JP2008283064A - 半導体レーザ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】歩留りを向上させると共に良好なレーザ特性を維持することが可能な半導体レーザ装置を提供する。
【解決手段】半導体レーザ装置1は、ヒートシンク10上に、半導体レーザアレイ11と、補剛部12と、絶縁層13と、電極部材14とを備える。補剛部12は、ヒートシンク10上の半導体レーザアレイ11とは異なる領域に設けられ、ヒートシンク10よりも線膨張係数の小さい材料で構成されている。半導体レーザアレイ11のヒートシンク10への接合時や高温動作時において、半導体レーザアレイ11からヒートシンク10への熱伝導を妨げられることなく、ヒートシンク10から半導体レーザアレイ11へかかる熱応力が軽減される。
【選択図】図1

Description

本発明は、ヒートシンクなどの放熱部材上に実装された半導体レーザ素子からなる半導体レーザ装置に関する。
従来、半導体レーザが使用されている応用機器において、発熱に関する問題が深刻となっており半導体レーザの多方面にわたる利用を制限している。この問題は、半導体レーザの単位面積あたりの大きな発生熱と関連しており、熱循環によって、半導体レーザ内部の温度が上昇することで、発光出力、発光効率および寿命の低下、さらには発振波長の長波長化を招く要因となる。
このため、半導体レーザの排熱効率を大きくするために、半導体レーザを熱伝導率の高いヒートシンクに接合する手法が用いられている。ところが、ヒートシンクと半導体レーザとは、その線膨張係数の差が大きいため、実装時や高温動作時に大きな熱応力が発生する。特に、脆弱なGaAs基板上に形成される半導体レーザアレイなどは、この熱応力に耐えることができずに破壊されてしまうことがある。
特開平01−135088号公報 特開昭63−141386号公報 特開2006−68765号公報
そこで、半導体レーザとヒートシンクとの間に応力を緩和させるためのサブマウントを介在させる技術が提案されている(例えば、特許文献1,2)。また、特許文献3には、ヒートシンクと半導体レーザとを、金属粒子を複数混入させたはんだを用いて接合することにより、応力を吸収させる技術が提案されている。
しかしながら、上記特許文献の構成では、ヒートシンクに直接半導体レーザを接合した場合に比べて熱伝導性が悪くなる。このため、特にアレイレーザのように大きな熱が発生する場合には排熱が不十分となり、熱応力によってレーザ特性が悪化し、またレーザ自体が破壊されることにより歩留りが低下するという問題があった。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、歩留りを向上させると共に良好なレーザ特性を維持することが可能な半導体レーザ装置を提供することにある。
本発明の半導体レーザ装置は、放熱部材と、放熱部材の一の領域に設けられた半導体レーザ素子と、放熱部材の他の領域の少なくとも一部に設けられ、放熱部材よりも線膨張係数の小さな材料から構成されている補剛部とを備えたものである。
本発明の半導体レーザ装置では、放熱部材の半導体レーザ素子と対向しない領域に、放熱部材よりも線膨張係数の小さな補剛部が設けられていることにより、温度変化に起因して生じる放熱部材の膨張や収縮が緩和される。よって、放熱部材から半導体レーザ素子へかかる熱応力が軽減される。また、放熱部材上に半導体レーザ素子が補剛部を介在させることなく設けられていることにより、補剛部によって半導体レーザ素子から放熱部材への熱伝導が妨げられることはない。
本発明の半導体レーザ装置によれば、放熱部材と、放熱部材の一の領域に設けられた半導体レーザ素子と、放熱部材の他の領域の少なくとも一部に設けられると共に、放熱部材よりも線膨張係数の小さな材料から構成されている補剛部とを備えるようにしたので、半導体レーザ素子から放熱部材への熱伝導を妨げることなく、放熱部材から半導体レーザ素子へかかる熱応力が軽減される。よって、歩留りを向上させると共に良好なレーザ特性を維持することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る半導体レーザ装置1の概略構成を表す斜視図である。半導体レーザ装置1は、ヒートシンク10上に、半導体レーザアレイ11と、補剛部12と、絶縁層13と、電極部材14とを備えている。ヒートシンク10上において、半導体レーザアレイ11と補剛部12とは、互いに異なる領域に設けられている。
