JP2009242666A - フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】延伸による位相差の発現性に優れ且つ光弾性係数が小さく、複屈折の波長依存性が小さく、複屈折の温度依存性を小さい位相差フィルムの提供。
【解決手段】シンジオタクティックプロピレン重合体(A)100〜50重量部とプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)0〜50重量部からなるフィルム。ここで、成分(A)は、プロピレン単位90mol%〜100mol%と、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる一種以上単位を0〜10mol%を含むプロピレン系重合体であって、下記の要件[1]かつ[2]を満たし、[1]13C−NMRにより測定される分率(rrrr)が85%以上。[2]n-デカン可溶部量が1(wt%)以下。成分(B)は、プロピレン単位50mol%〜100mol%と、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる一種以上単位を0〜50mol%を含むプロピレン系重合体。
【選択図】なし

Description

本発明は、シンジオタクティックプロピレン重合体とプロピレン・α-オレフィン共重合体からなるフィルム、好適には光学フィルムに関する。
近年、液晶デイスプレイ(LCD)などに代表される光学素子の市場は急速に拡大しつつあるが、応答速度、輝度、コントラスト、視野角改良など更なる高性能化が求められている。LCDの視野角を改良するためには、位相差フィルムなどの光学補償フィルムを用いる方法が知られており、これまでに様々な位相差フィルムが提案されてきた。位相差フィルムとして広く用いられているポリカーボネート樹脂は、延伸による位相差の発現性には優れているものの、光弾性係数が大きいために外力や成形時の残留応力により複屈折率が大きくなるという問題点が指摘されてきた(特許文献1)。偏光子の保護膜として用いられてきたトリアセチルセルロースは偏光子との接着性には優れるものの光弾性係数がやはり大きいのでポリカーボネート樹脂と同様な問題点を抱えている(特許文献2)。位相差フィルムとしての熱可塑性ノルボルネン系樹脂は光弾性係数が小さいものの延伸による位相差発現が難しいという問題点があった(特許文献3)。換言すれば、延伸による位相差の発現性に優れ、光弾性係数の小さな位相差フィルムが産業界から求められているのである。
さて、液晶素子を構成する材料の複屈折を所望の値に制御して安定させることが求められている。例えば、白色光などの波長領域の広い光を利用する光学部品では、光学部品の複屈折の波長依存性が問題となる。波長によって複屈折が大きく変動すれば、一の波長領域で好適に機能する光学部品が、他の波長領域では機能しないことになり、その結果、広い波長領域に対応した光学部品の提供が難しくなる(特許文献4)。一般に通常の光学材料では、短波長ほど複屈折が大きいため一枚のフィルムのみで、複屈折の波長依存性を解消させることは困難であった。換言すれば、複屈折の波長依存性の小さな位相差フィルムは、素子構成の簡素化などにおいて大きな利点を有することが予想される。
また、液晶素子を構成する材料は、一般に熱による体積膨張やバンドギャップの温度依存性に起因する屈折率の温度変化が存在する。複屈折あるいは膜厚に温度依存性が存在すると、その積である光学遅延に温度依存性が現れ、本来の設定値からの変位が発生する。この変位は、ひいてはこの複屈折部品を組み込んで作成されている光学部品の特性が温度変化によって大きく変化する原因となる(特許文献5)。換言すれば、上記した複屈折の温度依存性を小さくすることによって、環境変化に対しても信頼性の高い複屈折性光学部品が提供されることになる。
特開平9−0325216号公報 特開2002−221629号公報 特開平8−043812号公報 特開2000−137116号公報 特開2006−312681号公報
本発明者らは、上記した3つの課題、すなわち、(1)延伸による位相差の発現性に優れ且つ光弾性係数が小さく、(2)複屈折の波長依存性が小さく、及び(3)複屈折の温度依存性が小さい位相差フィルムを提供すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のシンジオタクティックプロピレン重合体とプロピレン・α-オレフィン共重合体からなるフィルムがこれら課題を解決することを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、プロピレンから導かれる構成単位90mol%〜100mol%と、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる一種以上から導かれる構成単位を0〜10mol%を含むプロピレン系重合体(但し、合計して100mol%)であって、下記要件[1]〜[2]を同時に満たすシンジオタクティックプロピレン重合体(A)100〜50重量部と、プロピレンから導かれる構成単位50mol%〜100mol%と、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる一種以上から導かれる構成単位を0〜50mol%を含むプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)0〜50重量部〔ただし、(A)と(B)との合計は100重量部である)からなるフィルム、好ましくは光学フィルム、さらに好ましくは位相差フィルムである。
[1] 13C−NMRにより測定されるシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr)が85%以上である。
[2] n-デカン可溶部量が1(wt%)以下である。
