JP2011102348A - 硬化性組成物及びその硬化物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の目的は透明性に優れ、耐熱性が高く、硬度が高く、良好な離型性を有する硬化物を与える光学材料用硬化性組成物を提供することにある。
【解決手段】 (A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)フッ素含有化合物を必須成分とした硬化性組成であり、前記(A)成分と(B)成分に含まれるシロキサン成分(−Si−O−)含有量が(A)成分と(B)成分との総量に対して50重量%以下である光学材料用硬化性組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は硬化物の透明性、耐熱性、離型性に優れた光学材料用硬化性組成物に関するものである。
一般に、レンズや光ファイバ等の光学材料用高分子材料には、高い透明性と硬度が要求されており、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン系樹脂などが使用されている。
しかし、環境保全に対する関心の高まりから、これまで利用されてきた鉛入りの低融点ハンダの使用が規制され、ハンダ実装の際にかかる温度が高くなってきている。実際、250℃を超える温度履歴がかかることもあり、これまで使用できた樹脂でも、変色したり、変形したりする問題が発生している。
このため、耐リフロー性を有する樹脂として、本出願人はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、ヒドロシリル化触媒、有機系離型剤を含有する組成物を提案した(特許文献1)が、成型時の型からの離型性の点で改善の余地があった。
特開2009−84437
本発明の目的は透明性に優れ、耐熱性が高く、硬度が高く、良好な離型性を有する硬化物を与える光学材料用硬化性組成物を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、シロキサンの成分が50重量%以下の樹脂に対してフッ素含有化合物を添加することにより、離型性が改善されることを見出し、硬度が高く、良好な離型性を有し、透明性、耐熱性に優れた硬化物を作製することに成功し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)フッ素含有化合物を必須成分とした硬化性組成物であり、前記(A)成分と(B)成分に含まれるシロキサン成分(−Si−O−)含有量が(A)成分と(B)成分との総量に対して50重量%以下である光学材料用硬化性組成物である。
上記(D)成分の組成比が(A)成分と(B)成分との総量100重量部に対して0.001〜5重量部であるのが好ましい。また、(D)成分がフッ素を含有するノニオン系界面活性剤であるのが好ましく、(D)成分の25℃におけるメタノールに対する溶解性が1%以上であるのがより好ましい。
上記硬化性組成物からなる硬化物(3mm厚)の光線透過率は400nmの波長において70%以上であるのが好ましく、大気中で280℃3分間熱処理した後の光線透過率変化が400nmの波長において10%以下であるのがより好ましい。
上記(B)成分が下記一般式(I)
Figure 2011102348
(式中、R1は炭素数1〜50の炭素、窒素、硫黄、あるいはハロゲン原子で置換されていてもよい有機基を表し、それぞれのR1は同一でも異なっていてもよい)で表される化合物由来の構造、または、下記一般式(II)
Figure 2011102348
(式中、R2は炭素数1〜50の炭素、窒素、硫黄、あるいはハロゲン原子で置換されていてもよい有機基を表し、それぞれのR2は同一でも異なっていてもよい)で表される化合物由来の構造を有するのが好ましい。
本発明の硬化物は上記光学材料用硬化性組成物を硬化させてなり、光学部材やモジュールに好適である。
本発明によれば、作業性に優れた組成物を与え、透明性、耐熱性に優れ、硬度が硬く、良好な離型性を有する光学材料を提供することが可能になる。
以下、本発明を詳細に説明する。
((A)成分)
(A)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物である。
(A)成分は、有機骨格部分と、その有機骨格部分に共有結合するSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基とからなるものが好ましい。上記SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基は、有機骨格のどの部位に共有結合していてもよい。
まず、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基について述べる。(A)成分の炭素−炭素二重結合としてはSiH基と反応性を有するものであれば特に制限されないが、下記一般式(III)で示される炭素−炭素二重結合が反応性の点から好適である。
Figure 2011102348
(式中R3は水素原子あるいはメチル基を表す。)また、原料の入手の容易さからは、R3は水素原子であることがより好ましい。
硬化物の耐熱性が高いという点からは一般式(IV)が好適である。
Figure 2011102348
(式中R4は水素原子あるいはメチル基を表し、それぞれのR4は異なっていても同一であってもよい。)また、原料の入手の容易さからは、R4は水素原子であることがより好ましい。
炭素−炭素二重結合は置換基を介して(A)成分の骨格部分に共有結合していても良く、置換基としては、構成元素としてC、H、N、O、S、ハロゲンから選ばれる原子のみを含むものが好ましい。置換基の例としては、次のものが挙げられる。
Figure 2011102348
Figure 2011102348
