JP2005178248A - 積層体及びその製造方法 - Google Patents

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和寿 田口
Kazuto Okamura
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Abstract

【課題】 工業的に利用可能なアルカリ金属水酸化物の水溶液によるポリイミド絶縁層のエッチング加工ができ、寸法変化が少なく、耐熱性も良好な、フレキシブルプリント基板やHDDサスペンション用基板用に適した積層体を提供する。
【解決手段】 金属箔上に複数の樹脂層が逐次に積層された積層体、あるいは金属箔と金属箔との間に複数の樹脂層が介在する積層体において、樹脂層の少なくとも一層が、吸湿率1.0wt%以下、且つ線熱膨張係数が30ppm/K以下の低熱膨張性のシロキサン含有ポリイミド系樹脂からなり、且つ全ての樹脂層が、50wt%水酸化カリウム水溶液による80℃でのエッチング速度が2.0μm/min以上のアルカリ水溶液によるウエットエッチング加工が可能なポリイミド系樹脂からなる積層体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、フレキシブルプリント基板やHDDサスペンションに好適に用いられる積層体とその製造方法に関するものである。
フレキシブルプリント基板やHDDサスペンション等に用いられる積層体としては、金属箔との接着性が良好で且つ耐熱性が高いポリイミド系樹脂からなる積層体が考案されてきた。しかしながら、このようなポリイミド系樹脂からなる積層体の加工では、紫外線レザー加工法やプラズマ加工法によるドライエッチング法が一般的に用いられており、これら加工装置は高価な上、使用するガス代などランニングコストが高く、且つ量産性が悪いなどの問題があった。
このドライエッチング法を代替する方法として、従来から有機アルカリやアルカリ水溶液によるウェットエッチングが可能な材料が要望されてきたが、ヒドラジンなどの有機系アルカリ溶剤やアルカリ水溶液と有機溶剤の混合物系は毒性が高いなどの問題から実用化されてない。一方、アルカリ水溶液によるウェットエッチング加工が可能な材料として、デュポン社のカプトン、鐘淵化学社のアピカルなどが代表され、これらポリイミド系樹脂に直接金属メッキを施し、任意の形状にエッチング加工する方法が提案されているが、この方法では工程数の増加や、寸法精度が悪いといった問題があり、更に使用される金属の特性に制限を受けるなどの課題がある。
特開平6-322129号公報 特開平2002-240193号公報
ところで、特許文献1は、低線熱膨張係数のポリイミド系樹脂を直接金属箔に積層することによって、アルカリ水溶液によるウェットエッチングが可能な材料が提案しているが、吸湿特性についてはなんら関心が払われておらず、更にガラス転移温度が高いことを特徴とするため両面に金属箔を設けた積層体ができないなど使用に制限を受ける。更に、この方法では金属箔に直接塗布・乾燥して積層することを特徴とするため、ポリイミド系樹脂と金属箔の積層体の平坦性は良好であってもポリイミド層単独では反りが発生することから、金属箔を任意の形状にエッチング加工した際に反りやうねりが発生し易いなどの問題がある。
これらの問題点を解決するために、特許文献2は、低熱膨張性ポリイミド系樹脂層とガラス転移温度が300℃以下のポリイミド層とを組み合わせたエッチング特性も有する積層体が示されている。しかし、ここに示された積層体も、吸湿特性という点では満足するものではなかった。従って、アルカリ水溶液によるウェットエッチング可能なポリイミド系樹脂は存在するものの、低吸湿性に優れた耐熱性のポリイミド系樹脂からなる積層体が切望されていた。
本発明の目的は、これまでポリイミド系樹脂積層体に要求されてきた耐熱性及び熱処理による寸法安定性などの特性を保持し、更に低吸湿性で且つアルカリ水溶液によるウェットエッチング加工が可能なポリイミド系樹脂と金属箔からなる積層体とその製造方法を提供することにある。
本発明者はかかる課題を解決すべく鋭意検討した結果、積層体を構成する絶縁層として吸湿率が1.0wt%以下であり、且つ線熱膨張係数が30ppm/K以下の低熱膨張性のシロキサン含有ポリイミド系樹脂層を有する材料を用いることで、低吸湿性が良好で且つアルカリ水溶液によるウェットエッチング加工が可能なポリイミド系樹脂を見出し、更にガラス転移温度が300℃以下のポリイミド系樹脂層と組み合わせることで、300℃以上の半田耐熱性を有し、熱処理を施した際の寸法変化が小さく、低吸湿性が良好で且つアルカリ水溶液によるウェットエッチングが可能なポリイミド系樹脂と金属箔からなる積層体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、金属箔上に複数の樹脂層が逐次に積層された積層体、あるいは金属箔と金属箔との間に複数の樹脂層が介在する積層体において、樹脂層の少なくとも一層が、吸湿率1.0wt%以下、且つ線熱膨張係数が30ppm/K以下の低熱膨張性のシロキサン含有ポリイミド系樹脂からなり、且つ全ての樹脂層が、50wt%水酸化カリウム水溶液による80℃でのエッチング速度が2.0μm/min以上のアルカリ水溶液によるウエットエッチング加工が可能なポリイミド系樹脂からなる積層体である。
ここで、吸湿率が1.0wt%以下、且つ線熱膨張係数が30ppm/K以下の低熱膨張性のシロキサン含有ポリイミド系樹脂層が、テトラカルボン酸二無水物中にピロメリット酸二無水物を50モル%以上使用して得られたものであること、ジアミノ化合物中4,4'-ジアミノ-2'-メトキシベンズアニリド、パラフェニレンジアミン、4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニルから選ばれる少なくとも1種のジアミノを50〜90モル%使用して得られたものであること、又は、式(1)で示されるジアミノ化合物をジアミノ化合物中10〜50モル%使用して得られたものであることは好ましい態様を与える。