ヒートシンク10は、半導体レーザアレイ10の排熱効果を高めるものであり、熱伝導性を有する材料、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などの単体材料やこれらの合金などの複合材料、例えば、銅タングステン合金(Cu−W)、銅モリブデン合金(Cu−Mo)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)などにより構成されている。但し、熱伝導性の観点から銅単体および銅を含む合金によって構成されていることが好ましい。また、ヒートシンク10の厚みは、例えば3.0mm〜10.0mmとなっている。なお、ヒートシンク10の表面(半導体レーザアレイ10が設けられる面)は、半導体レーザアレイ11に対する電気伝導性を高めるために、例えば金(Au)などから構成される薄膜(図示せず)によって被覆されている。
半導体レーザアレイ11は、ヒートシンク10上に、第1接合層10Aを介して設けられている。半導体レーザアレイ11は、複数の発光領域がアレイ状に配列してなる半導体レーザ素子であり、電極部材14と電気的に接続されて構成されている。半導体レーザアレイ11は、その長軸方向の幅が例えば10mm、共振器長が例えば200μm〜1.5mm、厚みが例えば100μmとなっている。以下では、半導体レーザアレイ11の長軸方向を単に長軸方向として説明する。
この半導体レーザアレイ11は、例えば、ガリウム砒素(GaAs)よりなる基板上に、活性層を含む半導体層が形成されたものである。半導体層は、例えば下部クラッド層、活性層、上部クラッド層、電流注入層などが積層したものであり、例えばAlGaInP系化合物半導体より構成されている。なお、ここでいうAlGaInP系化合物半導体とは、アルミニウム(Al)およびガリウム(Ga)の少なくとも一方とインジウム(In)およびリン(P)の少なくとも一方とを含む四元系半導体のことであり、例えばAlGaInP混晶,GaInP混晶またはAlInP混晶などが挙げられる。これらは、必要に応じてケイ素(Si)またはセレン(Se)などのn型不純物、または、マグネシウム(Mg),亜鉛(Zn)または炭素(C)などのp型不純物を含有している。このような構成により、例えば630μm〜690μmに発振波長を有する赤色光を発光する。なお、半導体レーザアレイ11の一対の端面に垂直な面のうち一の面が発光面となっている。また、この半導体レーザアレイ11の表裏にはp側電極あるいはn側電極が形成されている。
補剛部12は、ヒートシンク10上に、第2接合層12Aを介して設けられている。この補剛部12は、ヒートシンク10よりも線膨張係数の小さい材料により構成され、好ましくは、ヒートシンク10および半導体レーザアレイ11のGaAs基板よりも線膨張係数の小さい材料により構成されている。ここで、表1に、ヒートシンク10、補剛部12の材料として想定できる材料の線膨張係数を示す。補剛部12を構成する材料は、ヒートシンク10の構成材料によって決定されるものであるが、例えば、ヒートシンク10として銅を用いる場合には、ダイヤモンド(C)、タングステン、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、クロム、白金、酸化マグネシウム、アンチモン、鉄、コバルト、ニッケル、ビスマスなどを用いることができる。
Figure 2008283064
また、補剛部12は、長軸方向の幅が半導体レーザアレイ11の長軸方向の幅よりも大きな幅で設けられることが好ましい。より好ましくは、ヒートシンク10の長軸方向の幅と等しくなるように設けられる。例えば、半導体レーザアレイ11が形成された領域を囲むように形成され、半導体レーザアレイ11の発光面を除く3側面に平行な側面を有しており、例えばコの字型となっている。この補剛部12の厚み(体積)は、後述の系全体の線膨張係数α0によって最適化される。
