JP2008135759A - ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを絶縁層として用いたプリント配線基板用ベース基板、多層プリント配線板 - Google Patents

ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを絶縁層として用いたプリント配線基板用ベース基板、多層プリント配線板 Download PDF

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Abstract

【課題】 極めて高温での使用にも耐える電子部品の基材として好適であり、高い剛性を持ち、かつ極めて高い耐熱性を有するポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを提供すること。
【解決手段】 ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とが重縮合してなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムであって、
該ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを、不活性ガス雰囲気下、170℃で7分間保持することで予備乾燥した後、500℃で10秒間加熱した場合における、前記500℃で10秒間加熱する間に揮発する水分量が、予備乾燥前の該ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムに対して10000ppm以下であることを特徴とするポリイミドベンゾオキサゾールフィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、極めて高温での使用にも耐える電子部品の基材として好適であり、高い剛性を持ち、かつ極めて高い耐熱性を有するポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを絶縁層として用いたプリント配線基板用ベース基板、多層プリント配線板に関する。
ポリイミドフィルムは、その卓越した耐熱性や電気特性・機械的物性・寸法安定性などを有しているために、フレキシブルプリント配線板(FPC)、テープ・オートメーテッド・ボンディング(TAB)用キャリアテープ、半導体実装のための基材をはじめとする各種電子材料や産業機器、航空機などの高性能部品等の広範な分野で用いられている。
特に、近年の高密度実装に伴う回路基板や半導体パッケージ用基材においては、信号伝送の高速化を図るために誘電率の低い絶縁樹脂を層間絶縁膜として使用することが主流となってきている。ポリイミドフィルムはその代表的な絶縁材料の一つである。
通常、ポリイミドフィルムは、接着剤を用いて銅箔と貼り合わせたり、蒸着法、メッキ法、スパッタ法、又はキャスト法によりフィルム層と銅箔からなる積層板(銅箔付きポリイミドフィルム)に加工されたりして、フレキシブルプリント多層回路基板の基材フィルムとして使用される。
近年は、かかる多層基板の半導体パッケージ用基材用途への要求特性が高くなってきており、従来のリードフレームを用いたICパッケージと同様の信頼性が求められるようになってきている。半導体パッケージの信頼性試験では高温高湿試験や冷熱衝撃試験など過酷な環境下での安定性が要求され、従来のポリイミドフィルムの使用ではこれらの要求を満たせないことが問題になってきている。
例えば、半導体の実装においては、基材フィルムに形成されたリード部に半田バンプ等を介して、半導体チップとボンディングする際に、基材フィルムであるポリイミドフィルムが高温(220〜320℃程度)に曝されるため、ポリイミドフィルムの膨れや銅箔の剥がれが発生し、生産効率が低下するという問題があった。
さらに、半導体素子の高密度化による発熱量の増加に伴い、使用と不使用の繰り返しによる冷熱衝撃環境で、ポリイミドフィルムに膨れや剥がれが発生し、接触不良の原因になる等の問題もあった。
かかる問題に対処するために、ベンゾオキサゾール環を主鎖に有したポリイミドからなる耐熱性と剛性が高く温度による寸法変化の少ない所謂ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムが提案されている(特許文献1〜3参照)。しかし、極めて高温下で使用する用途(例えば、無機薄膜形成用基材等)においては信頼性に関して要求を満たすレベルには到達せずその改善が強く嘱望されていた。
特開平6−56992号公報 特表平11−504369号公報 特表平11−505184号公報
本発明は、極めて高温での使用にも耐える電子部品の基材として好適であり、高い剛性を持ち、かつ極めて高い耐熱性を有するポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを絶縁層として用いたプリント配線基板用ベース基板、多層プリント配線板を提供することを課題とする。
