JP2006226874A - 磁気エンコーダ及びトーンホイール - Google Patents

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Abstract

【課題】狭いスペース内でも、回転検出及び原点検出の両機能を発現し得ると共にコストの高騰を来たさない新規な磁気エンコーダ及びこれに用いるトーンホイールを提供する。
【解決手段】磁性体製円環状トーンホイール10と、該トーンホイールの回転に伴う磁気変化を検出する検出手段11とよりなる磁気エンコーダであって、上記トーンホイール10が、複数のN極及びS極が周方向に沿って交互に繰り返し着磁された第1領域10aと、該第1領域10aと同心的で周方向の一部に欠如部分10cを有する第2領域10bとを備え、前記検出手段11が、上記第1領域10aに対向配置され、トーンホイール10の回転に伴うN極及びS極の磁気変化による回転パルス信号を検出する第1検出部材12と、上記第2領域10bに対向配置され、トーンホイール10の回転に伴う上記欠如部分及び非欠如部分の磁気変化による原点信号を検出する第2検出部材13とよりなることを特徴とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、自動車の車輪懸架装置や、ステアリング部等における回転部の回転速度、回転角、回転方向や原点検出を行うことができる磁気エンコーダ及びこれに用いられるトーンホイールに関する。
自動車用車輪やステアリング部には、その回転速度、回転角更には回転方向を検出(以下、回転検出と言う)する為の磁気エンコーダが装備されることがある。そして、これらの検出値をより確度の高いものとする為、同時に原点検出も行われるようになされている。前者の回転検出は、円周方向に沿ってS極、N極を交互に着磁形成したト−ンホイールを回転側部材に固着し、ト−ンホイールの回転に伴うS極、N極の磁気変化による回転パルスを固定側部材に固定された磁気センサによって検出するよう構成された磁気エンコーダによってなされる。また、後者の原点検出は、トーンホイールの円周方向に1箇所、他の部位とは磁気特性が異なる部位を設け、トーンホイールの1回転毎に1回発せられる信号を原点信号として検出するよう構成された磁気エンコーダによってなされる。
特許文献1及び特許文献2には、上記のような原点検出機能をも備えた磁気エンコーダが開示されている。特許文献1の磁気エンコーダは、互いに同心リング状で且つ互いに繋がっている第1、第2の被検出部を備え、第1の被検出部は周方向に沿ってS極、N極が交互に着磁形成されており、また第2の被検出部は第1の被検出部と厚さが同一でかつ磁極を有する厚肉部分とされ、他の部分がこの厚肉部分よりも薄い薄肉部分とされている。特許文献2には、トーンホイールを、磁性金属板を断面L字形に折り曲げてなる円筒状の嵌合部と、外向フランジ状の立上がり部とより構成し、立上がり部には周方向に多数の切欠を形成して第1検出部とし、嵌合部には周方向1箇所に切欠を形成して第2検出部とし、両検出部には永久磁石と磁気センサとが組合わさったセンサ組立体が対峙するよう設置された磁気エンコーダも開示されている。
特開2004−101312号公報 特開平11−194009号公報
ところで、上記自動車の車輪軸受部やステアリングシャフトの軸受部はスペース的に制約があるため、トーンホイールは、回転側部材に嵌合固着される円筒部と、これに連なる鍔部とにより構成されることが多い。然るに、上記特許文献1のように、第1、第2の被検出部が互いに繋がっており、しかも、第1の被検出部の周方向全域と第2の被検出部の一部が着磁されたものにおいて、円筒部と鍔部の一方を第1の被検出部とし、他方を第2の被検出部とする場合、互いに90度の関係をなす部位に着磁することになる。このような角度の異なる部位に着磁する場合、夫々個別に着磁する必要がある為、着磁の為の工数が増えると共に、着磁装置が大掛かりとなる。また、特許文献2に開示された上記磁気エンコーダの場合、永久磁石と磁気センサとが組合わさったセンサ組立体は、磁界形成方向が異なるものを2種類準備する必要があり、コスト高になると共に狭いスペース内にこれらを装備することは設計上の難しさを伴うことにもなる。
