JP2007327350A - 真空ポンプ用部材及びその製造方法 - Google Patents

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武馬 寺谷
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Abstract

【課題】優れた化学的耐久性及び低摩擦係数の表面を有する真空ポンプ用部材及びその製造方法を安価で提供する。
【解決手段】ローター(真空ポンプ用部材の一部品)は、表面が凹凸形状や湾曲形状を有している金属製の本体と、その表面の一部に形成されているアモルファス状膜とを備えている。そして、ローターの表面付近の一部拡大断面部分11は、本体1aを形成する金属製の基材12と、この基材12の表面に形成されたアモルファス状膜13とを備える構成となっている。
【選択図】図2

Description

本発明は、LSI、太陽電池および液晶などで用いられる半導体加工製品の加工、製造プロセスならびに装置に配設される真空ポンプに対して防食皮膜を形成させた真空ポンプ用部材及びその製造方法に関するものである。
半導体加工製品の製造プロセスで用いられている各種の装置では、フッ化物、塩化物、ときには臭化物などのハロゲン系ガスを使用することが多く、このようなプロセスで用いられる各種装置においては、その構成部材、特に稼動部の素材は激しく腐食摩耗を起こして損耗するという問題があった。例えば、これらの半導体加工装置においては、SiやGa,As,Pなどからなる半導体を処理対象とし、工程では、真空中もしくは減圧中で処理するいわゆるドライプロセスで行われているため、多種多様なポンプ類が使用されており、ローターなどの回転摺動部材などは、とりわけ前記腐食摩耗の激しい部分である。
なお、これらのドライプロセスで取り扱っている腐食性のハロゲン系ガスとしては、次のようなハロゲンおよびハロゲン化合物のガスがある。
フッ化物:BF,PF,NF,WF,WF,HF,F
塩化物:BCl,PCl,POCl,SnCl,TiCl,SiHCl,HCl,Cl
臭化物:HBr
その他のハロゲン化物:Cl
ここでの添え字xは1〜5のうちいずれか1つの数値である。
上述のハロゲンガスまたはハロゲン化合物のガスを用いるドライプロセスでは、プラズマエネルギーを用いて反応を促進させることがある。この場合、ハロゲンガスやハロゲン化合物のガスはプラズマ環境中では容易に電離して腐食性の強い原子状やイオン化したF,Cl,Brを生成するほか、装置部材を腐食させて、新たにSiOやSi,Si,Wなどの微粉末状の固形物を生成することが知られている。そのため、給・排気ファンや真空ポンプのローターなどの回転摺動部材は、強い腐食環境の中での化学的腐食反応(コロージョン)にともなう減肉とともに、摩耗作用(エロージョン)に伴う減肉損傷が同時に発生し、それぞれの性能が短期間のうちに低下するという問題があった。また、真空ポンプに接合されている配管部材やポンプケーシング自体も激しい腐食減肉作用を受けるため、短期間のうちにポンプ性能が低下し、使用不能として廃棄せざるを得なくなるポンプ類が多くなってきた。
上記のようなドライプロセスに用いられている各種装置については、従来から、耐食性や対エロージョン性を向上させるため、材質の変更や、フッ素系塗料あるいはエポキシ系塗料による塗装、さらにはニッケルめっきや窒化処理などの表面処理などが提案されている。しかしながら、フッ素系あるいはエポキシ系の防食塗料を用いる方法は、ハロゲンガスのなどに対する耐久性がいずれも十分でなく、特にプラズマによって励起される原子状のハロゲンガス等に対しては、塗膜が短時間のうちに劣化し、保護機能を消失することがあった。また、ニッケルめっき処理は、ハロゲンガス等に対して比較的良好な耐食性を示すものの、ドライプロセスラインの清浄化処理(水洗処理)などによって雰囲気中に水分が混入すると、めっき皮膜のピンホールからハロゲン系ガス成分を含む酸性の水溶液が内部に浸入し、基質を選択的に腐食して、ニッケルめっき皮膜を剥離させるという問題があった。また真空ポンプの基材自体を、鋳鉄や鋳鋼製に代え、比較的高い耐食性を有するステンレス鋼やニッケル合金(例えば、商品名「ニレジスト」)を用いているが、ハロゲン系ガスに対しては長期問にわたる耐久性に乏しいため、抜本的な対策とはなっていない。
こうした問題点に対し、近年、例えば半導体加工プロセスで使用される各種装置やその部材に対して、特許文献1〜5に示すような、アルミニウムやアルミニウム酸化物を主体とする表面処理技術が提案されている。こうした耐食性表面処理を施した部材は、無処理の部材と比較すると、対ハロゲンガス性に優れ、使用期間を格段に向上させることができるようになってきた。
特開昭57−19371号公報 特開昭60−63364号公報 特開平4−193966号公報 特開平9−10577号公報 特開平10−219426号公報
しかしながら、半導体加工ラインに使用されている各種装置類は、上述した各種従来技術の採用によって、耐食性の改善、使用期間の延長はあっても、その改善の程度は尚小さく、やがて腐食損傷によって不可避に減肉し、装置としての機能低下を招き、使用に耐えられなくなるときがくる。半導体加工分野ではこのような腐食やエロージョン作用などによって、性能・機能を消失したポンプ類およびその付属部材類は莫大な量に及んでおり、産業界全体としては、大きな損失を招いている。
そこで、本発明の目的は、例えば、半導体加工装置などのドライプロセスにおいて使用されている各種のポンプ類のローターやローターなどの稼働部をはじめ、ケーシング及びポンプに配設されている給・排気管などの表面に、優れた化学的耐久性と低摩擦係数を有する膜を形成してなる真空ポンプ用部材及びその製造方法を安価で提案することである。