かかる状況に鑑み、本発明者らは鋭意検討した結果、高温や冷熱衝撃によってポリベンゾオキサゾールフィルムに発生する膨れや剥がれが、ポリベンゾオキサゾールフィルムにわずかに残存するアミド酸残基が縮合するときに発生する水分に起因することに着目し、残存アミド酸量をさらに赤外吸収スペクトルで検出できない程度の極めて少ない量にすることによって、従来に無い高温や冷熱衝撃による水分発生量の少ないポリベンゾオキサゾールフィルムが得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とが重縮合してなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムであって、該ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを、不活性ガス雰囲気下、170℃で7分間保持することで予備乾燥した後、500℃で10秒間加熱した場合における、前記500℃で10秒間加熱する間に揮発する水分量が、予備乾燥前のポリイミドベンゾオキサゾールフィルムに対して10000ppm以下であることを特徴とするポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを絶縁層として用いたプリント配線基板用ベース基板、多層プリント配線板に関する。
本発明によれば、ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの残存アミド酸量を赤外吸収スペクトルで検出できない程度の極めて少ない量にすることによって、高温での揮発水分量が極めて少ないポリイミドベンゾオキサゾールフィルムが得られるので、基材フィルムとして各種電子部品積層体に用い高温で使用しても膨れや剥がれの発生を防止できる。したがって、本発明のポリイミドベンゾオキサゾールフィルムは、極めて高温で使用するフレキシブルプリント配線用銅張基板(FPC)やテープ・オートメーテッド・ボンディング(TAB)用キャリアテープなどの製造に用いる基材フィルムとして有用である。
以下、本発明のポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを絶縁層として用いたプリント配線基板用ベース基板、多層プリント配線板の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のポリイミドベンゾオキサゾールフィルムは、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重縮合させて得られるポリイミドベンゾオキサゾールからなる略平板状のフィルムであり、不活性ガス雰囲気下、170℃で7分間保持して予備乾燥した後、500℃で10秒間加熱した場合における、前記500℃で10秒間加熱する間に揮発する水分の、予備乾燥前のポリイミドベンゾオキサゾールフィルムに対する量(ppm)(以下、本明細書中においては、「高温での揮発水分量」と略すことがある。)が10000ppm以下であることを特徴とし、当該高温での揮発水分量は、好ましくは7000ppm以下であり、より好ましくは4000ppm以下であり、さらに好ましくは2500ppm以下である。
高温での揮発水分量が、10000ppmより大きい場合は、ボイド等の発生によるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの腫れが大きくなりすぎ、剥がれに伴う接触不良が発生しやすくなる。
「高温での揮発水分量」は少なければ少ないほど好ましいが、製造の容易性、コスト等を考慮すれば、実質的に不具合が生じない程度にすればよく、その下限としては、具体的には10ppm以上である。
「高温での揮発水分量」の測定において、まずポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを、不活性ガス雰囲気下、170℃で7分間保持して予備乾燥するのは、ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムに吸着されている水分を除去するためである。当該工程により、予備乾燥後に発生する水分は、残存したアミド酸の縮合により発生した水分に由来するものであると考えられる。ここで、不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、ネオン等が挙げられる。
本発明における高温での揮発水分量は、キューリーポイント型熱分解装置を用いたGCMS法によって測定されるものである。具体的には、高温での揮発水分量は、以下の方法により測定する。すなわち、あらかじめ加熱乾燥処理したホイル(例えば、日本分析工業製パイロホイル等)に、ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの試料を8mgを目安に精秤し(秤量値をA(mg)とする。)、キューリーポイント型熱分解装置(例えば、HP社製、JHS−3等)内の保温温度を170℃にセットして、試料ホイルを導入、7分間不活性ガス(好ましくは、ヘリウム)でパージして、フィルム中に吸着している水分を除去する。その後、直ちに発振操作により500℃で10秒間加熱し、その500℃で10秒間加熱している間にフィルムから揮発して検出されるm/z=18の水イオンピークの面積を求め、絶対検量線法により揮発水分量(B(μg)とする。)を求め、高温での揮発水分量を次式により算出する。
高温での揮発水分量(ppm)=B(μg)/A(mg)×1000
上記検量線は、例えば、無水硫酸ナトリウム等により脱水した溶媒(例えば、メタノール等)に、一定量の水を添加した標準液を調製し、GCMSによりm/z=18の水イオンピーク面積を用いて作成したものを用いることができる。このときの検量線は、例えば、式:発生水分量B(μg)=ax+b(式中、aは傾きを、bは切片を、xはピーク面積を示す。)で表すことができ、xに水イオンピークの面積値を代入することにより発生水分量Bを求めることができる。
ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、具体的には以下のものが挙げられる。
Figure 2008135759
