JP2009226852A - インクジェット記録装置および記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】浸透性の記録媒体に描画しても、滲まず、記録媒体がカールしないインクジェット記録方法および装置を提供することを目的とする。
【解決手段】色材とSP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤を含有する水性インクを用いて記録媒体104上に画像を形成するインクジェット記録装置100であって、中間転写媒体102を搬送する中間転写媒体搬送手段120と、前記中間転写媒体102に対して水性インクを吐出するインク打滴手段110と、記録媒体104を搬送する記録媒体搬送手段126と、中間転写媒体102上に形成された画像を記録媒体104に転写する転写手段114と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【選択図】図1

Description

本発明は、インクジェット記録装置および記録方法に係り、特に、高沸点溶媒を使用したインクを用いたインクジェット記録方法および装置に関する。
高画質の画像を、紙の種類を選ばずに印刷できる方式にオフセット印刷方式があり、これらの特長を有したオンデマンド印刷への要求が高まっている。オンデマンド印刷方法として、インクジェット方式がある。しかし、インクジェット方式は低粘度の液体しか使用できないため、インクには多量の溶剤を含有することになる。特に水性インクでは、水分や親水性高沸点溶剤が記録メディアに浸透することで、記録メディアの変形(カール・カックル)を引き起こすため、主に受像層を有する専用紙が用いられていた。
普通紙でも高画質な画像形成を行うため、下記の特許文献1では、疎水性高沸点溶剤の使用が提案されている。これらの方式は、処理液とインクを有し、主成分を水以外の高沸点低極性溶媒とすることで吐出安定化、高画質化および紙のカール抑制を狙っている。
特開2007−161753号公報
しかし、特許文献1に記載のインクは低揮発性の溶剤を多量に含んでいるため、処理液と顔料が反応して凝集物が生成した時に、紙面に残存した溶剤で凝集物が移動するというドット移動現象が発生するため画質の低下を引き起こしていた。また、記録媒体に一定量の水分と、高沸点溶剤が浸透するため、特に非塗工紙、計量コート紙、微塗工紙では記録メディアの変形(カール・カックル)を引き起こしていた。描画後の乾燥工程は紙の収縮を引き起こすため、画像変形の原因となっていた。そのため、従来の方法では、A1〜A2コート紙以外の紙に記録を行うことは困難であった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、浸透性の記録媒体に描画しても、滲まず、記録媒体がカールしないインクジェット記録方法および装置を提供することを目的とする。
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、色材と、SP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤と、を含有する水性インクを用いて記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録装置であって、中間転写媒体を搬送する中間転写媒体搬送手段と、前記中間転写媒体に対して前記水性インクを吐出するインク打滴手段と、記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段と、前記中間転写媒体上に形成された画像を前記記録媒体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
請求項1によれば、水性インクの溶媒としてSP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤を用い、さらに中間転写媒体を介した中間転写方式により画像の記録を行っている。高沸点溶剤は、中間転写媒体上で乾燥されず、記録媒体に転写されるため、溶剤の種類を調整する必要がある。SP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤を用いることにより、中間転写媒体から記録媒体に転写された際に記録媒体の変形を引き起こさず、記録媒体でのカールの発生を抑制することができる。
ここで、SP値とは溶剤の溶解度パラメーター(Solubility Parameter)を意味する。本発明において、SP値30以下と表現し、下限値が規定されていない。一般に、SP値が小さくなると水溶性ではなくなる。本発明において、高沸点有機溶剤を水溶性と規定することで実質的にSP値の下限が規定されている。したがって、SP値30以下の水溶性高沸点有機溶剤と表現し、下限を規定していない。
また、ここで「流動性低下」とは、堀場製作所製粒径測定器LA−920で、水希釈した場合の体積平均粒径が、100%以上増加していることを意味する。
請求項2は請求項1において、前記水性インクと接触することにより反応する処理液を、前記中間転写媒体上に付与する処理液付与手段を備えることを特徴とする。
請求項2によれば、処理液付与手段を備えているため、中間転写媒体に塗出された水性インクを凝集させ、色材の移動を防止することができる。
請求項3は請求項1または2において、前記中間転写媒体上に付与された前記水性インクまたは前記処理液の少なくともいずれかを加熱する加熱手段を備えることを特徴とする。
請求項3によれば、加熱手段を備え、水性インクを付与後または処理液を付与後、乾燥または半乾燥を行うことができる。したがって、溶媒を除去することができるので、カールの発生を抑制することができる。また、水性インクまたは処理液を固体状または半固溶状とすることができる。これにより、色材の凝集物と溶媒とに容易に分離することができる。また、記録媒体の乾燥促進を図ることができるので、短時間での定着が可能であり、高速印字を実現することができる。
なお、「乾燥、又は半乾燥する」とは固体状又は半固溶状とすることを意味し、以下に定義する含水率が0〜70%の範囲のものを言うものとする。
Figure 2009226852
請求項4は請求項2または3において、前記処理液中に酸発生剤を含有し、前記中間転写媒体上に付与された前記処理液に活性エネルギー源を照射するエネルギー照射手段を備えることを特徴とする。
請求項4によれば、エネルギー照射手段を備え、処理液中に含まれる酸発生剤に活性エネルギーを照射することにより、酸を発生させることができる。したがって、この酸と水性インクを接触させることにより、凝集剤を形成させることができるので、色材の移動を防止することができる。
請求項5は請求項1から4いずれかにおいて、前記水性インク中に含まれるSP値が30以下の水溶性高沸点溶媒の含有量が10質量%以上45質量%以下であることを特徴とする。
請求項6は請求項2から5いずれかにおいて、前記処理液中に含まれるSP値が30以下の水溶性高沸点溶媒の含有量が10質量%以上35質量%以下であることを特徴とする。
請求項5および請求項6は、水性インク中および処理液中に含まれる水溶性高沸点溶媒の含有量を規定したものである。水溶性高沸点溶剤は、中間転写媒体に染み込まないため、凝集抑制や色材浮遊を引き起こすため、含有量を調整する必要がある。水溶性高沸点溶媒の含有量を上記範囲とすることにより、水溶性高沸点溶剤の乾燥防止効果によってインクジェットによる吐出性を良好にすると同時に、溶媒量が多くなることによって発生する凝集不良や色材浮遊の発生を防止することができる。
本発明の請求項7は前記目的を達成するために、色材と、SP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤と、を含有する水性インクを用いて記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録方法であって、中間転写媒体に対して前記水性インクを液滴化して打滴するインク打滴工程と、前記中間転写媒体上に形成された画像を記録媒体上に転写する転写工程と、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法を提供する。
請求項8は請求項7において、前記水性インクと接触することにより反応する処理液を、インク打滴工程の前、または、インク打滴工程の後に、前記中間転写媒体上に塗布する処理液付与工程を含むことを特徴とする。