また、これらの置換基の2つ以上が共有結合によりつながって置換基を構成していてもよい。
以上のような骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、下記に示すものが挙げられる。
Figure 2011102348
次に有機骨格部分について述べる。(A)成分の有機骨格としては特に限定はなく、有機重合体骨格、または有機単量体骨格を用いればよい。
有機重合体骨格の例としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系等を挙げることができる。
特に、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系が耐熱性および透明性の点から好適である。
有機単量体の例としては、エタン、プロパン、イソブタンといった脂肪族鎖状化合物や、シクロペンタン、ジシクロペンタン、ノルボルナンといった脂肪族環状化合物、あるいは、エポキシ系、オキセタン系、フラン系、チオフェン系、ピロール系、オキサゾール系、イソオキサゾール系、チアゾール系、イミダゾール系、ピラゾール系、フラザン系、トリアゾール系、テトラゾール系、ピラン系、チイン系、ピリジン系、オキサジン系、チアジン系、ピリダジン系、ピリミジン系、ピラジン系、ピペラジン系、イソシアヌレート系といった複素環化合物がある。ここで、複素環とは、環状骨格中にヘテロ元素を有する環状の化合物であれば特に限定されない。ただし、環を形成する原子にSiが含まれるものは除かれる。また、環を形成する原子数は特に制限はなく、3以上であればよい。入手性からは、10以下であることが好ましい。
有機単量体からなる(A)成分の具体例として、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエン等の脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等の置換脂肪族環状オレフィン化合物系等、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、
Figure 2011102348
Figure 2011102348
等が挙げられる。
上記した(A)成分としては、耐熱性をより向上し得るという観点から、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり0.1mmol以上含有するものが好ましく、さらに、1gあたり0.5mmol以上含有するものが好ましく、1mmol以上含有するものが特に好ましい。
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は、平均して1分子当たり少なくとも2個あればよいが、力学強度をより向上したい場合には2を越えることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数が1分子内当たり1個以下の場合は、(B)成分と反応してもグラフト構造となるのみで架橋構造とならない。
成分(A)としては、力学的耐熱性が高いという観点および原料液の糸引き性が少なく成形性、取扱い性、塗布性が良好であるという観点からは、分子量が900未満のものが好ましく、700未満のものがより好ましく、500未満のものがさらに好ましい。
成分(A)としては、良好な作業性を得るためには、23℃における粘度が100Pa・s未満のものが好ましく、50Pa・s未満のものがより好ましく、30Pa・s未満のものがさらに好ましい。ここでの粘度はE型粘度計によって測定した値を指す。
(A)成分としては、着色特に黄変の抑制の観点からはフェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物の含有量が少ないものが好ましく、フェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物を含まないものが好ましい。本発明におけるフェノール性水酸基とはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等に例示される芳香族炭化水素核に直接結合した水酸基を示し、フェノール性水酸基の誘導体とは上述のフェノール性水酸基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、アセトキシ基等のアシル基等により置換された基を示す。
得られる硬化物の着色が少なく、耐光性が高いという観点からは、(A)成分としてはビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが好ましく、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが特に好ましい。
特に(A)成分としては耐熱性・耐光性が高いという観点から上述した一般式(I)で表されるイソシアヌル酸誘導体が特に好ましい。
Figure 2011102348
(式中R1は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよい。)で表される化合物が好ましい。
上記一般式(I)のR1としては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜30の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜20の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR1の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基等が挙げられる。