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、狭いスペース内でも、回転検出及び原点検出の両機能を発現し得ると共にコストの高騰を来たさない新規な磁気エンコーダ及びこれに用いるトーンホイールを提供することを目的としている。
請求項1の発明に係る磁気エンコーダは、軸心周りに回転する回転側部材に同心的に固着された磁性体製円環状トーンホイールと、該トーンホイールに対向するよう固定側部材に固定され、該トーンホイールの回転に伴う磁気変化を検出する検出手段とよりなる磁気エンコーダであって、上記トーンホイールが、複数のN極及びS極が周方向に沿って交互に繰り返し着磁された第1領域と、該第1領域と同心的で周方向の一部に欠如部分を有する第2領域とを備え、前記検出手段が、上記第1領域に対向配置され、トーンホイールの回転に伴うN極及びS極の磁気変化による回転パルス信号を検出する第1検出部材と、上記第2領域に対向配置され、トーンホイールの回転に伴う上記欠如部分及び非欠如部分の磁気変化による原点信号を検出する第2検出部材とよりなることを特徴とする。
請求項2の発明に係る磁気エンコーダは、前記第1検出部材が、磁気センサからなり、トーンホイールの回転に伴う前記第1領域のN極及びS極の交互の磁気変化を回転パルス信号として、当該磁気センサをして検出するものであり、一方、前記第2検出部材が、磁気センサと永久磁石とよりなり、トーンホイールの回転に伴う前記第2領域の欠如部分及び非欠如部分に基づく上記永久磁石が発する磁界の変化を原点信号として、当該磁気センサをして検出するものであることを特徴とする。
そして、請求項3の発明のように、前記第1検出部材が、第1領域の周方向に沿って、前記回転パルス信号の位相が互いにずれた位置になるよう配置された2個の磁気センサからなるものとすることができる。更に、前記トーンホイールは、請求項4の発明のように、芯金と、該芯金に貼着一体とされた磁性ゴム層または磁性プラスチック層とよりなるものとすることができる。また、このトーンホイールは、前記回転側部材に嵌合固着される円筒部と、該円筒部に連成された鍔部とよりなり、該円筒部及び鍔部の内の一方が前記第1領域、他方が前記第2領域とされているものとすることもできる。
請求項6の発明に係るトーンホイールは、軸心周りに回転する回転側部材に同心的に固着されて、固定側部材に固定された磁気変化検出手段とにより磁気エンコーダを構成するトーンホイールであって、複数のN極及びS極が周方向に沿って交互に繰り返し着磁された第1領域と、該第1領域と同心的で周方向の一部に欠如部分を有する第2領域とを備え、回転側部材に固着された状態では、第1領域が、前記検出手段を構成するパルス信号検出用の第1検出部材に対向するよう配置され、上記第2領域が、前記検出手段を構成する原点信号検出用の第2検出部材に対向するよう配置されるものであることを特徴とする。
そして、本発明のトーンホイールは、請求項7の発明のように、芯金と、該芯金に貼着一体とされた磁性ゴム層とよりなるものであってもよく、また、請求項8の発明のように、前記回転側部材に嵌合固着される円筒部と、該円筒部に連成された鍔部とよりなり、該円筒部及び鍔部の内の一方が前記第1領域、他方が前記第2領域とされているものとすることもできる。
請求項1の発明に係る磁気エンコーダによれば、複数のN極及びS極が周方向に沿って交互に繰り返し着磁された第1領域の磁気変化が検出手段により検出され、回転パルス信号が出力されることにより、トーンホイールの回転速度(回転数)及び回転角度が検出される。また、第1領域と同心的で周方向の一部に欠如部分を有する第2領域の磁気変化が検出手段により検出され、原点パルス信号として出力される結果、この原点検出情報により回転速度や回転角度検出情報をより確度の高いものとすることができる。