JP2007081952A - 移動通信システム、並びに移動通信システムにおいて使用される基地局装置および移動局装置 - Google Patents

移動通信システム、並びに移動通信システムにおいて使用される基地局装置および移動局装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 高速移動環境においても送信局および受信局双方において安定した受信品質を確保できる移動通信システムを提供する。
【解決手段】 基地局装置100の位相誤差検出部506は、移動局装置200からの受信波におけるドップラーシフトに起因する位相誤差を検出する。位相回転部1は、位相誤差検出部506により検出された位相誤差に基づいて、基地局100から移動局装置200への下りリンクにおいて発生するドップラーシフトがキャンセルされるようにベースバンド領域で送信シンボルの位相を回転させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、移動通信システムにかかわり、特に、ドップラーシフトを補償する機能を備える移動通信システム、基地局装置、移動局装置に係わる。
移動通信システムにおいては、よく知られているように、ドップラー効果によるドップラーシフトが発生する。すなわち、移動局と基地局との間の距離が小さくなる方向に移動局が移動すると、送信局(移動局または基地局の一方)から送信される信号の周波数よりも、受信局(移動局または基地局の他方)により受信される信号の周波数の方が高くなる。反対に、移動局と基地局との間の距離が大きくなる方向に移動局が移動すると、送信局から送信される信号の周波数よりも、受信局により受信される信号の周波数の方が低くなる。よって、受信局は、ドップラーシフトを吸収または補償して信号を再生する必要がある。
図21は、従来の移動通信システムの構成を示す図である。ここでは、ドップラーシフトに関連する構成および動作について説明する。
基地局装置500は、アンテナ素子501、分波器(サーキュレータ)502、直交復調部503、電圧制御発振器(VCO:Voltage Control Oscillator)504、上りリンク用周波数シンセサイザ505、位相誤差検出部506、同期検波部507、復号部508、符号化部509、フレーム生成部510、多重部511、下りリンク用周波数シンセサイザ512、直交変調部513を備える。そして、基地局装置500は、VCO504および下りリンク用周波数シンセサイザ512を利用して、予め決められた固有の無線周波数で移動局600へデータを送信する。また、基地局装置500は、位相誤差検出部506を利用して移動局装置600からの受信波の周波数誤差(周波数オフセット)を検出し、その誤差を補償しながらデータを再生する。
移動局装置600は、アンテナ素子601、サーキュレータ602、直交変調部603、同期検波部604、復号部605、ハンドオーバ制御部606、位相誤差検出部607、自動周波数制御(AFC:Automatic Frequency Control)部608、VCO609、下りリンク用周波数シンセサイザ610、符号化部611、フレーム生成部612、上りリンク用周波数シンセサイザ613、直交復調部614を備える。AFC部608は、基地局装置500からの受信波の周波数誤差(周波数オフセット)がゼロに収束するように、VCO609の入力電圧を制御する。そして、移動局装置600は、VCO609が生成するクロックを利用して、受信データを再生するとともに、送信データを送信する。
ここで、移動局が列車(特に、新幹線等の高速で走行する列車)あるいは自動車と共に高速で移動し、かつ、その列車または自動車の走行経路の沿線において移動局と基地局との間で伝搬路が見通し内となるような場所(移動局と基地局との間で直接波が送受信されるような場所)に基地局が設置されている環境を想定する。このような環境下では、従来の移動通信システムにおける周波数制御は、図22に示すようになる。なお、図22では、説明を簡単にするために、上り/下り周波数を区別せず「fc 」として記述するが、上り/下り周波数が異なる場合でも同様の問題が存在する。
見通し内伝搬路では、移動局および基地局はそれぞれ直接波を受信するため、ドップラーシフトは周波数オフセットと等価になる。このため、移動局は、ドップラーシフトを含む無線周波数に追従したAFC制御を行うこととなる。
図22において、移動局(MS)が基地局(BTS1)に近づく場合、移動局のアンテナ端における受信波の周波数は、ドップラーシフト分だけ高い周波数となる。このため、この受信波に対するAFC制御の結果、移動局が信号を受信するために使用する周期波の周波数(下りリンク周波数)は、「fc +fd 」に制御される。ここで、「fc 」は搬送波の基準周波数であり、「fd 」はドップラーシフト周波数である。なお、理想的なAFC制御が実行されると、直交復調後に移動局が受ける周波数オフセットはゼロとなる。
ここで、従来の移動通信システムでは、図21を参照しながら説明したように、データを送信するための搬送波の周波数(上りリンク周波数)として、AFC制御により得られた下りリンク周波数と同じ周波数が使用される。このため、上りリンク周波数も「fc +fd 」に制御される。そして、移動局から周波数「fc +fd 」の電波が送信されると、上りリンクにおいても同様のドップラーシフトが加わるため、基地局(BTS1)における受信波の周波数は「fc +2fd 」となる。すなわち、基地局における直交復調後の周波数オフセットは、ドップラーシフトの2倍となる。
移動局(MS)が基地局(BTS1)の近傍を通過する際には、移動局が基地局に近づく状態から移動局が基地局から遠ざかる状態に変化するため、ドップラーシフトの極性が短時間の内に反転することとなる。このときのドップラーシフトfd の変動は、下式により表すことができる。なお、「v」は移動局の移動速度、「c」は光の速度、「x」は基地局(BTS1)から移動局の移動経路への垂直距離、「t」は移動局が基地局(BTS1)の近傍を通過する時刻を基準とした経過時間、「θ(t)」は移動局の移動方向から基地局(BTS1)を見た場合の仰角を意味する。
Figure 2007081952
図23は、上記計算式により得られたドップラーシフトの変動を示す図である。移動局の移動速度が速くなるほどドップラーシフトの変動幅が大きくなる。また、基地局から移動局の移動経路への垂直距離が小さくなるほど、ドップラーシフトはより短い時間内に変化することになる。
例えば、fc =2GHz、v=300km/h、x=50mとした場合、移動局における受信周波数は、数秒程度の間に「2G+600」Hzから「2G−600」Hzへ急激に変動するので、移動局における周波数オフセットを最小にするためには、AFC制御の時定数を高速にする必要がある。ただし、AFC制御の時定数を高速にすることは、位相誤差検出の雑音に対する平均時間を短くし、かつ、周波数制御の制御ステップを粗くすることに相当するため、AFC制御の高速化と周波数制御の精度とは互いにトレードオフの関係になるという問題がある。
この問題を解決するために、例えば、特許文献1においては、通信状況に応じてAFC帯域及び追従速度を可変にする技術が提案されている。しかし、この構成を導入すると、移動局のAFC制御回路が複雑化するという問題がある。
さらに、移動局におけるAFC制御が理想的に行われたとしても、基地局はドップラーシフトの2倍に相当する周波数オフセットを受ける。このため、上述のケースの場合、基地局における受信周波数は、数秒程度の間に「2G+1200」Hzから「2G−1200」Hzへ2400Hzも変動してしまう。従って、基地局の周波数補償(位相誤差検出の結果に基づく同期検波時の周波数補償処理)における高速化の要求は、移動局における条件より更に厳しいものとなる。
ところが基地局は、通常、移動局の周波数安定性に起因する0.1ppm程度の周波数誤差を補償するように設計されているに過ぎない。ここで、fc =2GHzとすると、補償可能な周波数誤差は、±200Hz程度である。よって、見通し内伝搬路における高速移動環境という特殊な条件下での受信品質を確保するためには、基地局は、通常の設計の6倍もの補償レンジをもつ周波数補償回路を実装しなければならない。さらに、高速追従を実現するためには、周波数の補償精度を犠牲にしなければならない。
続いて、図22において、移動局(MS)が基地局(BTS1)の通信エリアから基地局(BTS2)の通信エリアへ移動することにより発生するハンドオーバを想定する。ここで、第2世代および第3世代の携帯電話システムで採用されているCDMA方式におけるソフトハンドオーバ(SHO)を想定する。CDMAでは、互いに隣接するセルで同じ周波数を使用できる。このため、移動局は、複数の基地局からの信号を最大比合成しながらレファレンスセルを切り替える(すなわち、ソフトハンドオーバ)ことができる。
しかし、従来の移動局(MS)は、ある1つの受信周波数に対してしかAFC制御を行うことができない。このため、移動局は、通常、レファレンスセルの受信周波数のみに対してAFC制御を行う。そうすると、図22に示すように、基地局(BTS1)がレファレンスセルである期間は、上り/下り周波数は「fc −fd 」に制御され、レファレンスセルが基地局(BTS1)から基地局(BTS2)に切り替わった後は、上り/下り周波数は「fc +fd 」に制御されることになる。すなわち、移動局は、ハンドオーバ区間においては、ドップラーシフトの2倍に相当する周波数差を持った1組の受信波について最大比合成を行うことになる。この結果、ソフトハンドオーバによるダイバーシチ利得が得られないばかりか、合成しない場合よりもかえって受信品質が劣化してしまう可能性もある。