本発明の真空ポンプ用部材は、基材の表面に、直接または下塗り膜を介して、炭素と水素とを主成分とするアモルファス状膜を被覆したものである。
本発明の真空ポンプ用部材においては、前記アモルファス状膜の厚さが1μm〜50μmの範囲にあることが好ましい。
本発明の真空ポンプ用部材においては、前記アモルファス状膜の硬さがHV700〜2800の範囲にあることが好ましい。
本発明の真空ポンプ用部材においては、前記アモルファス状膜の表面の算術平均粗さRaが0.5μm以下、且つ、十点平均粗さRzが2.0μm以下であることが好ましい。
本発明の真空ポンプ用部材においては、前記アモルファス状膜における炭素原子の割合が90原子%〜50原子%、水素原子の割合が10原子%〜50原子%の範囲で組成されているものであるとともに、前記アモルファス状膜に対する該炭素原子及び該水素原子の組成割合が100原子%以下であることが好ましい。
本発明の真空ポンプ用部材においては、前記基材が、鋳鉄、鋳鋼、Ti、Alの単体およびその合金、炭素を含み、クロムを必須成分とする構造用鋼、並びにNiとCrとを必須成分とするステンレス鋼およびNi基合金のうちから選ばれる1種の金属材料であることが好ましい。
本発明の真空ポンプ用部材においては、前記下塗り膜が、Ti、W、Nb、Ta、Cr、Al、Siの単体またはそれらの合金から選ばれる1種以上の膜厚0.1μm〜3μmの膜であることが好ましい。
本発明の真空ポンプ用部材においては、C、Ti、W、Nb、Ta、Cr、Al、Siの単体またはそれらの合金から選ばれる1種以上の元素を、前記基材の表面部に注入することによって形成された注入層をさらに有するこことが好ましい。
本発明の真空ポンプ用部材においては、前記基材の表面の算術平均粗さRaが2.0μm以下、十点平均粗さRzが8.0μmであることが好ましい。
本発明の真空ポンプ用部材の製造方法は、基材の表面の算術平均粗さRaが2.0μm以下、十点平均粗さRzが8.0μm以下となるように加工する基材表面加工工程と、前記基材上に、炭素と水素とを主成分とするアモルファス状膜を被覆形成するアモルファス状膜被覆工程とを有するものである。
本発明の真空ポンプ用部材の製造方法においては、加工された前記基材の表面部に、C、Ti、W、Nb、Ta、Cr、Al、Siから選ばれる元素の注入層を形成する工程を、前記基材表面加工工程と前記アモルファス状膜被覆工程との間に有することが好ましい。
別の観点として、本発明の真空ポンプ用部材の製造方法は、基材の表面の算術平均粗さRaが2.0μm以下、十点平均粗さRzが8.0μm以下となるように加工する基材表面加工工程と、加工された前記基材の表面上に、C、Ti、W、Nb、Ta、Cr、Al、Siから選ばれる単体またはそれらの合金からなる下塗り膜を被覆形成する下塗り膜被覆工程と、前記下塗り膜の表面上に、炭素と水素を主成分とするアモルファス状膜を被覆形成するアモルファス状膜被覆工程とを有する。
本発明の炭素と水素とを主成分とするアモルファス状膜は、綴密で化学的に安定な性質によって優れた耐食性を発揮するとともに、比較的硬質であるため小さなダスト類と接触しても傷が発生しがたく、また表面が比較的平滑であるため、ダスト類の付着も困難であるなどの効果が期待できる。さらに本発明のアモルファス状膜は親油性(疎水性)であるため、水蒸気の存在によって激しい腐食性を発揮する蒸気状態のハロゲンおよびハロゲン化合物と物理的に接触しがたい性質を有しており、長期間にわたって優れた耐食性を維持する。したがって、本発明の真空ポンプ用部材は、ガス状のハロゲン化合物の雰囲気中でプラズマを発中させる半導体加工装置などに用いることによって、装置全体の安定した稼動を可能とするとともに、真空ポンプの運転期間の延長にともなう廃棄ポンプの減少、装置の補修費、交換費などを低減させ、生産量の向上および生産コストの削減に大きく貢献することが期待できる。
加えて、本発明の真空ポンプ用部材の製造方法によれば、複雑な形状のローター、ケーシングなどの真空ポンプ用部材に対しても均等な成膜が可能である。つまり、形状の異なる様々な真空ポンプ用部材に対して、均等な皮膜を形成させることが可能となる。
以下に、本発明の実施形態に係るローター(真空ポンプ用部材の1つ)及びその製造方法について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るローターを示す斜視図である。図2は、図1に係るローターの表面付近の一部拡大断面図である。
ローター1は、表面に凹凸形状や湾曲形状を有している金属製の本体1aと、その表面の一部に形成されているアモルファス状膜13とを備えている。そして、図2に示すように、ローター1の表面付近の一部拡大断面部分11は、本体1aを形成する金属製の基材12と、この基材12の表面に形成されたアモルファス状膜13とを備える構成となっている。
基材12としては、鋳鉄、鋳鋼、Ti、Alの単体およびその合金、炭素を含み、クロムを必須成分とする構造用鋼、NiとCrとを必須成分とするステンレス鋼およびNi基合金等が挙げられる。特に、鋳鉄、鋳鋼は、多量の炭素を含むとともに、ミクロ的には菊花状、片状、球状となって偏析するとともに、FeC(セメンタイト)と共存していることから、アモルファス状膜13とは良好な密着性をしめすので、ミクロ組織的視野からも綴密な状態のアモルファス状膜13とできる。また、基材12の表面の算術平均粗さRaは2.0μm以下、十点平均粗さRzは8.0μmである。
アモルファス状膜13は、炭素と水素とを主成分とするものであり、厚さが1μm〜50μmの範囲にある。特に5〜20μmが好適である。1μmより薄い膜では耐食性、耐摩耗性が十分ではなく、また50μmより厚い皮膜では、成膜に長時間を要する一方、皮膜性能について格段の向上が認められないので、生産コストの上昇を招き、得策ではない。