そして、請求項1或いは請求項6の発明に係る磁気エンコーダ或いはトーンホイールによれば、上記トーンホイールが、複数のN極及びS極が周方向に沿って交互に繰り返し着磁された第1領域と、該第1領域と同心的で周方向の一部に欠如部分を有する第2領域とを備えたものであるから、少なくとも第1領域のみを着磁すればよく、着磁に要する工数を増やすことなく、原点検出機能を備えた磁気エンコーダを構成することができる。特に、スペース等の制約から、トーンホイールが、回転側部材に嵌合固着される円筒部と、該円筒部に連成された鍔部とよりなるものの場合、請求項5或いは請求項8の発明のように、該円筒部及び鍔部の内の一方が前記第1領域、他方が前記第2領域とすることにより、極めてコンパクト且つ簡易に原点検出機能を備えた磁気エンコーダを構成することができる。
また、請求項2の発明のように、第1検出部材を、回転パルス信号を検出する磁気センサで構成し、第2検出部材を、磁気センサと永久磁石とより構成し、当該磁気センサが第2領域の欠如部分及び非欠如部分に基づく上記永久磁石が発する磁界の変化を原点信号として検出するものとすれば、磁気センサと永久磁石とのセンサ組立体が1個で済み、コストの高騰を来たすことなく、また狭いスペース内でもこれらを組み付けることができる。更に、請求項3の発明のように、前記第1検出部材が、第1領域の周方向に沿って、前記回転パルス信号の位相が互いにずれた位置になるよう配置された2個の磁気センサからなるものとすれば、この位相差に基づくパルス信号の時間的ずれによってその回転方向をも検出判定することができる。加えて、前記トーンホイールを、請求項4或いは請求項7の発明のように、芯金と、該芯金に貼着一体とされた磁性ゴム層とよりなるものとすれば、金属板とゴム材との一体化が容易である上に、磁性ゴムはゴム材に磁性粉末を混練するだけで得られるから、トーンホイールを簡易且つ低コストで調製することができる。
以下に本発明の最良の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は本発明の1実施例の磁気エンコーダが組み込まれた軸受ユニットの例を示す断面図、図2は図1におけるX部の拡大図、図3は同磁気エンコーダの斜視図、図4は同磁気エンコーダの正面図、図5は同磁気エンコーダにおける検出手段による波形図であり、(a)は同第1検出部材の一方による波形図、(b)は同他方による波形図、(c)は第2検出部材による波形図である。図6乃至図10は、夫々第2実施例乃至第6実施例の図2と同様図であり、図11は図10における部分切欠右側面図である。図12(a)は、第7実施例の図2と同様図であり、図12(b)(c)はその変形例を示す。
図1は、自動車の車輪をシャフト1に対して転がり軸受ユニット2により支持する構造の一例を示すものであり、内輪(回転側部材)3を構成するハブ輪3aにボルト3bによりタイヤホイール(不図示)が固定される。また、3cはハブ輪3aに形成されたスプライン孔であり、このスプライン孔3cには駆動シャフト1がスプライン嵌合され且つハブ輪3aに一体固定されて、該駆動シャフト1の回転駆動力がハブ輪3aを介してタイヤホイールに駆動伝達される。3dは内輪部材であり、上記ハブ輪3aと共に内輪3が構成される。
4は外輪(固定側部材)であり、車体の懸架装置(不図示)に取付固定される。この外輪4と上記内輪3(ハブ3a及び内輪部材3d)との間に2列の転動体(玉)5…がリテーナ5aで保持された状態で介装されている。6、7は上記転動体5…の転動部に装填される潤滑剤(グリス等)の漏出を防止し、或いは外部からの泥水等の浸入を防止するためのシール部材であり、外輪4と内輪3との間に圧入される。
図2は、図1のX部の拡大図を示し、車体側のシール部材6は、外輪4の内周に圧入嵌合されるリング状の芯金6aと、該芯金6aに固着され、ゴム等の弾性材からなるシールリップ6bと、内輪部材3dの外周に外嵌固着されるスリンガ(芯金)8とにより、図のように組合せ構成されている。スリンガ8は、内輪部材3dの外周に外嵌される円筒部8aと、この円筒部8aの一端に連成された外向鍔部8bとよりなり、上記シールリップ6bは、該外向鍔部8bの反車体側面と、上記駆動シャフト1の外周面とに弾性摺接するよう介在される。スリンガ8の車体側面には、ゴム材にフェライト等の磁性粉末を混練してなる磁性ゴム層9が断面L形に成形貼着一体とされ且つ後記するように着磁され、スリンガ8とこの磁性ゴム層9とによりトーンホイール10が構成される。トーンホイール10は、後記する第1領域10aと、第2領域10bとを備え、これら両領域10a、10bには、車体(不図示)或いは外輪4に固定された検出手段11を構成する第1検出部材12と、第2検出部材13とが夫々対向配置されている。
