JP2012098190A - 直線変位検出装置 - Google Patents

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敏之 松尾
Masa Momiyama
雅 樅山
Kazusada Tsuruta
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Naoya Yoshizawa
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Abstract

【課題】従来よりも検出範囲をロングストローク化できる直線変位検出装置を提供する。
【解決手段】直線変位検出装置1は、表面にN極およびS極の磁極領域21、22、23を交互に並べて配列した磁石材料2と、磁場を検出する感磁面を有し、感磁面が磁石材料2の表面と一定の離隔距離を有して配置される磁場検出手段3とを備え、磁石材料2と磁場検出手段3とは、離隔距離を保ちつつ磁石材料2のN極およびS極の磁極領域を分ける領域境界線24、25に対して傾斜した変位方向(傾斜角度αの変位路4の方向)に相対直線変位可能とされ、磁場検出手段3が検出した磁場に基づいて磁石材料2と磁場検出手段3との変位方向の相対変位量を求めることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、相対的な直線変位を検出する直線変位検出装置に関し、より詳細には磁場の変化を検出する方式の直線変位検出装置に関する。
直線変位検出装置としてリニアエンコーダなど各種検出方式の装置が実用化され、用途に応じて使い分けられている。本願出願人は、非接触検出式で高精度かつ良好な温度特性を有する装置として、磁場の変化を検出する方式の直線変位検出装置を特許文献1に開示している。特許文献1の直線変位検出装置は、表面にN極およびS極の磁極領域を交互に配列した磁石材料と、磁石材料の表面と対面して磁場を検出する感磁面を有する磁場検出手段とを備え、磁石材料と磁場検出手段とが磁極領域の配列方向に沿って平行に相対移動可能になっている。これにより、磁場ベクトルを求めて直線変位を検出することができ、低廉でかつ高精度な直線変位検出装置を提供できる効果が生じる。
特開2009−192261号公報
ところで、特許文献1の直線変位検出装置で検出範囲をロングストローク化しようとする場合、N極およびS極の磁極領域の数量を増やすか、あるいは磁極領域の幅を拡げることになる。しかしながら、磁極領域の数量を増やすと、磁場ベクトル変化のサイクルが相対変位方向に繰返して発生するため、相対変位量を求める際にサイクルの繰返し数をカウントする必要が生じて煩雑である。また、直線変位検出装置の作動電源をオフしたときにもサイクルの繰返し数を保持する機能が必要になって、装置コストが増加する。
一方、磁極領域の幅を拡げると、磁極領域の幅中央付近で磁場の強度および方向が均一化され、磁場ベクトルの変化が僅少になって相対変位量の検出精度が低下する。これを解消するために、幅中央付近まで磁場ベクトルが変化するような磁場強度分布を有する磁極領域を形成すると、幅中央付近における磁場強度の絶対値が磁場検出手段の使用可能範囲を超えてしまい使えなくなる。
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、従来よりも検出範囲をロングストローク化できる直線変位検出装置を提供することを解決すべき課題とする。