本発明のフィルムの好ましい態様の一は、100μm厚みの全光線透過率が90%以上であり、かつ針進入温度(TMA)が145℃〜170℃であり、且つ厚みが10〜200μmである。
本発明のフィルムの好ましい態様の二は、少なくとも1軸方向に延伸されているフィルムである。
本発明のフィルムは位相差フィルムとして好適に用いられる。
また、本発明の位相差フィルムは、30℃〜100℃の位相差の温度変化率が20%以下であることを特徴としている。
さらには、本発明は前記フィルムが装着されている液晶表示装置に関わる。
延伸による位相差の発現性に優れ且つ光弾性係数が小さく、複屈折の波長依存性が小さく、さらには複屈折の温度依存性を小さい位相差フィルムが提供される。
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明のフィルムは、下記要件[1]〜[2]を同時に満たすシンジオタクティックプロピレン重合体(A)100〜50重量部と、プロピレンから導かれる構成単位50mol%〜100mol%と、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる一種以上から導かれる構成単位を0〜50mol%を含むプロピレン系重合体(B)(但し、合計して100mol%)からなる。
以下、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)、並びに、成分(A)および成分(B)から構成されるフィルムについて順次説明する。
シンジオタクティックプロピレン重合体(A)
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、プロピレンから導かれる構成単位を90mol%〜100mol%と、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる一種以上から導かれる構成単位を0mol%〜10mol%とを含むプロピレン重合体(但し、合計して100mol%)である。該シンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、前記した要件[1]および[2]を満たす限りは、ホモポリプロピレンであっても、プロピレン・炭素原子数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)ランダム共重合体であっても、プロピレンブロック共重合体であってもよいが、好ましくはホモポリプロピレン、あるいはプロピレンと炭素原子数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)ランダム共重合体である。
ここで、炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。なお本発明に係るシンジオタクティックプロピレン重合体(A)は通常、プロピレンから導かれる構成単位を90mol%以上100mol%以下と、炭素原子数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位を0mol%以上10mol%以下とを含むプロピレン重合体(但し、構成単位の合計は100mol%である。)であり、好ましくはプロピレンから導かれる構成単位を91mol%以上100mol%以下と、炭素原子数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位を0mol%以上9mol%以下とを含むプロピレン重合体(但し、構成単位の合計は100mol%である。)であり、さらに好ましくはプロピレンから導かれる構成単位を92mol%以上100mol%以下と、炭素原子数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位を0mol%以上8mol%以下とを含むプロピレン重合体(但し、構成単位の合計は100mol%である。)である。
なお、本発明に係るシンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体である場合には、プロピレンから導かれる構成単位を92.0〜99.9mol%、および炭素原子数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位を0.1〜8.0mol%の量で、好ましくはプロピレンから導かれる構成単位を93.0〜99.9mol%、および炭素原子数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位を0.1〜7.0mol%、更に好ましくはプロピレンから導かれる構成単位を94.0〜99.9mol%、および炭素原子数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)から導かれる構成単位を0.1〜6.0mol%の量で含有していることが好ましい。これらのシンジオタクティックプロピレン重合体(A)のうちでも耐熱性等の点から、ホモポリプロピレンがさらに好ましい。
本発明に係わるシンジオタクティックプロピレン重合体(A)は下記要件[1]および[2]を同時に満たすことを特徴としている。
[1] 13C−NMRにより測定されるシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr分率)が85%以上である。
[2] n-デカン可溶部量が1(wt%)以下である。
以下各要件について詳説する。
要件 [1]
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、NMR法により測定したシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr分率、ペンタッドシンジオタクティシテー)が85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは94%以上であるものであり、rrrr分率がこの範囲にあるシンジオタクティックプロピレン重合体は成形性、耐熱性と透明性に優れ、結晶性のポリプロピレンとしての特性が良好で好ましい。なおrrrr分率の上限は特にはないが通常100%未満であり、好ましくは99%以下である。