上記のような一般式(I)で表される化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノフェニルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
耐熱性・屈折率が高いという観点からは、(A)成分としては上述した一般式(II)で表されるジビニルベンゼン類、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、およびそれらのオリゴマーや、ビスフェノールAジアリルエーテルや、ビス〔4−(2−アリルオキシ)フェニル〕スルホン、フェノールノボラック樹脂等の芳香環含有エポキシ樹脂に結合するグリシジル基の一部あるいは全部をアリル基に置換したものが好ましい。
Figure 2011102348
(式中、R2は炭素数1〜50の一価の酸素、窒素、硫黄、あるいはハロゲン原子で置換されていてもよい有機基を表し、それぞれのR2は異なっていても同一であってもよい。)
上記一般式(II)のR2としては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、
Figure 2011102348
のように複数の芳香環をもつことが好ましい。
(A)成分は、単独又は2種以上のものを混合して用いることが可能である。
((B)成分)
次に、(B)成分について説明する。
(B)成分は1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用でき、入手性の観点から、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状及び/又は網目状ポリオルガノシロキサンが好ましい。
上記鎖状オルガノポリシロキサンの具体的な例としては、下記一般式(V)
Figure 2011102348
(式中、それぞれのR5、R6は、水素あるいは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR5、R6は異なっていても同一であってもよいが、少なくとも2個は水素である。nは1〜1000の数を表す。)で表される化合物が挙げられる。
5、R6としては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜15の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR5、R6の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、メトキシ基、エトキシ基、ビニル基、アリル基、グリシジル基等が挙げられる。
上記環状ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、下記一般式(VI)
Figure 2011102348
(式中、R7は水素あるいは炭素数1〜6の有機基を表し、それぞれのR7は異なっていても同一であってもよいが、少なくとも2個は水素である。nは2〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。なお、上記一般式(VI)におけるR7は、C、H、Oから構成される炭素数1〜6の有機基であることが好ましく、炭素数1〜6の炭化水素基であることがより好ましい。R7は入手性、耐熱性の観点より特にメチル基であるものが好ましく、硬化物の強度が高くなるという観点より特にフェニル基であるものが好ましい。また、nは3〜10の数であることが好ましい。
一般式(VI)で表される環状ポリオルガノシロキサンの好ましい具体例としては、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
(B)成分の分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、硬化性組成物の流動性をより制御しやすいという観点からは低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、好ましい分子量の下限は50であり、好ましい分子量の上限は100000、より好ましくは10000、さらに好ましくは3000である。
(A)成分と良好な相溶性を有するという観点、および(B)成分の揮発性が低くなり得られる組成物からのアウトガスの問題が生じ難いという観点からは、(B)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機系化合物(B1)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリオルガノシロキサン(B2)を、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物であることが好ましい。
((B1)成分)
ここで(B1)成分は、上記した(A)成分である、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機系化合物と同じもの(B11)を用いることができる。(B11)成分を用いると得られる硬化物の架橋密度が高くなり機械的強度の強い硬化物となりやすい。
その他、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機系化合物(B12)も用いることができる。(B12)成分を用いると得られる硬化物が低弾性となりやすい。
(B12)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。また、(B12)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、(A)成分で説明した官能基が好ましい。
(B12)成分の化合物は、重合体系の化合物と単量体系化合物に分類でき、それぞれの骨格は(A)成分で説明した骨格が好ましい。
