JP2009007601A - 集熱機器用フェライト系ステンレス鋼材 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温水蒸気雰囲気においても、赤スケールが発生せず、耐水蒸気酸化性および熱伝導性が良好な集熱機器用フェライト系ステンレス鋼材を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.03%以下、Si:1.5%以下、Mn:0.5〜2.0%、S:0.005%以下、Cr:11〜20%、Al:0(無添加を含む)〜0.5%、N:0.03%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する。この成分組成の範囲内にて、A値=Si+Mn+Alとする(1)式においてA値≧1.5でかつB値=0.2(Cr−11)+0.5Mn+2Si+5Alとする(2)式においてB値≦3.5となるように合金成分を調整した薄肉状の集熱機器用フェライト系ステンレス鋼材である。
【選択図】なし
【解決手段】質量%で、C:0.03%以下、Si:1.5%以下、Mn:0.5〜2.0%、S:0.005%以下、Cr:11〜20%、Al:0(無添加を含む)〜0.5%、N:0.03%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する。この成分組成の範囲内にて、A値=Si+Mn+Alとする(1)式においてA値≧1.5でかつB値=0.2(Cr−11)+0.5Mn+2Si+5Alとする(2)式においてB値≦3.5となるように合金成分を調整した薄肉状の集熱機器用フェライト系ステンレス鋼材である。
【選択図】なし
Description
本発明は、400〜600℃の熱をエネルギーに利用するシステム、例えばスターリングエンジン、燃料電池、マイクロガスエンジン、マイクロガスタービン、排ガス発電およびその他コージェネレーションシステム等において、エネルギー効率の向上のために導入される排熱回収装置、熱交換器等の集熱機器で使用される集熱板、チューブまたはフィン等の材料として好適な集熱機器用フェライト系ステンレス鋼材に関する。
近年、石油を代表とする化石燃料の枯渇化、CO2排出による地球温暖化現象の問題から、従来の発電システムに替わる、例えばスターリングエンジン、燃料電池、マイクロガスエンジン、マイクロガスタービン、排ガス発電等のコージェネレーションシステムが実用化されつつある。
また、例えば自動車等の燃費向上のため、排気される排ガスの熱を回収する集熱機器を例えばマニホールドコンバータの後方等の排ガス経路部に設置するシステムが実用化されつつある。
熱交換器に代表されるこれらのシステムでは、熱源から発生する熱を高効率で回収し、回収した熱をそのままエネルギーとして利用したり、その回収した熱を電気や動力に変換してエネルギーとして利用したりすることで、エネルギー効率を向上させる。
これらのシステムは、最高温度が400〜600℃程度の排ガスが排出され、この排ガスで発生する熱を利用するもので、この排ガスは、一般にガスバーナやエンジン等の燃焼により生成したガスであり、集熱機器内は高温で水蒸気を多量に含む雰囲気となる。
また、これらのシステムは、運転と停止とが頻繁に繰り返され、それに伴って加熱と冷却とが頻繁に繰り返される環境である。
そこで、このような高温の使用環境での耐久性に優れた集熱機器用の材料が要求されている。
また、集熱機器用の材料としては、熱伝導性が高いほど好ましく、さらに、熱膨張性が低いほど好ましい。
そして、初期状態で集熱機器用の材料としての熱伝導性を確保できる材料として、フェライト系ステンレス鋼材が考えられ、このフェライト系ステンレス鋼材に関して成分組成を調整し、耐酸化性、耐食性、ろう付け性、成形性、高温強度を改善することで、集熱機器用の材料として使用したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特開平7−292446号公報(第2−4頁)
しかしながら、上述した特許文献1のフェライト系ステンレス鋼材では、使用環境として、高温な雰囲気のみ想定され、高温で水蒸気を多量に含む雰囲気は想定されていない。このような高温で水蒸気を多量に含む雰囲気にフェライト系ステンレス鋼材が曝されると、酸化の初期に赤スケールと呼ばれるFeリッチなスケールが発生し、この赤スケールがフェライト系ステンレス鋼材の強度や熱伝導性を低下させるので、集熱機器用の材料として耐水蒸気酸化性および熱伝導性が不十分となる。
この赤スケールの発生は、例えば構造材等のある程度の厚さ寸法を必要とするものであれば問題ない場合が多いが、通常、集熱機器用の材料に使用される0.5mm以下の薄い厚さ寸法のものでは、強度が著しく低下し、損傷の原因となる。
