JP2004237907A - 自動車用空調システム - Google Patents

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俊行 江原
Hiroyuki Matsumori
裕之 松森
Takashi Sato
孝 佐藤
Masaru Matsuura
大 松浦
Takayasu Saito
隆泰 斎藤
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Abstract

【課題】例えば、アイドリングストップ時に車室内環境を好適に維持でき、且つ、発進時、或いは、坂道走行時にエンジンの負荷を軽減することができる自動車用空調システムを提供する。
【解決手段】車載バッテリー5を具備した自動車1に、エンジン2にて駆動されるエンジン駆動圧縮機18と、車載バッテリー5からの給電により駆動される電動圧縮機10を設ける。自動車用空調システムの冷媒回路は、エンジン駆動圧縮機18と電動圧縮機10とを並列に接続して構成する。電動圧縮機10の運転を制御する空調用制御装置21を設ける。空調用制御装置21は、自動車1のアイドリングストップにおいて電動圧縮機10を運転する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の車室内を空調する空調システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より一般的な自動車に用いられているカーエアコン(自動車用空調システム)は、エンジン(内燃機関)にて圧縮機が駆動されていた(エンジン駆動圧縮機)。この圧縮機から吐出され、車室外熱交換器に流入した高温のガス冷媒は、車室外送風機により車室外の空気と熱交換されて放熱し、凝縮液化された後、膨張弁を介して車室内に設けられた車室内熱交換器に流入する。液冷媒はそこで蒸発し、周囲から熱を吸収することによって冷却作用を発揮する。この車室内熱交換器は、車室内送風機にて循環される車室内の空気と熱交換し、車室内を冷却して空調を行う。そして、車室内熱交換器から出た冷媒は圧縮機に戻るサイクルを繰り返すものであった。
【0003】
このようなカーエアコンに設けられた制御装置は、車室内が設定された所定の上限温度と下限温度の内の下限温度まで冷房されると、圧縮機の回転をOFFする。そして、車室内の温度が上昇していき、前記上限温度に到達すると制御装置は圧縮機をONして車室内の冷房を再開する。このようにして車室内を冷房し、一方ではヒータからの暖気により暖房作用を加えることによって、四季を通じて車室内を設定温度内に維持し、快適になるよう空調を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−340495号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年では係るエンジン駆動自動車からの排気ガスによる地球環境汚染の問題から、信号待ちの走行停止、或いは、渋滞での走行停止など自動車の走行停止時にはエンジン停止(アイドリングストップ)を行って排気ガスを排出しないような自動車の開発が進んできている。このような、アイドリングストップを行う自動車において、特に車室内温度が高温となる夏季などにアイドリングストップを行うと、エンジン駆動圧縮機は停止して車室内の温度は上昇してしまい、充分な車室内の空調ができなくなってしまうという問題がある。また、自動車の発進時、或いは、坂道などを走行する場合、エンジン駆動圧縮機が負荷となるため、カーエアコンが動作しているとエンジンの負荷が大きくなって走行性能が悪化し、或いは、圧縮機をOFFさせたときには快適性を悪化させると云う問題もあった。
【0006】
ここで、近年ではHFC系冷媒による環境破壊問題(オゾン層破壊問題)を解決するために冷媒として自然冷媒である二酸化炭素(CO)を使用することが考えられているが、高外気温時に通常のHFC系冷媒に比べて冷却能力が低下する。そのため、係るCO冷媒を使用した場合には高出力の圧縮機を必要とし、一般的な負荷条件ではロスの多い運転を強いられることになる。