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これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。
該ジアミンは、単独であっても二種以上を用いることも可能である。
本発明においては、全ジアミンの30モル%以下であれば下記に例示されるベンゾオキサゾール構造を有しないジアミン類を一種または二種以上を併用しても構わない。例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン,4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシ基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシ基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
本発明において用いられるテトラカルボン酸無水物は芳香族テトラカルボン酸無水物類である。芳香族テトラカルボン酸無水物類としては、具体的には、以下のものが挙げられる。
Figure 2008135759
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これらのテトラカルボン酸二無水物は単独でも二種以上を用いることも可能である。
本発明においては、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%以下であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種または二種以上を併用しても構わない。用いられるテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等である。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独でも二種以上を用いることも可能である。
本発明のポリイミドベンゾオキサゾールフィルムは、まず、(a)ジアミン類とテトラカルボン酸無水物類とを溶媒中で縮合してポリアミド酸溶液を得て(以下、工程(a)ともいう。)、次いで、(b)ポリアミド酸溶液を支持体上に塗布して、残留溶媒量がグリーンフィルム全体量に対して50重量%以下になるように自己支持性が発現するまで乾燥することによりグリーンフィルムを得て(以下、工程(b)ともいう。)、次いで、(c)得られたグリーンフィルムを支持体から剥離し、400℃以上の温度領域で5分間以上滞留する温度プロファイルで熱処理する(以下、工程(c)ともいう。)ことにより製造される。
以下、本発明のポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの製造方法(以下、単に本発明の製造方法という。)について詳説する。
<工程(a)>
ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重合してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等が挙げられる。これらの溶媒は,単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの重量が、通常5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%となるような量が挙げられる。
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜80時間連続して撹拌および/または混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の重量は、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の有機溶媒溶液を製造するのに有効である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封鎖剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封鎖剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
<工程(b)>
ポリアミド酸溶液を塗布する支持体は、ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形するに足る程度の平滑性、剛性を有していればよく、表面が金属、プラスチック、ガラス、磁器などであるドラムまたはベルト状回転体などが挙げられる。中でも、支持体の表面は好ましくは金属であり、より好ましくは錆びなくて耐腐食に優れるステンレスである。支持体の表面にはCr、Ni、Snなどの金属メッキを施してもよい。支持体表面は必要に応じて鏡面にしたり、あるいは梨地状に加工することができる。支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
上記に代わる支持体として、金属板(箔、膜、プレート)を挙げることができる。すなわち、後述するポリイミドベンゾオキサゾールフィルムをプリント配線基板用ベース基板の製造に用いる場合の一製法として、前記ベース基板の金属層となるべき金属板を支持体として、そこにポリアミド酸溶液を塗布するのである。この場合のポリアミド酸溶液の塗布手段は特に限定されず、コンマコーター、ナイフコーター、ロールコーター、リバースコーター、ダイコ−ーター、グラビアコーター、ワイヤーバー等公知の塗布手段を挙げることができる。