請求項9は請求項7または8において、前記インク打滴工程後、または、前記処理液付与工程後の少なくともいずれかで、乾燥または半乾燥を行う乾燥工程を含むことを特徴とする。
請求項10は請求項7から9いずれかにおいて、前記インク打滴工程後、または、前記処理液付与工程後の少なくともいずれかで、エネルギー照射工程を含むことを特徴とする。
請求項7から10は、請求項1から4のインクジェット記録装置をインクジェット記録方法として展開したものである。請求項7から10のインクジェット記録方法によれば、請求項1から4と同様の効果を得ることができる。
本発明によれば、SP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤を用いて、中間転写方式により記録を行っているため、インク中の水分が記録媒体中に浸透することがないため、カールの発生を抑制することができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供することができる。
以下、添付図面に従って、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
まず、本発明で用いられる水溶性インク、処理液について説明し、次いで、本発明に係るインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法について説明する。
〔水性インクの説明〕
本発明で用いられる水性インク(以下、単に「インク」ともいう)は、溶媒不溶性材料として、色材(着色剤)である顔料やポリマー微粒子などを含有する。
溶媒不溶性材料の濃度は、吐出に適切な粘度20mPa・s以下を考慮して1wt%以上20wt%以下であることが好ましい。より好ましくは画像の光学濃度を得るために4wt%以上の顔料濃度である。
インクの表面張力は、吐出安定性を考慮して20mN/m以上40mN/mであることが好ましい。
インクに使用される色材は、顔料あるいは染料と顔料とを混合して用いることができる。処理液との接触時における凝集性の観点から、インク中で分散状態にある顔料の方がより効果的に凝集するため好ましい。顔料の中でも、分散剤により分散されている顔料、自己分散顔料、樹脂により顔料表面を被覆された顔料(マイクロカプセル顔料)、及び高分子グラフト顔料が特に好ましい。また、顔料凝集性の観点から、解離度の小さいカルボキシル基によって修飾されている形態がより好ましい。
マイクロカプセル顔料の樹脂は、限定されるものではないが、水に対して自己分散能又は溶解能を有し、かつアニオン性基(酸性)を有する高分子の化合物であるのが好ましい。この樹脂は、通常、数平均分子量が1,000〜100,000範囲程度のものが好ましく、3、000〜50、000範囲程度のものが特に好ましい。また、この樹脂は有機溶剤に溶解して溶液となるものが好ましい。樹脂の数平均分子量がこの範囲であることにより、顔料における被覆膜として、又はインク組成物における塗膜としての機能を十分に発揮することができる。
前記樹脂は、自己分散能あるいは溶解するものであっても、又はその機能が何らかの手段によって付加されたものであってもよい。例えば、有機アミンやアルカリ金属を用いて中和することにより、カルボキシル基、スルホン酸基、またはホスホン酸基等のアニオン性基を導入されてなる樹脂であってもよい。また、同種または異種の一又は二以上のアニオン性基が導入された樹脂であってもよい。本発明にあっては、塩基をもって中和されて、カルボキシル基が導入された樹脂が好ましくは用いられる。
本発明に用いる顔料としては、特に限定はされないが、具体例としては、オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。レッドまたはマゼンタ用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
本発明に用いられる水性インクには、処理液と反応する成分として、着色剤を含まないポリマー微粒子を添加することが好ましい。ポリマー微粒子は、処理液との反応によりインクの増粘作用、凝集作用を強め、画像品位の向上させることができる。特に、アニオン性のポリマー微粒子をインクに含有せしめることにより、安全性の高いインクが得られる。
処理液と反応して、増粘・凝集作用を起こすポリマー微粒子をインクに用いることにより、画像の品位を高めることができると同時に、ポリマー微粒子の種類によっては、ポリマー微粒子が記録媒体で皮膜を形成し、画像の耐擦性、耐水性をも向上させる効果を有する。
ポリマー微粒子の分散方法はエマルジョンに限定するものではなく、溶解していても、コロイダルディスパージョン状態で存在していてもよい。
ポリマー微粒子は、乳化剤を用いてポリマー微粒子を分散させたものであっても、また、乳化剤を用いないで分散させたものであってもよい。乳化剤としては、通常、低分子量の界面活性剤が用いられているが、高分子量の界面活性剤を乳化剤として用いることもできる。外殻がアクリル酸、メタクリル酸などにより構成されたカプセル型のポリマー微粒子(粒子の中心部と外縁部で組成を異にしたコア・シェルタイプのポリマー微粒子)を用いることも好ましい。
分散手法として、低分子量の界面活性剤を用いていないポリマー微粒子は、高分子量の界面活性剤を用いたポリマー微粒子、乳化剤を使用しないポリマー微粒子を含めてソープフリーラテックスと呼ばれている。例えば上記に記述した、スルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるブロックポリマー)を乳化剤として用いたポリマー微粒子もこれに含まれる。
本発明では、特にこのソープフリーラテックスを用いることが好ましく、ソープフリーラテックスは従来の乳化剤を用いて重合したポリマー微粒子にくらべ、乳化剤がポリマー微粒子の反応凝集や造膜を阻害したり、遊離した乳化剤がポリマー微粒子の造膜後に表面に移動し、顔料とポリマー微粒子の混合した凝集体と記録媒体との接着性を低下させる懸念がない。
インクにポリマー微粒子として添加する樹脂成分としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。
ポリマー微粒子への高速凝集性付与の観点から、解離度の小さいカルボン酸基を有するものがより好ましい。カルボン酸基はpH変化によって影響を受けやすいので、分散状態が変化しやすく、凝集性が高い。
ポリマー微粒子のpH変化に対する分散状態の変化は、アクリル酸エステルなどのカルボン酸基を有する、ポリマー微粒子中の構成成分の含有割合によって調整することができ、分散剤として用いるアニオン性の界面活性剤によっても調整可能である。
ポリマー微粒子の樹脂成分は、親水性部分と疎水性部分とを併せ持つ重合体であるのが好ましい。疎水性部分を有することで、ポリマー微粒子の内側に疎水部分が配向し、外側に親水部分が効率よく外側に配向され、液体のpH変化に対する分散状態の変化がより大きくなる効果があり、凝集がより効率よく行われる。
本発明に用いられる酸ポリマーはカルボン酸系の酸ポリマーが好ましく用いられる。
カルボン酸のpKaは概ね3〜4であるため、pH5であれば酸ポリマーはほとんど解離した状態であるので、電化反発により、分散安定性を有し、凝集を起こさない。これ以下であると、非解離状態となり、電化反発が失われ、凝集を起こす。
市販のポリマー微粒子の例としては、ジョンクリル537、7640(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、ジョンソンポリマー株式会社製)、マイクロジェルE−1002、E−5002(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001(アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE−1014(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン株式会社製)、ジュリマーET−410、FC−30(アクリル系樹脂エマルジョン、日本純薬株式会社製)、アロンHD−5、A−104(アクリル系樹脂エマルジョン、東亞合成株式会社製)、サイビノールSK−200(アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学株式会社製)、ザイクセンL(アクリル系樹脂エマルジョン、住友精化株式会社製)などが挙げられるが、これに限定するものではない。
