JP2008246349A - マイクロ流体デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】微細流路を流れる流体の精密な温度変化を行うことができ、しかも複数のユニットを連結した構造であっても連結部分での流体の滞留を防止できるマイクロ流体デバイスを提供する。
【解決手段】内部に微細流路を有する複数のユニット12、1418、20を流路同士が連通するように一体的に連結し、微細流路内に流体Aを流して所望の単位操作を行うデバイスであって、加熱ユニット14と冷却ユニット18との間に、微細流路と略同径な貫通孔16Aが形成された断熱板16が介在されると共に、断熱板16には、連結の際に流路と貫通孔16Aとが連通するように位置決めされる位置決め機構が設けられている。
【選択図】 図1

Description

本発明はマイクロ流体デバイスに係り、特に、微細流路を流れる流体の温度変化を精密に制御する機能を備えたマイクロ流体デバイスに関する。
微細流路を有するマイクロ流体デバイスは、微細流路を流れる流体の温度を精密に制御できることが大きな特色となっており、反応、混合、抽出、分離等の各種の単位操作を行うマイクロ化学プロセスのための装置として使用されている。マイクロ流体デバイスの単位操作では、反応させた反応物を所定温度まで昇温させて反応を促進した後で急冷して反応を停止したり、温度が高く溶質が溶解している溶液を急冷することで溶質を精度良く析出させたりする操作を行うことが必要になる。特に、溶質が溶解している溶液から溶質を析出させる析出反応によって微細粒子を製造する場合には、溶液の温度をシャープに急冷することが極めて重要になる。
微細流路を流れる流体の温度を精密に制御するには、微細流路と外部との間での熱移動が小さいこと、流体を精密に温度変化させること(急激な温度変化を可能とする)、微細流路において流体が滞留するデッドスペースができるだけないこと、等が必要になる。
温度制御の機構を備えたマイクロ流体デバイスとしては、例えば特許文献1〜特許文献3がある。特許文献1及び2では、微細流路の周囲を断熱材で覆って断熱する工夫が施されている。また、特許文献3には、流体の滞留や温度変動のような外乱を排除して生成品の品質を向上させることのできるマイクロ流体デバイスが開示されている。
特開2006−61903号公報 特開2006−159165号公報 特開2006−326542号公報
しかしながら、特許文献1及び2のマイクロ流体デバイスは、微細流路の周囲を断熱材で覆うことで微細流路と外部との間での熱移動を小さくできても、流体の精密な温度変化を行う工夫がなれていないため、反応を急停止したり、微細粒子を製造するための析出反応を行うことができないという欠点がある。
ところで、マイクロ流体デバイスは微細流路を有するために微細加工によって製作することが必要になる。この場合、複数のユニットを微細加工により形成し、後からユニット同士を連結して一体化する方が容易に製作できる。特許文献3には、デバイスを構成する各種部材の連結例が開示されているが、連結部分を複数のチューブやコネクターで連結しており、コネクター部分にデッドスペースが形成され易いと共に、各チューブ長さの微妙な違いにより流体温度バラツキが生じ易いという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、微細流路を流れる流体の精密な温度変化を行うことができ、しかも複数のユニットを連結した構造であっても連結部分での流体の滞留を防止できるマイクロ流体デバイスを提供することを目的とする。
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、内部に微細流路を有する複数のユニットを前記流路同士が連通するように一体的に連結し、前記微細流路内に流体を流して所望の単位操作を行うデバイスであって、前記複数のユニットのうちの少なくとも1つが前記流体の温度制御を行う温度制御ユニットであるマイクロ流体デバイスにおいて、前記温度制御ユニットと該温度制御ユニットに実質的に隣接する隣接ユニットとの間には、前記微細流路と同径な貫通孔が形成された断熱板が介在されると共に、前記断熱板には、前記連結の際に前記微細流路と前記貫通孔とが連通するように位置決めされる位置決め機構が設けられていることを特徴とするマイクロ流体デバイスを提供する。
