JP2004201135A - 高周波用配線基板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】誘電率の高い誘電体を用いた場合においても、特性に優れたフィルタを形成した配線基板と、それを容易に形成するための製造方法を提供する.
【解決手段】誘電体基板1の内部に信号伝送方向に沿って空間部4aや、表面に溝部4bを形成し、空間部4aを挟んで対向する上壁面と下壁面のうち、一方の内壁面にストリップ導体6aを、他方の内壁面にグランド導体7aを形成することによってマイクロストリップ線路8aを形成し、溝部4bの底部にストリップ導体6bを形成し、溝部4bを塞ぐようにグランド導体7bを形成することによってマイクロストリップ線路8bを形成する。
【選択図】図1
【解決手段】誘電体基板1の内部に信号伝送方向に沿って空間部4aや、表面に溝部4bを形成し、空間部4aを挟んで対向する上壁面と下壁面のうち、一方の内壁面にストリップ導体6aを、他方の内壁面にグランド導体7aを形成することによってマイクロストリップ線路8aを形成し、溝部4bの底部にストリップ導体6bを形成し、溝部4bを塞ぐようにグランド導体7bを形成することによってマイクロストリップ線路8bを形成する。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にマイクロストリップラインフィルタなどの高周波線路を内蔵した高周波用配線基板とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、セラミックスを誘電体基板材料とする配線基板は、セラミック絶縁層が多層に積層された誘電体基板の表面又は内部にメタライズ配線層が配設された構造からなり、代表的な例として、LSI等の半導体素子などを収納したパッケージが挙げられる。このようなパッケージとしては、誘電体基板材料として従来よりアルミナ等のセラミックスからなるものが多用され、近年では、機能化が要求され、低抵抗の銅メタライズ配線層との同時焼成を可能にしたガラスセラミックスなどの低温焼成型の焼結体を誘電体基板とするものも実用化されている。
【0003】
さらに最近ではさらなる高機能化が要求されインダクタンス(L成分)、キャパシタ(C成分)から構成されるフィルタを内蔵化する動きがみられる。このようなフィルタの一つとしてストリップラインフィルタを配線基板内部に形成することが例えば、特許文献1、2、3、4にて提案されている
このような誘電体に対してストリップラインを形成する従来のストリップラインフィルタのフィルタ特性は、誘電体の誘電体損、および導体の導体損が支配的である。誘電体損においては特に誘電体の誘電率の1/2乗に比例し、誘電体の誘電損失に比例するため誘電率と誘電損失は出来るだけ低いほうがよい。
【0004】
【特許文献1】
特開平14−171103号公報
【特許文献2】
特開平14−111317号公報
【特許文献3】
特開平11−214851号公報
【特許文献4】
特許第3021586号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような要求に対して、用いる誘電体の誘電率を低減するための材料の開発も進められている。例えば、特許文献4では、中空シリカなどを混入し、誘電率が2〜3のガラスセラミックスを作製したことが記載されている。
【0006】
しかしながら、従来のアルミナやガラスセラミックスでは、誘電率や誘電損失を下げるのにはいずれにしろ限界があり、上記文献4でも中空SiO2を含有せしめるためにガラスセラミックスの絶対強度が低下するなど、誘電体の誘電率を低くするには、実用的にも限定があった。
【0007】
本発明は、誘電率の高い誘電体を用いた場合においても、特性に優れたフィルタを形成した高周波用配線基板と、それを容易に形成するための製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の高周波用配線基板は、セラミック誘電体基板の内部に信号伝送方向に沿って空間部を形成し、該空間部を挟んで対向する上壁面と下壁面のうち、一方の内壁面にストリップ導体を、他方の内壁面にグランド導体を形成することによって高周波線路を形成してなることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の第2の高周波用配線基板は、セラミック誘電体基板の表面に信号伝送方向に沿って溝部を形成し、該溝部の底部にストリップ導体を形成形成し、該溝を塞ぐようにグランド導体を形成することによって高周波線路を形成してなることを特徴とするものである。
【0010】
なお、上記第1、第2の高周波用配線基板によれば、前記ストリップ導体およびグランド導体がストリップラインフィルタとして機能させることが効果的である。
【0011】
上記第1の高周波用配線基板を製造する方法としては、セラミックグリーンシートの信号伝送方向に沿って該シートを貫通して樹脂が埋め込まれてなる第1のグリーンシートと、前記第1のグリーンシートの樹脂埋設部に対応する部分に、ストリップ導体が形成された第2のグリーンシートと、前記第1のグリーンシートの樹脂埋設部部に対応する部分に、グランド導体が形成された第3のグリーンシートとを作製し、前記第1のグリーンシートを第2のグリーンシートおよび第3のグリーンシートで挟んで積層した後、これを熱処理して、前記第1のグリーンシートに埋め込まれた樹脂を分解除去して空間部を形成することを特徴とするものである。
【0012】
また、第2の高周波用配線基板を製造する方法としては、セラミックグリーンシートの信号伝送方向に沿って該シートを貫通して樹脂が埋め込まれてなる第1のグリーンシートと、前記第1のグリーンシートの樹脂埋設部に対応する部分に、ストリップ導体が形成された第2のグリーンシートと、を作製し、少なくとも前記第1のグリーンシートと第2のグリーンシートとを積層した後、これを熱処理して、前記第1のグリーンシートに埋め込まれた樹脂を分解除去して溝部を形成した後、該溝部をグランド導体によって塞いだことを特徴とする特徴とする高周波用配線基板の製造方法。
【0013】
なお、前記第1のグリーンシートは、(1a)実質的に同一の厚みのセラミックグリーンシートおよび樹脂シートを作製する工程と、(1b)前記セラミックグリーンシートの所定箇所に貫通穴を形成する工程と、(1c)前記貫通穴を形成したセラミックグリーンシートに前記樹脂シートを積層する工程と、(1d)前記セラミックグリーンシートにおける貫通穴形成部分を前記樹脂シート側から押圧することによって、前記樹脂シートの一部を前記貫通穴内に埋め込み、セラミックグリーンシートと樹脂シートと一体化する工程と、の工程(1a)〜(1d)
を経て作製されたものであることを特徴とする。
【0014】
また、前記第1のグリーンシートは、(2a)実質的に同一の厚みのセラミックグリーンシートおよび樹脂シートを作製する工程と、(2b)前記セラミックグリーンシートおよび樹脂シートを積層する工程と、(2c)前記積層体の所定箇所に前記樹脂シート側から押圧して、前記樹脂シートの押圧部分を前記セラミックグリーンシート側に移行させて、セラミックグリーンシートと樹脂シートと一体化する工程と、を経て作製されたものであってもよい。
【0015】
本発明によれば、上記構造の高周波用配線基板によって、ストリップ導体とグランド導体との間に空間を形成する、即ち、誘電率がゼロの誘電体によって形成することができるために、高周波線路の性能を高めることができ、さらにはこの線路をストリップラインフィルタとして利用することで優れたフィルタ特性を有するストリップラインフィルタを内蔵した配線基板を得ることができる。
【0016】
また、かかる高周波用配線基板を製造する方法として、基板内部への空間の形成にあたり、セラミックグリーンシートの信号伝送方向に沿って該シートを貫通して樹脂が埋め込まれてなるグリーンシートを用いることによって、他のグリーンシートとの積層時における空間形成部分の変形が抑制され、精度の高い空間を形成することができる。