本実施例のトーンホイール10では、スリンガ8の外向鍔部8bに対応する磁性ゴム層9の外向鍔部分が第1領域10aとされ、また、同円筒部8aに対応する磁性ゴム層9の円筒部分が第2領域10bとされている。第1領域10aは、着磁領域とされ、その鍔面の周方向全周に亘って多数のN極、S極が交互且つ等間隔で着磁形成されている(図3、図4参照)。一方、第2領域10bは、非着磁領域とされ、その磁性ゴム層9の周面における周方向1箇所に凹部(欠如部分)10cが形成されている。
上記芯金6a或いはスリンガ8は、SPCC等の冷間圧延鋼板を、図例のような形状に板金加工して形成されたものである。また、シールリップ6b或いは磁性ゴム層9は、NBR、H−NBR、ACM、AEM、FKM等から選ばれたいずれかのゴム材を、上記芯金6a或いはスリンガ8に接着剤を介し或いは加硫成形により貼着一体とされ、特に、後者のゴム材としては、上記したように、更に、フェライト系、希土類系等の磁性粉末が事前に混練されたものが用いられる。
次に、図3及び図4において、第1領域10a及び第2領域10bと第1検出部材12及び第2検出部材13との配置関係について説明する。第1検出部材12は、2個の磁気センサ12a、12bからなり、両磁気センサ12a、12bは、上記第1領域10aにおけるN極、S極の着磁パターン面に対し、N極及びS極を1サイクルとした場合に90度に相当する位相分ずれた状態で対向配置されている。また、第2検出部材13は、第2領域10bに対向するよう配置された磁気センサ13aと、その背後に一体とされた永久磁石13bとが組合わさってなり、この永久磁石13bのN極、S極の配列方向は第2領域10bの被検出面に垂直な方向とされる。尚、上記位相のずれは90度に限らず、回転方向の検出が可能な他の位相差で以って両磁気センサ12a、12bを配置し得ることは言うまでもない。
上記第1検出部材12を構成する磁気センサ12aとしては、ホール効果(磁気による抵抗変化)により出力するホールセンサや、MR素子(半導体)がN極、S極を感じると方形波を出力することを利用したMRセンサが採用される。また、第2検出部材13を構成する磁気センサ13aは、鉄心に導線を巻きつけて、永久磁石13bが発する磁界の被検出部(トーンホイール)の凹凸による変化で出力値が変化する現象を利用したものである。この凹凸による変化に代え、被検出部のN極、S極による変化で出力値が変化する現象を利用するものとすることができ、この場合は、このセンサ組立体を第1検出部材12に適用させることも可能である。更に、上記ホールセンサと永久磁石とを組合わせて、第2検出部材13とすることも可能である。
上記のように構成された磁気エンコーダにおいて、駆動シャフト1の軸回転に伴い、ト−ンホイール10が駆動シャフト1の軸心回りに回転すると、第1検出部材12を構成する2個の磁気センサ12a、12bは、第1領域10aにおけるN極、S極による規則的な磁気変化を検出し、図5(a)(b)の波形図に示すような回転パルス信号を出力する。従って、このいずれかの単位時間当たりのパルス数を計測することにより、回転数即ち回転速度を算出することができる。また、起動から停止までのパルス数を計測することによりその回転角の算出も行うことができる。この回転角の算出は、ステアリング部の制御情報としても有効である。更に、磁気センサ12a、12bは、上記のように互いに90度の位相差を以って配置されているから、その出力パルスは、トーンホイール10が1方向に回転すると90度のずれを生じ、反方向に回転すると270度のずれを生じることになる。従って、両磁気センサ12a、12bの出力パルスのずれ角度を検出することにより回転方向の判定も行うことができる。