上記課題を解決する請求項1に係る直線変位検出装置の発明は、表面にN極およびS極の磁極領域を交互に並べて配列した磁石材料と、磁場を検出する感磁面を有し、前記感磁面が前記磁石材料の前記表面と一定の離隔距離を有して配置される磁場検出手段とを備え、前記磁石材料と前記磁場検出手段とは、前記離隔距離を保ちつつ前記磁石材料の前記N極および前記S極の前記磁極領域を分ける領域境界線に対して傾斜した変位方向に相対直線変位可能とされ、前記磁場検出手段が検出した前記磁場に基づいて前記磁石材料と前記磁場検出手段との前記変位方向の相対変位量を求めることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記磁場検出手段は、磁性材料で形成されかつ前記領域境界線と直交する方向に延在する前記感磁面を有する磁性プレートと、前記磁性プレートの前記領域境界線と直交する方向の両端部にそれぞれ配置された二つの第1ホール素子とを含むことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1において、前記磁場検出手段は、磁性材料で形成されかつ相対変位方向に延在する前記感磁面を有する磁性プレートと、前記磁性プレートの前記相対変位方向の両端部にそれぞれ配置された二つの第1ホール素子とを含むことを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項2または3において、前記磁場検出手段は、前記二つの第1ホール素子を結ぶ線分と直角な方向に離間して前記磁性プレートの別の両端部にそれぞれ配置された二つの第2ホール素子をさらに含み、前記二つの第1ホール素子が検出した磁場の強度の和を2で除することにより、あるいは前記二つの第2ホール素子が検出した磁場の強度の和を2で除することにより、前記磁性プレートの中央部における前記磁石材料の前記表面と直交する方向の垂直磁場強度を求め、前記二つの第1ホール素子が検出した磁場の強度の差を2で除することにより、あるいは前記二つの第2ホール素子が検出した磁場の強度の差を2で除することにより、前記磁性プレートの前記中央部における前記磁石材料の前記表面と平行する方向の水平磁場強度を求め、前記磁石材料と前記磁場検出手段とが相対直線変位したときの前記垂直磁場強度の最大値と前記水平磁場強度の最大値とが等しくなるようにあるいは接近するように、前記二つの第1ホール素子を結ぶ線分と前記変位方向とが成す角度、あるいは前記二つの第2ホール素子を結ぶ線分と前記変位方向とが成す角度を調整することを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記磁石材料は、前記磁場検出手段が相対直線変位する変位路から一定距離内の前記表面に前記N極および前記S極のうちの一方極の磁極領域が前記変位路に傾斜して帯状に配列され、前記一方極の磁極領域の両側にそれぞれ前記N極および前記S極のうちの他方極の磁極領域が配列されて構成されていることを特徴とする。
請求項1に係る直線変位検出装置の発明では、磁石材料と磁場検出手段とは、離隔距離を保ちつつ磁石材料の領域境界線に対して傾斜した変位方向に相対直線変位可能とされている。つまり、領域境界線に直交する変位方向に相対直線変位可能とされていた従来技術に対し、本発明では傾斜した変位方向を用いるので、傾斜角度に応じて検出範囲をロングストローク化できる。例えば、磁石材料の磁極領域の幅寸法を一定とした場合、傾斜角度を45°にすれば1.41倍のロングストローク化を達成でき、傾斜角度を30°にすれば2倍のロングストローク化を達成できる。また、このとき磁石材料の磁極領域の磁場強度分布は従来と同一でよいので、磁場強度の絶対値が磁場検出手段の使用可能範囲を超えてしまうおそれは生じない。また、磁場ベクトルの検出方法や相対変位量の演算アルゴリズムに従来技術を応用することができる。
請求項2に係る発明では、磁場検出手段は、磁性材料で形成されかつ領域境界線と直交する方向に延在する感磁面を有する磁性プレートと、磁性プレートの領域境界線と直交する方向の両端部にそれぞれ配置された二つの第1ホール素子とを含んでいる。また、請求項3に係る発明では、磁場検出手段は、磁性材料で形成されかつ相対変位方向に延在する感磁面を有する磁性プレートと、磁性プレートの相対変位方向の両端部にそれぞれ配置された二つの第1ホール素子とを含んでいる。磁性プレートと二つの第1ホール素子を組み合わせることにより、磁場ベクトルの方向すなわち磁場角度を検出することができ、磁場角度に基づいて相対変位量を高精度に求めることができる。