なお、ドップラーシフトを考慮した他の移動通信システムについては、例えば、特許文献2に記載されている。また、ハンドオーバ時のAFC制御に係わる技術は、例えば、特許文献3に記載されている。
特開2002−101012号公報 特開平10−200471号公報 特開平11−355826号公報
本発明の目的は、高速移動環境においても送信局および受信局双方において安定した受信品質を確保できる移動通信システムを提供することである。
本発明の基地局装置は、移動局との間で無線波を送受信する装置であって、前記移動局からの受信波の周波数オフセットを検出する検出手段と、前記検出手段により検出された周波数オフセットに基づいて、前記移動局への無線リンクにおいて発生するドップラーシフトをキャンセルするように、その移動局へ信号を送信するための搬送波の送信周波数を制御する周波数制御手段、を有する。
移動局が高速移動することに伴うドップラーシフトは、上りリンクおよび下リンクの双方向で発生するので、従来の移動通信システムでは、ドップラーシフトの2倍の周波数オフセットが発生していた。これに対して本発明の基地局装置を導入すれば、下りリンクのドップラーシフトがキャンセルされる。よって、周波数オフセットは、ドップラーシフト相当に抑えられる。
本発明の移動局装置は、基地局との間で無線波を送受信する装置であって、前記基地局における受信波の周波数オフセットに基づいて作成される周波数制御情報を受信する受信手段と、前記周波数制御情報に基づいて、前記基地局における受信波の周波数オフセットをキャンセルするように、前記基地局へ信号を送信するための搬送波の送信周波数を制御する周波数制御手段、を有する。
本発明の移動局装置を導入すれば、上りリンクのドップラーシフトがキャンセルされ、基地局装置における周波数オフセットがゼロになる。一方、移動局装置は、ドップラーシフトに追従してAFC制御を行う構成であれば、周波数オフセットは発生しない。したがって、この場合、基地局および移動局の双方において周波数オフセットをゼロにすることができる。
上記構成の基地局装置または移動局装置によれば、ドップラーシフトによる影響を回避または抑制できるので、高速移動環境においても安定した通信品質の確保が可能となる。
本発明の移動通信システムは、移動局および複数の基地局を備え、各基地局にそれぞれ設けられ、前記移動局からの受信波の周波数オフセットに基づいて周波数制御情報を作成する作成手段と、前記移動局に設けられ、1または複数の基地局において作成された前記周波数制御情報に基づいて、基地局へ信号を送信するための搬送波の送信周波数を制御する周波数制御手段、を有する。そして、移動局がハンドオーバ状態であるときは、周波数制御手段は、受信品質が最も良好な基地局からの周波数制御情報に基づいて前記送信周波数を制御するようにしてもよいし、あるいは、各基地局からの信号の受信品質に応じてそれらの基地局からの周波数制御情報を重み付け合成した結果に基づいて前記送信周波数を制御するようにしてもよい。
上記移動通信システムによれば、高速移動環境におけるハンドオーバ時においても、より好適な周波数制御を実現することが可能となる。
本発明によれば、無線リンクにおいて発生するドップラーシフトをキャンセルするように、或いは受信局における周波数オフセットをキャンセルするように送信局の送信周波数を制御するので、高速移動環境においても、送信局および受信局双方の受信品質を改善できる。これにより、上りリンク及び下りリンク共に安定した通信品質を実現することが可能となる。
図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、移動局から基地局へ信号を伝送するパスを「上りリンク」と呼び、基地局から移動局へ信号を伝送するパスを「下りリンク」と呼ぶことにする。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態の移動通信システムの構成を示す図である。図1において、基地局装置100は、図21に示したアンテナ素子501、分波器(サーキュレータ)502、直交復調部503、電圧制御発振器(VCO:Voltage Control Oscillator)504、上りリンク用周波数シンセサイザ505、位相誤差検出部506、同期検波部507、復号部508、符号化部509、フレーム生成部510、多重部511、下りリンク用周波数シンセサイザ512、直交変調部513に加えて、位相回転部1を備える。
アンテナ素子501より入力された受信信号は、サーキュレータ502において送信信号と分波された後、直交復調部503においてベースバンド信号にダウンコンバートされる。ここで、VCO504は、基準クロックを生成し、上りリンク用周波数シンセサイザ505は、PLL制御の下で基準クロックからシステム固有の周波数を持った周期波(例えば、正弦波)を生成する。そして、直交復調部503は、受信信号にその周期波を乗算することによってベースバンド信号を得る。
位相誤差検出部506は、ベースバンド信号に予め多重されている既知の信号(パイロット信号)について時間相関を取ることにより、周波数オフセット(すなわち、基地局装置100における基準周波数と、移動局装置200からの受信波の周波数との誤差)を検出する。なお、周波数オフセットは、移動局ごとに検出することができる。
同期検波部507は、上述の周波数オフセットを補償しながらパイロット信号を同相加算することで伝搬路変動の推定値を算出する。そして、その推定値に周波数オフセットに相当する位相回転を加えた結果の複素共役を、上記ベースバンド信号に乗算する。これにより、伝搬路で生じた位相回転及び周波数オフセットに起因する位相回転が補償される。
復号部508は、同期検波後の受信シンボルに対して、デインタリーブ、誤り訂正復号等の復号処理を行い、最終的な受信データ系列を出力する。
一方、データを送信するための変調処理は以下の通りである。すなわち、符号化部509は、各移動局の送信データ系列に対して、誤り訂正符号化、インタリーブ等の符号化処理を行う。フレーム生成部510は、符号化されたデータを所定のフレームフォーマット内に時間多重する。位相回転部1は、送信先の移動局ごとに、位相誤差検出部506からの指示に従って、フレーム生成部510から出力されるベースバンド信号の位相を回転させる。多重部512は、位相回転部1の出力信号を総加算する。そして、多重後のベースバンド信号は、直交変調部513においてRF帯にアップコンバードされ、サーキュレータ502において受信信号と分波された後、アンテナ素子501より空間に送出される。ここで、アップコンバートのために使用される搬送波は、VCO504および下りリンク用周波数シンセサイザ512により生成される。なお、TDD(Time Division Duplex)システムでは、上りリンク/下りリンクの無線周波数は互いに同じあり、FDD(Frequency Division Duplex)システムでは、上りリンク/下りリンクの無線周波数は互いに所定帯域だけ離れている。
図2は、位相誤差検出部506の一例を示す図である。位相誤差検出部506には、パイロット信号が入力される。まず、互いに隣接するシンボル間の相関(すなわち、時間相関)が計算される。続いて、Nシンボル分の相関値の平均値が計算される。そして、この平均値に対してアークタンジェント演算を行うことにより、1シンボル当りの位相誤差θが得られる。
図3は、位相回転部1の動作を説明する図である。ここでは、BPSK変調でデータが伝送されるものとする。また、各シンボル(1または0)は、図3(a)に示すように、「0」または「π」が割り当てられる。そして、変調データは、周波数fo の搬送波で送信されるものとする。
ここで、図3(b)に示すように、ベースバンド領域において送信シンボルの位相に位相θ1(θ1>0)を加えると、搬送波のスペクトルは、その位相θ1に対応する周波数f1 だけシフトする。すなわち、搬送波の周波数は、実質的に、「fo +f1 」になる。一方、図3(c)に示すように、ベースバンド領域において送信シンボルの位相に位相θ2(θ2<0)を加えると、搬送波のスペクトルは、その位相θ2に対応する周波数f2 だけシフトする。すなわち、搬送波の周波数は、実質的に、「fo −f2 」になる。このように、ベースバンド領域において送信シンボルの位相を回転させることは、搬送波の周波数をシフトさせることと等価である。
位相回転部1は、位相誤差検出部506からの指示に従って、バースバンド領域において送信シンボルの位相を回転させる。この結果、搬送波の送信周波数は、周波数オフセットに応じて制御されることになる。ここで、位相誤差検出部506は、移動局ごとに周波数オフセットを検出し、位相回転部1は、移動局ごとに搬送波の送信周波数を制御することができる。
