JP2012082303A - 硬化性組成物 - Google Patents

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耕平 藤本
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Abstract

【課題】高い透明性を有し、かつ、耐熱変色性に優れた低アッベ数の光学材料に適した硬化性組成物並びに硬化物を提供することである。
【解決手段】(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機系化合物、
(B)SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物、
(C)ヒドロシリル化触媒
を必須成分として含有し、(A)と(B)の総樹脂成分100wt%に対して複素環含有成分が0.1〜20wt%、環状不飽和有機構造の含有成分が79.9〜10wt%、下記一般式で表される構造の含有成分が20〜70wt%であることを特徴とする硬化性組成物である。
一般式:(O−SiR−O)
(但し、式中のR及びRは水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基などの芳香族基であり、R及びRは同じ官能基であっても異なる官能基であっても良い。
【選択図】なし

Description

本発明は透明性に優れ、かつ、高屈折率、低アッベ数の耐熱変色性を有する硬化性組成物並びに硬化物を提供するものである。
一般に、レンズや光ファイバ等の光学部品の接着剤やコーティング剤や、LEDや受光素子などの光半導体の保護・封止材といった光学材料用高分子材料には、高い透明性と硬度が要求されており、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリ−カーボネート樹脂、シクロオレフィン系樹脂などが使用されている。
しかし、環境保全に対する関心の高まりから、これまで利用されてきたPb入りの低融点ハンダの使用が規制され、ハンダ実装の際にかかる温度が高くなってきている。実際、250℃を超える温度履歴がかかることもあり、これまで使用できた樹脂でも、変色したり、変形したりする問題が発生している。
このため、耐熱性、透明性に優れたシリコーン樹脂を用いることが提案されている。
例えば、特許文献1や特許文献2では、シリコーンあるいはオルガノポリシロキサンからなる光学レンズあるいは組成物が開示され、耐熱性、透明性、硬度を確保した光学レンズ用の硬化物が提案されているが、一般的に、シリコーン樹脂を使用した場合、線膨張係数が樹脂に対して大きくなるため、温度に対する屈折率依存性が大きくなったり、冷熱衝撃を与えたときにクラックが発生したりする問題がある。
一方で光学ユニットの光学設計においては、互いにアッベ数が異なる複数のレンズを組み合わせて使用することにより色収差を補正することが知られている。特許文献3では有機樹脂に無機粒子を添加した組成物が開示され、透明性を維持し、屈折率やアッベ数を制御できる硬化物が提案されている。しかし組成物の粘度が高く、操作性の観点から問題となる場合がある。さらに、曇度が数%程度あり、透明性の観点から、撮像系には十分でなかった。またハンダ実装の高温化に伴い、耐熱性も改良の余地を残している。上記の観点からも耐熱性の高いレンズ材料の低アッベ数化は必要不可欠な技術である。
特開2000−231002号公報 特開2006−324596号公報 特開2008−001841号公報
そこで本発明の課題は、高い透明性有し、かつ、耐熱変色性に優れた低アッベ数の光学材料に適した硬化性組成物並びに硬化物を提供することである。
本発明者らは鋭意検討の結果、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機系化合物、
(B)SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物、
(C)ヒドロシリル化触媒
を必須成分として含有し、(A)と(B)の総樹脂成分100wt%に対して複素環含有成分が0.1〜20wt%、環状不飽和有機構造の含有成分が79.9〜10wt%、下記一般式で表される構造の含有成分が20〜70wt%であることを特徴とする硬化性組成物により、上記課題を解決することを見出した。
一般式:−(O−SiR‐O)−
(但し、式中のR及びRは水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基などの芳香族基であり、R及びRは同じ官能基であっても異なる官能基であっても良い。)
すなわち、本発明は以下の構成をなす。
(1)(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機系化合物、
(B)SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物、
(C)ヒドロシリル化触媒
を必須成分として含有し、(A)と(B)の総樹脂成分100wt%に対して複素環含有成分が0.1〜20wt%、環状不飽和有機構造の含有成分が79.9〜10wt%、下記一般式で表される構造の含有成分が20〜70wt%であることを特徴とする硬化性組成物。
一般式:−(O−SiR‐O)−
(但し、式中のR及びRは水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基などの芳香族基であり、R及びRは同じ官能基であっても異なる官能基であっても良い。)
(2)前記記載の複素環含有成分としては化合物の環状構造内に窒素原子を少なくとも1つ以上含有する4〜8員環の窒素原子含有環状化合物であることを特徴とする(1)に記載の硬化性組成物。
(3)前記記載の窒素原子含有環状化合物としては下記式で
表される化合物であることを特徴とする(1)及び(2)に記載の硬化性組成物
Figure 2012082303
(4)前記記載の環状不飽和有機構造としてはベンゼン系芳香族化合物及び/または縮合環芳香族化合物を含有することを特徴とする(1)に記載の硬化性組成物。
(5)前記記載のベンゼン系芳香族化合物や縮合環芳香族化合物としては下記一般式で表される化合物であることを特徴とする(1)及び(4)に記載の硬化性組成物。(但し、式中のRはエポキシ基や不飽和結合などの反応性を有する官能基である。)
Figure 2012082303
(6)前記一般式中のR3が下記構造式で表される官能基のいずれか少なくとも一つであり、不飽和二重結合などの反応性を有する官能基が二つ以上あることを特徴とする(5)に記載の硬化性組成物。
Figure 2012082303
(7)下記一般式の構造としては鎖状及び/または環状のポリオルガノシロキサンを含有することを特徴とする(1)に記載の硬化性組成物。
一般式:−(O−SiR‐O)−
(但し、式中のR及びRは水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基などの芳香族基であり、R及びRは同じ官能基であっても異なる官能基であっても良い。)
(8)前記硬化性組成物を硬化させた時、硬化物のアッベ数が35以下、屈折率が1.50以上の耐熱変色性を有する(1)に記載の硬化性組成物。
(9)250℃以上の環境に3分間曝された硬化物(厚さ1mm)の400nmの透過率が80%以上である、(1)〜(8)のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
(10)(1)〜(9)のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化してなる光学部品。
