JP2008206308A - 永久磁石式回転電機 - Google Patents

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Abstract

【課題】誘起電圧、トルク脈動だけでなくコギングトルクも低減することができる回転電機を提供する。
【解決手段】固定子11に設けられたティース12には巻線13が分布巻により巻回されている。回転子14の外周面に、固定子11のティース間距離TSより小さな幅W1の第1溝19が、各磁極のd軸20を挟んで両側に形成されている。第1溝19は、第1溝19のd軸20から遠い側の縁部19bまでの回転子周方向の距離がティース間距離TSの1.3倍以下になるように形成されている。回転子14の外周面には、永久磁石17の回転子外周に最も近い端部の近くに形成されたブリッジ部21の幅が最も狭くなる部分よりもd軸側に第2溝22a,22bが形成されている。第2溝22a,22bは幅方向の中心と回転子14の中心軸とを結ぶ直線23と、d軸20との成す電気角θが54度程度の位置に形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、永久磁石式回転電機に係り、詳しくは複数個の永久磁石がロータコア内に埋め込まれた回転子を備えた永久磁石式回転電機に関する。
永久磁石を回転子(ロータ)のコア(鉄心)に埋め込んだ埋込磁石型同期電動機(所謂IPMモータ)は、電流位相を制御することにより、リラクタンストルクを利用することができ、電流位相を制御することにより最大トルクの制御が可能になる。
車両に搭載される電動機では、トルクリプルを低下させることが求められている。このトルクリプルは出力トルクの変動分を、平均トルクに対する百分率で示すものであり、一般的に、トルクリプルが大きいほど電動機の振動および騒音が大きくなることが知られている。従来、トルクリプル及び鉄損が小さい電動機が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に提案された電動機は、分布巻により形成された複数の巻線相を有する固定子と、複数の磁極を有し、かつ固定子に向い合う外周を有する回転子とを備えている。図10に示すように、回転子41は、鉄又は鉄合金等の磁性体からなるコア体42を有し、コア体42には複数の磁極を構成する永久磁石43が埋込まれている。回転子41の外周には溝44が形成されている。溝44のうち、外周表面からの深さが最も深い底点45と回転子41の中心とを結ぶ直線46は、その底点45に最も近い磁極の中心線47に対して40°以上44°未満の電気角度φをなす。
また、直線46が中心線47に対して44°以上53°以下の電気角度φをなす場合は、トルクリプルを低下させる効果が小さくなるが、無負荷誘起電圧中の高調波の含有率を小さくすることができることが開示されている。
特開2004−328956号公報
特許文献1に記載の電動機では、回転子41の外周に前記条件を満たす溝44を形成することにより、トルクリプル(トルク脈動)を低減することができる。しかし、永久磁石が埋設された回転子を備えた永久磁石式回転電機では、誘起電圧のピーク、トルク脈動だけでなく、コギングトルク(未通電時のトルク脈動)を低減することも重要である。特許文献1にはコギングトルクの低減に関しては配慮がなされていない。
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、誘起電圧、トルク脈動だけでなくコギングトルクも低減することができる永久磁石式回転電機を提供することにある。
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、複数個の永久磁石がロータコア内に埋め込まれた回転子を備えた永久磁石式回転電機である。そして、固定子に設けられたティースには巻線が分布巻により巻回され、前記回転子の各磁極において、前記回転子の外周面に、各磁極のd軸を挟んで両側に第1溝が形成されるとともに、前記永久磁石の回転子外周に最も近い端部の近くに形成されたブリッジ部の幅が最も狭くなる部分よりもd軸側に第2溝が形成されている。