【0017】
また、所定箇所に樹脂が埋め込まれたグリーンシートの形成にあたり、パンチングによって一回または二回のパンチング処理によって容易に埋め込み処理を施すことができる。しかも、パンチング処理後で、グリーンシートの貫通穴内に樹脂シートが一体的に複合化されているために、グリーンシート単体の取り扱いが容易であるとともに、複数のグリーンシート同士の積層時に空隙部内には樹脂シートが埋め込まれているために、積層時に高い圧力を印加した場合であっても、空隙部底部が加圧されることにより、空隙部底部の膨らみを発生させることなく、デラミネーションが発生しない高い積層圧力の印加が可能となる。その結果、積層体におけるデラミネーションの発生、変形、防止することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の高周波用配線基板の一例を説明するための概略断面図である。
この高周波用配線基板Hによれば、複数の誘電体層1a〜1eが積層されてセラミック誘電体基板1が形成され、その誘電体基板1における各誘電体層1a〜1eには、所定の配線回路層2が形成されている。また、誘電体層1a〜1eには回路形成のために上下の配線回路層間を電気的に接続するために、ビアホール導体3が形成されている。
【0019】
本発明によれば、この誘電体基板1の内部に、信号伝送方向に沿って空間部4aが形成されている。そして、この空間部4aを挟んで対向する上壁面には、ストリップ導体6aが、また下壁面にはグランド導体7aが形成されている。そして、このストリップ導体6aと、グランド導体7とは、電磁的な結合によってマイクロストリップ線路8aを形成している。
【0020】
また、誘電体基板1の表面には、信号伝送方向に沿って溝部4bが形成されている。そして、溝部4bの底部にはストリップ導体6bが形成され、またこの溝部4bを塞ぐようにグランド導体7bが形成されている。そして、このストリップ導体6bと、グランド導体7bとは、電磁的な結合によってマイクロストリップ線路8bを形成している。このグランド導体7bは基体7b’の表面に導体層として形成されたものを誘電体基板1aの表面に接合することによって形成される。また、このグランド導体7bは、金属板などの導体を用いてもよい。
【0021】
本発明によれば、このマイクロストリップ線路8a、8bは、ストリップ導体6a、6bと、グランド導体7a、7bとが、空間部4a、または溝部4b、即ち、誘電率が1の誘電体を介して対峠しているために、線路の伝送特性として最も良好な特性を有する。
【0022】
また、図1の高周波用配線基板Hには、必要に応じてキャビティ9が設けられ、このキャビティ9内に高周波素子10が収納され、蓋体11などによって気密に封止される。
【0023】
また、このマイクロストリップ線路8a、8bにおけるストリップ導体6a,6bは、適宜、誘電体基板1内に形成された配線回路層2やビアホール導体3と接続されることで、配線基板H内に高周波回路を形成する。本発明によれば、前記マイクロストリップ線路8a、8bをストリップラインフィルタとして機能させることが最もその伝送特性を活かす上で望ましい。なお、このフィルタは、ビアホール導体10などによって、他の配線回路層2と接続される。
【0024】
たとえば、図2のストリップラインフィルタの一例に示すように、1つの空間部4内における内壁の一方に、図2に示すようなストリップ導体6を所定の間隔で配列し、他方の内壁にグランド導体7を形成して互いに結合せしめることによってフィルタとして機能せしめることができる。この場合、複数のストリップ導体6を1つの空間部4に設ける他、個別の空間部内に設けることも可能である。なお、このフィルタは、ビアホール導体3などによって、他の配線回路層2と接続される。
【0025】
次に、本発明の高周波用配線基板を製造するための具体的な方法について図3〜図5をもとに説明する。
本発明によれば、上記配線基板における空間部4a、溝部4bおよびキャビティ9を形成するために、セラミックグリーンシートの所定箇所に形成された貫通穴内に樹脂が埋め込まれたグリーンシートと樹脂との複合体を作製する。
【0026】
このような複合体を形成する第1の方法について、図3の工程図をもとに説明する。先ず、セラミックグリーンシート11および樹脂シート12を作製する。このセラミックグリーンシート11は、その用途に応じて、その厚みは適宜設定される。例えば配線基板用の誘電体層を形成する場合、セラミックグリーンシート11の厚みは20〜400μmが適当である。また、樹脂シート12は、実質的にこのセラミックグリーンシート11と近似した厚さであることが望ましく、樹脂シート12の厚みt2は、グリーンシート11の厚みt1に対して、0.9t1〜1.1t1であることが望ましい。
【0027】
まず、セラミックグリーンシート11に対して空隙部を形成するための貫通穴13を形成する。この貫通穴13は、例えば、打ち抜き加工、スリット加工、レーザー加工のうちの1つの方法で形成できる。特に、後述する一連の作業の流れ性の点から、パンチによる打ち抜き加工が最もよい。
【0028】
図3は、打ち抜き加工による貫通穴13の形成によるものである。この貫通穴13は、図3(a)に示す様に、駆動部である上パンチ14と、グリーンシート11を支持するとともに、開口15が形成された下パンチ16により構成される打ち抜きプレスを準備し、グリーンシート11を下パンチ16上に載置し、図3(b)に示す様に、上パンチ14を下方に駆動することにより、図3(c)に示す様に、グリーンシート11に対して貫通穴13を形成する。
【0029】
次に、図3(d)に示すように、貫通穴13を形成したグリーンシート11の表面に、樹脂シート12を載置する。そして、図3(e)に示すように、上パンチ14を駆動する。この時、上パンチ14の駆動量を調整し、駆動停止位置をグリーンシート11の上面側に設定する。これによって、樹脂シート12の打ち抜きと同時に、グリーンシート11に予め形成された貫通穴13に樹脂シート12の打ち抜き部12a部を埋め込むことができる。
【0030】
その後、上パンチ14、樹脂シート12を除去することによって、図3(f)に示すように、グリーンシート11の所定箇所に形成された貫通穴13内に樹脂シート12が埋め込まれ、一体化された複合体Aを作製することができる。
(第2の方法)
次に、複合体を作製するための第2の方法について図4の工程図をもとに説明する。この図4の方法によれば、図3の方法と同様に、実質的に同一の厚みからなるセラミックグリーンシート11および樹脂シート12を作製する。
【0031】
そして、図4(a)に示すように、グリーンシート11を下パンチ16上に載置するとともに、図4(b)に示すように、セラミックグリーンシート11の上側に樹脂シート12を積層する。この時、グリーンシート11とは、後述する通り、樹脂シート12を剥離除去するために、両者は軽く接着材等で仮止めしておくことが望ましい。
【0032】
そして、図4(c)に示すように、前述した通り、上パンチ14を駆動し、上パンチ14の駆動停止位置をグリーンシート11の上面側に設定する。これによって、グリーンシート11と樹脂シート12の打ち抜きと同時に行う。
【0033】
その後、上パンチ14、樹脂シート12を剥離除去するとともに、グリーンシート1を下パンチ16から剥離することによって、図4(d)に示すように、グリーンシート11の所定箇所に形成された貫通穴13内に樹脂シート12が埋め込まれ、一体化された複合体Aを作製することができる。
【0034】
このように、本発明によれば、パンチを用いて、セラミックグリーンシート11の貫通穴13内にこのグリーンシート11と実質的に同一の厚みの樹脂シート12を埋め込んだ複合体を1つまたは2つのプレス処理にて容易に形成することができる。
【0035】