また、アモルファス状膜13の硬さは、マイクロビッカース硬さでHV700〜2800の範囲にある。鋳鉄・鋳鋼の硬さ(HV130〜200)に比較すると格段に硬く、優れたキャビテーション・エロージョン性を発揮する。
さらに、アモルファス状膜13においては、炭素原子の割合が90原子%〜50原子%、水素原子の割合が10原子%〜50原子%の範囲で組成されているものであるとともに、アモルファス状膜13に対する該炭素原子及び該水素原子の組成割合が100原子%以下となるように調整されている。なお、アモルファス状膜13は、水素含有量10原子%〜50原子%で、残りが炭素から構成されるものが好適である。さらに、大きな熱膨張や、機械的変形を受けることが少なく、人工ダイヤモンド膜に比較すると軟質ではあるものの、密着性、延性に優れている、水素含有量が10原子%〜35原子%のアモルファス状膜13としてもよい。なお、水素含有量10原子%未満のアモルファス状膜は、成膜時に大きな内部応力を発生するため、厚膜(10μm以上)の形成が困難であり、また、硬質であるものの、延性に乏しく、僅かな基材の変形によって剥離する傾向がみられる。一方、水素含有量が50原子%より大きくなると、アモルファス状膜13の硬さおよび機械的強度が低下するので好ましくない。
また、アモルファス状膜13の表面の算術平均粗さRaは0.5μm以下、且つ、十点平均粗さRzは2.0μm以下である。したがって、平滑面であるので、固形の異物類は物理的に付着し難い状態となっている。
このようなアモルファス状膜13は、緻密であるうえ、酸、アルカリ、などの水溶液中に浸漬してもまったく腐食されず、気孔が無いため、基材の気孔部分のみが優先的に腐食されて顕在化する孔食の発生がない。また、基材12表面に形成されるアモルファス状膜13は、400℃未満で使用される。なぜなら、400℃以上では、二酸化炭素や水に分解されてしまうことがあるからである。なお、比重が約1.7〜1.8程度であるため、高速回転するローター1に、例え、上述の分解や剥離が発生したとしても、その回転に影響を与えることがほとんどないので、バランスを崩すことがなく、安定したポンプの運転を続けることができる。また、炭素と水素とを主成分とするアモルファス状態の表面は、通常親油性(疎水性)を示すが、一変形例として、NやSiを注入させて親水性に変化させることで、送液の種類によって表面機能を制御して用いることができる。
次に、真空ポンプ用部材1の製造方法について工程ごとに説明する。
(1:基材表面の仕上げ工程)
アモルファス状膜13を形成するための基材12表面においては、機械的、化学的および電気化学的方法によって、算術平均粗さRaが0.5μm以下、十点平均粗さRzが2.0μm以下の鏡面状態となるように仕上げる。このような表面仕上げを行わないと、基材13表面は粗いので、突起物などが存在する場合がある。従って、基材12表面に形成するアモルファス状膜13の厚さが10μmと比較的薄い場合、突起物のある部分のアモルファス状膜13が早期に破壊されたり、腐食発生の起点となったりすることがある。
機械的に研磨する場合は細粒の#600の研磨ベルトを用いて算術平均粗さRaを1〜3μm程度にしたあと、ラッピング加工やバフ研磨によって表面の突起物を除去し、十点平均粗さRzを0.8以下に仕上げることができる。また、細粒の研磨ベルト加工を終えた面を化学研磨法(例えば硝酸、塩酸、リン酸などの混合液)またはこれらの研磨液中で基材12を陽極として電解研磨法を適用すれば算術平均粗さRaが0.1μm、十点平均粗さRzが0.5μm以下の程度の鏡面が得られ、特に好適な前処理面を形成できる。ただし、アモルファス状膜13の厚さが10μm〜50μmの場合には、機械的研磨(算術平均粗さRaが1〜3μm)だけでも密着性および性能のよいアモルファス状膜13が形成されるとともに、アモルファス状膜の表面粗さが、基材の粗さの影響を受けがたくなって、平滑化する傾向があるので、特に仕上げ程度を規定しなくともよい。
(2:アモルファス状膜の形成工程)
次に、上述の仕上げ工程を経た基材12表面にアモルファス状膜を形成する工程について説明する。図3は、アモルファス状膜を形成するための装置の概略構成図である。この装置は、接地された反応容器2と、この反応容器2内部空間とそれぞれバルブ7a、バルブ7bを介して接続されている成膜用の有機系ガス導入装置(図示せず)及び反応容器を真空引きする真空装置(図示せず)と、反応容器2内の所定の位置に配設される真空ポンプ用部材1の基材12に接続する導体3に導入端子9を介して高電圧パルスを印加するための高電圧パルス発生電源4と、高電圧導入部9を介して導体3に高周波を印加し、真空ポンプ用部材1の基材12周囲にプラズマを発生させるプラズマ発生用電源5と、パルスおよび高周波の印加を一つの導体3で共用するために、高電圧パルス発生電源4及びプラズマ発生用電源5との間に設けられるとともに、高電圧導入部9と電気的に接続されている重乗装置6と、反応容器2及び地表と電気的に接続されているアース線8とを備えている。
上述の構成の装置を用いてアモルファス状膜13を基材12表面に形成するには、被処理体としての基材12を所定の位置に設置し、真空装置を稼動させ、バルブ7bを介して反応容器2中の空気を排出させたあと、ガス導入装置によってバルブ7aを介して有機系の炭化水素ガスを反応容器2に導入する。
ここで、本実施形態において使用できる炭化水素ガスの種類について説明する。反応容器2内に導入するガスの種類は下記の通りであり、炭素と水素とからなる有機系の炭化水素およびこれにB、Si、O、Clなどが付加されたものである。
(1)常温(18℃)で気相状態
CH、CHCH、C、CHCHCH、CHCHCHCH