前記第1溝は回転子内周側に最も近い底部と、前記底部の両側に第1溝の縁である縁部を有し、前記縁部は、前記底部の中央から回転子の周方向の固定子のティース間距離の1/2の範囲内かつ前記d軸を超えない範囲内において、前記底部より回転子外周側かつ回転子の最外部の回転半径より回転子の内周側に位置する壁面のうちで、最も前記底部から回転子の周方向に遠い部分である。そして、前記第1溝のd軸から遠い側の縁部までの回転子の周方向の距離が前記固定子のティース間距離の1.3倍以下になるように形成されている。ここで、第1溝がd軸と交差する位置に1個形成されている場合は、2個の第1溝がそれぞれd軸を含む位置に形成された結果として1個になったものと見なす。また、第1溝が1個の場合もその幅はティース間距離より小さく形成される。また、第1溝の開口部となる回転子外周側の端部に、回転子の最外部の回転半径より回転子の中心軸までの距離が小さく、かつティースと対向した状態でティースと永久磁石との吸引力が、ティースが回転子の最外部と対応したときと同等になる凹部が連続する場合、すなわち固定子と回転子とのギャップに対して磁気的に無視できるほどの凹部がある場合は、その凹部を除いた部分の開口部の周方向の長さを「第1溝の幅」とする。例えばギャップに対して30%未満の深さを持つ凹部の場合、磁気的に無視できるので、その部分は第1溝とはみなさない。
この発明では、第2溝が存在することにより誘起電圧及びトルク脈動を低減でき、第1溝を前記の状態で設けることにより、誘起電圧、トルク脈動だけでなくコギングトルクも低減することができる。
ここで、第1溝の回転子内周側に最も近い部分が連続する(たとえば底が回転子周方向に平坦な)場合、全体を底部とするが、第1溝の縁部について「前記底部を中央とした回転子の周方向の固定子のティース間距離の範囲内において、」についてはその底部の中央を基準として回転子の周方向の固定子のティース間距離の範囲を定義する。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1溝は、各磁極のd軸を中央として回転子の周方向に前記ティース間距離以上の間隔を設けて2箇所に形成されている。この発明では、2個の第1溝がd軸を含む位置で連続して1個になる状態で形成される場合に比較して、コギングトルクの低減効果が向上する。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記第1溝の幅は、前記ティース間距離の1/2に設定されている。この発明では、2個の第1溝の幅がティース間距離に近い場合に比較して、コギングトルクの低減効果が向上する。
請求項4に記載の発明は、複数個の永久磁石がロータコア内に埋め込まれた回転子を備えた永久磁石式回転電機である。そして、固定子に設けられたティースには巻線が分布巻により巻回され、前記回転子の各磁極において、前記回転子の外周面に、各磁極のd軸を挟んで両側に第1溝が形成されるとともに、前記永久磁石の回転子外周に最も近い端部の近くに形成されたブリッジ部の幅が最も狭くなる部分よりもd軸側に第2溝が形成されている。前記第1溝は、幅が前記固定子のティース間距離より小さく、前記第1溝のd軸から遠い側の縁部までの回転子の周方向の距離が前記固定子のティース間距離の1.3倍以下になるように形成されている。
ここで、第1溝がd軸と交差する位置に1個形成されている場合は、2個の第1溝がそれぞれd軸を含む位置に形成された結果として1個になったものと見なす。また、第1溝が1個の場合もその幅はティース間距離より小さく形成される。また、第1溝の開口部となる回転子外周側の端部に、回転子の最外部の回転半径より回転子の中心軸までの距離が小さく、かつティースと対向した状態でティースと永久磁石との吸引力が、ティースが回転子の最外部と対応したときと同等になる凹部が連続する場合、すなわち固定子と回転子とのギャップに対して磁気的に無視できるほどの凹部がある場合は、その凹部を除いた部分の開口部の周方向の長さを「第1溝の幅」とする。例えばギャップに対して30%未満の深さを持つ凹部の場合、磁気的に無視できるので、その部分は第1溝とはみなさない。この発明においても、誘起電圧及びトルク脈動を低減でき、誘起電圧、トルク脈動だけでなくコギングトルクも低減することができる。
