JP2003003240A - 穴拡げ性及びhaz部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法 - Google Patents

穴拡げ性及びhaz部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法

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JP2003003240A
JP2003003240A JP2001185784A JP2001185784A JP2003003240A JP 2003003240 A JP2003003240 A JP 2003003240A JP 2001185784 A JP2001185784 A JP 2001185784A JP 2001185784 A JP2001185784 A JP 2001185784A JP 2003003240 A JP2003003240 A JP 2003003240A
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Kaoru Kawasaki
薫 川崎
Takashi Sawai
隆 澤井
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 足回り部材に要求される厳しい加工性に耐え
る穴拡げ性及び伸びフランジ性と、アーク溶接後のHAZ
部疲労特性に優れた高強度鋼板及びその製造方法を提供
する。 【解決手段】 鋼中に含まれる介在物量と、熱延板で形
成される組織としては、フェライトと、ベイナイトを主
体とする第二相からなり、重量比で、C:0.03〜0.08%、
Si:0.1〜2%、Mn:0.5〜3% 、S:0.0005〜0.0030%を含
み、P:0.02%以下、N:0.0035%以下、O:0.0035%以下で
あり、さらにMgを0.0005〜0.02%添加し、残部Fe及び不
可避的不純物元素からなる鋼を連続鋳造にてスラブとし
た後、再加熱あるいは鋳造後直ちに粗圧延を実施し、Ar
3変態点以上の温度域で仕上圧延を終了させ、巻取温
度:400〜550℃とすることを特徴とする穴拡げ性及びHA
Z部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱延鋼板及びその
製造方法に関するものであり、詳しくは自動車足廻り部
材に使用される高強度熱延鋼板において、溶接後のHAZ
部疲労強度が劣化することなく、とくに高い穴拡げ性を
付与するHAZ部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板及びそ
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】足廻り用部材には、その部品組み付け時
における溶接法としてアーク溶接が主として用いられて
いる。したがって、入熱量はスポット溶接と比較すると
格段に大きいため、HAZ部における組織粗大化が懸念さ
れる。このことは溶接部の疲労特性劣化の原因となる可
能性があり、とくに部品としては致命的な欠陥となるも
のである。また、加工性とくに穴拡げ性をより高くする
ためには、第二相の分率をできるだけ低くすることか
ら、C量を極力下げる必要性がある。とくに前者の課題
に対しては、特開平11−124652号公報にあるよ
うに、HAZ部における組織の粗大化を防止するためにTi-
Mg系酸化物の分散及び形態を制御する方法が開示されて
いる。これは、鋼中における微細酸化物の形成により、
溶接時の入熱による組織粗大化を防止するため、GBF(Gr
ain Boundary Ferrite)やFSP(Ferrite Side Plate)の微
細化とIGF(IntraGranuler Ferrite)の形成を両立させ、
その結果、HAZ靭性が大きく改善されることを特徴とす