H2N-(CH2)3-(Si(CH32-O)n-Si(CH3)2-(CH2)3-NH2 (1)
(nは1〜9の数を示す)
更に、本発明は上記積層体の製造方法であって、金属箔上にガラス転移温度が300℃以下のポリイミド系樹脂層を形成するための前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液を塗布・乾燥し、更に吸湿率が1.0wt%以下であり、且つ線熱膨張係数が30ppm/K以下の低熱膨張性のシロキサン含有ポリイミド系樹脂層を形成するための前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液を塗布・乾燥し、又は更に300℃以下のポリイミド系樹脂層を形成するための前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液塗布・乾燥し、複数層形成後、200℃以上の高温で熱処理を行うこと工程を有することを特徴とする積層体の製造方法である。
また、本発明は上記積層体の製造方法において、金属箔上にガラス転移温度が300℃以下のポリイミド系樹脂層を形成するための前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液を塗布・乾燥し、更に吸湿率が1.0wt%以下であり、且つ線熱膨張係数が30ppm/K以下の低熱膨張性のシロキサン含有ポリイミド系樹脂層を形成するための前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液を塗布・乾燥し、更に塗布面の最表層にガラス転移温度が300℃以下のポリイミド系樹脂層を形成するための前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液を塗布・乾燥し、複数層形成後、200℃以上の高温で熱処理を行って、更に金属箔を加熱圧着することで両面金属箔積層体を形成させることを特徴とする上記積層体の製造方法である。更に、金属箔の替わりに塗布面の最表層を向かい合わせに熱圧着し、両面金属箔を形成させることを特徴とする積層体の製造方法である。
また、本発明は、前記の積層体を用いて所望の形状に金属箔をエッチング加工した後、必要に応じて所望の形状のレジスト層を樹脂層表面に形成し、更に樹脂層を50℃以上の5〜80 wt%1価アルカリ金属水溶液もしくはその混合物により所望のパターン形状にエッチングすることを特徴とする積層体の加工法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の積層体は、複数層のポリイミド系樹脂層からなる絶縁層とその片面又は両面に設けられた金属箔から構成される。ここで、絶縁層を構成する樹脂層の少なくとも1層は吸湿率が1.0wt%以下であり、且つ線熱膨張係数が30ppm/K以下の低熱膨張性のシロキサン含有ポリイミド系樹脂層であることが必要であり、この層に加えて他の樹脂層として、少なくとも1層のガラス転移温度が300℃以下のポリイミド系樹脂層を有することが有利である。そして、全ての樹脂層は、50wt%水酸化カリウム水溶液による80℃でのエッチング速度が2.0μm/min以上であるアルカリ水溶液によるウエットエッチング加工が可能な積層体である。
なお、本発明で定義される吸湿率、線熱膨張係数、ガラス転移温度及びエッチング速度は、後記実施例に示した方法によって得られる値を言う。
本発明の積層体に用いられる金属箔は、その種類や厚さ等特に制限されるものではない。金属箔を構成する材質としては、銅、アルミニウム、ステンレス、鉄、銀、パラジウム、ニッケル、クロム、モリブテン、タングステン、又はそれらの合金などを挙げることができる。特に、フレキシブルプリント基板に適した材質としては銅が挙げられ、HDDサスペンション用のロードビームやフクレシャー部材に使用される材質として、銅やステンレススチールが挙げられる。金属箔の厚みは、フレキシブルプリント基板やHDDサスペンション用途では3〜300μm、特には10〜100μmのものが好ましく用いられる。
また、上記金属箔は接着力の向上を目的として、その表面にサイディング、ニッケルメッキ、銅-亜鉛合金メッキ、又はアルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤、トリアジンチオール類、ベンゾトリアゾール類、アセチレンアルコール類、アセチルアセトン類、カテコール類、o−ベンゾキノン類、タンニン類、キノリノール類などによって化学的あるいは機械的な表面処理を施してもよい。
本発明の積層体における絶縁層は、複数の樹脂層から構成され、少なくとも1層のシロキサン含有ポリイミド系樹脂層を有する。そして、他の樹脂層としては、ポリイミド系樹脂層であることが、そしてその少なくとも1層のガラス転移温度が300℃以下のポリイミド系樹脂層であることがよく、このガラス転移温度が300℃以下のポリイミド系樹脂層は金属箔と接して存在することが好ましい。
本明細書において、特にことわりのない限り、絶縁層というときは複数の樹脂層から構成された樹脂層を言い、シロキサン含有ポリイミド系樹脂(層)というときは、吸湿率が1.0wt%以下であり、且つ線熱膨張係数が30ppm/K以下の低熱膨張性のシロキサン含有ポリイミド系樹脂脂(層)を言い、低Tgポリイミド系樹脂(層)というときは、ガラス転移温度が300℃以下のポリイミド系樹脂(層)を言う。
本発明の積層体において、積層体の反り等を制御するためには、金属箔と絶縁層の熱膨張性の差が小さいことが望ましく、絶縁層の熱膨張係数としては30ppm/K以下であることが好ましい。また、積層体の二次加工におけるエッチング形状加工後のうねりや反りの発生を防ぐためには、絶縁層単体の反りが平坦であることが求められる。この絶縁層の平坦性を得る好適な方法として、金属箔に接する低Tgポリイミド系樹脂層は、接着力が優れる代わりに、比較的熱膨張性が高いことから、低熱膨張性のシロキサン含有ポリイミド系樹脂層の両面に配置した構成が好ましく、更に積層する各層の厚み構成によって反りのバランスを制御する方法が簡易的で好ましく、ポリイミド系樹脂層が三層以上からなることが好ましい。