また、上記の第1の製法および第2の製法においては、工程数からは、プレス処理1回の第2の方法が、プレス処理2回の第1の方法よりも工程の簡略化に効果的であるが、第1の製法においては、セラミックグリーンシート11に対して予め貫通穴13を形成した後に樹脂シート12の一部を埋め込むために、樹脂シート12のパンチによるグリーンシート11への移行をスムーズに行うことができ、複合体における樹脂シート12とセラミックグリーンシート11との境界部分の平滑性が優れ、精度が高く、外観も良好な埋め込み処理を行うことができる。
(積層)
本発明によれば、かかる複合体を用いて、図1に示したような構造の高周波用配線基板を作製する。そこで、図5の工程図をもとに、そのセラミック基板を作製するための方法について説明する。
【0036】
図5(a)(b)に示すように、図3または図4の方法で作製されたグリーンシートと樹脂シートが複合化された複合体A1、A2、A3と、樹脂シートと複合化されていない他のグリーンシートB1、B2とともに密着液などを用いて積層一体化して積層体を作製する。この時、積層一体化にあたっては、3〜7MPaの圧力を印加することが積層不良、あるいは焼成後のデラミネーションの発生を防止する上で望ましい。
【0037】
この時、この複合体A1、A2、A3、グリーンシートB1、B2には、セラミック配線基板などへの適用を図る上で、図1の配線回路層2、ビアホール導体を形成するために、金属粉末に有機バインダ、溶剤、可塑材を添加混合して得た金属ペーストを印刷塗布して回路パターン21を形成する。また、マイクロドリルやレーザー加工によってスルーホールを形成し、スルーホール内に金属ペーストを充填することによってビアホール導体22を形成する。
【0038】
この時、本発明によれば、図1のマイクロストリップ線路8aを形成するための空間部4aが形成される複合体A3の上側に位置するグリーンシートB1の空間部形成部分23aと対向する下面部分には、ストリップ導体パターン24aが形成され、また、複合体A3の下側に位置するグリーンシートB2の空間部形成部分23aと対向する上面部分には、グランド導体パターン25aが形成される。
【0039】
また、図1のマイクロストリップ線路8bを形成するための溝部4bが形成される複合体A1の下側に位置する複合体A2の溝部形成部分23bと対向する上面部分にストリップ導体パターン24bが形成されている。
【0040】
そして、この積層体を樹脂シート12aが熱分解除去されるとともに、複合体A1〜A3、セラミックグリーンシートB1、B2が焼成、緻密化するように焼成することによって、図5(c)に示すように、樹脂シート12aを埋め込んだ部分を熱分解除去して空間部4a、溝部4b、キャビティ9を具備するセラミック基板を形成することができる。
【0041】
かかる方法においては、積層一体化にあたっては、従来のように、シート自体に大きな貫通穴13、15が樹脂シート12aで充填されているために、個々のシートにおける取り扱いが非常に容易で、シートの取り扱い時におけるシートの変形や破損などが発生することがない。
【0042】
しかも、本発明の方法によれば、高い圧力を印加しても、空隙部4a、4b、9を形成する部分に樹脂シート12aが埋め込まれているために、空隙部4a、4b、9が形成される部分の底部に対しても樹脂シート12aを介して十分に圧力が印加される。その結果、空隙部4a、4b、9を形成する底部のグリーンシートの変形や焼成後のデラミネーションの発生も抑制することができる。それによって、マイクロストリップ線路8a、8bを構成する空間部4aや溝部4b、さらにはキャビティ9を精度よく形成することができる。
【0043】
本発明において用いられるグリーンシート11は、所定の比率で調合したセラミック原料粉末に、適当な有機バインダを添加し、有機溶媒中に分散させることによりスラリーを調製し、従来周知のドクターブレード法やリップコーター法等のキャスト法により、所定の厚みのグリーンシート1を作製する。このグリーンシートの厚みは、通常、20〜400μmが適当である。
【0044】
一方、本発明において用いられる樹脂シート12は、プレスによる打ち抜き加工性、および、焼成段階における熱分解性に優れることが望ましく、良好な打ち抜き加工性を得るためには、シート中に粉末状のフィラーを添加することが望ましい。このフィラーは、焼成時における熱分解性が良好であり、特に樹脂ビーズが有効である、樹脂ビーズは、ビーズ間の凝集を防止するともに樹脂シート表面の平滑性を高める上で平均粒径が1〜20μmであることが望ましい。
【0045】
また、この樹脂ビーズは、アクリル系、スチレン系、ブチラール系の群から選ばれる少なくとも1種からなることが望ましく、特に、架橋タイプのアクリル樹脂からなることが望ましい。これは、アクリル樹脂ビーズの有機溶剤への溶解を防ぐためである。
【0046】
樹脂シート12の作製にあたっては、樹脂ビーズに100重量部に対し、水酸基やカルボキシル基を導入したアクリル系樹脂を40〜80重量部添加し、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の有機溶剤中にて分散する。尚、使用するアクリル系樹脂としては、熱分解性が優れるポリイソブチルメタクリレート系が好ましく、シートに柔軟性を与えるために可塑剤を添加してもよい。
【0047】
上記所定の組成にて作成したスラリーを従来周知のロールコーター、グラビアコーター、ブレードコーター等のコーティング方式により剥離剤処理を施したキャリアーシート上に塗布し、乾燥させることにより樹脂シート12を作製することができる。
【0048】
【実施例】
実施例1
以下に、図3、図5の高周波用配線基板の製造方法を例にして以下に具体例を説明する。
(グリーンシート作製)
平均粒径が1.8μmのホウ珪酸ガラスを60体積%と、平均粒径が2.4μmのアルミナ粉末40体積%からなるセラミック組成物100質量部に、有機バインダとしてポリイソブチルメタクリレートを12質量部、溶媒としてトルエンを54質量部の割合で混合し、ボールミルで24時間混合してスラリーを調製した。このスラリーを用いてドクターブレード法によって縦20mm×横20mm×厚さ70μmのグリーンシート11を作製した。
【0049】
また、このグリーンシート11には、平均粒径が1.5μmの銅粉末100質量部に、有機バインダとしてアクリル系樹脂を12質量部、溶媒としてテルピネオールを10質量部の割合で混合した金属ペーストを調製し、上記グリーンシート11の表面に、スクリーン印刷法により、所定のパターンに印刷塗布する。また、前記グリーンシート11にピン加工によって直径が70μmのスルーホールを形成し、スルーホール内に前記金属ペーストを充填することによってビア導体を形成した。
【0050】
このうち、空間部の内壁を形成するグリーンシート11には、適宜、ストリップ導体パターンおよびグランド導体パターンを印刷形成した。
(樹脂シート作製)
一方、樹脂シート12として、平均粒径が5μmのアクリル樹脂ビーズ100質量部に対して、有機バインダとして水酸基を導入したアクリル系樹脂を60質量部、溶媒としてトルエンを220質量部の割合で添加、混合してスラリーを調製した後、ドクターブレード法によって厚さ70μmの樹脂シート12を作製した。
【0051】
次に、グリーンシートのうち、キャビティ9を形成するためのグリーンシートA1、A2、およびマイクロストリップ線路用の空間部4aや溝部4bを形成するグリーンシートA1、A3に対して、図3に示すようなパンチング装置によって、中央部に所定の大きさのキャビティ用の貫通穴13と、マイクロストリップ線路用の貫通穴13を形成した。
【0052】
次に、各貫通穴13を形成したグリーンシート11の上に、アクリル系樹脂に可塑剤を添加した接着剤を用いて、樹脂シート12を吸着搬送装置を用いてグリーンシート11上に積層した後、パンチング装置における上パンチを下げ、上パンチの下面がグリーンシート11の表面と同一平面となるところまで下ろした。
【0053】
上パンチを上げ、グリーンシート11を確認した結果、グリーンシート11の貫通穴部分に、樹脂シート12aが埋め込まれた構造の複合体A1、A2、A3を形成した。