図1に戻る。移動局装置200は、基本的に図21に示した移動局600と同じであり、アンテナ素子601、サーキュレータ602、直交変調部603、同期検波部604、復号部605、ハンドオーバ制御部606、位相誤差検出部607、自動周波数制御(AFC:Automatic Frequency Control)部608、VCO609、下りリンク用周波数シンセサイザ610、符号化部611、フレーム生成部612、上りリンク用周波数シンセサイザ613、直交復調部614を備える。ここで、AFC部608、同期検波部604、ハンドオーバ制御部606以外の動作は、基本的に基地局装置100と同様であるため、説明を省略する。
AFC部608は、位相誤差検出部607において検出された周波数オフセットがゼロに収束するようにVCO609の入力電圧を制御する。すなわち、移動局装置200の下り周波数(下りリンク用周波数シンセサイザ610から直交復調部603に与えられる周期波の周波数)が、基地局装置100からの受信波の周波数に一致するように周波数の引き込み動作が行われる。上記AFC制御の結果、理想的には、ベースバンド信号の周波数オフセットはゼロになる。このため、同期検波部604は、伝搬路推定値に基づく伝搬路の位相回転補償のみを行う。
なお、TDDまたはFDDのいずれのシステムにおいても、上りリンク/下りリンクの周波数差は一定の関係となる。このため、上述のAFC制御において、一般に、1個のVCO(実施例では、VCO609)が生成する基準クロックが、上りリンク/下りリンク双方の周波数シンセサイザ(610、613)に供給される。すなわち、上りリンク/下りリンク周波数に対するAFC制御が同時に実施されることとなる。
ハンドオーバ制御部606は、当該移動局と接続している基地局およびその周辺の基地局から送信される制御信号の直交復調データを利用して、基地局ごとに受信品質(受信電力、受信SIR等)を測定する。そして、当該移動局の移動に追従して、随時、受信品質が最大となる基地局(レファレンスセル)の切り替え(ハンドオーバ)を行う。ハンドオーバ時には、複数の基地局からの信号を同時に受信することになる。このとき、位相誤差検出部607は、ハンドオーバ制御部606からレファレンスセルのIDを通知してもらうことより、レファレンスセルの受信波に対する周波数オフセットを検出する。よって、ハンドオーバ時には、レファレンスセルの受信波に対してAFC制御が行われる。
上記構成の移動通信システムにおいて、基地局装置100の位相回転部1は、上述したように、位相誤差検出部506が検出した周波数オフセットに基づいて、基地局装置100から移動局装置200への下りリンクにおいて発生するドップラーシフトをキャンセルするように、下りリンクベースバンド信号の位相回転を行う。すなわち、下りリンクの各シンボルに対して、検出した周波数オフセットに相当する位相の逆位相を複素乗算することにより位相回転が実行される。例えば、位相誤差検出部506により検出された周波数オフセットが「θ1」であれば、下りリンクの各シンボルの位相は「−θ1」だけ回転させられる。
なお、上述の位相回転は、送信先(すなわち、移動局)毎に行われる。このため、周波数オフセットをキャンセルする処理は、個別チャネルに対して行われる。すなわち、基地局装置100における下りリンクの周波数制御の実施は、移動局の発呼に起因して個別チャネルの通信が開始された後に開始される。
図4は、第1の実施形態の移動通信システムにおける周波数制御を説明する図である。ここでは、移動局(MS)が経路301に沿って速度vで移動し、基地局(BTS1)および基地局(BTS2)の近傍を通過するものとする。また、基地局(BTS1)および基地局(BTS2)から経路301への垂直距離はxであるものとする。さらに、システム固有の搬送波周波数は、fo であるものとする。
第1の実施形態のシステムでは、各基地局がドップラーシフトに起因する周波数オフセットを検出し、その周波数オフセットに基づいて下りリンクの送信周波数を制御する。なお、移動局は、本発明の周波数制御のために特別な機能を備えている必要はない。
図4において、各基地局は、常時、共通チャネルを利用して制御信号を同報している。すなわち、移動局は、個別チャネルの発呼の開始に先立って、基地局(BTS1)からの共通チャネルの受信波に対してAFC制御を行っている。このとき、移動局が検出する受信波の周波数は、「fc +fd 」である。なお、「fd 」は、ドップラーシフトに起因する周波数である。そうすると、このAFC制御により、移動局から基地局(BTS1)へ応答信号を返送するための送信周波数も「fc +fd 」となる。そして、基地局(BTS1)が検出する受信波の周波数は、「fc +2fd 」となる。すなわち、基地局(BTS1)における周波数オフセットΔfo は「2fd 」である。したがって、基地局(BTS1)は、移動局からの発呼を検出すると、まず、「−Δfo /2」に相当する位相回転を下りリンクベースバンド信号に加えることで周波数制御を開始する。すなわち、基地局(BTS1)は、「fc −fd 」に相当する周波数で下りリンク信号を送信する。
そうすると、下りリンク上でドップラーシフト周波数が加わるので、移動局における受信波の周波数は「fc 」になる。すなわち、ドップラーシフトfd がキャンセルされている。移動局は、個別チャネルの通信開始後は、個別チャネルの受信波に対してAFC制御を行う。よって、移動局における上りリンク周波数および下りリンク周波数は、AFC制御の時定数に相当する時間内に「fc 」に収束する。この結果、移動局が受ける周波数オフセットはゼロとなり、理想的な受信環境が実現する。
なお、基地局の受信波には、片道分のドップラーシフト(すなわち、fd )が残存することになるが、周波数制御を行わない場合に比べて、周波数オフセットは半分に抑圧される。
上述のAFC制御の収束時間が「τ(秒)」であるものとすると、基地局は、周波数制御を開始したときから「τ」が経過するまでの期間は、搬送波周波数fc に対して「−Δfo /2」を加える周波数制御を継続する。そして、「τ」が経過した後は、搬送波周波数fc に対して「−Δf(t) 」を加える動的な周波数制御に切り替える。ここで、「−Δf(t) 」は、位相誤差検出部506によって所定の周期で検出される位相誤差に対応する周波数である。すなわち、基地局は、移動局の移動に伴って動的に変化する「−Δf(t) 」に相当する位相回転を送信シンボルに加える。したがって、図4に示すように、移動局が基地局(BTS1)の近傍を通過する際にドップラーシフトの極性が変化しても、基地局の送信周波数をその変動に追従させることができるので、移動局における周波数オフセットをゼロに維持することが可能となる。
移動局(MS)が基地局(BTS1)から遠ざかり、基地局(BTS2)に近づく区間では、基地局(BTS1)および基地局(BTS2)がソフトハンドオーバ状態となる。そうすると、基地局(BTS2)は、「−Δf(t) 」を利用して周波数制御を開始する。このとき、基地局(BTS1)による周波数制御が行われているので、移動局の送信周波数は「fc 」に維持されている。このため、基地局(BTS2)における周波数オフセットは、片道分のドップラーシフト(すなわち、fd )に相当する。よって、基地局(BTS2)は、このドップラーシフトを打ち消すような位相回転を下りベースバンド信号に加えることで、移動局における基地局(BTS2)からの受信波も基地局(BTS1)からの受信波と同様に、周波数オフセットがゼロに制御される。
このように、第1の実施形態においては、移動局においていずれの基地局からの受信波の周波数オフセットもゼロになるように下りリンク信号の周波数制御が行われる。したがって、移動局は、ソフトハンドオーバ時には、それぞれドップラーシフトが実質的にゼロである複数の受信波を合成することができるので、受信品質の劣化を回避することが可能となる。なお、従来技術においては、図22を参照しながら説明したように、ハンドオーバ時には周波数が正側にシフトした受信波および負側にシフトした受信波が合成されていたので、受信品質が劣化していた。
上記移動通信システムにおける一つの構成例として、自局Aは基地局に該当し、相手局Bは移動局に該当するものとする。上記構成によれば、高速移動環境におけるソフトハンドオーバ時においても、ハンドオーバ中の基地局が各々、着目する移動局に対してドップラーシフトをキャンセルするよう送信周波数を制御するため、移動局では従来例のようにドップラーシフトの極性が異なる受信波を合成することがなくなり、受信品質の劣化を回避することが可能となる。
図5は、位相回転部1の動作を説明するフローチャートである。このフローチャートの処理は、例えば、所定周期で繰り返し実行される。
ステップS1では、個別チャネルで通信が行われているか否かを調べる。個別チャネルでなければ、周波数制御を行わずに処理を終了する。ステップS2では、ハンドオーバ状態であるか否かを調べる。ハンドオーバ状態でなければ、ステップS3において、周波数制御を開始したときから「τ」が経過したか否かを調べる。ここで、周波数制御は、例えば、移動局からの発呼に際して開始される。「τ」は、上述したように、移動局のAFC制御の収束時間に相当する。そして、周波数制御の開始から「τ」が経過していないときは、ステップS4において、ベースバンド領域で下りリンク信号に「−Δfo /2」に相当する位相回転を加える。ここで、「Δfo 」は、周波数制御を行わない状態で検出された周波数オフセットであり、ドップラーシフトの2倍に相当する。一方、周波数制御の開始から「τ」が経過した後は、ステップS5において、ベースバンド領域で下りリンク信号に「−Δf(t) 」に相当する位相回転を加える。ここで、「Δf(t) 」は、移動局においてAFC制御が収束した後に検出された周波数オフセットであり、動的に変化する値である。なお、対象となっている移動局がハンドオーバ状態であったときは、ステップS5が実行される。