本発明の積層体は、ウエットエッチングが可能であり、そのため複数のポリイミド系樹脂から構成される絶縁層は、特定のエッチング特性を有することが好ましい。エッチング特性は、50wt%水酸化カリウム水溶液による80℃でのエッチング速度により評価することが可能であり、本発明の積層体の場合、すべてのポリイミド系樹脂層は、2.0μm/min以上のエッチング特性を有することが必要であり、好ましくは4μm/min以上、更に好ましくは8μm/min以上である。また、ガラス転移温度が300℃以下のポリイミド系樹脂層のエッチング特性は、好ましくは4μm/min以上、更に好ましくは8μm/min以上であり、シロキサン含有ポリイミド系樹脂層のエッチング特性は、好ましくは6μm/min以上、更に好ましくは10μm/min以上である。このエッチング速度の上限は30μm/minが好ましいが、それ以上であってもよい。
絶縁層が多層構造からなる本発明の積層体の場合、良好なエッチング形状を得るには、各層のエッチング速度の比率を変化させることが好ましく、好適には金属箔と接する低Tgポリイミド系樹脂層のエッチング速度より、中間に位置する樹脂層のエッチング速度が1.0〜3.0倍の範囲、更に好ましくは1.0〜1.8倍の範囲で速い方が好ましい。
絶縁層の好ましい厚みは3〜100μmの範囲であり、更に好ましくは、5〜75μmの範囲である。ここで、シロキサン含有ポリイミド系樹脂層は2〜75μm、好ましくは3〜50μmの範囲に、低Tgポリイミド樹脂層は0.5〜10μm、好ましくは0.5〜7μmの範囲とすることがよい。本発明の積層体は、絶縁層の片面又は両面に金属箔を有する場合があるが、いずれの場合においても、絶縁層の厚みの70%以上、好ましくは80%以上をシロキサン含有ポリイミド系樹脂層とすることが好ましい。なお、低Tgポリイミド樹脂層は、絶縁層の厚みの2〜30%、好ましくは10〜20%とすることがよい。
本発明の絶縁層に用いられるポリイミド系樹脂は、公知の方法によって製造することができる。例えば、ほぼ等モルのテトラカルボン酸化合物とジアミノ化合物を原料として、溶液中でポリイミド系樹脂の前駆体であるポリアミック酸を合成し、これをイミド化して製造される。ここで、テトラカルボン酸化合物としては、テトラカルボン酸及びその酸無水物、エステル化物、ハロゲン化物などが挙げられるが、テトラカルボン酸二無水物がポリアミック酸の合成の容易さから好ましい。なお、ポリイミド系樹脂とはポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリシロキサンイミド、ポリベンズイミダゾールイミドなどの構造中にイミド基を有する樹脂をいう。
本発明の積層体を構成する複数のポリイミド系樹脂のうち、シロキサン含有ポリイミド系樹脂や、低Tgポリイミド系樹脂は、原料のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の中から、各層の特性を発現するに適した化合物を1以上選択し、これらを組み合わせて各層に最適な配合組成を決定することができる。
シロキサン含有ポリイミド系樹脂の製造に好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物であり、使用するテトラカルボン酸二無水物中の50モル%以上、より好ましくは70%モル以上、特に好ましくは80%モル以上をピロメリット酸二無水物で占めることが好ましい。テトラカルボン酸二無水物中、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3',4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸テトラカルボン酸系二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物なども挙げられるが、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は低熱膨張性などに対し有効である反面、著しくアルカリ水溶液によるエッチング性を損なうことから添加量としてはテトラカルボン酸二無水物全体の20モル%以下が好ましく、更に好ましくは10モル%以下であることが好ましい。また、3,4,3',4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物は、エッチング性に対して有効である反面、低熱膨張性が損なわれることから添加量としてはテトラカルボン酸二無水物中20モル%以下が好ましく、更に好ましくは10モル%以下であることが好ましい。
このシロキサン含有ポリイミド系樹脂の製造に用いられるジアミノ化合物は、ジアミノ化合物中50〜90モル%の範囲、更に好ましくは70〜85モル%の範囲が4,4'-ジアミノ-2'-メトキシベンズアニリド、パラフェニレンジアミン及び4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニルから選定される1種もしくは2種以上のジアミノ化合物であることが好ましい。
また、シロキサン含有ポリイミド系樹脂には、ジアミノ化合物中10〜50モル%、更に好ましくは20〜40モル%の範囲で上記式(1)に示されるジアミノ化合物を使用することが好ましい。
式(1)において、nは1〜9の数を示す。n数が多くなるほど熱膨張係数が大きくなる傾向にあることから、n数は8以下が好ましい。
