面上で生じる。
本発明は、塩害環境に曝される隙間構造部を対象とする。
このような隙間部の隙間内部に、塩水が充填されて乾湿サイクルが付与されると隙間腐食が発生し、成長して鋼管部材を穴明きに至らしめる。これを防止するには隙間腐食の成長を抑制することもさることながら、隙間腐食の発生自体を抑制するのが重要であり、このための手段として犠牲防食かつ塗装を用いるのが常套である。犠牲防食と塗装を用いる場合、カソード膨れによる隙間腐食の発生も考慮する必要がある。
そこでまず、鋼管部材に相当するステンレス鋼板とめっき鋼板を素材とした隙間試験片を作製して塩害耐食性を調査した。
隙間試験片は、t0.8×70×150mmサイズの大板にt0.8×40×40mmサイズの小板を重ねて中央部をスポット溶接して作製した。大板は、鋼管部材に相当するものであり、フェライト系ステンレス鋼板を用いた。小板は、金具部品に相当するものであり、Alめっき付着量を変化させたAlめっき鋼板を用いた。大板は表1記載の本発明例のNo.22、小板は表1記載のNo.A23、A24の成分のステンレス鋼板に、付着量80g/m2のAlめっきしたものを使用した。大板と小板との対面部分が隙間部を構成する。
隙間試験片には、カチオン電着塗装又はスプレー塗装を施した後に塩害腐食試験に供した。カチオン電着塗装は、塗料は日本ペイント(株)製PN−110を用い、浴温28℃、塗装電圧170Vで通電し、塗膜厚みが一般部(大板表面と小板表面のうち、隙間部以外の部分)において0.1〜10μmになるように条件選定した。焼付条件は、170℃×20分とした。また、スプレー塗装はアイシン化工(株)製エマルタ5600を用い、膜厚を0.1〜30μmとなるように条件選定した。焼付条件は、120℃×20分とした。塗膜厚みは電磁膜厚計を用いて1試料について5点測定し、その平均値をもって膜厚とした。なお、一部の試験片について塗装後に溶接ナゲットを穿孔して隙間部の内部を観察し、隙間部の内部に塗膜が形成されないことを確認した。
これら隙間試験片の塩害耐食性評価試験として、JASOモードの複合サイクル腐食試験(JASO−M609−91規定のサイクル腐食試験(塩水噴霧:35℃×2Hr、乾燥:相対湿度20%、60℃×4Hr、湿潤:相対湿度90%、50℃×2Hrの繰り返し))の塩水噴霧を5%NaCl噴霧から2%NaCl噴霧に変更した試験条件を用いた。本発明は、融雪塩を使用する頻度が低い地域を対象としているため、JASOの規定よりもNaCl濃度を低く設定した。試験条件変更によりカソード膨れ部の隙間腐食が顕著に表れるようにした。塩分濃度を5%から2%へ低減するものの、犠牲防食作用によってめっきは消耗する条件であり、カソード膨れが生じる。そして、カソード膨れ部では、塗装と材料との界面に隙間が形成されるため、隙間腐食が生じることとなる。カソード剥離部に生じた隙間腐食は、スポット溶接による隙間構造に生じた隙間腐食よりも犠牲防食金属から距離が離れているため、犠牲防食効果が小さい。加えて、塩分濃度を5%から2%へ低減する効果により、スポット溶接による隙間構造に生じた隙間腐食が抑制されるため、カソード剥離部に生じた隙間腐食が顕著に表れやすい。試験期間は200サイクルとした。試験終了後、カソード剥離によって生じた隙間外部の腐食深さを顕微鏡焦点深度法によって測定した。
試験結果を図3、図4に示す。これより、カチオン電着塗装およびスプレー塗装ともに一定の膜厚を超えた場合、カソード膨れにより隙間外の腐食深さが400μmを超えてしまうことが分かる。また、逆に膜厚が薄い場合は塗装が不完全となり、隙間外の腐食深さが400μmを超えている。すなわち、塗装の膜厚が適正範囲に制御されることが重要であることが分かる。
また膜厚以外の指標を得るため、同様の工程で作成した塗装後のめっきを有しない部材表面をJIS G 0579の規定と同様、評価面の1cm2以外の部分をシリコン樹脂で被覆し試験片とした。作製した試験片を用いて、非脱気の50℃、2%NaCl溶液中においてカソード分極曲線を測定した。カソード分極曲線は、JIS G 0579の規定の試験装置を用い、試験片を試験溶液に10min浸漬後、浸漬電位より卑な方向に20mV/minの速度で掃印することで測定した。−0.8V vs. SSEにおけるカソード電流値を読み取った。
結果を図5に示す。塗装膜厚を適正範囲に管理した試験片では、カチオン電着塗装およびスプレー塗装ともにカソード電流密度が10-7A/cm2以上になることが判明した。しかしながら、耐食性向上効果のある塗装膜厚を減少させたため、めっきの付着量が少なすぎる場合、必要な耐食が満足できなくなる可能性がある。そこで、めっき種およびめっき付着量の適正範囲の確認試験を実施した。
隙間試験片は、t0.8×70×150mmサイズの大板にt0.8×40×40mmサイズの小板を重ねて中央部をスポット溶接して作製した。大板は、鋼管部材に相当するものであり、フェライト系ステンレス鋼板を用いた。小板は、金具部品に相当するものであり、めっき付着量を変化させためっき鋼板を用いた。めっき種はAl、Sn−Zn、Znとした。大板は表1記載の本発明例の含有成分、小板は表1記載の含有成分のステンレス鋼板に、付着量を10〜180g/m2に変化させたものを使用した。大板と小板との対面部分が隙間部を構成する。