顔料に対するポリマー微粒子添加量の重量比率は2:1から1:10が好ましい、より好ましくは1:1から1:3である。顔料に対するポリマー微粒子添加量の重量比率は2:1より少ないと、樹脂の融着による凝集体の凝集力が効果的に向上しない。また、添加量が1:10より多くてもインクの粘度が高くなりすぎ、吐出性などが悪化する。
インクに添加するポリマー微粒子の分子量は融着したときの付着力を鑑みて、5,000以上が好ましい。5,000未満だと、凝集したときのインク凝集体の内部凝集力向上や記録媒体に画像の定着性に効果が不足し、また画質改善効果が不足する。
ポリマー微粒子の体積平均粒子径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜500nmの範囲がより好ましく、20〜200nmの範囲が更に好ましく、50〜200nmの範囲が特に好ましい。10nm以下では、凝集しても画質の改善効果、転写性の向上に効果があまり期待できない。1μm以上では、インクのヘッドからの吐出性や保存安定性が悪化するおそれがある。また、ポリマー粒子の体積平均粒子径分布に関しては、特に制限は無く、広い体積平均粒子径分布を持つもの、又は単分散の体積平均粒子径分布を持つもの、いずれでもよい。
また、ポリマー微粒子を、インク内に2種以上混合して含有させて使用してもよい。
本発明に用いられるインクに添加するpH調整剤としては中和剤として、有機塩基、無機アルカリ塩基を用いることができる。pH調整剤はインクジェット用インクの保存安定性を向上させる目的で、該インクジェット用インクがpH6〜10となるように添加するのが好ましい。
本発明に用いられるインクは、乾燥によってインクジェットヘッドのノズルが詰まるのを防止し、さらに、記録媒体に溶剤が浸透し、カールの発生を防止する目的から、SP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤を含有することが好ましい。SP値が30より大きいとカール抑制効果が不十分となる。また、SP値の下限は水溶性を示す範囲であれば良く、好ましくはSP値の範囲は、20〜28の範囲である。このような水溶性高沸点有機溶剤には、湿潤剤及び浸透剤が含まれる。
このような、SP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤としては、GP−250(SP値:25)(三洋化成工業(株)製)、50−HB−200(21)(三洋化成工業(株)製)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(22.4)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(21.5)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(21.1)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(21.3)、ジプロピレングリコール(27.2)、
Figure 2009226852
Figure 2009226852
Figure 2009226852
Figure 2009226852
Figure 2009226852
nCO(AO)−H(AO=EO又はPOで比率は1:1)(20.1)(EO=エチレンオキシ)、nCO(AO)10−H(AO=EO 又は POで比率は1:1)(18.8)、HO(A’O)40−H(A’O=EO又はPOで比率はEO:PO=1:3)(18.7)、HO(A”O)55−H(A”O=EO又はPOで比率はEO:PO=5:6)(18.8)、HO(PO)H(24.7)、HO(PO)H(21.2)、1,2ヘキサンジオール(27.4)、トリプロピレングリコール(24.74)などを挙げることができる。ただし、本発明はこれらに限定されない。なお、カッコ内の数値はSP値を示している。なお、本発明でいう水溶性高沸点有機溶剤のSP値(溶解度パラメーター)とは、分子凝集エネルギーの平方根で表される値で、R.F.Fedors,Polymer Engineering Science,14,p147(1974)に記載の方法で計算することができる。単位は(MPa)1/2であり、25℃における値を指す。また、SP値が低い溶剤のうち、下記の構造が含まれていることが好ましい。
Figure 2009226852
水性インク中のSP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤の含有量は、10質量%以上45質量%以下であることが好ましく、より好ましくは12質量%以上20質量%以下である。上記範囲とすることにより、着弾干渉、画像変形、小ドットの白抜け再現性が特に好ましく、更には、形成した画像の光堅牢性も良好となる。含有量が10質量%より小さいと水性インク中の他の溶剤が増えるため乾燥が困難となり、記録媒体に溶剤も転写されてしまい、カールが発生しやすくなる。また、インクジェットヘッドのノズルが乾燥で詰まり易くなるため好ましくない。含有量が45質量%より大きいと、水分が少なくなるため凝集不良が発生し易くなる。また、高沸点有機溶剤が中間転写媒体上に残り色材浮遊が発生し易くなる。
本発明に用いられるインクには、界面活性剤を含有することができる。
界面活性剤の例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系、シリコーン系の界面活性剤も用いることができる。これら表面張力調整剤は消泡剤としても使用することができ、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も使用することができる。
表面張力を下げて固体状又は半固溶状の凝集処理層上でのぬれ性を高め、拡がり率を増加させることができる。
本発明に用いられるインクの表面張力は、中間転写方式によって記録を行う際の中間転写媒体上でのぬれ性と液滴の微液滴化および吐出性の両立の観点からは、15〜45mN/mであることが更に好ましい。
本発明に用いられるインクの粘度は、1.0〜20.0cPであることが好ましい。
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
〔処理液の説明〕
本発明においては、水性インクの流動性を低下させる組成物として、処理液をインク打滴工程の前または後に付与することが好ましい。処理液を付与することにより、水性インクに含有される色材を凝集して凝集物を生じさせることにより流動性を低下させ、滲みを防止することができる。
本発明に用いられる処理液は、少なくとも水、流動性低下剤、及び必要に応じてSP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤を含んでいる。
水性インクの流動性を低下させる組成物として、インクのpHを変化させることにより、水性インクに含有される色材を凝集して凝集物を生じさせる液体組成物を挙げることができる。このとき、液体組成物のpHは1〜6であることが好ましく、pHは2〜5であることがより好ましく、pHは3〜5であることが特に好ましい。液体組成物の成分の中でも、酸、カチオン性化合物により凝集物を生じさせる液体組成物として、無機酸では、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、が好ましく用いられ、特にリン酸、ホウ酸が好ましく用いられる。
また、有機酸では、脂式カルボン酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、が好ましく用いられる。特に、蟻酸、酢酸が好ましく用いられる。
また、芳香族カルボン酸として、サリチル酸、没食子酸、安息香酸、フタル酸、ケイ皮酸、メリト酸、が好ましく用いられ、特にサリチル酸、フタル酸が好ましく用いられる。
また、上記に加えて、シュウ酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、アミノ酸、L−アスコルビン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、CSA、リン酸類、が特に好ましく用いられる。
さらに本発明で用いる化合物が−COOHなどの酸性基を有している場合は、無機塩基(例、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属、亜鉛、アルミニウム、バリウム、スズ、ニッケル、コバルト、ストロンチウムなどの多価金属、アンモニアなど)又は有機塩基(例、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミンなど)と塩を形成してもよい。