(B1)成分として、耐熱性・耐光性が高いという観点からは、上述した一般式(I)
Figure 2011102348
の骨格を有する化合物が好ましい。
(B1)成分として、屈折率が高いという観点からは、上述した一般式(II)
Figure 2011102348
の骨格を有する化合物が好ましい。
(B1)成分は、単独又は2種以上のものを混合して用いることが可能である。
((B2)成分)
(B)成分は1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用でき、入手性の観点から、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状及び/又は網目状ポリオルガノシロキサンが好ましく、それぞれの化合物の具体的な例としては上記(B)成分で説明したものが挙げられる。
(予備反応)
上述した一般式(I)や(II)の骨格を有する1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物を得るための反応について説明する。
炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機系化合物(B1)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリオルガノシロキサン(B2)とをヒドロシリル化反応させる場合の、(B1)成分と(B2)成分の混合比率は、1分子中に2個以上SiH基が残る範囲であれば、特に限定されない。
得られる硬化物の強度を考えた場合、(B1)成分中のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合のモル数(X)と、(B2)成分中のSiH基のモル数(Y)との比は、Y/X≧2であることが好ましく、Y/X≧3であることがより好ましい。
ヒドロシリル化させる場合には適当な触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば後述する(C)成分を用いることができる。
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、(B2)成分のSiH基1モルに対して10-10モル、より好ましくは10-8モルであり、好ましい添加量の上限は(B2)成分のSiH基1モルに対して10-1モル、より好ましくは10-3モルである。
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10-2モル、より好ましくは10-1モルであり、好ましい添加量の上限は102モル、より好ましくは10モルである。
反応時の触媒混合方法としては、各種方法をとることができるが、(B1)成分にヒドロシリル化触媒を混合したものを、(B2)成分に混合する方法が好ましい。(B1)成分と(B2)成分との混合物にヒドロシリル化触媒を混合する方法では反応の制御が困難な場合がある。また、(B2)成分とヒドロシリル化触媒を混合したものに(B1)成分を混合する方法では、ヒドロシリル化触媒の存在下(B2)成分が混入している水分と反応性を有するため、変質することがある。
反応温度としては種々設定できるが、好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる傾向があり、反応温度が高いと工業的に不利な場合がある。反応は一定の温度で行ってもよく、また必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。反応時間については特に限定されない。経済的な面からは、好ましくは20時間以内、さらに好ましくは10時間以内である。圧力も特に限定されないが、特殊な装置が必要になったり、操作が煩雑になったりする、という面から、好ましくは大気圧〜5MPa、さらに好ましくは大気圧〜2MPaである。
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
合成の反応後に溶媒及び/又は未反応の化合物を除去してもよい。除去する方法としては、例えば、減圧脱揮が挙げられる。減圧脱揮する場合、低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は120℃であり、より好ましくは100℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
また、貯蔵安定性を向上させるためには窒素、アルゴンの様な不活性ガス雰囲気下、10℃以下での保存が好ましく、0℃以下の保存が特に好ましく、−10℃以下の保存がさらに好ましい。
以上のような、硬化剤の例としては、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物や、ビス〔4−(2−アリルオキシ)フェニル〕スルホンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物がより好ましい。
(B2)成分は、単独又は2種以上のものを混合して用いることが可能である。
((C)成分)
次に(C)成分であるヒドロシリル化触媒について説明する。