隙間試験片には、カチオン電着塗装又はスプレー塗装を施した後に塩害腐食試験に供した。カチオン電着塗装は、塗料は日本ペイント(株)製PN−110を用い、浴温28℃、塗装電圧170Vで通電し、塗膜厚みが一般部(大板表面と小板表面のうち、隙間部以外の部分)において3μmになるように条件選定した。焼付条件は、170℃×20分とした。また、スプレー塗装はアイシン化工(株)製エマルタ5600を用い、膜厚を10μmとなるように条件選定した。塗膜厚みは電磁膜厚計を用いて1試料について5点測定し、その平均値をもって膜厚とした。なお、一部の試験片について塗装後に溶接ナゲットを穿孔して隙間部の内部を観察し、隙間部の内部に塗膜が形成されないことを確認した。
これら隙間試験片の塩害耐食性評価試験として、JASOモードの複合サイクル腐食試験(JASO−M609−91規定のサイクル腐食試験(塩水噴霧:35℃×2Hr、乾燥:相対湿度20%、60℃×4Hr、湿潤:相対湿度90%、50℃×2Hrの繰り返し))の塩水噴霧を5%NaCl噴霧から2%NaCl噴霧に変更した試験条件を用いた。試験期間は200サイクルとした。試験終了後、カソード剥離によって生じた隙間外部の腐食深さを顕微鏡焦点深度法によって測定した。
結果を図6に示す。図6はより膜厚を適正範囲に管理すれば、隙間内の最大腐食深さはめっき付着量で整理でき、20g/m2以上必要であると言える。また、隙間内最大腐食深さが最大100μm以下の場合、過剰防食であると考えられるため、上限を150g/m2とした。
このように、本発明における金具部品としてはめっき鋼板を素材とするものであり、隙間部に当たる面におけるめっき付着量が20g/m2以上を必要とする。めっき付着量がこれを下回ると満足すべき耐食性が得られないためである。一方、めっき付着量が多くなれば耐食寿命は延長されるが、寿命延長はカチオン電着塗膜による隙間以外の面を被覆することによってある程度確保可能であり、コストも考慮して150g/m2をめっき付着量の上限とする。ここにおいて、「隙間部に当たる面」とは、金具部品が部材又は鋼管部材と接近又は当接して隙間部を構成する面を意味する。
金具部品に使用するめっき鋼板のめっき種は、犠牲防食型のめっきとする。犠牲防食型のめっきには、Znめっき、Alめっきなどがあり、Znめっき中にはNi、Mg、Al、Co、Fe、Snが含まれる場合があり、Alめっきには、SiやFeが含まれる場合がある。金具部品にバリヤー型のめっきを採用した場合、優先的に部材又は鋼管部材の腐食が生じる可能性があるため、適用できない。
めっき鋼板は、電気めっき、蒸着めっき法、溶融めっき法によって製造されたものを用いることができる。例えば、溶融Alめっきステンレス鋼板は、純Al浴を用いて製造されるTypeIIよりも、Al−5〜15%Si浴を用いて製造されるTypeIを使用することが望ましい。これは、TypeIの方がTypeIIよりもめっき層とステンレス母地との界面に存在する合金層の厚みが薄く、成型加工時にめっき層の剥離が生じにくいためである。このようなTypeIのAlめっき層には、非特許文献1で示すように、通常約10mass%のSiと約1mass%のAl−Fe−Si金属間化合物が含まれている。
部材、鋼管部材と金具部品の表面のうち、少なくとも隙間部の隙間内部以外の面(「一般面」という。)にはカチオン電着塗膜又はスプレー塗装膜を形成させる。一般面の電着塗膜は遮蔽効果を持ち、めっきの防食電流の到達領域を隙間部に限定する効果がある。これによってめっきの消耗速度を抑制し防食寿命が延長できる。このためのカチオン電着塗膜の膜厚は1μm以上が必要である。一方、膜厚は過度に厚い場合、カソード膨れの原因となるため、カチオン電着塗装の場合5μm未満とし、スプレー塗装の場合20μm以下とするのが良い。塗膜の厚みによる遮蔽効果は、カソード電流密度により定量的に表すことができ、塗膜の厚みが厚いほどカソード電流密度は小さくなる。カソード電流密度は、カソード分極曲線の−0.8V vs. SSEにおけるカソード電流値により算出した。Alめっき、Znめっき、Sn−Znめっきの浸漬電位範囲内となる−0.8Vを評価基準とし、−0.8Vにおけるカソード電流密度を特性評価値として採用した。また、塗膜を薄膜化を狙い過度な条件にした場合、塗膜に欠陥が生じてしまう。塗膜欠陥の生じる最低膜厚は、鋼板の粗さ、塗料の粘度、塗装条件など複雑な要因が重なるため一概には定義できない。したがって、塗膜欠陥が無い塗装条件のカソード電流密度の上限値の決定は難しく、少なくとも50℃における酸素の拡散限界電流密度(10-4A/cm2)以下になる。なお、部材、鋼管部材、金具部品の隙間部の面にカチオン電着塗膜が形成されるか否かは、隙間部の開口量によって異なることとなる。隙間部の開口量が、電着塗膜が十分に形成される程度に広い場合(0.2mm以上)は、部材、鋼管部材の隙間内部に電着塗膜が形成されているので、隙間腐食発生を防ぐことができる。一方、隙間部の開口量が小さく隙間部に当たる面に電着塗膜が形成されない場合、従来であると部材、鋼管部材のこの部分に隙間腐食が発生していたが、本発明においては、金具部品の隙間内部部分はめっきされており、金具部品のこの部分に塗膜が形成されていないためめっきが露出しており、めっきによる犠牲防食効果を発揮することができる。