工程(b)においては、得られるグリーンフィルムの全重量に対する残留溶媒量(重量%)は、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、さらにより好ましくは35重量%以下である。該残留溶媒量が50重量%より大きくなる場合は、ハンドリング性に劣るため好ましくない。該残留溶媒量の下限は特に限定はないが、イミド化反応工程でのフィルム破断を防止するためには、25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。該残留溶媒量は、TGA(熱重量分析)またはゲル浸透クロマトグラフ(GPC)等により、測定(算出)することができる。
フィルム全重量に対する残留溶媒量が所定の範囲であるグリーンフィルムを得るための乾燥条件としては、例えば、N−メチルピロリドンを溶媒として用いる場合は、乾燥温度は、好ましくは70〜130℃、より好ましくは75〜125℃であり、さらに好ましくは80〜120℃である。乾燥温度が130℃より高い場合は、分子量低下がおこり、グリーンフィルムが脆くなりやすい。また、グリーンフィルム製造時にイミド化が一部進行し、イミド化工程時に所望の物性が得られにくくなる。また70℃より低い場合は、乾燥時間が長くなり、分子量低下がおこりやすく、また乾燥不十分でハンドリング性が悪くなる傾向がある。また、乾燥時間としては乾燥温度にもよるが、好ましくは10〜90分間であり、より好ましくは15〜80分間である。乾燥時間が90分間より長い場合は、分子量低下がおこり、フィルムが脆くなりやすく、また10分間より短い場合は、乾燥不十分でハンドリング性が悪くなる傾向がある。また、乾燥効率の向上または乾燥時の気泡発生の抑制のために、70〜130℃の範囲で温度を段階的に昇温して、乾燥してもよい。そのような条件を達する乾燥装置も従来公知のものを適用でき、熱風、熱窒素、遠赤外線、高周波誘導加熱などを挙げることができる。
<工程(c)>
工程(b)で得られたグリーンフィルムを所定の条件でイミド化することで高温での揮発水分量が10000ppm以下であるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを得ることができる。
イミド化の具体的な方法としては、従来公知のイミド化反応を適宜用いることが可能である。例えば、閉環触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、必要により延伸処理を施した後に、加熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができる。
高温での揮発水分量が少ないポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを得るためには、熱閉環法および化学閉環法のいずれにおいても、400℃以上の温度領域で、5分間以上滞留する温度プロファイルで熱処理する必要があり、好ましくは400℃〜430℃の温度範囲で20分以上、より好ましくは430〜460℃の温度範囲で10分間以上、さらに好ましくは460〜500℃の温度範囲で5分間以上滞留する温度プロファイルである。グリーンフィルムを係る温度プロファイルで熱処理することにより、高温での揮発水分量が所定の範囲以下になるようにイミド化反応を進行させることができる。
温度プロファイルの温度および時間の上限は特に限定はないが、フィルムの分解を回避するためには、温度は600℃以下、好ましくは550℃以下であり、生産性を考慮すれば、時間は60分間以下、好ましくは40分間以下、さらに好ましくは30分間以下である。
化学閉環法では、ポリアミド酸溶液を支持体に塗布した後、イミド化反応を一部進行させて自己支持性を有するフィルムを形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。この場合、イミド化反応を一部進行させる条件は、100〜200℃による3〜20分間の熱処理であり、その後、上記温度プロファイルで熱処理すればよい。
閉環触媒をポリアミド酸溶液に加えるタイミングは特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどといった脂肪族第3級アミンや、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどといった複素環式第3級アミンなどが挙げられ、中でも、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンが好ましい。ポリアミド酸1モルに対する閉環触媒の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.5〜8モルである。
脱水剤をポリアミド酸溶液に加えるタイミングも特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。
ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの厚さは特に限定されないが、後述するプリント配線基板用ベース基板に用いることを考慮すると、通常5〜150μm、好ましくは8〜50μmである。この厚さはポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度によって容易に制御し得る。
次に、上述したポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを用いたプリント配線基板用ベース基板を説明する。