請求項4に係る発明では、二つの第1ホール素子あるいは二つの第2ホール素子が検出した磁場の強度から垂直磁場強度を求め、二つの第1ホール素子が検出した磁場の強度から水平磁場強度を求め、垂直および水平方向の磁場強度の最大値が等しくなるようにあるいは接近するように調整することができる。これにより、磁場角度と相対変位量とのリニアリティが改善され、相対変位量の検出精度が一層向上する。
請求項5に係る発明では、磁石材料は、磁場検出手段が相対直線変位する変位路から一定距離内の表面にN極およびS極のうちの一方極の磁極領域が変位路に傾斜して帯状に配列され、その両側に他方極の磁極領域が配列されて構成されている。つまり、磁極領域は合計3領域あればよく、また、変位路から一定距離以上離れた位置の磁極領域は、磁場ベクトルの検出精度に影響を及ぼさないので必要でない。これにより、磁石材料を簡素化および小形化することができる。
本発明の第1実施形態の直線変位検出装置を模式的に説明する平面図である。 第1実施形態の直線変位検出装置を模式的に説明する、図1のP−Q方向矢視断面図である。 磁場検出手段を構成するホールICチップを説明する斜視図である。 磁場検出手段に垂直方向上向きの磁場が作用している状態を説明する図である。 磁場検出手段に水平方向の磁場が作用している状態を説明する図である。 磁石材料を変位路上で相対直線変位させたときに磁場検出手段が検出する垂直磁場強度および水平磁場強度(磁場ベクトル)をシミュレーションした結果を示す図である。 検出した垂直磁場強度および水平磁場強度から磁場角度を求める方法を説明するベクトル図である。 図6および図7から得られる磁場角度と相対変位量の関係を示したグラフである。 本発明の第2実施形態の直線変位検出装置を模式的に説明する平面図である。 本発明の第3実施形態の直線変位検出装置を模式的に説明する平面図である。
本発明の第1実施形態の直線変位検出装置について、図1〜図8を参考にして説明する。図1は、本発明の第1実施形態の直線変位検出装置1を模式的に説明する平面図である。直線変位検出装置1は、磁石材料2、磁場検出手段3などで構成されている。本発明の直線変位検出装置はあらゆる設置姿勢で使用でき、磁石材料2および磁場検出手段3のどちらが動くかも任意である。第1実施形態では説明を簡易にするため、磁石材料2が固定されてその表面が水平配置され、表面から一定の離隔距離Gだけ上方で磁場検出手段3が水平方向に直線変位する場合について例示説明する。
磁石材料2は、図示されるように長い矩形であり、その表面に、幅Wで3等分され長手方向に帯状に延在する3つの磁極領域21、22、23が配列されて形成されている。中央の磁極領域22はN極領域22であり、両側の磁極領域21、23は第1S極領域21および第2S極領域23である。また、N極領域22と第1S極領域21との境界が第1領域境界線24、N極領域22と第2S極領域23との境界が第2領域境界線25である。磁石材料2は、例えば、フェライトなどの磁性材料に着磁することで製作できる。磁石材料2の表面から一定の離隔距離Gだけ上方に離れ、第1および第2領域境界線24、25に対し傾斜角度αで傾斜した変位方向に、磁場検出手段3が直線変位する変位路4が設定されている。
図2は、第1実施形態の直線変位検出装置1を模式的に説明する、図1のP−Q方向矢視断面図である。図中の白抜きの矢印は磁石材料2内における磁場の方向を示し、破線の矢印は磁力線を示し、太い実線の矢印は磁場ベクトルB(磁場の方向)を示している。図示されるように、磁石材料2のN極領域22の幅方向中央の上方では、磁場ベクトルB1は垂直上方を向いている。以降の説明では、垂直上方を磁場角度θの基準とする(磁場ベクトルB1の磁場角度θ=0°)。