本発明の光学材料用硬化性樹脂によれば、高い透明性及び/または硬度を有し、かつ、耐熱変色性に優れ、高温での線膨張係数の小さい、低アッベ数の光学材料に適した硬化物が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
[(A)成分]
本発明の(A)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する化合物であれば特に限定されない。例えばSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するオリガノポリシロキサンや、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物を使用することができるが、高屈折率及びアッベ数の観点から(A)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物で、上記有機化合物が、ポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素の90重量%以上がC、H、N、O、S、ハロゲンからなるものが好ましい。
前記(A)成分が、下記一般式(I)
Figure 2012082303
(式中、Rは炭素−炭素二重結合を含む炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)で表される有機化合物を例示することができる。
(A)成分は、有機骨格部分と、その有機骨格部分に共有結合するSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基を有する有機化合物である。上記SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基は、有機骨格のどの部位に共有結合していてもよい。
まず、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合について述べる。(A)成分が有する炭素−炭素二重結合を有する基は、SiH基と反応性を有するものであれば特に制限されない。SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基とは、例えば、下記一般式(II):
Figure 2012082303
(式中Rは水素原子又はメチル基を表す。)で示されるアルケニル基が、反応性が高いことから好適である。
原料の入手の容易さからは、下記構造式が特に好ましい。
Figure 2012082303
硬化物の耐熱性が高いという点では、上記炭素−炭素二重結合を有する基としては、下記一般式(III):
Figure 2012082303
(式中R、Rは、同一又は異なってもよく、水素原子又はメチル基を表す。)で示されるアルケニル基が、好適である。
また、原料の入手の容易さからは、下記構造式が特に好ましい。
Figure 2012082303
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基は2価以上の官能基を介して、有機骨格部分に共有結合していても良い。
2価以上の官能基とは、炭素数0〜10の官能基である。特に制限はないが、このような官能基の例としては、下記構造式等が挙げられる。
Figure 2012082303
Figure 2012082303
また、これらのうち、2つ以上の官能基が共有結合によりつながって、より大きな単位で1つの2価以上の官能基を構成していてもよい。
上記炭素−炭素二重結合を有する基の具体例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、3−(アリルオキシ)プロピル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、および下記構造式が挙げられる。
Figure 2012082303
次に、有機骨格部分について述べる。本願明細書及び特許請求の範囲において、有機骨格とは、主に炭素、水素、ニクトゲン原子、酸素を含むカルコゲン原子、ハロゲン原子から構成される骨格であり、上記元素からなるものであれば特に限定されない。例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系、環状炭化水素系等及びこれらの2種以上からなる有機単量体骨格が挙げられる。
分子量についても特に限定はないが、取扱い性の観点から、分子量5万以下のものが好ましい。本特許において、分子量とは、GPCによるスチレン換算の数平均分子量を示す。
有機単量体の例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンといった環状不飽和有機化合物、あるいは、エポキシ系、オキセタン系、フラン系、チオフェン系、ピロール系、オキサゾール系、イソオキサゾール系、チアゾール系、イミダゾール系、ピラゾール系、フラザン系、トリアゾール系、テトラゾール系、ピラン系、チイン系、ピリジン系、オキサジン系、チアジン系、ピリダジン系、ピリミジン系、ピラジン系、ピペラジン系、環状イミド系、イソシアヌレート系といった複素環化合物がある。ここで、複素環とは、環状骨格中にヘテロ元素を有する環状の化合物であれば特に限定されない。ただし、環を形成する原子にSiが含まれるものは除かれる。また、環を形成する原子数は特に制限はなく、3以上であればよい。入手性からは、10以下であることが好ましい。
さらに耐熱性という観点からは窒素を含む環状化合物が好ましく、さらにリフロー耐熱性の観点から環状イミド系、イソシアヌレート系が好ましい。ここで言うリフロー耐熱性とは250℃以上の環境に3分間曝された硬化物(厚さ1mm)の400nmの透過率が80%以上であることを示す。
有機単量体からなる(A)成分の具体例として、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ビスフェノールAジアリルエーテル、ビスフェノールSジアリルエーテル、ジビニルベンゼン類(純度50−100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ビニルナフタレン、ジビニルナフタレン、ジビニルアントラセン、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、および下記構造式等が挙げられる。
Figure 2012082303
Figure 2012082303
(A)成分としては高屈折率及び/または低アッベ数の観点から環状不飽和有機構造を含有する化合物が好ましい。本発明における環状不飽和有機構造とはベンゼン、ビフェニル、ビスフェノール系などのベンゼン環を含有するベンゼン系芳香族構造とナフタレン環、アントラセン環等に例示される縮合環芳香族構造を示し、上述の環状炭素上の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、アリロキシ基等のアルケニル基、アセトキシ基等のアシル基等により置換された化学構造を示す。
得られる硬化物がより高屈折率で低アッベ数であるという観点からは、(A)成分としてはビスフェノール系、ナフタレン環、アントラセン環が好ましい。さらに入手性の観点からはビスフェノールS系、ビスフェノールA系、ナフタレン系やそれらの誘導体が好ましく、下記構造式が特に好ましい。
Figure 2012082303
(式中Rは炭素−炭素二重結合を含む炭素数1〜50の一価の有機基を表し、不飽和二重結合などの反応性を有する官能基が二つ以上あり、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)で表される化合物が好ましい。)