第2検出部材13は、上記のように磁気センサ13aと永久磁石13bとが組合わさったものであるので、永久磁石13bが発する磁界は、これに近接するトーンホール10における第2領域10bの影響を受ける。第2領域10bの磁性ゴム層9及びその背後のスリンガ8は磁性体であり、しかも、その周方向1箇所に凹部(欠如部分)10cが形成されているから、トーンホール10の回転に伴い、磁気センサ13aが対向する第2領域10bにおける凹部(欠如部分)10c及びそれ以外の部分(非欠如部分)において上記磁界が大きく変化する。磁気センサ13aはこの磁気変化を検出して、図5(c)の波形図に示すような原点パルス信号を出力する。この原点パルス信号は、トーンホイール10の1回転に1回発現されるから、これ自体の発現回数を計数することにより、トーンホイール10の回転数(回転速度)の算出も可能であるが、この原点パルス信号を基点として、上記磁気センサ12a、12bによる出力パルス信号を計数することにより、より確度の高い回転数(回転速度)、更には回転角の算出を行うことができる。
上記のような2種の領域10a、10b及び検出手段11の組合せにより、トーンホイール10がスリンガ8の形状に基づいて円筒部と外向鍔部からなる断面L形の形状であっても、一方の領域10aのみにN極、S極の着磁をすればよく、着磁に要する手間が少なく、また大掛かりな着磁装置を不要とし、簡単に原点検出機能を備えた磁気エンコーダを構成することができる。しかも、トーンホイール10が、スリンガ(芯金)8と磁性ゴム層9との貼着一体物で構成されるから、加硫成形等により凹部10cの加工も含めて効率的にこれを製することができ、製造コストの低廉化に大きく寄与する。また、凹部10cの形成は、加硫成形後にレーザー加工等により行うこともでき、このようなレーザー加工等によれば、所望箇所に所望形状の凹部10cを任意に形成することができ、しかも、複雑な形状の金型も不要とされる。
図6は、本発明の磁気エンコーダ及びトーンホイールの第2実施例を示すものであり、上記第1実施例とはトーンホイール10は同形状であるが、第1領域10a及び第2領域10bの形成位置が異なる。即ち、本実施例では、トーンホイール10の円筒状部分が第1領域10a、外向鍔状部分が第2領域10bとされている。従って、図には示さないが、第1領域10aの周方向に沿って、N極及びS極が全周に亘って交互且つ等間隔で着磁されており、この第1領域10aに上記と同様の第1検出部材12が対向配置されている。この第1検出部材12も、上記と同様の位相関係にある2個の磁気センサ12a、12bから構成される。また、第2領域10bは、非着磁領域とされ、その磁性ゴム層9の鍔面における周方向1箇所に凹部(欠如部分)10cが形成されている。そして、この第2領域10bには、上記同様、この第2領域10bに対向する磁気センサ13aと、その背後に一体とされた永久磁石13bとが組合わさってなる第2検出部材13が対向配置されている。この永久磁石13bのN極、S極の配列方向は第2領域10bの被検出面(鍔面)に垂直な方向とされる。
本実施例は、トーンホイール10における第1領域10a及び第2領域10bの形成態様及びこれに関連する第1検出部材12及び第2検出部材13の配置関係が異なるだけで、図5に示すようなパルス信号の出力機能等、その奏する作用は上記と同様である。従って、上記と同様の優れた効果が得られ、また、その他の構成も上記第1の実施例と同様であるので、ここでは共通部分に同一の符号を付し、その説明は割愛する。
図7は、本発明の磁気エンコーダ及びトーンホイールの第3実施例を示すものであり、上記第2実施例とは、欠如部分の形成態様が異なる。即ち、本実施例では、トーンホイール10の外向鍔部分である第2領域10bの周方向1箇所が、スリンガ8及び磁性ゴム層9が共に切欠かれ、この切欠部分が欠如部分10dとされている。スリンガ8に先端部が弾性摺接するシールリップ6bは、この切欠部分10dに嵌り込まないように図のような形状とされている。第2領域10bをこのように構成すると、切欠部分10dとそれ以外の部分(非切欠部分)とでは、上記磁界による磁気変化が大きく、従って、トーンホイール10の回転に伴うこの磁気変化の検出がより的確になされ、原点パルス信号の出力精度が向上する。その他の構成・効果は上記と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその説明を割愛する。