ここで、「実質的に隣接する」とは、マイクロ流体デバイスの主たる構成であるユニット以外の例えば温度検出板を、温度制御ユニットと隣接ユニットとの間に介在した場合、厳密には温度制御ユニットとユニットとは隣接していないが、この場合も実質的には隣接することに含まれるとの意味である。
本発明の請求項1によれば、複数のユニットのうちの少なくとも1つである温度制御ユニットと、該温度制御ユニットに実質的に隣接する隣接ユニットとの間に、温度制御ユニット及び隣接ユニットに形成されている微細流路と連通し、微細流路と同径な貫通孔を有する断熱板を介在させた。これにより、温度制御ユニットと隣接ユニットとの間で効果的に断熱されるので、断熱板の貫通孔を通って温度制御ユニットから隣接ユニットに流れる流体を、温度制御ユニットの温度から隣接ユニットの温度まで急激に温度変化させることができる。即ちシャープな温度勾配で温度変化させることができる。
ちなみに、温度の異なる2つの隣接するユニット同士を断熱し且つ2つのユニット同士の間で流体が流れるようにする場合、一方のユニットの微細流路と他方のユニットの微細流路とを熱伝導体であるSUS等の連結配管やコネクターで連結することが通常である。しかし、この場合には、熱が連結配管やコネクターを介して一方のユニットから他方のユニットに伝熱されるため、シャープな温度勾配を得ることはできず、流体を急激に温度変化させることができない。
請求項2は請求項1において、前記微細流路及び前記貫通孔の直径は5mm以下であることを特徴とする。
微細流路や貫通孔を流れる流体の温度を精密に制御するには、微細流路や貫通孔の径を、流体が層流で流れる5mm以下にすることが好ましく、1mm以下がより好ましく、500μm以下であることが特に好ましい。尚、下限は規定しなかったが、微細加工により形成可能な流路幅が下限値になる。
請求項3は請求項1又は2において、前記温度制御ユニットとして、加熱ユニットと冷却ユニットとの2つのユニットを備えると共に、前記断熱板が前記加熱ユニットと冷却ユニットとの間に実質的に介在されることを特徴とする。
ここで、「実質的に介在される」とは請求項1で説明したように、温度検出板等のユニット以外の部材が介在した場合も含む意味である。
請求項3は、本発明における温度制御ユニットと断熱板との関係の好ましい態様を示したもので、断熱板が加熱ユニットと冷却ユニットとの間に介在されることが好ましい。これにより、流体が断熱板を通過する間に、流体を加熱ユニットの温度から冷却ユニットの温度までシャープな温度勾配を描いて急冷又は急加熱できるからである。
請求項4は請求項1〜3の何れか1において、前記断熱板の熱伝導係数は2(W/S/K)以下であることを特徴とする。
これは、断熱板の厚みを厚くすることで断熱効果を大きくできるが、厚みが厚くなると貫通孔も長くなり流体の滞留要因となるため、熱伝導係数が2(W/S/K)以下の断熱板が厚みを薄くできて好ましいからである。
請求項5は請求項1〜4の何れか1において、前記断熱板の厚みは0.5mm以上50mm以下であることを特徴とする。
これは、断熱板の熱伝導係数との関係もあるが、断熱板の厚みが厚過ぎると微細流路の加工上困難を伴うため流路径を大きくせざるを得ず、上記の通り滞留要因になり、薄過ぎると十分な断熱効果が得られない。従って、断熱板の厚みは0.5mm以上50mm以下であることが好ましい。
請求項6は請求項1〜5の何れか1において、前記位置決め機構は、前記断熱板に形成された嵌合部を、前記温度制御ユニットに形成された被嵌合部に嵌合させることで位置決めする機構であると共に、前記嵌合部は前記貫通孔に対して点対称になるように形成されていることを特徴とする。
請求項6によれば、断熱板に形成された嵌合部を、温度制御ユニットに形成された被嵌合部に嵌合させることで位置決めする機構とすると共に、嵌合部が貫通孔に対して点対称になるように形成した。これにより、貫通孔を中心として熱的に対称となるように嵌合部を形成できるので、断熱板が熱膨張や熱収縮しても温度制御ユニットに対して位置決めされた断熱板の貫通孔の位置がずれることがない。