ここで、「プリント配線基板用ベース基板」とは、絶縁板の少なくとも片面に金属層を積層してなる構成の略平板状の基板である。積層される金属層は、エッチング等の加工によって回路を形成することが意図される回路用の金属層であってもよいし、特に後加工をせずに絶縁板と一緒になって放熱等の目的に用いられる金属層であってもよい。
「プリント配線基板用ベース基板」の用途としては、FPC、TAB用キャリアテープ等が、高温環境下における膨れや剥がれが小さいという本発明のポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの特徴を活かすことができるため好ましい。
ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの少なくとも片面に積層される金属は特に限定はなく、好ましくは銅、アルミニウム、ステンレス鋼などである。積層手段は特に問わず、以下のような手段が例示される。
・接着剤を用いて、ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムに金属板を貼り付ける手段、
・金属板を支持体として、そこにポリアミド酸溶液を塗布して上述のようにイミド化してフィルムを形成させる手段、
・ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムに蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの真空コーティング技術を用いて金属層を形成する手段、
・無電解めっき、電気めっきなどの湿式メッキ法により金属層をポリイミドベンゾオキサゾールフィルムに形成する手段。
これらの手段を単独で、あるいは組み合わせることによってポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの少なくとも片面に金属層を積層することができる。
金属層の厚さは特に制限はないが、当該金属層を回路用(導電性)とする場合には、その金属層の厚さは好ましくは1〜35μmであり、より好ましくは3〜18μmである。金属層を貼り合わせたポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを放熱基板として用いる場合には、金属層の厚さは、好ましくは50〜3000μmである。この金属層のポリイミドと接着される表面の表面粗さについては特に限定されないが、JISB 0601(表面粗さの定義と表示)における、中心線平均粗さ(以下Raと記載する)および十点平均粗さ(以下Rzと記載する)で表示される値が、Raについては0.1μm以下、Rzについては1.00μm以下であるものがフィルムと金属層との接着性向上の効果が大きく好ましい。その中でも特にこれらの条件を同時に満足するものが好ましい。なお、RaおよびRzは小さいほど好ましいが、入手・加工の容易さからRaの下限は0.0001μm、Rzの下限は0.001μmが例示される。
本発明で使用する金属層の表面には、金属単体や金属酸化物などといった無機物の塗膜を形成してもよい。また金属層の表面を、カップリング剤(アミノシラン、エポキシシランなど)による処理、サンドプラスト処理、ホ−リング処理、コロナ処理、プラズマ処理、エッチング処理などに供してもよい。同様に、ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの表面をホ−ニング処理、コロナ処理、プラズマ処理、エッチング処理などに供してもよい。
以下、本発明の有効性を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
2.残溶媒量の測定方法
TGA装置(MACサイエンス社製TG−DTA2000S)を用い、前駆体フィルムを、窒素気流中にて、室温から10℃/分にて400℃まで昇温、400℃にて30分間保持した後の加熱重量減を測定し、その重量減少率を、重量減少は全て残溶媒が揮発したものと仮定して、残溶媒量(重量%)とした。
3.ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムのフィルム厚さ
フイルムの厚さは、マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
4.ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの引張弾性率、引張破断強度および破断伸度
乾燥後のフィルムを長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ長さ100mm、幅10mmの短冊状に切り出して試験片とし、引張試験機(島津製作所製オートグラフ(R)機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて測定し、引張弾性率、引張強度及び破断伸度を求めた。
5.ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの線膨張係数(CTE)
測定対象のポリイミドベンゾオキサゾールフィルムについて、下記条件でMD方向およびTD方向の伸縮率を測定し、30℃〜45℃、45℃〜60℃、・・・と15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。MD方向とTD方向の意味は上記「3.」の測定と同じである。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
6.ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの融点、ガラス転位温度