N極領域22の幅方向中央から第1領域境界線24の上方の範囲で、磁場ベクトルBは図中の左上方に向き、磁場角度θは0°〜−90°の範囲で変化する。第1領域境界線24の真上で、磁場ベクトルB2は図中の左方に水平に向いて磁場角度θ=−90°となる。さらに、第1領域境界線24を超えて第1S極領域21の幅方向中央までの上方の範囲で、磁場ベクトルBは図中の左下方に向き、磁場角度θは−90°〜―180°の範囲で変化する。同様に、N極領域22の幅方向中央から第2領域境界線24の上方の範囲で、磁場ベクトルBは図中の右上方に向き、磁場角度θは0°〜90°の範囲で変化する。第2領域境界線24の真上で、磁場ベクトルB3は図中の右方に水平に向いて磁場角度θ=90°となる。さらに、第2領域境界線25を超えて第2S極領域23の幅方向中央までの上方の範囲で、磁場ベクトルBは図中の右下方に向き、磁場角度θは90°〜180°の範囲で変化する。
磁場検出手段3は、図略のガイド部材に案内されて、磁石材料2との離隔距離Gを保ちつつ変位路4上を直線変位し、例えば、図1の位置41から位置42を経て位置43に変位する。参考までに、図1で第1および第2領域境界線24、25に直交する変位路4X、および変位路4X上の位置4X1、4X2、4X3(図中に破線示)は従来技術における変位方向を示している。
磁場検出手段3は、基板31上にホールICチップ(ホール素子を組み込んだ集積回路部品)32が実装されて構成されている。図3は、磁場検出手段3を構成するホールICチップ32を説明する斜視図である。図示されるように、ホールICチップ32は、軟磁性プレート33と、4個のホール素子34、35、36、37を有している。軟磁性プレート33は、円板状の軟磁性材料で形成された磁性プレートであり、図3においてホールICチップ32のチップ本体部321の上面に配置されている。軟磁性プレート33のチップ本体部321とは反対側の面(図3では上側の面)が感磁面331になっている。
軟磁性プレート33の周囲の端部とチップ本体部321との間には、90°ピッチで4個のホール素子34、35、36、37が埋設されている。このうち、2個の向かい合うホール素子34、36が二つの第1ホール素子34、36に相当し、残る2個の向かい合うホール素子35、37が二つの第2ホール素子35、37に相当する。ここで、二つの第1ホール素子34、36を結ぶ方向を主検出方向(X方向)とし、二つの第2ホール素子35、37を結ぶ方向を主検出方向(X方向)と直交するY方向とし、XY平面に直交する方向をZ方向とする。本実施形態では、二つの第1ホール素子34、36を結ぶ主検出方向(X方向)は、図1に示されるように、第1および第2領域境界線24、25と直交配置される。また、4個のホール素子34、35、36、37は、垂直方向(Z方向)の磁場に感度を有し、磁場の強さに応じた信号を出力する。
ホールICチップ32は、チップ本体部321の内部にディジタルシグナルプロセッサを有し、ホール素子34、35、36、37の出力信号に対して後述する演算処理を行って相対変位量を求めるようになっている。ホールICチップ32は、チップ本体部321から出ている8本のリード322が基板31にはんだ付けされて実装される。図2に示されるように、ホールICチップ32は、軟磁性プレート33の感磁面331が磁石材料2の表面に平行して対面するように実装される。またこれにより、ホール素子34、35、36、37と磁石材料2との間が一定の離隔距離Gを保つようになっている。なお、8本のリード322により、各ホール素子34、35、36、37およびディジタルシグナルプロセッサへの電源供給と、相対変位量の演算結果の出力が行われる。
次に、磁場検出手段3による磁場ベクトルBの検出の原理について説明する。図4は、磁場検出手段3に垂直方向上向きの磁場(垂直磁場強度BV0)が作用している状態を説明する図である。軟磁性プレート33は周りの空間やチップ本体部321よりも透磁率が高いので磁力線を引き込む作用があり、破線の磁力線に示されるようにわずかに平行磁場が変形する。二つの第1ホール素子34、36には、概ね垂直方向上向きの磁場ベクトルB4、B5が作用する。そして、二つの第1ホール素子34、36は磁場ベクトルB4、B5の垂直成分を検出して同符号の信号を出力する。また、信号の大きさは、垂直方向上向きの磁場の強さ(垂直磁場強度BV0)に概ね比例する。2つの同符号の信号の和を求めて2で除して求めた平均値は、軟磁性プレート33の中央部における垂直方向の磁場の強さを意味することになる。