第1接合層11Aおよび第2接合層12Aは、例えば、はんだ等の接合用金属により構成されている。また、第1接合層11Aの融点が第2接合層の融点よりも低くなっていることが好ましい。例えば、第1接合層11Aが銀およびスズを含む合金、第2接合層12Aが金およびスズを含む合金から構成されている。
絶縁層13は、例えば補剛部12と後述の電極部材14との間に設けられ補剛部12と電極部材14との電気的な絶縁を確保するためのものである。絶縁層13は、例えばガラスエポキシ樹脂などの絶縁材料によって構成され、厚みは、例えば0.5mm〜1.0mmである。
電極部材14は、例えば、金などが被膜された銅により構成されており、厚みは例えば1.0mm〜3.0mmである。この電極部材14は、その一端がワイヤボンディング140を介して半導体レーザアレイ11と電気的に接続されていると共に、他端が図示しない単一電源に接続されている。
このような構成において、ヒートシンク10を構成する材料の線膨張係数をα1(×10-6/℃)、補剛部12を構成する材料の線膨張係数をα2(×10-6/℃)、ヒートシンク10の体積をV1、補剛部12の体積をV2とし、ヒートシンク10と半導体レーザアレイ11と補剛部12とからなる結合体(以下、単に系という。)の線膨張係数をα0(×10-6/℃)としたとき、線膨張係数α0は以下の式(1)によって求めることができる。
α0=(V1・α1+V2・α2)/(V1+V2) ……(1)
また、上記のようにして求められる線膨張係数α0が以下の式(2)を満足することが好ましい。
α0≦9.4 ……(2)
上記のような構成を有する半導体レーザ装置1は、例えば次のようにして製造することができる。
まず、半導体レーザアレイ11を形成する。例えばGaAsにより構成された基板上に、化合物半導体層を、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;有機金属化学気相成長)法やMBE(Molecular Beam Epitaxy;電子ビーム蒸着)法により形成する。この際、上記のようなAlGaInP系化合物半導体の原料としては、例えば、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMIn)、フォスフィン(PH3 )を用い、ドナー不純物の原料としては、例えば、セレン化水素(H2 Se)を用い、アクセプタ不純物の原料としては、例えば、ジメチルジンク(DMZ)を用いる。続いて、形成した化合物半導体層の表面と、GaAs基板の裏面とに、蒸着法、スパッタ法などによりそれぞれ電極を形成する。こののち、軸方向の一対の端面に反射鏡膜(図示せず)を設けることにより、半導体レーザアレイ11を形成する。
次いで、図3(A)に示したように、上述した材料よりなるヒートシンク10を用意し、このヒートシンク10の半導体レーザアレイ11の設置予定領域に、例えば真空蒸着法やめっき法により、例えばスズおよび銀を順に積層することにより、第1接合層11Aを形成する。このとき、第1接合層11Aを形成する領域以外の領域には、これらの層が堆積されないようマスクをしておく。
一方、図3(B)に示したように、上述した材料などよりなる補剛部12を用意し、この補剛部12の全面に対して、例えば真空蒸着法やめっき法により、例えば金およびスズを順に積層することにより第2接合層12Aを形成する。
続いて、ヒートシンク10上に形成した第1接合層11Aに半導体レーザアレイ11を位置合わせすると共に、補剛部12を第2接合層12Aの形成されている側がヒートシンク12Aに対向するように位置合わせすることにより、ヒートシンク10上にそれぞれ載置する。
続いて、図4に示したように、半導体レーザアレイ11と補剛部12とを載置したヒートシンク10に対して加熱処理を施し、第1接合層11Aおよび第2接合層12Aを溶融させる。こののち、これらを再び冷却して、第1接合層11Aおよび第2接合層12Aを凝固させることにより、半導体レーザアレイ11と補剛部12とをヒートシンク10に接合させる。最後に、補剛部12上に絶縁層13および電極部材14を順に形成することにより、図1に示した半導体レーザ装置1を完成する。