本発明に使用されるガラス転移温度が300℃以下の低Tgポリイミド系樹脂層は、ガラス転移温度とエッチング特性の要件の他は特に制限がなく、多数の文献や特許で知られているテトラカルボン酸二無水物とジアミノ化合物とを組合せて得ることができる。エッチング特性は、積層体における絶縁層全体のエッチング速度を一定以上に保つためには、この層における50wt%水酸化カリウム水溶液による80℃でのエッチング速度が2.0μm/min以上、好ましくは4μm/min以上、更に好ましくは8μm/min以上に調整することがよい。
低Tgポリイミド系樹脂の合成に好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物はピロメリット酸二無水物であり、使用するテトラカルボン酸二無水物中40モル%以上、更に好ましくは60モル%以上にピロメリット酸二無水物を用いることでアルカリ水溶液によるエッチング性を有効に得ることができる。他のテトラカルボン酸二無水物として、3,4,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3',4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸テトラカルボン酸系二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物などが挙げられるが、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物などはガラス転移温度を低くするなどに対し有効である反面、著しくアルカリ水溶液によるエッチング性を損なうことから添加量としてはテトラカルボン酸二無水物全体の40モル%以下が好ましく、更に好ましくは20モル%以下であることが好ましい。
この低Tgポリイミド系樹脂の製造に好ましく用いられるジアミノ化合物としては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、1,3-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノ-2'-メトキシベンズアニリドなどが挙げられ、特にアルカリ水溶液によるエッチング性を発現させるものとして、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、1,3-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-ジアミノ-2'-メトキシベンズアニリドなどが有効である。また、4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノ化合物もアルカリ水溶液によるエッチング性をさほど落とすことがなくガラス転移温度を低くするなどに対し有効であり、更にこれらジアミノ化合物は低吸湿化などの効果が期待できる。この他に、例えば2,2'-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィドなどのジアミノ化合物を組み合わせてもよいが、特に2,2'-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニルなどは少量の添加で著しくアルカリ水溶液によるエッチング性を損なうことから添加量としては、20モル%以下が好ましく、更に好ましくは10モル%以下であることが好ましい。
本発明に用いられるポリイミド系樹脂は、一般的にはN-メチルピロリドン(NMP)、メチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルフォキサイド(DMSO)、硫酸ジメチル、スルフォラン、ブチロラクトン、クレゾール、フェノール、ハロゲン化フェノール、シクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライムなどの溶媒中で、上記したテトラカルボン酸二無水物とジアミノ化合物をほぼ等モルの割合で混合し、反応温度0〜200℃の範囲、好ましくは0〜100℃の範囲で反応させることにより、ポリイミド系樹脂の前駆体溶液を得、更にこれをイミド化することにより得られる。
イミド化はポリイミド系前駆体樹脂溶液を金属箔上に塗布、乾燥、熱処理することによっても行うこともでき、更に前駆体溶液をイミド化させポリイミド系樹脂溶液とした後、塗布、乾燥、熱処理することもできる。金属箔上にポリイミド系前駆体樹脂溶液を塗布し、これをイミド化する場合、塗布後、乾燥し、これを更に200℃以上、好ましくは300℃以上の加熱処理をしてイミド化反応を行う。
金属箔とポリイミド系樹脂層間の接着力は、90°ピール強度で表される数値が常温で0.5kN/m以上であることが好ましい。更に、好ましくは1.0 kN/m以上である。
本発明の積層体は、片面又は両面に金属箔層を有し、片面の場合はその上に、両面の場合はその中間に絶縁層を有する。金属箔層は、必要により、積層体の中間層にも1以上有することができる。絶縁層は複数の樹脂層からなるが、シロキサン含有ポリイミド系樹脂層を必須とし、金属箔に接する層は低Tgポリイミド系樹脂層とすることがよい。そして、片面に金属箔層を有する積層体はそのままでも各種用途に使用可能であるが、両面に金属箔層を有する積層体の中間体として使用する場合は、絶縁層の表面は低Tgポリイミド系樹脂層とすることがよい。なお、必要によりその他のポリイミド系樹脂層を絶縁層中に存在させることも可能であり、ポリイミド系樹脂以外の層であることもできる。
以下、本発明の積層体の製造方法について述べる。