このように、第1の実施形態においては、移動局における周波数オフセットをゼロにすることができる。また、基地局における周波数オフセットは、従来のシステムと比較して半分になる。さらに、ハンドオーバ時、周波数オフセットのない複数の受信波を合成することができる。よって、移動局および基地局の双方(特に、移動局)において受信品質が向上する。
なお、上記システムにおいて、基地局装置100は、ドップラーシフトの2倍に相当する位相回転を送信シンボルに与えるようにしてもよい。この場合、例えば、移動局が基地局に近づく期間は、基地局の送信周波数は「fc −2fd 」となり、移動局の受信周波数は「fc −fd 」となる。そうすると、AFC制御により移動局の送信周波数は「fc −fd 」になる。よって、基地局の受信周波数は「fc 」となる。基地局装置においてこのような位相回転(すなわち、周波数制御)を行えば、移動局においてドップラーシフトに相当する周波数オフセットが残るものの、基地局における周波数オフセットをゼロにすることができる。
<第2の実施形態>
図6は、第2の実施形態の移動通信システムの構成を示す図である。図6に示す基地局装置110は、図21に示した従来の基地局装置500と比較すると、周波数制御(FC:Frequency Control )コマンド生成部11が追加されている。また、フレーム生成部12は、図21に示すフレーム生成部510が有する機能に加え、FCコマンド生成部11により生成された周波数制御コマンドをフレーム内の所定領域に書き込む機能を備えている。
一方、移動局装置210は、図21に示す従来の構成に加えて、下りリンク用VCO21、上りリンク用VCO22、および基地局から送られてくる周波数コマンドに従って上りリンク用VCO22を制御する周波数制御部23を備える。そして、周波数コマンドを受信している期間は、上りリンク用VCO22の周波数は、下りリンク用VCO21とは独立して制御される。なお、下りリンク用VCO21は、基本的に、図1に示すVCO609と同じものである。
まず、周波数制御コマンド(以下、FCコマンド)について説明する。基地局装置110が備える周波数制御コマンド生成部11は、位相誤差検出部506が検出した移動局毎の周波数オフセットに基づいて、対応する移動局に送信すべきFCコマンドを生成する。FCコマンドは、基地局における受信波に含まれている周波数オフセットをキャンセルするための制御信号であり、以下のようにして生成される。
1.周波数の上昇/低下のみを指示する2値の信号(1ビット情報)
位相誤差検出部506が検出した周波数オフセットΔfの符号に基づいて以下のようにFCコマンドが生成される。
(1)Δf<0のとき:FCコマンド=0(移動局は、送信周波数を「a(Hz)」だけ上げる
(2)Δf≧0のとき:FCコマンド=1(移動局は、送信周波数を「a(Hz)」だけ下げる
なお、周波数制御ステップaは、予め決められた固定値である。
2.周波数の上昇/低下の指示、および周波数の制御ステップを指示する符号を含む多値信号
予め用意されている閾値を用いて位相誤差検出部506が検出したΔfの大きさを判定し、その判定結果を表すFCコマンドが生成される。
(1)Δf≦−f3 のとき:FCコマンド=+3(移動局は、送信周波数を「3b(Hz)」だけ上げる)
(2)−f3 <Δf≦−f2 のとき:FCコマンド=+2(移動局は、送信周波数を「2b(Hz)」だけ上げる)
(3)−f2 <Δf≦−f1 のとき:FCコマンド=+1(移動局は、送信周波数を「b(Hz)」だけ上げる)
(4)−f1 <Δf<f1 のとき:FCコマンド=0(移動局は、送信周波数を変えない)
(5)f1 ≦Δf<f2 のとき:FCコマンド=−1(移動局は、送信周波数を「b(Hz)」だけ下げる)
(6)f2 ≦Δf<f3 のとき:FCコマンド=−2(移動局は、送信周波数を「2b(Hz)」だけ下げる)
(7)f3 ≦Δfのとき:FCコマンド=−3(移動局は、送信周波数を「3b(Hz)」だけ下げる)
なお、閾値f1 〜閾値f3 、および周波数制御ステップbは、予め定められた固定値である。
3.位相誤差検出部506により検出された周波数オフセットを量子化した値、および符号を含む多値信号
(1)Δf<0のとき:移動局は、送信周波数を「Δf(Hz)」だけ上げる
(2)Δf≧0のとき:移動局は、送信周波数を「Δf(Hz)」だけ下げる
なお、上述の3つのコマンド形式を比較すると、移動局における周波数制御の収束時間は、形式1が最も長く、形式3が最も短い。一方、下りリンクに対するFCコマンドのオーバヘッドは、形式1が最も小さく、形式3が最も大きい。すなわち、収束時間とオーバヘッドとは、互いにトレードオフ関係になる。よって、FCコマンドの形式の選択は、システムが想定する移動速度の上限値や信号を伝搬するキャリア周波数帯の大きさ等に応じて適切に選択されることが望ましい。
上述のようにして生成されるFCコマンドは、フレーム生成部12において、図7に示すフォーマットAのスロット内の所定の領域に時間多重され、対応する移動局へ送信される。スロットとは、送信フォーマットの最小単位であり、このスロット時間が周波数制御の繰返し周期に該当する。図7において「NPILOT」は、パイロット信号のビット数である。「NFC」は、FCコマンドのビット数である。「NDATA」は、符号化データのビット数である。なお、このフォーマットは、後述する第3〜第7の実施形態においても同じである。
図8は、フレーム生成部13の動作を説明するフローチャートである。この処理は、所定の周期で繰り返し実行される。ステップS11では、検出された周波数オフセットの絶対値が閾値α以上であるか否かを調べる。そして、周波数オフセットの絶対値が閾値α以上であれば、ステップS12において保護段カウンタをインクリメントする。そうでない場合は、ステップS13において、保護段カウンタをリセットする。ステップS14では、保護段カウンタのカウント値が閾値β以上であるか否かを調べる。そして、保護段カウンタのカウント値が閾値β以上であれば、ステップS15において、図7に示すフォーマットAを選択する。そうでない場合は、ステップS16において、図7に示すフォーマットBを選択する。なお、このフローチャートの処理は、後述する第3〜第7の実施形態においても実施される。
このように、周波数オフセットが所定の閾値よりも大きい状態が所定時間以上継続すると、FCコマンドを含むフォーマットAが選択され、周波数制御が有効になる。一方、それ以外の期間は、FCコマンドを含まないフォーマットBが選択され、周波数制御が無効になる。選択したフォーマットの種別は、例えば、制御信号に多重して移動局に通知される。これにより、移動局は、周波数制御の有効/無効を認識することができる。
上記方式によれば、ドップラーシフトに対する周波数補償が必要となる環境下でのみ周波数制御を有効とすることができる。したがって、システム全体として、統計多重的に、周波数制御信号のフィードバック送信に伴う電力の消費や他局への干渉雑音を最小限に抑えることが可能となる。
なお、上述のようにして2種類のフォーマットを併用するのではなく、図7に示すフォーマットAのみを使用して同様の機能を実現することもできる。例えば、周波数オフセットの絶対値が継続して閾値αを越えたときは、所定の電力でFCコマンドを送信し、それ以外の場合には、FCコマンドを送信すべきタイミングでDTX送信(送信電力をゼロにする(=−∞[dBm]))を行う。この場合、移動局は、FCコマンドの受信レベルをモニタすることで、周波数制御の有効/無効を認識することができるので、フォーマット識別のための制御情報が不要となる。
また、周波数制御が必要となる環境は、基地局の設置条件(高速幹線の沿線、障害物の有無等)で、ある程度特定できる。このため、周波数制御の要否を動的に判断することなく、基地局の設置条件に従ってフォーマット選択、あるいは、DTX送信による周波数制御の有効/無効制御を行うこともできる。具体的には、例えば、基地局固有の制御パラメータとして周波数制御の有効/無効を事前に設定しておく方法が考えられる。
次に、移動局装置210の動作について説明する。移動局210装置は、復号部605において受信信号を復号することによって上述のFCコマンドを取得する。FCコマンドは、周波数制御部23へ送られる。周波数制御部23は、FCコマンドにより指示される周波数を現在の上りリンク周波数に加算することにより、生成すべき周波数を算出する。例えば、現在の上りリンク周波数が「fcc(Hz)」であるときに、基地局から受信したFCコマンドが「+a(Hz)」を指示していれば、「fcc+a(Hz)」が得られる。同様に、FCコマンドが「−a(Hz)」を指示していれば、「fcc−a(Hz)」が得られる。そして、周波数制御部23は、算出した周波数に対応する制御電圧を生成して上りリンク用VCO22に入力する。