上記一般式のRとしては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素−炭素二重結合を含む炭素数1〜10の一価の有機基であることがより好ましく、炭素−炭素二重結合を含む炭素数1〜4の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいRの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、および、下記構造式等が挙げられる。
Figure 2012082303
(A)成分としては耐熱性という観点から上述した一般式(I)で表されるトリアリルイソシアヌレート及びその誘導体が特に好ましい。
Figure 2012082303
(式中Rは炭素−炭素二重結合を含む炭素数1〜50の一価の有機基を表し、不飽和二重結合などの反応性を有する官能基が二つ以上あり、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)で表される化合物が好ましい。
上記一般式(I)のRとしては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素−炭素二重結合を含む炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素−炭素二重結合を含む炭素数1〜10の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜4の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいRの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、および下記構造式等が挙げられる。
Figure 2012082303
(A)成分としては、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという観点から、複素環化合物はその他の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。また、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
(A)成分としては、耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり0.1mmol以上含有するものが好ましく、1gあたり0.5mmol以上含有するものがより好ましく、1mmol以上含有するものがさらに好ましい。
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は、平均して1分子当たり少なくとも2個あればよいが、耐熱性をより向上したい場合には2を越えることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数が1分子内当たり1個以下の場合は、(B)成分と反応してもグラフト構造となるのみで架橋構造とならない。
(A)成分としては反応性が良好であるという観点からは、1分子中にビニル基を1個以上含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を2個以上含有していることがより好ましい。また貯蔵安定性が良好となりやすいという観点からは、1分子中にビニル基を6個以下含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を4個以下含有していることがより好ましい。
(A)成分としては、力学的耐熱性が高いという観点および原料液の糸引き性が少なく成形性、取扱い性、塗布性が良好であるという観点からは、100℃以下の温度において流動性があるものが好ましく、線状でも枝分かれ状でもよい。分子量の下限は50、上限は100,000の任意のものが使用できるが、好ましい下限は54、好ましい上限は70,000、さらに好ましい下限は68、さらに好ましい上限は50,000である。分子量が50より低いものは揮発性が大であり、分子量が100,000を越えるものでは一般に原料が高粘度となり作業性に劣るとともに、アルケニル基とSiH基との反応による架橋の効果が発現し難い。
(A)成分としては、他の成分との均一な混合、および良好な作業性を得るためには、粘度としては23℃において3000Pa・s未満のものが好ましく、2000Pa・s未満のものがより好ましく、1000Pa・s未満のものがさらに好ましい。粘度はE型粘度計によって測定することができる。
[(B)成分]
次に、(B)成分について説明する。
本発明の(B)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物であれば特に限定されない。ただし(A)成分が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物である場合、(A)成分と良好な相溶性を有するという観点から、シロキサン骨格のみからなる化合物以外のものが好ましい。ここで、シロキサン骨格とは、
(R12SiO3/2)p(R12 SiO2/2)q(R12 SiO3/2)r(SiO4/2)t(R12はそれぞれ同一または異種の非置換または置換の1価炭化水素基を示し、p、q、r及びtは各シロキサン単位のモル数を示し、p、q、r、tは0または正数であり、p+q+r+t=1である)のように、主鎖がSiO結合の連続のみからなる骨格をいう。
(A)成分が、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物である場合、(A)成分と良好な相溶性を有するという観点、および(B)成分の揮発性が低くなり得られる組成物からのアウトガスの問題が生じ難いという観点からは、(B)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機系化合物(α)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリオルガノシロキサン(β)を、ヒドロシリル化反応させて得ることができる化合物であることが好ましい。
(B)成分の分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、硬化性組成物の流動性をより制御しやすいという観点からは低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、好ましい分子量の下限は50であり、好ましい分子量の上限は100,000、より好ましくは10,000、さらに好ましくは2,000である。
[(α)成分]
ここで(α)成分は、上記した(A)成分である、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機系化合物と同じもの(α1)も用いることができる。(α1)成分を用いると得られる硬化物の架橋密度が高くなり機械的強度の強い硬化物となりやすい。
その他、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機系化合物(α2)も用いることができる。(α2)成分を用いると得られる硬化物が低弾性となりやすい。
(α2)成分としては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機系化合物であれば特に限定されないが、(B)成分が(A)成分と相溶性がよくなるという点においては、化合物としてはポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素の90重量%以上がC、H、N、O、S、およびハロゲンであることが好ましい。