また、赤スケールが発生することで、赤スケール中の欠陥やクラックにより断熱層が形成されやすく、さらに、この赤スケールは金属より熱伝導性が低いことから、厚さ寸法が薄いほど、赤スケールに影響され、熱伝導性が低下してしまうので、耐水蒸気酸化性を向上させ、赤スケールの発生を防止する必要がある。
そこで、一般的に、耐水蒸気酸化性を向上させて赤スケールの発生を防止する手段として、Si,Alのような保護性に富んだ被膜を形成する元素を相当量含有させるが、これらSi,Alはフェライト系ステンレス鋼材の熱伝導性を低下させてしまうため、多量に含有させた鋼材を集熱機器に用いると、集熱機器の集熱効率が低下してしまう。
このように、高温水蒸気雰囲気であっても赤スケールが発生せず、耐水蒸気酸化性と熱伝導性とがいずれも良好な集熱機器用の材料は、これまで見出されていなかった。
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、高温水蒸気雰囲気であっても赤スケールが発生せず、耐水蒸気酸化性および熱伝導性が良好な集熱機器用フェライト系ステンレス鋼材を提供することを目的とする。
請求項1に記載された発明は、高温水蒸気雰囲気にて使用される薄肉状の集熱機器用フェライト系ステンレス鋼材であって、質量%で、C:0.03%以下、Si:1.5%以下、Mn:0.5〜2.0%、S:0.005%以下、Cr:11〜20%、Al:0(無添加を含む)〜0.5%、N:0.03%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、この成分組成に関して、A値=Si+Mn+Alとする(1)式で示されるA値が1.5以上でかつB値=0.2(Cr−11)+0.5Mn+2Si+5Alとする(2)式で示されるB値が3.5以下となるように合金成分が調整されたものである。
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の集熱機器用フェライト系ステンレス鋼材において、質量%で、Y:0.001〜0.1%、REM:0.001〜0.1%、Ca:0.001〜0.01%、Zr:0.03〜0.5%の少なくともいずれか一種を含むものである。
請求項3に記載された発明は、請求項1または2に記載の集熱機器用フェライト系ステンレス鋼材において、質量%で、Nb:0.05〜0.8%、Ti:0.03〜0.5%、Mo:0.1〜4.0%、Cu:0.1〜4.0%、W:0.1〜4.0%の少なくともいずれか一種を含むものである。
請求項4に記載された発明は、請求項1ないし3のいずれか一記載の集熱機器用フェライト系ステンレス鋼材において、JISR6001で規定される#50以上の粒度の研磨材で研磨仕上げされたものである。
請求項1に記載された発明によれば、規定した成分組成に関して、A値=Si+Mn+Alとする(1)式においてA値が1.5以上でかつB値=0.2(Cr−11)+0.5Mn+2Si+5Alとする(2)式においてB値が3.5以下となるように合金成分が調整されたことで、熱伝導性をほとんど損なわずに耐水蒸気酸化性を向上できるので、高温水蒸気雰囲気であっても赤スケールが発生せず、集熱機器用の材料として耐水蒸気酸化性および熱伝導性が良好なフェライト系ステンレス鋼材となる。
請求項2に記載された発明によれば、Y,REM,Ca,Zrの少なくともいずれか一種を規定した範囲内で含有させることで、フェライト系ステンレス鋼材の酸化皮膜中に固溶させて、酸化皮膜を強化できる。
請求項3に記載された発明によれば、Nb,Ti,Mo,Cu,Wの少なくともいずれか一種を規定した範囲内で含有させることで、Nb,Tiは析出硬化によって、Mo,Cu,Wは固溶強化によってフェライト系ステンレス鋼材の高温強度を向上できる。
請求項4に記載された発明によれば、JISR6001に記載される#50以上の粒度の研磨材で研磨仕上げされることで、Crの拡散速度を向上させ、Cr2O3の膜を確実に形成できるので、赤スケールの発生を抑制できる。
上述のように、高温水蒸気雰囲気においても赤スケールが発生せず、耐水蒸気酸化性および熱伝導率が良好な集熱機器用フェライト系ステンレス鋼材を、例えばスターリングエンジン、燃料電池、マイクロガスエンジン、マイクロガスタービン、排ガス発電およびその他コージェネレーションシステム等の集熱機器用の材料として適用することにより、エネルギー効率が向上でき、例えば環境問題の改善等につながると期待される。
以下、本発明における一実施の形態について詳細に説明する。なお、各元素の含有量は、特に記載しない限り質量%とする。
この一実施の形態のフェライト系ステンレス鋼材の各合金成分、および各合金成分の含有量について説明する。
[C:0.03%以下]
