JP2008100639A - シートベルトリトラクタおよびこれを備えたシートベルト装置 - Google Patents

シートベルトリトラクタおよびこれを備えたシートベルト装置 Download PDF

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Abstract

【課題】乗員がシートベルトの装着を解除した時にシートベルトを最大限巻き取ることを可能にしつつ、エンドロックを防止する。
【解決手段】乗員がシートベルトの装着を解除するため、タングとバックルの係止を解除すると、スプールが、最初、主スプリングSmのスプリング力のみによる小さな巻取りトルクでシートベルトを巻き取る。そして、タングとバックルの係止の解除時点から設定時間経過すると、主スプリングSmと補助スプリングSsの各スプリング力の合力による大きな巻取りトルクでシートベルトを最大限(完全に)巻き取る。シートベルトの巻取り完了時には、ベルト巻取り速度が小さくなって、スプールの回転停止の衝撃が小さくなる。これにより、シートベルトの巻取り完了時におけるエンドロックの発生が抑制される。
【選択図】 図4

Description

本発明は、自動車等の車両に装備され、シートベルトリトラクタから引き出されるシートベルトにより乗員を拘束するシートベルト装置において、エンドロックを防止することができかつ少なくとも緊急ロック機能を有するシートベルトリトラクタおよびこれを用いたシートベルト装置の技術分野に関するものである。
従来から自動車等の車両シートに付設されているシートベルト装置は、衝突時等の車両に大きな減速度が作用した場合のような緊急時に、シートベルトで乗員を拘束することにより乗員のシートからの飛び出しを阻止している。
図7は、従来のシートベルト装置の一例を備えたシートベルト装置の一例を模式的に示す図である。
図7に示すように、このシートベルト装置1は、Bピラー等の車体2に固定されるシートベルトリトラクタ3、このシートベルトリトラクタ3から引き出されるとともに先端のベルトアンカー4が車体の床あるいは車両シート5に固定されるシートベルト6、例えばセンターピラー等の車体に設けられてシートベルトリトラクタ3から引き出されたシートベルト6を乗員Cのショルダーの方へガイドするガイドアンカー7、このガイドアンカー7からガイドされてきたシートベルト6に摺動自在に支持されたタング8、車体の床あるいは車両シートに固定されかつタング8が係脱可能に挿入係合されるバックル9から構成されている。
このシートベルト装置1においては、車両シートに着座した乗員Cが、シートベルトリトラクタ3からシートベルト6を引き出して、シートベルト6に支持されたタング8をバックル9に係合することで、シートベルト6が乗員Cに装着される。
一般に、このようなシートベルト装置はシートベルトリトラクタを備えている。このシートベルトリトラクタとして、シートベルトの引出しを阻止する緊急ロック式シートベルトリトラクタ(ELR)の機能を備えるシートベルトリトラクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
図8は、この特許文献1に開示されたシートベルトリトラクタの一例を示す縦断面図である。図中、10はシーベルト6を巻き取るスプール、11はコ字状のフレーム、12は前述の緊急時に発生する大きな車両減速度を感知して作動する減速度感知手段(ヴィークルセンサ)、13は減速度感知手段12によって作動して少なくともスプール10のシートベルト引出方向の回転を阻止するロック手段、14はこのスプール10の中心に軸方向に遊嵌、貫通され、かつスプール10とロック手段13とを回転的に連結するトーションバー、15はスパイラルスプリング16のばね力によりブッシュ17を介してスプール10を常時シートベルト巻取方向に付勢するスプリング手段、18は前述の緊急時のうちきわめて大きな車両減速度が発生したときに作動してシートベルト巻取トルクを発生するプリテンショナー、19はプリテンショナー18のシートベルト巻取トルクをスプール10に伝達するブッシュである。
ロック手段13は、トーションバー14の第1トルク伝達軸20に一体回転可能でありかつパウル21を揺動可能に保持するロッキングベース(本発明のロッキング部材に相当)22を備えているとともに、トーションバー14に通常時はこのトーションバー14と一体回転し緊急時に減速度感知手段12の作動で停止してトーションバー14との間に相対回転差を発生させてパウル21をフレーム2の側壁の内歯23に係合させてロッキングベース22のシートベルト引出方向の回転を阻止するロックギヤ13aを備えている。ロッキングベース22には雄ねじ軸部24が形成されており、この雄ねじ軸部24には、スプール10と一体に回転するナット状のストッパ部材25が螺合されている。