【0007】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、例えば、自動車のアイドリングストップ時に車室内環境を好適に維持でき、且つ、発進時、或いは、坂道走行時などにエンジンの負荷を軽減することができる自動車用空調システムを提供すると共に、CO冷媒を使用した場合に、圧縮機の出力を分割することで、一般的な負荷条件に適したエンジン駆動圧縮機を選定し、効率の向上を図ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の自動車用空調システムは、蓄電手段を具備した自動車に用いられ、エンジンにて駆動されるエンジン駆動圧縮機と蓄電手段からの給電により駆動される電動圧縮機とを並列に接続して構成された冷媒回路と、電動圧縮機の運転を制御する制御手段とを備え、冷媒回路の蒸発器により車室内を空調することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明の自動車用空調システムは、上記発明に加えて、制御手段は、自動車のアイドリングストップにおいて電動圧縮機を運転することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明の自動車用空調システムは、上記各発明に加えて、制御手段は、自動車の低速運転時及び/又は加速運転時に電動圧縮機を運転することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明の自動車用空調システムは、上記各発明に加えて、制御手段は、エンジン駆動圧縮機の能力が不足する際に電動圧縮機を運転することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明の自動車用空調システムは、上記各発明に加えて、制御手段は、車室内の除湿運転の際に電動圧縮機を運転することを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明の自動車用空調システムは、上記各発明に加えて、冷媒回路には冷媒として二酸化炭素が使用されることを特徴とする。
【0014】
本発明の自動車用空調システムによれば、蓄電手段を具備した自動車において、エンジンにて駆動されるエンジン駆動圧縮機と蓄電手段からの給電により駆動される電動圧縮機とを並列に接続して構成された冷媒回路と、電動圧縮機の運転を制御する制御手段とを備え、冷媒回路の蒸発器により車室内を空調するように構成したので、例えば、請求項2の如く、制御手段により自動車のアイドリングストップにおいて電動圧縮機を運転すれば、アイドリングストップ中においても、電動圧縮機により冷媒回路内の冷媒循環を行わせ、車室内の空調を行うことができるようになる。これにより、アイドリングストップ中に車室内温度が上昇してしまう不都合を防止することが可能となり、乗車時のアイドリングストップ時に車室内環境が低下してしまうのを未然に阻止することができるようになるものである。
【0015】
また、請求項3や請求項4の如く、自動車の低速運転時及び/又は加速運転時に電動圧縮機を運転し、或いは、エンジン駆動圧縮機の能力が不足してしまう場合に電動圧縮機を運転することで、例えば低容量のエンジン駆動圧縮機を使用しながら、所要の空調能力を確保することが可能となる。これにより、自動車の大幅な燃費向上を図ることができるようになり、且つ、環境汚染問題の改善に貢献することができるようになるものである。
【0016】
また、請求項5の如く、除湿運転の際に電動圧縮機を運転することで、例えば雨天における車窓曇りを解消する際の除湿のように、必要能力が少なく大出力のエンジン駆動圧縮機が不要で、且つ、きめ細かな制御を必要とする際に、電動圧縮機で負荷とバランスがとれた運転を行うことが可能となる。
【0017】