試料を下記条件でDSC測定し、融点(融解ピーク温度Tpm)とガラス転移点(Tmg)をJISK 7121に準拠して下記測定条件で求めた。
装置名 ; MACサイエンス社製DSC3100S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料重量 ; 4mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
7.ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの熱分解温度
熱分解温度は、充分に乾燥した試料を下記条件でTGA測定(熱天秤測定)して、5%重量減をもって規定した。
装置名 ; MACサイエンス社製TG−DTA2000S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料重量 ; 10mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
8.ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの高温での揮発水分量
キューリーポイント型熱分解装置を用いて、GCMS法より、揮発水分量を求めた。
あらかじめ加熱乾燥処理した日本分析工業製500℃用パイロホイルに、試料(目安8mg)を精秤し(秤量値をA(mg)とする。)、熱分解装置内保温温度を170℃にセットして、試料ホイルを導入、7分間ヘリウムパージして、フィルム中に吸着している水を予備乾燥除去した。その後、直ちに発振操作により500℃で10秒で加熱した。その500℃での10秒間の加熱中にフィルムから揮発する水分について、GCMSでm/z=18の水イオンピークを検出した。このピーク面積を求め、絶対検量線法により発生水分量B(μg)を求めた。検量線は、無水硫酸ナトリウムによる脱水メタノールを調製試薬として、一定量の水を2水準以上添加した標準液を調製し、GCMSによりm/z=18のピーク面積を用いて作成した。このときに検量線をy=ax+b(a:傾き、b:切片、y:発生水分量B(μg)、x:ピーク面積)とした。ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムに対する高温での揮発水分量は次式により算出した。
高温での揮発水分量(ppm)=B(μg)/A(mg)×1000
熱分解GCMS条件
装置:HP5971A(HP社製GCMS)、
JHS−3(日本分析工業社製熱分解装置)
カラム:PORAPLOT−Q(ジーエルサイエンス社製)、φ0.32mm×10m
カラム温度:60℃一定
流量:He 0.7ml/min、スプリット導入
9.ポリイミドベンズオキサゾールフィルムの半田耐熱性、接点不良率
<接着剤の調製>
接着剤として、(A)ポリアミド樹脂(酸性分:ダイマー酸、アミン成分:ヘキサメチレンジアミン、酸価1.0、アミン価0)、(B)エポキシ樹脂I:4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル(エポキシ当量:190)(C)エポキシ樹脂II.ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:186)、(D)フェノール樹脂レゾールフェノール”CKM−1282”(昭和高分子(株)製)、(E)添加剤2−ヘプタデシルイミダゾールをそれぞれ50.0:8.0:12.0:29.5:0.5の割合(質量比)で配合し、接着剤を得た。
<ビルドアップ多層配線板の製造>
FR4の4層プリント配線板をコア層とし、
1196988737531_0
に示されるビルドアップ多層プリント配線板を試作した。コア層表面の銅箔厚みは25μmである。まずポリイミドフィルムの片面に接着剤溶液を塗布し、80℃×40分間にて乾燥させた。接着剤の乾燥膜厚は25μmとした。ついで、コア基板の両面に接着剤を塗布したポリイミドフィルムを重ね真空ラミネータにて仮圧着し、次いで、150℃に加熱した熱板プレスにて実加重20kgf/cm2に30分間プレスした。穴開けにはYAGレーザーを用いた。ビア径は150μmである。穴開け後、デスミア処理を行い、水洗後に基板全面をプラズマ処理した後に、コンディショニング、触媒付与、活性化を経て、ホルマリン還元浴にて0.8μm厚の無電解銅メッキを行い、次いで硫酸銅メッキ浴にて電気厚付けメッキ・ビアフィルメッキを実施、表面をバフ研磨して平面性を確保した段階の銅箔厚みは15μmであった。パターン形成は25μm厚のドライフィルムレジストを、ラミネート、露光、現像し、塩化第二銅溶液にてエッチングした後にレジスト剥離、希硫酸洗浄を行い細線幅70μmの導体パターンを形成した。
<半田耐熱性>
第2ビルドアップ層形成は、ポリイミドフィルムに塗布する接着剤を15μmとした他は、第1ビルドアップ層と同様に行った。以上の工程を経て、両面に各2層のビルドアップ層を有する、合計8層の多層プリント配線板を得た。
得られた多層プリント配線板を、280℃に加熱した錫−銅−銀系の鉛フリー半田槽に10秒間浸漬し、剥離、膨れ等の有無を目視にて観察した。
次いで、エタック(R)温度サイクル試験装置(楠本化成(株)製)に装填して、−50℃の低温と150℃の高温との間を30分ごとに繰り返して加熱冷却させる加熱冷却サイクル試験を100時間実施、試験後に280℃に加熱した錫−銅−銀系の鉛フリー半田槽に10秒間浸漬し、剥離、膨れ等の有無を目視にて観察した。
<接点不良率>
得られた多層プリント配線板(25.4mm×25.4mm)に7mm×7mmの半導体チップをフェイスダウンボンディングにて搭載した。接点数は256である。