なお、ここでは、補剛部12と半導体レーザアレイ11を一度の加熱処理により接合する例について説明したが、ヒートシンク10上に第2接合層12Aを介して補剛部12のみを位置合わせして加熱処理を施した後、半導体レーザアレイ11をヒートシンク10上に位置合わせして再び加熱処理を施すことにより接合してもよい。また、ヒートシンク10上に第1接合層11Aを形成し、補剛部12上に第2接合層12Aを形成する場合について説明したが、ヒートシンク10上の半導体レーザアレイ11の設置予定領域に第1接合層11A、補剛部12の設置予定領域に第2接合層12Aを、それぞれ形成しておき、これらの上から半導体レーザアレイ11と補剛部12とを載置するようにしてもよい。
次に、本実施の形態の半導体レーザ装置1の作用および効果について説明する。
半導体レーザ装置1では、ヒートシンク10の半導体レーザアレイ11が設けられている領域とは異なる領域に、ヒートシンク10よりも線膨張係数の小さい補剛部12が設けられていることにより、温度変化に起因して生じるヒートシンク10の膨張や収縮が緩和される。よって、半導体レーザアレイ11の接合時や高温動作時において、ヒートシンク10から半導体レーザアレイ11へかかる熱応力が軽減される。また、ヒートシンク10に対して半導体レーザアレイ11が補剛部12を介在させることなく設けられていることにより、補剛部12が設けられることにより半導体レーザアレイ11からヒートシンク10への熱伝導が妨げられることはない。また、ヒートシンク10上の同一面内に半導体レーザアレイ11と補剛部12とが設けられていることにより、ヒートシンク10から半導体レーザアレイ11へかかる熱応力が効果的に軽減される。
また、ヒートシンク10と半導体レーザアレイ11と補剛部12とからなる系において、それぞれを接合した後の線膨張係数、すなわち系全体の線膨張係数α0は、接合前のそれぞれ材料の線膨張係数と体積の比によって換算することができる。但し、一般に半導体レーザアレイ11の体積は、ヒートシンク10に対して1/100以下程度であることから、半導体レーザアレイ11については、線膨張係数α0の算出に際して系から除外して考えることができる。よって、ヒートシンク10の線膨張係数α1(×10-6/℃)、補剛部12の線膨張係数をα2(×10-6/℃)、ヒートシンク10の体積をV1、補剛部12の体積をV2としたとき、系全体の線膨張係数をα0(×10-6/℃)は以下の式(1)によって求めることができる。
α0=(V1・α1+V2・α2)/(V1+V2) ……(1)
ここで、図5に示したように、補剛部12を設けずに、ヒートシンク10上に半導体レーザアレイ11を接合させる場合(従来と同様の接合)について、シミュレーションを行った。このとき、ヒートシンク10としては銅を用い、その長軸方向の幅を20mm、奥行き方向の幅を15mm、厚みを5mmとした。また、半導体レーザアレイ11については、長軸方向の幅を10mm、奥行き方向の幅を1mm、厚みを0.5mmとした。第1接合層としては、金およびスズを含むはんだを用いた。なお、銅の線膨張係数は16.8×10-6/℃とし、半導体レーザアレイ11の線膨張係数としては、GaAsの線膨張係数である5.9×10-6/℃を用いた。
まず、第1接合層11Aのはんだを溶融させるために25℃から280℃まで加熱する。このとき、ヒートシンク10の銅の膨張率は、16.8×(280-25)=4284×10-6mとなる。つまり、レーザが設けられる領域の長軸方向の幅10mmの部分は、膨張により10.04284mmとなる。同様にして、半導体レーザアレイ11が膨張する幅を求めると、5.9×(280-25)=1504.5×10-6mとなる。つまり、10.01505mmとなる。
こののち、第1接合層11Aのはんだを固めるために280℃から降温するとヒートシンク10と半導体レーザアレイ11は、第1接合層11Aによって接合される。25℃になったとき、ヒートシンク10と半導体レーザアレイ11の結合体が縮む長さは10.04284−10.01505=0.02779mmと予想される。すなわち、接合後の半導体レーザアレイ11の長さはおよそ10.000−0.02779=9.97221mmとなる。実測値としては、9.9632mm(0.0368mmの縮み)、9.9688mm(0.0312mmの縮み)、9.9674mm(0.0326mmの縮み)となった。