シンジオタクティックペンタッド分率(rrrr分率)は、13C−NMRスペクトルにおけるPrrrr(プロピレン単位が5単位連続してシンジオタクティック結合した部位における第3単位目のメチル基に由来する吸収強度)およびPw (プロピレン単位の全メチル基に由来する吸収強度)の吸収強度から下記式(1)により求められる。
rrrr分率(%)=100×Prrrr/Pw …(1)
NMR測定は、たとえば次のようにして行われる。試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして日本電子製GX−500型NMR測定装置を用い、120℃で13C−NMR測定を行う。積算回数は、10,000回以上とする。
rrrr分率がこの範囲にあるシンジオタクティックプロピレン重合体は成形性、耐熱性と機械特性に優れ、結晶性のポリプロピレンとしての特性が良好で好ましい。
要件 [2]
シンジオタクティックプロピレン重合体(A)のn-デカン可溶部量が1(wt%)以下、好ましくは0.8(wt%)以下、さらに好ましくは0.6(wt%)以下である。このn-デカン可溶部量はシンジオタクティックプロピレン重合体乃至これから得られる成形体のブロッキング特性に密接した指標であり、通常n-デカン可溶部量が少ないということは低結晶性成分量が少ないことを意味する。すなわち、要件[2]を満たすシンジオタクティックプロピレン重合体(A)、あるいは該成分(A)を含む組成物は極めて良好な耐ブロッキング特性を備えるのである。
プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)
本発明に係るプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、プロピレンから導かれる構成単位50mol%〜100mol%と、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる一種以上から導かれる構成単位を0〜50mol%を含むプロピレン系重合体(B)(但し、合計して100mol%)である。炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、前記シンジオタクティックプロピレン重合体(A)の説明で述べたα−オレフィンが挙げられる。プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)としては、例えば、本出願人によって出願公開されているWO2006/123759号パンフレットに記載されているような公知の重合体をそのまま用いることができる。または、アイソタクティック構造またはアタクティック構造を有するプロピレン・α-オレフィン共重合体を用いることもできる。
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン重合体(A)とプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)からなるフィルムには、発明の目的を損なわない範囲で、耐候安定剤、耐熱安定剤、耐電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、透明核剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を必要に応じて配合されていてもよい。また本発明に係るシンジオタクティックプロピレン重合体(A)とプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)からなるフィルムの成形性さらに付与させる目的で、特定の任意成分である核剤を含んでも良い。この場合、例えば核剤はジベンジリデンソルビトール系核剤、リン酸エステル塩系核剤、ロジン系核剤、安息香酸金属塩系核剤等である。添加剤または核剤の配合量は特に制限はないが、プロピレン系重合体組成物100重量部に対して通常0.1〜1重量部程度である。
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン重合体(A)とプロピレン・α-オレフィン共重合体(B)からなるフィルムには、必要に応じてポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレンまたはスチレン系エラストマーを含んでもよい。その場合の配合量は、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して、通常30重量部以下、好ましくは20重量部以下である。
成分(A)および成分(B)から構成されるフィルム
本発明に係る、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)100〜50重量部、好ましくは100〜70重量部、更に好ましくは100〜90重量部と、プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)0〜50重量部、好ましくは0〜30重量部、更に好ましくは0〜20重量部〔ただし、(A)と(B)との合計は100重量部である)からなる組成物を公知の方法、例えば、スラリー相、溶液相または気相による連続式またはバッチ式に多段重合する方法、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボブレンダー、タンブラブレンダー等で各成分を混合する方法、あるいは混合後に一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混合後、造粒あるいは粉砕する方法を採用して製造した後に、シート、未延伸または延伸フィルムなどの成形体に変換することができる。