請求項5に記載の発明は、前記第1溝は矩形断面の溝であり、前記矩形断面のうち、前記第1溝の開口側角部が前記第1溝の縁部であり、前記縁部間距離が前記第1溝の幅である。なお、一般に電磁鋼板に溝を形成する場合、角部にRをつけたり、面取りをつけたりする。この場合、Rまたは面取り部に隣接する辺を延長した場合に、その交点を角部とする。この発明においても、誘起電圧及びトルク脈動を低減でき、誘起電圧、トルク脈動だけでなくコギングトルクも低減することができる。
請求項6に記載の発明は、前記第1溝は台形断面の溝であり、前記台形断面の平行な辺のうち短い辺が前記第1溝の底部であり、前記台形断面の平行な辺のうち長い辺の両端に相当する角部が前記第1溝の縁部であり、前記縁部間距離が前記第1溝の幅である。なお、一般に電磁鋼板に溝を形成する場合、角部にRをつけたり、面取りをつけたりする。この場合、Rまたは面取り部に隣接する辺を延長した場合に、その交点を角部とする。この発明においても、誘起電圧及びトルク脈動を低減でき、誘起電圧、トルク脈動だけでなくコギングトルクも低減することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項4から請求項6のうちいずれか一項に記載の発明において、前記回転子の最外部と前記縁部との前記回転子の半径方向距離が、前記固定子と前記回転子とのギャップの30%未満である。すなわち、ギャップに対して30%以上の深さをもつ様に第1溝を形成することにより、より確実にコギングトルクを低減することができる。
本発明によれば、誘起電圧、トルク脈動だけでなくコギングトルクも低減することができる永久磁石式回転電機を提供することができる。
以下、本発明を電動機に具体化した一実施形態を図1〜図6にしたがって説明する。図1(a)は永久磁石式回転電機としての電動機の半分に対応する模式図である。
図1(a)に示すように、固定子(ステータ)11は、円筒状で内側に複数のティース12が等間隔で設けられている。ティース12には、巻線(コイル)13が一般の3相の分布巻で巻回されている。
固定子11の内側には、回転子(ロータ)14が配置されている。回転子14は、略円板状の電磁鋼板を複数枚(例えば数十枚)積層したロータコア15と、ロータコア15の中心に貫挿されたロータ軸(回転軸)16とを備えている。そして、回転子14は、ロータコア15の外周面がティース12と所定の間隔を置いた状態で、図示しないハウジングの軸受けにロータ軸16を介して回転可能に支持されている。
ロータコア15には、複数個の永久磁石17が埋め込まれている。永久磁石17は、ロータコア15を周方向に等分割した各仮想領域に、電気角が180°毎に配置されている。即ち各仮想領域毎に磁極が構成されている。この実施形態では、各永久磁石17は、断面矩形の平板状に形成され、着磁方向が厚さ方向となるように着磁されている。また、永久磁石17は、一磁極当たり2個ずつ設けられるとともに、回転子14の外周側に向かって拡がるV字状で同じ側(例えば、回転子14の外周側)が同極になるように配置されている。また、隣り合う仮想領域に配置された永久磁石17同士は、回転子14の外周側が異なる極になるように配置されている。例えば、ある一組のV字配置の永久磁石17が、ティース12側がS極になるように配置されると、隣の仮想領域に配置される永久磁石17は、ティース12側がN極になるように配置される。
ロータコア15には、永久磁石17のq軸側の端部に連続する状態でフラックスバリア(孔)18が設けられている。フラックスバリア18は、永久磁石17の最も回転子外周に近い部分(端部)よりも回転子外周に近い外周近接部18aを有するように形成されている。この実施形態では、外周近接部18aは永久磁石17の外側部の延長線上に存在するように形成されている。