Cは、クリープ特性等の高温強度を改善する合金成分ではあるが、フェライト系ステンレス鋼材に過剰に含有させると、加工性、低温靭性を著しく低下させる。また、特にCが多量に含有されると、Cr系炭化物を生成しやすく、耐酸化性等に有効なCrを減少させることになる。したがって、Cの含有量は少ない方が好ましく、0.03%以下とする。
Cは、クリープ特性等の高温強度を改善する合金成分ではあるが、フェライト系ステンレス鋼材に過剰に含有させると、加工性、低温靭性を著しく低下させる。また、特にCが多量に含有されると、Cr系炭化物を生成しやすく、耐酸化性等に有効なCrを減少させることになる。したがって、Cの含有量は少ない方が好ましく、0.03%以下とする。
[Si:1.5%以下]
Siは、フェライト系ステンレス鋼材において、保護性に富んだ皮膜を形成し、Cr系酸化物の安定化に有効な合金成分であり、耐水蒸気酸化性の向上に有効な元素である。
Siは、フェライト系ステンレス鋼材において、保護性に富んだ皮膜を形成し、Cr系酸化物の安定化に有効な合金成分であり、耐水蒸気酸化性の向上に有効な元素である。
しかし、Siの含有量が1.5%を超えると、著しい熱伝導性の低下を引き起こすだけではなく、延性等の加工性を著しく低下させ、低温靭性も低下する。また、鋼表面に疵が生成されやすくなり、製造性も低下する。したがって、Siの含有量を1.5%以下とする。
[Mn:0.5〜2.0%]
Mnは、フェライト系ステンレス鋼材において、耐スケール剥離性を向上させる合金成分であり、熱伝導性の著しい低下を引き起こすことなく、赤スケールの発生を抑制する重要な元素である。
Mnは、フェライト系ステンレス鋼材において、耐スケール剥離性を向上させる合金成分であり、熱伝導性の著しい低下を引き起こすことなく、赤スケールの発生を抑制する重要な元素である。
このような効果は、Mnの含有量が0.5%以上で顕著になり、また、2.0%を超えると鋼材が硬質化し、加工性、低温靭性を低下させる。したがって、Mnの含有量を0.5〜2.0%とする。
[S:0.005%以下]
Sは、フェライト系ステンレス鋼材において、熱間加工性、耐溶接高温割れ性に悪影響を及ぼす合金成分であり、異常酸化の起点にもなる。そのため、Sの含有量は少ない方が好ましく、0.005%以下とする。
Sは、フェライト系ステンレス鋼材において、熱間加工性、耐溶接高温割れ性に悪影響を及ぼす合金成分であり、異常酸化の起点にもなる。そのため、Sの含有量は少ない方が好ましく、0.005%以下とする。
[Cr:11〜20%]
Crは、フェライト系ステンレス鋼材において、フェライト相を安定させると共に、ステンレス鋼に必要な耐食性、耐酸化性を付与する合金成分である。特に、400〜600℃程度での耐水蒸気酸化性を確保するためには、Crの含有量が11%以上である必要があり、含有量が多いほど耐食性、耐酸化性が向上する。しかし、Crの含有量が20%を超えると、鋼材の加工性、低温靭性、熱伝導性、および耐475℃脆化性を低下させる。したがって、Crの含有量を11〜20%とする。
Crは、フェライト系ステンレス鋼材において、フェライト相を安定させると共に、ステンレス鋼に必要な耐食性、耐酸化性を付与する合金成分である。特に、400〜600℃程度での耐水蒸気酸化性を確保するためには、Crの含有量が11%以上である必要があり、含有量が多いほど耐食性、耐酸化性が向上する。しかし、Crの含有量が20%を超えると、鋼材の加工性、低温靭性、熱伝導性、および耐475℃脆化性を低下させる。したがって、Crの含有量を11〜20%とする。
[Al:0(無添加を含む)〜0.5%]
Alは、フェライト系ステンレス鋼材において、保護性に富んだ皮膜を形成し、Cr系酸化物の安定化、またはアルミナ系酸化物としてコランダム型の単一層を形成し、赤スケールの発生を抑制する合金成分である。しかし、Alの含有量が0.5%を超えると、熱伝導性を著しく低下させ、また、加工性、低温靭性も著しく低下させる。したがって、Alの含有量を0(無添加を含む)〜0.5%とする。なお、成分組成によっては、Alが無添加でも、他の合金成分により赤スケールの発生を防止できる場合がある。
Alは、フェライト系ステンレス鋼材において、保護性に富んだ皮膜を形成し、Cr系酸化物の安定化、またはアルミナ系酸化物としてコランダム型の単一層を形成し、赤スケールの発生を抑制する合金成分である。しかし、Alの含有量が0.5%を超えると、熱伝導性を著しく低下させ、また、加工性、低温靭性も著しく低下させる。したがって、Alの含有量を0(無添加を含む)〜0.5%とする。なお、成分組成によっては、Alが無添加でも、他の合金成分により赤スケールの発生を防止できる場合がある。
[N:0.03%以下]