(α2)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。また、(α2)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、耐熱性の観点から具体的にはビニル基、アリル基、メタリル基などが好ましい。
(α2)成分の化合物は、屈折率の観点からスチレンやビニルナフタレンなどが好ましい。
(α)成分としては耐熱性が高いという観点からは、上述した一般式(I)が挙げられる。
Figure 2012082303
(式中Rは炭素−炭素二重結合を含む炭素数1〜50の一価の有機基を表し、不飽和二重結合などの反応性を有する官能基が二つ以上あり、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)で表される化合物が好ましい。
上記一般式(I)のRとしては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素−炭素二重結合を含む炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素−炭素二重結合を含む炭素数1〜10の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜4の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいRの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、および下記構造式等が挙げられる。
Figure 2012082303
(α)成分としては高屈折率及び/または低アッベ数という観点からはベンゼン、ナフタレン、ビスフェノール系の骨格を有する化合物が好ましい。
[(β)成分]
本発明に使用できる1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリオルガノシロキサンについては、特に制限がなく、具体的な例としては、下記一般式(V)
Figure 2012082303
(式中、それぞれのR、R10は、水素あるいは炭素数1−50の一価の有機基を表し、それぞれのR、R10は異なっていても同一であってもよいが、少なくとも2個は水素である。nは1〜1000の数を表す。)で表される化合物が挙げられる。
、R10としては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜15の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR、R10の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、メトキシ基、エトキシ基、ビニル基、アリル基、グリシジル基等が挙げられる。
上記環状ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、下記一般式(IV)
Figure 2012082303
(式中、R11は水素あるいは炭素数1〜6の有機基を表し、それぞれのR11は異なっていても同一であってもよいが、少なくとも2個は水素である。nは2〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。なお、上記一般式(IV)におけるR11は、C、H、Oから構成される炭素数1〜6の有機基であることが好ましく、炭素数1〜6の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることがさらに好ましい。また、nは3〜10の数であることが好ましい。
これらのうち、入手性の面からは、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状及び/又は網目状ポリオルガノシロキサンが好ましい。また、(A)成分との相溶性の面からは、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状のポリオルガノシロキサン、又は分子量が10000以下の直鎖状のポリオルガノシロキサンが好ましい。また耐熱性の観点からは1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状のポリオルガノシロキサンが好ましい。
一般式(IV)で表される環状ポリオルガノシロキサンの好ましい具体例としては、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
上記したような各種(β)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
((α)成分と(β)成分の反応)
上述した一般式(I)や(II)の骨格を有する1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物を得るための反応について説明する。
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機系化合物(α)と1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリオルガノシロキサン(β)とをヒドロシリル化反応させる場合の、(α)成分と(β)成分の混合比率は、ヒドロシリル化反応した後に1分子中に少なくとも2個のSiH基が残る範囲であれば、特に限定されない。
得られる硬化物の強度を考えた場合、(α)成分中のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合のモル数(X)と、(β)成分中のSiH基のモル数(Y)との比は、Y/X≧2であることが好ましく、Y/X≧3であることがより好ましい。
ヒドロシリル化させる場合には適当な触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば後述する(C)成分を用いることができる。
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、SiH基を有するポリオルガノシロキサン(β)成分のSiH基1モルに対して10−10モル、より好ましくは10−8モルであり、好ましい添加量の上限はSiH基を有するポリオルガノシロキサン(β)成分のSiH基1モルに対して10−1モル、より好ましくは10−3モルである。
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10−2モル、より好ましくは10−1モルであり、好ましい添加量の上限は10モル、より好ましくは10モルである。
反応時の触媒混合方法としては、各種方法をとることができるが、(α)成分にヒドロシリル化触媒(C)を混合したものを、(β)成分に混合する方法が好ましい。(α)成分と(β)成分との混合物にヒドロシリル化触媒(C)を混合する方法では反応の制御が困難な場合がある。また、(β)成分とヒドロシリル化触媒(C)を混合したものに(α)成分を混合する方法では、ヒドロシリル化触媒(C)の存在下(β)成分が混入している水分と反応性を有するため、変質することがある。
反応温度としては種々設定できるが、好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる傾向があり、反応温度が高いと工業的に不利な場合がある。反応は一定の温度で行ってもよく、また必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。反応時間については特に限定されない。経済的な面からは、好ましくは20時間以内、さらに好ましくは10時間以内である。圧力も特に限定されないが、特殊な装置が必要になったり、操作が煩雑になったりする、という面から、好ましくは大気圧−5MPa、さらに好ましくは大気圧−2MPaである。