(C)成分のヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH22(PPh32、Pt(CH2=CH22Cl2);白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)a、Pt[(MeViSiO)4b);白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34);白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)34、Pt[P(OBu)34)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、a、bは、整数を示す。);ジカルボニルジクロロ白金;カールシュテト(Karstedt)触媒;白金−炭化水素複合体(例えばアシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び第3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体);白金アルコラート触媒(例えばラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒)等が挙げられる。さらに、塩化白金−オレフィン複合体(例えばモディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体)も本発明において有用である。
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4等が挙げられる。
これらの中では、触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
(C)成分の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、成分(B)のSiH基1モルに対して10-8モル、より好ましくは10-7モルであり、好ましい添加量の上限は成分(B)のSiH基1モルに対して10-1モル、より好ましくは10-2モルである。
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能である。助触媒としては、例えば、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。
助触媒の添加量は特に限定されないが、上記ヒドロシリル化触媒1モルに対して、下限10-2モル、上限102モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限10-1モル、上限10モルの範囲である。
((D)成分)
次に、(D)成分であるフッ素含有化合物について説明する。
(D)成分についてはフッ素含有化合物で、樹脂に相溶し、硬化後に硬化物を型から取り外しやすくするものであり、硬化物の透明性を損なわないものであれば特に限定されず、フルオロシリコーン、PTFEなどのフッ素樹脂、フッ素含有の界面活性剤(モノマー、オリゴマー)などが挙げられる。
樹脂との相溶性の観点から、フッ素含有化合物はフッ素を含有するノニオン系界面活性剤であることが好ましい。
さらに、フッ素含有化合物は25℃におけるメタノールに対する溶解性が1%以上であることが好ましい。メタノールに対する溶解度が1%未満であると、樹脂との相溶性が悪くなり、白濁または分離してしまう場合がある。
上記のようなフッ素含有化合物として、具体的にはパーフルオロアルキル含有オリゴマー系(DIC社製:メガファックF−474、F−477、AGCセイミケミカル株式会社製:サーフロンS−611、S−651、S−386)、パーフルオロアルキルエチレンオキシド系(AGCセイミケミカル株式会社製:サーフロンS−243、S−420)、パーフルオロアルケニルエチレンオキシド系(ネオス社製:フタージェント251、フタージェント209F、フタージェント208G)が例示される。
(D)成分の添加量は(A)成分と(B)成分との総量100重量部に対して0.001〜5重量部、好ましくは0.003〜3重量部である。0.001重量部以下である場合、基材との十分な離型性を確保できない場合がある。また、5重量部以上添加すると白濁したり、硬化物の表面硬度が低下したりすることがある。
本発明の光学材料用硬化性組成物では、(D)成分のフッ素含有化合物を一種のみまたは二種以上を組み合わせて使用してもよい。
(その他の添加物)
(貯蔵安定剤)
本発明の光学材料用硬化性組成物の貯蔵安定性を改良する目的で貯蔵安定剤を添加するのが好ましい。貯蔵安定剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などが挙げられ、これらを併用してもかまわない。脂肪族不飽和結合を含有する化合物として、プロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類などが例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類などが例示される。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイドなどが例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジンなどが例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズなどが例示される。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチルなどが例示される。
これらの貯蔵安定剤のうち、貯蔵安定性が良好で原料入手性がよいという観点からは、1−エチニルシクロヘキサノール、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、ジメチルマレートが好ましい。
貯蔵安定剤の添加量は、使用するヒドロシリル化触媒1molに対し、10-1〜103モルの範囲が好ましく、より好ましくは1〜100モルの範囲である。
(老化防止剤)
本発明の光学材料用硬化性組成物には老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系等一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