Nは、Cと同様に、クリープ特性等の高温強度を改善する合金成分ではあるが、フェライト系ステンレス鋼材に過剰添加すると、加工性、低温靭性を著しく低下させる。特にNが多量に含有されると、窒化物を形成しやすく、成形性を低下させることになる。
Nは、Cと同様に、クリープ特性等の高温強度を改善する合金成分ではあるが、フェライト系ステンレス鋼材に過剰添加すると、加工性、低温靭性を著しく低下させる。特にNが多量に含有されると、窒化物を形成しやすく、成形性を低下させることになる。
したがって、Nの含有量は少ない方が好ましく、0.03%以下とする。
[Y:0.001〜0.1%、REM:0.001〜0.1%、Ca:0.001〜0.01%、Zr:0.03〜0.5%]
Y,REM(希土類元素),Ca,Zrは、フェライト系ステンレス鋼材において、酸化皮膜中に固溶し、酸化皮膜を強化する合金成分であるので、耐水蒸気酸化性等の耐酸化性を向上できる。このような効果は、Yの含有量が0.001%以上、REMの含有量が0.001%以上、Caの含有量が0.001%以上、Zrの含有量が0.03%以上で顕著になる。しかし、0.1%を超える過剰量のY、0.1%を超える過剰量のREM、0.01%を超える過剰量のCa、0.5%を超える過剰量のZrを含有させると、鋼材が過度に硬質化するばかりではなく、製造時に表面疵が生じやすくなり、製造性も低下する。したがって、Yの含有量を0.001〜0.1%、REMの含有量を0.001〜0.1%、Caの含有量を0.001〜0.01%、Zrの含有量を0.03〜0.5%とし、必要に応じて、これらの少なくともいずれか一種を含有させる。
Y,REM(希土類元素),Ca,Zrは、フェライト系ステンレス鋼材において、酸化皮膜中に固溶し、酸化皮膜を強化する合金成分であるので、耐水蒸気酸化性等の耐酸化性を向上できる。このような効果は、Yの含有量が0.001%以上、REMの含有量が0.001%以上、Caの含有量が0.001%以上、Zrの含有量が0.03%以上で顕著になる。しかし、0.1%を超える過剰量のY、0.1%を超える過剰量のREM、0.01%を超える過剰量のCa、0.5%を超える過剰量のZrを含有させると、鋼材が過度に硬質化するばかりではなく、製造時に表面疵が生じやすくなり、製造性も低下する。したがって、Yの含有量を0.001〜0.1%、REMの含有量を0.001〜0.1%、Caの含有量を0.001〜0.01%、Zrの含有量を0.03〜0.5%とし、必要に応じて、これらの少なくともいずれか一種を含有させる。
[Nb:0.05〜0.8%、Ti:0.03〜0.5%]
NbおよびTiは、フェライト系ステンレス鋼材において、析出強化によって高温強度を向上させ、また、C、Nと炭窒化物を形成し、耐粒界腐食性を向上させる合金成分である。このような効果は、Nbの含有量が0.05%以上で、Tiの含有量が0.03%以上で顕著になる。しかし、0.8%を超える過剰量のNb、0.5%を超える過剰量のTiを含有させると、鋼材が過度に硬質化し、加工性、低温靭性を低下させる。したがって、Nbの含有量を0.05〜0.8%、Tiの含有量を0.03〜0.5%とし、必要に応じて、これらの少なくともいずれか一種を含有させる。
NbおよびTiは、フェライト系ステンレス鋼材において、析出強化によって高温強度を向上させ、また、C、Nと炭窒化物を形成し、耐粒界腐食性を向上させる合金成分である。このような効果は、Nbの含有量が0.05%以上で、Tiの含有量が0.03%以上で顕著になる。しかし、0.8%を超える過剰量のNb、0.5%を超える過剰量のTiを含有させると、鋼材が過度に硬質化し、加工性、低温靭性を低下させる。したがって、Nbの含有量を0.05〜0.8%、Tiの含有量を0.03〜0.5%とし、必要に応じて、これらの少なくともいずれか一種を含有させる。
[Mo:0.1〜4.0%、Cu:0.1〜4.0%、W:0.1〜4.0%]
Mo、Cu、Wは、フェライト系ステンレス鋼において、固溶強化によって高温強度を向上させる。このような効果は、Moの含有量が0.1%以上、Cuの含有量が0.1%以上、Wの含有量が0.1%以上で顕著になる。しかし、それぞれ4.0%を超える過剰量のMo、Cu、Wを含有させると、鋼材が過度に硬質化し、熱間加工性、加工性、低温靭性を低下させる。したがって、Moの含有量を0.1〜4.0%、Cuの含有量を0.1〜4.0%、Wの含有量を0.1〜4.0%とし、必要に応じて、これらの少なくともいずれか一種を含有させる。
Mo、Cu、Wは、フェライト系ステンレス鋼において、固溶強化によって高温強度を向上させる。このような効果は、Moの含有量が0.1%以上、Cuの含有量が0.1%以上、Wの含有量が0.1%以上で顕著になる。しかし、それぞれ4.0%を超える過剰量のMo、Cu、Wを含有させると、鋼材が過度に硬質化し、熱間加工性、加工性、低温靭性を低下させる。したがって、Moの含有量を0.1〜4.0%、Cuの含有量を0.1〜4.0%、Wの含有量を0.1〜4.0%とし、必要に応じて、これらの少なくともいずれか一種を含有させる。