尚、本実施例において、磁性ゴム層9をスリンガ8の外向鍔部8bにまで及ぼさず、第2領域10bをスリンガ8の外向鍔部8bのみで構成することも可能である。このように構成しても、スリンガ8は磁性体製であるから、これに対向配置される上記と同様の第2検出部材13によって、切欠部分10dとそれ以外の部分(非切欠部分)との磁気変化が検出され得ることは上記と同様である。
図8は、本発明の磁気エンコーダ及びトーンホイールの第4実施例を示すものであり、上記第1〜第3実施例とは、トーンホイール10を構成するスリンガ8の内輪部材3dに対する嵌合方向、これに貼着一体とされる磁性ゴム層9の形状、第1領域10a及び第2領域10bの形成態様が異なる。即ち、本実施例では、スリンガ8が、その円筒部8aの反外向鍔部8b側端部より内輪部材3dに嵌合されている。従って、磁性ゴム層9はスリンガ8の外向鍔部8bの車体側鍔面にのみ貼着一体とされており、第1領域10a及び第2領域10bはこのフラットな磁性ゴム層9の面域に同心リング状に形成されている。図例では、第1領域10aが内側、第2領域10bが外側とされているが、この逆であっても良い。そして、第1領域10aは、上記同様着磁領域とされ、その鍔面の周方向全周に亘って多数のN極、S極が交互且つ等間隔で着磁形成されている。一方、第1領域10aの外側の第2領域10bは、非着磁領域とされ、その鍔面の周方向1箇所に凹部(欠如部分)10cが形成されている。
内輪3と外輪4との間のスペースに余裕があればこのような構成が可能であり、トーンホイール10自体の加工性も良く望ましく採用される。尚、シールリップ6bは、その一部がスリンガ8の円筒部8aにも弾性摺接するような形状とされる。その他の構成及び効果は上記各実施例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその説明を割愛する。
図9は、本発明の磁気エンコーダ及びトーンホイールの第5実施例を示すものであり、外輪4が回転側部材、内輪3が固定側部材である場合に適用した例を示すものである。即ち、芯金6aが内輪3に外嵌され、トーンホイール10を構成するスリンガ8が外輪4の内筒部に内嵌される。従って、これら芯金6a及びスリンガ8の鍔部形成方向が、上記第1実施例とは逆向き(内向きが外向き、外向きが内向き)の関係となり、スリンガ8に貼着一体とされる磁性ゴム層9の形状もこれと同様の関係となる。これに伴い、トーンホイール10における第1領域10a及び第2領域10bの形成部位、第1検出部材12及び第2検出部材13の配向位置も異なることになるが、基本的なこれら相互の位置関係は第1の実施例と同様である。従って、外輪4の回転に伴う、磁気エンコーダとして奏する作用・効果は上記各実施例と同様であり、またその他の構成も上記と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその説明を割愛する。
図10、図11は、第1実施例と同様の形状であるが、第2領域10bの表面を凹部(欠如部分)10cを除く全面にS極又はN極の単極に着磁(裏面はその反対極)し、第2検出部材13を第1検出部材12と同様の磁気センサで構成した例を示すものである。このようにすれば、凹部(欠如部分)10cと凹部でない部分(非欠如部分)との磁気変化を磁気センサで検出することができ、第2領域10bの着磁も左程煩雑でなく、また、第2検出部材13を小さくすることができ、限られたスペースでの磁気エンコーダの組立ても支障なく行うことができる。その他の構成は上記と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。また、本実施例は第2〜第5実施例の構造のものにも適用し得ることは言うまでもない。