請求項7は請求項1〜6の何れか1において、前記断熱板の貫通孔には、前記流体に対する耐久性又は親和性を向上させるための表面処理が施されていることを特徴とする。
請求項7のように、断熱板の貫通孔の内面に、流体に対する親和性を向上させるための表面処理を施すことにより、例えば微細流路に液体を流したときに、液体に混入した気泡が微細流路中に滞留しないようにできる。また、断熱板の貫通孔の内面に、流体に対する耐久性を向上させるための表面処理を施すことにより、微細流路の平滑性を維持できるので流体の流れがスムーズになり、流体が滞留しにくくなる。尚、貫通孔に施す表明処理により形成される表面処理層は断熱性が良いことが好ましい。表面処理層が温度制御ユニットと隣接ユニットとの間の伝熱を行なわないようにするためである。
請求項8は請求項1〜7の何れか1において、前記断熱板には、前記流路と前記貫通孔との連結部からの流体の漏洩を防止する封止部材が備えられていることを特徴とする。
請求項8のように、断熱板に封止部材を設けることにより、熱の影響で断熱板が熱膨張や熱収縮しても流体の漏洩を確実に防止できる。
請求項9は請求項1〜8の何れか1において、前記温度制御ユニットと前記断熱板との間には、温度検出機能を備えた温度検出板が介在されると共に、該温度検出板には前記流路と前記貫通孔とを連通する連通孔が形成されていることを特徴とする。
温度制御ユニットと断熱板との間に温度検出板を設けたので、流体が温度制御ユニットから断熱板を通って隣接ユニットに至る際の温度変化を正確に知ることができる。
本発明によれば、微細流路を流れる流体の精密な温度変化を行うことができ、しかも複数のユニットを連結した構造であっても連結部分での流体の滞留を防止できる。
以下添付図面に従って、本発明のマイクロ流体デバイスの好ましい実施の形態を詳説する。
図1は、本発明のマイクロ流体デバイス10の全体構成の一例を示す分解図であり、図2は本発明の主要部分の断面図である。
図1及び図2に示すように、本発明のマイクロ流体デバイス10は、主として、流体供給ユニット12と、加熱ユニット14(温度制御ユニット)と、断熱板16と、冷却ユニット18(温度制御ユニット)と、流体排出ユニット20とで構成され、加熱ユニット14と断熱板16との間、及び断熱板16と冷却ユニット18との間にそれぞれ温度検出板22、24が設けられる。これらのユニット12、14、18、20、断熱板16、及び温度検出板22、24が上記した順番で一体的に組み付けられ、図示しないボルト等により締結されることにより、マイクロ流体デバイス10が形成される。
マイクロ流体デバイス10に供給される流体Aとしては、液体、気体の何れでもよく、目的の単位操作(反応、混合、抽出、分離等)に応じて選択される。
流体供給ユニット12は円板状に形成され、円板の中心に穿設された貫通孔が流体Aの入口流路12A(微細流路)を形成する。流体供給ユニット12の加熱ユニット側の面には円板状の凸部(流体排出ユニットの凸部20B参照)が形成され、この凸部が加熱ユニット14の円筒状に形成されたケーシング14Aの一方端側に嵌合される。
加熱ユニット14は、主として、円筒状のケーシング14Aと、流体Aが流れる細径な配管14D(微細流路)と、流体Aを加熱する加熱媒体Xとで構成される。即ち、ケーシング14A内には、螺旋状の配管14Dが配設され、配管14Dの一方端が流体供給ユニット12の入口流路12Aに接続され、他方端が円板状の温度検出板22の中心に穿設された連通孔22Aに接続される。温度検出板22,24としては、例えば熱電対方式のものを好適に使用できるが、これに限定されない。また、ケーシング14Aの一方端側の周面には加熱媒体Xの入口14Bが形成されると共に、他方端側の周面には加熱媒体Xの出口14Cが形成される。尚、本実施の形態では、螺旋状の配管を使用したが、これに限定されるものではなく、直線状や蛇行状の配管等でもよい。要は、加熱ユニット14において、流体Aを効率的に所望の温度まで加熱できればよい。