これらの組成物の処理液への添加量として、1〜60質量%、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは7〜20質量%の範囲の量で処理液中に存在させることができる。
これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
酸、カチオン性化合物により凝集物を生じさせる液体組成物に換えて、酸発生剤により凝集物を生じさせることができる。酸発生剤の中でも、光を照射することで酸を発生する光酸発生剤としてレジスト、紫外線硬化カチオンインク等で一般的に使用される光酸発生剤が好ましく用いられる。また、熱を加えることで酸を発生する熱酸発生剤として三新化学工業(株)製のTAG等が好ましく用いられる。
これらの酸発生剤の処理液への添加量として、1〜60質量%、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは7〜20質量%の範囲の量で処理液中に存在させることができる。
また、上記液体組成物、酸発生剤を添加せず、極性が低い溶媒を添加することにより、ソルベントショックを利用して凝集させることもできる。このような溶剤として、炭素数が6〜20の炭化水素溶媒を挙げることができ、例えば、ヘキサン・デカン・ドデカンなどを挙げることができる。具体的には、アイソパーC〜M(エクソン化学(株)製)などを使用することができる。
これらの炭化水素の処理液への添加量として、10〜100質量%、好ましくは50〜97質量%、より好ましくは60〜95質量%の範囲の量で処理液中に存在させることができる。
また、記録媒体のカールの発生を抑制するため、処理液中にもSP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤を含むことが好ましい。処理液中にSP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤を含有することにより、記録媒体のカールの発生を抑制することができる。SP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤を添加しないと、他の有機溶剤が増えるため、中間記録媒体に浸透しきれない溶剤が記録媒体に転写され、記録媒体に浸透するためカールが発生する場合がある。
SP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤としては、上記水性インクに用いることができるSP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤と同様のものを用いることができる。水溶性高沸点有機溶剤は、水、その他の有機溶剤と共に単独もしくは複数を混合して用いることができる。また、添加量としては5〜90質量%、好ましくは10〜35質量%、より好ましくは12〜30質量%の範囲の量で処理液中に存在させることができる。
処理液には、定着性および耐擦性を向上させるため、樹脂成分をさらに含有してもよい。樹脂成分は、処理液をインクジェット方式によって打滴する場合ヘッドからの吐出性を損なわないもの、保存安定性があるものであればよく、水溶性樹脂や樹脂エマルジョンなどを自由に用いることができる。
樹脂成分としては、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ビニル系、スチレン系等が考えられる。定着性向上といった機能を充分に発現させるには、比較的高分子のポリマーを高濃度1質量%〜20質量%に添加することが必要である。しかし、上記材料を液体に溶解させて添加しようとすると高粘度化し、吐出性が低下する。適切な材料を高濃度に添加し、かつ粘度上昇を抑えるには、ラテックスとして添加する手段が有効である。ラテックス材料としては、アクリル酸アルキル共重合体、カルボキシ変性SBR(スチレン−ブタジエンラテックス)、SIR(スチレン−イソプレン)ラテックス、MBR(メタクリル酸メチル−ブタジエンラテックス)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンラテックス)、等が考えられる。ラテックスのガラス転移点温度Tgはプロセス上、定着時に影響の強い値で、常温保存時の安定性と加熱後の転写性を両立するために、50℃以上120℃以下であることが好ましい。さらに最低造膜温度MFTはプロセス上、定着時に影響の強い値で、低温で充分な定着を得る為に100℃以下、さらに好ましくは50℃以下である。
インクと逆極性のポリマー微粒子を処理液に含ませ、インク中の顔料及びポリマー微粒子と凝集させることによってさらに凝集性を高めてもよい。
また、インクに含まれるポリマー微粒子成分に対応した硬化剤を処理液に含有し、二液が接触後、インク成分中の樹脂エマルジョンが凝集するとともに架橋又は重合するようにして、凝集性を高めてもよい。
本発明に係る処理液は、界面活性剤を含有することができる。
界面活性剤の例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系、シリコーン系の界面活性剤も用いることができる。これら表面張力調整剤は消泡剤としても使用することができ、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も使用することができる。
表面張力を下げて画像形成体(記録媒体、中間転写媒体など)上でのぬれ性を高めるのに効果がある。また、インクを先立って打滴する場合においてもインク上でのぬれ性を高め、二液の接触面積の増加により効果的に凝集作用がすすむ。
本発明に係る処理液の表面張力は、10〜50mN/mであることが好ましく、直接記録を行う場合には浸透性記録媒体への浸透性、また中間転写方式によって記録を行う場合には、中間転写媒体上でのぬれ性と液滴の微液滴化および吐出性の両立の観点からは、15〜45mN/mであることが更に好ましい。
本発明に係る処理液の粘度は、1.0〜20.0cPであることが好ましい。
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線、吸収剤、等も添加することができる。
〔インクジェット記録装置〕
次に、本発明に係るインクジェット記録装置の一実施形態として、本発明に係るインクジェット記録方法が適用されたインクジェット記録装置について説明する。
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置の概略構成図である。図1に示すインクジェット記録装置100は、2液凝集方式及び転写記録方式が適用され、水性インク及び処理剤を用いて中間転写媒体102上にインク凝集体(色材凝集体)からなるインク画像を形成し、中間転写媒体102上に形成されたインク画像を記録媒体104に転写する記録装置である。
インクジェット記録装置100は、図1に示すように、中間転写媒体102上に液体状の処理液を付与する処理液付与部106と、中間転写媒体102上に付与された処理液を加熱して乾燥させる加熱乾燥部108と、中間転写媒体102上に複数色のインクを液滴化して打滴する印字部(インク打滴部)110と、処理液中の光酸発生剤にエネルギー源を照射するエネルギー照射部111と、中間転写媒体102上の液体溶媒(インク及び処理液の液体成分)を除去する溶媒除去部112と、中間転写媒体102上に形成されたインク画像を記録媒体104に対して転写を行う転写部114とから主に構成される。
図1に示す中間転写媒体102には無端状ベルトが適用され、中間転写媒体(無端状ベルト)102は複数の張架ローラ(図1には7つの張架ローラ120A〜120Gを図示)に巻きかけられた構造を有し、張架ローラ120A〜120Gの少なくとも1つにモータ(図1中不図示)の動力が伝達されることにより、中間転写媒体102は、図1において反時計回り方向(図1中、矢印Aで示す方向)に駆動される。
中間転写媒体(無端状ベルト)102は、印字部110と対向する表面(画像形成面)102Aの少なくとも1次画像(インク画像)が形成される画像形成領域(不図示)は、所定の平坦性を有する水平面(フラット面)をなすように構成されている。
図1には、中間転写媒体102の一態様として無端状のベルトを示したが、本発明に適用される中間転写媒体はドラム形状でもよいし、平板形状でもよい。