ロータコア15の外周面、即ち回転子14の外周面には、第1溝19が、各磁極のd軸20を挟んで両側に位置するように2個形成されている。第1溝19はそれぞれ回転子14の内周側に最も近い底部19aと、底部19aの両側に第1溝の縁である縁部19bを有する。縁部19bは、底部19aの中央を基準として回転子14の周方向のティース間距離TSの範囲内かつd軸20を超えない範囲内において、底部19aより回転子14の外周側かつ回転子14の最外部の回転半径より回転子14の内周側に位置する壁面のうちで、最も底部19aの中央から回転子の周方向に遠い部分である。本実施形態の場合、第1溝19はほぼ矩形断面形状に形成され、縁部19bはその壁面になる。なお、矩形断面のうち開口側角部を縁部19bと見ることもできる。また、縁部19b間が第1溝19の幅W1となる。したがって幅W1はティース間距離TSより小さくなる。また、2つの第1溝19は、各磁極のd軸20を中央として回転子14の周方向にティース間距離TS以上の間隔を設けて形成されている。両第1溝19は、各磁極のd軸20に対して対称に形成されている。各第1溝19は、d軸から遠い側の縁部19bまでの距離Dがティース間距離TSの1.3倍以下に形成されている。この実施形態では各第1溝19は、断面矩形状に形成されるとともに、深さが幅W1の値より小さく形成されている。
また、回転子14の外周面には、各磁極の永久磁石17の回転子外周に最も近い角部(端部)の近くに形成されたブリッジ部21の幅が最も狭くなる部分よりもd軸20側に第2溝22a,22bが形成されている。この実施形態では、第2溝22a,22bは、幅方向の中心と回転子14の中心軸とを結ぶ直線23と、d軸20との成す電気角θが54度程度の位置に形成されている。第2溝22a,22bは、断面三角形状に形成されるとともに、幅W2が第1溝19の幅W1の数倍に形成され、深さは第1溝19より浅く形成されている。最も深い部分は直線23よりd軸から遠い側になるように形成されている。
次に前記のように構成された電動機の作用を説明する。
電動機が負荷状態で駆動される場合は、固定子11の巻線13に3相の電流が供給されて固定子11に回転磁界が発生し、回転子14に回転磁界が作用する。そして、回転磁界と永久磁石17との間の磁気的な吸引力及び反発力により回転子14が回転磁界と同期して回転する。
永久磁石17の誘起電圧が電動機の端子電圧以上となる高速領域では、永久磁石17の中心に固定子11の回転磁界が減磁力となるように弱め界磁制御が行われる。誘起電圧が低ければ、高速回転時の弱め界磁制御に要する電流量が少なくなり、モータ効率が高くなる。
d軸20の近くに第1溝19が存在することにより当該部分を通過する永久磁石17の磁束が少なくなってトルクが小さくなる。第1溝19を間隔を置いて形成した場合は、両第1溝19を連続するように幅W1の2倍の大きさの第1溝を形成した場合に比較して、回転子14から出てティース12に入る磁束の量の変動が少なくなり、コギングトルクの低減効果が向上する。
ティース間距離TSを2mm、第1溝19の幅W1をティース間距離TSの1/2である1mm、深さを0.5mmとし、第2溝22a,22bの幅W2を5.6mm、深さを0.3mmとした場合について、第1溝19及び第2溝22a,22bの位置を変更して、電動機のコギングトルク、トルク、誘起電圧及びトルク脈動(トルクリプル)をシミュレーションで求めた。
具体的には、直線23とd軸20との成す電気角θが54度及び58度の場合について、第1溝19の無い場合及び第1溝19の形成位置を、第1溝19のd軸20から遠い側の縁までの距離Dが、ティース間距離TSのN倍のときの各値を求めた。結果を図3〜図6に示す。なお、図3〜図6において、横軸が示す第1溝位置は、前記N(即ち、D/TS)を意味し、Nが0の場合は距離Dがティース間距離TSの0倍、即ち第1溝19の無い場合を意味する。Nが0.5の場合は距離Dがティース間距離TSの0.5倍の位置に形成された場合である。本実施例ではティース間距離TSが2mmなので距離Dは1mmとなり、幅W1が1mmであるから、図2(a)に示すように、両第1溝19がそれぞれd軸20を含む位置に形成されて、結果として1個になった場合を意味する。また、Nが1の場合は距離Dがティース間距離TSの1倍、即ち図2(b)に示すように、両第1溝19がd軸20を中央として回転子14の周方向にティース間距離TSの間隔を設けて形成されている場合を意味する。以下、d軸20から横軸のNに対応する間隔が設けられて両第1溝19が形成された場合を意味する。Nが1以上の範囲が、各磁極のd軸を中央として回転子14の周方向にティース間距離TS以上の間隔を設けて2箇所に形成されている場合に相当する。