断熱板16は、円板状に形成されると共に円板の中心に貫通孔16Aが形成される。そして、この貫通孔16Aと前述した温度検出板22の連通孔22Aとの軸芯が一致するように断熱板16に設けられた後記する位置決め機構により位置決めされる。断熱板16の熱伝導係数としては、2(W/S/K)以下であることが好ましく、0.5(W/S/K)以下がより好ましい。また、断熱板の厚みは0.5mm以上50mm以下であることが好ましく、3mm以上10mm以下であることがより好ましい。断熱板16の材料としては、例えばポリイミド系の樹脂、アクリル樹脂、テフロン(登録商標)樹脂等の樹脂材料、アルミナ、ガラス等のセラミクス材料等を好適に使用できる。断熱板16の熱伝導係数を小さくするために、断熱板16の内部を中空にしてもよく、中空内の空気を除去して真空にしてもよく、中空内に熱伝導性の小さなガスを充填してもよい。断熱板16において重要なことは、断熱板16に形成された貫通孔16Aが、加熱ユニット14の配管14Dや、冷却ユニット18の配管18Dと熱的に縁切りされていることである。
また、断熱板16の貫通孔16Aには、流体Aに対する耐久性又は親和性を向上させるための表面処理を施すことが好ましい。この場合、貫通孔16Aは上述したように熱的に縁切りされていることが重要であり、表面処理層自体の伝熱性も断熱板16と同様に小さいことが好ましい。表面処理としては、例えば断熱板16が樹脂の場合にはガラスコーティング、セラミックスコーティングのように熱伝導率の小さな表面処理層を形成することが好ましい。これは、図3のように、温度検出板22、24を使用せずに、加熱ユニット14と冷却ユニット18との間に断熱板16を直接介在させる場合には、表面処理層が形成された貫通孔16Aと加熱ユニット14及び冷却ユニット18に配設された例えばSUS材質の配管14D、18Dとが接触することになり、表面処理層を介して加熱ユニット14及び冷却ユニット18の熱が相互に伝達されてしまうからである。従って、例えば、表面処理としてSUSコーティングやTiコーティングした場合には、表面処理層を熱伝導がしにくい薄膜にしたり、表面処理層と配管14D、18Dとが接触しないようにしたりすることが好ましい。
また、断熱板16と温度検出板22とが連結される面には、Oリング23が介在され、これにより断熱板16の貫通孔16Aと温度検出板22の連通孔22Aとの連結部から流体Aが漏洩するのを封止する。
冷却ユニット18は、前述した加熱ユニット14と同様の構造である。即ち、ケーシング18A内には、螺旋状の細径な配管18D(微細流路)が配設され、配管18Dの一方端が流体排出ユニット20の後記する出口流路20Aに接続され、他方端が円板状の温度検出板24の中心に穿設された連通孔24Aに接続される。また、ケーシング18Aの一方端側の周面には冷却媒体Yの入口18Bが形成されると共に、他方端側の周面には冷却媒体Yの出口18Cが形成される。温度検出板24としては、上記したと同様である。
流体排出ユニット20は円板状に形成され、円板の中心に穿設された貫通孔が流体Aの出口流路12A(微細流路)を形成する。流体排出ユニット20の冷却ユニット側の面には円板状の凸部20Bが形成され、この凸部20Bが冷却ユニット18の円筒状に形成されたケーシング18Aの一方端側に嵌合される。
流体供給ユニット12の入口流路12A、加熱ユニット14の配管14D、第1及び第2温度検出板22、24の連通孔22A、24A、断熱板16の貫通孔16A、冷却ユニット18の配管18D、及び流体排出ユニット20の出口流路20Dの直径は、5mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、500μm以下が特に好ましい。
図4〜図6は、断熱板16に設けられた位置決め機構の態様図である。
図4の位置決め機構は、円板状に形成された断熱板16の両面に、貫通孔16Aを中心とする円形状凸部16Bを形成したものである。この円形状凸部16Bが温度検出板22、24の面に、連通孔22A、24Aを中心として形成された円形状凹部22B、24Bに嵌合される。これにより、断熱板16の貫通孔16Aと温度検出板22、24の連通孔22A、24Aとの軸芯26(図2、図3参照)が一致する。