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、反応を均一、かつ、促進させるためには、(α)成分を完全に溶解できる量が好ましい。(α)成分100重量部に対して20重量部以上500重量部以下が好ましく、50重量部以上300重量部以下がより好ましい。
その他、反応性を制御する目的等のために種々の添加剤を用いてもよい。
ヒドロシリル化反応後に、溶媒並びに/または未反応のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機系化合物(α)と1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリオルガノシロキサン(β)を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる(B)成分が揮発分を有さないため、硬化の場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては例えば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲル等による処理等が挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は120℃であり、より好ましくは100℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
以上のような、(B)成分の例としては、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビスフェノールSジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物がより好ましい。
本発明では、(B)成分は単独又は2種以上のものを混合して用いることが可能である。
[(C)成分]
次に、(C)成分であるヒドロシリル化触媒について説明する。
ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl);白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO));白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh4、Pt(PBu);白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu))(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、a、bは、整数を示す。);ジカルボニルジクロロ白金;カールシュテト(Karstedt)触媒;アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び第3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体;ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒等が挙げられる。さらに、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)、RhCl、RhAl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl等が挙げられる。
これらの中では、触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能である。助触媒の例としては、トリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物、水等が挙げられる。
助触媒の添加量は特に限定されないが、上記ヒドロシリル化触媒1モルに対して、下限10−5モル、上限10モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限10−3モル、上限10モルの範囲である。
上記触媒には助触媒を併用することができる。
[(D)成分]
(D)成分として、シランカップリング剤を用いることができる。(D)成分であるシランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。
有機基と反応性のある官能基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
シランカップリング剤の添加量としては、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対しての好ましい添加量の範囲は10〜50重量部、より好ましくは15〜35重量部、さらに好ましくは15〜25重量部である。添加量が少ないと、硬化物の内部応力に起因するクラック、剥離の発生、基材の反り等の問題の改良効果が表れず、添加量が多いと耐熱性に悪影響を及ぼす場合がある。
[その他の添加物]
本発明の硬化性組成物の基材との接着性を向上させる目的でシラノール縮合触媒を使用することができる。使用できるシラノール縮合触媒としては、特に限定されるものではないが、具体的に例示すれば、ほう酸トリ−2−エチルヘキシル、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリメチル、ほう素メトキシエトキサイド等を好適に用いることができる。
本発明の硬化性組成物は、溶剤を添加して粘度を調整し、作業性を向上させることも可能である。使用できる溶剤としては、特に限定されるものではないが、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸n−ブチル、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶剤等を好適に用いることができる。また、当該溶剤は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶剤として用いることもできる。
使用する溶剤量は、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対して、下限0.1重量部、上限100重量部の範囲で用いるのが好ましく、下限0.5重量部、上限50重量部の範囲で用いるのがより好ましく、下限1重量部、上限30重量部の範囲で用いるのがさらに好ましい。使用量が0.1重量部より少ないと、低粘度化の効果が得られにくくなる傾向があり、使用量が100重量部より多いと、材料に溶剤が残留して耐熱性の低下等の問題となり易く、またコスト的にも不利になり易い傾向がある。
本発明の硬化性組成物の保存安定性を改良する目的、又は、製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては、例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上併用してよい。
脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、プロパルギルアルコール類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類等が例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示される。有機硫黄化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1−3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジン等が例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示される。有機過酸化物としては、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸tert−ブチル等が例示される。