また、トーションバー14には、スプール10と相対回転不能に係合する第2トルク伝達部26が形成されている。
そして、スプリング手段15のばね力により、スプール10はブッシュ17、トーションバー14、トーションバー14の第2トルク伝達部26およびブッシュ19を介して常時シートベルト巻取方向に付勢されている。また、プリテンショナー18の作動時、プリテンショナー18で発生したシートベルト巻取トルクがブッシュ19を介してスプール10に伝達され、これによりスプール10はシートベルト3を所定量巻き取るようになっている。
このように構成された従来のシートベルトリトラクタ3においては、シートベルト非装着時には、スプリング手段15の付勢力で、シートベルト6が最大限(完全に)巻き取られている。そして、装着のためシートベルト6を通常の速度で引き出すと、スプール10がシートベルト引出方向に回転し、シートベルト6は引き出される。シートベルト6に摺動自在に設けられたタング8を車体に固定されたバックル9に挿入係止した後、余分に引き出されたシートベルト6がスプリング手段15の付勢力でスプール10に巻き取られる。
前述の緊急時には、発生する大きな車両減速度で減速度感知手段12が作動してロック手段13が作動する。すなわち、減速度感知手段12の作動により、ロックギヤ13aのシートベルト引出方向の回転が阻止され、ロック手段13のパウル21が回動して、フレーム2の側壁の内歯23に係合する。すると、ロッキングベース22のシートベルト引出方向の回転が阻止されるので、トーションバー14がねじられ、スプール10のみがシートベルト引出方向にロッキングベース22に対して相対回転する。これ以後、スプール10がトーションバー14をねじりつつシートベルト引出方向に回転することになり、トーションバー14のねじりトルクによってシートベルト6に加えられる荷重が制限されて、乗員に加えられるエネルギが吸収緩和される。
また、この従来のシートベルトリトラクタ1は、シートベルトの急激な引出時にも、ロックギヤ13aに支持された図示しない慣性体(ウェビングセンサ)によりロックギヤ13aの回転が停止する。このため、ロック手段13のロッキングベース22がロックギヤ13aに対してシートベルト引出方向に相対回転するようになっている。そして、これにより前述と同様にロック手段13のパウル21がフレーム2の側壁の内歯23に係合して、ロッキングベース22の回転が阻止されるため、トーションバー14を介してスプール10のベルト引出方向の回転が阻止され、シートベルトの引出が阻止される。
ところで、乗員Cが着席してシートベルト6を引き出し、タング8をバックル9に挿入係合した際に、シートベルト6の余分な引き出し分を吸収し、通常装着状態で乗員Cの胸部等に不必要な圧迫感を与えないようにすることが好ましい。しかし、一般にシートベルトリトラクタ3では、スプリング手段15の巻取りトルクでスプール10がシートベルト巻込み方向に常時付勢されているため、通常装着時において乗員Cは圧迫感を抱くようになる。このため、乗員Cの圧迫感を小さくするためにスプリング力の弱いスプリング16を使用することが考えられるが、スプリング力の弱いスプリング16は、シートベルト巻取り時の巻取りトルクが小さくなって、乗員がシートベルト6の装着を解除した時にシートベルト6を最大限(完全に)巻き取り難い場合が生じる。
そこで、ELRの機能を備えるとともに、シートベルトの通常装着時にシートベルトを巻き取るスプリング手段の付勢力を軽減するテンションレデューサを備えたシートベルトリトラクタが知られている(例えば、特許文献2参照)。
この特許文献2に開示のシートベルトリトラクタにおけるテンションレデューサは、スプールをシートベルト巻取り方向に付勢するスプリング手段に設けられている。すなわち、このテンションレデューサは、スプリング手段に並列に配設された主スプリングと補助スプリングとを用いている。主スプリングおよび補助スプリングのそれぞれのスプリング力の合力が、スプリング手段に1つのスプリングを用いた場合のスプリング力とほぼ等しく設定されている。したがって、主スプリングおよび補助スプリングのそれぞれのスプリング力は、スプリング手段に1つのスプリングを用いた場合のスプリング力より小さく設定される。
そして、図9に示すようにテンションレデューサは、シートベルト引出し動作時には主スプリングと補助スプリングの両スプリング力による比較的大きな巻取りトルクでシートベルト巻取り方向に付勢されているスプールに、乗員Cのシートベルト装着完了時には主スプリングのスプリング力のみを作用させるようにしている。したがって、乗員Cのシートベルト装着状態ではスプールの巻取りトルクが比較的小さくなり、シートベルトに係るテンションが低減する。これにより、シートベルトは主スプリングのみによって軽度に引っ張られて乗員Cに軽くフィットするようになる。