図3〜図6から、第1溝19の位置及び第2溝22a,22bの位置が電動機のコギングトルク、トルク、誘起電圧及びトルク脈動に影響を与えることが確認された。そして、第1溝19を同じ位置に設けた場合で比較すると、第2溝22a,22bの位置が、電気角θが58度の場合に比較して54度の方がコギングトルク、トルク、誘起電圧及びトルク脈動のいずれにおいても優れていることが確認された。
電気角θが54度の場合について各特性に対する第1溝19の位置の影響を比較すると、図3から、コギングトルクは距離Dがティース間距離TSの1.3倍以下と4.1倍以上で第1溝19の無い場合より低減されることが確認できる。図4から、トルクは、距離Dがティース間距離TSの0.6倍で極大で、0.6倍より大きい場合は距離Dの増加に伴って低減することが確認できる。図5から、誘起電圧は、第1溝19を設けることにより低下し、距離Dがティース間距離TSの1.5倍以上4.8倍以下では低減効果が低いことが確認できる。図6から、トルク脈動は、距離Dがティース間距離TSの1.3倍以下及び3.5倍以上で低減することが確認できる。以上のことから、第1溝19を距離Dがティース間距離TSの1.3以下になるように形成すれば、トルクの低下を抑制した状態で、誘起電圧、トルク脈動だけでなくコギングトルクも低減することができる。
また、Nが0.5、すなわち第1溝19の間に鉄心が残る状態(第1溝19の間に間隔がある状態)を注目すると、Nが0.5からコギングトルクが急激に低下している。トルクについてもNが0.5より大きい点で極大になり、誘起電圧についても0.5より大きい点で極小になっている。
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)固定子11のティース12には巻線13が分布巻により巻回されている。回転子14の外周面には、ティース間距離TSより小さな幅W1の第1溝19が、各磁極のd軸20を挟んで両側に位置するように2個、かつ第1溝19のd軸20から遠い側の縁部19bまでの距離Dがティース間距離TSの1.3倍以下になるように形成されている。また、回転子14の外周面には、永久磁石17の回転子外周に最も近い角部付近に形成されたブリッジ部21の幅が最も狭くなる部分よりもd軸側に第2溝22a,22bが形成されている。したがって、誘起電圧、トルク脈動だけでなくコギングトルクも低減することができる。
(2)第1溝19が各磁極のd軸20を中心としてティース間距離TS以上の間隔を設けて2箇所に形成されると、2個の第1溝19がd軸20を含む位置で連続して1個になる状態で形成される場合に比較して、コギングトルクの低減効果が向上する。
(3)第1溝19の幅W1がティース間距離TSの1/2に設定されると、2個の第1溝19がティース間距離TSに近い場合に比較して、コギングトルクの低減効果が向上する。
(4)第2溝22a,22bを、その幅方向の中心と回転子14の中心軸とを結ぶ直線23と、d軸20との成す電気角θが54度の位置に形成すると、コギングトルクを確実に低減することができる。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 第1溝19は、幅W1がティース間距離TSより小さければよく、ティース間距離TSの1/2に限らず、1/2より大きくても小さくてもよい。しかし、いずれの場合も両第1溝19はd軸20を含まない状態で形成される。
○ 第1溝19の深さはコギングトルクに殆ど影響を与えないため、深さを幅W1の値より大きくしてもよい。
○ 第1溝19の形状は、断面矩形状に限らず、例えば、断面半円状あるいはV字溝としてもよい。
○ 「縁部19bは、底部19aを中央とした回転子の周方向の固定子のティース間距離TSの範囲内かつd軸20を超えない範囲内において、底部19aより回転子外周側かつ回転子の最外部の回転半径より回転子の内周側に位置する壁面のうちで、最も底部19aから回転子の周方向に遠い部分である。」を例示すると、次のようになる。図7(a)に示すように、底部19aの幅が開口部の幅より狭い断面台形状の第1溝19の場合、底部19aに連続する両壁面の底部19aから最も遠い部分が縁部19bになる。また、図7(b)に示すように、第1溝19の断面形状が、開口部より内側部分の幅が大きな形状の場合、底部19aより回転子外周側かつ回転子の最外部の回転半径より回転子の内周側に位置する壁面のうちで、最も底部19aから回転子の周方向に遠い部分が縁部19bとなる。どちらの場合も第1溝19の幅W1は、縁部19b間の距離である。