中間転写媒体102に用いられる好ましい材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂等の公知の材料が挙げられる。具体的にはシリコーンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、ウレタンゴムや、デュポン社製カルレッツ、信越化学工業性Sifelなどの公知の材料が挙げられる。
また、中間転写媒体102の表面層の表面張力は10mN/m以上40mN/m以下とする態様が好ましい。中間転写媒体102の表面層の表面張力を40mN/m以上とすると、1次画像が転写される記録媒体104との表面張力差がなくなり(または、極めて小さくなり)、インク凝集体の転写性が悪化する。更に、中間転写媒体102の表面層の表面張力が10mN/m以下であると、凝集処理液のぬれ性を考慮した場合に、凝集処理液の表面張力を中間転写媒体102の表面層の表面張力よりも小さくする必要があり、凝集処理液の表面張力を10mN/m以下とすることが困難となり、中間転写媒体102及び凝集処理液の設計自由度(選択範囲)が狭くなる。また、描画前にコロナ処理で表面張力を低下させることも有効である。
なお、中間転写媒体102の表面層に表面粗さ(Ra)0.3μm程度の凹凸があると、インク液滴やインク凝集体の移動が抑制される効果があり、好ましい。
処理液付与部106は、中間転写媒体搬送方向(図1中、矢印Aで示す方向)最上流側に配置され、塗布ローラ106A、及び処理液が収容される塗布液容器106Bを含んで構成される。塗布ローラ106Aは中間転写媒体102に対して従動して回転するか、独立して塗布ローラ106Aが駆動し回転制御可能となっている。このように、塗布ローラ106Aが回転することによって、塗布液容器106B内に収容される処理液が中間転写媒体102の画像形成面102Aに塗布される。
中間転写媒体102に対する凝集処理液の塗布厚は、0.5〜20μmの範囲で設定することが好ましい。塗布厚0.5μm以下では液切れによる膜不均一性が生じやすく品質上の問題となる。また、塗布厚20μm以上で乾燥工程におけるエネルギー付加が大きくなり、また、面状も悪くなる。
処理液の塗布厚を制御するには、塗布ローラ106Aと中間転写媒体102との接触時間を制御する態様が好ましい。塗布ローラ106Aと中間転写媒体102との接触時間を相対的に長くすると凝集処理液の塗布厚は相対的に大きくなり、塗布ローラ106Aと中間転写媒体102との接触時間を相対的に短くすると処理液の塗布厚は相対的に小さくなる。
塗布ローラ106Aには、多孔質材料や表面に凹凸がある材料が望ましく、例えば、グラビアロール状のもの等を用いることができる。
図1には、処理液の付与形態の一態様として、塗布ローラ106Aを用いる態様を例示したが、処理液の付与形態は本例に限定されず、ブレードによる塗布、インクジェットヘッドによる打滴など様々な方式を適用することが可能である。特に、インクジェット方式の場合、記録画像(画像データ)に応じて処理液を正確にパターンニングして付与することができ、後段に配置される加熱乾燥部108の加熱時間の短縮や加熱エネルギーの削減が可能となる。
図1においては、処理液付与部106は印字部110の上流側に設けられているが、印字部110の下流側に設置することも可能である。印字部110の下流側に設置することにより、インクジェットで印字された箇所にのみ処理液を付与すれば良く、付与量を低減することができる。
処理液付与部106の中間転写媒体搬送方向下流側に配置され加熱乾燥部108は、中間転写媒体102の画像形成面102Aの裏面102B側に設けられたヒータ(図5中不図示)を含んで構成され、処理液が付与された中間転写媒体102を裏面102B側からヒータで加熱された熱風を吹き付けることによって中間転写媒体102上の凝集処理液を乾燥する構成となっている。
加熱乾燥部108に配置されるヒータの加熱温度は、処理液の種類、処理液の付与量(厚み)、環境温度などの諸条件に応じて設定され、加熱乾燥部108を通過した中間転写媒体102上には固体状又は半固溶状の処理層が形成される。
例えば、処理液付与部106に配置される塗布ローラ106Aよって中間転写媒体102上に約10μmの膜厚で処理液を塗布した後、加熱乾燥部108のヒータによる70℃の熱風乾燥を行うことにより、中間転写媒体102上に約4μmの固体状又は半固溶状の凝集処理層を形成することができる。
なお、加熱乾燥部108として、ヒータで加熱した熱風を用いて乾燥する方法について説明したが、本発明はこれに限定されず、直接ヒータを用いて加熱する、赤外線により加熱する方法などが挙げられる。
また、図1では、処理液付与部106の下流側に加熱乾燥部108を設けているが、加熱乾燥部の位置は限定されず、下記に示す印字部110の下流側、エネルギー照射部111の下流側に設けることもできる。また、エネルギー照射部111の下流側に設け、溶媒除去部と兼ねることもできる。
図1では、中間転写媒体102上に処理液を付与して、中間転写媒体102上の処理液を加熱により乾燥させて、中間転写媒体102上に固体状又は半固溶状の処理層を形成する態様を例示したが、本発明の実施に際して本例に限定されず、中間転写媒体102上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤を直接付与する態様もある。
中間転写媒体102上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤を直接付与する態様としては、例えば、流動浸漬法、静電煙霧法、溶射法、静電乾式吹き付け法、散布法などの公知の粉体散布方法を用いることができる。また、開閉式の蓋の設けられた開口部を有し、且つ、内部に粉体(固体状又は半固溶状の凝集処理剤)を貯蔵することが可能な容器などを用いて粉体を散布することも可能である。このとき、転写媒体通過時のみ蓋を開き、転写媒体上に粉体を散布し、非使用時には蓋を閉じ、粉体が散布されないように調節する制御手段などを備えて粉体の散布を精密に制御することも可能である。
加熱乾燥部108の中間転写媒体搬送方向下流側に配置される印字部110は、中間転写媒体搬送方向に沿って上流側から、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の各色に対応したインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)110C、110M、110Y、110Kが順に設けられる。各ヘッド110C、110M、110Y、110Kから中間転写媒体102の画像形成面102Aに対してそれぞれ対応する色インクが液滴化され打滴される。
本例では、各ヘッド110C、110M、110Y、110Kの各ノズルから吐出されるインク液滴の最小打滴量(吐出体積)は2plであり、最高記録密度(最高ドット密度)は主走査方向(中間転写媒体搬送方向と直交する方向)及び副走査方向(中間転写媒体搬送方向)のいずれも1200dpiである。
また、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
インク貯蔵/装填部122は、各ヘッド110C、110M、110Y、110Kに対応する色インクを貯蔵するインクタンク(図5中不図示)を含んで構成され、各インクタンクは所要の流路を介してそれぞれ対応するヘッドと連通されている。また、インク貯蔵/装填部122は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字部110の中間転写媒体搬送方向下流側に配置されるエネルギー照射部111は、メタルハライドランプまたは紫外線LEDなどを含んで構成され、処理液中に光酸発生剤を含んでいる場合に、エネルギー源を照射することにより、酸を発生させ、印字部110で付与された色材を凝集させることができる。したがって、エネルギー照射手段を用いる場合は、インクの付与後、速やかにエネルギー源の照射を行うことが好ましい。速やかに行うことで、色材の凝集物を速やかに形成することができるので、色材の滲みを防止することができる。
なお、図1においては、印字部110の搬送方向下流側にエネルギー照射手段を設けたが、処理液付与部106または加熱乾燥部108の搬送方向下流側に設けることも可能である。上記箇所に設けることにより、インクが付与される前に酸を発生させることができるので、印字部110でインクが付与されると、接触した部分から反応し、色材の凝集体を形成することができるので、滲みを防止することができる。