【0054】
次に、上記のようにして作製した複合体A1、A2、A3とともに、樹脂シート12と複合化されていない通常の配線パターンが形成されたグリーンシートB1、B2を図5(a)(b)に示すように、密着液を用いて積層した。また、積層にあたっては、積層体に対して、60℃の温度に加熱しながら、5MPaの圧力を印加した。なお、キャビティについてはその深さに応じ必要枚数を調整した。
【0055】
この加圧して積層した1つの試料について、断面を観察し、樹脂シートを埋め込んだ部分についてグリーンシート側の変形を観察した結果、グリーンシートに対しては、全く変形は認められなかった。
【0056】
次に、この積層体を250〜450℃の窒素雰囲気中で2時間、昇温加熱して樹脂シートおよび有機バインダを熱分解除去した後、さらに900℃まで昇温して焼結した。
【0057】
その結果、樹脂シートを埋め込んで部分がすべて熱分解除去され、図1に示す縦2mm×横2.7mm×深さ1.5mmのキャビティ9、縦15mm×横2mm×深さ60μmの空間部4aおよび溝部4bの内壁に幅250μm、長さ10mmのストリップ導体を具備するマイクロストリップ線路が形成された高周波用配線基板が得られた。なお、溝部4bの表面に金属板をロウ付けし、この金属板をグランドと接続することで、マイクロストリップ線路4bを形成した。
【0058】
作製したセラミック配線基板Hに対して、キャビティ9底部表面および溝部4b底部表面の平坦度を触針法によって測定した結果、0.7μm、0.8μmであり、平坦度の高い底面が形成され、基板の変形がほとんどないことが確認された。また、キャビティ9、マイクロストリップ線路4a、4b形成部分を切断し、その積層部分の状態を双眼顕微鏡で観察した結果、全く層間剥離等の発生は全く認められなかった。また、マイクロストリップ線路4a、4bの伝送特性を評価した結果、マイクロストリップ線路4aの測定周波数20GHzにおけるS21は−0.21dB、マイクロストリップ線路8bの測定周波数20GHzにおけるS21は−0.23dBといずれも良好なものであった。
【0059】
実施例2
実施例1において、複合体A1、A2、A3の作製を次のように変更した。即ち、実施例1で作製したグリーンシート11および樹脂シート12を図4に示すように、積層した後、パンチング装置における上パンチを下げ、上パンチの下面がグリーンシートの表面と同一平面となるところまで下ろした。そして、上パンチを上げ、グリーンシートを確認した結果、グリーンシートの貫通穴部分に、樹脂シート12aが埋め込まれた構造の複合体A1〜A3が形成された。
【0060】
そして、この後は、実施例1と全く同様にして、樹脂シート12と複合化されていない通常の配線パターンが形成されたグリーンシートB1、B2の延べ5層のグリーンシートを密着液を用いて積層し、60℃の温度に加熱しながら、5MPaの圧力を印加した。
【0061】
この加圧して積層した1つの試料について、樹脂シート12aを埋め込んだ部分についてグリーンシート11側の変形を観察した結果、グリーンシート11に対しては全く変形は認められなかった。
【0062】
その後、この積層体を250〜450℃の窒素雰囲気中で2時間、昇温加熱して樹脂シート12aおよび有機バインダを熱分解除去した後、さらに900℃まで昇温して焼結した結果、樹脂シートを埋め込んだ部分が熱分解除去され空間部4a、4b、9が形成されたセラミック配線基板Hが得られた。
【0063】
作製したセラミック配線基板Hに対して、キャビティ9、溝部4b表面の平坦度を触針法によって測定した結果、1μm,0.9μmであり、平坦度の高い底面が形成され、基板の変形がほとんどないことが確認された。また、キャビティ9、マイクロストリップ線路形成部分を切断し、その積層部分の状態を双眼顕微鏡で観察した結果、全く層間剥離等の発生は全く認められなかった。また、マイクロストリップ線路8a、8bの伝送特性を評価した結果、マイクロストリップ線路8aが測定周波数60GHzにおけるS21は−0.36dBと良好なものであった。マイクロストリップ線路8bが測定周波数60GHzにおけるS21は−0.35dBと良好なものであった。
【0064】
比較例
実施例1において、マイクロストリップ線路8a、8bの形成にあたり、空間部4a、溝部4bを形成しない以外は、全く同様にして、高周波用配線基板Hを作製した。
【0065】
そして、空間部4aを有しないマイクロストリップ線路の伝送特性について実施例1と同様に評価を行った結果、マイクロストリップ線路8aに代わる線路では測定周波数20GHzでS21が−0.53dB、マイクロストリップ線路8bに代わる線路ではS21が−0.55dB、また、測定周波数60GHzでS21が−1.08dB、マイクロストリップ線路8bに代わる線路ではS21が−1.10dBといずれも本発明品よりも劣るものであった。
【0066】
作製したセラミック配線基板に対して、空隙部の底部表面の平坦度を触針法によって測定した結果、6μmであり、平坦度の悪い底面が形成され、基板の変形が認められた。また、空隙部形成部分を切断し、その積層部分の状態を双眼顕微鏡で観察した結果、層間剥離等の発生は全く認められなかった。
【0067】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、配線基板の内部や表面に、空間部や溝部を形成し、ストリップ導体およびグランド導体を対峠させることによって、線路の伝送特性を高めることができる結果、誘電率の高い誘電体を用いた場合においてもフィルタとしての機能の向上を図ることができる。しかも、かかる構造は、セラミックグリーンシートと樹脂シートが複合された複合体を用いることで非常に容易に形成することができる。
【0068】
しかも、この配線基板の製造に作製された複合体は、空隙部を有するセラミック基板を形成する場合のセラミック基板の変形や層間剥離(デラミネーション)などの発生を抑制し、空隙部の底面における平坦度を高め、空隙部により低誘電率、低損失なストリップラインフィルタを形成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高周波用配線基板の一例を説明するための概略断面図である。
【図2】本発明におけるストリップラインフィルタの回路の一例を説明するための回路図であり、(a)は平面図、(b)はx−x断面図である。
【図3】本発明における複合体の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図4】本発明における複合体の製造方法の他の例を説明するための工程図である。
【図5】本発明の複合体を用いた図1の高周波用配線基板の製造方法を説明するための工程図である。
【符号の説明】
1 誘電体基板
2 配線回路層
3 ビアホール導体
4a 空間部
4b 溝部
6a、6b ストリップ導体
7a,7b グランド導体
8a,8b マイクロストリップ線路
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にマイクロストリップラインフィルタなどの高周波線路を内蔵した高周波用配線基板とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、セラミックスを誘電体基板材料とする配線基板は、セラミック絶縁層が多層に積層された誘電体基板の表面又は内部にメタライズ配線層が配設された構造からなり、代表的な例として、LSI等の半導体素子などを収納したパッケージが挙げられる。このようなパッケージとしては、誘電体基板材料として従来よりアルミナ等のセラミックスからなるものが多用され、近年では、機能化が要求され、低抵抗の銅メタライズ配線層との同時焼成を可能にしたガラスセラミックスなどの低温焼成型の焼結体を誘電体基板とするものも実用化されている。
【0003】