このように、補剛部12を設けることなく、ヒートシンク10上に半導体レーザアレイ11を接合した場合、ヒートシンク10と半導体レーザアレイ11との線膨張係数の差により、半導体レーザアレイ11に対して応力(特に、加熱後の冷却する際の圧縮応力)がかかり、これによって半導体レーザアレイ11が収縮し、発振波長が短くなるという現象が生じる。この短波長化は、図6に示したように、半導体レーザアレイ11の長軸方向の幅の変化率(収縮率)と密接に関連している。例えば、補剛部を設けていない従来の構成では、半導体レーザアレイ11の長軸幅の変化率が約0.28%であり、このとき6.7nm程度の短波長化が生じることがわかる。なお、図中の波長変化として−(マイナス)の記号を付しているのは、波長が短くなっていることを示している。
そして、上記のような短波長化が生じると、発光効率などのレーザ特性が悪化する虞がある。このため、半導体レーザアレイ11の長軸幅変化率は、例えば短波長化6nm以下となる0.24%以下であることが好ましい。
よって、接合時の温度環境、例えば280℃から25℃まで降温した場合、変化率が0.24%となるような線膨張係数を求めると、約9.4×10-6/℃となる。従って、系全体の線膨張係数α0は、以下の式(2)を満足することが好ましい。
α0≦9.4 ……(2)
また、式(1)より、系全体の線膨張係数α0は、ヒートシンク10と補剛部12の材料や体積(例えば、厚み)などを調整することによって、所望の値に設定することができる。言い換えると、図7に示したように、線膨張係数α0は、ヒートシンク10の線膨張係数α1と補剛部12の線膨張係数α2との差と、それぞれの体積V1,V2の比とで決定される。
例えば、補剛部12として窒化アルミニウム(線膨張係数:4.5×10-6/℃)を用いて、ヒートシンク10の体積V1を750mm3(長軸方向の幅:10mm、奥行き:15mm、厚み:5mm)とし、所望の線膨張係数α0を例えば9.0×10-6/℃とすると、補剛部12の体積V2は、式(1)より、約1300mm3と求まる。また、このときの補剛部12の長軸方向の幅をヒートシンク10と等しい10mmとし、奥行きを13mmとする場合、厚みは約10mmに設定すればよいことがわかる。
同様に、線膨張係数α0を半導体レーザアレイ11の線膨張係数、例えばGaAsの線膨張係数に合わせることを考えると、式(1)より、補剛部12の体積V2は、式(1)より、約5839.3mm3と求まる。従って、この場合には、厚みを44.9mmに設定すればよいことがわかる。このように、線膨張係数α0が、半導体レーザアレイ11の線膨張係数に等しいか、あるいはその差が小さくなるようにした場合、半導体レーザアレイ11にかかる熱応力がより軽減される。
また、補剛部12が、半導体レーザアレイ11、例えばGaAsよりも小さい線膨張係数を有する材料によって構成されている場合には、ヒートシンク10に線膨張係数の比較的大きな材料、例えば銅などを用いた場合であっても、式(1)によって補剛部12の体積を調整することにより、線膨張係数α0を半導体レーザアレイ11の線膨張係数に近づけることができる。よって、半導体レーザアレイ11と系全体との間の線膨張係数の差をより小さくすることができ、半導体レーザアレイ11にかかる熱応力がより効果的に軽減される。
さらに、第1接合層11Aの融点が第2接合層の融点よりも低くなっていることにより、ヒートシンク10上に半導体レーザアレイ11および補剛部12を載置して熱処理により接合する場合において、加熱後の降温によって、まず第2接合層12Aによりヒートシンク10と補剛部12とが先に接合され、この後に第1接合層11Aによりヒートシンク10と半導体レーザアレイ11とが接合される。通常、降温時にヒートシンクでは熱収縮が生じ、これにより半導体レーザに対して多大な熱応力がかかる。本実施の形態では、半導体レーザアレイ11がヒートシンク10に接合されるよりも前に、ヒートシンク10が補剛部12と接合することで、ヒートシンク10の熱収縮が阻害される。よって、半導体レーザアレイ11にかかる熱応力がより効果的に軽減される。