溶媒除去部112は、中間転写媒体搬送方向に関してエネルギー照射部111より下流側に配置され、溶媒吸収ローラ112Aを含んで構成される。本例の溶媒吸収ローラ112Aは、中間転写媒体102を挟んでローラ120Bに対向する位置に設けられている。溶媒吸収ローラ112Aは、ローラ状の多孔質体(吸収体)で構成される。溶媒除去部112では、溶媒吸収ローラ112Aを中間転写媒体102上の液体溶媒(インク及び処理液の溶媒成分)に接触させて、多孔質体の毛細管力により多孔質体内部に当該液体溶媒を吸収させることによって、中間転写媒体102上から液体溶媒を除去する。
溶媒吸収ローラ112Aは、中間転写媒体102の移動(搬送)に応じて従動回転させてもよいし、独立して回転させるようにしてもよい。また、中間転写媒体102の画像形成面102Aから離間可能となるように構成されていることが好ましい。
溶媒吸収ローラ112Aの表面(中間転写媒体102の画像形成面102Aと接触する面)の表面エネルギーは中間転写媒体102の画像形成面102Aの表面エネルギーよりも小さいことが好ましく、本例では、溶媒吸収ローラ112Aには表面エネルギーが30mN/m以下の部材が適用される。
上述した表面エネルギーの条件を満たす溶媒吸収ローラ112Aを用いて溶媒除去を行うことにより、溶媒吸収ローラ112Aへの色材付着を防止しつつ、中間転写媒体102上の液体溶媒を吸収除去することが可能となる。
なお、溶媒吸収ローラ112Aに代えて、エアナイフで余剰な溶媒を中間転写媒体102から取り除く方式などを適用してもよい。
溶媒吸収ローラ112Aによって中間転写媒体102の画像形成面102A上の溶媒を吸収除去する態様では、中間転写媒体102上に多くの溶媒が残存する場合でも、他の方式に比べて短時間で多量の溶媒を除去することができるため、後段の転写部114で記録媒体104に多量の溶媒(分散媒)が転写されることはない。したがって、記録媒体104として紙類が用いられるような場合でも、カール、カックルといった問題が発生しない。
また、溶媒除去部112を用いてインク凝集体から余分な溶媒を除去することによって、インク凝集体を濃縮し、より内部凝集力を高めることができる。これにより、転写部114による転写工程までにより強い内部凝集力をインク凝集体に付与することができる。更に、溶媒除去によるインク凝集体の効果的な濃縮により、記録媒体104に画像を転写した後も良好な定着性や光沢性を画像に付与することができる。
なお、溶媒除去部112によって、中間転写媒体102上の溶媒すべてを除去する必要は必ずしもない。過剰に除去しすぎてインク凝集体を濃縮しすぎるとインク凝集体の中間転写媒体102への付着力が強くなりすぎて、転写に過大な圧力を必要とするため好ましくない。むしろ転写性に好適な粘弾性を保つためには、少量残留させることが好ましい。
中間転写媒体102上の溶媒を少量残留させることで得られる効果として、次のことが挙げられる。即ち、インク凝集体は疎水性であり、揮発しにくい溶媒成分(主にグリセリンなどの有機溶剤)は親水性であるので、インク凝集体と残留溶媒成分は溶媒除去実施後に分離し、残留溶媒成分からなる薄い液層がインク凝集体と中間転写媒体との間に形成される。したがって、インク凝集体の中間転写媒体102への付着力は弱くなり、転写性向上に有利である。
上述した溶媒除去の制御は、溶媒吸収ローラ112Aの中間転写媒体102への押圧を変化させることで可能である。溶媒除去量を相対的に多くする場合には、溶媒吸収ローラ112Aの中間転写媒体102への押圧を大きくし、溶媒除去量を相対的に少なくする場合には、溶媒吸収ローラ112Aの中間転写媒体102への押圧を小さくすればよい。
また、吸収特性の異なる複数の溶媒吸収ローラを備え、溶媒除去量に応じて使用する溶媒吸収ローラを選択的に切り替える態様も可能である。
図1に示すインクジェット記録装置100には、溶媒除去部112と転写部114の間に予備加熱部124が設けられる。予備加熱部124は、中間転写媒体102の画像形成面102Aの裏面102B側に設けられたヒータ(図5中不図示)を含んで構成され、1次画像(インク画像)が形成された中間転写媒体102を裏面102B側からヒータによって予備加熱する構成となっている。本例の予備加熱部124には、平板加熱ヒータが好適に用いられる。また、本例では、中間転写媒体102の外部にヒータを配置した構成を示したが、中間転写媒体102にヒータを内蔵する態様も可能である。
予備加熱部124に配置されるヒータの加熱温度範囲は40〜80℃であり、転写時の加熱温度よりも低く設定される。中間転写媒体102の画像形成領域を予備加熱することで、予備加熱を行わない場合に比べて転写部114の加熱温度を低く設定することが可能となり、更に、転写部114の転写時間を少なくすることができる。
予備加熱部124では、中間転写媒体102の画像形成面102Aの温度(画像が形成されている領域の温度)がインクに含まれるポリマー微粒子のガラス転移点温度Tgを超える温度となるように、加熱温度が設定されることが好ましい。本例では、加熱温度は120℃に設定される。
予備加熱部124の中間転写媒体搬送方向下流側に配置される転写部114は、ヒータ(図5中不図示)を有した転写加熱ローラ114Aと、これに対向して配置される加熱加圧ニップ用の加熱対向ローラ114Bとを含んで構成され、これらローラ114A、114B間に中間転写媒体102と記録媒体104とを挟み込み、所定の温度で加熱しながら、所定の圧力(ニップ圧力)で加圧することにより、中間転写媒体102上に形成された1次画像を記録媒体104に転写する構成となっている。
転写部114による加熱温度(転写温度)は80℃〜170℃が好ましく、転写性の観点から100℃〜150℃がさらに好ましい。転写部114による加熱温度が170℃以上になると、中間転写媒体102の変形等の問題があり、一方、80℃以下になると転写性が悪化するという問題がある。
転写部114によるニップ圧力は1.5〜2.0MPaが好ましい。転写部114における転写時のニップ圧力を調整するための手段としては、例えば、転写加熱ローラ114Aを図5の上下方向(符号Cで図示)に移動させる機構(駆動手段)が挙げられる。即ち、転写加熱ローラ114Aを加熱対向ローラ114Bから離れる方向に移動させるとニップ圧力は小さくなり、加熱対向ローラ114Bに近づく方向に移動させるとニップ圧力は大きくなる。
記録媒体104を転写部114へ供給する給紙部126の構成としては、ロール紙(連続用紙)のマガジンを備える態様、或いは、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給する態様がある。ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッターが設けられており、該カッターによってロール紙は所望のサイズにカットされる。紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンやカセットを併設してもよい。
複数種類の記録媒体を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
本例に適用される記録媒体104の具体例を挙げると、普通紙、インクジェット専用紙などの浸透性媒体、コート紙などの非浸透性又は低浸透性の媒体、裏面に粘着剤と剥離ラベルの付いたシール用紙、OHPシートなどの樹脂フィルム、金属シート、布、木など様々な媒体がある。特に本発明においては、SP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤を用いているので、記録媒体104への溶剤の浸透を防止することができるので、様々な記録媒体に対応することができる。
転写部114の中間転写媒体搬送方向下流側に冷却部128が配置される態様が好ましい。冷却部128は、転写部114を通過して中間転写媒体102と記録媒体104が張り合わさった状態のものを冷却する。冷却部128には、冷却ファン等で冷気を送風する態様が適用され、冷却温度等を調整可能であることが好ましい。本例に示す冷却部128は、所望の温度まで冷却するための中間転写媒体102の移動時間(冷却時間)が確保されている構成となっている。中間転写媒体102と記録媒体104とを冷却後に剥離することで、温度ムラ等に起因した転写不良を防止することができ、安定した画像の転写(剥離)が可能となる。
冷却部128の中間転写媒体搬送方向下流側には剥離部130が配置される。剥離部130は、中間転写媒体102の剥離ローラ120Eの巻き付け曲率によって、記録媒体104自身の剛性(腰の強さ)で中間転写媒体102から記録媒体104を剥離するように構成されている。剥離部130には、剥離爪等の剥離を促進させる手段を併用してもよい。