積層体の製造にあたり、金属箔及び各絶縁層を構成するポリイミド原料等は上述したものと同様のものが使用される。本発明の製造方法においては、まず、金属箔上にガラス転移温度が300℃以下のポリイミド系樹脂層を形成するための前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液を塗布する。塗布された樹脂溶液は適当な温度で乾燥され、溶媒を除去する。その後、吸湿率が1.0wt%以下で線熱膨張係数が30ppm/K以下の低熱膨張性のシロキサン含有ポリイミド系樹脂層を形成するための前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液を塗布・乾燥し、必要に応じて更に、200℃以上の高温で硬化のための熱処理を行うことで、金属箔上に1層の低Tgポリイミド系樹脂層と1層のシロキサン含有ポリイミド系樹脂層とを有する片面に金属箔を有する積層体を製造することができる。ここで、200℃以上の高温での熱処理前に、更に、低Tgポリイミド系樹脂層を形成するための前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液を塗布・乾燥することで、シロキサン含有ポリイミド系樹脂層を中心層とする3層のポリイミド絶縁層を有する積層体とすることができる。なお、乾燥工程は後記するように複数層の前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液を同時又は順次塗布し、その後まとめて乾燥することでもよい。
本発明の積層体の製造方法は、絶縁層の両面に金属箔を有する積層体の製造にも適用できる。この場合、上記したと同様な方法で、金属箔と反対面の最外層を低Tgポリイミド系樹脂層とし、前記した金属箔とは別に準備した金属箔を加熱圧着することで両面金属箔積層体となる。この場合に、使用する金属箔の種類や、厚さは、同じであっても異なっても良い。積層体の用途がHDDサスペンション用途に用いられる場合には、その片方にステンレス箔を用いることが好ましい。
また、他の両面金属箔積層体の製造方法として、上記したと同様な方法で、金属箔と反対面の最外層を低Tgポリイミド系樹脂層とし、すなわち、金属箔/低Tgポリイミド系樹脂層/シロキサン含有ポリイミド系樹脂層/低Tgポリイミド系樹脂層の片面金属箔積層体とした後、2つの片面金属箔積層体の樹脂層側を向かい合わせ加熱圧着することでも両面金属箔積層体とすることができる。
本発明の積層体の製造方法において、絶縁層を多層に形成する方法としては、例えば下記1)〜4)に挙げる方法が挙げられる。
1) 任意の方法で樹脂溶液を金属箔上に塗工して、未乾燥塗布面上にナイフコート方式やダイ塗工方式などにより更に塗工する。
2) 任意の方法で樹脂溶液を金属箔上に塗工して乾燥する操作を繰り返す方法。
3) 多層ダイなどにより2種類以上のポリイミド系樹脂溶液又はポリイミド系前駆体樹脂溶液を同時に金属箔上に塗工して乾燥する方法。
4) 金属箔上に複数層形成させた後、更にポリイミド系樹脂層を向かい合わせにして熱圧着する方法。
絶縁層形成時における樹脂溶液を乾燥硬化する方法としては、任意の方法が活用可能であるが、ポリイミド系樹脂溶液又はポリイミド系前駆体樹脂溶液を塗布した後、更に予備乾燥した未硬化のポリイミド前駆体溶液を含む積層体を所定の温度に設定可能な熱風乾燥炉の中で、一定時間静置させるか、あるいは乾燥炉エリア範囲内を連続移動させ所定の乾燥硬化時間を確保させることで高温(200℃以上)での熱処理を行う方法が一般的である。また、作業の効率化、歩留まりなどを考慮して、ポリイミド系樹脂溶液又はポリイミド系前駆体溶液を塗工した後、予備乾燥した未硬化積層体を、ロール状に巻き取り、更に高温での熱硬化を行うバッチ処理方式も可能である。このバッチ処理方式の際、導体の酸化を防ぐことを目的として、高温(200℃以上)での熱処理を、減圧下、還元性気体雰囲気減圧下にて行うことも好ましい。なお、乾燥硬化工程において、ポリイミド系樹脂溶液やポリイミド系前駆体樹脂溶液は金属箔上に均一に塗布され、次いで熱処理によって溶媒が除去され、ポリイミド系前駆体樹脂溶液を用いた場合には、更にイミド閉環される。この際、急激に高温で熱処理すると樹脂表面にスキン層が生成して溶媒が蒸発しづらくなったり、発泡したりするので、低温から除々に高温まで上昇させながら熱処理していくのが好ましい。
加熱圧着の方法としては、通常のハイドロプレス、真空タイプのハイドロプレス、オートクレーブ加圧式真空プレス、連続式熱ラミネータなどを採用できる。このうち真空ハイドロプレスは、十分なプレス圧力が得られ、残存揮発分の除去も容易であり、また金属箔などの酸化を防止することから好ましい熱プレス法である。この加熱圧着時の熱プレス温度については、特に限定されるものではないが、使用されるポリイミド系樹脂のガラス転移温度以上であることが望ましく、更にガラス転移温度より5〜150℃高い温度が好ましい。また、加熱プレス圧力については、使用するプレス機器の種類にもよるが1〜50Mpaが適当である。ハイドロプレスで熱プレスを行う場合、上述のようにして得られた片面金属箔ポリイミド系樹脂積層体と金属箔を各シート状に加工したものを用意し、両者を何層にも重ね合わせ、同時に熱プレスで加熱加圧下に圧着して積層することによって、一回の熱プレスで多層積層体を得ることも可能である。
本発明の積層体は、アルカリ水溶液によるウエットエッチング加工に適する。その加工方法としては、例えば、両面金属積層体における片面の金属箔を任意の方法で所定のパターンにエッチング加工した後、必要に応じてエッチング加工されてはならない絶縁層部分を含む表面に所定のパターンのレジスト層をその加工面に形成し、次に絶縁層を約50℃以上の温度で、アルカリ水溶液又はそれを含む混合溶液により所定のパターン形状にエッチングして、加工する方法が好ましく挙げられる。