さらに、給油口部材に適用した時に懸念されるAl成分のインレットパイプ内への流入を防止するためにAlめっきステンレス鋼板製金具部品の取り付け構造の検討を実施した。試験片は、図7に示すようにインレットパイプを模擬したフェライト系ステンレス製鋼管21の外面および内面に金具部品を模擬したAlめっきステンレス鋼板製鋼管22を4点のスポット溶接部24により隙間部23を形成したものを用いた。フェライト系ステンレス製鋼管21は成分として表1のNo.A22を用い、形状はφ50×50L×0.8tmmである。Alめっきステンレス製鋼管22として表2のNo.A23を用い、Alめっき付着量は49g/cm2とした。Alめっきステンレス製鋼管22の形状は、図7(a)の構造Iのように、フェライト系ステンレス製鋼管21の外面にAlめっきステンレス製鋼管22を溶接する場合はφ52×50L×0.8tmmとし、図7(b)の構造IIのように、フェライト系ステンレス製鋼管21の内面にAlめっきステンレス製鋼管22を溶接する場合はφ48×50L×0.8tmmとした。Alめっきステンレス製鋼管22を取り付けるための溶接部24位置(取り付け位置)をフェライト系ステンレス鋼管21の端部から0〜20mmに変化させた。
試験片にはカチオン電着塗装を施した。カチオン電着塗装において、塗料は日本ペイント(株)製PN−110を用い、浴温28℃、塗装電圧170Vで通電し、塗膜厚みが一般部(フェライト系ステンレス製鋼管21表面とAlめっきステンレス製鋼管22表面のうち、隙間部23以外の部分)において3μmになるように条件選定した。焼付条件は、170℃×20分とした。塗膜厚みは電磁膜厚計を用いて1試料について5点測定し、その平均値をもって膜厚とした。なお、一部の試験片について電着塗装後に溶接ナゲットを穿孔して隙間部の内部を観察し、隙間部の内部に塗膜が形成されないことを確認した。
これら隙間試験片の塩害耐食性評価試験として、上記と同様JASOモードの複合サイクル腐食試験(JASO−M609−91規定のサイクル腐食試験(塩水噴霧:35℃×2Hr、乾燥:相対湿度20%、60℃×4Hr、湿潤:相対湿度90%、50℃×2Hrの繰り返し))の塩水噴霧を5%NaCl噴霧から2%NaCl噴霧に変更した試験条件を用いた。試験期間は200サイクルとした。なお、試験中は図7に示すように鋼管の上下2カ所にシリコン栓25でふたをし、溶出したAlの液がフェライト系ステンレス鋼管21内部へ自然に流入しないようにした。
試験終了後、フェライト系ステンレス鋼管21内部へのAl腐食生成物の侵入の有無を評価した。
試験結果を表4に示す。いずれも腐食による穴あきは見られなかったが、構造IIでは消耗したAlめっき部からフェライト系ステンレス鋼管内へAl腐食生成物が侵入していた。さらに、構造Iかつ取り付け位置が5mm未満の場合、鋼管の端面が腐食し、端部とシリコン栓との隙間からフェライト系ステンレス鋼管内へAl腐食生成物が侵入していた。したがって、構造Iかつ取り付け位置がフェライト系ステンレス鋼管から5mm以上の場合、フェライト系ステンレス鋼管にAl腐食生成物が侵入しないことが分かる。
以上、まとめると、フェライト系ステンレス鋼を素材とした部材と、部材に取り付けられるAlめっきステンレス鋼板から成型された金具部品との間において、塩害環境に曝される隙間構造部を有し、隙間構造部の隙間部に当たる面における金具部品のAlめっき付着量が20g/m2以上150g/m2以下であり、少なくとも隙間部以外の部材および金具部品の表面が塗膜で被覆され、塗装後のめっきを有しない部材表面における−0.8V vs SSE印加時のカソード電流値が10-7A/cm2以上になることを特徴とする自動車用部材とすることにより、隙間部の開口量のいかんに関わらず、隙間腐食を有効に防止することを可能にする。部材と金具部品との取り付けについては、両者が相互に電気伝導性を有する程度に固着していれば足りる。さらに、本発明を給油口部に適用する場合は、インレットパイプ(鋼管部材)の外面かつ端面から5mm以上離れた位置に金具部品を溶接すると好ましい。これにより、インレットパイプ内にAl腐食生成物の侵入を防止できるという効果をも発揮することができる。
次に、上記本発明の自動車用部材の製造方法について説明する。一例として金具部品にAlめっきステンレス鋼板を用い、塗装はカチオン電着塗装を採用した場合を示すが、金具部品をAlめっき鋼板、Znめっき鋼板、Znめっきステンレス鋼板やSn−Znめっき鋼板、Sn−Znめっきステンレス鋼板とし、塗装をスプレー塗装としてもよい。