また、図5は、磁場検出手段3に水平方向の磁場(水平磁場強度BH0)が作用している状態を説明する図である。軟磁性プレート33が磁力線を引き込む作用により、破線の磁力線に示されるように大きく平行磁場が変形する(軟磁性プレート33内部の磁力線は省略)。これにより、二つの第1ホール素子34、36には斜め方向の磁場ベクトルB6、B7が作用する。そして、二つの第1ホール素子34、36は斜め方向の磁場ベクトルB6、B7の垂直成分(垂直磁場強度B6V、B7V)を検出し、方向が異なるため異符号の信号を出力する。また、信号の絶対値の大きさは、水平方向右向きの磁場の強さ(水平磁場強度BH0)に概ね比例する。したがって、2つの異符号の信号の差を求めて2で除した値は、軟磁性プレート33の中央部における水平方向の磁場の強さを意味することになる。
さらに、磁場検出手段3に斜め方向の磁場が作用している場合、すなわち垂直磁場強度BV0と水平磁場強度BH0とが重畳している場合にも、上述したように2つの信号の和および差を求めることで、磁場の強さを垂直方向および水平方向に分解して求めることができる。つまり、二つの第1ホール素子34、36のそれぞれは垂直方向の磁場しか検出できないが、上述した軟磁性プレート33の作用と2つの信号の和および差の演算とを組み合わせることにより磁場ベクトルB、すなわち垂直磁場強度BVおよび水平磁場強度VHを検出できる。垂直磁場強度BVおよび水平磁場強度VHに基づいて、ディジタルシグナルプロセッサは後述するように相対変位量を求める。なお、二つの第2ホール素子35、37を用いることにより、磁場ベクトルBを垂直Z方向および水平Y方向に分解して検出できる。
次に、第1実施形態の直線変位検出装置1の作用について説明する。本実施形態では、第1S極領域21の幅方向中央からN極領域22を経て第2S極領域23の幅方向中央までの間を有効な検出範囲とする。この間では、磁場ベクトルが有する磁場角度θが一回転するので、磁場角度θを得ることで正確な相対変位量を求めることができるからである。図1で、本実施形態の変位路4上の位置41、42、43を第1および第2領域境界線24、25に沿って平行移動すると、従来技術の変位路4X上の位置4X1、4X2、4X3に重なる。また、磁場検出手段3が変位路4上の位置42で検出する磁場ベクトルBは、変位路4X上の位置4X2で検出する磁場ベクトルBに一致する。したがって、磁場検出手段3が変位路4上の任意の位置で検出する磁場ベクトルBは、従来の変位路4X上の位置で検出する磁場ベクトルBに置き換えることができる。このとき、変位路4上の相対変位量に傾斜角度αのサイン関数値(sinα)を乗じれば、変位路4X上の相対変位量に換算することができる。
これは、第1実施形態において、磁石材料2の磁極領域21、22、23における磁極強度分布を従来と同一にしても、従来と同等の磁場検出精度が得られることを意味している。つまり、フェライトなどの磁性材料に着磁して磁石材料2を製作する際に、従来と同一の製法を用いることができる。
図6は、磁石材料2を変位路4上で相対直線変位させたときに磁場検出手段3が検出する垂直磁場強度および水平磁場強度(磁場ベクトル)をシミュレーションした結果を示す図である。図中の横軸は変位路4上の相対変位量であり、原点はN極領域22の幅方向中央としてある。したがって、有効な検出範囲は、(−W/sinα)〜(W/sinα)となる。また、縦軸は磁場強度を示している。図示されるように、磁場検出手段3が検出する磁場ベクトルBの垂直成分である垂直磁場強度BVは、原点を中心に左右対称な概ねコサイン関数波形となり、水平成分である水平磁場強度BHは、原点を中心に回転対称な概ねサイン関数波形となっている。また、垂直磁場強度BVの最大値BVmaxは、水平磁場強度BHの最大値BHmaxよりも大きくなっている。
次に、垂直磁場強度BVおよび水平磁場強度BHから磁場角度θを求めるが、その際に補正を行う。図7は、検出した垂直磁場強度BVおよび水平磁場強度BHから磁場角度θを求める方法を説明するベクトル図である。補正に用いる補正係数Kは次式により求められる。