また、乗員Cがシートベルトの装着を解除するため、タングとバックルの係止を解除しタングあるいはシートベルトを放すと、スプールは、主スプリングおよび補助スプリングの合力による比較的大きな巻取りトルクでシートベルトを最大限(完全に)巻き取る。この巻取り動作時には、巻取りトルクは一定となっている。
特開2001−58559号公報。 特公平7−8639号公報。
ところで、ELR機能を有する一般的なシートベルトリトラクタにおいては、シートベルト6の装着解除時に、スプリング手段15のスプリング力によるシートベルト巻取りの完了により、スプール10の回転が急激に停止する。このため、スプール10の急激な停止による衝撃でヴィークルセンサ12およびウェビングセンサの少なくとも一方が作動してしまい、シートベルト6を再び引き出し難くなる現象、つまりエンドロックが発生してしまうことがある。
そこで、このエンドロックを防止するために、シートベルト巻取りにスプリング力の小さなスプリング16を用いることが考えられるが、小さなスプリング力のスプリング16を用いると、前述のようにシートベルトが最大限巻き取ることができなくなってしまう。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、乗員がシートベルトの装着を解除した時にシートベルトを最大限巻き取ることを可能にしつつ、エンドロックを防止することのできる安価なシートベルトリトラクタおよびこれを備えたシートベルト装置を提供することである。
前述の課題を解決するために、請求項1の発明のシートベルトリトラクタは、シートベルトを巻き取るスプールと、このスプールを常時シートベルト巻取り方向に付勢するスプリング手段と、非作動時前記スプールの回動を許容し、作動時に前記スプールのシートベルト引出し方向の回動を阻止するロック手段とを少なくとも備えているシートベルトリトラクタにおいて、前記スプリング手段が前記スプールをシートベルト巻取り方向に常時付勢する第1スプリングと前記スプールをシートベルト巻取り方向に付勢可能な第2スプリングとを有し、前記第2スプリングのスプリング力の前記スプールへの作用および非作用を切り換えるクラッチが設けられており、更に、乗員がシートベルトの装着を解除したシートベルト巻取り時に前記クラッチを制御して前記第2スプリングのスプリング力の前記スプールへの作用および非作用を切換制御することで、巻取りトルクを変更する制御装置を備えていることを特徴としている。
また、請求項2の発明のシートベルトリトラクタは、前記巻取りトルクの変更が、最初前記第1スプリングのスプリング力のみを前記スプールに作用させ、所定時間経過後に前記第1および第2スプリングの両スプリング力を前記スプールに作用させるように前記クラッチを制御することを特徴としている。
更に、請求項3の発明のシートベルトリトラクタは、前記巻取りトルクの変更が、最初前記第1および第2スプリングの両スプリング力を前記スプールに作用させ、所定時間経過後に前記第1スプリングのスプリング力のみを前記スプールに作用させるように前記クラッチを制御することを特徴としている。
更に、請求項4の発明のシートベルトリトラクタは、シートベルトを巻き取るスプールと、このスプールを常時シートベルト巻取り方向に付勢するスプリング手段と、非作動時前記スプールの回動を許容し、作動時に前記スプールのシートベルト引出し方向の回動を阻止するロック手段とを少なくとも備えているシートベルトリトラクタにおいて、前記スプリング手段が、前記スプールをシートベルト巻取り方向に付勢可能な第1スプリングと、この第1スプリングよりスプリング力が小さくかつ前記スプールをシートベルト巻取り方向に付勢可能な第2スプリングとを有し、前記第1および2スプリングの各スプリング力の前記スプールへの作用および非作用をそれぞれ切り換えるクラッチが設けられており、更に、乗員がシートベルトの装着を解除したシートベルト巻取り時に前記クラッチを制御して前記第1および第2スプリングの各スプリング力の前記スプールへの作用および非作用をそれぞれ切換制御することで、巻取りトルクを変更する制御装置を備えていることを特徴としている。
更に、請求項5の発明のシートベルトリトラクタは、前記第1および第2スプリングと前記クラッチとにより、シートベルト装着時にシートベルトテンションを低減するテンションレデューサを構成しており、前記制御装置は、乗員のシートベルト装着完了時に前記第2スプリングのスプリング力を前記スプールに作用させないように前記クラッチを制御することを特徴としている。
更に、請求項6の発明のシートベルト装置は、乗員を拘束するシートベルトと、このシートベルトを引出し可能に巻き取るシートベルトリトラクタと、前記シートベルトに摺動可能に支持されたタングと、このタングが係脱可能に係合されるバックルとを少なくとも備えているシートベルト装置において、前記シートベルトリトラクタが、前述の本発明のシートベルトリトラクタのいずれか1つであることを特徴としている。