なお、第2の実施形態の構成では、下りリンク周波数に対する制御方法は従来例と同様であり、FCコマンドは上りリンク周波数の制御のみに使用される。ただし、周波数制御部23にはAFC制御部608からの制御電圧も入力されている。そして、FCコマンドによる周波数制御が無効化される場合には、周波数制御部23は、AFC制御部608からの制御電圧を利用して、上りリンク用VCO22を制御する。この場合、上りリンク周波数および下りリンク周波数は、従来技術と同様に、互いに同じになる。
移動局装置210がハンドオーバ状態であり、複数の基地局からFCコマンドを受信しているときは、以下のいずれかの方法で上りリンク用VCO22に入力すべき制御電圧を生成する。なお、ハンドオーバ制御部606は、各周辺基地局からの受信信号の品質をモニタしているものとする。
1.受信品質が最も良好な基地局のFCコマンドのみを選択し、そのFCコマンドのみに従って制御電圧を生成する。
2.複数の基地局から受信したFCコマンドを受信品質で重み付け合成することにより得られる演算結果に従って制御電圧を生成する。例えば、受信SIRで重み付け合成する場合、基地局iのからの信号の受信SIRを「SIRi 」、FCコマンドによる周波数制御量を「FCi 」とすると、合成後の周波数制御量FCcombは、次式で算出される。
Figure 2007081952
図9は、周波数制御のシーケンスを説明する図である。なお、このシーケンスは、後述する第3〜第7の実施形態においても実施される。
まず、基地局から移動局へスロット#Nの下りリンクデータを送信する。この下りリンクデータは、基地局の送信タイミングから下りリンク伝搬路の伝搬遅延(=Tp )だけ遅延したタイミングで移動局により受信される。移動局は、下りリンクデータの受信タイミングからシステム固有の所定時間(=TUL-DL)だけ遅延したタイミングでスロット#Nの上りリンクデータを送信する。基地局は、移動局の送信タイミングから上りリンク伝搬路の伝搬遅延(=Tp)だけ遅延したタイミングで#Nの上りリンクデータを受信する。そうすると、基地局の位相誤差検出部506は、スロット#Nの上りリンクデータに含まれるパイロット信号の時間相関により受信波の周波数オフセットを算出する。そして、FCコマンド生成部11は、算出した周波数オフセットに基づいて、上述したいずれかの方法でFCコマンドを生成する。このとき、パイロット信号を受信したときからFCコマンドが生成されるまでに処理時間Td1が発生する。そして、生成したFCコマンドは、フレーム生成部12によりスロット#N+1の下りリンクデータの所定位置に挿入され、移動局に送信される。
続いて、移動局は、スロット#N+1の下りリンクデータを伝搬遅延(=Tp )だけ遅延したタイミングで受信する。復号部605は、受信したスロットからFCコマンドを復号する。この復号処理に際して処理時間Td2が発生する。そして、復号したFCコマンドは、周波数制御部23において上りリンク用VCO22の発振周波数を制御するための制御電圧に変換される。よって、移動局は、FCコマンドに従って制御された周波数でN+1番目のスロットを送信する。以降、上述の周波数制御をスロット周期で繰り返すことにより、移動局において、下りリンク周波数とは独立して上りリンク周波数を所望の周波数に引き込むことが可能となる。
図10および図11は、第2の実施形態の移動通信システムにおける周波数制御を説明する図である。なお、図10および図11に示す制御は、ハンドオーバ区間において互いに異なっている。
移動局(MS)および基地局(BTS1、BTS2)の相対位置、および移動局と基地局との間の伝搬環境は、図4を参照しながら説明したものと同じであるものとする。移動局は、個別チャネルの発呼開始に先立って、基地局(BTS1)からの共通チャネルの受信波に対してAFC制御を行っている。そして、移動局の発呼時において、基地局(BTS1)の受信波の周波数は、「fc +2fd 」である。すなわち、基地局(BTS1)により検出される周波数オフセットΔfo は、ドップラーシフトの2倍に相当する。
基地局装置(BTS1)は、移動局からの発呼を検出すると、FCコマンドを用いた上りリンク周波数の制御を開始する。このとき、FCコマンドは、基地局(BTS1)における周波数オフセットがゼロになるように、移動局に対して送信周波数の制御を指示する。このFCコマンドにより、移動局の送信周波数は「fc −fd 」に収束していく。この結果、基地局装置(BTS1)の受信波の周波数は、「fc 」になる。すなわち、基地局装置(BTS1)における周波数オフセットはゼロになる。ただし、下りリンクについては、周波数制御は行われない。よって、移動局の受信波の周波数は「fc +fd 」になる。すなわち、移動局において補償すべき周波数オフセットは、図22に示した従来技術と同様に、「fd 」である。
移動局が基地局装置(BTS1)の近傍を通過する際には、基地局装置(BTS1)における周波数オフセットがゼロにロックされるように、上りリンク周波数についてフィードバック制御が行われる。よって、移動局の送信周波数は、ドップラーシフトの極性変化に追従して、「fc −fd 」から「fc +fd 」にシフトしていく。
さらに、移動局が基地局装置(BTS1)から遠ざかり、基地局装置(BTS2)に近づいていくと、両基地局はソフトハンドオーバ状態となる。ハンドオーバ状態の制御は、図10および図11において異なる。
図10に示す例では、移動局は、レファレンスセルが基地局装置(BTS1)である期間は、基地局装置(BTS1)からのFCコマンドに従う。よって、移動局の送信周波数は「fc +fd 」に維持され、基地局装置(BTS1)における周波数オフセットはゼロのままとなる。ただし、この期間、基地局装置(BTS2)における周波数オフセットは「2fd 」である。このとき、基地局装置(BTS1)からの受信信号の品質は良好であるのに対し、基地局装置(BTS2)からの受信信号の品質は低くなる。従って、移動局は、この実施形態では、基地局装置(BTS1)および基地局装置(BTS2)からの信号を合成するのではなく、基地局装置(BTS1)のみからの信号を再生するようにしてもよい。
レファレンスセルが基地局装置(BTS1)から基地局装置(BTS2)に切り替わると、移動局は、基地局装置(BTS2)からのFCコマンドに従う。よって、移動局の送信周波数は、フィードバック制御の時定数に応じた速度で「fc +fd 」から「fc −fd 」にシフトしていく。この結果、基地局装置(BTS2)における周波数オフセットはゼロになるが、基地局装置(BTS1)における周波数オフセットは「2fd 」になる。
図11に示す例では、ハンドオーバ区間においては、基地局装置(BTS1)および基地局装置(BTS2)からのFCコマンドが受信品質に従って重み付け合成される。よって、移動局の送信周波数は、「fc +fd 」から「fc −fd 」へ緩やかにシフトしていくことになる。この結果、レファレンスセルが切り替わるより前に、移動局から遠ざかっていく基地局装置(BTS1)に対する周波数オフセットを早めに低下させることで、移動局に近づいてくる基地局装置(BTS2)に対する周波数オフセットを「2fd 」より小さく抑えることができる。したがって、ハンドオーバが発生する基地局間の周波数オフセット配分を最適化することができる。
なお、図10に示す制御を採用すると、移動局の周波数制御部23の負荷が軽くなる。一方、図11に示す制御を採用すると、レファレンスセルの切替え前後において上りリンク周波数のシフトが滑らかになるので、ハンドオーバ期間中の各基地局および移動局における受信品質が高くなる。
<第3の実施形態>
図12は、第3の実施形態の移動通信システムの構成を示す図である。図12に示す基地局装置120および移動局装置220は、基本的には、第2の実施形態の基地局装置110および移動局装置210と同じである。ただし、第3の実施形態の基地局装置120においては、位相誤差検出部506による検出結果をフレーム生成部12へ送る必要はない。また、第3の実施形態の移動局装置220においては、下りリンク信号をダウンコンバートするための周期波を生成するVCO609は、周波数制御部23が生成する制御電圧により制御される。
上記構成のシステムにおいて、FCコマンド生成部11は、第2の実施形態において生成されるコマンドの最上位ビットに周波数制御ON/OFFビット(例えば、0:OFF、1:ON)を追加したFCコマンドを生成する。ここで、「第2の実施形態において生成されるコマンド」は、上述した3種類のコマンドのなかの任意のもの使用することができる。また、周波数制御ON/OFFビットは、第2の実施形態における周波数制御の有効/無効判定と同様に、位相誤差検出部506により検出される周波数オフセットと閾値との比較、もしくは、基地局の設置条件に基づいて生成される。そして、フレーム生成部12は、周波数制御の有効/無効に関わらず、常時、図7に示したフォーマットAに上述のFCコマンドを挿入し、所定の電力で送信する。
移動局装置220の周波数制御部23は、FCコマンドを受信すると、図13に示すフローチャートに従ってVCO21、22に与える制御電圧を生成する。
図13において、ステップS21では、個別チャネルで通信を行っているか否かを調べる。そして、個別チャネルで通信を行っていれば、ステップS31へ進み、そうでない場合は、ステップS22へ進む。なお、移動局は、個別チャネルで通信を行っていないときは、共通チャネルを介して基地局から制御信号を受信しているものとする。