るものである。一方、後者の課題については、特開平6
−293910号公報にあるようにフェライトを90%以
上確保し、第二相の分率を低減する方法が開示されてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】とくに自動車足廻り用
部品における溶接条件は5kJ程度であることから、溶
接時の入熱量がそれほど大きくはなく、30kJ未満の入
熱量における効果については特開平11−124652
号公報には開示されていない。さらに疲労特性に関する
記載は全く見当たらない。また、特開平6−29391
0号公報には、加工性とくにバーリング加工特性におけ
るミクロ組織による改善を開示したものであるが、介在
物の影響については何等記載はなく、溶接部疲労特性に
対する配慮も不十分である言わざるを得ない。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するため、低炭素鋼(0.069C-0.2Si-1.1Mn-0.010P
-0.0015N)を用い、穴拡げ性及びアーク溶接部疲労特性
に及ぼす添加元素及び仕上圧延後の巻取温度の影響につ
いてラボで調査した結果、以下のことを知見した。
【0005】(1) 穴拡げ性に及ぼすS、O及びMgの影
響について調査した結果を図1、2及び3に示す。な
お、熱延条件としては、加熱温度:1200℃、仕上温度:
870℃、巻取温度:500℃とした。穴拡げ試験は直径10mm
の打ち抜き穴を、バリを外側にして60°円錐ポンチにて
押し広げた。その際、クラックが板厚を貫通した時点で
の穴径(d)と初期穴径(d0)との比(d/d0)を求め、穴拡げ
性を示す指標とした。まず、図1にSの影響を示す。S量
が0.003%以下では、d/d0>2.3が得られている。また、こ
の特性は鋼中酸素量の影響も受け、図2にあるようにO
量が0.0035%以下となるとd/d0>2.3となる。さらに、Mg
の効果については図3に示すように、S及びOを本発明の
範囲とした場合、さらにがd/d0が向上することが見出さ
れた。こうした効果が現出された原因を解明するため、
鋼板中の介在物に着目して調査した結果を表1に示す。S
及びO量の低減、さらにMg添加により介在物の形態とし
て、いわゆるA系介在物の量が減少するとともに、介在
物の総量も減少している。その結果、き裂の発生及び伝
播を助長する因子が低減された結果と考えられる。な
お、介在物の調査は、JIS G 0555に記載の方法に基づい
て実施した。すなわち、格子線太さ5μm、格子線数は縦
・横おのおの20本、格子間隔0.4mmの格子板を用い、測
定倍率は400倍にて実施した。視野数は60視野とし、介
在物と格子との交点の数から、清浄度としてS={n/(f×
p)}×100から求めた。ここで、f:視野数、p:総格子点
数、n:介在物の占める格子点である。
【0006】
【表1】
【0007】(2) 上記(1)で検討した素材のう
ち、Mgを添加したものについて、1400℃における加熱実
験を行い、粒成長性を調査した。結果を図4に示す。Mg
添加により粒成長性が大きく抑制されることが見出され
た。
【0008】以上の知見をもとに、バーリング加工時の
穴拡げ性に優れかつ、HAZ部疲労特性に優れた高強度熱
延鋼板及びその製造方法を確立した。
【0009】本発明の要旨とするところは、 (1)フェライトと、ベイナイトを主体とする第二相と
からなり、また、鋼板中に介在物が総量で0.05%以下で
かつ、A系+B系介在物の合計で0.01%以下であることを
特徴とする穴拡げ性及びHAZ部疲労特性に優れた高強度
熱延鋼板。 (2)重量比で、C:0.03〜0.08%、Si:0.1〜2%、Mn:
0.5〜3% 、S:0.0005〜0.0030%、Al:0.005〜0.1%以下を
含み、P:0.02%以下、N:0.0035%以下、O:0.0035%以下
であり、さらにMgを0.0005〜0.02%添加し、残部Fe及び