さらに最近ではさらなる高機能化が要求されインダクタンス(L成分)、キャパシタ(C成分)から構成されるフィルタを内蔵化する動きがみられる。このようなフィルタの一つとしてストリップラインフィルタを配線基板内部に形成することが例えば、特許文献1、2、3、4にて提案されている
このような誘電体に対してストリップラインを形成する従来のストリップラインフィルタのフィルタ特性は、誘電体の誘電体損、および導体の導体損が支配的である。誘電体損においては特に誘電体の誘電率の1/2乗に比例し、誘電体の誘電損失に比例するため誘電率と誘電損失は出来るだけ低いほうがよい。
【0004】
【特許文献1】
特開平14−171103号公報
【特許文献2】
特開平14−111317号公報
【特許文献3】
特開平11−214851号公報
【特許文献4】
特許第3021586号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような要求に対して、用いる誘電体の誘電率を低減するための材料の開発も進められている。例えば、特許文献4では、中空シリカなどを混入し、誘電率が2〜3のガラスセラミックスを作製したことが記載されている。
【0006】
しかしながら、従来のアルミナやガラスセラミックスでは、誘電率や誘電損失を下げるのにはいずれにしろ限界があり、上記文献4でも中空SiO2を含有せしめるためにガラスセラミックスの絶対強度が低下するなど、誘電体の誘電率を低くするには、実用的にも限定があった。
【0007】
本発明は、誘電率の高い誘電体を用いた場合においても、特性に優れたフィルタを形成した高周波用配線基板と、それを容易に形成するための製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の高周波用配線基板は、セラミック誘電体基板の内部に信号伝送方向に沿って空間部を形成し、該空間部を挟んで対向する上壁面と下壁面のうち、一方の内壁面にストリップ導体を、他方の内壁面にグランド導体を形成することによって高周波線路を形成してなることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の第2の高周波用配線基板は、セラミック誘電体基板の表面に信号伝送方向に沿って溝部を形成し、該溝部の底部にストリップ導体を形成形成し、該溝を塞ぐようにグランド導体を形成することによって高周波線路を形成してなることを特徴とするものである。
【0010】
なお、上記第1、第2の高周波用配線基板によれば、前記ストリップ導体およびグランド導体がストリップラインフィルタとして機能させることが効果的である。
【0011】
上記第1の高周波用配線基板を製造する方法としては、セラミックグリーンシートの信号伝送方向に沿って該シートを貫通して樹脂が埋め込まれてなる第1のグリーンシートと、前記第1のグリーンシートの樹脂埋設部に対応する部分に、ストリップ導体が形成された第2のグリーンシートと、前記第1のグリーンシートの樹脂埋設部部に対応する部分に、グランド導体が形成された第3のグリーンシートとを作製し、前記第1のグリーンシートを第2のグリーンシートおよび第3のグリーンシートで挟んで積層した後、これを熱処理して、前記第1のグリーンシートに埋め込まれた樹脂を分解除去して空間部を形成することを特徴とするものである。
【0012】
また、第2の高周波用配線基板を製造する方法としては、セラミックグリーンシートの信号伝送方向に沿って該シートを貫通して樹脂が埋め込まれてなる第1のグリーンシートと、前記第1のグリーンシートの樹脂埋設部に対応する部分に、ストリップ導体が形成された第2のグリーンシートと、を作製し、少なくとも前記第1のグリーンシートと第2のグリーンシートとを積層した後、これを熱処理して、前記第1のグリーンシートに埋め込まれた樹脂を分解除去して溝部を形成した後、該溝部をグランド導体によって塞いだことを特徴とする特徴とする高周波用配線基板の製造方法。
【0013】
なお、前記第1のグリーンシートは、(1a)実質的に同一の厚みのセラミックグリーンシートおよび樹脂シートを作製する工程と、(1b)前記セラミックグリーンシートの所定箇所に貫通穴を形成する工程と、(1c)前記貫通穴を形成したセラミックグリーンシートに前記樹脂シートを積層する工程と、(1d)前記セラミックグリーンシートにおける貫通穴形成部分を前記樹脂シート側から押圧することによって、前記樹脂シートの一部を前記貫通穴内に埋め込み、セラミックグリーンシートと樹脂シートと一体化する工程と、の工程(1a)〜(1d)
を経て作製されたものであることを特徴とする。
【0014】
また、前記第1のグリーンシートは、(2a)実質的に同一の厚みのセラミックグリーンシートおよび樹脂シートを作製する工程と、(2b)前記セラミックグリーンシートおよび樹脂シートを積層する工程と、(2c)前記積層体の所定箇所に前記樹脂シート側から押圧して、前記樹脂シートの押圧部分を前記セラミックグリーンシート側に移行させて、セラミックグリーンシートと樹脂シートと一体化する工程と、を経て作製されたものであってもよい。
【0015】
本発明によれば、上記構造の高周波用配線基板によって、ストリップ導体とグランド導体との間に空間を形成する、即ち、誘電率がゼロの誘電体によって形成することができるために、高周波線路の性能を高めることができ、さらにはこの線路をストリップラインフィルタとして利用することで優れたフィルタ特性を有するストリップラインフィルタを内蔵した配線基板を得ることができる。
【0016】
また、かかる高周波用配線基板を製造する方法として、基板内部への空間の形成にあたり、セラミックグリーンシートの信号伝送方向に沿って該シートを貫通して樹脂が埋め込まれてなるグリーンシートを用いることによって、他のグリーンシートとの積層時における空間形成部分の変形が抑制され、精度の高い空間を形成することができる。
【0017】
また、所定箇所に樹脂が埋め込まれたグリーンシートの形成にあたり、パンチングによって一回または二回のパンチング処理によって容易に埋め込み処理を施すことができる。しかも、パンチング処理後で、グリーンシートの貫通穴内に樹脂シートが一体的に複合化されているために、グリーンシート単体の取り扱いが容易であるとともに、複数のグリーンシート同士の積層時に空隙部内には樹脂シートが埋め込まれているために、積層時に高い圧力を印加した場合であっても、空隙部底部が加圧されることにより、空隙部底部の膨らみを発生させることなく、デラミネーションが発生しない高い積層圧力の印加が可能となる。その結果、積層体におけるデラミネーションの発生、変形、防止することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の高周波用配線基板の一例を説明するための概略断面図である。
この高周波用配線基板Hによれば、複数の誘電体層1a〜1eが積層されてセラミック誘電体基板1が形成され、その誘電体基板1における各誘電体層1a〜1eには、所定の配線回路層2が形成されている。また、誘電体層1a〜1eには回路形成のために上下の配線回路層間を電気的に接続するために、ビアホール導体3が形成されている。
【0019】
本発明によれば、この誘電体基板1の内部に、信号伝送方向に沿って空間部4aが形成されている。そして、この空間部4aを挟んで対向する上壁面には、ストリップ導体6aが、また下壁面にはグランド導体7aが形成されている。そして、このストリップ導体6aと、グランド導体7とは、電磁的な結合によってマイクロストリップ線路8aを形成している。
【0020】
また、誘電体基板1の表面には、信号伝送方向に沿って溝部4bが形成されている。そして、溝部4bの底部にはストリップ導体6bが形成され、またこの溝部4bを塞ぐようにグランド導体7bが形成されている。そして、このストリップ導体6bと、グランド導体7bとは、電磁的な結合によってマイクロストリップ線路8bを形成している。このグランド導体7bは基体7b’の表面に導体層として形成されたものを誘電体基板1aの表面に接合することによって形成される。また、このグランド導体7bは、金属板などの導体を用いてもよい。