1.共通チャネルで通信中の場合(ステップS22〜S23)
共通チャネルを介して基地局から制御信号を受信している期間は、移動局は、基本的にFCコマンドを受信しない。よって、この場合、周波数制御部23は、AFC部608により生成される制御電圧をそのまま下りリンク用VCO21および上りリンク用VCO22に入力する。
2.個別チャネルで通信中の場合(ステップS31〜S37)
移動局が発呼し、個別チャネルの通信が開始された以降は、AFC制御による周波数制御機能をFCコマンドを利用した制御で代用することができるので、位相誤差検出部607およびAFC部608へのクロック供給を停止する。これにより、冗長ブロックの電力消費を削減することが可能となる。
受信したFCコマンドの最上位ビットにより周波数制御のON/OFFを識別する。周波数制御を実行する場合には、互いに異なる上りリンク周波数および下りリンク周波数が生成される。一方、周波数制御を実行しない場合には、上りリンク周波数および下りリンク周波数が互いに同じになる。
2a.周波数制御がON(ステップS33〜S36)
周波数制御を実行する場合には、FCコマンド内の周波数制御情報に従って、上りリンク用VCO22のための制御電圧を生成する。制御電圧の生成は、第2の実施形態と同じである。すなわち、移動局が基地局に近づくときは、送信周波数が「fc −fd 」となるように上りリンク用VCO22が制御される。また、移動局が基地局から遠ざかるときは、送信周波数が「fc +fd 」となるように上りリンク用VCO22が制御される。このとき、受信周波数は、基準周波数fc に対して送信周波数とは反対の極性のドップラーシフト周波数fd を付加することにより得られる。すなわち、移動局が基地局に近づくときは、受信周波数が「fc +fd 」となるように下りリンク用VCO21が制御される。また、移動局が基地局から遠ざかるときは、受信周波数が「fc −fd 」となるように下りリンク用VCO21が制御される。
上記周波数制御によれば、図10または図11に示す上りリンク周波数および下りリンク周波数が得られるので、見通し内の高速移動環境において、基地局および移動局双方の周波数オフセットがゼロになる。また、この構成によれば、AFC制御を行う必要がないので、上りリンク周波数だけでなく下りリンク周波数に対しても高速かつ広帯域な周波数制御が可能となる。さらに、特許文献1に記載のような複雑な可変制御回路は不要である。
なお、移動局の発呼に起因して基地局の周波数制御が開始されたときから、上りリンク周波数が適正値に収束するまでの期間は、下りリンクの周波数制御は行わない。よって、周波数制御部23は、周波数制御が開始された時から所定時間γが経過するまでの期間は、上りリンク用VCO22の制御電圧のみをFCコマンドに従って更新し、下りリンク用VCO21の制御電圧は更新しない。
また、ハンドオーバ時にハンドオーバ先の基地局からFCコマンドを受信する場合は、所定時間γの監視は不要であり、上述のようにして下りリンク用VCO21および上りリンク用VCO22の双方の制御電圧を更新する。
2b.周波数制御がOFF(ステップS37)
周波数制御部23は、FCコマンド内の周波数制御情報に従って、下りリンク用VCO21および上りリンク用VCO22に対して同一の制御電圧値を出力する。この場合、図21に示す従来のシステムのAFC制御と同じ動作が実現される。
<第4の実施形態>
図14は、第4の実施形態の移動通信システムの構成を示す図である。図14に示す基地局装置130および移動局装置230は、基本的には、第2の実施形態の基地局装置110および移動局装置210と同じである。ただし、第4の実施形態の移動局装置230においては、AFC部608により制御される1つのVCO609が設けられている。また、周波数制御部23からの指示に従ってベースバンド領域において送信シンボルの位相を回転させる位相回転部31を備える。
上記構成の移動局装置230において、周波数制御部23は、FCコマンドによって指示される上りリンク周波数の増減量を用いて更新された周波数を位相回転量θに変換し、この位相回転量θを位相回転部31に与える。位相回転部31は、ベースバンド領域の上りリンク信号に対して「exp(jθ)」を複素乗算する。これにより、ベースバンド領域の上りリンク信号の位相が「θ」だけ回転する。
上記位相回転により、上りリンク信号の周波数スペクトラムを「θ」に相当する周波数だけシフトさせることと等価な効果が得られる。すなわち、移動局のアンテナ素子601から出力される送信波の周波数は、図10または図11に示した動作例と同様に制御される。
このように、第4の実施形態においては、上りリンク/下りリンクのそれぞれに対して個々にVCOを設けることなく、第2の実施形態と同様の制御が実現される。
<第5の実施形態>
図15は、第5の実施形態の移動通信システムの構成を示す図である。図15に示す基地局装置140および移動局装置240は、基本的には、第2の実施形態の基地局装置110および移動局装置210と同じである。ただし、第5の実施形態の移動局装置240においては、同期検波部604の代わりに設けられている同期検波部41は、ハンドオーバ制御部606および周波数制御部23からの指示を考慮して検波動作を行う。
図16は、第5の実施形態の同期検波部の構成を示す図である。図16に示すように、同期検波部41は、伝搬路推定部42、複素乗算器43、最大比合成部44、平均区間制御部45を備える。
伝搬路推定部42は、下りリンクの直交復調データに含まれているパイロット信号を同相加算平均することによって、伝搬路推定値(伝搬路変動の推定値)を算出する。また、伝搬路推定部42は、ソフトハンドオーバ時においては、ハンドオーバに係わる複数の基地局との間の伝搬路についてそれぞれ伝搬路推定値を算出する。複素乗算器43は、1または複数の直交復調データに対して、対応する伝搬路推定値の複素共役をそれぞれ乗算する。これにより、1または複数の受信信号のそれぞれについて同期検波が行われる。そして、最大比合成部44は、複数の同期検波結果について最大比合成を実行し、最終的な同期検波データを出力する。
図17は、第5の実施形態において使用される伝搬路推定部42の実施例である。伝搬路推定部42には、各スロットの先頭に格納されているパイロット信号が所定の周期で次々と入力される。そして、伝搬路推定部42は、連続するN個のパイロット信号について加算平均を計算する。この加算平均の結果は、伝搬路推定値(伝搬路における位相変動の推定値)である。
上記動作は、従来技術に属する。これに対して、第5の実施形態における同期検波部41においては、伝搬路推定部42は、平均区間制御部45からの指示に応じて伝搬路推定を行う。
平均区間制御部45は、移動局がハンドオーバ状態であり、かつ、ハンドオーバに係わる1または複数の基地局において周波数制御が有効状態である場合には、通常時と比較して加算平均時間を短くする旨の指示を伝搬路推定部42に与える。この指示を受信した伝搬路推定部42は、加算平均を行うパイロット信号の数を少なくする。これにより、伝搬路推定の時定数が高速になり、位相補償動作の追従性が高くなる。なお、移動局がハンドオーバ状態でるか否かは、ハンドオーバ制御部606により判断される。また、周波数制御が有効であるか無効であるかは、図7に示すフォーマットA/Bを識別する情報、あるいはFCコマンド領域の受信レベルが閾値を超えているかDTXか、などにより判断される。
ハンドオーバ時には、図10または図11に示すように、移動局から遠ざかる基地局(BTS1)および移動局に近づいてくる基地局(BTS2)の双方から下りリンクデータを受信する。このとき、これらの基地局(BTS1、BTS2)から受信する1組の下りリンク信号の受信周波数は、互いに「2fd 」だけ異なっている。よって、例えば、上述した第2の実施形態に基づく周波数制御を実施した場合には、「2fd 」だけ周波数がずれた1組の下りリンク受信データを最大比合成することになるため、ハンドオーバ期間の受信品質が劣化してしまう懸念がある。
これに対して第5の実施形態によれば、高速移動環境におけるソフトハンドオーバ時には、伝搬路推定の時定数を高速にするので、周波数オフセットに起因する位相回転に追従して位相補償を行うことができる。よって、最大比合成時の品質劣化を抑えることが可能となる。
<第6の実施形態>
第6の実施形態の移動通信システムの構成は、基本的に、図15に示した第5の構成と同じである。ただし、第5および第6の実施形態において、同期検波部41の動作は互いに異なっている。
図18は、第6の実施形態の同期検波部の構成を示す図である。第6の実施形態の同期検波部の構成は、基本的には、第5の実施形態と同じである。ただし、第6の実施形態の同期検波部は、第5の実施形態の平均区間制御部45の代わりに基地局選択部46を備える。
基地局選択部46は、移動局がハンドオーバ状態であり、かつ、ハンドオーバに係わる1または複数の基地局において周波数制御が有効状態である場合には、レファレンスセルに該当する基地局のみを選択する。一方、上記条件が満たされていない期間は、基地局選択部46は、ハンドオーバに係る全ての(または、一部の)基地局を選択する。なお、リファレンスセルの検出は、ハンドオーバ制御部606により行われる。