[その他]
その他の成分については特に規定しないが、例えば一般的に不純物元素であるP,O,Ni等は可能な限り低減することが好ましい。通常は、Pの含有量が0.04%以下、Oの含有量が0.02%以下、Niの含有量が0.6%以下とするが、高レベルの加工性や溶接性を確保するために、P,O,Niの含有量を更に低減させるように規定する場合もある。
その他の成分については特に規定しないが、例えば一般的に不純物元素であるP,O,Ni等は可能な限り低減することが好ましい。通常は、Pの含有量が0.04%以下、Oの含有量が0.02%以下、Niの含有量が0.6%以下とするが、高レベルの加工性や溶接性を確保するために、P,O,Niの含有量を更に低減させるように規定する場合もある。
また、例えば耐熱性の改善に有効なTa,Vや熱間加工性の改善に有効なB,Mg,Co等の元素も必要に応じて含有可能である。
次に、合金成分とフェライト系ステンレス鋼材の耐水蒸気酸化性および熱伝導性との関係について説明する。
集熱機器用の材料の使用環境として想定される最高温度が400〜600℃で、水蒸気濃度が5体積%以上となる雰囲気に、フェライト系ステンレス鋼材が曝されると、酸化の初期に赤スケールが形成され、この赤スケールにより熱伝導性が低下してしまう。
この赤スケールの発生に対しては、Si,Alのような保護性に富んだ皮膜を形成する元素を含有させることで対応できるが、これらSi,Alを多量に含有させると、フェライト系ステンレス鋼材の熱伝導性を低下させてしまう。
そこで、Si,Alと比べ、フェライト系ステンレス鋼材に含有させても熱伝導性が低下しにくいMnを、Si,Alと複合して含有させると、フェライト系ステンレス鋼材の熱伝導性をほとんど損なわずに耐水蒸気酸化性を向上でき、最高温度が400〜600℃で水蒸気を5体積%以上含む雰囲気であっても、赤スケールの発生を抑制できる。
そして、Si,Al,Mnの含有量を変化させたフェライト系ステンレス鋼材を、高温で水蒸気を多量に含む雰囲気に曝し、赤スケールが発生するか否かを確認することで、Si,Al,Mnの含有量と耐水蒸気酸化性との関係を確認し、集熱機器用の材料として必要な耐水蒸気酸化性を確保できる条件を導出した。
これらSi,Al,Mnは、それぞれの含有量の合計が1.5%以上であれば、最高温度が400〜600℃で、水蒸気を5体積%以上含む雰囲気においても赤スケールの発生を抑制でき、集熱機器用の材料として必要な耐水蒸気酸化性を確保できる。
すなわち、規定した成分組成に関して、A値=Si+Mn+Alとする(1)式においてA値が1.5以上となるように合金成分を調整することで、集熱機器用の材料として必要な耐水蒸気酸化性を確保できる。
しかしながら、Si,AlとMnとを複合して含有させても、これらSi,Alは、多量に含有させるとフェライト系ステンレス鋼材の熱伝導性を低下させる合金成分であり、さらにMn,Crも若干ではあるが熱伝導性を低下させる性質がある。
したがって、これらCr,Si,Mn,Alの含有量が増加すると熱伝導性が低下し、集熱機器用の材料として必要な熱伝導性を確保できなくなってしまう。
そこで、これらCr,Si,Mn,Alの含有量を変化させたフェライト系ステンレス鋼材の500℃での熱伝導率を測定することで、Cr,Si,Mn,Alの含有量とフェライト系ステンレス鋼材の熱伝導性の関係を確認し、集熱機器用の材料として必要な熱伝導性を確保できる条件を導出した。
なお、この測定では、成分組成の範囲におけるCrの含有量の下限であるCr11%のフェライト系ステンレス鋼材を基準として熱伝導性を確保できる条件を導出した。
まず、Crの含有量による熱伝導性に及ぼす影響ついては、Crを11%含有させたフェライト系ステンレス鋼材が基準であるので、Crの含有量を11%から増加させると、この増加に伴って、0.2×(Cr%−11)W/m・Kの熱伝導率が低下する。
同様に、Si,Mn,Alのそれぞれの含有量によるフェライト系ステンレス鋼材の熱伝導性に及ぼす影響については、Siの含有量によって、2×(Si%)W/m・Kの熱伝導率が低下し、Mnの含有量によって、0.5×(Mn%)W/m・Kの熱伝導率が低下し、Alの含有量によって、5×(Al%)W/m・Kの熱伝導率が低下する。
そして、これらCr,Si,Mn,Alそれぞれの含有量により低下する熱伝導率の合計が、3.5W/m・Kを超えてしまうと、フェライト系ステンレス鋼材の500℃での熱伝導率が23W/m・K以下となってしまい、集熱機器用の材料として必要な熱伝導性を確保できなくなる。