特に、請求項6の発明の自動車用空調システムの如く、冷媒回路には冷媒として二酸化炭素を使用すれば、地球環境問題にも好適なものとなる。この場合、高温時の能力不足が懸念されるが、二つの圧縮機がお互いの能力を補完し合うので圧縮機の能力不足の問題も解消されて、空調効率の改善も図れるものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、図面に基づき本発明の実施形態を詳述する。図1は本発明を適用した実施例の自動車1の模式図(側面図)、図2は自動車1の模式図(平面図)、図3は自動車1の空気調和装置9の冷媒回路図をそれぞれ示している。
【0019】
ここで、自動車には次のような種類のものがある。エンジン(内燃機関)で走行する通常のエンジン駆動自動車、エンジンで発電した電力を車載バッテリーに充電し、このバッテリーから供給される電力で走行用モータを駆動して走行するシリーズハイブリッド自動車、走行用モータとエンジンが協調して走行するパラレルハイブリッド自動車、これらの双方の機能を併せ持つハイブリッド自動車(HEV)、燃料電池にて発電した電力を車載バッテリーに充電し、この車載バッテリーから供給される電力で走行用モータを駆動して走行する燃料電池自動車(FCEV)などである。本発明は、少なくとも上記エンジン駆動自動車又はハイブリッド自動車に適用可能であり、以下の実施例ではハイブリッド自動車を例に採りあげて説明する。
【0020】
図において、1はハイブリッド自動車(以降自動車と称す)で、この自動車1にはエンジン2と、本発明の自動車用空調システムを構成する空気調和装置9が搭載されている。空気調和装置9は自動車1の車室22内の冷房、暖房及び除湿等の空調を行うもので、この自動車1には自動車のエンジンにて駆動されるエンジン駆動圧縮機18と、図示しない圧縮機モータ(電動モータ)にて駆動される電動圧縮機10と、空調用制御装置21(本発明の制御手段に相当)を備えている。
【0021】
また、電動圧縮機10は、ロータリー圧縮機等の密閉式の圧縮機にて構成されており、この電動圧縮機10の吐出側の配管10Aは逆止弁11を介して室外熱交換器としてのガスクーラ(車室外熱交換器)13に接続されている。ガスクーラ13の出口側の配管13Aは、中間熱交換器14を経て減圧装置としての膨張弁15に接続され、膨張弁15は車室内熱交換器としての蒸発器(冷却器)16に配管接続されている。尚、逆止弁11は、電動圧縮機10から吐出されたガス冷媒をガスクーラ13側に流出させるが、ガスクーラ13側から電動圧縮機10へのガス冷媒の流入を阻止する(図3)。
【0022】
蒸発器16の出口側の配管16Aはアキュムレータ(気液分離器)17に接続されている。アキュムレータ17の出口側の配管17Aは前記中間熱交換器14を経て電動圧縮機10の吸込側の配管10Bに接続される環状の冷媒回路を構成している。即ち、アキュムレータ17は中間熱交換器14を介して電動圧縮機10の吸込側に配管接続されている。
【0023】
該中間熱交換器14は、ガスクーラ13から出た高温の高圧側冷媒とアキュムレータ17から出た低温の低圧側冷媒とを熱交換させるものである。この中間熱交換器14は、ガスクーラ13で放熱した冷媒の更なる冷却と、アキュムレータ17を経た冷媒の更なるガス化を行い、冷却能力を改善するものである。
【0024】
前記電動圧縮機10の吸込側の配管10Bは、中間熱交換器14との間で分岐して開放式のエンジン駆動圧縮機18の吸込側の配管18Bに接続されており、エンジン駆動圧縮機18の出口側の配管18Aは、逆止弁19を介して前記ガスクーラ13に接続されている。即ち、エンジン駆動圧縮機18と電動圧縮機10はガスクーラ13と中間熱交換器14との間に並列に接続されている。尚、逆止弁19は、エンジン駆動圧縮機18から吐出された冷媒をガスクーラ13側に流出させるが、ガスクーラ13側からエンジン駆動圧縮機18へのガス冷媒の流入を阻止する。このエンジン駆動圧縮機18はVベルト6を介してエンジン2にて駆動される。
【0025】