(2)常温で液相状態
CH、CCHCH、C(CH、CH(CHCH、C12、CCl
(3)有機Si化合物(液相)
(CO)Si、(CHO)Si、(CH)4Si、[(CH)Si]
常温で気相状態のものは、そのままの状態で反応容器2に導入できるが、液相状態の化合物はこれを加熱してガス化させ、この蒸気を反応容器2中へ供給する。有機Si化合物を用いてアモルファス状膜を形成すると、この膜中にSiが混入することがあるが、Siは炭素と強く結合しているので本実施形態において使用するための妨げとはならない。
上述のように炭化水素ガスを反応容器2に導入後、プラズマ発生用電源5からの高周波電力を基材12に印加する。反応容器2は、アース線8によって電気的に中性状態にあるため、基材12は、相対的に負の電位を有することとなる。このため印加によって発生する、導入ガスのプラズマ中の+イオンは負に帯電した基材12の形状に沿って発生する特徴がある。さらに高電圧パルス発生源4からの高電圧パルス(負の高電圧パルス)を基材12に印加しプラズマ中の+イオンを基材12の表面に衝撃的に誘引させることができる。この操作によって基材12の表面に均等な厚さのアモルファス状膜13を形成することができる。このプラズマ中では下記(1)〜(4)に示すような現象が発生し、最終的には炭素と水素を主成分とするアモルファス状膜13が基材12表面に形成されるものと考えている。
(1)導入されたガス(炭化水素)のイオン化(ラジカルと呼ばれる活性な中性粒子も存在する)。
(2)ガスから変化したイオンおよびラジカルは、負の電圧が印加された翼面に衝撃的に衝突する。
(3)衝突時の衝撃によって結合エネルギーの小さいC−H間が切断され、CとHとがスパッタ現象を伴いながら、重合反応をはじめ、高分子化する。
(4)基材12表面にCとHとを含んだアモルファス状膜13が形成される。
なお、パルス幅を1μSec〜10mSec、パルス数を1〜複数回としたパルスの繰り返しも可能である。また、プラズマ発生用電源5の高周波電力の出力周波数は数十kHz〜数GHzの範囲で変化させることができる。以上のような方針でアモルファス状膜13を形成する方法を、ここでは高周波プラズマCVD法と呼ぶこととする。
上記構成によれば、異物の付着を防ぎつつ、耐エロージョン性に著しい効果を発揮するとともに、衝撃や曲げ応力に強いので、破壊されたり剥離したりしにくいアモルファス状膜13を有する真空ポンプ用部材1及びその製造方法を提供できる。また、アモルファス状膜13の形成工程は、減圧下における加熱を伴う条件下で行われるので、ローター1中に含まれているH、N、O、HO、炭化水素ガス等のガス成分の放出を促す一方、一旦成膜すると真空ポンプ用部材として稼動した際、金属質のローター1中から放出されるガス成分の影響を抑制することができるので、真空ポンプ中の高真空環境を維持しやすくなるという利点を有する。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る真空ポンプ用部材について説明する。なお、第1実施形態の符合11、13の部位と、本実施形態の符合21、23の部位とは順に対応しており、その説明を省略することがある。図5は、本発明の第2実施形態に係る真空ポンプ用部材の表面付近の一部拡大断面図である。
本実施形態の真空ポンプ用部材は、図示しないが、一般的な真空ポンプ用部材と同様の外形をしている。真空ポンプ用部材の表面付近の一部拡大部分21は、基材22と、この基材22の表面に形成されたアモルファス状膜23とを備えてなる。
基材22は、基材主部22aと、基材主部32aの表面上(基材32の表面部)に形成された注入層22bとを有する。注入層22bは、C、Ti、W、Nb、Ta、Cr、Al、Siから選ばれる1種以上の元素を、基材22の表面部に注入することによって形成されたものである。なお、一変形例として、注入層22bとアモルファス状膜23との間に金属薄膜を形成してもよい。
次に、本実施形態に係る真空ポンプ用部材の製造方法について説明する。なお、基材22表面の仕上げ工程及びアモルファス状膜23の形成工程は、第1実施形態と同様であるので簡略化した説明とし、基材22の注入層22bの形成工程について詳細に説明する。
まず、第1実施形態において説明した図3の装置を用いて、高電圧パルス発生源4の出力電圧を変化させることによって、基材22表面に対して金属をふくめたイオン注入を実施して注入層22bを形成する。そして、注入層22bの表面に第1実施形態と同様にしてアモルファス状膜23を形成する。
なお、上述した一変形例において、注入層22bとアモルファス状膜23との間に金属薄膜を形成する場合にも、図3の装置は用いることができる。例えば、以下の(1)〜(4)の条件で、基材22表面部又は表面上の各層の形成に使用できる。
(1)基材22表面部にイオン注入を重点的に行う場合:10〜40kV
(2)イオン注入と金属薄膜形成とを行う場合:5〜20kV
(3)基材22上に金属薄膜形成を行う場合:数百V〜数kV
(4)基材22上にスパッタリングなどで金属薄膜形成を重点的に行う場合:数百V〜数kV
したがって基材22表面部又は表面上にCr、Si、Ta、Nb、Tiなどの炭素と化学的親和力の強い金属イオン注入や金属の薄膜を形成した後、その上にアモルファス状膜23を積層させることが可能である。
上記構成によれば、第1実施形態と同様の効果を奏すると共に、注入層22bを介して基材22上にアモルファス状膜23が形成されているので、単に基材22表面に形成するよりもアモルファス状膜23の密着性が増す。したがって、より破壊されたり剥離したりしにくいアモルファス状膜23を有する真空ポンプ用部材及びその製造方法を提供できる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る真空ポンプ用部材について説明する。なお、第1実施形態の符合11〜13の部位と、本実施形態の符合31〜33の部位とは順に対応しており、その説明を省略することがある。図6は、本発明の第3実施形態に係る真空ポンプ用部材の表面付近の一部拡大断面図である。