まず、フェライト系ステンレス鋼を素材とした部材へ、Alめっき付着量が20g/m2以上150g/m2以下のAlめっきステンレス鋼板から成型された金具部品を取り付ける。部材と金具部品との取り付けを溶接あるいはロウ付けによって行うと好ましい。部材と金具部品との取り付け部近傍には隙間部が形成される。この隙間部は塩害環境に曝される場所に位置する。また、隙間部を含む部分を隙間構造部という。これにより、部材に取り付けられるAlめっきステンレス鋼板から成型された金具部品との間において、塩害環境に曝される隙間構造部を形成する。次にカチオン電着塗装を行い、金具部品と部材の表面を厚み1以上〜5μm未満のカチオン電着塗膜で被覆する。スプレー塗装の場合、塗装膜厚が1以上〜20μm以下である。Alめっきを付着した金具部品を部材に取り付けるので、取り付け部付近に形成される隙間部の当たる面における金具部品のAlめっき付着量が20g/m2以上150g/m2以下となる。本発明の自動車用部材はまた、以上のように製造されてなる自動車用部材である。
上記部材として鋼管を成型した鋼管部材を用いることにより、本発明の自動車用部材を給油管として好適に用いることができる。
次に、部材、鋼管部材の素材について説明する。ここで言う鋼管部材とは、内部に燃料ガスが充満するメインパイプ(インレットパイプ)やブリーザーチューブ等のパイプ形状の部材を意味する。また金具部品についても、下記で説明する素材を用いることとすると好ましい。
本発明では、SUS436Lと同等もしくは合金元素含有量が適度に少ない素材であることに特長を持たせる。具体的には、以下の組成より成るフェライト系ステンレス鋼を素材とする。以下、含有量の%は質量%を意味する。
C、N:CおよびNは、溶接熱影響部における粒界腐食の原因となる元素であり、耐食性を劣化させる。また、冷間加工性を劣化させる。このため、C、Nの含有量は可及的低レベルに制限すべきであり、C、Nの上限は0.015%とするのが望ましく、より望ましは0.010%である。なお、下限値は特に規定するものではないが、精錬コストを考慮して、C:0.0010%、N:0.0050%とするのが良い。
Cr:Crは加熱後耐食性を確保する基本的元素であり適量の含有が必須であり、Cr含有量の下限を10.5%とする必要がある。一方、加工性を劣化させる元素であることと合金コスト抑制の観点から上限含有量を18.0%に設定するのがよい。Cr含有量の好ましい範囲は13.0%〜17.5%であり、より好ましくは16.0%〜17.5%である。本発明においては、より低級な素材を追究する観点からは、Crは13.0%未満がよく、より好ましくは、12.0%以下である。
Ti、Nb:TiおよびNbはC、Nを炭窒化物として固定して粒界腐食を抑制する作用を有する。このため、TiとNbの一方又は両方を含有させるが、過剰に含有させても効果は飽和するため、各々の含有量の上限を0.30%とする。ここにおいて、TiとNbの少なくとも一方の含有量が0.03%以上であれば効果を発揮することができる。なお、Ti、Nbの適正含有量としては、両元素の合計量がC、N合計含有量の5倍量以上かつ30倍量以下がよい。好ましくは、Ti、Nb合計含有量がC、N合計含有量の10倍〜25倍とするのが良い。
Si:Siは精錬工程における脱酸元素として有用であり0.01%を下限として含有させる。一方、加工性を劣化させるため多量に含有させるべきではなく上限を0.80%に制限するのがよい。好ましい範囲は、0.05〜0.50%である。
Mn:Mnも脱酸元素、S固定元素として0.01%以上を含有させるが、Mnも加工性を劣化させるため多量に含有させるべきではなく上限を0.80%に制限するのがよい。好ましい範囲は、0.10〜0.50%である。
P:Pは加工性を著しく劣化させる元素であり不純物元素である。このため、Pの含有量は可及的低レベルが望ましい。許容可能な含有量の上限を0.050%とする。望ましいPの上限値は0.030%である。なお、下限値は特に規定するものではないが、精錬コストを考慮して、0.010%とするのが良い。
S:Sは耐食性を劣化させる元素であり不純物元素である。このためSの含有量は可及的低レベルが望ましい。許容可能なS含有量の上限を0.010%とする。望ましいS含有量の上限値は0.0050%である。なお、下限値は特に規定するものではないが、精錬コストを考慮して、0.0005%とするのが良い。
Al:Alは脱酸元素として有用であり、0.010%以上を含有させるが、加工性を劣化させるため多量に含有させるべきではなく上限を0.100%に制限するのがよい。好ましくは、含有量の上限を0.080%とするのが良い。