そして、電動圧縮機10、エンジン駆動圧縮機18及びガスクーラ13は自動車1のエンジンルーム内などの車室外に設置され、蒸発器16は車室22内に設置される。電動圧縮機10には前記圧縮機モータが設けられており、この圧縮機モータによって電動圧縮機10が駆動される。ガスクーラ13にはガスクーラ13の熱を車室外に放熱するための室外送風機12(ラジエターファンでもよい)が設けられると共に、蒸発器16には室内送風機20が設けられ、蒸発器16により冷却された空気は室内送風機20によって車室22内に吹き出され、これによって車室22内は冷却される。
【0026】
一方、自動車1にはエンジン2の他に走行用モータ3と、発電機4と車載バッテリー(本発明の蓄電手段に相当)5が設けられており、走行用モータ3と車載バッテリー5は主軸インバータ3Aを介して車載バッテリー5に接続されている。また、電動圧縮機10は空調インバータ8を介して車載バッテリー5に接続されている。該走行用モータ3及び電動圧縮機10は、車載バッテリー5からの給電により駆動される。前記主軸インバータ3Aは図示しない走行用制御装置(ECU)により制御され、空調インバータ8は前記空調用制御装置21により制御される。また、これら走行用制御装置と空調用制御装置21とは相互にデータの授受を行う。
【0027】
また、エンジン2と走行用モータ3と発電機4とには図示しないトルク分割機構が接続されており、このトルク分割機構は走行用モータ3と発電機4、及び、エンジン2と走行用モータ3の回転を一つに合わせて自動車1を走行させる。即ち、エンジン2及び走行用モータ3の駆動力で車輪7を回転させて自動車1を走行させる。尚、トルク分割機構にて走行用モータ3と発電機4、及び、エンジン2と走行用モータ3の回転を一つに合わせて自動車1を走行させる技術については周知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【0028】
ここで、トルク分割機構は、エンジン2の駆動トルク負荷が大きい発進時や低速時に走行用モータ3を使用し、また、エンジン2単独の駆動力以上に駆動力を必要とする際にもアシスト駆動源として走行用モータ3を使用する。そして、エンジン2の熱効率の良い高速に移るにつれて、トルク分割機構はエンジン2主導に移行する。また、エンジン2主導時は車載バッテリー5の充電状態に応じて発電機4で発電した電力が車載バッテリー5に充電される。また、発電機4はエンジン2の回転中の発電作用の他、エンジン2の始動時にスタータとしても利用される。
【0029】
そして、電動圧縮機10の前記空調インバータ8、エンジン駆動圧縮機18のクラッチ、室外送風機12、室内送風機20、及び、車載バッテリー5などは汎用のマイクロコンピュータにて構成される前記空調用制御装置21の入力側に接続される(図1)。空調用制御装置21は、図示しないが昇降圧回路を備えており、空調用制御装置21は、この昇降圧回路によって車載バッテリー5の電圧を希望の電圧に昇圧若しくは降圧すると共に、空調インバータ8で圧縮機モータの駆動電圧に変換して電動圧縮機10を回転駆動させ、自動車1のアイドリングストップ時(エンジン駆動圧縮機18停止時)に電動圧縮機10を運転する。
【0030】
また、空調用制御装置21は、自動車1の低速運転時や加速運転時などにエンジン駆動圧縮機18のクラッチを解除し、エンジン2から切り離して(停止して)電動圧縮機10を運転すると共に、エンジン駆動圧縮機18の能力が不足する際にも、それに加えて電動圧縮機10を運転できるように構成されている。更に、空調用制御装置21には図示しないが電動圧縮機10の回転数に比例して回転するAUTOと、一定割合で複数段階に室内送風機20の回転数を変化させ、車室22内に吹き出す送風量をマニュアルで決定するブロアファンスイッチが接続されている。
【0031】
尚、エンジン駆動圧縮機18は、能力の小さな低容量ものが用いられている。そのため、車室22内の温度が極めて高温となる夏季などには運転能力が不足するが、車室22内の温度が高温となってエンジン駆動圧縮機18の運転能力が不足した場合、空調用制御装置21はエンジン駆動圧縮機18と電動圧縮機10の両方を運転してエンジン駆動圧縮機18の運転能力を補うように構成されている。また、電動圧縮機10の排除容積は、エンジン駆動圧縮機18の排除容積の70%以下にしている。これにより、アイドリングストップ時に車載バッテリー5が急速に放電されてしまうのを極力抑えると共に、車室22内温度を略維持して好適な車室22内の空調を実現できるように構成されている。