不可避的不純物元素からなる(1)に記載の穴拡げ性及
びHAZ部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。 (3)(2)に記載の熱延鋼板に、Ti,Nb及びVを1種ま
たは2種以上をそれぞれ0.2%以下含有する穴拡げ性及びH
AZ部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。 (4)(2)又は(3)に記載の熱延鋼板に、Moを0.5%
以下含有する穴拡げ性及びHAZ部疲労特性に優れた高強
度熱延鋼板。 (5)(2)〜(4)に記載の熱延鋼板に、Caを0.005%
以下含有する穴拡げ性及びHAZ部疲労特性に優れた高強
度熱延鋼板。 (6)(2)〜(5)に記載の熱延鋼板に、Bを0.003%
以下含有する穴拡げ性及びHAZ部疲労特性に優れた高強
度熱延鋼板。 (7)(1)〜(6)に記載の熱延鋼板の表面に、めっ
き層を有することを特徴とする穴拡げ性及びHAZ部疲労
特性に優れた高強度熱延鋼板。 (8)連続鋳造にてスラブとした後、再加熱あるいは鋳
造後直ちに粗圧延を実施し、Ar3変態点以上の温度域で
仕上圧延を終了させ、巻取温度:400〜550℃とすること
を特徴とする(1)〜(6)に記載の穴拡げ性及びHAZ
部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。 (9)粗圧延を終了し、シートバーを一旦コイルに巻き
取り、そのまま仕上圧延に供するか、あるいは先行する
シートバーに接続後、仕上圧延を行うことを特徴とする
(8)に記載の穴拡げ性及びHAZ部靭性に優れた高強度
熱延鋼板の製造方法。 (10)100mm以下の鋳片に鋳造後、直ちに粗圧延を実
施することを特徴とする(8)又は(9)に記載の穴拡
げ性及びHAZ部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板の製造
方法。
【0010】
【発明の実施の形態】まず、この発明における組織の限
定理由についてであるが、穴拡げ性を確保するためには
フェライトとの硬度差を極力少なくすることが必要であ
り、そのためにはベイナイトを形成させるのが良い。さ
らに、この穴拡げ性のバラツキを低減させ、最小値を高
めるためには、鋼中に形成される介在物としては少ない
方が好ましく、とくにA系及びB系介在物を極力少なくす
ることが必要であることから、鋼板中に形成される介在
物総量で0.05%以下であり、とくにA系+B系介在物の合
計で0.01%以下とする必要がある。
【0011】次に、本発明における成分組成の限定理由
について述べる。Cは、0.03%未満では、強度確保が困難
となるためこれを下限とする。一方、0.08%を超えて添
加されると、形成される炭化物が増えるため穴拡げ性が
劣化するばかりでなく、溶接性も劣化する。すなわち、
鋼板製造時の通板性や部品組み付け時の溶接性劣化が懸
念される。
【0012】Siは、鋼板の高強度化のために添加される
元素の1つである。その効果を発揮するには0.1%以上の
添加が必要である。一方、過度の添加は鋼板製造時の接
続部や部品組み付け部に溶接欠陥を生じさせるため、2%
を上限とする。
【0013】Mnについても、鋼を高強度化する際に添加
されるが、過度の添加は延性の劣化や種々の溶接法にお
ける溶接性を大きく低下させるため、3%を上限とする。
一方、強度確保のために0.5%以上の添加が必要である。
【0014】SはMnとの結合によりA系介在物(JIS G055
5)を形成し、穴拡げ性のみならず延性を劣化させること
から、0.003%を上限とする。また、0.0005%より低くす
ることは製鋼でのコストを大幅に上昇させるため好まし
くない。
【0015】Pは主として高強度化を目的として添加さ
れる元素である。しかし、過剰に含有されると延性を低
下させるばかりでなく、二次加工性も劣化させるため0.