また、長手方向において、補剛部12の幅が、半導体レーザアレイ11の幅と等しいか、またはそれ以上、好ましくはヒートシンク10の幅と等しくなっていることにより、半導体レーザアレイ11の長手方向の全面において、半導体レーザアレイ11の接合時あるいは動作時に生じるヒートシンク10の熱収縮あるいは膨張の影響を受けにくくなる。よって、半導体レーザアレイ11にかかる熱応力がより効果的に軽減される。
以上説明したように、ヒートシンク10上の半導体レーザアレイ11が設けられた領域とは異なる領域に、ヒートシンク10よりも線膨張係数の小さい補剛部12が設けられているので、半導体レーザアレイ11のヒートシンク10への接合時や高温動作時において、ヒートシンク10から半導体レーザアレイ11へかかる熱応力が軽減される。また、ヒートシンク10に対して半導体レーザアレイ11が補剛部12を介在させることなく設けられているので、補剛部12が設けられることによって半導体レーザアレイ11からヒートシンク10への熱伝導が妨げられることはない。従って、歩留りを向上させると共に良好なレーザ特性を維持することが可能となる。
次に、本実施の形態の半導体レーザ装置1の変形例について説明する。
(変形例1)
図8は、変形例1に係る半導体レーザ装置2の概略構成を表す斜視図である。半導体レーザ装置2は、補剛部22以外の構成は上記半導体レーザ装置1と同様の構成を有している。従って、半導体レーザ装置1と同様の構成については同一の符号を付し適宜説明を省略する。
半導体レーザ装置2では、ヒートシンク10上の半導体レーザアレイ11が設けられている領域とは異なる領域に、補剛部22が、第2接合層12Aを介して設けられている。この補剛部22は、ヒートシンク10よりも線膨張係数の小さい絶縁材料によって構成されている。補剛部22を構成する材料としては、例えば、ケイ素(Si)、ホウ素(B)、炭素(C)および窒素(N)のうち少なくとも1種を含むものを用いることができる。
このように、補剛部12が絶縁材料によって構成されていることにより、ヒートシンク10と電極部材14との間に、電気的な絶縁を確保するための絶縁層を新たに設ける必要がなくなる。一方、半導体レーザアレイ11は、ヒートシンク10上に、この補剛部22を介在させることなく設けられているので、補剛部22によって半導体レーザアレイ10とヒートシンク11とが熱伝導および電気伝導が妨げられることはない。よって、簡易な構成で、歩留りを向上させると共に良好なレーザ特性を維持することが可能となる。
(変形例2)
図9は、変形例2に係る半導体レーザ装置3の概略構成を表す斜視図である。図10は、半導体レーザ装置3の補剛部32の平面図である。半導体レーザ装置3は、補剛部32および第2接合層32A以外の構成は上記半導体レーザ装置1と同様の構成を有している。従って、半導体レーザ装置1と同様の構成については同一の符号を付し適宜説明を省略する。
半導体レーザ装置3は、ヒートシンク10上の半導体レーザアレイ11が設けられている領域とは異なる領域に、補剛部32が、第2接合層32Aを介して設けられている。補剛部32は、半導体レーザアレイ11を囲うように設けられており、半導体レーザアレイ11の発光面を除く3側面にそれぞれ対向する3側面の2つの角部は、それぞれ弯曲部320を有している。また、第2接合層32Aは、この補剛部32の底面の形状に沿って形成されている。
ここで、図10に示したように、補剛部32において、半導体レーザアレイ11の短軸方向に対向しない第1領域32−1と、半導体レーザアレイ11短軸方向に対向する第2領域32−2とでは、長軸方向の幅32−1a,32−2a同士の差が大きいため、ヒートシンク10から受ける応力に大きな差が生じる。従って、補剛部32の半導体レーザアレイ11に対向する3側面の2つの角部が弯曲部320を有していることにより、第1領域32−1と第2領域32−2との境界付近において、ヒートシンク10から受ける応力が分散され、クラックの発生を抑制することができる。