【0032】
以上の構成で次に本発明の自動車用空調システムの動作を説明する。尚、冷媒回路内の冷媒は、地球環境にやさしく可燃性及び毒性等を考慮して自然冷媒であるCO(二酸化炭素)が使用されるものとする。COは動作圧力が高く、流動抵抗が少ないため、平衡圧になり易く、電動圧縮機10の始動性を阻害しない。また、二段圧縮式の電動圧縮機10を採用すれば、電動圧縮機10の内部に二個以上の逆止弁を有することになるので、差圧起動が可能となる。自動車用空調システムが運転されると、空調用制御装置21は、前記走行用制御装置からの情報や図示しないセンサによって自動車1のアイドリングストップ、或いは、自動車1の低速運転時や加速運転、或いは、エンジン駆動圧縮機18の能力が不足しているか否かを判断する。
【0033】
そして、自動車1が走行してエンジン2の出力が所定の出力以上の場合、空調用制御装置21はエンジン駆動圧縮機18だけを運転(この場合、電動圧縮機10の圧縮機モータは駆動せず)する。これにより、冷媒回路中の冷媒は、エンジン駆動圧縮機18により圧縮され、吐出された高温高圧のガス冷媒は、逆止弁19を介してガスクーラ13に流入する。このとき、電動圧縮機10の出口側の配管10Aには逆止弁11を設けているので、エンジン駆動圧縮機18より吐出された高温高圧のガス冷媒が運転されていない電動圧縮機10内に逆流することがない。
【0034】
また、室外送風機12を運転する室外送風機モータ(図示せず)は、車載バッテリー5より給電されて運転されるので、室外送風機12の送風によってガスクーラ13は車室外で冷却される。そして、ガスクーラ13に流入したガス冷媒はそこで放熱して凝縮液化された後、中間熱交換器14で熱交換され、更に冷却された後、膨張弁15に至り、そこで絞られた後、蒸発器16に流入する。
【0035】
蒸発器16に流入した冷媒はそこで蒸発し、このとき周囲から熱を吸収することにより冷却作用を発揮する。冷却された車室22内の空気は室内送風機20によって車室22内に循環され、これにより車室22内は冷却されて空調が行われる。そして、蒸発器16を出た冷媒はアキュムレータ17に入り、そこで未蒸発液冷媒が気液分離された後、再度中間熱交換器14に流入し、そこで熱交換して暖められて未蒸発液冷媒がガス化され、ガス冷媒のみがエンジン駆動圧縮機18に吸い込まれ、再度エンジン駆動圧縮機18で圧縮されて吐出される冷媒サイクルを繰り返す。
【0036】
他方、空調用制御装置21は、自動車1が走行してエンジン2の出力が所定の出力以下の場合、電動圧縮機10を運転する。即ち、エンジン2の駆動トルク負荷が大きい発進時や低速時にエンジン駆動圧縮機18の運転を停止させて、車載バッテリー5からの給電で空調インバータ8により圧縮機モータを動作させ、電動圧縮機10を運転する。これにより、冷媒回路中の冷媒は、電動圧縮機10により圧縮され、吐出された高温高圧のガス冷媒は、逆止弁11を介してガスクーラ13に流入する。このとき、エンジン駆動圧縮機18の出口側の配管18Aには逆止弁19を設けているので、電動圧縮機10より吐出された高温高圧のガス冷媒がエンジン駆動圧縮機180内に逆流することがない。
【0037】
このときも、室外送風機12を運転する室外送風機モータ(図示せず)は、車載バッテリー5により給電され運転されるので、室外送風機12の送風によってガスクーラ13は車室外で冷却される。そして、ガスクーラ13に流入したガス冷媒はそこで放熱して凝縮液化された後、中間熱交換器14で熱交換し、更に冷却された後、膨張弁15に至り、そこで絞られた後、蒸発器16に流入する。
【0038】
蒸発器16に流入した冷媒はそこで蒸発し、このとき周囲から熱を吸収することにより冷却作用を発揮する。冷却された車室22内の空気は室内送風機20によって車室22内に循環され、これにより車室22内は冷却され空調が行われる。そして、蒸発器16を出た冷媒はアキュムレータ17に入り、そこで未蒸発液冷媒が気液分離された後、再度中間熱交換器14に流入し、そこで熱交換して更に暖められて未蒸発液冷媒がガス化され、ガス冷媒のみが電動圧縮機10に吸い込まれ、再度電動圧縮機10で圧縮されて吐出される冷却サイクルを繰り返す。