本実施形態の真空ポンプ用部材は、図示しないが、一般的な真空ポンプ用部材と同様の外形をしている。真空ポンプ用部材の表面付近の一部拡大部分31は、金属製の基材32と、この基材32の表面に形成されたアンダーコート34(下塗り膜)と、このアンダーコート34の表面に形成されたアモルファス状膜33とを備えてなる。
アンダーコート34は、Ti、W、Nb、Ta、Cr、Al、Siの単体またはそれらの合金から選ばれる1種以上の膜厚0.1〜3μmの膜である。
次に、本実施形態に係る真空ポンプ用部材の製造方法について説明する。なお、基材32表面の仕上げ工程及びアモルファス状膜33の形成工程は、第1実施形態と同様であるので簡略化した説明とし、アンダーコート34の形成工程について詳細に説明する。
まず、第1実施形態と同様にして基材32表面を仕上げ処理し、この基材32表面に、電気めっき法、CVD法またはPVD法から選ばれる1種以上の方法を用いて、アンダーコート34を形成する。そして、アンダーコート34の表面に第1実施形態と同様にしてアモルファス状膜33を形成する。
上記構成によれば、第1実施形態と同様の効果を奏すると共に、アンダーコート34を介して基材32上にアモルファス状膜33が形成されているので、単に基材32表面に形成するよりもアモルファス状膜33の密着性が増す。したがって、より破壊されたり剥離したりしにくいアモルファス状膜33を有する真空ポンプ用部材及びその製造方法を提供できる。
以下、実施例を示しながら、本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
この実施例では本発明にかかるアモルファス状膜の綴密性を調査するため、以下のようにしてJIS H 8645に規定されているフェロキシル試験を行って、アモルファス状膜の微細な貫通気孔の有無を調査した。
(1)基材
FC200の基材(寸法幅50mm×長さ70mm×厚さ7mm)とした。
(2)アモルファス状膜の形成と厚さ
上記基材の全面に、アモルファス状膜を下記表3に示したように0.5μm〜8μmの範囲の厚さにそれぞれ施工して本実施例に係る各試験片を形成した。
(3)他の比較例の試験片
他の比較例として上述のFC200基材を用い、この基材の表面に電気めっき法によって、Ni,Crをそれぞれ15μmの厚さに被覆した試験片、及び、溶射法によって50mass%Ni−50mass%Cr合金を100μm厚さに形成させた試験片を準備した。
(4)フェロキシル試験方法
フェロキシル試験として、具体的には、次に示すような方法を用いた。すなわち、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム10g及び塩化ナトリウム15gを1リットルの蒸留水に溶解し、これを分析用のろ紙に十分含浸させる。その後、このろ紙を試験片表面に貼付し、30分間静置した後、ろ紙を剥がして、ろ紙面での青色斑点の有無を目視判定した。これはアモルファス状膜に貫通気孔が存在するとフェロキシル試験液が浸透し、鉄基材界面に達して鉄イオンを生成させ、これにヘキサシアノ(皿)酸カリウム塩が反応して、ろ紙の表面に青色斑点を生成することによって判定することができるものである。
下記表1は以上の内容及び試験結果を要約したものである。この結果から明らかなように、比較例として示したアモルファス状膜の膜厚の薄い0.5μm、0.8μm(No.1、No.2)のもの、Niめっき膜(No.6〜8)、Crめっき膜(No.9〜11)および溶射皮膜試験片(No.12〜14)に、少数或いは多数の青色斑点の発生が認められた。これに対して、本発明に係るアモルファス状膜(膜厚が1.0μm以上のもの(No.3〜5))では、青色斑点の発中はまったく認められず、貫通気孔が無く、綴密性に富み、腐食成分の浸入を防ぐ作用に優れていることが確認された。
Figure 2007327350
(実施例2)
本実施例では、金属材料に対する本発明にかかる皮膜の耐食性を調査するため、各種の金属材料試験片に炭素と水素とを主成分とする本発明のアモルファス状膜を形成させたものを用いて、フッ化物系ガス中における耐食性を、無処理および先行特許文献などにおいて開示されているAl拡散処理皮膜と比較検討した。
(1)実施例の試験片
次に示すような各種の金属材料から基材(幅20mm×長さ10mm×厚さ5mm)を切り出し、その全面にわたってCとHとを主成分とするアモルファス状膜を5μmの厚さで形成した。
(a)炭素鋼(SS400)
(b)片状黒鉛鋳鉄(FC200)
(c)球状黒鉛鋳鉄(FCD400)
(d)クロム鋼(SUS410)
(e)ステンレス鋼(SUS304)
(2)比較用の試験片
比較用の試験片として、無処理の上記(a)〜(e)の基材、及び、(a)〜(c)の基材にAl拡散浸透法によってAlを被覆したものを作製した。なお、Al被覆部のAl濃度は20mass%〜32mass%の範囲にあった。
(3)腐食試験装置及び腐食条件
図7に腐食試験装置の構成概略図を示す。試験片41を電気炉42の中心部に設けられたステンレス鋼管43内部(詳細には試験片設置台46の上)に静置した後、腐食性のガス44を、図7に示したようにステンレス鋼管43左側から流す。なお、ステンレス鋼管43途中に設けた石英放電管45に出力600Wのマイクロ波を負荷させ、腐食性ガスの活性化を促すようにしている。この活性化した腐食性のガスは電気炉中に導かれ、試験片設置台46の上に静置された試験片41を腐食した後、ステンレス鋼管43右側から系外に放出される。このような構成を有する腐食試験装置を用い、試験片温度120℃、腐食性ガスCFを150ml/min、Oを75ml/minを流しつつ、10時間の腐食試験を行った。なお、この腐食試験の特徴は腐食性のCFガスがプラズマ照射によって励起され、一段と強い腐食性ガスに変化する環境における耐食性を評価しようとするものである。