Mo:Moは、不働態皮膜の補修に効果があり、耐食性を向上させるのに非常に有効な元素で特にCrとの組み合わせで耐孔食性を向上させる効果がある。そのためMoを添加する場合は0.01%以上含有させることが望ましい。Moを増加させると耐食性は向上するが、加工性を低下させ、またコストが高くなるため、一般環境で使用する場合、上限を0.6%とする。望ましくは、0.01〜0.1%である。しかしながら、融雪塩環境のような厳しい地域で使用される場合、耐食性が必要であるため、0.6超〜1.5%必要である。Moは含有しなくても良い。
前記元素に加えて、鋼の諸特性を調整する目的で以下の合金元素が含有されていても良い。
B:Bは2次加工脆化や熱間加工性劣化を防止するのに有用な元素であり、耐食性には影響を与えない元素である。このため0.0002%を下限としてBを含有させるが、0.0050%を超えるとかえって熱間加工性が劣化するので、上限を0.0050%とするのが良い。好ましくは、B含有量の上限を0.0020%とするのが良い。
Sn:Snは微量の含有で耐食性を向上させるのに有用な元素であり、廉価性を損なわない範囲で含有させる。Sn含有量0.005%未満では耐食性向上効果は発現されず、0.50%を超えるとコスト増が顕在化すると共に加工性も低下するので、含有量0.005〜0.50%を適正範囲とする。好ましくは0.05%から0.30%とするのが良い。
以上説明した各元素の他にも、本発明の効果を損なわない範囲で下記の元素を含有させることができる。
Cu、Ni:Cu、Niは腐食が進行した際の腐食速度を抑制する効果があり、0.01〜0.5%が望ましい。ただし過剰な添加は加工性を低減させるので望ましくは、0.01から0.3%である。
Sb、Zr、Co、W:Sb、Zr、Co、Wも、耐食性を向上させるために必要に応じて添加させることができる。これらは腐食速度を抑制するのに重要な元素であるが、過剰な添加は製造性及びコストを悪化させるため、その範囲をいずれも0.005〜0.5%とした。より望ましくは0.05〜0.4%である。
V:Vは耐隙間腐食性を改善するため、必要に応じて添加することができる。ただしVの過度の添加は加工性を低下させる上、耐食性向上効果も飽和するため、Vの下限を0.03%、上限を0.5%とする。より望ましくは0.05〜0.30%である。
Ga:Gaは耐食性および加工性向上に寄与する元素であり、0.001〜0.05%の範囲で含有させることができる。
一般的な不純物元素である前述のP、Sを始め、Zn、Bi、Pb、Se、H、Ta、Ca、Mg、REM(希土類金属)、Hf、As等は可能な限り低減することが好ましい。これらの元素は、本発明の課題を解決する限度において、その含有割合が制御され、必要に応じて、Zn≦100ppm、Bi≦100ppm、Pb≦100ppm、Se≦100ppm、H≦100ppm、Ta≦500ppm、Ca≦120ppm、Mg≦120ppm、REM(希土類金属)≦500ppm、Hf≦500ppm、As≦500ppmの1種以上を含有する。なお、「ppm」は質量基準である。
前記組成より成るステンレス鋼は、転炉や電気炉などで溶製、精錬された鋼片を熱間圧延、酸洗、冷延、焼鈍、仕上酸洗等を施す通常のステンレス鋼板の製造方法によって鋼板として製造され、さらに、この鋼板を素材として電気抵抗溶接、TIG溶接、レーザー溶接などの通常のステンレス鋼管の製造方法によって溶接管として製造される。
このステンレス鋼管は、曲げ加工、拡管加工、絞り加工といった冷間での塑性加工やスポット溶接、プロジェクション溶接、MIG溶接、TIG溶接といった溶接やろう付け、あるいはボルトナットによる種々の金具の取り付けなどの通常の成型、組立工程を経て給油管に成型される。
なお、金具部品の素材であるめっき鋼板としては、普通鋼板又はステンレス鋼板を用いることができる。ステンレス鋼板としては、Mo:0.005〜1.5%であり、Mo以外の成分については鋼管部材と同一組成範囲のフェライト系ステンレス鋼であるのが望ましく、少なくとも鋼管部材よりも合金含有量が多い高耐食性材料である必要はない。
金具部品の素材中に含有するMoは不働態皮膜の補修に効果があり、耐発銹性と耐腐食進展性を向上させるのに非常に有効な元素で特にCrとの組み合わせで耐孔食性を向上させる効果がある。Moを増加させると耐食性は向上する。めっきの素材として適用する場合、めっきによる防食効果が加わるため、めっきを有しないフェライト系ステンレス製部材に比べて下限値が小さく、0.005%以上必要である。しかしながら、過度の添加は、加工性を低下させ、コストが高くなるため、上限を1.5%とする。コストを考えた場合、望ましくは、0.005〜0.60%である。塩害が軽微な環境であれば、0.005〜0.30%が望ましい。金具部品の素材中に含有するMo以外の成分含有量の限定理由については、前記鋼管部材の成分限定理由と同一である。
犠牲防食を利用するには被防食材料のステンレスよりも浸漬電位が卑である(低い)材料を採用する必要があり、浸漬電位の差が大きいほど犠牲防食効果は高い。しかしながら、浸漬電位の差が高いほど、犠牲防食材料の消耗速度が上昇し、耐食寿命が短くなる。入手性および寿命を考慮すると、Alめっき、Znめっき、Sn−Znめっきが好ましい。より好ましくは、Alめっきである。