○ 図7(a)においては台形断面の溝であり、台形断面の平行な辺のうち短い辺に相当する部分、すなわち19aが第1溝の底部であり、台形断面の平行な辺のうち長い辺の両端に相当する角部に相当する19bが第1溝の縁部であり、縁部19b間の距離が第1溝の幅W1とみることもできる。
○ 第1溝19の幅W1とは、第1溝19の断面形状が矩形や台形などのように、底部19aに連続するとともに回転子14の外周側に向かって壁面が直線状に延びる場合は、開口部を挟んだ両縁部19b間の距離が幅W1になる。しかし、例えば、図7(c)に示すように、第1溝19の開口部となる回転子外周側の端部に、回転子14の最外部の回転軌跡より回転子14の内側になる凹部24が連続する場合は、所定の条件を満たす場合、見かけ上、凹部24が第1溝19の一部を構成していても、凹部24を第1溝19に含めない。したがって、d軸20から遠い側の縁部19bは凹部24との境になる。また、図7(d)に示すように、凹部24が第1溝19よりd軸20側に存在する場合も同様である。なお、凹部24を第1溝19の一部と見なさない所定の条件は、凹部24の影響が磁気的に無視できる場合を意味する。例えば、固定子11と回転子14のギャップに対して、回転子14の最外周から凹部24までの距離(凹部の深さ)が30%未満の場合を意味する。上記の構成を言い換えると、回転子14の最外部と縁部19bとの回転子14の半径方向距離が、固定子11と回転子14とのギャップの30%未満となるように第1溝が形成されている。すなわち、ギャップに対して30%以上の深さをもつ様に第1溝を形成されている。車両駆動用の回転電機の場合、その体格と寸法公差、加工精度の面からも、ギャップに対して30%以上の溝を形成すればより確実にコギングを低減することができる。
○ 第2溝22a,22bの深さは第1溝19の深さより浅い必要はなく、第1溝19の深さ以上であってもよい。
○ 第2溝22a,22bの形状は、断面三角形状に限らない。例えば、図8に示すように、断面台形状としてもよい。
○ 各磁極に埋設される永久磁石17は、平板状の永久磁石17が2個V字状に配置された構成に限らない。例えば、永久磁石17を平板状ではなく、図9(a)に示すように、厚さ方向において円弧状に湾曲した板状とし、各磁極に1個の永久磁石17を回転子14の中心軸側が凸となる状態で設けてもよい。この場合、2個の平板状の永久磁石17をV字状に配置する場合に比較して、磁束の流れにとっては好ましい。しかし、永久磁石17の製作し易さ及び取り扱い易さの点からは、平板状の永久磁石17のV字配置の方が好ましく、ロータコア15の強度の面からもV字配置の方が好ましい。
○ 図9(b)に示すように、永久磁石17が、平板状に形成されるとともに厚さ方向に着磁されたものが各磁極に1個ずつ設けられ、かつ回転子14の半径方向と直交する方向に延びる状態で配置されている構成でもよい。この場合、同じ極数であればV字状配置に比較して、永久磁石17の数が少なくなり、回転子14の組立が容易になる。
○ 各磁極の永久磁石17を複数に分割された永久磁石17で構成する場合、各永久磁石17を円弧状に湾曲した板状としてもよい。断面円弧状の永久磁石17は、円弧が長いと割れ易いが、円弧が短い永久磁石17を使用することにより、断面円弧状でも割れ難くなる。
○ 回転子14の極数は8極に限らず、4極以上の偶数極であればよく、回転子14の大きさにより適宜設定される。
○ 電動機に限らず発電機に適用してもよい。
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)複数個の永久磁石がロータコア内に埋め込まれた回転子を備えた永久磁石式回転電機であって、固定子に設けられたティースには巻線が分布巻により巻回され、前記回転子の外周面には、固定子のティース間距離より小さな幅の第1溝が、各磁極のd軸を中心として2個対称に、前記ティース間距離以上の間隔で、かつ第1溝のd軸から遠い側の縁までの距離が前記ティース間距離の1.3倍以下になるように形成されるとともに、前記永久磁石のq軸側に形成されたブリッジ部の幅が最も狭くなる部分よりもd軸側に前記第1溝より浅い第2溝が形成されていることを特徴とする永久磁石式回転電機。