ヒンダードフェノール系老化防止剤としては、チバスペシャリティーケミカルズ社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。
また、これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
(ラジカル禁止剤)
本発明の光学材料用硬化性組成物にはラジカル禁止剤を添加してもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤や、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。
また、これらのラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
(紫外線吸収剤)
本発明の光学材料用硬化性組成物には紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート等が挙げられる。
また、これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
(無機フィラー)
本発明の光学材料用硬化性組成物には無機フィラーを添加してもよい。無機フィラーを添加すると、材料の高強度化や難燃性向上などに効果がある。無機フィラーとしては、微粒子のものが好ましく、アルミナ、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ、疎水性超微粉シリカ、硫酸バリウム、蛍光体等を挙げることができる。
フィラーを添加する方法としては、例えば、アルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シラン等の加水分解性シランモノマー又はオリゴマーや、チタン、アルミニウム等の金属アルコキシド、アシロキシド又はハロゲン化物等を、本発明の硬化性組成物に添加して、組成物中あるいは組成物の部分反応物中で反応させ、組成物中で無機フィラーを生成させる方法等も挙げることができる。
(溶剤)
本発明の光学材料用硬化性組成物が高粘度である場合、溶剤に溶解して用いることも可能である。使用できる溶剤は特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)、エチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。
溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、クロロホルムが好ましい。
使用する溶媒量は適宜設定できるが、用いる硬化性組成物1gに対しての好ましい使用量の下限は0.1mLであり、好ましい使用量の上限は10mLである。使用量が少ないと、低粘度化等の溶媒を用いることの効果が得られにくく、また、使用量が多いと、材料に溶剤が残留して熱クラック等の問題となり易く、またコスト的にも不利になり工業的利用価値が低下する。
これらの、溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。
本発明の硬化性組成物には、その他、着色剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤、物性調整剤等を本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
(硬化性組成物)
本発明の光学材料用硬化性組成物中の(A)成分と(B)成分に含まれるシロキサン成分(−Si−O−)含有量は(A)成分と(B)成分との総量に対して50重量%以下であることが好ましく、48重量%であることがより好ましく、45重量%以下であることが特に好ましい。シロキサン成分が50重量%より多い場合、硬化させたときの硬度が十分でないため、(D)成分のフッ素含有化合物を加えても離型性が確保できない場合がある。ここで本発明のシロキサン成分(−Si−O−)とは、珪素原子と酸素原子が直接結合した単位、すなわち1個の珪素原子と1個の酸素原子により構成される単位を表す。珪素原子上の他の3個の置換基は、本発明のシロキサン成分には含まれない。
本発明の光学材料用硬化性組成物の(A)成分と(B)成分の[(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合のモル数/(B)成分のSiH基のモル数]の値が、下限0.05、上限10の範囲となる比率であることが好ましく、下限0.1、上限5の範囲となる比率であることがより好ましく、下限0.5、上限2であることが特に好ましい。下限値が0.05より小さい場合は炭素−炭素二重結合とSiH基との反応による架橋の効果が不十分になる傾向にあり、上限値が10より大きい場合は硬化物から未反応の(A)成分がブリードしてくる場合がある。
硬化性組成物の調製方法は特に限定されず、種々の方法で調製可能である。各種成分を硬化直前に混合調製しても良く、全成分を予め混合調製した一液の状態で低温貯蔵しておいても良い。全成分を混合した後、反応制御条件や官能基の反応性の差の利用により組成物中の官能基の一部のみを反応させてもよい。変性ポリオルガノシロキサン化合物の他に、物性改良の目的で熱可塑性樹脂等の添加剤を使用する場合は、これらの添加剤と硬化触媒である白金化合物を予め混合して貯蔵しておき、硬化直前にそれぞれの所定量を混合して調製してもよい。
(硬化物)
本発明の硬化性組成物を硬化させる方法としては、特に限定されないが、各成分を単に混合するだけで反応させることもできるし、加熱して反応させることもできる。反応が速く、一般に耐熱性の高い材料が得られ易いという観点から、加熱して反応させる方法が好ましい。