【0021】
本発明によれば、このマイクロストリップ線路8a、8bは、ストリップ導体6a、6bと、グランド導体7a、7bとが、空間部4a、または溝部4b、即ち、誘電率が1の誘電体を介して対峠しているために、線路の伝送特性として最も良好な特性を有する。
【0022】
また、図1の高周波用配線基板Hには、必要に応じてキャビティ9が設けられ、このキャビティ9内に高周波素子10が収納され、蓋体11などによって気密に封止される。
【0023】
また、このマイクロストリップ線路8a、8bにおけるストリップ導体6a,6bは、適宜、誘電体基板1内に形成された配線回路層2やビアホール導体3と接続されることで、配線基板H内に高周波回路を形成する。本発明によれば、前記マイクロストリップ線路8a、8bをストリップラインフィルタとして機能させることが最もその伝送特性を活かす上で望ましい。なお、このフィルタは、ビアホール導体10などによって、他の配線回路層2と接続される。
【0024】
たとえば、図2のストリップラインフィルタの一例に示すように、1つの空間部4内における内壁の一方に、図2に示すようなストリップ導体6を所定の間隔で配列し、他方の内壁にグランド導体7を形成して互いに結合せしめることによってフィルタとして機能せしめることができる。この場合、複数のストリップ導体6を1つの空間部4に設ける他、個別の空間部内に設けることも可能である。なお、このフィルタは、ビアホール導体3などによって、他の配線回路層2と接続される。
【0025】
次に、本発明の高周波用配線基板を製造するための具体的な方法について図3〜図5をもとに説明する。
本発明によれば、上記配線基板における空間部4a、溝部4bおよびキャビティ9を形成するために、セラミックグリーンシートの所定箇所に形成された貫通穴内に樹脂が埋め込まれたグリーンシートと樹脂との複合体を作製する。
【0026】
このような複合体を形成する第1の方法について、図3の工程図をもとに説明する。先ず、セラミックグリーンシート11および樹脂シート12を作製する。このセラミックグリーンシート11は、その用途に応じて、その厚みは適宜設定される。例えば配線基板用の誘電体層を形成する場合、セラミックグリーンシート11の厚みは20〜400μmが適当である。また、樹脂シート12は、実質的にこのセラミックグリーンシート11と近似した厚さであることが望ましく、樹脂シート12の厚みt2は、グリーンシート11の厚みt1に対して、0.9t1〜1.1t1であることが望ましい。
【0027】
まず、セラミックグリーンシート11に対して空隙部を形成するための貫通穴13を形成する。この貫通穴13は、例えば、打ち抜き加工、スリット加工、レーザー加工のうちの1つの方法で形成できる。特に、後述する一連の作業の流れ性の点から、パンチによる打ち抜き加工が最もよい。
【0028】
図3は、打ち抜き加工による貫通穴13の形成によるものである。この貫通穴13は、図3(a)に示す様に、駆動部である上パンチ14と、グリーンシート11を支持するとともに、開口15が形成された下パンチ16により構成される打ち抜きプレスを準備し、グリーンシート11を下パンチ16上に載置し、図3(b)に示す様に、上パンチ14を下方に駆動することにより、図3(c)に示す様に、グリーンシート11に対して貫通穴13を形成する。
【0029】
次に、図3(d)に示すように、貫通穴13を形成したグリーンシート11の表面に、樹脂シート12を載置する。そして、図3(e)に示すように、上パンチ14を駆動する。この時、上パンチ14の駆動量を調整し、駆動停止位置をグリーンシート11の上面側に設定する。これによって、樹脂シート12の打ち抜きと同時に、グリーンシート11に予め形成された貫通穴13に樹脂シート12の打ち抜き部12a部を埋め込むことができる。
【0030】
その後、上パンチ14、樹脂シート12を除去することによって、図3(f)に示すように、グリーンシート11の所定箇所に形成された貫通穴13内に樹脂シート12が埋め込まれ、一体化された複合体Aを作製することができる。
(第2の方法)
次に、複合体を作製するための第2の方法について図4の工程図をもとに説明する。この図4の方法によれば、図3の方法と同様に、実質的に同一の厚みからなるセラミックグリーンシート11および樹脂シート12を作製する。
【0031】
そして、図4(a)に示すように、グリーンシート11を下パンチ16上に載置するとともに、図4(b)に示すように、セラミックグリーンシート11の上側に樹脂シート12を積層する。この時、グリーンシート11とは、後述する通り、樹脂シート12を剥離除去するために、両者は軽く接着材等で仮止めしておくことが望ましい。
【0032】
そして、図4(c)に示すように、前述した通り、上パンチ14を駆動し、上パンチ14の駆動停止位置をグリーンシート11の上面側に設定する。これによって、グリーンシート11と樹脂シート12の打ち抜きと同時に行う。
【0033】
その後、上パンチ14、樹脂シート12を剥離除去するとともに、グリーンシート1を下パンチ16から剥離することによって、図4(d)に示すように、グリーンシート11の所定箇所に形成された貫通穴13内に樹脂シート12が埋め込まれ、一体化された複合体Aを作製することができる。
【0034】
このように、本発明によれば、パンチを用いて、セラミックグリーンシート11の貫通穴13内にこのグリーンシート11と実質的に同一の厚みの樹脂シート12を埋め込んだ複合体を1つまたは2つのプレス処理にて容易に形成することができる。
【0035】
また、上記の第1の製法および第2の製法においては、工程数からは、プレス処理1回の第2の方法が、プレス処理2回の第1の方法よりも工程の簡略化に効果的であるが、第1の製法においては、セラミックグリーンシート11に対して予め貫通穴13を形成した後に樹脂シート12の一部を埋め込むために、樹脂シート12のパンチによるグリーンシート11への移行をスムーズに行うことができ、複合体における樹脂シート12とセラミックグリーンシート11との境界部分の平滑性が優れ、精度が高く、外観も良好な埋め込み処理を行うことができる。
(積層)
本発明によれば、かかる複合体を用いて、図1に示したような構造の高周波用配線基板を作製する。そこで、図5の工程図をもとに、そのセラミック基板を作製するための方法について説明する。
【0036】
図5(a)(b)に示すように、図3または図4の方法で作製されたグリーンシートと樹脂シートが複合化された複合体A1、A2、A3と、樹脂シートと複合化されていない他のグリーンシートB1、B2とともに密着液などを用いて積層一体化して積層体を作製する。この時、積層一体化にあたっては、3〜7MPaの圧力を印加することが積層不良、あるいは焼成後のデラミネーションの発生を防止する上で望ましい。
【0037】
この時、この複合体A1、A2、A3、グリーンシートB1、B2には、セラミック配線基板などへの適用を図る上で、図1の配線回路層2、ビアホール導体を形成するために、金属粉末に有機バインダ、溶剤、可塑材を添加混合して得た金属ペーストを印刷塗布して回路パターン21を形成する。また、マイクロドリルやレーザー加工によってスルーホールを形成し、スルーホール内に金属ペーストを充填することによってビアホール導体22を形成する。
【0038】
この時、本発明によれば、図1のマイクロストリップ線路8aを形成するための空間部4aが形成される複合体A3の上側に位置するグリーンシートB1の空間部形成部分23aと対向する下面部分には、ストリップ導体パターン24aが形成され、また、複合体A3の下側に位置するグリーンシートB2の空間部形成部分23aと対向する上面部分には、グランド導体パターン25aが形成される。
【0039】
また、図1のマイクロストリップ線路8bを形成するための溝部4bが形成される複合体A1の下側に位置する複合体A2の溝部形成部分23bと対向する上面部分にストリップ導体パターン24bが形成されている。