成形方法としては、押出成形、プレス成形、カレンダー成形、などの公知の成形法が任意に採用される。押出成形する場合は、従来公知の押出装置および成形条件を採用することができ、例えば単軸スクリュー押出機、混練押出機、ラム押出機、ギヤ押出機などを用いて、溶融した組成物を特定のダイスから押し出すことにより所望の形状に成形することができる。
延伸フィルムは、上記のような押出シートまたは押出フィルム(未延伸)を、例えばテンター法(縦横延伸、横縦延伸)、同時二軸延伸、一軸延伸法などの公知の延伸方法により延伸して得ることができる。
シートまたは未延伸フィルムを延伸する際の延伸倍率は、二軸延伸の場合は通常1.2〜50、また一軸延伸の場合は通常1.2〜50倍程度、好ましくは1.2〜10倍程度である。延伸によって、厚み5〜200μm、好ましくは10〜200μm程度、より好ましくは10〜100μmの延伸フィルムを得ることができる。
本発明のフィルム、好ましくは光学フィルムは、100μm厚みで測定した全光線透過率が90%以上、好ましくは92%以上である。本発明のフィルムの好ましい態様においては、前記全光線透過率能(全光線透過率)に加えて、500μm厚みで測定した時の、波長310〜380nm範囲の光線透過率が、70%以上、好ましくは80%以上であるという特徴を備える。これはシンジオタクティックプロピレン重合体(A)ならびプロピレン・α-オレフィン重合体(B)からなる本発明のフィルムは、炭素原子と水素原子のみから構成される分子骨格を有しているので波長310〜380nmでの吸収が極めて少ないと考えられる。それに対して、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートの原料であるフェノール類やテレフタル酸は芳香環構造を有しており、また残存モノマーなどの影響により低波長側領域での吸収バンドが存在しそれが要因で光線透過率の低下が起こる。このようなことからも炭化原子および水素原子からなる本発明のフィルム、好ましくは光学フィルムは、公知の他熱可塑性樹脂に比べて光学特性上優位であるといえる。なお、必要に応じて紫外線吸収剤を用いて紫外領域の透過率を調整することも行われる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系などの吸収剤を制限なく用いることができる。
本発明のフィルム、好ましくは光学フィルムは、針侵入温度が145℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは153℃以上、さらに好ましくは155℃以上であるという特徴を備える。
針侵入温度(TMA測定により求められる軟化点ということがある)は以下のように測定することができる。すなわち、セイコー社製SS−120または、TA Instrument社製Q−400を用いて、任意の厚み(0.05mmt〜1mmt程度)のフィルムまたはシート試験片を用いて、昇温速度5℃/minで1.8mmφの平面圧子に2Kgf/cmの圧力をかけ、TMA曲線より、針侵入温度(℃)を求める。
針侵入温度がこの範囲にあるフィルム、好ましくは光学フィルムは、耐熱性に優れ、また透明性を損なわずに、耐熱性、材料強度など優れる。
本発明のフィルム、好ましくは光学フィルムにおける位相差の波長依存性に関して、波長が550nmの位相差Re(550nm)と波長が450nmの位相差Re(450nm)の比、〔Re(450nm)〕/〔Re(550nm)〕、並びに、波長が550nmの位相差Re(550nm)と波長が650nmの位相差Re(650nm)の比、〔Re(650nm)〕/〔Re(550nm)〕が0.90〜1.10、好ましくは0.95〜1.05、さらに好ましくは0.97〜1.02である。すなわち本発明のフィルムは、位相差の波長依存性が小さいため光学特性に優れる。(ここで示した位相差はすべて50μmに換算した値である)
本発明のフィルム、好ましくは光学フィルムの、波長が589nmにおける位相差(Re、50μmに換算)は、無延伸フィルムについては通常、0〜100nm、好ましくは0〜80nmであり、延伸フィルムの、波長が589nmにおける位相差(Re、50μmに換算)は通常10〜1000nm、好ましくは10〜500nm、さらに好ましくは10〜300nmである。
本発明のフィルム、好ましくは光学フィルムの、下記式で算出される位相差の温度変化率(D)は、通常−20〜10%、好ましくは−12〜8%である。
Figure 2009242666
ここでRe(30℃)とは30℃での波長が589nmにおける位相差(Re、50μmに換算)であり、Re(100℃)とは100℃での波長が589nmにおける位相差(Re、50μmに換算)である。
本発明のフィルム、好ましくは光学フィルムの光弾性係数は通常、−10×10−12/Pa〜+10×10−12/Pa、好ましくは−5×10−12/Pa〜+5×10−12/Pa、さらに好ましくは−3×10−12/Pa〜+3×10−12/Paの範囲にある。
上述のような光学特性を有する材料からなるフィルムは、位相差フィルムなどに用いるときに好適である。一定の位相差を有するフィルムを得るためには延伸前の位相差と延伸倍率、延伸温度などにより制御できる。一般的には延伸倍率が大きいほど位相差の絶対値が大きくなり、位相差フィルムでは1/2λや1/4λになるよう位相差を制御する。また、光弾性係数が小さいことは外力や残留応力による複屈折の変化が小さいことを意味しており、延伸後のフィルム面内での位相差のバラツキは小さくなる。従って、光学弾性係数の小さい材料は延伸後の均一性に優れるており好ましい。
[実施例]
次に本発明を実施例に基づき詳述に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。本発明において採用した分析方法は以下の通りである。