実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。まずは、フェライト系ステンレス鋼の成分、Alめっきステンレス鋼板のAlめっき付着量、カチオン電着塗装膜厚、スプレー塗装膜厚について説明する。
表1のA22に示す組成のフェライト系ステンレス鋼を150kg真空溶解炉で溶製し、50kg鋼塊に鋳造した後、熱延−熱延板焼鈍−酸洗−冷延−焼鈍−仕上酸洗の工程を通して板厚0.8mmの鋼板を作製した。この鋼板素材より、t0.8×70×150mmサイズの大板を採取した。大板は部材、又は鋼管部材(給油管本体)を模擬したものである。
また、表1に示すA23、24の組成のフェライト系ステンレス鋼を転炉溶製して鋳造−熱延−熱延板焼鈍−酸洗−冷延−焼鈍−仕上酸洗−溶融Alめっきの工程を通して板厚0.8mmのAlめっきステンレス鋼板を製造した。めっき付着量は80g/m2に制御した。このAlめっきステンレス鋼板素材より、t0.8×40×40mmサイズの小板を採取した。小板は、金具部品を模擬したものである。
大板の上に小板を重ねて、中央部に1点スポット溶接を施して隙間試験片を作製した。大板と小板が接して対面する部分が隙間部を構成する。
隙間試験片には、カチオン電着塗装又はスプレー塗装を施した後に塩害腐食試験に供した。カチオン電着塗装において、塗料は、日本ペイント(株)製PN−110を用い、浴温28℃、塗装電圧170Vで通電し、塗膜厚みが一般部において0.1〜10μmになるように条件選定した。焼付条件は、170℃×20分とした。スプレー塗装はアイシン化工(株)製エマルタ5600を用い、膜厚を0.1〜30μmとなるように条件選定した。120℃×20分とした。塗膜厚みは電磁膜厚計を用いて1試料について5点測定し、その平均値をもって膜厚とした。隙間試験片の隙間部は開口量が僅少であるため、隙間部の内部には電着塗膜が形成されず、大板の隙間部内部についてはステンレス鋼の素地が露出しており、小板の隙間部内部についてはAlめっき膜が露出した状況である。
これら隙間試験片の塩害耐食性評価試験として、JASOモードの複合サイクル腐食試験(JASO−M609−91規定のサイクル腐食試験(塩水噴霧:35℃×2Hr、乾燥:相対湿度20%、60℃×4Hr、湿潤:相対湿度90%、50℃×2Hrの繰り返し))の塩水噴霧を5%NaCl噴霧から2%NaCl噴霧に変更した試験条件を用いた。試験期間は200サイクルとした。試験終了後、溶接ナゲットを穿孔して隙間試験片を解体し、除錆処理を施した後、大板の隙間部内部の腐食深さを顕微鏡焦点深度法によって測定した。1試験片あたり10点の測定を行い、その最大値をサンプルの代表値とした。満足すべき耐食性としては、最大腐食深さが板厚の1/2未満(400μm)であることを目標とした。
試験水準と試験結果を表2に示す。
本発明例のNo.B1〜B14は何れも、隙間内外とも最大腐食深さが400μm以下であり良好であった。Alめっきの犠牲防食作用と塗膜の適正膜厚管理により、カソード剥離を抑制することによって満足すべき耐食性が得られた。
一方、比較例No.b1、b3は、塗装膜厚を過度に薄く設定しすぎたため、塗装に欠陥不良が存在し、すきま外の塗装欠陥部に深い腐食が生じた結果である。また、比較例No.b2、b4は塗装の膜厚が厚すぎたため、カソード剥離を生じ、隙間外に存在する塗装剥離部に深い腐食が発生した結果である。
さらに、めっき種、めっき付着量、鋼管部材の成分について説明する。
表1に示す組成のフェライト系ステンレス鋼を150kg真空溶解炉で溶製し、50kg鋼塊に鋳造した後、熱延−熱延板焼鈍−酸洗−冷延−焼鈍−仕上酸洗の工程を通して板厚0.8mmの鋼板を作製した。この鋼板素材より、t0.8×70×150mmサイズの大板を採取した。大板は部材、又は鋼管部材(給油管本体)を模擬したものである。なお、表1の中で、No.a3、a5、a6、a9、a11、a12、a14、a15は、Si、Mn、P、Al、Cr、Mo、Ti、Nbが過多であり、冷延時に耳割れが生じた。
また、表1に示すA23の組成のフェライト系ステンレス鋼を転炉溶製して鋳造−熱延−熱延板焼鈍−酸洗−冷延−焼鈍−仕上酸洗−溶融めっきの工程を通して板厚0.8mmのAlめっきステンレス鋼板、Znめっきステンレス鋼板、Sn−Znめっきステンレス鋼板を製造した。めっき付着量は10〜180g/m2に制御した。このめっきステンレス鋼板素材より、t0.8×40×40mmサイズの小板を採取した。また、普通鋼を素材としたAlめっき鋼板、Znめっきステンレス鋼板、Sn−Znめっきステンレス鋼板は市販のものを用いた。小板は、金具部品を模擬したものである。
大板の上に小板を重ねて、中央部に1点スポット溶接を施して隙間試験片を作製した。大板と小板が接して対面する部分が隙間部を構成する。