(2)請求項1〜請求項3及び前記技術的思想(1)のいずれか一項に記載の発明において、前記第2溝は幅方向の中心と回転子の中心軸とを結ぶ直線と、d軸との成す電気角θが54度程度の位置に形成されている。
一実施形態を示し、(a)は回転電機の部分模式図、(b)は(a)において一点鎖線で囲まれた部分の拡大図。 (a),(b)は第1溝の位置関係を示す模式図。 第1溝及び第2溝の位置とコギングトルクの関係を示すグラフ。 第1溝及び第2溝の位置とトルクの関係を示すグラフ。 第1溝及び第2溝の位置と誘起電圧の関係を示すグラフ。 第1溝及び第2溝の位置とトルク脈動の関係を示すグラフ。 (a)〜(d)は別の実施形態の第1溝の形状を示す部分模式図。 別の実施形態の第2溝の形状を示す部分模式図。 (a),(b)は別の実施形態のロータコアを示す部分模式図。 従来技術の回転子の部分模式図。
符号の説明
D…距離、TS…ティース間距離、W1,W2…幅、11…固定子、12…ティース、13…巻線、14…回転子、15…ロータコア、17…永久磁石、19…第1溝、19a…底部、19b…縁部、20…d軸、21…ブリッジ部、22a,22b…第2溝。

Claims (7)

  1. 複数個の永久磁石がロータコア内に埋め込まれた回転子を備えた永久磁石式回転電機であって、
    固定子に設けられたティースには巻線が分布巻により巻回され、
    前記回転子の各磁極において、前記回転子の外周面に、各磁極のd軸を挟んで両側に第1溝が形成されるとともに、前記永久磁石の回転子外周に最も近い端部の近くに形成されたブリッジ部の幅が最も狭くなる部分よりもd軸側に第2溝が形成され、
    前記第1溝は回転子内周側に最も近い底部と、前記底部の両側に第1溝の縁である縁部を有し、
    前記縁部は、前記底部の中央から回転子の周方向の固定子のティース間距離の1/2の範囲内かつ前記d軸を超えない範囲内において、前記底部より回転子外周側かつ回転子の最外部の回転半径より回転子の内周側に位置する壁面のうちで、最も前記底部から回転子の周方向に遠い部分であり、
    前記第1溝のd軸から遠い側の縁部までの回転子の周方向の距離が前記固定子のティース間距離の1.3倍以下になるように形成されていることを特徴とする永久磁石式回転電機。
  2. 前記第1溝は、各磁極のd軸を中央として回転子の周方向にティース間距離以上の間隔を設けて2箇所に形成されている請求項1に記載の永久磁石式回転電機。
  3. 前記第1溝の幅は、前記ティース間距離の1/2に設定されている請求項1又は請求項2に記載の永久磁石式回転電機。
  4. 複数個の永久磁石がロータコア内に埋め込まれた回転子を備えた永久磁石式回転電機であって、
    固定子に設けられたティースには巻線が分布巻により巻回され、
    前記回転子の各磁極において、前記回転子の外周面に、各磁極のd軸を挟んで両側に第1溝が形成されるとともに、前記永久磁石の回転子外周に最も近い端部の近くに形成されたブリッジ部の幅が最も狭くなる部分よりもd軸側に第2溝が形成され、
    前記第1溝は、幅が前記固定子のティース間距離より小さく、前記第1溝のd軸から遠い側の縁部までの回転子の周方向の距離が前記固定子のティース間距離の1.3倍以下になるように形成されていることを特徴とする永久磁石式回転電機。
  5. 前記第1溝は矩形断面の溝であり、
    前記矩形断面のうち、前記第1溝の開口側角部が前記第1溝の縁部であり、
    前記縁部間の距離が前記第1溝の幅である、請求項4に記載の永久磁石式回転電機。
  6. 前記第1溝は台形断面の溝であり、
    前記台形断面の平行な辺のうち短い辺が前記第1溝の底部であり、
    前記台形断面の平行な辺のうち長い辺の両端に相当する角部が前記第1溝の縁部であり、
    前記縁部間の距離が前記第1溝の幅である、請求項4に記載の永久磁石式回転電機。
  7. 前記回転子の最外部と前記縁部との前記回転子の半径方向距離が、前記固定子と前記回転子とのギャップの30%未満である、請求項4から請求項6のうちいずれか一項に記載の永久磁石式回転電機。
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