このように構成された本発明に係るシートベルトリトラクタおよびシートベルト装置によれば、乗員がシートベルトの装着を解除したシートベルト巻取り時には、クラッチを制御して第1および第2スプリングのスプリング力のスプールへの作用および非作用をそれぞれ切換制御するようにしているので、シートベルト巻取り時の巻取りトルクが変更可能となる。これによって、シートベルト巻取り時の巻取り速度も変更可能となる。したがって、シートベルト巻取り完了時の巻取りトルクあるいは巻取り速度を、適宜の大きさに抑制することができる。したがって、シートベルト巻取り完了時においてスプールの回転停止の衝撃を小さくすることができる。これにより、シートベルトの巻取り完了時におけるエンドロックの発生を効果的にかつ簡単な構成で抑制することができる。
また、シートベルト巻取り完了時の巻取りトルクあるいは巻取り速度が適宜の大きさに抑制されることから、シートベルト巻取り完了前では、巻取りトルクあるいは巻取り速度がシートベルトを最大限(完全に)巻き取ることが可能な大きさに設定することができる。したがって、ベルト非装着時にシートベルトを最大限巻き取ることを可能にしつつ、エンドロックを防止することができるようになる。
特に、例えば2つのスプリング、クラッチ、電磁ソレノイド等の従来公知のテンションレデューサの構成要素を利用することで、安価な構成でエンドロックを抑制することができる。
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明にかかるシートベルトリトラクタの実施の形態の一例を模式的に示す断面図である。なお、前述のシートベルト装置およびシートベルトリトラクタと同じ構成要素には同じ符号を付すことにより、その詳細な説明は省略する。
この例のシートベルトリトラクタ3は、前述の図8に示す特許文献1に開示されているシートベルトリトラクタのロック手段13と同じロック手段13を備えている。また、この例のシートベルトリトラクタ3は、前述の特許文献2に開示されているシートベルトリトラクタのテンションレデューサと同じテンションレデューサを備えている。また、この例のシートベルトリトラクタ3は、図7に示すシートベルト装置1と同じシートベルト装置1に用いられている。
図1中、Smはスプリング手段15のスプリングの1つであり、スプール10を巻取り方向に常時付勢する主スプリング(本発明の第1スプリングに相当)、Ssは同じくスプリングの1つであり、巻取り方向の付勢力が断続的にスプール10に与えられる補助スプリング(本発明の第2スプリングに相当)、27は補助スプリングSsの一端にボス28aが連結されたクラッチギヤ28内に配設されて主スプリングSmと補助スプリングSsとを連結するように渦巻き状に巻かれたテープ、29はクラッチ爪、30はフレーム11に回動可能に支持されかつクラッチ爪29を有するピボットレバー、31はピボットレバー30を回転駆動する電磁ソレノイド、32は連絡シャフト、33はメインシャフト、34はスプリングハウジング、35はタング8とバックル9との係合を検知するバックルスイッチ、36はカバーである。なお、この例のシートベルトリトラクタ3では、図8に示すトーションバー7は設けておらず、単なるメインシャフト33が設けられている。このメインシャフト33がスプール10に一体回転可能に連結され、また、ロック手段13のロッキングベース22に相対回転可能に連結されている。
主スプリングSmと補助スプリングSsとはスプール10の軸線方向に直角な面内に並列的に配置されている。主スプリングSmは連結シャフト32、メインシャフト33を介して、シートベルト6が巻回されているスプール10を常時シートベルト巻取り方向に付勢している。補助スプリングSsの内周端は連結シャフト32の先端部に、外周端はスプリングハウジング34の内周面の一部に連結されている。
一方、補助スプリングSsの内周端はラチェット歯を有するクラッチギヤ28に一体的に形成されたボス28aに定着されている。このクラッチギヤ28の非作動位置の方(図2において左方)へのリターン移動を阻止するためにクラッチ爪31が設けられており、このクラッチ爪31によるクラッチギヤ28のリターン移動阻止は、ピボットレバー30、電磁ソレノイド31によって係止解除されるようになっている。
また、主スプリングSmと補助スプリングSsとの間には、メモリ用のテープ27が設けられている。
図2は、このシートベルトリトラクタの作用を説明し、(a)シートベルトリトラクタの非作動状態を示す図、(b)はシートベルト装着のためシートベルトがシートベルトリトラクタから引き出された状態を示す図、(c)はタングとバックルの係合後のシートベルトの通常装着状態を示す図である。