【0040】
そして、この積層体を樹脂シート12aが熱分解除去されるとともに、複合体A1〜A3、セラミックグリーンシートB1、B2が焼成、緻密化するように焼成することによって、図5(c)に示すように、樹脂シート12aを埋め込んだ部分を熱分解除去して空間部4a、溝部4b、キャビティ9を具備するセラミック基板を形成することができる。
【0041】
かかる方法においては、積層一体化にあたっては、従来のように、シート自体に大きな貫通穴13、15が樹脂シート12aで充填されているために、個々のシートにおける取り扱いが非常に容易で、シートの取り扱い時におけるシートの変形や破損などが発生することがない。
【0042】
しかも、本発明の方法によれば、高い圧力を印加しても、空隙部4a、4b、9を形成する部分に樹脂シート12aが埋め込まれているために、空隙部4a、4b、9が形成される部分の底部に対しても樹脂シート12aを介して十分に圧力が印加される。その結果、空隙部4a、4b、9を形成する底部のグリーンシートの変形や焼成後のデラミネーションの発生も抑制することができる。それによって、マイクロストリップ線路8a、8bを構成する空間部4aや溝部4b、さらにはキャビティ9を精度よく形成することができる。
【0043】
本発明において用いられるグリーンシート11は、所定の比率で調合したセラミック原料粉末に、適当な有機バインダを添加し、有機溶媒中に分散させることによりスラリーを調製し、従来周知のドクターブレード法やリップコーター法等のキャスト法により、所定の厚みのグリーンシート1を作製する。このグリーンシートの厚みは、通常、20〜400μmが適当である。
【0044】
一方、本発明において用いられる樹脂シート12は、プレスによる打ち抜き加工性、および、焼成段階における熱分解性に優れることが望ましく、良好な打ち抜き加工性を得るためには、シート中に粉末状のフィラーを添加することが望ましい。このフィラーは、焼成時における熱分解性が良好であり、特に樹脂ビーズが有効である、樹脂ビーズは、ビーズ間の凝集を防止するともに樹脂シート表面の平滑性を高める上で平均粒径が1〜20μmであることが望ましい。
【0045】
また、この樹脂ビーズは、アクリル系、スチレン系、ブチラール系の群から選ばれる少なくとも1種からなることが望ましく、特に、架橋タイプのアクリル樹脂からなることが望ましい。これは、アクリル樹脂ビーズの有機溶剤への溶解を防ぐためである。
【0046】
樹脂シート12の作製にあたっては、樹脂ビーズに100重量部に対し、水酸基やカルボキシル基を導入したアクリル系樹脂を40〜80重量部添加し、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の有機溶剤中にて分散する。尚、使用するアクリル系樹脂としては、熱分解性が優れるポリイソブチルメタクリレート系が好ましく、シートに柔軟性を与えるために可塑剤を添加してもよい。
【0047】
上記所定の組成にて作成したスラリーを従来周知のロールコーター、グラビアコーター、ブレードコーター等のコーティング方式により剥離剤処理を施したキャリアーシート上に塗布し、乾燥させることにより樹脂シート12を作製することができる。
【0048】
【実施例】
実施例1
以下に、図3、図5の高周波用配線基板の製造方法を例にして以下に具体例を説明する。
(グリーンシート作製)
平均粒径が1.8μmのホウ珪酸ガラスを60体積%と、平均粒径が2.4μmのアルミナ粉末40体積%からなるセラミック組成物100質量部に、有機バインダとしてポリイソブチルメタクリレートを12質量部、溶媒としてトルエンを54質量部の割合で混合し、ボールミルで24時間混合してスラリーを調製した。このスラリーを用いてドクターブレード法によって縦20mm×横20mm×厚さ70μmのグリーンシート11を作製した。
【0049】
また、このグリーンシート11には、平均粒径が1.5μmの銅粉末100質量部に、有機バインダとしてアクリル系樹脂を12質量部、溶媒としてテルピネオールを10質量部の割合で混合した金属ペーストを調製し、上記グリーンシート11の表面に、スクリーン印刷法により、所定のパターンに印刷塗布する。また、前記グリーンシート11にピン加工によって直径が70μmのスルーホールを形成し、スルーホール内に前記金属ペーストを充填することによってビア導体を形成した。
【0050】
このうち、空間部の内壁を形成するグリーンシート11には、適宜、ストリップ導体パターンおよびグランド導体パターンを印刷形成した。
(樹脂シート作製)
一方、樹脂シート12として、平均粒径が5μmのアクリル樹脂ビーズ100質量部に対して、有機バインダとして水酸基を導入したアクリル系樹脂を60質量部、溶媒としてトルエンを220質量部の割合で添加、混合してスラリーを調製した後、ドクターブレード法によって厚さ70μmの樹脂シート12を作製した。
【0051】
次に、グリーンシートのうち、キャビティ9を形成するためのグリーンシートA1、A2、およびマイクロストリップ線路用の空間部4aや溝部4bを形成するグリーンシートA1、A3に対して、図3に示すようなパンチング装置によって、中央部に所定の大きさのキャビティ用の貫通穴13と、マイクロストリップ線路用の貫通穴13を形成した。
【0052】
次に、各貫通穴13を形成したグリーンシート11の上に、アクリル系樹脂に可塑剤を添加した接着剤を用いて、樹脂シート12を吸着搬送装置を用いてグリーンシート11上に積層した後、パンチング装置における上パンチを下げ、上パンチの下面がグリーンシート11の表面と同一平面となるところまで下ろした。
【0053】
上パンチを上げ、グリーンシート11を確認した結果、グリーンシート11の貫通穴部分に、樹脂シート12aが埋め込まれた構造の複合体A1、A2、A3を形成した。
【0054】
次に、上記のようにして作製した複合体A1、A2、A3とともに、樹脂シート12と複合化されていない通常の配線パターンが形成されたグリーンシートB1、B2を図5(a)(b)に示すように、密着液を用いて積層した。また、積層にあたっては、積層体に対して、60℃の温度に加熱しながら、5MPaの圧力を印加した。なお、キャビティについてはその深さに応じ必要枚数を調整した。
【0055】
この加圧して積層した1つの試料について、断面を観察し、樹脂シートを埋め込んだ部分についてグリーンシート側の変形を観察した結果、グリーンシートに対しては、全く変形は認められなかった。
【0056】
次に、この積層体を250〜450℃の窒素雰囲気中で2時間、昇温加熱して樹脂シートおよび有機バインダを熱分解除去した後、さらに900℃まで昇温して焼結した。
【0057】
その結果、樹脂シートを埋め込んで部分がすべて熱分解除去され、図1に示す縦2mm×横2.7mm×深さ1.5mmのキャビティ9、縦15mm×横2mm×深さ60μmの空間部4aおよび溝部4bの内壁に幅250μm、長さ10mmのストリップ導体を具備するマイクロストリップ線路が形成された高周波用配線基板が得られた。なお、溝部4bの表面に金属板をロウ付けし、この金属板をグランドと接続することで、マイクロストリップ線路4bを形成した。
【0058】
作製したセラミック配線基板Hに対して、キャビティ9底部表面および溝部4b底部表面の平坦度を触針法によって測定した結果、0.7μm、0.8μmであり、平坦度の高い底面が形成され、基板の変形がほとんどないことが確認された。また、キャビティ9、マイクロストリップ線路4a、4b形成部分を切断し、その積層部分の状態を双眼顕微鏡で観察した結果、全く層間剥離等の発生は全く認められなかった。また、マイクロストリップ線路4a、4bの伝送特性を評価した結果、マイクロストリップ線路4aの測定周波数20GHzにおけるS21は−0.21dB、マイクロストリップ線路8bの測定周波数20GHzにおけるS21は−0.23dBといずれも良好なものであった。
【0059】
実施例2