伝搬路推定部42は、基地局選択部46により選択された基地局から受信する信号のみについて伝搬路推定および最大比合成を行う。すなわち、上述したハンドオーバ環境下では、リファレンスセルの基地局から受信する信号のみを利用して同期検波が行われる。
従来のシステムにおいては、高速移動環境下でのソフトハンドオーバ時には、互いに周波数が「2fd 」だけずれた下りリンク受信データが最大比合成される。このため、このような環境下では、最大比合成を行うことによりかえって受信品質が劣化してしまう懸念がある。これに対して第6の実施形態においては、高速移動環境におけるソフトハンドオーバ時には、最も受信品質の高いレファレンスセルの基地局からの信号のみを利用して検波を行うので、最大比合成に伴う受信品質の劣化を回避することが可能となる。
<第7の実施形態>
第7の実施形態の移動通信システムの構成は、基本的に、図15に示した第5の構成と同じである。ただし、第5および第7の実施形態において、同期検波部41の動作は互いに異なっている。
図19は、第7の実施形態の同期検波部の構成を示す図である。第7の実施形態の同期検波部41は、図16に示した平均区間制御部45および伝搬路推定部42の代わりに、周波数補償制御部52および伝搬路推定部53を備える。
周波数補償制御部52は、移動局がハンドオーバ状態であり、かつ、ハンドオーバに係わる1または複数の基地局において周波数制御が有効状態である場合には、周波数オフセット補償を実行し、上記条件が満たされない場合には、周波数オフセット補償を実行しない。
周波数オフセット補償が有効であるときは、周波数補償制御部52は、ハンドオーバに係わる各基地局からの受信波について補償すべき周波数オフセットを伝搬路推定部53に通知する。なお、「補償すべき周波数オフセット」は、各基地局から送られてくるFCコマンドに基づいて周波数制御部23において算出される。そして、伝搬路推定部53は、周波数補償制御部52から通知される周波数オフセットを補償しながら、各基地局との間の伝搬路を推定する。
図20は、第7の実施形態において使用される伝搬路推定部の実施例である。伝搬路推定部53は、図17に示した伝搬路推定部42と同様に、パイロット信号の同相加算平均を算出する。但し、伝搬路推定部53においては、周波数オフセットを補償するために、加算平均回路への入力信号に対して「exp(−jnθ)」が乗算され、加算平均回路からの出力信号に対して「exp(jmθ)」が乗算される。ここで、「θ」は、1シンボル当りの位相回転であり、「n」は、着目スロットの先頭シンボルをゼロとする被加算パイロット信号のシンボル位置(nは、着目スロットの先頭から未来方向が正の値となる整数)であり、「m」は、着目スロット内における被検波信号のシンボル位置(m=0〜M−1:Mは、1スロット内のシンボル数)である。
このように、第7の実施形態では、周波数オフセットを補償しながら伝搬路推定を行うので、同相加算による推定精度が高くなる。また、算出した伝搬路推定値に対して周波数オフセット分の位相回転を付加した結果を利用して同期検波を行うので、伝搬路における位相変動と周波数オフセットに起因する位相変動を同時に補償することができる。
また、第7の実施形態においては、高速移動環境におけるソフトハンドオーバ時には、各基地局において残存する周波数オフセットを補償しながら同期検波が行われるので、最大比合成時の受信品質劣化を完全に回避することが可能となる。
このように、第5〜第7の実施形態においては、ハンドオーバに際して移動局において同期検波方式を変更するので、複数の基地局からの受信波についてのドップラーシフトの極性が異なっていても、好適な復調処理を行うことができる。したがって、ハンドオーバ時の受信品質を改善することが可能となる。
なお、第5〜第7の実施形態は、いずれも高速移動環境におけるソフトハンドオーバ時の受信品質劣化を改善する。受信品質の改善効果は、第7の実施形態が最も高く、次いで第5の実施形態、第6の実施形態の順番となる。しかし、受信品質の改善効果が高い実施形態ほど、同期検波部の処理が複雑化する。従って、いずれの実施形態を導入するかは、要求される受信品質のレベルおよび実装上のインパクト(コスト等)に基づいて決定されるべきである。
(付記1)
移動局との間で無線波を送受信する基地局装置であって、
前記移動局からの受信波の周波数オフセットを検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された周波数オフセットに基づいて、前記移動局への無線リンクにおいて発生するドップラーシフトをキャンセルするように、その移動局へ信号を送信するための搬送波の送信周波数を制御する周波数制御手段、
を有する基地局装置。
(付記2)
前記周波数制御手段は、前記移動局からの受信信号をダウンコンバートするための周期波の周波数制御とは独立して、前記送信周波数を制御する
ことを特徴とする付記1に記載の基地局装置。
(付記3)
前記周波数制御手段は、前記検出手段により検出された周波数オフセットに対応する位相回転をベースバンド領域において前記移動局への送信シンボルに与えることにより、前記送信周波数を制御する
ことを特徴とする付記1に記載の基地局装置。
(付記4)
前記検出手段は、複数の移動局からの受信波の周波数オフセットをそれぞれ検出し、
前記周波数制御手段は、検出された各周波数オフセットに応じて移動局ごとに送信周波数を制御する
ことを特徴とする付記3に記載の基地局装置。
(付記5)
基地局との間で無線波を送受信する移動局装置であって、
前記基地局における受信波の周波数オフセットに基づいて作成される周波数制御情報を受信する受信手段と、
前記周波数制御情報に基づいて、前記基地局における受信波の周波数オフセットをキャンセルするように、前記基地局へ信号を送信するための搬送波の送信周波数を制御する周波数制御手段、
を有する移動局装置。
(付記6)
前記周波数制御手段は、前記基地局からの受信信号をダウンコンバートするための周期波の周波数制御とは独立して、前記送信周波数を制御する
ことを特徴とする付記5に記載の移動局装置。
(付記7)
前記搬送波を生成するために使用される電圧制御発振器をさらに備え、
前記周波数制御手段は、前記周波数制御情報に基づいて前記電圧制御発振器の入力電圧を制御することにより、前記送信周波数を制御する
ことを特徴とする付記5に記載の移動局装置。
(付記8)
前記周波数制御手段は、前記周波数制御情報により指示される位相回転をベースバンド領域において前記基地局への送信シンボルに与えることにより、前記送信周波数を制御する
ことを特徴とする付記5に記載の移動局装置。
(付記9)
互いに無線波を送受信する第1の無線通信装置および第2の無線通信装置を備える移動通信システムであって、
前記第1の無線通信装置に設けられ、前記第2の無線通信装置からの受信波の周波数オフセットを検出する検出手段と、
前記第1の無線通信装置に設けられ、前記検出手段により検出された周波数オフセットに基づいて、前記第2の無線通信装置への無線リンクにおいて発生するドップラーシフトをキャンセルするように、その第2の無線通信装置へ信号を送信するための搬送波の送信周波数を制御する周波数制御手段、
を有する移動通信システム。
(付記10)
互いに無線波を送受信する第1の無線通信装置および第2の無線通信装置を備える移動通信システムであって、
前記第1の無線通信装置に設けられ、前記第2の無線通信装置からの受信波の周波数オフセットを検出する検出手段と、
前記第1の無線通信装置に設けられ、前記検出手段により検出された周波数オフセットをキャンセルするための指示を含む周波数制御情報を作成する作成手段と、
前記第2の無線通信装置に設けられ、前記周波数制御情報に基づいて前記第1の無線通信装置へ信号を送信するための搬送波の送信周波数を制御する周波数制御手段、
を有する移動通信システム。
(付記11)
前記周波数制御手段は、基準周波数に対してドップラーシフト周波数を加算することにより前記送信周波数または前記第1の無線通信装置からの受信信号をダウンコンバートするための周期波の周波数である受信周波数の一方を生成し、前記基準周波数から前記ドップラーシフト周波数を減算することにより前記送信周波数または前記受信周波数の他方を生成する
ことを特徴とする付記10に記載の移動通信システム。
(付記12)
前記周波数制御情報は、前記送信周波数を上げるか下げるかを指示する2値の情報である
ことを特徴とする付記10に記載の移動通信システム。
(付記13)
前記周波数制御情報は、前記送信周波数を上げるか下げるかを指示する2値の情報、および更新ステップを指示する情報を含む
ことを特徴とする付記10に記載の移動通信システム。
(付記14)
前記周波数制御情報は、前記検出手段により検出された周波数オフセットを所定のビット数で表す情報である
ことを特徴とする付記10に記載の移動通信システム。
(付記15)
前記周波数制御手段は、前記検出手段により検出された周波数オフセットが所定時間以上継続してオフセット閾値を超えた場合にのみ、前記搬送波の送信周波数を制御する
ことを特徴とする付記9〜14のいずれか1つの付記に記載の移動通信システム。
(付記16)
前記第1の無線通信装置がドップラーシフトの発生が予測される地域に配置された基地局であり、前記第2の無線通信装置が移動局である場合には、前記周波数制御情報を多重化する領域を持ったスロットが使用され、