隙間試験片には、カチオン電着塗装およびスプレー塗装を施した後に塩害腐食試験に供した。カチオン電着塗装において、塗料は、日本ペイント(株)製PN−110を用い、浴温28℃、塗装電圧170Vで通電し、塗膜厚みが一般部において1.0〜4.9μmになるように条件選定した。焼付条件は、170℃×20分とした。スプレー塗装はアイシン化工(株)製エマルタ5600を用い、膜厚を1〜20μmとなるように条件選定した。120℃×20分とした。塗膜厚みは電磁膜厚計を用いて1試料について5点測定し、その平均値をもって膜厚とした。隙間試験片の隙間部は開口量が僅少であるため、隙間部の内部には塗膜が形成されず、大板の隙間部内部についてはステンレス鋼の素地が露出しており、小板の隙間部内部についてはAlめっき膜が露出した状況である。
これら隙間試験片の塩害耐食性評価試験として、JASOモードの複合サイクル腐食試験(JASO−M609−91規定のサイクル腐食試験(塩水噴霧:35℃×2Hr、乾燥:相対湿度20%、60℃×4Hr、湿潤:相対湿度90%、50℃×2Hrの繰り返し))の塩水噴霧を5%NaCl噴霧から2%NaCl噴霧に変更した試験条件を用いた。試験期間は200サイクルとした。試験終了後、溶接ナゲットを穿孔して隙間試験片を解体し、除錆処理を施した後、大板の隙間部内部の腐食深さを顕微鏡焦点深度法によって測定した。1試験片あたり10点の測定を行い、その最大値をサンプルの代表値とした。満足すべき耐食性としては、最大腐食深さが板厚の1/2未満(400μm)であることを目標とした。
試験水準と試験結果を表3に示す。
本発明例のNo.C1〜C31は何れも最大腐食深さが400μm以下であり良好であった。ただし、小板の素材が普通鋼である発明例No.C29〜31は、小板の端面からの発銹が顕著であった。
一方、比較例No.c1はめっきが無い場合、c4は塗装が無い場合であり、c1は隙間内、c4は隙間外に基準を超える腐食が生じ、十分過酷な試験であることが分かる。比較例No.c2はめっき付着量が不足した場合であり、耐食基準を満足していない。
また、比較例No.c5〜c12大板の組成が本発明範囲を外れているため耐食性が不十分である。また、比較例No.c3は、Alめっき付着量が過剰でコスト高となっている。
このような腐食試験において、本発明No.C1〜C31は、めっきの犠牲防食作用と塗装の膜厚の適正管理によって満足すべき耐食性が得られることを確認した。
さらに、フェライト系ステンレス製鋼管部材へAlめっきステンレス鋼製金具部品への取り付け構造について説明する。
表1のA23に示す組成のフェライト系ステンレス鋼を150kg真空溶解炉で溶製し、50kg鋼塊に鋳造した後、熱延−熱延板焼鈍−酸洗−冷延−焼鈍−仕上酸洗の工程を通して板厚0.8mmの鋼板を作製した。この鋼板素材より、φ50×50×t0.8mmサイズの鋼管をシーム溶接により、フェライト系ステンレス製鋼管21を作製した。フェライト系ステンレス製鋼管21は、インレットパイプを模擬したものである。また、表1のA3に示す組成のフェライト系ステンレス鋼を転炉溶製して鋳造−熱延−熱延板焼鈍−酸洗−冷延−焼鈍−仕上酸洗−溶融Alめっきの工程を通して板厚0.8mmのAlめっきステンレス鋼板を製造した。Alめっき付着量は49g/cm2とした。このAlめっきステンレス鋼板素材より、φ48×50×t0.8mmおよびφ52×50×t0.8mmサイズの部品を打ち抜き加工とプレス成型により、Alめっきステンレス製鋼管22を作製した。Alめっきステンレス製鋼管22は、金具部品を模擬したものである。
作製した3種類の鋼管を図7のように、フェライト系ステンレス製鋼管21の外部および内部にAlめっきステンレス製鋼管22をフェライト系ステンレス製鋼管21の端部26から0〜20mmの位置の外周に沿った取り付け位置27において4点のスポット溶接(溶接部24)により隙間付き試験片を作製した。フェライト系ステンレス製鋼管21とAlめっきステンレス製鋼管22が接して対面する部分が隙間部23を構成する。
隙間試験片には、カチオン電着塗装を施した。カチオン電着塗装において、塗料は、日本ペイント(株)製PN−110を用い、浴温28℃、塗装電圧170Vで通電し、塗膜厚みが一般部において3μmになるように条件選定した。焼付条件は、170℃×20分とした。塗膜厚みは電磁膜厚計を用いて1試料について5点測定し、その平均値をもって膜厚とした。隙間試験片の隙間部23は開口量が僅少であるため、隙間部23の内部には電着塗膜が形成されず、フェライト系ステンレス製鋼管21の隙間部内部についてはステンレス鋼の素地が露出しており、Alめっきステンレス製鋼管22の隙間部内部についてはAlめっき膜が露出した状況である。