図2(a)に示すシートベルトリトラクタの非作動状態では、主スプリングSmおよび補助スプリングSsはともに最大に収縮しており、テープ27が緊張状態となっている。このとき、シートベルト6は最大に巻き取られている。また、クラッチ爪31はクラッチギヤ28にシートベルト巻取り方向に係止可能な非作動位置に設定されている。
このシートベルトリトラクタ3の非作動状態からシートベルト6がシートベルトリトラクタ3から(図2(a)において右方へ)引き出されると、図2(b)に示すようにクラッチギヤ28およびテープ27がともにシートベルト6とともに右方へ移動する(シートベルト引出し方向に回転する)。すると、主スプリングSmおよび補助スプリングSsはともに伸張するとともに、クラッチギヤ28にクラッチ爪31がシートベルト巻取り方向に係止する。これにより、クラッチギヤ28のリターン移動が阻止される。
タング8をバックル9に係合させてシートベルト6が乗員Cに装着されると、余分に引き出されたシートベルト6が図2(b)において左方へ若干巻き取られる。このとき、クラッチギヤ28のリターン移動が阻止されているため、図2(c)に示すように主スプリングSmのみが収縮してテープ27が撓む。これにより、シートベルト6は補助スプリングSsによっては付勢されず、主スプリングSmのみによって付勢された状態となる。したがって、タングがバックルに係合した後余分に引き出されたシートベルト6が巻き取られた通常装着時では、図2(c)に示すようにシートベルト6は主スプリングSmのみによって軽度に引っ張られており、シートベルト6は乗員Cに軽くフィットするようになる。
図2(c)に示すシートベルト6の通常装着状態において、電磁ソレノイド31を通電により励磁してピボットレバー30を時計回りに回動させ、クラッチ爪31をクラッチギヤ28から離脱させると、クラッチギヤ28が図2(c)において左方へ移動可能(回転可能)となるので、クラッチギヤ28は補助スプリングSsの付勢力によってテープ27が巻き取られる方向(緊張する方向)に急速に移動(回転)する。そして、テープ27が緊張状態になると、シートベルト6はスプール10に主スプリングSmおよび補助スプリングSsの双方に付勢されて強力に巻き取られる。すなわち、テープ27は、クラッチギヤ28に対するスプール10の相対回転量を記憶するメモリ手段として構成されている。
そして、シートベルト6のスプール10への巻取りが完了すると、電磁ソレノイド31が非励磁となり、ピボットレバー30が反時計回りに回動し、クラッチ爪31がクラッチギヤ28に係止可能な図2(a)に示す非作動位置となる。また、シートベルト6、主スプリングSm、補助スプリングSs、およびテープ27も図2(a)に示す非作動状態となる。
電磁ソレノイド31は電子制御装置(ECU)37(本発明の制御装置に相当)に接続されていて、このECUによって駆動制御される。その場合、ECU37は、図3に示す制御フローにしたがって電磁ソレノイド31を制御するようになっている。
すなわち、図3に示すように、ステップS1でシートベルト装着状態であるため電磁ソレノイド31がオフとなっているとともに、バックルスイッチ35がオンとなっている。電磁ソレノイド31のオフで、クラッチ爪31がクラッチギヤ28にシートベルト巻取り方向に係止している。そして、ステップS2で、バックルスイッチ35がオフとなったか否かが判断される。つまり、タング8がバックル9から離脱したか否かが判断される。バックルスイッチ35がオンのときは、タング8がバックル9に係合した状態であり、バックルスイッチ35がオフのときは、タング8がバックル9から離脱した状態である。バックルスイッチ35がオフとなっていないと判断されると、このステップS2の処理が繰り返される。このとき、タング8がバックル9に係合し、シートベルト6が乗員Cに装着状態にある。
ステップS2でバックルスイッチ35がオフとなったと判断されると、ステップS3でバックルスイッチ35のオフ時点からの時間が予め設定された設定時間を経過したか否かが判断される。この設定時間は、バックルスイッチ35のオフ時点、つまりタング8がバックル9から離脱した時点から、スプール10がシートベルト6を最大限巻き取ってシートベルト巻取りが完了するまでの時間より短く設定されている。
バックルスイッチ35のオフにより、タング8がバックル9から離脱して、スプール10によるシートベルト巻取りが開始される。このとき、テンションレデューサの係止爪13がクラッチギヤ28にシートベルト巻取り方向に係止していることにより、主スプリングSmのスプリング力のみによってシートベルト6がスプール10に巻き取られる。すなわち、スプール10の巻取りトルクは比較的小さくなっている。バックルスイッチ35のオフ時点からの時間が設定時間を経過していないと判断されると、このステップS3の処理が繰り返される。その場合、スプール10の巻取りトルクは主スプリングSmによる小さいトルクに維持される。