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。
硬化遅延剤の添加量は、使用するヒドロシリル化触媒1モルに対して、下限10−1モル、上限10モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限1モル、上限50モルの範囲である。
次に、本発明の硬化性組成物の特性を改質する目的で添加することが可能な種々の樹脂について説明する。当該樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、エポキシ樹脂、シアナート樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて無機フィラーを添加してもよい。無機フィラーを添加すると、材料の高強度化や難燃性向上などに効果がある。無機フィラーとしては、微粒子状のものが好ましく、超微粉無定型シリカ、疎水性超微粉シリカ等を挙げることができる。
フィラーを添加する方法としては、例えば、アルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シラン等の加水分解性シランモノマー又はオリゴマーや、チタン、アルミニウム等の金属のアルコキシド、アシロキシド又はハロゲン化物等を、本発明の硬化性組成物に添加して、組成物中あるいは組成物の部分反応物中で反応させ、組成物中で無機フィラーを生成させる方法等も挙げることができる。
本発明で得られる硬化性組成物には老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系等一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
ヒンダートフェノール系老化防止剤としては、チバスペシャリティーケミカルズ社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。
また、これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
本発明で得られる硬化性組成物にはラジカル禁止剤を添加してもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤や、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。
また、これらのラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
本発明で得られる硬化性組成物には紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート等が挙げられる。
また、これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
本発明の硬化性組成物には、その他、難燃剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、加工安定剤、反応性希釈剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、接着性付与剤、物性調整剤等を、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において添加することができる。
本発明の硬化性組成物は、上記各成分を混合等することにより得られる。
[(A)+(B)成分の組成について]
本発明の(A)と(B)の総樹脂成分としては(A)と(B)の総樹脂成分100wt%に対して複素環含有成分が0.1〜20wt%、環状不飽和有機構造の含有成分が79.9〜10wt%、下記一般式で表される構造の含有成分が20〜70wt%で構成される。
下記一般式 −(O‐SiR‐O)−
(但し、式中のR及びRは水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基などの芳香族基であり、R及びRは同じ官能基であっても異なる官能基であっても良い。)
及び/またはRがアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は炭素数1〜10から選ばれる少なくとも一つである。耐熱性という観点からはアルキル基の炭素数は1〜3が好ましい。
及び/またはRが芳香族基である場合、芳香族基の炭素数は炭素数6〜12から選ばれる少なくとも一つである。耐熱性という観点からは芳香族基の炭素数は6〜10が好ましい。
複素環含有成分のwt%については複素環構造を含む化合物を複素環含有成分とし、wt%で算出するものとする。ここでいう複素環含有成分としては複素環部分だけでなく、複素環構造を含む化合物全体を表す。
複素環構造を含む化合物としては(A)成分のところで説明した化合物群の中から選ぶことができる。ここで示す複素環とは環構造中にO、N、S等のC以外の典型元素を有する環状の化合物であれば特に限定されない。本発明においては、有機化合物であるので環を形成する原子にSiが含まれるものは除かれる。また、環を形成する原子数は特に制限はなく、3以上であればよい。入手性からは、10以下であることが好ましい。
複素環の具体的な例としては、エポキシ系、オキセタン系、フラン系、チオフェン系、ピロール系、オキサゾール系、イソオキサゾール系、チアゾール系、イミダゾール系、ピラゾール系、フラザン系、トリアゾール系、テトラゾール系、ピラン系、チイン系、ピリジン系、オキサジン系、チアジン系、ピリダジン系、ピリミジン系、ピラジン系、ピペラジン系、環状イミド系、イソシアヌルレート系がある。
また、上記の複素環は他の炭素環や複数の複素環と縮合していてもよい。
複素環含有成分の含有量は、0.1〜20wt%であり、耐熱性が高くなるという観点から好ましい範囲は18〜3wt%である。さらに屈折率及び/またはアッベ数の観点から15〜3wt%が好ましい。
環状不飽和有機構造の含有成分のwt%については環状不飽和有機構造を含む化合物を環状不飽和有機構造の含有成分としてwt%で算出するものとする。ここでいう環状不飽和有機構造としては環状不飽和有機構造だけでなく、環状不飽和有機構造を含む化合物全体を表す。環状不飽和有機構造としては(A)成分のところで説明した化合物群の中から選ぶことができる。具体的な例としては、ベンゼン系、ビフェニル系、ビスフェノール系、アセン系がある。またベンゼン環が複数のベンゼン環及び/または炭素環と縮合してもよい。
環状不飽和有機構造の含成分の含有率は、79.9〜10wt%であり、屈折率及び/またはアッベ数の観点から好ましい範囲は75〜15wt%である。さらに耐熱性の観点から70〜20wt%が好ましい。
また一つの化合物に対して複素環含有成分や環状不飽和有機構造の含有成分である場合は各々のwt%として算出するものとする。
下記一般式で表される構造の化合物が一分子中に少なくともSiH基を2個含有する場合、R及びRは同じ官能基であっても異なる官能基であっても良い。またR及びRの官能基は特に限定されない。
下記一般式 −(O‐SiR‐O)−
(但し、式中のR及びRは水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基などの芳香族基であり、R及びRは同じ官能基であっても異なる官能基であっても良い。