反応温度としては種々設定できるが、好ましい温度の下限は30℃、より好ましくは60℃、さらに好ましくは90℃である。好ましい温度の上限は300℃、より好ましくは250℃、さらに好ましくは200℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる。反応温度が高いと着色や隆起することがある。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる傾向があり、反応温度が高いと着色や隆起することがある。
反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより、多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、歪のない均一な硬化物が得られ易いという点で好ましい。
反応時の圧力も必要に応じて種々設定でき、常圧、高圧又は減圧状態で反応させることもできる。
本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物は、3mm厚のサンプルで波長400nmにおける光線透過率が70%以上であるのが好ましい。さらに、この硬化物を280℃3分間熱処理しても、波長400nmにおける光線透過率変化が10%以下で維持できるため、耐ハンダリフロー性があると考えられる。このような高い耐熱性により、光半導体やモジュール、光学部品の設計の自由度や応用先を増やすことができる。
本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物は、JIS K6253のタイプDデュロメータによる硬さ(ショアD)が50以上であることが好ましく、55以上がより好ましく、60以上が特に好ましい。ショアDによる硬さが高いと、機械的強度があり、表面に傷がつき難く、ごみが付着しにくい。さらに、カッターやドリルといった機械的加工が可能であることから、光学部品成型後に複雑な形状を付与したり、補正したりすることができる。
本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物は、30℃における線膨張係数が100ppm/K以下であることが好ましく、90ppm/K以下がより好ましい。線膨張係数を低くすることにより、光学部品の温度による焦点や収差のズレを小さく、部品を固定した際に熱履歴がかかったときの熱衝撃を小さくすることができる。
(用途)
本発明の硬化性組成物は光学材料用に用いられる。ここでいう光学材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料であり、具体的には下記のようなものが例示される。
例えば、(デジタル)カメラや携帯電話や車載カメラ等のカメラ用レンズ、プロジェクションレンズ、f−θレンズ、ピックアップレンズ等の光学レンズ、光学フィルム、光学シート、ダイシングテープ、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、高電圧絶縁材料、層間絶縁膜、絶縁被覆材、コーティング材料(ハードコート、シート、フィルム、剥離紙用コート、光ディスク用コート、光ファイバ用コート等を含む)、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、ポッティング材料、光半導体封止材料、レジスト材料、液状レジスト材料、着色レジスト、ドライフィルムレジスト材料、ソルダーレジスト材料、カラーフィルター用材料、光造形、太陽電池用材料、表示材料、記録材料、複写機用感光ドラムに応用できる。
以下に本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
(合成例1)
2Lオートクレーブに1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン650g、トルエン600gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。トリアリルイソシアヌレート90g、トルエン110g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として0.03wt%含有)3.5gの混合溶液を10回に分けて分割添加した。滴下終了から6時間加熱撹拌した後、1H−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。冷却により反応を終了した。
トルエン及び未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを60℃で2時間、80℃で2時間減圧脱揮し、無色透明の液体を得た。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部とトリアリルイソシアヌレートのアリル基が反応したもの((β1)と称す。(β1)は混合物であるが、主成分として1分子中に9個のSiH基を含有する以下の化合物を含有する)であることがわかった。また、1,2−ジブロモエタンを内部標準に用いて1H−NMRによりSiH基の含有量を求めたところ、9.0mmol/g含有していることがわかった。
Figure 2011102348
(合成例2)
2L四つ口フラスコにトルエン600g、1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン600gを加えて、内温が90℃になるように加熱した。そこに、ジビニルベンゼン74g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.02g、トルエン74gの混合物を滴下し、7時間加熱撹拌させた。未反応の1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がジビニルベンゼンと反応したもの((β2)と称す。(β2)は混合物であるが、主成分として1分子中に6個のSiH基を含有する以下の化合物を含有する)であることがわかった。また、1,2−ジブロモエタンを内部標準に用いて1H−NMRによりSiH基の含有量を求めたところ、9.5mmol/g含有していることがわかった。