[m1] 重合体中のエチレン含量、プロピレン含量とα−オレフィン含量
日本電子製JNM GX-400型NMR測定装置を用いた。試料0.35gをヘキサクロロブタジエン 2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)濾過した後、重水素化ベンゼン 0.5mlを加え内径10mmのNMRチューブに装入して、120℃で13C−NMR測定を行う。積算回数は8000回以上とする。得られた13C−NMRスペクトルにより、重合体中のエチレン含量、プロピレン含量とα−オレフィン含量を定量した。
[m2] 極限粘度([η])〕
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した値である。すなわち造粒ペレット約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求める。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
[m3] 融点(Tm)、結晶化温度(Tc)
パーキンエルマー社製示差走査熱量測定装置 DSCPyris1またはDSC7を用い、窒素雰囲気下(20ml/min)、約5mgの試料を200℃まで昇温・10分間保持した後、10℃/分で30℃まで冷却した時の結晶化ピーク頂点から結晶化温度Tcを算出した。また、30℃で5分間保持した後、10℃/分で200℃まで昇温させた時の結晶溶融ピークのピーク頂点から融点を算出した。
[m4] 立体規則性(rrrr)
立体規則性(rrrr)は13C−NMRスペクトル測定から算出した。
[m5] ノルマルデカン可溶部量
サンプル5gにn−デカン200mlを加え、145℃で30分間加熱溶解した。約3時間かけて、20℃まで冷却させ、30分間放置した。その後、析出物(n−デカン不溶部)をろ別した。ろ液を約3倍量のアセトン中に入れ、n−デカン中に溶解していた成分を析出させた。析出物をアセトンから濾別し、その後乾燥した。なお、ろ液側を濃縮乾固しても残渣は認められなかった。n−デカン可溶部量は、以下の式によって求めた。
n−デカン可溶部量(wt%)=[析出物重量/サンプル重量]×100
[m6] フィルムの膜厚
マイクロメーターを用いて測定した。
[m7] 針進入温度(TMA測定による軟化温度)
JIS K7196に準拠し、厚さ0.1mmの試験片を用いて、昇温速度5℃/minで1.8mmφの平面圧子に2Kgf/cm2の圧力をかけ、TMA曲線より、軟化温度(℃)を求めた。
[m8] 全光線透過率
波長550nmにおける全光線透過率は、JIS K7105 「5.5.2 測定法A」に従い分光光度計に積分球を設置し、フィルムを積分球入り口に設置し測定した。
[m9] 複屈折(光弾性係数)
厚さ1mmの試験片を用いて、動的複屈折測定装置にて測定した。なお測定は文献:日本レオロジー学会誌、Vol.9、93(1991)に記載の条件に基づいて実施した。
[m10] 位相差(Re)、複屈折(Δn)
大塚電子(株)製測定装置RETS−100を用いて測定した。同装置では偏光光学系を用いてサンプル通過後の変更解析を行うことによってサンプルの位相差(傾斜角0°時の位相差)を求めた。また測定部のフィルム厚みを測定することで複屈折を算出した。
〔合成例1〕
―シンジオタクティックプロピレン重合体(A1)の製造―
充分に窒素置換した内容量500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、プロピレンを150リットル/時間の量で流通させ、25℃で20分間保持させておいた。一方、充分に窒素置換した内容量30mlの枝付きフラスコにマグネチックスターラーを入れ、これにメチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al=1.53mol/l)を5.00mmol、次いでジベンジルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液5.0μmolを加え、20分間攪拌した。この溶液を、プロピレンを流通させておいたガラス製オートクレーブのトルエンに加え、重合を開始した。プロピレンガスを150リットル/時間の量で連続的に供給し、常圧下、50℃で10分間重合を行った後、少量のメタノールを添加し重合を停止した。ポリマー溶液を大過剰のメタノールに加え、ポリマーを析出させ、80℃で12時間、減圧乾燥を行った結果、ポリマー6.95gが得られた。重合活性は7.58kg-PP/mmol-Zr・hrであり、得られたポリマーの[η]は1.6dl/g、Tm=154/160℃であり、rrrr分率=94%であった。この操作を繰り返して、必要量のポリマーを得て実施例に使用した。
〔合成例2〕
―プロピレン・α−オレフィン共重合体(B1)の製造―
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、833mlの乾燥ヘキサン、1-ブテン120gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を60℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.33MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.63MPaに調整した。次いで、ジ(p-クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温60℃、系内圧力を0.63MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、97gであり、135℃デカリン中で測定した[η]=2.2(dL/g)であった。得られたポリマーについて測定した物性を表1に示す。