図12(a)は、外輪4が回転側部材であり、且つトーンホイール10がシールリング6を構成しない場合の例を示すものである。(b)(c)はその変形例を示す。図12(a)において、トーンホイール10は、外輪4の外周に外嵌固定される円筒状金属補強環(芯金)14と、該補強環14の外周に固着一体とされた磁性ゴム環9とよりなる。磁性ゴム環9にはそのスラスト方向に沿って、前記と同様の第1領域10aと、第2領域10bとが並設され、更に、第2領域10bには、凹部(欠如部分)10cが形成されている。そして、これら第1領域10aと、第2領域10bとには、第1検出部材12及び第2検出部材13が対向配置されている。従って、外輪4の回転に伴い、第1領域10a及び第2領域10bにおける、第1検出部材12及び第2検出部材13による検出機能によって、回転検出及び原点検出がなされることは上記と同様である。
図12(b)においては、補強環14が、外輪4の外周に外嵌固定される円筒部14aと、外輪4の端面(ラジアル面)に当接される内向鍔部14bとよりなり、磁性ゴム環9はこの補強環14の外形状に沿って固着一体とされている。そして、磁性ゴム環9のスラスト面部が第1領域10a、ラジアル面部が第2領域10bとされ、夫々に第1検出部材12及び第2検出部材13が対向配置されている。また、図12(c)においては、補強環14の形状は(b)の例と同様であるが、磁性ゴム環9は補強環14の内向鍔部14bにのみ固着一体とされ、この同一面域内に、図8の例と同様に第1領域10a及び第2領域10bが並設され、夫々に第1検出部材12及び第2検出部材13が対向配置されている。従ってこれらの例でも、外輪4の回転に伴い、第1領域10a及び第2領域10bにおける、第1検出部材12及び第2検出部材13による検出機能によって、回転検出及び原点検出がなされることは上記と同様である。
図12(a)(b)(c)におけるその他の構成は上記と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。尚、図12(c)の例において磁性ゴム環9の固着スペースを確保する為に、内向鍔部14bを内輪3側に更に延出させることも可能である。また、これらの例において、円筒部14aを外輪の内周部に圧入嵌合させるものであってもよい。更に、これらの例は、トーンホイール10がシールリング6を構成せず、回転側である外輪に取付けられるものとしているが、トーンホイール10がシールリング6を構成せず、回転側である内輪に取付けられるものにも適用され得ることは言うまでもない。
尚、第5実施例のように外輪4が回転側部材である場合にも、第2乃至第4実施例及び第6実施例と同様の構成を適用し得ることは言うまでもない。また、上記各実施例では、自動車の車輪軸受部におけるシール部材を構成する一部材をトーンホイールとして磁気エンコーダを構成した例を述べたが、その他の回転部分やステアリング部等にも本発明の適用が可能であることは言うまでもない。更に、トーンホイール10を構成する磁性ゴム層9に代え、磁性プラスチック層とすることも可能である。この場合、その形状保持性から、適用対象によってはスリンガ(芯金)8を不要とすることも可能である。加えて、第2領域10bを非着磁領域とした例について述べたが、これを着磁領域とし、対向配置される第2検出部材13を磁気センサのみからなるものとしても、欠如部分では他の部位とは異なる磁気変化が発現されるから、これを検出することにより、同様の原点パルス信号の出力が得られることになる。
本発明の1実施例の磁気エンコーダが組み込まれた軸受ユニットの例を示す断面図である。 図1におけるX部の拡大図である。 同磁気エンコーダの斜視図である。 同磁気エンコーダの正面図である。 同磁気エンコーダにおける検出手段による波形図であり、(a)は同第1検出部材の一方による波形図、(b)は同他方による波形図、(c)は第2検出部材による波形図である。 第2実施例の図2と同様図である。 第3実施例の図2と同様図である。 第4実施例の図2と同様図である。 第5実施例の図2と同様図である。 第6実施例の図2と同様図である。 図10における部分切欠右側面図である。 (a)は、第7実施例の図2と同様図であり、(b)(c)はその変形例を示す。