02%以下とする。
【0016】Alは脱酸のために添加される元素である。
0.005%以下では本来目的とする効果が発揮されず、一
方、0.1%を超えて添加されると酸化物として鋼中に残存
するため、穴拡げ性の大きな劣化や延性低下が懸念され
る。
【0017】Nについては、極力少ない方が好ましい
が、過度の低下は製鋼でのコストを大幅に増加させるこ
とになるため、0.0035%を上限とする。
【0018】Oについては本発明においてMgとともに重
要な役割を有する元素である。0.0035%を超えると、酸
化物として介在物を多く残存させ、穴拡げ性を劣化させ
ることが懸念されるため、これを上限とする。
【0019】Mgは本発明において最も重要な元素であ
る。すなわち、鋼中に微細な酸化物を形成させ、とくに
A系介在物の析出量を低減しかつ、その結果、オーステ
ナイトの粒成長を抑制する作用を現出させるには、0.00
05%以上必要である。しかし、0.02%以上添加してもその
効果が飽和するばかりでなく、コストを大きく上昇させ
るためこれを上限とする。
【0020】Ti、Nb、Vはより高い強度を得るために添
加するものであり、これら元素と形成される炭窒化物に
よる析出強化を利用するものである。その効果は各元素
単独あるいは複合添加で得られるが、過度の添加は加工
性を劣化させるため1種または2種以上をそれぞれ0.2%を
上限とする。強度向上効果を得るためにはそれぞれ0.00
5%以上添加すると好ましい。
【0021】Moも強度を確保するために添加される元素
であるが、主として焼入れ性を向上させるために添加さ
れる。とくに溶融亜鉛めっき工程での冷却条件において
強度を確保することを目的とするが、過度の添加は延性
の劣化を招くことから0.5%を上限とする。焼入れ性を確
保するためには0.1%以上添加すると好ましい。
【0022】Caは鋼中に形成されるMnSの形態制御のた
めに添加される。本発明では、S量を低く抑えているこ
とから、過剰の添加はかえって鋼中に介在物を残存させ
ることになるため、0.005%以下とする。製鋼コストを低
廉に抑えて効果を発揮するためには、0.001%以上添加
すると好ましい。
【0023】BはMnとともに強度を確保するために必要
なベイナイトを、熱延板段階で安定的に形成させるため
に添加するものである。0.003%を超えて添加されるとス
ラブ製造段階で割れが発生するため、これを上限とす
る。また、Bの効果を有効に発現させるには、好ましく
は0.0001%以上添加する。
【0024】なお、スクラップの利用による微量のCu,N
i,Sn及びCrの混入は、本発明における効果を損なうもの
ではない。
【0025】製鋼工程については、Mgの添加方法として
例えばMgを含有する合金紛体を溶鋼中に吹き込む方法
や、Mgを含有する合金紛体を充填したワイヤーを溶鋼中
に連続的に供給することにより行う方法などがある。
【0026】本発明における熱延条件のうち仕上温度及
び巻取温度は、目的とする鋼板特性を得るための重要な
因子である。すなわち、仕上圧延はAr3変態点以上の温
度域で実施する必要がある。変態点よりも低い温度で実
施されると組織が不均一となり、延性及び穴拡げ性の劣
化が懸念される。一方、巻取温度は鋼板に形成されるミ
クロ組織を、穴拡げ性確保の観点からベイナイト主体の
第二相とするため、400〜550℃の範囲とする必要があ
る。550℃より高いとパーライトが形成されるようにな
り、穴拡げ性の劣化が懸念される。逆に低くなるとベイ
ナイト自体の硬さが上がることから、やはり穴拡げ性の
劣化が懸念される。
【0027】上述した熱間圧延を実施する際に、粗圧延
後先行するシートバーにレーザー溶接等を用いて接合
し、圧延を実施しても本発明における効果に何ら変わり
はない。
【0028】さらに、スラブを製造する場合もいわゆる
ニアネットシェイプとして100mm以下の薄スラブを製造
し、直ちに前述したような圧延条件で製造することも本
発明における効果を損なうものではない。
【0029】めっき工程については、例えば溶融亜鉛め
っきを行う場合、鋼板表面を亜鉛浴の温度と同程度に加
熱し、その温度で亜鉛浴に浸漬させる。その際に好まし
い条件としては、温度が高くなりすぎると熱延板の組織