(変形例3)
図11は、変形例3に係る半導体レーザ装置4の概略構成を表す斜視図である。半導体レーザ装置4は、さらに他の補剛部42が設けられていること以外は上記半導体レーザ装置1と同様の構成を有している。従って、半導体レーザ装置1と同様の構成については同一の符号を付し適宜説明を省略する。
半導体レーザ装置4では、ヒートシンク10の側面に補剛部42が設けられている。この補剛部42は、ヒートシンク10よりも線膨張係数が大きい材料、例えば黄銅(銅と亜鉛の合金)などの銅合金、アルミニウム単体、シリコン単体などの材料によって構成されている。
このように、ヒートシンク10の側面側に、ヒートシンク10よりも線膨張係数の大きい材料で構成された補剛部42が設けられていることにより、温度変化に伴う補剛部42の膨張あるい収縮によって、ヒートシンク10の厚み方向における膨張、収縮が促進される。よって、ヒートシンク10の面内方向における膨張、収縮が抑制される。従って、ヒートシンク10から半導体レーザアレイ11へかかる熱応力がより効果的に軽減される。
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態等に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態等では、ヒートシンク10上に設ける補剛部の形状として矩形状あるいはアーチ状のものを例に挙げて説明したが、半導体レーザアレイ11が設けられている領域以外の領域の少なくとも一部に補剛部が形成されていればよく、その形状は特に限定されない。
また、上記実施の形態等では、ヒートシンク10上の同一面内に半導体レーザアレイ11と補剛部12とが設けられている構成について説明したが、これに限定されず、例えば、ヒートシンク10の下面(半導体レーザアレイ11が形成されている側と反対側の面)に補剛部が設けられている構成であってもよい。
また、上記実施の形態等では、AlGaInP系の化合物半導体レーザを例にして本発明を説明したが、他の化合物半導体レーザ、例えばAlInP系、GaInAsP系などの赤色半導体レーザ、GaInN系およびAlGaInN系などの窒化ガリウム系の半導体レーザ、ZnCdMgSSeTeなどのII−VI族の半導体レーザにも適用可能である。また、AlGaAs系、InGaAs系、InP系、GaInAsNP系などの、発振波長が可視域とは限らないような半導体レーザにも適用可能である。
本発明の一実施の形態に係る半導体レーザ装置の概略構成を表す断面図である。 図1に示した半導体レーザ装置の概略構成を表す正面図および平面図である。 図1に示した半導体レーザ装置の製造方法を工程順に表す図である。 図3に示した工程に続く工程を表す図である。 系全体の線膨張係数を算出するシミュレーションで用いた半導体レーザ装置の斜視図である。 半導体レーザアレイの変化率に対する発振波長を表す特性図である。 ヒートシンクおよび補剛部の線膨張係数、体積の関係を表す図である。 変形例1に係る半導体レーザ装置の概略構成を表す斜視図である。 変形例2に係る半導体レーザ装置の概略構成を表す斜視図である。 図9に示した半導体レーザ装置の概略構成を表す平面図である。 変形例3に係る半導体レーザ装置の概略構成を表す斜視図である。
符号の説明
1,2,3,4…半導体レーザ装置、10…ヒートシンク、11…半導体レーザアレイ、12,22,32,42…補剛部、11A…第1接合層、12A第2接合層、13…絶縁層、14…電極部材。

Claims (16)

  1. 放熱部材と、
    前記放熱部材の一の領域に設けられた半導体レーザ素子と、
    前記放熱部材の他の領域の少なくとも一部に設けられ、前記放熱部材よりも線膨張係数の小さな材料から構成されている補剛部とを備えた
    ことを特徴とする半導体レーザ装置。
  2. 前記補剛部は、前記半導体レーザ素子よりも線膨張係数の小さな材料により構成されている
    ことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ装置。