前記第1の無線通信装置がドップラーシフトの発生が予測されない地域に配置された基地局であり、前記第2の無線通信装置が移動局である場合には、前記周波数制御情報を多重化する領域を持たないスロットが使用される
ことを特徴とする付記10〜14のいずれか1つの付記に記載の移動通信システム。
(付記17)
前記検出手段により検出された周波数オフセットが所定時間以上継続してオフセット閾値を超えたときは、前記周波数制御情報を多重化する領域を持ったスロットが使用され、
前記条件が満たされない期間は、前記周波数制御情報を多重化する領域を持たないスロットが使用される
ことを特徴とする付記10〜14のいずれか1つの付記に記載の移動通信システム。
(付記18)
前記検出手段により検出された周波数オフセットが所定時間以上継続してオフセット閾値を超えたときは、スロット内の予め決められた領域を利用して前記周波数制御情報が送信され、
前記条件が満たされない期間は、前記領域が無信号状態に設定される
ことを特徴とする付記10〜14のいずれか1つの付記に記載の移動通信システム。
(付記19)
移動局および複数の基地局を備える移動通信システムであって、
各基地局にそれぞれ設けられ、前記移動局からの受信波の周波数オフセットに基づいて周波数制御情報を作成する作成手段と、
前記移動局に設けられ、1または複数の基地局において作成された前記周波数制御情報に基づいて、基地局へ信号を送信するための搬送波の送信周波数を制御する周波数制御手段、
を有する移動通信システム。
(付記20)
前記移動局がハンドオーバ状態であるときは、前記周波数制御手段は、受信品質が最も良好な基地局からの周波数制御情報に基づいて前記送信周波数を制御する
ことを特徴とする付記19に記載の移動通信システム。
(付記21)
前記移動局がハンドオーバ状態であるときは、前記周波数制御手段は、各基地局からの信号の受信品質に応じてそれらの基地局からの周波数制御情報を重み付け合成した結果に基づいて前記送信周波数を制御する
ことを特徴とする付記19に記載の移動通信システム。
(付記22)
前記移動局は、ハンドオーバ状態であり、且つ、1以上の基地局からの周波数制御情報を利用して送信周波数を制御するときは、受信信号の復調に際して実行される伝搬路推定の時定数を高速にする
ことを特徴とする付記19に記載の移動通信システム。
(付記23)
前記移動局は、ハンドオーバ状態であり、且つ、1以上の基地局からの周波数制御情報を利用して送信周波数を制御するときは、受信品質が最も良好な基地局からの受信信号のみを復調する
ことを特徴とする付記19に記載の移動通信システム。
(付記24)
前記移動局は、ハンドオーバ状態であり、且つ、1以上の基地局からの周波数制御情報を利用して送信周波数を制御するときは、基地局ごとに、前記周波数制御情報に従って周波数オフセットを補償しながら伝搬路推定を行う
ことを特徴とする付記19に記載の移動通信システム。
第1の実施形態の移動通信システムの構成を示す図である。 位相誤差検出部の一例を示す図である。 位相回転部の動作を説明する図である。 第1の実施形態の移動通信システムにおける周波数制御を説明する図である。 位相回転部の動作を説明するフローチャートである。 第2の実施形態の移動通信システムの構成を示す図である。 周波数制御コマンドを送信するスロットのフォーマットを示す図である。 フレーム生成部の動作を説明するフローチャートである。 周波数制御のシーケンスを説明する図である。 第2の実施形態の移動通信システムにおける周波数制御を説明する図(その1)である。 第2の実施形態の移動通信システムにおける周波数制御を説明する図(その2)である。 第3の実施形態の移動通信システムの構成を示す図である。 第3の実施形態の周波数制御部の動作を示すフローチャートである。 第4の実施形態の移動通信システムの構成を示す図である。 第5〜第7の実施形態の移動通信システムの構成を示す図である。 第5の実施形態の同期検波部の構成を示す図である。 第5の実施形態において使用される伝搬路推定部の実施例である。 第6の実施形態の同期検波部の構成を示す図である。 第7の実施形態の同期検波部の構成を示す図である。 第7の実施形態において使用される伝搬路推定部の実施例である。 従来の移動通信システムの構成を示す図である。 従来の移動通信システムにおける周波数制御を示す図である。 ドップラーシフトの変動を示す図
符号の説明
1 位相回転部
11 FCコマンド生成部
12 フレーム生成部
21 下りリンク用VCO
22 上りリンク用VCO
23 周波数制御部
31 位相回転部
41 同期検波部
42、53 伝搬路推定部
45 平均区間制御部
46 基地局選択部
52 周波数補償制御部
506 位相誤差検出部
507 同期検波部
606 ハンドオーバ制御部
607 位相誤差検出部
608 AFC部

Claims (10)

  1. 移動局との間で無線波を送受信する基地局装置であって、
    前記移動局からの受信波の周波数オフセットを検出する検出手段と、
    前記検出手段により検出された周波数オフセットに基づいて、前記移動局への無線リンクにおいて発生するドップラーシフトをキャンセルするように、その移動局へ信号を送信するための搬送波の送信周波数を制御する周波数制御手段、
    を有する基地局装置。
  2. 前記周波数制御手段は、前記検出手段により検出された周波数オフセットに対応する位相回転をベースバンド領域において前記移動局への送信シンボルに与えることにより、前記送信周波数を制御する
    ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
  3. 基地局との間で無線波を送受信する移動局装置であって、
    前記基地局における受信波の周波数オフセットに基づいて作成される周波数制御情報を受信する受信手段と、
    前記周波数制御情報に基づいて、前記基地局における受信波の周波数オフセットをキャンセルするように、前記基地局へ信号を送信するための搬送波の送信周波数を制御する周波数制御手段、
    を有する移動局装置。
  4. 前記搬送波を生成するために使用される電圧制御発振器をさらに備え、
    前記周波数制御手段は、前記周波数制御情報に基づいて前記電圧制御発振器の入力電圧を制御することにより、前記送信周波数を制御する
    ことを特徴とする請求項3に記載の移動局装置。
  5. 前記周波数制御手段は、前記周波数制御情報により指示される位相回転をベースバンド領域において前記基地局への送信シンボルに与えることにより、前記送信周波数を制御する
    ことを特徴とする請求項3に記載の移動局装置。
  6. 互いに無線波を送受信する第1の無線通信装置および第2の無線通信装置を備える移動通信システムであって、
    前記第1の無線通信装置に設けられ、前記第2の無線通信装置からの受信波の周波数オフセットを検出する検出手段と、
    前記第1の無線通信装置に設けられ、前記検出手段により検出された周波数オフセットに基づいて、前記第2の無線通信装置への無線リンクにおいて発生するドップラーシフトをキャンセルするように、その第2の無線通信装置へ信号を送信するための搬送波の送信周波数を制御する周波数制御手段、
    を有する移動通信システム。
  7. 互いに無線波を送受信する第1の無線通信装置および第2の無線通信装置を備える移動通信システムであって、
    前記第1の無線通信装置に設けられ、前記第2の無線通信装置からの受信波の周波数オフセットを検出する検出手段と、
    前記第1の無線通信装置に設けられ、前記検出手段により検出された周波数オフセットをキャンセルするための指示を含む周波数制御情報を作成する作成手段と、
    前記第2の無線通信装置に設けられ、前記周波数制御情報に基づいて前記第1の無線通信装置へ信号を送信するための搬送波の送信周波数を制御する周波数制御手段、
    を有する移動通信システム。
  8. 前記周波数制御手段は、基準周波数に対してドップラーシフト周波数を加算することにより前記送信周波数または前記第1の無線通信装置からの受信信号をダウンコンバートするための周期波の周波数である受信周波数の一方を生成し、前記基準周波数から前記ドップラーシフト周波数を減算することにより前記送信周波数または前記受信周波数の他方を生成する
    ことを特徴とする請求項7に記載の移動通信システム。
  9. 移動局および複数の基地局を備える移動通信システムであって、
    各基地局にそれぞれ設けられ、前記移動局からの受信波の周波数オフセットに基づいて周波数制御情報を作成する作成手段と、
    前記移動局に設けられ、1または複数の基地局において作成された前記周波数制御情報に基づいて、基地局へ信号を送信するための搬送波の送信周波数を制御する周波数制御手段、
    を有する移動通信システム。
  10. 前記移動局がハンドオーバ状態であるときは、前記周波数制御手段は、各基地局からの信号の受信品質に応じてそれらの基地局からの周波数制御情報を重み付け合成した結果に基づいて前記送信周波数を制御する
    ことを特徴とする請求項9に記載の移動通信システム。
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