図5の位置決め機構は、円板状に形成された断熱板16の両面に、貫通孔16Aから等距離の位置に等間隔で複数のピン状凸部16Cを複数形成したものである。このピン状凸部16Cが温度検出板22、24の面に、連通孔22A、24Aから等距離の位置に等間隔で複数形成されたピン状凹部(図示せず)に嵌合される。ピン状凸部16Cとピン状凹部との位置は対応する関係にあり、これにより断熱板16の貫通孔16Aと温度検出板22,24の連通孔22A、24Aの軸芯26が一致する。
図6の位置決め機構は、断熱板16及び温度検出板22、24の外周と一致する内径を有する円筒状のスリーブ28を設け、断熱板16と温度検出板22、24とをスリーブ内に嵌め込むことで断熱板16と温度検出板22、24との外周規制を行うようにしたものである。これにより、断熱板16の貫通孔16Aと温度検出板22、24の連通孔22A、24Aとの軸芯26が一致する。
次に、上記の如く構成されたマイクロ流体デバイス10の作用について説明する。
流体供給ユニット12の入口流路12Aに供給された流体Aは、加熱ユニット14において微細流路の配管14D内を流れながら加熱媒体Xにより加熱されることにより、所望温度に精密に昇温される。所望の温度まで正しく昇温したか否かは、温度検出板22により測定される。
次に、加熱ユニット14で所望温度まで昇温された流体Aは、断熱板16の貫通孔16Aを通って冷却ユニット18の配管18Dに流れ込む。配管18Dに流れ込んだ流体Aは、冷却ユニット18において冷却媒体Yにより急速に冷却される。所望の温度まで正しく冷却したか否かは、温度検出板24により測定される。
かかる、液Aの急冷において、加熱ユニット14と冷却ユニット18とは断熱板16により断熱されていると共に、加熱ユニット14の配管14Dと冷却ユニット18の配管18Dも断熱板16の貫通孔16Aにより熱的に縁切りされている。これにより、流体Aは、図7に示すように、断熱板16の貫通孔16Aを通過する間に、加熱ユニット14の加熱温度であるA℃から冷却ユニット18の冷却温度であるB℃までシャープな温度勾配曲線(図7の実線)を描いて急冷される。図7の点線で描いた温度勾配曲線は加熱ユニット14の配管14Dと冷却ユニット18の配管18Dとを、熱伝導の大きなSUS材質のコネクターで連結した場合であり、シャープな温度勾配曲線を得ることができない。
次に、冷却ユニット18で所望温度まで冷却された流体Aは、流体排出ユニット20の出口流路20Aから装置外に排出される。
尚、本実施の形態では、加熱ユニット14や冷却ユニット18に加熱媒体Xや冷却媒体Yを流して熱制御する形態をとっているが、電熱ヒーターやぺルチエ素子を適用することもできる。また、本実施の形態では、マイクロ流体デバイス10の各ユニットとして、熱的な対象性を持たせるため円板状や円筒状のものを使用したが、流す流体の種類や温度変化させる温度勾配の要求度に応じて、完全に熱的な対称性を維持する必要はない。例えば直方体形状のユニットでも良い場合もある。
本実施例は、図1に示した本発明のマイクロ流体デバイス10を、転相温度乳化反応を利用して微粒子分散液(乳化分散物)を製造する工程に適用したものである。転相温度乳化反応では、流体Aを所定温度まで精密に加熱した後、急冷することにより溶質を析出させ、これにより微粒子分散液を得ることができる。
マイクロ流体デバイス10に供給する供給流体としては、水にシクロヘキサンを、水:54.6質量%、シクロヘキサン:36.4質量%の割合で混合し、ポリオキシエチレン(POE)を9質量%混合させた液Aを用いた。この液Aは、転相温度乳化現象を発現し、60〜65℃にある転相温度を境にPOEの親水・親油性のバランスが逆転し、60℃以下では、水中にシクロヘキサンが分散している系となるが、65℃以上では、シクロヘキサン中に水が分散している系に転相することが知られている。
本実施例では、配管14D、貫通孔16A、連通孔22A,24Aの直径φを300μmに設定すると共に、断熱板16の厚みを15mmとした。断熱板16における熱交換速度(熱勾配)が目標に達していれば、直径に制約は無いが、一般的には液A(流体)が層流として流れるφ5mm以下が好ましく、φ1mm以下が更に好ましい。
液Aの流速は0.1mL/分に設定した。また、加熱ユニット14の加熱媒体Xの温度を85℃、冷却ユニット18の冷却媒体Yの温度を5℃に設定した。また、断熱板16の前後に装着された温度検出板22,24(熱電対を使用)より、断熱板16の前後における液Aの温度を測定した。