これら隙間試験片に図7に示すように鋼管の上下2カ所にシリコン栓25にて内部を密閉し、45°に傾けた姿勢で塩害腐食性試験に供した。塩害耐食性評価試験として、JASOモードの複合サイクル腐食試験(JASO−M609−91規定のサイクル腐食試験(塩水噴霧:35℃×2Hr、乾燥:相対湿度20%、60℃×4Hr、湿潤:相対湿度90%、50℃×2Hrの繰り返し))の塩水噴霧を5%NaCl噴霧から2%NaCl噴霧に変更した試験条件を用いた。試験期間は200サイクルとした。試験終了後、シリコン栓を外し、フェライト系ステンレス製鋼管内部へのAl腐食生成物の侵入の有無を確認した。
試験水準と試験結果を表4に示す。いずれの試験片もフェライト系ステンレス鋼管に穴あきは見られなかった。即ち、表4に示すすべての本発明例、参考例ともに、本発明の効果を発揮している。
本発明例のNo.a〜dは、構造Iかつ取り付け位置27がフェライト系ステンレス鋼管の端部26から5mm以上であり、何れもフェライト系ステンレス製鋼管内部へAlの腐食生成物の侵入が確認できなかった。
No.1a、1b(参考例)は構造Iだが取り付け位置27がフェライト系ステンレス鋼管の端部26から5mm未満であり、液だまりにより、鋼管の端面が腐食し、端部とシリコン栓との隙間からフェライト系ステンレス鋼管内へAl腐食生成物が侵入していた。比較例1c〜1gは構造IIであり、消耗したAlめっき部からフェライト系ステンレス鋼管内へAl腐食生成物が侵入していた。
このような腐食試験において、本発明No.a〜dは、めっきの犠牲防食作用によって満足すべき耐食性が得られ、フェライト系ステンレス鋼管内へのAl腐食生成物の侵入がないことを確認できた。
1 鋼管部材
1a メインパイプ(インレットパイプ)
1b ブリーザーチューブ
2 金具部品
3 隙間部
4 溶接部
11 鋼管部材(インレットパイプ)
12 金具部品(キャッププロテクター)
13 隙間部
14 溶接部
21 フェライト系ステンレス製鋼管
22 Alめっきステンレス製鋼管
23 隙間部
24 溶接部
25 シリコン栓
26 端部
27 取り付け位置

Claims (9)

  1. 質量%で、C:≦0.015%、N:≦0.015%、Cr:10.5〜18.0%、Si:0.01〜0.80%、Mn:0.01〜0.80%、P≦0.050%、S:≦0.010%、Mo:0.6%以下、Al:0.010〜0.100%、を含有し、更に、Ti≦0.30%、Nb≦0.30%であって0.03%≦Tiと0.03%≦Nbの一方又は両方を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物より成るフェライト系ステンレス鋼を素材としためっきを有しない部材と、前記部材に取り付けられる犠牲防食型のめっき鋼板から成型された金具部品との間において、塩害環境に曝される隙間構造部を有し、前記隙間構造部の隙間部に当たる面における金具部品のめっき付着量が20g/m2以上150g/m2以下であり、前記隙間構造部以外の部材および金具部品の表面が塗膜で被覆され、塗装後のめっきを有しない部材表面における−0.8V vs SSE印加時のカソード電流値が10-7A/cm2以上になることを特徴とする自動車用部材。
  2. 質量%で、さらにB:0.0002〜0.0050%、Sn:0.005〜0.50%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の自動車用部材。
  3. 質量%で、さらにCu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜0.5%、Sb:0.005〜0.5%、Zr:0.005〜0.5%、Co:0.005〜0.5%、W:0.005〜0.5%、V:0.03〜0.5%、Ga:0.001〜0.05の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車用部材。
  4. 質量%で、さらにMo:0.6%超〜1.5%を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の自動車用部材。
  5. 前記金具部品のめっきがZnめっき、Alめっき、Sn−Znめっきのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の自動車用部材。
  6. 塗装がカチオン電着塗装で塗装厚みが1μm以上5μm未満である請求項1乃至5のいずれかに記載の自動車用部材。
  7. 塗装がスプレー塗装であり塗装厚みが1μm以上20μm以下である請求項1乃至5のいずれかに記載の自動車用部材。
  8. 前記金具部品の素材の組成が、前記部材と同一組成範囲であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の自動車用部材。
  9. 前記フェライト系ステンレス鋼を素材とした前記部材はインレットパイプおよび/またはブリーザーパイプであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の自動車用燃料給油管。
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