すなわち、規定した成分組成に関して、B値=0.2(Cr−11)+0.5Mn+2Si+5Alとする(2)式においてB値が3.5以下となるように合金成分を調整することで、集熱機器用の材料として必要な、500℃で23W/m・Kを超える熱伝導率を確保できる。
したがって、(1)式のA値が1.5以上でかつ(2)式のB値が3.5以下となるように合金成分の含有量を調整することで、集熱機器用の材料として、耐水蒸気酸化性および熱伝導性が良好なフェライト系ステンレス鋼材となる。
なお、これら(1)式および(2)式の各元素の箇所には、質量%で表された各元素の含有量が代入される。
フェライト系ステンレス鋼材の厚さ寸法に関しては、薄いほうがより熱伝導性を向上できる。通常、集熱機器用の材料では、必要な熱伝導性を確保するために0.5mm以下とされる。本発明においても、0.5mm以下が好ましい。また、より確実に熱伝導性を確保するには0.3mm以下が好ましい。
フェライト系ステンレス鋼材の表面仕上げに関しては、JISR6001に記載される#50以上の粒度の研磨材で研磨仕上げされることで、このフェライト系ステンレス鋼材の表面に多数の研磨歪を形成できる。そして、この研磨歪が保護被膜の形成に必要なCrのフェライト系ステンレス鋼材表面への拡散速度を向上させて、保護性に富んだCr2O3の膜を確実に形成でき、赤スケールの発生を抑制できるので好ましい。
なお、集熱機器用フェライト系ステンレス鋼材は、厚さ寸法が0.5mm以下と薄肉状の鋼材なので、#50より低い粒度の研磨材での研磨仕上げはできず、また、粒度が高いほど生産性が低下してしまうので、工業的に考えると、研磨仕上げに使用する研磨材の粒度は#180〜#600が好ましく、また、粒度の異なる研磨材で、順次研磨して表面仕上げをしてもよい。
次に、この実施の形態の作用および効果について説明する。
集熱機器用の材料の使用環境として、最高温度が400〜600℃で、水蒸気濃度が5体積%以上となる雰囲気が想定されるが、通常のフェライト系ステンレス鋼材がこのような雰囲気に曝されると、緻密なコランダム系の酸化物であるCr2O3が層として形成される前に、Feリッチなスピネル系酸化物であるFe3O4が形成され、赤スケールが発生する。
そして、集熱機器用の材料であり、厚さ寸法が0.5mm以下という肉薄状の鋼材では、この赤スケールの発生により強度が著しく低下する。さらに、局所的にノジュール状の酸化物が形成された場合や粒界にくさび状の酸化物が形成された場合には、これらの酸化物が形成された部分に応力が集中し、破損の原因となる。
赤スケールは金属より熱伝導性が低く、また、加熱と冷却との繰返しにより赤スケール中に欠陥やクラックが形成する場合があり、これらの欠陥やクラックが断熱層を形成する。この断熱層の形成によって熱伝導性がさらに低下してしまう。この断熱層による熱伝導性への影響は、鋼材が薄いほど大きくなる。
このような赤スケールの発生に対しては、Si,Al,Mnを複合して含有させることで、保護性に富んだ皮膜を形成し、耐水蒸気酸化性を向上させて、最高温度が400〜600℃で水蒸気が5体積%以上含む雰囲気であっても赤スケールの発生を抑制できる。
Mnの赤スケール抑制機構は定かではないが、Mnが含有されることで、酸化の初期に形成される酸化スケールが、Feリッチなスピネル系酸化物から、このFeリッチなスピネル系酸化物より緻密で保護性に富んだMn系のスピネル系酸化物であるMnCr2O4となり、赤スケールの発生を抑制できると考えられる。
また、Si,Alは、Fe,Crとは性質が大きく異なる元素であるため、これらSi,Alをフェライト系ステンレス鋼材に含有させると、熱を伝える熱電子の散乱が大きくなり、熱伝導性を低下させてしまう。これに対し、MnはSi,AlよりもFe,Crと性質が近い元素であるため、フェライト系ステンレス鋼材に含有させても、熱電子の散乱は大きくならず、熱伝導性が低下しにくい。
そして、規定した成分組成に関して、(1)式のA値が1.5以上となるように合金成分を調整することで、集熱機器用の材料として必要な耐水蒸気酸化性が確保でき、さらに、(2)式のB値が3.5以下となるように合金成分を調整することで、集熱機器用の材料として必要な、500℃で23W/m・Kを超える熱伝導率を確保できる。
したがって、規定した成分組成に関して、(1)式のA値が1.5以上でかつ(2)式のB値が3.5以下となるように合金成分を調整することで、最高温度が400〜600℃で水蒸気を5体積%以上含む雰囲気であっても、赤スケールの発生を抑制できかつ500℃で23W/m・Kを超える熱伝導率を確保できるので、集熱機器用の材料として、耐水蒸気酸化性および熱伝導性が良好なフェライト系ステンレス鋼材となる。