絶縁層のエッチングに使用されるアルカリ水溶液としては、1価のアルカリ金属の水溶液、もしくはその混合物からなるエッチング液が好適に用いられる。ここで、混合成分としてはポリイミドと親和性を高めるために、エタノールアミン,プロパノールアミン、ブタノールアミンなどの第一級アミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどの第二級アミンからなるオキシアルキルアミン系、ヒドラジン1水和物,エチレンジアミン,ジメチルアミン、ジメチルホルムアミド、クレゾール、エチレングリコールなどアルコール系や有機系の混合物を含有していてもよく、またポリイミド樹脂との親和性の高い溶剤も併用することができる。また、1価のアルカリ金属としては、水酸化カリウムが最も効率的にエッチングが進み好ましいが、この他に水酸化ナトリウム,水酸化リチウムを用いることもでき、二価のアルカリ土類金属などを使用しても構わないが、エッチング性の点から1価のアルカリ金属が好ましい。また、アルカリ水溶液の濃度は5〜80 wt%が好ましい。5 wt%以下ではエッチング速度が遅くなり目的とする形状が得られ難く、また80 wt%以上では冷却時などに固形分の発生や粘度が高くなるなど製造上好ましくはない。更に、良好なエッチング形状を得る好適なアルカリ水溶液の濃度としては30〜70wt%が好ましい。また、エッチング液を使用する温度範囲としては温度が高いほどエッチング速度が速く、好ましくは50℃以上、好ましくは、60〜90℃である。ただし、ポリイミド樹脂との親和性を高める添加剤や使用する温度、アルカリ濃度などによってエッチング性を変化させることができるためこの限りではない。
本発明によれば、工業的に利用可能なアルカリ金属水酸化物の水溶液によるポリイミド絶縁層のエッチング加工が可能な積層体が得られる。本発明の積層体は、低吸湿性且つ低熱膨張性のポリイミド樹脂を含むことから、寸法変化が少なく、耐熱性も良好である。かかる積層体の層構成の制御は、はんだ耐熱性の向上、熱処理を施した際の寸法変化の抑制につながることから、特にフレキシブルプリント基板やHDDサスペンション用基板に好適に用いることができる。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明する。
なお、各種特性の評価は以下の方法によった。
吸湿率:ポリイミドフィルムを、大気オーブンを用い、105℃で2時間保持し、乾燥を行い、そのフィルムの重量を測定した後、恒温恒湿下(23℃、50%RH)で24時間吸湿後、更にフィルムの重量を測定し、初期の重量と吸湿後の重量との差を初期の重量で割ったものを吸湿率とした。
線熱膨張係数:イミド化が十分に終了した試料を、サーモメカニカルアナライザー(セイコーインスツルメンツ社製)を用い、250℃まで昇温し、更にその温度で10分保持した後、5℃/minの速度で冷却し、240℃から100℃までの平均の線熱膨張係数(熱膨張係数)を求めた。
エッチング速度:金属上にポリイミド系樹脂層を形成させた後に厚みを測定し、次いで金属箔を残したままの状態で80℃の50%水酸化カリウム水溶液に浸漬してポリイミド樹脂が全て無くなる時間を測定し、初期の厚みをエッチングに要した時間で割った値をエッチング速度とした。なお、エッチング時間が長いポリイミド系樹脂に関しては、膜厚が減った量をエッチングに要した時間で割った値をエッチング速度とした。
ガラス転移温度(Tg):粘弾性アナライザー(レオメトリックサイエンスエフイー株式会社製 RSA-II)を使って、10mm幅のサンプルを用いて、1Hzの振動を与えながら、室温から400℃まで10℃/minの速度で昇温した際の、損失正接(tanδ)の極大から求めた。
耐熱性評価:積層体を大気オーブンを用い、300℃で1時間保持し、その後、全ての系での膨れ、剥がれについて、評価を行った。
エッチング加工性の評価:ポリイミド系樹脂のアルカリ水溶液によるエッチング加工性の評価では、ポリイミド樹脂との親和性を高めるため、50wt%水酸化カリウム水溶液にエチレンジアミンとエチレングリコールをそれぞれ20wt%添加したアルカリ水溶液をポリ容器に入れ、80℃の湯浴にて加熱し、積層体をポリイミド樹脂が完全に除去されるまで浸漬して、開口部側面のエッチング形状により評価を行った。
また、実施例などに用いられる略語は、次の通りである。
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
MABA:4,4'-ジアミノ-2'-メトキシベンズアニリド
p-PDA:パラフェニレンジアミン
PSX :ω,ω'-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン (シロキサンユニ ット数n=8)
mTB :4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニル
APB :1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン
PMDA:無水ピロメリット酸
BPDA:3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
合成例1
表1に示したジアミノ化合物を秤量し、300mlのセパラブルフラスコの中で攪拌させながら溶剤DMAc 170gに溶解させた。次いで、その溶液を氷浴で冷却し、且つ窒素気流下で表1に示した所定量のテトラカルボン酸二無水物を加えた。その後、溶液を室温に戻し、3時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘調なポリイミド前駆体A〜Gを得た。
上記ポリイミド前駆体溶液A〜Gをそれぞれステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、テンションアニール処理品)上にアプリケータを用いて硬化後の厚みが15μmになるように塗布し、90℃で8分間乾燥した後、更に90℃から昇温速度4℃/minの昇温速度にて306℃まで54分間の昇温加熱及び360℃の熱処理を行い、ステンレス箔上にポリイミド層を形成した。次いで、ステンレス箔を残した状態で、80℃の50%水酸化カリウム水溶液に浸漬してエッチング試験を行い、エッチング速度を求めた。また、ステンレス箔上にポリイミド層を形成させた後、塩化第二鉄水溶液を用いてステンレス箔をエッチング除去してポリイミドフィルムを作成し、吸湿率、線熱膨張係数を求めた。
測定結果を表1に示す。