符号の説明
3 内輪(回転側部材)
4 外輪(固定側部材)
8 スリンガ(芯金)
9 磁性ゴム層
10 トーンホイール
10a 第1領域
10b 第2領域
10c 凹部(欠如部分)
10d 切欠部(欠如部分)
11 検出手段
12 第1検出部材
12a 磁気センサ
12b 磁気センサ
13 第2検出部材
13a 磁気センサ
13b 永久磁石
14 円筒状金属補強環(芯金)

Claims (8)

  1. 軸心周りに回転する回転側部材に同心的に固着された磁性体製円環状トーンホイールと、該トーンホイールに対向するよう固定側部材に固定され、該トーンホイールの回転に伴う磁気変化を検出する検出手段とよりなる磁気エンコーダであって、
    上記トーンホイールが、複数のN極及びS極が周方向に沿って交互に繰り返し着磁された第1領域と、該第1領域と同心的で周方向の一部に欠如部分を有する第2領域とを備え、前記検出手段が、上記第1領域に対向配置され、トーンホイールの回転に伴うN極及びS極の磁気変化による回転パルス信号を検出する第1検出部材と、上記第2領域に対向配置され、トーンホイールの回転に伴う上記欠如部分及び非欠如部分の磁気変化による原点信号を検出する第2検出部材とよりなることを特徴とする磁気エンコーダ。
  2. 請求項1に記載の磁気エンコーダにおいて、
    前記第1検出部材が、磁気センサからなり、トーンホイールの回転に伴う前記第1領域のN極及びS極の交互の磁気変化を回転パルス信号として、当該磁気センサをして検出するものであり、一方、前記第2検出部材が、磁気センサと永久磁石とよりなり、トーンホイールの回転に伴う前記第2領域の欠如部分及び非欠如部分に基づく上記永久磁石が発する磁界の変化を原点信号として、当該磁気センサをして検出するものであることを特徴とする磁気エンコーダ。
  3. 請求項1又は2に記載の磁気エンコーダにおいて、
    前記第1検出部材が、第1領域の周方向に沿って、前記回転パルス信号の位相が互いにずれた位置になるよう配置された2個の磁気センサからなることを特徴とする磁気エンコーダ。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の磁気エンコーダにおいて、
    前記トーンホイールが、芯金と、該芯金に貼着一体とされた磁性ゴム層または磁性プラスチック層とよりなることを特徴とする磁気エンコーダ。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の磁気エンコーダにおいて、
    前記トーンホイールが、前記回転側部材に嵌合固着される円筒部と、該円筒部に連成された鍔部とよりなり、該円筒部及び鍔部の内の一方が前記第1領域、他方が前記第2領域とされていることを特徴とする磁気エンコーダ。
  6. 軸心周りに回転する回転側部材に同心的に固着されて、固定側部材に固定された磁気変化検出手段とにより磁気エンコーダを構成するトーンホイールであって、
    複数のN極及びS極が周方向に沿って交互に繰り返し着磁された第1領域と、該第1領域と同心的で周方向の一部に欠如部分を有する第2領域とを備え、回転側部材に固着された状態では、第1領域が、前記検出手段を構成するパルス信号検出用の第1検出部材に対向するよう配置され、上記第2領域が、前記検出手段を構成する原点信号検出用の第2検出部材に対向するよう配置されるものであることを特徴とするトーンホイール。
  7. 請求項6に記載のトーンホイールにおいて、
    芯金と、該芯金に貼着一体とされた磁性ゴム層とよりなることを特徴とするトーンホイール。
  8. 請求項6又は7に記載のトーンホイールにおいて、
    前記回転側部材に嵌合固着される円筒部と、該円筒部に連成された鍔部とよりなり、該円筒部及び鍔部の内の一方が前記第1領域、他方が前記第2領域とされていることを特徴とするトーンホイール。
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