また、Y,REM,Ca,Zrの少なくともいずれか一種を規定した範囲内で含有させることで、フェライト系ステンレス鋼材の酸化皮膜中に固溶させて、酸化皮膜を強化でき、耐水蒸気酸化性等の耐酸性を向上できる。
Nb,Ti,Mo,Cu,Wの少なくともいずれか一種を規定した範囲内で含有させることで、Nb,Tiは析出硬化によってフェライト系ステンレス鋼材の高温強度を向上でき、Mo,Cu,Wは固溶強化によってフェライト系ステンレス鋼材の高温強度を向上できる。
さらに、JISR6001に記載される#50以上の粒度の研磨材で研磨仕上げされることで、Crの拡散速度を向上できるので、最高温度が400〜600℃で、水蒸気を5体積%以上含む雰囲気でも、比較的迅速にCr2O3の膜を形成でき、赤スケールの発生を抑制できる。
表1は、耐水蒸気酸化性試験および熱伝導率測定に用いたフェライト系ステンレス鋼材の組成表である。
鋼種番号1〜12のフェライト系ステンレス鋼材は、成分組成はそれぞれ異なるが、規定した成分組成に関して、(1)式で示されるA値が1.5以上、(2)式で示されるB値が3.5以下であり、(1)式のA値および(2)式のB値の条件を満足しているものである。
鋼種番号13〜20のフェライト系ステンレス鋼材は、比較例であり、条件を満足していないものである。
なお、鋼種番号13のフェライト系ステンレス鋼材は、規定した成分組成に関して、(1)式で示されるA値が1.5より小さく、(2)式で示されるB値が3.5以下であり、(1)式のA値の条件は満足していないが、(2)式のB値の条件は満足している比較例であり、鋼種番号14〜16のフェライト系ステンレス鋼材は、規定した成分組成の範囲外にて、(1)式で示されるA値が1.5より小さく、(2)式で示されるB値が3.5以下であり、(1)式の条件は満足していないが、(2)式の条件は満足している比較例である。
また、鋼種番号17〜19のフェライト系ステンレス鋼材は、既定した成分組成の範囲外にて、(1)式で示されるA値が1.5以上で、(2)式で示されるB値が3.5より大きく、(1)式のA値の条件は満足しているが、(2)式のB値の条件は満足していない比較例であり、鋼種番号20のフェライト系ステンレス鋼材は、規定した成分組成に関して、(1)式で示されるA値が1.5以上で、(2)式で示されるB値が3.5より大きく、(1)式のA値の条件は満足しているが、(2)式のB値の条件は満足していない比較例である。
表1に示される成分組成のフェライト系ステンレス鋼材を、真空溶解炉でそれぞれ30kg溶製し、インゴットに鋳造した。
そして、このインゴットを熱間で粗圧延し、焼鈍、酸洗、中間冷延、中間焼鈍、中間酸洗、仕上げ冷延、仕上げ焼鈍を経て、JISG4305で規定されるNo.2D仕上げを施し、厚さ寸法0.3mmのNo.2D仕上げ材を製造した。
このNo.2D仕上げ材から幅25mm、長さ35mmに切り出したものを水蒸気酸化試験の試験片として使用した。熱伝導率測定には、前述の工程の途中、すなわち中間焼鈍、中間酸洗を施した段階で、厚さ寸法1mm、直径1cmの円盤状に切削加工したものを試験片として使用した。
水蒸気酸化試験では、集熱部分が曝される水蒸気雰囲気を想定し、500℃、20体積%H2O+残N2の条件で100時間保持後、室温まで自然冷却させた。この工程を10サイクル(500℃、20体積%H2O+残N2の条件で合計1000時間保持)行った後、目視により試験片の赤スケールを観察し、さらに、試験前後での試験片の重量変化(酸化増量)を計測することによって耐水蒸気酸化性を評価した。
熱伝導率測定は、JISR1611に規定されたレーザーフラッシュ法という、円盤状に加工した試験片の一側面に熱電対を取付け、他側面からレーザーを当てて、レーザーによる温度変化を測定することで、熱伝導率を測定するという方法で行なった。なお、測定温度は500℃、真空度は1×10−7Paである。
表2は、水蒸気酸化試験、および熱伝導率測定の結果を示す。
ここで、水蒸気酸化試験での赤スケールの有無は、目視にて赤スケールが確認できなかった場合を○、目視にて赤スケールが確認できた場合を×とした。さらに、試験前後での酸化増量を測定し、酸化増量が、0.2mg/cm2以下の場合を○、0.2mg/cm2を超えた場合を×とした。
なお、このような条件では酸化増量の値が赤スケール有無の指標となることを確認しており、赤スケール有無の判断基準として、0.2mg/cm2という値を用いている。
したがって、目視による赤スケールの確認、および酸化増量の両項目において、○であれば、集熱機器用の材料として耐水蒸気酸化性が良好である。
また、熱伝導率測定では、集熱機器用の材料として必要な熱伝導率である測定温度500℃にて23W/m・Kを超えた場合を○とし、集熱機器用の材料としての熱伝導性が良好であり、測定温度500℃にて23W/m・K以下の場合を×とし、集熱機器用の材料として熱伝導性が不十分である。