Figure 2005178248
合成例2
ジアミノ化合物として、APB 22.6g及びp-PDA 3.6gを500mlのセパラブルフラスコ中で攪拌しながら溶剤DMAc 340gに溶解させた。次いで、窒素気流下でテトラカルボン酸二無水物である無水ピロメリット酸 9.7g及び3,4,3',4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物 24.1gを加えた。その後、3時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘調なポリイミド前駆体溶液Hを得た。
更に、上記と同様の方法でステンレス箔上にポリイミド層を形成した。次いで、ステンレス箔を残した状態で、80℃の50%水酸化カリウム水溶液に浸漬してエッチング試験を行い、エッチング速度を求めた結果、2.3μm/minであった。また、ステンレス箔上にポリイミド層を形成させた後、塩化第二鉄水溶液を用いてステンレス箔をエッチング除去してポリイミドフィルムを作成し、ガラス転移点の測定を行った結果、243℃であった。これは、低Tgポリイミド樹脂に該当する。
実施例1〜5及び比較例1〜2
ポリイミド前駆体Hの溶液をアプリケーターを用いてステンレス箔(新日本製鐵株式会社製、SUS304、厚さ20μm、テンションアニール処理品)上に、硬化後の厚みが1μmになるように塗布し、90℃で8分間乾燥して第1層を設けた後、その上にポリイミド前駆体A〜Gの溶液を硬化後の厚さが14μmになるように塗布し、90℃で8分間乾燥して第2層を設けた予備積層体を得た。更に、予備積層体の第2層の上にポリイミド前駆体Hの溶液を硬化後の厚みが1μmになるように塗布し、90℃で8分間乾燥して第3層を設けた後、更に90℃から昇温速度4℃/minの昇温速度にて306℃まで54分間の昇温加熱及び360℃の熱処理を行い、イミド化を完了させ、ステンレス箔上にポリイミド樹脂層の厚み16μmの積層体を得た。
同様にして表2に示す層構造となるように塗布、乾燥、熱処理して、実施例2〜5及び比較例1〜2の積層体を得た。
次いで、ステンレス箔を残した状態で、80℃の50%水酸化カリウム水溶液に浸漬してエッチング試験を行い、エッチング速度を求めた結果を下表に示す。また、ステンレス箔上にポリイミド層を形成させた後、塩化第二鉄水溶液を用いてステンレス箔をエッチング除去してポリイミドフィルムを作成し、吸湿率、線熱膨張係数を求めた結果を下表に示す。
Figure 2005178248
実施例6〜7及び比較例3〜4
実施例1〜2及び比較例1〜2で得た各積層体に、圧延銅箔(オーリンソマーズ社製、C7025、厚み18μm)を第3層のポリイミド樹脂層に重ね合わせ、真空プレス機を用いて、面圧15MPa、320℃でプレス時間20分の加熱圧着して実施例6〜7及び比較例3〜4の積層体を得た。
得られた積層体の常温におけるピール強度を測定したところ、ステンレス-樹脂間、銅箔-樹脂間、いずれの場合も1.1kN/m以上を示した。
得られた積層体の銅箔を塩化第二鉄溶液を用いてエッチング除去し、ステンレス箔上にポリイミド樹脂層を形成した積層体とした。次いで、ステンレス箔を残した状態で、80℃の50%水酸化カリウム水溶液に浸漬してエッチング試験を行い、エッチング速度を求めた結果を下表に示す。また、ステンレス箔上にポリイミド層を形成させた後、塩化第二鉄水溶液を用いてステンレス箔をエッチング除去してポリイミドフィルムを作成し、吸湿率、線熱膨張係数を求めた結果を下表に示す。
また、得られた積層体の銅箔を塩化第二鉄溶液を用いて所定のパターン形状に加工した後、ポリイミド樹脂からなる絶縁樹脂層上に残された金属箔をレジストなどの保護膜の代わりとして使用し、80℃の50%水酸化カリウム水溶液にエチレンジアミンとエチレングリコールをそれぞれ20wt%添加した混合液に120秒浸漬し、ポリイミド樹脂のエッチング加工を行った。更に、ポリイミド上に残っている金属箔を塩化第二鉄溶液でエッチング除去を行うことにより、ポリイミド樹脂層を露出させ、その形状を観察したところ、実施例6〜7では、何れの場合においてもエッチング後の樹脂層加工部の側面形状が良好なものが得られていることが確認された。更に、積層体を300℃のオーブン中で1時間の耐熱試験を行ったところ、膨れ、剥がれなどの異常は認められなかった。また、金属箔を任意の形状に加工した積層体には殆ど反りは認められず、更に積層体及び金属箔の形状加工後における積層体の反りもほとんど認められなかった。
Figure 2005178248
実施例8〜9及び比較例5〜6
実施例1〜2及び比較例1〜2で得た積層体を、ポリイミド樹脂を向かい合わせにしてポリイミド樹脂同士が接するように重ねあわせ、真空プレス機を用いて、面圧15MPa、320℃でプレス時間20分の加熱圧着して実施例8〜9及び比較例5〜6の積層体を得た。
得られた積層体のステンレス箔の片面を塩化第二鉄溶液を用いて全面エッチング除去し、ステンレス箔上にポリイミド樹脂層を形成した積層体とした。次いで、ステンレス箔を残した状態で、80℃の50%水酸化カリウム水溶液に浸漬してエッチング試験を行い、エッチング速度を求めた結果を下表に示す。
また、別に、両面のステンレス箔を塩化第二鉄水溶液を用いてエッチング除去してポリイミドフィルムを作成し、吸湿率、線熱膨張係数を求めた結果を下表に示す。
別に、上記のようにして得られた両面にステンレス箔を有する積層体の片面のステンレス箔を塩化第二鉄溶液を用いて所定のパターン形状に加工した後、ポリイミド樹脂からなる絶縁樹脂層上に残された金属箔をレジストなどの保護膜の代わりとして使用し、更に80℃の50%水酸化カリウム水溶液にエチレンジアミンとエチレングリコールをそれぞれ20wt%添加した混合液に120秒浸漬し、ポリイミド樹脂のエッチング加工を行い、そのエッチング加工部側面の形状を観察したところ、何れの場合においても良好なポリイミド樹脂の形状が得られていることが確認された。