下記一般式で表される構造の化合物が一分子中に少なくともSiH基を含有しない場合、R及びRの少なくともどちらかが水素であり、もう一方の置換基は水素であっても、異なる官能基であっても良く特に限定されない。
下記一般式 −(O‐SiR‐O)−
(但し、式中のR及びRは水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基などの芳香族基であり、R及びRは同じ官能基であっても異なる官能基であっても良い。
下記一般式で表される構造の含有成分について、wt%は構造中のケイ素原子と酸素原子の含有量で定義し、その他の元素については除く。R、Rがケイ素原子及び酸素原子単位以外の構造である場合はwt%から除くR、Rが複素環含有成分や環状不飽和有機構造の含有成分である場合は各々のwt%として算出するものとする。
下記一般式 −(O‐SiR‐O)−
(但し、式中のR及びRは水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基などの芳香族基であり、R及びRは同じ官能基であっても異なる官能基であっても良い。
下記一般式で表される構造を含有する化合物が明確な場合にはwt%は計算により算出しても良い。
下記一般式 −(O‐SiR‐O)−
(但し、式中のR及びRは水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基などの芳香族基であり、R及びRは同じ官能基であっても異なる官能基であっても良い。
化学構造が明らかでない場合はTGA熱重量分析により空気雰囲気下、10℃/minで昇温し、600℃で2時間ホールドした後の残渣重量を測定してwt%を算出しても良い。また構造が不明な場合のR、RはTGAの重量減少量とH NMRによる官能基の積分比からwt%を算出しても良い。
例えば、ある試料10mgを上記記載の条件でTGA熱重量分析を行い、残渣重量が3mgであった場合、下記一般式で表される構造の含有成分量は30%となる。またHNMRではあらかじめ、1,2−ジブロモエタンなどの内部標準物質を添加しておくと良い。HNMRからR、Rがフェニル基とメチル基であることが確認された場合、そのフェニル基とメチル基の積分値及び内部標準物質の積分値から重量比を算出し、官能基量を定量することができる。
一般式:−(O−SiR‐O)−
(但し、式中のR及びRは水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基などの芳香族基であり、R及びRは同じ官能基であっても異なる官能基であっても良い。
[硬化方法]
本発明の硬化性組成物を硬化させる方法としては、特に限定されないが、各成分を単に混合するだけで硬化させることもできるし、加熱して硬化させることもできる。硬化反応が速く、一般に耐熱性の高い材料が得られ易いという観点から、加熱して硬化させる方法が好ましい。
硬化温度としては種々設定できるが、下限25℃、上限300℃の温度範囲が好ましく、下限50℃、上限280℃がより好ましく、下限100℃、上限260℃がさらに好ましい。硬化温度が25℃より低いと十分に硬化させるための時間が長くなる傾向があり、硬化温度が300℃より高いと製品の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。
硬化は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより、多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、歪のない均一な硬化物が得られ易いという点で好ましい。
硬化時の圧力も必要に応じて種々設定でき、常圧、高圧又は減圧状態で反応させることもできる。
[硬化物の特性]
本発明の上記(C)成分の好ましい添加量は[(A)成分+(B)成分]100重量部に対して10〜100重量部であるが、(C)成分が3重量部以下で、それ以外は本発明の硬化性組成物と同じとしたときの硬化性組成物を硬化させてなる硬化物のガラス転移温度は50℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。(C)成分が3重量部以下で、それ以外は本発明の硬化性組成物と同じとしたときの硬化性組成物を硬化させてなる硬化物のガラス転移温度が低いと耐熱性が低く、また硬化物の材料強度が低くなる恐れがある。硬化物の材料強度が低いとクラックが発生しやすくなる。
本発明はレンズや光ファイバ等の光学部品の接着剤やコーティング剤や、LEDや受光素子などの光半導体の保護・封止材といった光学材料用高分子材料として使用することができる。
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
(合成例1)
5 L のセパラブルフラスコにトルエン1 . 8 k g 及び1 , 3 , 5 , 7 − テトラメチルシクロテトラシロキサン1 . 4 4 k g を加えて、内温が1 0 4 ℃ になるように加熱した。そこに、トリアリルイソシアヌレート2 0 0 g 、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3 w t % 含有) 1 . 4 4 m L 及びトルエン2 0 0 g の混合物を滴下した。1 20 ℃ のオイルバス中で7 時間加熱還流させた。1 − エチニル− 1 − シクロヘキサノール1. 7 g を加えた。未反応の1 , 3 , 5 , 7 − テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去した。H − N M R によりこのものは1 , 3 , 5 , 7 − テトラメチルシクロテトラシロキサンのS i H 基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したもの((下記化学式、反応物B1と称す)、S i H 価: 8 . 2 m m o l / g )であることがわかった。
Figure 2012082303
(合成例2)
500mLフラスコにトルエン80.0 g 及び1 , 3 , 5 , 7 − テトラメチルシクロテトラシロキサン130.0 g を加えて、内温が95 ℃ になるように加熱した。そこに、ビスフェノールSジアリルエーテル33.0 g 、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3 w t % 含有) 0.65 g及びトルエン33.0 g のスラリー溶液を5分割して30分間隔で添加した。最終添加から2 時間加熱還流させた。未反応の1 , 3 , 5 , 7 − テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去した。 H − N M R によりこのものは1 , 3 , 5 , 7 − テトラメチルシクロテトラシロキサンのS i H 基の一部がビスフェノールSジアリルエーテルと反応したもの((下記化学式、反応物B2と称す)、S i H 価: 6.8 m m o l / g )であることがわかった。
Figure 2012082303
(合成例3)
2 L オートクレーブにトルエン300.0 g 、1 , 3 , 5 , 7 − テトラメチルシクロテトラシロキサン130.0g を入れ、気相部を窒素で置換した後、ジャケット温115 ℃ 、内温110℃で加熱、攪拌した。ジビニルベンゼン286 g 、トルエン300 g 及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液( 白金として3 w t % 含有) 0 . 015 g の混合液を10分割して添加した。滴下終了後に1時間反応させ、H− N M R でアリル基の反応率が9 5 % 以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。トルエンを減圧留去し、無色透明の液体を得た。H− N M R によりこのものはS i H 基の一部がジビニルベンゼンと反応したもの((下記化学式、反応物B3と称す)、S i H 価: 9.8 m m o l / g )であることがわかった。