下記表2は以上の内容及び試験結果を要約したものである。この結果から明らかなように、比較例の試験片(No.6〜13)では、いずれも腐食量が多く、特に無処理の試験片(No.6,8,10)では15〜23mg/cmの腐食減量が認められた。ただ、無処理の試験片(No.12,13)においてもステンレス鋼においては腐食減量が比較的少なく3〜9mg/cm、またAl拡散処理試験片(No.7,9,11)ではさらに腐食減量が小さくなって、それなりの耐食性はみとめられた。これに対し、本発明のアモルファス状皮膜を形成した試験片(No.1〜5)では殆ど腐食減量は認められず、卓越した耐食性が確認された。
Figure 2007327350
(実施例3)
この実施例ではFC200及びFCD400の試験片(幅20mm×長さ30mm×厚さ5mm)の表面に形成したアモルファス状膜の耐食性を調査する一環として蒸気状態のHClおよびHFに曝露し、腐食反応によって発生する赤錆の発生状態を調査した。
(1)実施例、比較例の試験片
上記FC200および、FCD400製試験片の全面にわたってアモルファス状膜をそれぞれ厚さ0.8μm、1.0μm、3.0μm、50μmで形成したものを用いた。
(2)別の比較例の試験片
同寸法の試験片を無処理の状態およびその全表面を電気めっき法によってNi膜とCrめっき膜をそれぞれ10μm、20μmの厚さに形成したものを用いた。
(3)腐食試験方法
(a) HCl蒸気による腐食試験は、化学実験用のデシゲータの低部に30%HCl水溶液を100mlいれ、その上部に試験片を吊るすことによってHCl水溶液から発生するHCl蒸気にばく露する方法を採用した。腐食試験温度は30℃〜50℃、時間は96hrである。
(b) HF蒸気による腐食試験はSUS316製のオートクレーブの底部にHF水溶液を100ml入れ、その上部に試験片を吊るすことによってHF蒸気による腐食試験を実施した。腐食試験温度は30℃〜50℃、暴露時間は96hrである。
下記表3は以上の内容及び試験結果を要約したものである。この結果から、明らかなように無処理の試験片(No.9〜12)は全面にわたって赤錆が発生するとともに、一部赤錆は脱落するほど激しい腐食作用を受けていた。またNiめっきおよびCrめっきを施工した試験片(No.13〜16)ではめっき皮膜に存在するピンホールを通って内部に侵入した蒸気によって基材が腐食されるとともに赤錆が発生し、さらにめっき層の一部が大きく“ふくれ”ている状況がみられた。また、アモルファス状膜の膜厚が1.0μm未満の試験片(No.1、No.5)では、ピンホールの存在によって赤錆の発生が認められた。これに対して本発明に係る1.0μm以上の膜厚のアモルファス状膜(No.2〜4、No.6〜8)は、健全な状態を維持しており、極めて優れた耐食性を示した。
Figure 2007327350
(実施例4)
この実施例では非鉄金属基材に形成したアモルファス状膜のHCl蒸気およびHF蒸気に対する耐食性を調査した。
(1)基材
基材として次に示す材料を用い、それぞれ幅20mm×長さ30mm×厚さ1.5mmの試験片を製作した。
(a) Al(JIS H 4000規定の合金番号1085)
(b) Al合金(JIS H 4000規定の合金番号5782)
(c) Ti(JIS H 4600規定の1種)
(d) Ti合金(JIS H 4600規定の60種)
(2)実施例、比較例の試験片
前記基材の表面に対し、アモルファス状膜をそれぞれ0.8μm、1.0μm、3μm、50μmの厚さで形成して、各試験片を作製した。
(3)別の比較例の試験片
上記実施例の試験片と同寸法で、無処理の上記(a)〜(e)の基材、及び、(a)の基材についてのみ陽極酸化皮膜(アルマイト)を5μm、10μmの厚さで形成したものを作製し、比較例の試験片とした。
(4)腐食試験方法
腐食試験方法および条件は実施例3と同じ方法と条件である。
下記表4は以上の内容及び試験結果を要約したものである。この結果から明らかなように、比較例のAl,Tiおよびそれらの合金基材(No.9〜12)は、鉄基材のような赤錆の発生は認められないものの、孔食の発生が多く、内部へ深く侵食する傾向が認められた。また、Alに陽極酸化膜を形成した試験片(No.13、No.14)では酸化膜が完全に破壊されるとともに孔食の発生も認められた。また、1.0μm以下のアモルファス状膜(No.1、No.5)では、ピンホールを完全には消滅できないため、基材の腐食の発生が認められた。これに対して、膜厚が1.0μm以上のアモルファス状膜を形成した試験片(No.2〜4、No.6〜8)では孔食の発生は無く、健全な状態を示しており、Al、Ti、およびそれらの合金に対しても優れた防食効果を発揮することが確認された。
Figure 2007327350
(実施例5)
この実施例ではSS400銅およびSUS304鋼基材を用い、アモルファス状膜の形成に先駆けて基材表面に各種元素のイオンを注入した場合の耐食性と曲げ加工の影響とを調査した。
(1)基材
(a) SS400鋼:幅15mm×長さ60mm×厚さ1.5mm
(b) SUS304鋼:幅15mm×長さ60mm×厚さ1.0mm
(2)イオン注入装置、注入イオンの種類と本実施例の試験片
(a) イオン注入装置として図1に開示した高周波プラズマCVD装置を用いた。
(b) 注入イオン元素の種類:C,Ti,W,Nb,Ta,Cr,Al,Si