ステップS3でバックルスイッチ35のオフ時点からの時間が設定時間を経過したと判断されると、ステップS4で電磁ソレノイド31がオンとなる。このため、ピボットレバー30が回動して、クラッチ爪31がクラッチギヤ28から離脱する。すると、主スプリングSmのスプリング力と補助スプリングSsのスプリング力の合力によってシートベルト6がスプール10に巻き取られる。すなわち、スプール10の巻取りトルクは、主スプリングSmのスプリング力と補助スプリングSsのスプリング力の合力により比較的大きくなる。
次に、ステップS5でシートベルト巻取りが完了したか否かが判断される。シートベルト巻取りが完了していないと判断されると、このステップS5の処理が繰り返される、このとき、主スプリングSmのスプリング力と補助スプリングSsのスプリング力の合力による大きな巻取りトルクで、シートベルト巻取り動作が行われている。
ステップS5でシートベルト巻取りが完了したと判断されると、最後に、ステップS6で電磁ソレノイド31がオフにされる。
そして、図4に示すようにこの例のシートベルトリトラクタ3におけるテンションレデューサは、前述の従来のテンションレデューサと同様に、シートベルト引出し動作時には主スプリングSmと補助スプリングSsの両スプリング力による比較的大きな巻取りトルクでシートベルト巻取り方向に付勢されているスプール10に、乗員Cのシートベルト装着完了時には主スプリングのスプリング力のみを作用させるようにしている。したがって、乗員Cのシートベルト装着状態ではスプールの巻取りトルクが比較的小さくなり、シートベルトに係るテンションが低減する。これにより、シートベルトは主スプリングのみによって軽度に引っ張られて乗員Cに軽くフィットするようになる。
また、乗員Cがシートベルトの装着を解除するため、タング8とバックル9の係止を解除しタング8あるいはシートベルト6を放すと、スプール10は、最初、主スプリングSmのスプリング力のみによる比較的小さな巻取りトルクでシートベルト6を巻き取る。そして、タング8とバックル9の係止の解除時点から設定時間経過すると、主スプリングSmと補助スプリングSsの各スプリング力の合力による比較的大きな巻取りトルクでシートベルト6を最大限(完全に)巻き取る。このようにして、巻取り動作時には、巻取りトルクが最初小さな巻取りトルクに設定され、設定時間経過後に大きな巻取りトルクに設定されるようになる。したがって、シートベルト6の巻取り完了時には、シートベルト巻取り速度が小さくなって、スプール10の回転停止の衝撃が小さくなる。これにより、シートベルト6の巻取り完了時におけるエンドロックの発生が抑制される。
この例のシートベルトリトラクタ3およびシートベルト装置1によれば、乗員がシートベルトの装着を解除したシートベルト巻取り時には、巻取りトルクを最初小さな巻取りトルクに設定し、かつ設定時間経過後に大きな巻取りトルクに設定することで巻取りトルクを変更しているので、シートベルト6の巻取り完了時に、従来の大きな一定の巻取りトルクによるシートベルト巻取りに比べて、シートベルト巻取り速度を小さくすることができる。したがって、スプール10の回転停止の衝撃を小さくすることができる。これにより、シートベルト6の巻取り完了時におけるエンドロックの発生を効果的にかつ簡単な構成で抑制することができる。
また、シートベルト巻取り完了前では、主スプリングSmと補助スプリングSsの各スプリング力の合力による大きな巻取りトルクでかつ比較的大きくなっている巻取り速度でシートベルト6を巻き取るので、シートベルト6を最大限(完全に)巻き取ることができるようになる。
こうして、乗員がシートベルトの装着を解除した時にシートベルト6を最大限巻き取ることを可能にしつつ、エンドロックを防止することができるようになる。
特に、例えば2つのスプリングSm,Ss、クラッチ29、電磁ソレノイド31等の従来公知のテンションレデューサの構成要素を利用することで、安価な構成でエンドロックを抑制することができる。
なお、この例のシートベルトリトラクタ3の他の構成および他の作用効果は、前述の特許文献2に開示のシートベルトリトラクタと同じであるので、その詳細な説明は省略する。
図5は、本発明のシートベルトリトラクタの実施の形態の他の例を示す、図3と同様のフローを示す図、図6はこの例のシートベルトリトラクタのシートベルト引出しおよびシート巻取り時の巻取りトルクを説明する図である。
前述の例では、シートベルト巻取り時に巻取りトルクを最初小さな巻取りトルクに設定し、その後、大きな巻取りトルクに設定しているが、この例のシートベルトリトラクタ3では、シートベルト巻取り時に巻取りトルクを最初大きな巻取りトルクに設定し、その後、小さな巻取りトルクに設定している。