Figure 2011102348
(実施例1〜5、比較例1〜3)
表1に示される配合組成(配合量は重量部である)で硬化性組成物を調製した。さらに、硬化性組成物を2枚のガラス板に3mm厚みのシリコーンゴムシートをスペーサーとして挟み込んで作製したセルに、硬化性組成物を流し込み、60℃で6時間、続いて70℃で1時間、80℃で1時間、120℃で1時間、150℃で1時間、180℃30分間空気中にて加熱を行い、それぞれ透明硬質な硬化物を得た。
なお、実施例1などで用いたメガファックF−477はパーフルオロアルキル含有オリゴーマー系化合物、サーフロンS−420はパーフルオロアルキルエチレンオキシド系化合物、フタージェント209Fはパーフルオロアルケニルエチレンオキシド系化合物である。また、比較例3で用いたMQV7はビニル基含有MQレジン(クラリアント社製、分子量=〜1,000、ビニル基含有量=3.5eq/kg)を、MQH5はSiH基含有MQレジン(クラリアント社製、分子量=〜1,000、SiH基含有量=2.1eq/kg)を表すものである。
(測定、試験)
(外観)
得られた組成物を目視で観察し、濁っていないものを○、濁ったものを×とした。
(硬化物の透明性)
得られた硬化物(3mm厚)の400nmにおける光線透過率を分光光度計(U−3300、日立)で測定した。
(耐熱性試験)
硬化物を280℃に熱したオーブンで3分間加熱し耐熱性試験を行った。耐熱性試験後の硬化物について、400nmの光線透過率を分光光度計(U−3300、日立)で測定し、下記式で求めた。
[変化率]=([初期光線透過率]−[耐熱性試験後光線透過率])×100
(硬さ試験)
硬化物をJIS K6253により、タイプDデュロ−メータによって硬さを測定した。
(離型性試験)
離型剤(FREKOTE 700−NC)を吹き付け、150℃で2時間以上加熱処理したスライドガラスを、ホットプレート上で表面温度140℃に加熱し、樹脂を付着させた底面φ4mmの分銅を置き、5分間加熱、硬化させた。室温まで冷却後、プッシュプルゲージで離型にかかった力を測定した。
(SiH基価)
バリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッド製、300MHz NMR装置を用いた。(B)成分合成での反応追跡は、反応液を重クロロホルムで1%程度まで希釈したものをNMR用チューブに加えて測定し、未反応SiH基のピークまたは未反応炭素−炭素二重結合基由来のメチレン基のピークと、反応炭素−炭素二重結合基由来のメチレン基のピークから求めた。(B)成分の官能基価は、ジブロモエタン換算での炭素−炭素二重結合基価(mmol/g)、SiH基価(mmol/g)を求めた。
Figure 2011102348

Claims (11)

  1. (A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)フッ素含有化合物を必須成分とした硬化性組成であり、前記(A)成分と(B)成分に含まれるシロキサン成分(−Si−O−)含有量が(A)成分と(B)成分との総量に対して50重量%以下である光学材料用硬化性組成物。
  2. 前記(D)成分の組成比が(A)成分と(B)成分との総量100重量部に対して0.001〜5重量部である、請求項1に記載の硬化性組成物。
  3. 前記(D)成分がフッ素を含有するノニオン系界面活性剤である請求項1〜2のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  4. 前記(D)成分の25℃におけるメタノールに対する溶解性が1%以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  5. 前記硬化性組成物からなる硬化物(3mm厚)の光線透過率が400nmの波長において70%以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学材料用硬化性組成物。
  6. 前記硬化性組成物からなる硬化物は、硬化物(3mm厚)を大気中で280℃3分間熱処理した後の光線透過率変化が400nmの波長において10%以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  7. 前記(B)成分が下記一般式(I)
    Figure 2011102348
    (式中、R1は炭素数1〜50の炭素、窒素、硫黄、あるいはハロゲン原子で置換されていてもよい有機基を表し、それぞれのR1は同一でも異なっていてもよい)で表される化合物由来の構造を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  8. 前記(B)成分が下記一般式(II)
    Figure 2011102348
    (式中、R2は炭素数1〜50の炭素、窒素、硫黄、あるいはハロゲン原子で置換されていてもよい有機基を表し、それぞれのR2は同一でも異なっていてもよい)で表される化合物由来の構造を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  9. 請求項1〜8いずれかに記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
  10. 請求項9に記載の硬化性組成物の硬化物を使用した光学部材。
  11. 請求項10に記載の光学部材を使用した光学モジュール。
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