当該パッケージをエタック(R)温度サイクル試験装置(楠本化成(株)製)に装填し、−50℃の低温と150℃の高温との間を30分ごとに繰り返して加熱冷却させるサイクル試験を500時間行い。試験後に導通検査を行い、接続点の不良率を求めた。
(実施例1)
<重合およびフィルムの製造例1>
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後,5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール500重量部を仕込んだ。次いで,N−メチル−2−ピロリドン5000重量部を加えて完全に溶解させた後,ピロメリット酸二無水物485重量部を加え,25℃の反応温度で15時間攪拌すると,褐色で粘調なポリアミド酸溶液が得られた。このもののηsp/Cは4.0であった。
続いてこのポリアミド酸溶液をステンレスベルトに、スキージ/ベルト間のギャップを650μmとしてコーティングし、90℃にて60分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムをステンレスベルトから剥離し厚み40μmのグリーンフィルムを得た。このときのグリーンフィルムの残溶媒量は39%であった。得られたグリーンフィルムを、連続式の乾燥炉に通し、170℃にて3分間熱処理した後、450℃まで、約70℃/分にて昇温し、450℃にて10分間熱処理し、5分間かけて室温まで冷却、厚み25μmの褐色のポリイミドベンゾオキサゾールフィルム(フィルム1)を得た。得られたポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの特性値評価した。また、得られたポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを用いビルドアップ多層配線板を製造し、半田耐熱性および接点不良率を評価した。それぞれの結果を表1に示す。
(実施例2、比較例1、2)
熱処理の温度プロファイルを、表1に示したとおりにしたこと以外は実施例1と同様にして、ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムおよびビルドアップ多層配線板を得、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2008135759
高温での揮発水分量が10000ppm以下である、実施例1および2のポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの半田耐熱性および接点不良性は良好であったが、比較例1および2においては加熱冷却サイクル試験後に半田耐熱テストではれが発生し、接点不良率も悪いものであった。
本発明のポリイミドベンゾオキサゾールフィルムは、高温での揮発水分量が極めて少ないので、基材フィルムとして各種電子部品積層体に用い、高温で使用した場合に、膨れや剥がれの発生を防止できる。したがって本発明のポリイミドベンゾオキサゾールフィルムは、極めて高温で使用するフレキシブルプリント配線用銅張基板(FPC)やテープ・オートメーテッド・ボンディング(TAB)用キャリアテープなどの製造に用いる基材フィルムとして有用である。
ビルドアップ多層配線板製造における第一ビルトアップ層を形成する工程を示す概略図である。 ビルドアップ多層配線板製造における第二ビルトアップ層を形成する工程を示す概略図である。
符号の説明
1 コア基板
2 コア基板導体パターン
3 接着剤層
4 耐熱フィルム(ポリイミドベンゾオキサゾールフィルム)
5 ビルドアップ導体層

Claims (2)

  1. ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とが重縮合してなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを絶縁層として用いたプリント配線基板用ベース基板であって、
    該ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを、不活性ガス雰囲気下、170℃で7分間保持することで予備乾燥した後、500℃で10秒間加熱した場合における、前記500℃で10秒間加熱する間に揮発する水分量が、予備乾燥前の該ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムに対して10000ppm以下であることを特徴とするポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを絶縁層として用いたプリント配線基板用ベース基板。
  2. ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とが重縮合してなるポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを絶縁層として用いた多層プリント配線板であって、
    該ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを、不活性ガス雰囲気下、170℃で7分間保持することで予備乾燥した後、500℃で10秒間加熱した場合における、前記500℃で10秒間加熱する間に揮発する水分量が、予備乾燥前の該ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムに対して10000ppm以下であることを特徴とするポリイミドベンゾオキサゾールフィルムを絶縁層として用いた多層プリント配線板。
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