すなわち、図5に示すようにステップS7およびS8で、前述の例のステップS1およびS2と同じ処理が行われる。次に、ステップS8でバックルスイッチ35がオフとなったと判断されると、ステップS9で電磁ソレノイド31がオンとなる。バックルスイッチ35のオフにより、タング8がバックル9から離脱して、スプール10によるシートベルト巻取りが開始される。また、ピボットレバー30が回動して、クラッチ爪31がクラッチギヤ28から離脱する。すると、主スプリングSmのスプリング力と補助スプリングSsのスプリング力の合力によってシートベルト6がスプール10に巻き取られる。すなわち、スプール10の巻取りトルクは、主スプリングSmのスプリング力と補助スプリングSsのスプリング力の合力により比較的大きくなる。
次に、ステップS10でバックルスイッチ35のオフ時点からの時間が予め設定された設定時間(前述の例の設定時間と異なる)を経過したか否かが判断される。この設定時間は、バックルスイッチ35のオフ時点、つまりタング8がバックル9から離脱した時点から、スプール10がシートベルト6を最大限巻き取ってシートベルト巻取りが完了するまでの時間より短く設定されている。
バックルスイッチ35のオフ時点からの時間が設定時間を経過していないと判断されると、このステップS10の処理が繰り返される。その場合、スプール10の巻取りトルクは主スプリングSmと補助スプリングSsとによる大きなトルクに維持される。
ステップS10でバックルスイッチ35のオフ時点からの時間が設定時間を経過したと判断されると、ステップS11で電磁ソレノイド31がオフとなる。このため、電磁ソレノイド31のスプリング力でピボットレバー30が回動して、クラッチ爪31がクラッチギヤ28に係合する。これにより、スプール10の巻取りトルクは、主スプリングSmのスプリング力のみにより比較的小さくなる。こうして、シートベルト6はスプール1010により巻取り完了まで小さな巻取りトルクで巻き取られる。したがって、シートベルト6の巻取り完了時には、シートベルト巻取り速度が小さくなって、スプール10の回転停止の衝撃が小さくなる。これにより、シートベルト6の巻取り完了時におけるエンドロックの発生が抑制される。
この例のシートベルトリトラクタ3およびシートベルト装置1によれば、図6に示すように乗員がシートベルトの装着を解除したシートベルト巻取り時には、巻取りトルクを最初大きな巻取りトルクに設定しかつ設定時間経過後に小さな巻取りトルクに設定することで巻取りトルクを変更しているので、シートベルト6の巻取り完了時に、従来の大きな一定の巻取りトルクによるシートベルト巻取りに比べて、シートベルト巻取り速度を小さくすることができる。したがって、スプール10の回転停止の衝撃を小さくすることができる。これにより、シートベルト6の巻取り完了時におけるエンドロックの発生を効果的にかつ簡単な構成で抑制することができる。
また、シートベルト巻取り開始後の設定時間までは、主スプリングSmと補助スプリングSsの各スプリング力の合力による大きな巻取りトルクでかつ比較的大きくなっている巻取り速度でシートベルト6を巻き取るので、シートベルト6の巻取り完了時に、巻取りトルクが小さくても、巻取り速度が従来の大きな一定の巻取りトルクによる巻取り速度に比べては小さいがしかし所定速度以上にはなっているので、シートベルト6を最大限(完全に)巻き取ることができるようになる。
この例のシートベルトリトラクタ3の他の構成および他の作用効果は、前述の例と同じである。
なお、前述の各例では、本発明をテンションレデューサを備えるELR機能を有するシートベルトリトラクタ3に適用し、テンションレデューサを利用するものとしているが、本発明はこれに限定されることはなく、テンションレデューサを備えないELR機能を有するシートベルトリトラクタ3にも適用することができる。その場合には、主スプリングSmおよび補助スプリングSmに代えて、スプール10をシートベルト巻取り方向に付勢可能な第1スプリングとこの第1スプリングよりスプリング力が小さくかつスプール10をシートベルト巻取り方向に付勢可能な第2スプリングとを有し、かつこれらの第1および第2スプリングを互いに並列に配設したスプリング手段と、乗員がシートベルトの装着を解除したシートベルト巻取り時に第1および第2スプリングのスプリング力のスプール10への作用、非作用を制御するクラッチと、このクラッチを駆動する電磁ソレノイドとを設けるようにすればよい。
本発明のシートベルトリトラクタ3およびこれを備えたシートベルト装置は、シートベルトの通常装着時に、シートベルトを巻き取るスプリング手段の付勢力を軽減するテンションレデューサを備えたシートベルトリトラクタ3およびこれを備えたシートベルト装置に好適に利用することができる。