(c) 注入イオン濃度:1cmあたり1×1014〜1×1016原子濃度
(d) アモルファス状膜の厚さ:10μm
このような条件で上記基材にイオン注入を行った後、表面に2μmの厚さでアモルファス状膜を形成したものを、本実施例の試験片とした。
(3)比較例の試験片
比較例の試験片として、SS400鋼、SUS304鋼とも無処理の状態で腐食試験に供した。
(4)試験条件
実施例3と同じ条件で実施した。ただし、この実施例では腐食試験後の試験片を90°に曲げ、曲げ部のアモルファス状膜のはく難の有無を調査した。
下記表5は以上の内容及び試験結果を要約したものである。この結果から明らかなように、比較例のSS400鋼(No.10)はいずれのガス、蒸気による腐食試験において、多量の赤錆を発生し、既に脱落している赤錆も観察され、またSUS304鋼(No.13)においても赤錆と孔食の発生が認められた。これに対して、アモルファス状膜を形成させた試験片を90°に曲げ、曲げ部を拡大鏡を用いて観察した結果、イオン注入を実施した試験片では膜の剥離は認められなかったが、イオン注入をしない試験片(No.9,12)では、わずかながらアモルファス状膜の剥離がみとめられた。この結果から、本実施例で用いたような炭素のとの結合力の強い元素をイオン注入することによって、アモルファス状膜と基材との密着性が一段と向上することが判明した。
Figure 2007327350
(実施例6)
この実施例では、SS400銅およびSUS304鋼基材の表面にアモルファス状膜の形成に先駆けて、各種の金属薄膜を形成した場合の耐食性と、基材の曲げ加工時におけるアモルファス状膜の密着性とを調査した。
(1)基材
(a) SS400鋼:幅15mm×長さ60mm×厚さ1.5mm
(b) SUS304鋼:幅15mm×長さ60mm×厚さ1.0mm
(2)薄膜形成装置と、本実施例の試験片における薄膜の種類・アモルファス状膜の厚さ
(a) 薄膜形成装置:図1に開示した高周波プラズマCVD装置
(b) 薄膜の種類:Ti,W,Nb,Ta,Cr,Al,Si
(c) 上記(1)の(a)、(b)の基材表面に形成した薄膜の厚さ:10μm
(d) (c)の薄膜上に形成したアモルファス状膜の厚さ:2μm
(3)比較例の試験片
比較例の試験として、無処理のSS400鋼、SUS304鋼を用いた。
(4)腐食試験条件
実施例3と同じ条件で実施した。ただし、この実施例では、腐食試験後の試験片を90°曲げ、曲げ部のアモルファス状膜のはく雛の有無を調査した。
下記表6は以上の内容及び試験結果を要約したものである。この結果から明らかなように、比較例のSS400鋼(No.9)は耐食性に乏しい。供試したガス、蒸気によって著しく腐食され、多量の赤さびを発生するとともに、赤さびの脱落も観察された。またSUS304鋼(No.12)においても赤さび、孔食の発生がみとめられた。これに対して、アモルファス状膜を形成した試験片(No.1〜8,10,11)は、金属薄膜の施工の有無に拘わらず、優れた耐食性を示した。なお、腐食試験後の試験片について90°曲げ加工をおこない、拡大鏡を用いて曲げ部の膜の剥離状況を確認した結果、薄膜のない試験片(No.8,11)では、わずかながら皮膜の剥離が認められたが、他の試験片にはまったく以上は認められなかった。以上のことから、供試したアンダーコート用の薄膜は、アモルファス状膜の密着性向上に効果を発揮することが判明した。
Figure 2007327350
(実施例7)
この実施例では半導体加工装置用として配設されている真空ポンプ用のローターの表面にアモルファス状膜を形成させ、その結果を調査したものである。
(1)本実施例で用いた真空ポンプ用のローター
図1に示したローターと同構成のものを真空ポンプの一部品として用いた。このローターの材質はFC200、アモルファス状膜は5μm厚に形成させた。比較例として、該ローターと同様のローターに、Al203セラミック溶射皮膜を100μm厚で形成したたものを準備した。セラミック溶射皮膜の表面は、Ra=0.5μm〜0.8μmに仕上げた。また、さらに比較例として従来から使用されている無処理のローターを組み込んだ真空ポンプの運転性能の低下データを参考とした。
(2)真空ポンプの運転条件
以上の要領で皮膜を形成したローターを組み込んだ真空ポンプを、実際の半導体加工装置に配設して、累計4000hrの運転を行い、アモルファス状膜の変化および真空ポンプの性能低下の状況を観察した。なお、真空ポンプの排気ガス中には、フッ素系及び塩素系のガスと水分とが混在されており、腐食性の環境となっていた。
下記表7は以上の内容及び試験結果を要約したものである。この結果から明らかなように、従来の無処理のローターでは4000hrの運転によって0.15mm〜0.11mmの減肉を示し、Al203溶射皮膜がされたものについては、その大部分がローターから脱落していた。このため、無処理ローターおよびAl203皮膜を形成したローターを組み込んだ真空ポンプにおいては、運転すると、ローターの減肉ならびに溶射皮膜の脱落によって、クリアランスが大きくなって、排気ガスの圧縮効率が極端に低下し、運転初期の排気性能(1400L/min)から100L/min〜150L/min程度まで低下した。これに対して、アモルファス状膜を形成したローターにおいては、4000hrでも外観上まったく変化は認められず、運転初期の排気性能(1400L/min)から1150ml/minに低下しただけだった。このわずかの排気性能の低下は、真空ポンプのケーシング側の腐食減肉によるクリアランスの増加によるものと判明した。以上の結果から、ケーシングの内面にもアモルファス状膜を形成させれば、ほぼ完全な防食対策が期待できることが明らかとなった。なお、ローターに形成したアモルファス状膜は、ローターの回転運動に対してまったく支障が認められなかった。