補正係数K=(BVmax/BHmax)
この補正係数Kを用いて、磁場角度θは逆正接関数を用いた次式により求められる。
磁場角度θ=arctan(K・BH/BV)
補正係数Kを用いることにより、図6に示された垂直磁場強度BVおよび水平磁場密度BHの最大値を等価的に揃える作用が生じる。これにより、相対変位量を求める際のリニアリティが向上する。図8は、図6および図7から得られる磁場角度θと相対変位量の関係を示したグラフである。グラフは、原点を通る右上がりの概ね直線となっており、高いリニアリティ精度が得られる。このグラフを用いて、磁場ベクトルBの検出結果から得られた磁場角度θを相対変位量に換算できる。なお、図6の場合には、補正係数Kは1よりも大きくなるが、垂直磁場強度BVの最大値BVmaxが水平磁場強度BHの最大値BHmaxよりも小さい場合には、補正係数Kは1よりも小さくなる。
以上説明したように、第1実施形態の直線変位検出装置1によれば、磁場検出手段3が検出した垂直磁場強度BVおよび水平磁場強度BHから磁場角度θを求め、磁場角度θに基づいて相対変位量を高精度に求めることができる。また、変位路4と第1および第2領域境界線24、25とが成す傾斜角度αに応じて、検出範囲を(1/sinα)倍にロングストローク化できる。例えば、傾斜角度α=45°で1.41倍、傾斜角度α=30°で2倍のロングストローク化ができる。また、磁石材料2の各磁極領域21、22,23の磁場強度分布は従来と同一でよいので同一の製法を用いることができ、加えて相対変位量の演算アルゴリズムに従来技術を適用できる。
次に、第2実施形態の直線変位検出装置10について説明する。図9は、本発明の第2実施形態の直線変位検出装置10を模式的に説明する平面図である。直線変位検出装置10の磁石材料2、磁場検出手段30、および演算処理部の構成および機能は第1実施形態と同じであり、磁場検出手段30の向きが異なっている。図9に示されるように、第2実施形態では、磁場検出手段30の主検出方向(X方向)が磁場検出手段3の変位方向、すなわち変位路4の方向と一致している。第2実施形態においても、垂直磁場強度BVおよび水平磁場強度BHを検出し磁場角度θを求め相対変位量を求めるアルゴリズムは第1実施形態と同様であり、効果も同様である。
また、第2実施形態で、磁場検出手段30が検出する垂直磁場強度BVは第1実施形態と概ね等しくなる。一方、主検出方向(X方向)が第1および第2領域境界線24、25と直交していないので、磁場検出手段30が検出する水平磁場強度BHは第1実施形態よりも小さくなる。ここで、垂直磁場強度BVの最大値BVmaxと水平磁場強度BHの最大値BHmaxとが一致しない場合、補正係数Kを用いる補正演算方法に代えて、磁場検出手段30の向きを調整する方法を用いることもできる。具体的には、図9で磁場検出手段30を回転させることで、主検出方向(X方向)と変位路4とが成す角度を調整することができる。これにより、水平磁場強度BHの最大値BHmaxが変化し、一方垂直磁場強度BVの最大値BVmaxは略一定であるため、両者を等しくしあるいは接近させることができるので、相対変位量を求めるときに高いリニアリティ精度が得られる。
次に、第3実施形態の直線変位検出装置100について説明する。図10は、本発明の第3実施形態の直線変位検出装置100を模式的に説明する平面図である。第3実施形態では、第1実施形態と比較して、磁石材料20が小形化されている。詳述すると、磁石材料20のうち、変位路4から一定距離Dを超える範囲が省略され、磁石材料20の幅が2Dに低減されている。変位路4から離れた磁極領域は変位路4上の磁場強度分布にほとんど影響しないので、磁石材料20を小形化しても相対変位量の検出精度は低下しない。
なお、各実施形態では磁石材料2、20が固定されて磁場検出手段3、30が変位するものとして説明したが、逆に、磁場検出手段3、30が固定され磁石材料2、20が変位する構成であってもよい。また、軟磁性プレート33および4個のホール素子34、35、36、37を有する磁場検出手段3、30を例示したが、これに限定されない。磁場検出手段は磁場ベクトルBを検出できればよく、例えば、独立した2個のホール素子で磁場の垂直成分および水平成分をそれぞれ検出するようにしてもよい。本発明は、その他様々な応用が可能である。