剥離部130の記録媒体搬送方向(図1中、矢印Bで示す方向)下流側には定着部132が配置される。定着部132は、100℃〜180℃の範囲で温度調整可能な加熱ローラ対132Aを含んで構成され、加熱ローラ対132Aの間に挟みこまれた記録媒体104を加熱加圧しながら、記録媒体104に転写された画像を定着させる。
定着部132の加熱温度は、インクに含有されるポリマー微粒子のガラス転移点温度などに応じて設定することが好ましい。本例では、定着部132の加熱温度は130℃に設定される。また、定着部132のニップ圧力は0.01〜3.0MPaとする態様が好ましい。なお、転写部114にて画像の転写と定着を両立させることができれば、定着部132を省略する態様も可能である。
剥離部130の中間転写媒体搬送方向下流側にはクリーニング部134が配置される。クリーニング部134は、記録媒体104への画像転写が後の中間転写媒体102をクリーニングする手段として、中間転写媒体102の画像形成面102Aに当接しながら転写後残留物(インク凝集体など)を払拭除去するブレード(図1中不図示)と、除去された転写後残留物を回収する回収部(図1中不図示)とを含んで構成される。
なお、中間転写媒体102から転写後残留物を除去するクリーニング手段の構成は、上記の例に限らず、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、粘着ロール方式或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
上述したように、図1に示すインクジェット記録装置100は、処理液付与部106、加熱乾燥部108、印字部110、エネルギー照射部111、溶媒除去部112、転写部114の順で記録を行う装置を示したが、例えば、次のような順番で装置を構成することができる。
1)処理液付与部 → 印字部 → 加熱乾燥部 → エネルギー照射部 → 溶媒除去部 → 転写部
2)印字部 → 処理液付与部 → 加熱乾燥部 → エネルギー照射部 → 溶媒除去部 → 転写部
3)加熱部 → 処理液付与部 → 加熱乾燥部 → 印字部 → 加熱乾燥部 → 溶媒除去部 → 転写部
上記3)のように、処理液付与部の上流に加熱部を設けることができる。加熱部を設けることにより、処理液の低沸点成分の乾燥を早めることができ、効率的な乾燥が可能となり、装置の小型化・消費電力の低下が見込まれる。また、加熱によって処理液とインクの反応速度が向上する場合があり、印刷速度を高速化することができる。加熱部としては、加熱ローラ、温風、赤外線を用いて行うことができ、温度は諸条件に応じて適宜、設定することが可能であるが中間転写媒体を50℃以上180℃以下に加熱することが好ましい。
なお、本発明は、これらの順番に限定されず、処理液中に光酸発生剤を含まない場合は、エネルギー照射部を省略することもできる。また、加熱乾燥部は設けなくてもよいし、処理液付与部、印字部のそれぞれの後に設けることもできる。
次に、上述したインクジェット記録装置100の動作について説明する。
図1において、中間転写媒体102が中間転写媒体搬送方向(図1中、矢印Aで示す方向)に搬送されつつ、まず、処理液付与部106の塗布ローラ106Aによって処理液が中間転写媒体102上に塗布される(処理液付与工程)。続いて、加熱乾燥部108によって中間転写媒体102上の凝集処理液を加熱により乾燥させて、中間転写媒体102上に固体状又は半固溶状の凝集処理層が形成される(乾燥工程)。上述したように、中間転写媒体102上に固体状又は半固溶状の処理剤が直接付与される場合もある。
次に、印字部110の各ヘッド110C、110M、110Y、110Kによって各色のインク液滴が打滴される(インク打滴工程)。処理液中にインクのpHを変化させることにより色材の凝集物を生じさせる液体組成物、熱酸発生剤、極性の低い溶媒を含んでいる場合は、中間転写媒体102上に形成された固体状又は半固溶状の処理層上にインク液滴が着弾すると瞬時に処理層との接触面から凝集反応が開始され、処理層上には所定の大きさに広がったインク凝集体(色材凝集体)が形成される。インク凝集体が形成された後、中間転写媒体102上に形成された固体状又は半固溶状の処理層はインク凝集体と分離したインク溶媒の作用によって溶解するが、上述したように所定の大きさに広がったインク凝集体は中間転写媒体102との間で十分な付着力を得ることができる。この結果、中間転写媒体102上での色材移動を防止することができる。
また、処理液中に光酸発生剤を含有する場合は、次のエネルギー照射部111によってエネルギー源が照射され、酸を発生し、色材の凝集体を形成することができる。
次に、溶媒除去部112の溶媒吸収ローラ112Aによって中間転写媒体102上の液体溶媒(インク及び凝集処理液の溶媒成分)が吸収除去される。上述したように、インク凝集体(色材凝集体)からなるドットは中間転写媒体102との間で十分な付着力を得ることができるので、溶媒吸収ローラ112Aに対する色材付着を防止することができる。
このように色材移動や色材付着が防止されつつ、中間転写媒体102上にインク凝集体からなるインク画像が形成された後、予備加熱部124により中間転写媒体102上のインク画像が所定の温度に加熱され(予備加熱工程)、転写部114により中間転写媒体102上に形成されたインク画像が記録媒体104に転写される(転写工程)。
転写工程が行われた後、剥離部130によって中間転写媒体102から剥離された記録媒体104は定着部132の加熱ローラ対132Aによって挟まれながら加熱加圧されることによって転写されたインク画像の定着が行われる(定着工程)。
本実施形態において、上述したように、転写部114と剥離部130の間に冷却部128が設けられていることが好ましい。記録媒体104の剥離性を向上させることが可能となる。
剥離部130から記録媒体104が剥離された中間転写媒体102は、クリーニング部134において転写後残存物の除去が行われる(クリーニング工程)。以後、上述した各工程が順次繰り返される。
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[記録媒体]
王子製紙(株)製 「OKエバーライト」(商品名)を用いた。
[処理液およびインクの調整]
<付与液A>
処理液は下記の物質を下記の配合量で攪拌混合することにより調整した。
・GP−250 15g
・マロン酸 10g
・界面活性剤1(下記化合物) 1g
・イオン交換水 74g
Figure 2009226852
調整後の処理液のpHを、東亜DKK(株)製pHメーターWM−50EGにて測定したところpHは3.5であった。
インクは、以下の方法により調整した。
チバ・スペシャリティーケミカルズ社のCromophtal Jet Magenta DMQ(PR-122)10g、分散用ポリマー10g、およびイオン交換水30gを攪拌混合させて分散液を調整した。次いで、超音波照射装置(SONICS社製 Vibra-cell VC-750、テーパーマイクロチップ:φ 5mm、Ampitude:30%)を用いて、分散液に超音波を間欠照射(照射0.5s/休止1.0s)で2時間照射して顔料を更に分散させ、20質量%顔料分散液とした。
上記分散液とは別に、下記の物質を攪拌混合して、混合液Iを調整した。
・GP−250 20g
・オルフィンE1010(日信化学工業製) 1g
・イオン交換水 10g
この混合液Iを、攪拌した44%SBR分散液(ポリマー微粒子:アクリル酸3質量%、Tg:30℃)19.0gにゆっくりと滴下して、攪拌混合し、混合液IIを調整した。また、この混合液IIを、上述の20%顔料分散液に、ゆっくりと滴下しながら攪拌混合して、マゼンタインク100gを調整した。
<付与液B〜H、a〜c>
上記製法で、GP−250の量を変更してインク・処理液を調整した。さらに溶媒種を変更してインク・処理液を調整した。調整したインク・処理液の溶媒の組成比、用いた流動性低下剤を表1に示す。なお、流動性低下剤、水溶性高沸点有機溶剤の添加量はイオン交換水の添加量を調整することにより行った。
Figure 2009226852
上記付与液を図1に示した転写方式の記録方法であるインクジェット記録装置100と同等のシステムを用いて次のような方法で実験を行った。