上記構成のマイクロ流体デバイス10によれば、加熱ユニット14で転相温度以上に加熱され、シクロヘキサン中に水が分散した状態の液Aは、断熱板16の厚み15mmを通過する際に、1000℃/秒以上の冷却速度で急速に冷却された。これにより、液Aは転相温度以下になり、水中にシクロヘキサンが微分散された。
その結果、本発明のマイクロ流体デバイス10に通す前には、液A中の微粒子がφ数μm〜φ100μmのバラツキがあったが、マイクロ流体デバイス10を通過させることで、2〜3μmの微細で単分散性の良好な乳化分散物を得ることができた。
本発明のマイクロ流体デバイスの全体構成を示す分解図 図1の主要部を示す要部断面図 図2から温度検出板を除いた構成の要部断面 断熱板の位置決め機構の一態様を示す斜視図 断熱板の位置決め機構の他の態様を示す斜視図 断熱板の位置決め機構の別の態様を示す斜視図 本発明のマイクロ流体デバイスの作用効果を説明する説明図
符号の説明
10…マイクロ流体デバイス、12…流体供給ユニット、14…加熱ユニット、16…断熱板、18…冷却ユニット、20…流体排出ユニット、22、24…温度検出板、23…Oリング、26…軸芯

Claims (9)

  1. 内部に微細流路を有する複数のユニットを前記流路同士が連通するように一体的に連結し、前記微細流路内に流体を流して所望の単位操作を行うデバイスであって、前記複数のユニットのうちの少なくとも1つが前記流体の温度制御を行う温度制御ユニットであるマイクロ流体デバイスにおいて、
    前記温度制御ユニットと該温度制御ユニットに実質的に隣接する隣接ユニットとの間には、前記微細流路と同径な貫通孔が形成された断熱板が介在されると共に、
    前記断熱板には、前記連結の際に前記微細流路と前記貫通孔とが連通するように位置決めされる位置決め機構が設けられていることを特徴とするマイクロ流体デバイス。
  2. 前記微細流路及び前記貫通孔の直径は5mm以下であることを特徴とする請求項1のマイクロ流体デバイス。
  3. 前記温度制御ユニットとして、加熱ユニットと冷却ユニットとの2つのユニットを備えると共に、前記断熱板が前記加熱ユニットと冷却ユニットとの間に実質的に介在されることを特徴とする請求項1又は2のマイクロ流体デバイス。
  4. 前記断熱板の熱伝導係数は2(W/S/K)以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1のマイクロ流体デバイス。
  5. 前記断熱板の厚みは0.5mm以上50mm以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1のマイクロ流体デバイス。
  6. 前記位置決め機構は、前記断熱板に形成された嵌合部を、前記温度制御ユニットに形成された被嵌合部に嵌合させることで位置決めする機構であると共に、前記嵌合部は前記貫通孔に対して点対称になるように形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1のマイクロ流体デバイス。
  7. 前記断熱板の貫通孔には、前記流体に対する耐久性又は親和性を向上させるための表面処理が施されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1のマイクロ流体デバイス。
  8. 前記断熱板には、前記流路と前記貫通孔との連結部からの流体の漏洩を防止する封止部材が備えられていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1のマイクロ流体デバイス。
  9. 前記温度制御ユニットと前記断熱板との間には、温度検出機能を備えた温度検出板が介在されると共に、該温度検出板には前記流路と前記貫通孔とを連通する連通孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜8の何れか1のマイクロ流体デバイス。
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