  3. 前記放熱部材と前記補剛部と前記半導体レーザ素子とからなる結合体の線膨張係数をα0(×10-6/℃)、前記放熱部材を構成する材料の線膨張係数をα1(×10-6/℃)、前記補剛部を構成する材料の線膨張係数をα2(×10-6/℃)、前記放熱部材の体積をV1、前記補剛部の体積をV2としたとき、
    前記線膨張係数α0は以下の式(1)を満足する
    ことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ装置。
    α0=(V1・α1+V2・α2)/(V1+V2) ……(1)
  4. 前記線膨張係数α0が以下の式(2)を満足する
    ことを特徴とする請求項3記載の半導体レーザ装置。
    α0≦9.4 ……(2)
  5. 前記放熱部材と前記半導体レーザ素子との間に第1の接合層、前記放熱部材と前記補剛部との間に第2の接合層とを備え、
    前記第1の接合層を構成する材料の融点が前記第2の接合層を構成する材料の融点よりも低くなっている
    ことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ装置。
  6. 前記第1の接合層が、金(Au)およびスズ(Sn)を含む材料により構成され、前記第2の接合層がスズと銀(Ag)を含む材料により構成されている
    ことを特徴とする請求項5記載の半導体レーザ装置。
  7. 前記半導体レーザ素子が複数の発光領域を並列に配置してなる半導体レーザアレイである
    ことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ装置。
  8. 前記補剛部は、前記半導体レーザアレイの長手方向において、前記半導体レーザアレイの幅と等しい、もしくは前記半導体レーザアレイの幅よりも大きな幅を有する
    ことを特徴とする請求項7記載の半導体レーザ装置。
  9. 前記補剛部は、前記半導体レーザアレイの長手方向において、前記放熱部材と等しい幅を有する
    ことを特徴とする請求項7記載の半導体レーザ装置。
  10. 前記半導体レーザ素子と前記補剛部とは、前記放熱部材の同一面内に設けられている
    ことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ装置。
  11. 前記補剛部は、前記半導体レーザアレイが形成されている領域を囲むように設けられている
    ことを特徴とする請求項10記載の半導体レーザ装置。
  12. 前記半導体レーザアレイは矩形状であり、
    前記補剛部は、前記半導体レーザアレイの発光面を除く3つの側面のそれぞれに平行な3つの側面を有する
    ことを特徴とする請求項11記載の半導体レーザ装置。
  13. 前記補剛部は、前記3つの側面の角部に弯曲部を有する
    ことを特徴とする請求項12記載の半導体レーザ装置。
  14. 前記放熱部材よりも線膨張係数の大きい材料で構成されている他の補剛部を備え、
    前記他の補剛部は、前記放熱部材の前記半導体レーザ素子の設けられた面に垂直な面に隣接して設けられている
    ことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ装置。
  15. 前記補剛部は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)およびビスマス(Bi)のうち少なくとも1種を含んで構成されている
    ことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ装置。
  16. 前記補剛部は、酸化ケイ素(SiO2)、ダイヤモンド(C)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)あるいは酸化マグネシウム(MgO)を含む材料により構成されている
    ことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ装置。
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