1、10、100:直線変位検出装置
2、20:磁石材料
21:第1S極領域(磁性領域) 22:N極領域(磁性領域)
23:第2S極領域(磁性領域)
24:第1領域境界線(領域境界線) 25:第2領域境界線(領域境界線)
3、30:磁場検出手段
31:基板
32:ホールICチップ 321;チップ本体部 322:リード
33:軟磁性プレート(磁性プレート) 331:感磁面
34、36:第1ホール素子
35、37:第2ホール素子
4:変位路 4X:従来の変位路
W:磁極領域の幅 G:離隔距離 α:傾斜角度 D:一定距離
B、B1〜B7:磁場ベクトル
BV、BV0、B6V、B7V:垂直磁場強度 BH、BH0:水平磁場強度
K:補正係数 θ:磁場角度

Claims (5)

  1. 表面にN極およびS極の磁極領域を交互に並べて配列した磁石材料と、
    磁場を検出する感磁面を有し、前記感磁面が前記磁石材料の前記表面と一定の離隔距離を有して配置される磁場検出手段とを備え、
    前記磁石材料と前記磁場検出手段とは、前記離隔距離を保ちつつ前記磁石材料の前記N極および前記S極の前記磁極領域を分ける領域境界線に対して傾斜した変位方向に相対直線変位可能とされ、
    前記磁場検出手段が検出した前記磁場に基づいて前記磁石材料と前記磁場検出手段との前記変位方向の相対変位量を求めることを特徴とする直線変位検出装置。
  2. 請求項1において、前記磁場検出手段は、磁性材料で形成されかつ前記領域境界線と直交する方向に延在する前記感磁面を有する磁性プレートと、前記磁性プレートの前記領域境界線と直交する方向の両端部にそれぞれ配置された二つの第1ホール素子とを含むことを特徴とする直線変位検出装置。
  3. 請求項1において、前記磁場検出手段は、磁性材料で形成されかつ相対変位方向に延在する前記感磁面を有する磁性プレートと、前記磁性プレートの前記相対変位方向の両端部にそれぞれ配置された二つの第1ホール素子とを含むことを特徴とする直線変位検出装置。
  4. 請求項2または3において、
    前記磁場検出手段は、前記二つの第1ホール素子を結ぶ線分と直角な方向に離間して前記磁性プレートの別の両端部にそれぞれ配置された二つの第2ホール素子をさらに含み、
    前記二つの第1ホール素子が検出した磁場の強度の和を2で除することにより、あるいは前記二つの第2ホール素子が検出した磁場の強度の和を2で除することにより、前記磁性プレートの中央部における前記磁石材料の前記表面と直交する方向の垂直磁場強度を求め、
    前記二つの第1ホール素子が検出した磁場の強度の差を2で除することにより、あるいは前記二つの第2ホール素子が検出した磁場の強度の差を2で除することにより、前記磁性プレートの前記中央部における前記磁石材料の前記表面と平行する方向の水平磁場強度を求め、
    前記磁石材料と前記磁場検出手段とが相対直線変位したときの前記垂直磁場強度の最大値と前記水平磁場強度の最大値とが等しくなるようにあるいは接近するように、前記二つの第1ホール素子を結ぶ線分と前記変位方向とが成す角度、あるいは前記二つの第2ホール素子を結ぶ線分と前記変位方向とが成す角度を調整することを特徴とする直線変位検出装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項において、前記磁石材料は、前記磁場検出手段が相対直線変位する変位路から一定距離内の前記表面に前記N極および前記S極のうちの一方極の磁極領域が前記変位路に傾斜して帯状に配列され、前記一方極の磁極領域の両側にそれぞれ前記N極および前記S極のうちの他方極の磁極領域が配列されて構成されていることを特徴とする直線変位検出装置。
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