本発明の実施例としてSifelの中間転写媒体上に処理液を10μmの膜厚で塗布し、加熱乾燥部のヒータをオンにして70℃の熱風乾燥により中間転写媒体上に4μmの固体状又は半固溶状の凝集処理層を形成した。その後、インク液滴を、吐出量(体積)2pl、ノズル密度1200npiのインクジェットヘッド2つを中間転写媒体搬送方向に配列して打滴した。次に、ウレタンスポンジの溶媒吸収ローラで溶媒の除去を行い、予備加熱部のヒータをオンにして130℃で中間転写媒体の裏側から中間転写媒体を加熱した。そして、中間転写媒体と記録媒体を温度130℃、圧力1.7MPaの条件で、ローラで挟み込み転写を行った。最後に記録媒体を、150℃、圧力0.15MPaに設定した加熱で挟み込み加熱加圧しながら。記録媒体に転写された画像の定着を行った。
なお、実施例1のように付与液Aを用い処理液なしの構成の実施例は表1中の付与液Aの組み合わせで、処理液を付与しない、つまり、インクのみ付与したことを示す。また、付与液Cは、流動性低下剤として、光酸発生剤を用いているため、インクジェットによるインク打滴の後に、活性エネルギー源としてIntegration Technology社のLEDZero 395/020H を使用し、紫外線を照射した。
また、比較例として直接描画方式よる印字をおこなった。まず、記録媒体上に処理液ヘッドにより処理液が全面に5μmの厚みで供給されるように打滴した。処理液が付与された記録媒体は、60℃の渡し胴、70℃の熱風にて1秒で乾燥を行い、記録媒体上に固体状または半固溶状の凝集処理剤層を形成した。なお、比較例1においては、処理液を用いていないため、この処理を行わず、インクの打滴を行った。次に画像信号に応じてインクをヘッドから吐出して打滴を行った。インク吐出体積は2plで、記録密度は主走査・副走査方向共に、1200dpiで記録した。次に、25℃の渡し胴、70℃の熱風にて2秒乾燥、次に50℃の圧胴、70℃の熱風にて1秒乾燥、次に60℃の圧胴、70℃の熱風にて2秒乾燥を行い、インクの乾燥を行った。最後に画像形成された基材を圧胴60℃、ローラ110℃の温度で1MPaのニップ圧で加熱定着を行い、画像を形成した。
<評価>
(カールの評価)
画像を形成した記録媒体を5×50mmmに切断し、曲率を測定した。曲率(R)からカール値=10/Rを求め、以下の基準により評価を行った。
◎:カール値が0.5以下
○:カール値が0.5より大きく1.0以下
△:カール値が1.0より大きく2.0以下
×:カール値が2.0より大きい
(色材浮遊の評価)
記録媒体に形成された画像を、倍率40倍のルーペで観察し、以下の基準により評価を行った。
○:色材浮遊無
△:ドットが独立する
×:独立したドットが着弾位置から移動する
(にじみの評価)
記録媒体に形成された画像を、倍率40倍のルーペで観察し、異なるドット間での着弾干渉発生の有無を確認した。
Figure 2009226852
Figure 2009226852
転写方式を用い、SP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤を用いた実施例1〜3、実施例7〜12はカールがほとんど発生せず、色材浮遊も見られなかった。また、処理液を用いなかった実施例1、インク中のSP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤量の多い、実施例3、流動性低下剤として、極性の低い溶剤を用いた実施例7、酸発生剤を用いた実施例8においては、インクのにじみがやや見られたが問題ない程度であった。
これに対し、SP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤を用い、直接描画方式で画像を形成した比較例1、2においては、カールの発生が見られた。また、水溶性高沸点有機溶剤を用いることにより水分が減るため、凝集しにくく、にじみが発生していた。SP値が30を超えるグリセリンを用いた比較例3においては、グリセリンが乾燥されず転写されるため、また、溶媒の除去を行っても顔料微粒子に抱え込まれた溶剤は除去されず転写されるため、カールが発生していた。
また、SP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤の含有量を多くした実施例4〜6は液中の水分量が少なくなるため、凝集しにくく、にじみが発生していた。また、SP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤は、中間記録媒体に浸透しないため、インク付与時に溶剤が多く存在するため、ドットが独立していた。また、処理液中の溶剤量、水性インク中の溶剤量を増やした実施例6においては、カールが若干発生していたが問題無い程度であった。
以上より、転写方式の記録方法を用い、SP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤を用いて画像を形成することにより、カールの発生を抑制することができ、かつ、色材浮遊やにじみの発生の抑制をすることができた。
本発明に係るインクジェット記録装置の概略構成図を示す。
符号の説明
100…インクジェット記録装置、102…中間転写体、104…記録媒体、106…処理液付与部、108…加熱乾燥部、110…印字部、111…エネルギー照射部、112…溶媒除去部、114…転写部、120…張架ローラ、122…インク貯蔵/装填部、124…予備加熱部、126…給紙部、128…冷却部、130…剥離部、132…定着部、134…クリーニング部

Claims (10)

  1. 色材と、SP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤と、を含有する水性インクを用いて記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録装置であって、
    中間転写媒体を搬送する中間転写媒体搬送手段と、
    前記中間転写媒体に対して前記水性インクを吐出するインク打滴手段と、
    記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段と、
    前記中間転写媒体上に形成された画像を前記記録媒体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記水性インクと接触することにより反応する処理液を、前記中間転写媒体上に付与する処理液付与手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記中間転写媒体上に付与された前記水性インクまたは前記処理液の少なくともいずれかを加熱する加熱手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記処理液中に酸発生剤を含有し、前記中間転写媒体上に付与された前記処理液に活性エネルギー源を照射するエネルギー照射手段を備えることを特徴とする請求項2または3に記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記水性インク中に含まれるSP値が30以下の水溶性高沸点溶媒の含有量が10質量%以上45質量%以下であることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記処理液中に含まれるSP値が30以下の水溶性高沸点溶媒の含有量が10質量%以上35質量%以下であることを特徴とする請求項2から5いずれかに記載のインクジェット記録装置。
  7. 色材と、SP値が30以下の水溶性高沸点有機溶剤と、を含有する水性インクを用いて記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録方法であって、
    中間転写媒体に対して前記水性インクを液滴化して打滴するインク打滴工程と、
    前記中間転写媒体上に形成された画像を記録媒体上に転写する転写工程と、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
  8. 前記水性インクと接触することにより反応する処理液を、インク打滴工程の前、または、インク打滴工程の後に、前記中間転写媒体上に塗布する処理液付与工程を含むことを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録方法。
  9. 前記インク打滴工程後、または、前記処理液付与工程後の少なくともいずれかで、乾燥または半乾燥を行う乾燥工程を含むことを特徴とする請求項7または8記載のインクジェット記録方法。
  10. 前記インク打滴工程後、または、前記処理液付与工程後の少なくともいずれかで、エネルギー照射工程を含むことを特徴とする請求項7から9いずれかに記載のインクジェット記録方法。
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