Figure 2012082303
(実施例1〜6および比較例1及び2)
下記表1に従い配合した。実施例については(A)成分としてトリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、(B)成分として合成例1〜3の合成物B1〜B3を用い、(C)成分として白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金3重量%含有)を用い、表1に示した配合割合(重量)で硬化性組成物を作製した。比較例についてはエポキシ樹脂としてダイセル化学社製セロキサイド2021P、カチオン系重合開始剤として三新化学工業社製SI−60L、高屈折率且つ低アッベ数の樹脂と考えられるフェニルシリコーン樹脂の信越化学工業社製LPS−L500Dを用いて表1に示した配合割合(重量)で硬化性組成物を作製した。
(評価方法)
以下の評価を実施し表1に結果を示した。
配合物を攪拌、脱泡したものを硬化性組成物とした。この硬化性組成物を、2枚のガラス板に1mm厚みのシリコーンゴムシートをスペーサーとして挟み込んで作製したセルに流し込み、100℃1時間、150℃5時間、180℃30分で加熱し硬化物を得た。なおエポキシ樹脂については60℃1時間、180℃30分、シリコーン樹脂については150℃1時間、180℃30分で硬化し、150℃1時間と比べてd線の屈折率に変化がないことを確認した。
得られた各硬化物について、硬化物の透明性・屈折率・アッベ数・耐熱性・線膨張係数・ヘイズ・シロキサン含有成分量を以下に述べる試験方法により測定した。
(硬化物の透明性)
得られた硬化物(1mm厚)の400nmにおける光線透過率を分光光度計(U−3300、日立)で測定した。
(屈折率及びアッベ数)
装置:Metoricon社製 プリズムカプラ2010/M
測定条件:404、594、827nmでの屈折率をhalfモードで5回連続測定し、平均値を各波長の屈折率とした。内蔵ソフトのCauchyの近似式により486、589、656nmでの屈折率(n)を求め、アッベ数を算出した。
(耐熱性試験)
硬化物を280℃に熱したガラスに3分間挟みこんで耐熱性試験を行った。耐熱性試験後の硬化物について、400nmの光線透過率を分光光度計(U−3300、日立)で測定し(硬化物耐熱性試験後透過率)、下式に従って数値を導出した。ここで、「初期透過率」には、耐熱性試験前における硬化物の400nmの光線透過率を用いた。
硬化物より5mm×5mm×3mmの試験片を切り出し、リガク社製ThermoPlus TMA8310を用いて、圧縮モード、昇温側度10℃/分の条件にて熱機械分析測定を行った。20−30℃での膨張の割合から線膨張係数を求めた。
(ヘイズ)
日本電色工業株式会社製NDH−300A、硬化物厚み1mm測定はn=3で行い、平均値を記載し、5%以下を合格とした。
(熱重量分析)
島津社製TGA50熱重量分析装置で測定した。上記硬化物を木製ハンマーで砕くか、もしくはカッターナイフで削りTGA用測定サンプルとした。このサンプルのうち6−8mgを計量し、TGA分析に用いた。測定条件は空気雰囲気下、室温〜600℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、600℃到達後、2時間ホールドした。測定後の残重量をシロキサン含有成分量とした。
Figure 2012082303
これらの硬化性組成物を光学部品として成形することを考慮すると線膨張係数は100ppm/K以下が望ましく、また耐熱変色性という観点から250℃以上の環境に3分間曝された硬化物(厚さ1mm)の400nmの透過率が80%以上であることが望ましい。本発明の硬化性組成物を用いた硬化物は、比較例1に比べて耐熱性が高く、アッベ数が小さいことは明らかである。また比較例2に比べてアッベ数が少し低く、線膨張係数についても低いことがわかる。
表1の結果より本発明の硬化性組成物を用いた硬化物は、光学的透明性、耐熱変色性、低線膨張係数を有し、高屈折率且つ低アッベ数であることが示された。

Claims (10)

  1. (A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機系化合物、
    (B)SiH基を1分子中に少なくとも2個有する化合物、
    (C)ヒドロシリル化触媒
    を必須成分として含有し、(A)と(B)の総樹脂成分100wt%に対して複素環含有成分が0.1〜20wt%、環状不飽和有機構造の含有成分が79.9〜10wt%、下記一般式で表される構造の含有成分が20〜70wt%であることを特徴とする硬化性組成物。
    一般式:−(O−SiR‐O)−
    (但し、式中のR及びRは水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基などの芳香族基であり、R及びRは同じ官能基であっても異なる官能基であっても良い。
  2. 前記記載の複素環含有成分としては化合物の環状構造内に窒素原子を少なくとも1つ以上含有する4〜8員環の窒素原子含有環状化合物であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物
  3. 前記記載の窒素原子含有環状化合物としては下記式で
    表される化合物であることを特徴とする請求項1及び2に記載の硬化性組成物
    Figure 2012082303
  4. 前記記載の環状不飽和有機構造としてはベンゼン系芳香族化合物及び/または縮合環芳香族化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
  5. 前記記載のベンゼン系芳香族化合物や縮合環芳香族化合物としては下記一般式で表される化合物であることを特徴とする請求項1及び4に記載の硬化性組成物。
    (但し、式中のRはエポキシ基や不飽和結合などの反応性を有する官能基である。)
    Figure 2012082303
  6. 前記一般式中のR3が下記構造式で表される官能基のいずれか少なくとも一つであり、不飽和二重結合などの反応性を有する官能基が二つ以上あることを特徴とする5に記載の硬化性組成物。
    Figure 2012082303
  7. 下記一般式の構造としては鎖状及び/または環状のポリオルガノシロキサンを含有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
    一般式:−(O−SiR‐O)−
    (但し、式中のR及びRは水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基などの芳香族基であり、R及びRは同じ官能基であっても異なる官能基であっても良い。
  8. 前記硬化性組成物を硬化させた時、硬化物のアッベ数が35以下、屈折率が1.50以上の耐熱変色性を有する請求項1に記載の硬化性組成物。
  9. 250℃以上の環境に3分間曝された硬化物(厚さ1mm)の400nmの透過率が80%以上である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化してなる光学部品。
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