更に、積層体を300℃のオーブン中で1時間の耐熱試験を行ったところ、膨れ、剥がれなどの異常は認められなかった。また、金属箔を任意の形状に加工した積層体には殆ど反りは認められず、更に積層体及び金属箔の形状加工後における積層体の反りもほとんど認められなかった。結果を表4に示す。
Figure 2005178248

Claims (8)

  1. 金属箔上に複数の樹脂層が逐次に積層された積層体、あるいは金属箔と金属箔との間に複数の樹脂層が介在する積層体において、樹脂層の少なくとも一層が、吸湿率1.0wt%以下、且つ線熱膨張係数が30ppm/K以下の低熱膨張性のシロキサン含有ポリイミド系樹脂からなり、且つ全ての樹脂層が、50wt%水酸化カリウム水溶液による80℃でのエッチング速度が2.0μm/min以上のアルカリ水溶液によるウエットエッチング加工が可能なポリイミド系樹脂からなることを特徴とする積層体。
  2. 金属箔と接する樹脂層の少なくとも1層が、ガラス転移温度が300℃以下のポリイミド系樹脂層である請求項1記載の積層体。
  3. シロキサン含有ポリイミド系樹脂が、ジアミノ化合物とテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるものであり、前記テトラカルボン酸二無水物中50モル%以上がピロメリット酸二無水物である請求項1又は2記載の積層体。
  4. シロキサン含有ポリイミド系樹脂が、ジアミノ化合物とテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られものであり、前記ジアミノ化合物中50〜90モル%が4,4'-ジアミノ-2'-メトキシベンズアニリド、パラフェニレンジアミン及び4,4'-ジアミノ-2,2'-ジメチルビフェニルから選ばれる少なくとも1種のジアミノ化合物であり、且つ、下記式(1)
    H2N-(CH2)3-(Si(CH32-O)n-Si(CH3)2-(CH2)3-NH2 (1)
    (但し、nは1〜9の数を示す。)
    で表されるジアミノ化合物が10〜50モル%である請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の積層体を製造するに当たり、金属箔上にガラス転移温度が300℃以下のポリイミド系樹脂層を形成するための前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液を塗布・乾燥し、更に吸湿率が1.0wt%以下、且つ線熱膨張係数が30ppm/K以下の低熱膨張性のシロキサン含有ポリイミド系樹脂層を形成するための前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液を塗布・乾燥し、あるいは更にガラス転移温度が300℃以下のポリイミド系樹脂層を形成するための前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液を塗布・乾燥し、複数層形成後、200℃以上の高温で熱処理を行う工程を有することを特徴とする積層体の製造方法。
  6. 金属箔上にガラス転移温度が300℃以下のポリイミド系樹脂層を形成するための前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液を塗布・乾燥し、更に吸湿率が1.0wt%以下、且つ線熱膨張係数が30ppm/K以下の低熱膨張性のシロキサン含有ポリイミド系樹脂層を形成するための前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液を塗布・乾燥し、更に塗布面の最表層にガラス転移温度が300℃以下のポリイミド系樹脂層を形成するための前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液を塗布・乾燥し、複数層形成後、200℃以上の高温で熱処理を行って、更に金属箔を加熱圧着することで両面金属箔積層体を形成させることを特徴とする請求項5記載の積層体の製造方法
  7. 金属箔上にガラス転移温度が300℃以下のポリイミド系樹脂層を形成するための前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液を塗布・乾燥し、更に吸湿率が1.0wt%以下であり、且つ線熱膨張係数が30ppm/K以下の低熱膨張性のシロキサン含有ポリイミド系樹脂層を形成するための前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液を塗布・乾燥し、更に塗布面の最表層に300℃以下のポリイミド系樹脂層を形成するための前駆体樹脂溶液又は樹脂溶液を塗布・乾燥し、複数層形成後、200℃以上の高温で熱処理を行った後、更に最表層のガラス転移温度が300℃以下のポリイミド系樹脂層を向かい合わせにして加熱圧着することで両面金属箔積層体を形成させることを特徴とする請求項5記載の積層体の製造方法
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載の積層体を用いて所望の形状に金属箔をエッチング加工した後、必要に応じて所望任意の形状のレジスト層を樹脂層表面に形成し、更に樹脂層を50℃以上の5〜80 wt%1価アルカリ金属水溶液又はその混合物により所望のパターン形状にエッチングすることを特徴とする積層体の加工方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014187091A (ja) * 2013-03-22 2014-10-02 Ajinomoto Co Inc 絶縁樹脂シート
TWI791056B (zh) * 2017-10-19 2023-02-01 日商日鐵化學材料股份有限公司 聚醯亞胺前體及聚醯亞胺、積層體、可撓性裝置

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