【0039】
そして、信号待ちの停止、或いは、渋滞での走行停止など自動車1の走行が停止し、前記走行用制御装置はアイドリングストップを実施すると、空調用制御装置21は、車載バッテリー5からの給電により前述同様に圧縮機モータを動作させ電動圧縮機10を運転する。これにより、アイドリングストップ中に車室22内温度が上昇してしまうのを防止することが可能となる。このように、自動車1のアイドリングストップ時に車載バッテリー5による電動圧縮機10の駆動だけで空調を行うことにより、燃料エンジン自動車からの排気ガスによる環境汚染を防止しつつ、好適な車室22内の空調を実現することができるようになる。
【0040】
また、自動車1の発進時、或いは、坂道走行時にはエンジン2の負荷が大きくなった場合、空調用制御装置21は走行用制御装置からの情報に基づいてエンジン駆動圧縮機18の運転を停止させ、車載バッテリー5からの給電により圧縮機モータを動作させて電動圧縮機10を運転する。これにより、自動車1の発進時、或いは、坂道走行時にエンジン2の負荷を軽減することができるので、自動車1の発進をスムースに行うことが可能となると共に、坂道走行も無理なくできて快適な走行を行うことができるようになる。従って、自動車1の発進時、或いは、坂道走行時にエンジン駆動圧縮機18の運転を停止させた場合でも車室22内の好適な空調を実現することができるようになる。
【0041】
他方、夏季などに車室22内温度が高温となってエンジン駆動圧縮機18の運転能力が不足した場合、空調用制御装置21はセンサによってエンジン駆動圧縮機18の運転能力が不足しているのを検出し(車室22内の温度上昇など)、エンジン駆動圧縮機18と電動圧縮機10の両方を運転する。即ち、エンジン駆動圧縮機18の能力が不足した際、空調用制御装置21は電動圧縮機10を運転する。これによって、冷媒はエンジン駆動圧縮機18と電動圧縮機10の双方に分流して吸い込まれ、双方で圧縮された後、吐出されて合流し、ガスクーラ13に流入することになる。これにより、エンジン駆動圧縮機18の能力不足を補うことができるようになるので効率的に車室22内の空調を行うことができるようになる。また、エンジン駆動圧縮機18の運転能力を小さくしているので、エンジン駆動圧縮機18だけの運転の通常運転時は、エンジン2の負荷も小さくなるので燃料消費率を大幅に向上させることができる。
【0042】
即ち、エンジン2で、エンジン駆動圧縮機18の能力を最大限発揮させることができ、車室内空調を効率的に行うことが可能となる。特に、外気温度が著しく高く大きな空調能力を必要とする際に、エンジン駆動圧縮機18と電動圧縮機10の両方で車室22内を空調することができるので、快適な車室22内空調を実現することができるようになる。
【0043】
尚、上記実施例に加えて、雨天の際の車窓曇りを解消するために車室内を除霜する除霜運転時にエンジン駆動圧縮機18を停止したまま、電動圧縮機10のみを運転するようにしてもよい。係る除湿運転時には負荷が少ないので、大出力のエンジン駆動圧縮機18は不要であり、且つ、電動圧縮機10によってきめ細かく負荷バランスのとれた運転を行うことができるようになR。
【0044】
また、実施例では自動車1をハイブリッド自動車で説明したが、自動車用空調システムはハイブリッド自動車に限らず、通常のエンジン(内燃機関)のみで走行する自動車に適用しても本発明は有効である。この場合にも、通常はエンジン駆動圧縮機18にて空調を行い、アイドリングストップ時、発進時、或いは、坂道走行時などに搭載された車載バッテリーにて電動圧縮機10を運転して車室22内の空調を行うことにより、前述同様の効果を得ることができる。
【0045】
【発明の効果】