Figure 2007327350
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態や実施例に限定されるものではない。例えば、上記各実施形態においては、ローターを示したが、他の送液ポンプ用部材(例えば、インペラー、ケーシングなど)においても基材表面に同様の膜を形成でき、このような送液ポンプ用部材も送液ポンプの一部材として用いることができる。また、第3実施形態における基材32においては、第2実施形態における注入層22bと同様の層が、アンダーコート34との接触面側に形成されていてもよい。
本発明の技術は、各種の半導体加工プロセス用装置に用いられる構成部材、特にドライプロセスに適用される酸化炉、CVD装置、エピタキシャル成長装置、イオン注入装置、拡散炉、反応性イオンエッテング装置、プラズマエッチング装置およびこれらの装置に付属している配管、給・排気ファン、バルブ類などに適用できる。
本発明の第1実施形態に係るローターを示す斜視図である。 図1のローターの表面付近の一部拡大断面図である。 図1のローターの製造工程において使用する装置の概略構成図である。 本発明の第1実施形態に係る方法で、S字型およびT字型をした基材に対し、アモルファス状膜を形成した場合の膜厚分布状況を説明するために用いた模式図である。 本発明の第2実施形態に係るローターの表面付近の一部拡大断面図である。 本発明の第3実施形態に係るローターの表面付近の一部拡大断面図である。 本発明の実施例2で用いる腐食試験装置の構成概略図である。
符号の説明
1 ローター
1a 筒部
2 反応容器
3 導体
4 高電圧パルス発生源
5 プラズマ発生用電源
6 重乗装置
7a、7b バルブ
8 アース線
9 導入端子
12、14、22、32 基材
11、21、31 (ローターの表面付近の)一部拡大部分
13、15、23、33 アモルファス状膜
41 試験片
42 電気炉
43 ステンレス鋼管
44 腐食性のガス
45 石英放電管
46 試験片設置台

Claims (12)

  1. 基材の表面に、直接または下塗り膜を介して、炭素と水素とを主成分とするアモルファス状膜を被覆したことを特徴とする真空ポンプ用部材。
  2. 前記アモルファス状膜の厚さが1μm〜50μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ用部材。
  3. 前記アモルファス状膜の硬さがHV700〜2800の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空ポンプ用部材。
  4. 前記アモルファス状膜の表面の算術平均粗さRaが0.5μm以下、且つ、十点平均粗さRzが2.0μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の真空ポンプ用部材。
  5. 前記アモルファス状膜における炭素原子の割合が90原子%〜50原子%、水素原子の割合が10原子%〜50原子%の範囲で組成されているものであるとともに、前記アモルファス状膜に対する該炭素原子及び該水素原子の組成割合が100原子%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の真空ポンプ用部材。
  6. 前記基材が、鋳鉄、鋳鋼、Ti、Alの単体およびその合金、炭素を含み、クロムを必須成分とする構造用鋼、並びにNiとCrとを必須成分とするステンレス鋼およびNi基合金のうちから選ばれる1種の金属材料であることを特徴とする請求項1〜5に記載の真空ポンプ用部材。
  7. 前記下塗り膜が、Ti、W、Nb、Ta、Cr、Al、Siの単体またはそれらの合金から選ばれる1種以上の膜厚0.1μm〜3μmの膜であることを特徴とする請求項1〜6に記載の真空ポンプ用部材。
  8. C、Ti、W、Nb、Ta、Cr、Al、Siの単体またはそれらの合金から選ばれる1種以上の元素を、前記基材の表面部に注入することによって形成された注入層をさらに有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の真空ポンプ用部材。
  9. 前記基材の表面の算術平均粗さRaが2.0μm以下、十点平均粗さRzが8.0μmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の真空ポンプ用部材。
  10. 基材の表面の算術平均粗さRaが2.0μm以下、十点平均粗さRzが8.0μm以下となるように加工する基材表面加工工程と、
    前記基材上に、炭素と水素とを主成分とするアモルファス状膜を被覆形成するアモルファス状膜被覆工程とを有することを特徴とする真空ポンプ用部材の製造方法。
  11. 加工された前記基材の表面部に、C、Ti、W、Nb、Ta、Cr、Al、Siから選ばれる元素の注入層を形成する工程を、前記基材表面加工工程と前記アモルファス状膜被覆工程との間に有することを特徴とする請求項10記載の真空ポンプ用部材の製造方法。
  12. 基材の表面の算術平均粗さRaが2.0μm以下、十点平均粗さRzが8.0μm以下となるように加工する基材表面加工工程と、
    加工された前記基材の表面上に、C、Ti、W、Nb、Ta、Cr、Al、Siから選ばれる単体またはそれらの合金からなる下塗り膜を被覆形成する下塗り膜被覆工程と、
    前記下塗り膜の表面上に、炭素と水素を主成分とするアモルファス状膜を被覆形成するアモルファス状膜被覆工程とを有することを特徴とする真空ポンプ用部材の製造方法。
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