―シンジオタクティックプロピレン重合体(A2)―
シンジオタクティックプロピレン重合体(A2)として、Total社製シンジオタクティックポリプロピレン(商品名;FINAPLAS1471、MFR=4.0g/10min)
―ランダムプロピレンポリマー(C1)―
ランダムプロピレンポリマー(C1)として、プライムポリマー社製ランダムプロピレンポリマー(商品名:F327、MFR=7.0)を用いた。
合成例1で得られたシンジオタクティックポリプロピレン(A1)100重量部に対して、トリ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートを0.2重量部に配合する。しかる後に株式会社プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT−30(スクリュー径30mm、L/D=46)を用い、設定温度230℃、樹脂押出量3kg/hrで造粒してペレットとした。造粒ペレットを試料として、サーモ・プラスチック株式会社製単軸押出機(スクリュー径20mmφ・L/D=28)にコートハンガー式T型ダイス(リップ形状;270×0.8mm)を装着して ダイス温度=200℃条件下、ロール温度30℃、巻き取り速度1.0m/minで成形を行い厚み=102μmのフィルムを得た。
合成例1で得られたシンジオタクティックポリプロピレン(A1)75重量に、合成例2で得られたプロピレン・α−オレフィン共重合体(B1)25重量部に対して、トリ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートを0.2重量部に配合する。しかる後に株式会社プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT−30(スクリュー径30mm、L/D=46)を用い、設定温度230℃、樹脂押出量3kg/hrで造粒してペレットとした。造粒ペレットを試料として、サーモ・プラスチック株式会社製単軸押出機(スクリュー径20mmφ・L/D=28)にコートハンガー式T型ダイス(リップ形状;270×0.8mm)を装着して ダイス温度=200℃条件下、ロール温度30℃、巻き取り速度1.0m/minで成形を行い厚み=91μmのフィルムを得た。
〔比較例1〕
Total社製シンジオタクティックポリプロピレン(A2)(商品名;FINAPLAS1471、MFR=4.0g/10min)を試料として、サーモ・プラスチック株式会社製単軸押出機(スクリュー径20mmφ・L/D=28)にコートハンガー式T型ダイス(リップ形状;270×0.8mm)を装着して ダイス温度=200℃条件下、ロール温度30℃、巻き取り速度1.0m/minで成形を行い厚み=100μmのフィルムを得た。
〔比較例2〕
プライムポリマー社製ポリプロピレン(C1)(商品名:F327、MFR=7.0)を試料としてサーモ・プラスチック株式会社製単軸押出機(スクリュー径20mmφ・L/D=28)にコートハンガー式T型ダイス(リップ形状;270×0.8mm)を装着して ダイス温度=200℃条件下、ロール温度30℃、巻き取り速度1.0m/minで成形を行い厚み=102μmのフィルムを得た。
Figure 2009242666
Figure 2009242666
延伸による位相差の発現性に優れ且つ光弾性係数が小さく、複屈折の波長依存性が小さく、さらには複屈折の温度依存性が小さい位相差フィルムが提供される。

Claims (7)

  1. シンジオタクティックプロピレン重合体(A)100〜50重量部と、
    プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)0〜50重量部〔ただし、(A)と(B)との合計は100重量部である)からなることを特徴とするフィルム。
    ここで、シンジオタクティックプロピレン重合体(A)は、
    プロピレンから導かれる構成単位90mol%〜100mol%と、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる一種以上から導かれる構成単位を0〜10mol%を含むプロピレン系重合体(但し、合計して100mol%)であって、下記の要件[1]かつ[2]を満たし、
    [1] 13C−NMRにより測定されるシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr)が85%以上である。
    [2] n-デカン可溶部量が1(wt%)以下である。
    プロピレン・α-オレフィン共重合体(B)は、
    プロピレンから導かれる構成単位50mol%〜100mol%と、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる一種以上から導かれる構成単位を0〜50mol%を含むプロピレン系重合体(但し、合計して100mol%)である。
  2. 100μm厚みの全光線透過率が90%以上であり、かつ針進入温度(TMA)が145℃〜170℃であり、且つ厚みが10〜200μmであることを特徴とする請求項1記載のフィルム
  3. 光学フィルムであることを特徴とする、請求項1または2に記載のフィルム。
  4. 少なくとも1軸方向に延伸されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム。
  5. 位相差フィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム。
  6. 30℃〜100℃の位相差の温度変化率が20%以下であることを特徴とする請求項5記載の位相差フィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のフィルムが装着されている液晶表示装置。
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