実施例1において、複合体A1、A2、A3の作製を次のように変更した。即ち、実施例1で作製したグリーンシート11および樹脂シート12を図4に示すように、積層した後、パンチング装置における上パンチを下げ、上パンチの下面がグリーンシートの表面と同一平面となるところまで下ろした。そして、上パンチを上げ、グリーンシートを確認した結果、グリーンシートの貫通穴部分に、樹脂シート12aが埋め込まれた構造の複合体A1〜A3が形成された。
【0060】
そして、この後は、実施例1と全く同様にして、樹脂シート12と複合化されていない通常の配線パターンが形成されたグリーンシートB1、B2の延べ5層のグリーンシートを密着液を用いて積層し、60℃の温度に加熱しながら、5MPaの圧力を印加した。
【0061】
この加圧して積層した1つの試料について、樹脂シート12aを埋め込んだ部分についてグリーンシート11側の変形を観察した結果、グリーンシート11に対しては全く変形は認められなかった。
【0062】
その後、この積層体を250〜450℃の窒素雰囲気中で2時間、昇温加熱して樹脂シート12aおよび有機バインダを熱分解除去した後、さらに900℃まで昇温して焼結した結果、樹脂シートを埋め込んだ部分が熱分解除去され空間部4a、4b、9が形成されたセラミック配線基板Hが得られた。
【0063】
作製したセラミック配線基板Hに対して、キャビティ9、溝部4b表面の平坦度を触針法によって測定した結果、1μm,0.9μmであり、平坦度の高い底面が形成され、基板の変形がほとんどないことが確認された。また、キャビティ9、マイクロストリップ線路形成部分を切断し、その積層部分の状態を双眼顕微鏡で観察した結果、全く層間剥離等の発生は全く認められなかった。また、マイクロストリップ線路8a、8bの伝送特性を評価した結果、マイクロストリップ線路8aが測定周波数60GHzにおけるS21は−0.36dBと良好なものであった。マイクロストリップ線路8bが測定周波数60GHzにおけるS21は−0.35dBと良好なものであった。
【0064】
比較例
実施例1において、マイクロストリップ線路8a、8bの形成にあたり、空間部4a、溝部4bを形成しない以外は、全く同様にして、高周波用配線基板Hを作製した。
【0065】
そして、空間部4aを有しないマイクロストリップ線路の伝送特性について実施例1と同様に評価を行った結果、マイクロストリップ線路8aに代わる線路では測定周波数20GHzでS21が−0.53dB、マイクロストリップ線路8bに代わる線路ではS21が−0.55dB、また、測定周波数60GHzでS21が−1.08dB、マイクロストリップ線路8bに代わる線路ではS21が−1.10dBといずれも本発明品よりも劣るものであった。
【0066】
作製したセラミック配線基板に対して、空隙部の底部表面の平坦度を触針法によって測定した結果、6μmであり、平坦度の悪い底面が形成され、基板の変形が認められた。また、空隙部形成部分を切断し、その積層部分の状態を双眼顕微鏡で観察した結果、層間剥離等の発生は全く認められなかった。
【0067】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、配線基板の内部や表面に、空間部や溝部を形成し、ストリップ導体およびグランド導体を対峠させることによって、線路の伝送特性を高めることができる結果、誘電率の高い誘電体を用いた場合においてもフィルタとしての機能の向上を図ることができる。しかも、かかる構造は、セラミックグリーンシートと樹脂シートが複合された複合体を用いることで非常に容易に形成することができる。
【0068】
しかも、この配線基板の製造に作製された複合体は、空隙部を有するセラミック基板を形成する場合のセラミック基板の変形や層間剥離(デラミネーション)などの発生を抑制し、空隙部の底面における平坦度を高め、空隙部により低誘電率、低損失なストリップラインフィルタを形成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高周波用配線基板の一例を説明するための概略断面図である。
【図2】本発明におけるストリップラインフィルタの回路の一例を説明するための回路図であり、(a)は平面図、(b)はx−x断面図である。
【図3】本発明における複合体の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図4】本発明における複合体の製造方法の他の例を説明するための工程図である。
【図5】本発明の複合体を用いた図1の高周波用配線基板の製造方法を説明するための工程図である。
【符号の説明】
1 誘電体基板
2 配線回路層
3 ビアホール導体
4a 空間部
4b 溝部
6a、6b ストリップ導体
7a,7b グランド導体
8a,8b マイクロストリップ線路
Claims (7)
- セラミック誘電体基板の内部に信号伝送方向に沿って空間部を形成し、該空間部を挟んで対向する上壁面と下壁面のうち、一方の内壁面にストリップ導体を、他方の内壁面にグランド導体を形成することによって高周波線路を形成してなることを特徴とする高周波用配線基板。
- セラミック誘電体基板の表面に信号伝送方向に沿って溝部を形成し、該溝部の底部にストリップ導体を形成し、該溝を塞ぐようにグランド導体を形成することによって高周波線路を形成してなることを特徴とする高周波用配線基板。
- 前記ストリップ導体およびグランド導体がストリップラインフィルタとして機能することを特徴とする請求項1または請求項2記載の高周波用配線基板。
- セラミックグリーンシートの信号伝送方向に沿って該シートを貫通して樹脂が埋め込まれてなる第1のグリーンシートと、前記第1のグリーンシートの樹脂埋設部に対応する部分に、ストリップ導体が形成された第2のグリーンシートと、前記第1のグリーンシートの樹脂埋設部部に対応する部分に、グランド導体が形成された第3のグリーンシートとを作製し、前記第1のグリーンシートを第2のグリーンシートおよび第3のグリーンシートで挟んで積層した後、これを熱処理して、前記第1のグリーンシートに埋め込まれた樹脂を分解除去して空間部を形成することを特徴とする高周波用配線基板の製造方法。
- セラミックグリーンシートの信号伝送方向に沿って該シートを貫通して樹脂が埋め込まれてなる第1のグリーンシートと、前記第1のグリーンシートの樹脂埋設部に対応する部分に、ストリップ導体が形成された第2のグリーンシートと、を作製し、少なくとも前記第1のグリーンシートと第2のグリーンシートとを積層した後、これを熱処理して、前記第1のグリーンシートに埋め込まれた樹脂を分解除去して溝部を形成した後、該溝部を塞ぐように、グランド導体を形成したことを特徴とする特徴とする高周波用配線基板の製造方法。
- 前記第1のグリーンシートが、(1a)実質的に同一の厚みのセラミックグリーンシートおよび樹脂シートを作製する工程と、(1b)前記セラミックグリーンシートの所定箇所に貫通穴を形成する工程と、(1c)前記貫通穴を形成したセラミックグリーンシートに前記樹脂シートを積層する工程と、(1d)前記セラミックグリーンシートにおける貫通穴形成部分を前記樹脂シート側から押圧することによって、前記樹脂シートの一部を前記貫通穴内に埋め込み、セラミックグリーンシートと樹脂シートと一体化する工程と、の工程(1a)〜(1d)
を経て作製されたものである請求項4または請求項5記載の高周波用配線基板の製造方法。 - 前記第1のグリーンシートが、(2a)実質的に同一の厚みのセラミックグリーンシートおよび樹脂シートを作製する工程と、(2b)前記セラミックグリーンシートおよび樹脂シートを積層する工程と、(2c)前記積層体の所定箇所に前記樹脂シート側から押圧して、前記樹脂シートの押圧部分を前記セラミックグリーンシート側に移行させて、セラミックグリーンシートと樹脂シートと一体化する工程と、を経て作製されたものである請求項4または請求項5記載の高周波用配線基板の製造方法。
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