以上詳述した如く本発明によれば、蓄電手段を具備した自動車において、エンジンにて駆動されるエンジン駆動圧縮機と蓄電手段からの給電により駆動される電動圧縮機とを並列に接続して構成された冷媒回路と、電動圧縮機の運転を制御する制御手段とを備え、冷媒回路の蒸発器により車室内を空調するように構成したので、例えば、請求項2の如く、制御手段により自動車のアイドリングストップにおいて電動圧縮機を運転すれば、アイドリングストップ中においても、電動圧縮機により冷媒回路内の冷媒循環を行わせ、車室内の空調を行うことができるようになる。これにより、アイドリングストップ中に車室内温度が上昇してしまう不都合を防止することが可能となり、乗車時のアイドリングストップ時に車室内環境が低下してしまうのを未然に阻止することができるようになるものである。
【0046】
また、請求項3や請求項4の如く、自動車の低速運転時及び/又は加速運転時に電動圧縮機を運転し、或いは、エンジン駆動圧縮機の能力が不足してしまう場合に電動圧縮機を運転することで、例えば低容量のエンジン駆動圧縮機を使用しながら、所要の空調能力を確保することが可能となる。これにより、自動車の大幅な燃費向上を図ることができるようになり、且つ、環境汚染問題の改善に貢献することができるようになるものである。
【0047】
また、請求項5の如く、除湿運転の際に電動圧縮機を運転することで、例えば雨天における車窓曇りを解消する際の除湿のように、必要能力が少なく大出力のエンジン駆動圧縮機が不要で、且つ、きめ細かな制御を必要とする際に、電動圧縮機で負荷とバランスがとれた運転を行うことが可能となる。
【0048】
特に、請求項6の発明の自動車用空調システムの如く、冷媒回路には冷媒として二酸化炭素を使用すれば、地球環境問題にも好適なものとなる。この場合、高温時の能力不足が懸念されるが、二つの圧縮機がお互いの能力を補完し合うので圧縮機の能力不足の問題も解消されて、空調効率の改善も図れるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動車用空調システムを備えた自動車の模式図(側面図)である。
【図2】本発明の自動車用空調システムを備えた自動車の模式図(平面図)である。
【図3】本発明の自動車用空調システムの空気調和装置の冷媒回路図である。
【符号の説明】
1 自動車
2 エンジン
3 走行用モータ
4 発電機
5 車載バッテリー
8 空調インバータ
9 空気調和装置
10 電動圧縮機
11 逆止弁
12 室外送風機
13 ガスクーラ
14 中間熱交換器
15 膨張弁
16 蒸発器
17 アキュムレータ
18 エンジン駆動圧縮機
19 逆止弁
20 室内送風機
21 空調用制御装置
22 車室

Claims (6)

  1. 蓄電手段を具備した自動車に用いられ、
    エンジンにて駆動されるエンジン駆動圧縮機と前記蓄電手段からの給電により駆動される電動圧縮機とを並列に接続して構成された冷媒回路と、前記電動圧縮機の運転を制御する制御手段とを備え、前記冷媒回路の蒸発器により車室内を空調することを特徴とする自動車用空調システム。
  2. 前記制御手段は、前記自動車のアイドリングストップにおいて前記電動圧縮機を運転することを特徴とする請求項1の自動車用空調システム。
  3. 前記制御手段は、前記自動車の低速運転時及び/又は加速運転時に前記電動圧縮機を運転することを特徴とする請求項1又は請求項2の自動車用空調システム。
  4. 前記制御手段は、前記エンジン駆動圧縮機の能力が不足する際に前記電動圧縮機を運転することを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3の自動車用空調システム。
  5. 前記制御手段は、前記車室内の除湿運転の際に前記電動圧縮機を運転することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4の自動車用空調システム。
  6. 前記冷媒回路には冷媒として二酸化炭素が使用されることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5の自動車用空調システム。
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