本発明にかかるシートベルトリトラクタの実施の形態の一例を模式的に示す断面図である。 図1に示す例のテンションレデューサの作動を説明する図である。 巻取りトルクの変更を制御するためのフローを示す図である。 図3に示すフローによるシートベルトリトラクタのシートベルト引出し時およびシートベルト巻取り時の巻取りトルクを説明する図である。 本発明のシートベルトリトラクタの実施の形態の他の例を示す、図3と同様のフローを示す図である。 図5に示す例のシートベルトリトラクタのシートベルト引出し時およびシートベルト巻取り時の巻取りトルクを説明する図である。 従来のシートベルト装置の一例を備えたシートベルト装置の一例を模式的に示す図である。 特許文献1に開示されたシートベルトリトラクタの一例を示す縦断面図である。 従来のシートベルトリトラクタのシートベルト引出し時およびシートベルト巻取り時の巻取りトルクを説明する図である。
符号の説明
1…シートベルト装置、3…シートベルトリトラクタ、6…シートベルト、10…スプール、12…減速度感知手段(ヴィークルセンサ)、13…ロック手段、15…スプリング手段、Sm…主スプリング、Ss…補助スプリング、27…テープ、29…クラッチ爪、30…ピボットレバー、31…電磁ソレノイド、32…連絡シャフト、33…メインシャフト、35…バックルスイッチ、37は電子制御装置(ECU)

Claims (6)

  1. シートベルトを巻き取るスプールと、このスプールを常時シートベルト巻取り方向に付勢するスプリング手段と、非作動時前記スプールの回動を許容し、作動時に前記スプールのシートベルト引出し方向の回動を阻止するロック手段とを少なくとも備えているシートベルトリトラクタにおいて、
    前記スプリング手段は前記スプールをシートベルト巻取り方向に常時付勢する第1スプリングと前記スプールをシートベルト巻取り方向に付勢可能な第2スプリングとを有し、
    前記第2スプリングのスプリング力の前記スプールへの作用および非作用を切り換えるクラッチが設けられており、
    更に、乗員がシートベルトの装着を解除したシートベルト巻取り時に前記クラッチを制御して前記第2スプリングのスプリング力の前記スプールへの作用および非作用を切換制御することで、巻取りトルクを変更する制御装置を備えていることを特徴とするシートベルトリトラクタ。
  2. 前記巻取りトルクの変更は、最初前記第1スプリングのスプリング力のみを前記スプールに作用させ、所定時間経過後に前記第1および第2スプリングの両スプリング力を前記スプールに作用させるように前記クラッチを制御することを特徴とする請求項1記載のシートベルトリトラクタ。
  3. 前記巻取りトルクの変更は、最初前記第1および第2スプリングの両スプリング力を前記スプールに作用させ、所定時間経過後に前記第1スプリングのスプリング力のみを前記スプールに作用させるように前記クラッチを制御することを特徴とする請求項1記載のシートベルトリトラクタ。
  4. シートベルトを巻き取るスプールと、このスプールを常時シートベルト巻取り方向に付勢するスプリング手段と、非作動時前記スプールの回動を許容し、作動時に前記スプールのシートベルト引出し方向の回動を阻止するロック手段とを少なくとも備えているシートベルトリトラクタにおいて、
    前記スプリング手段は、前記スプールをシートベルト巻取り方向に付勢可能な第1スプリングと、この第1スプリングよりスプリング力が小さくかつ前記スプールをシートベルト巻取り方向に付勢可能な第2スプリングとを有し、
    前記第1および2スプリングの各スプリング力の前記スプールへの作用および非作用をそれぞれ切り換えるクラッチが設けられており、
    更に、乗員がシートベルトの装着を解除したシートベルト巻取り時に前記クラッチを制御して前記第1および第2スプリングの各スプリング力の前記スプールへの作用および非作用をそれぞれ切換制御することで、巻取りトルクを変更する制御装置を備えていることを特徴とするシートベルトリトラクタ。
  5. 前記第1および第2スプリングと前記クラッチとにより、シートベルト装着時にシートベルトテンションを低減するテンションレデューサを構成しており、
    前記制御装置は、乗員のシートベルト装着完了時に前記第2スプリングのスプリング力を前記スプールに作用させないように前記クラッチを制御することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1記載のシートベルトリトラクタ。
  6. 乗員を拘束するシートベルトと、このシートベルトを引出し可能に巻き取るシートベルトリトラクタと、前記シートベルトに摺動可能に支持されたタングと、このタングが係脱可能に係合されるバックルとを少なくとも備えているシートベルト装置において、
    前記シートベルトリトラクタは、請求項1ないし5のいずれか1記載のシートベルトリトラクタであることを特徴とするシートベルト装置。
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