この表2に示されるように、規定した成分組成に関して(1)式のA値および(2)式のB値の条件を満足する鋼種番号1〜12のフェライト系ステンレス鋼材では、試験後、赤スケールの発生が確認されず、酸化増量も0.2mg/cm2以下であり、さらに、熱伝導率が23W/m・Kを超えていた。
したがって、鋼種番号1〜12のフェライト系ステンレス鋼材は集熱機器用の材料として耐水蒸気酸化性と熱伝導性とがいずれも良好である。
これに対し、鋼種番号13のフェライト系ステンレス鋼材は、試験後、赤スケールが確認され、酸化増量も0.2mg/cm2を超え、さらに0.5mg/cm2以上であり、熱伝導率は23W/m・Kを超えていた。
また、鋼種番号14〜16のフェライト系ステンレス鋼材は、試験後にいずれも赤スケールが確認され、酸化増量も0.2mg/cm2を超え、さらに0.5mg/cm2以上であり、熱伝導率は23W/m・Kを超えていた。
したがって、(2)式のB値の条件のみ満足している鋼種番号13〜16のフェライト系ステンレス鋼材は、集熱機器用の材料として耐水蒸気酸化性が不十分であるが、熱伝導性は良好であり、(2)式のB値の条件を満足することで集熱機器用の材料として熱伝導性が良好になる。
さらに、鋼種番号17〜19のフェライト系ステンレス鋼材は、試験後にいずれも赤スケールが確認されず、酸化増量も0.2mg/cm2以下であり、熱伝導率は、23W/m・K以下であった。
また、鋼種番号20のフェライト系ステンレス鋼材は、試験後、赤スケールが確認されず、酸化増量も0.2mg/cm2以下であり、熱伝導率は、23W/m・K以下であった。
したがって、(1)式のA値の条件のみ満足している鋼種番号17〜20のフェライト系ステンレス鋼材は、集熱機器用の材料として耐水蒸気酸化性が良好であるが、熱伝導性は不十分であり、(1)式のA値の条件を満足することで集熱機器用の材料として熱伝導性が良好になる。
そして(1)式のA値、および(2)式のB値の条件を満足することで、集熱機器用の材料として耐水蒸気酸化性および熱伝導性が良好なフェライト系ステンレス鋼材となる。
表1の鋼種番号1〜12のフェライト系ステンレス鋼材において、更に厳しい使用環境の雰囲気を想定し、600℃、50体積%H2O−残N2の雰囲気にて、100時間ごとに起動と停止とを繰り返し1000時間(10サイクル)行なった後、耐水蒸気酸化性試験、および熱伝導率測定を行なった。なお、試験片の表層に#400の粒度で乾式研磨処理を施したこと以外は、全て実施例1に準じている。
この試験において、いずれのフェライト系ステンレス鋼材でも、赤スケールの発生は確認されず、酸化増量は0.2mg/cm2以下であり、熱伝導率は、23W/m・Kを超えていた。
つまり、これらフェライト系ステンレス鋼材は、使用環境としてさらに過酷な雰囲気においても、集熱機器用の材料として耐水蒸気酸化性と熱伝導性とがいずれも良好である。
したがって、例えばコージェネレーションシステム等に導入される熱交換器等の集熱機器等に利用可能である。
Claims (4)
- 高温水蒸気雰囲気にて使用される薄肉状の集熱機器用フェライト系ステンレス鋼材であって、
質量%で、C:0.03%以下、Si:1.5%以下、Mn:0.5〜2.0%、S:0.005%以下、Cr:11〜20%、Al:0(無添加を含む)〜0.5%、N:0.03%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
この成分組成に関して下記(1)式で示されるA値が1.5以上でかつ下記(2)式で示されるB値が3.5以下となるように合金成分が調整された
ことを特徴とする集熱機器用フェライト系ステンレス鋼材。
(1)A値=Si+Mn+Al
(2)B値=0.2(Cr−11)+0.5Mn+2Si+5Al - 質量%で、Y:0.001〜0.1%、REM:0.001〜0.1%、Ca:0.001〜0.01%、Zr:0.03〜0.5%の少なくともいずれか一種を含む
ことを特徴とする請求項1記載の集熱機器用フェライト系ステンレス鋼材。 - 質量%で、Nb:0.05〜0.8%、Ti:0.03〜0.5%、Mo:0.1〜4.0%、Cu:0.1〜4.0%、W:0.1〜4.0%の少なくともいずれか一種を含む
ことを特徴とする請求項1または2記載の集熱機器用フェライト系ステンレス鋼材。 - JISR6001で規定される#50以上の粒度の研磨材で研磨仕上げされた
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の集熱機器用フェライト系ステンレス鋼材。
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