変化による強度低下を招くため、550℃を上限とする。
一方、低すぎるとめっき不良及びめっき層厚さの不均一
化を招くため、420℃を下限とする。
【0030】
【実施例】実施例1 C:0.063%,Si:0.35%,Mn:1.1%,P:0.014%,S:0.002%,Al:0.0
27%,N:0.0024%,O:0.0017%,Mg:0.0007%を含む鋼を転炉出
鋼し、連続鋳造にてスラブとした。熱延は1200℃で加熱
後、粗圧延を実施してから表2に示す条件で熱間圧延を
終了し、4.5mmの熱延板とした。なお、ここでAr3変態点
は916−50[C(%)]+27[Si(%)]−64[Mn]で概算すると約85
2℃である。なお、Mgを含む酸化物のサイズ及び平均粒
子間距離は、平均でそれぞれ0.07及び3.5μmであった。
【0031】鋼中に形成される介在物量としては、前述
したJIS G 555に記載の方法で測定し、A系:0%、B系:
0.008%、D系:0.0025%であった。材質評価は、JIS Z
2201記載の5号試験片に加工し、JIS Z 2241記載の試
験方法にしたがって引張試験を行った。また、穴拡げ性
の調査は、直径10mm(d0)の穴を打ち抜き、60度円錐ポン
チを使用してバリが外側になるようにその穴を押し広
げ、割れが板厚を貫通した時点での穴径(d)を測定し、d
/d0で評価した。なお、試験片は幅方法及び長手方向3
列に採取し、d/d0は平均値と最小値を求めた。さら
に、No.4による鋼板について入熱量3.5kJとして突き合
わせてアーク溶接を行い、平面曲げ疲労試験を行った。
この時、比較としてMgを添加しないものについても同様
に溶接を行い、疲労試験を実施した。この時の応力範囲
は196〜−196MPaとし、破断に至るまでの繰り返し数を
求めた。
【0032】Mgが無添加の場合、HAZ部での破断となる
ことからその破断寿命がは812566回であるのに対し、Mg
を添加した場合には母材破断となり、破断寿命が305322
3回と約4倍に延長した。
【0033】表2に得られた熱延板の機械的性質を示
す。本発明にしたがったNo.2,3,4,5,6及び8では、高い
伸びと穴拡げ性が得られている。一方、仕上温度あるい
は巻取温度が本発明の範囲から外れたものはいずれも延
性及び穴拡げ性が低い。とくにNo.1及び7ではパーライ
トの形成により、No.9ではベイナイト中の炭化物が多く
形成されたことに起因して、穴拡げ性が悪い。さらにN
o.10では仕上温度が低く外れたために不均一な組織とな
ったため、延性及び穴拡げ性(d/d0の最小値)が悪い。
【0034】
【表2】
【0035】実施例2 表3に示す種々の鋼を転炉出鋼し、連続鋳造でスラブと
した。熱延は1150〜1250℃で加熱後、粗圧延及び仕上圧
延を実施して表4に示すような板厚の熱延板を製造し
た。なお、仕上圧延はいずれもAr3変態点以上の温度域
で終了した。さらに、仕上圧延後の冷却速度は本発明の
範囲内の条件となるよう、冷却ゾーンにおける水量を調
整した。冷却後、400〜500℃で巻取を行い、実施例1と
同様に引張試験による材質評価と穴拡げ性評価を実施し
た。また、アーク溶接も実施例1と同条件で行い、溶接
性と溶接部の疲労特性として破断位置を調査した。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】結果を同表に示す。本発明にしたがったA,
B,C,E,F,G,H及びI鋼では、高い延性と2.3を超える穴拡
げ性が得られるとともに、溶接性も良好であり、HAZ部
での疲労破断は生じていない。一方、Mgが本発明の範囲
から低く外れたD及びM鋼では、HAZ部での疲労破断が生
じており、A系及びB系の介在物が本発明の範囲を超えて
形成されたこと、とくにM鋼ではSも高く外れたことから
穴拡げ性も劣っている。C量が高く外れたJ鋼は、炭化物
の形成が多いため穴拡げ性が劣化するばかりでなく、溶
接性が悪い。また、SiあるいはMnが高く外れたK及びL鋼
では、とくにA系及びB系の酸化物が多数形成されるた
め、穴拡げ性にバラツキがあり、最小値が低い。また、
溶接性も悪い。さらに、J鋼では溶接部に欠陥が多数形
成されること、K及びL鋼ではやはりA系及びB系の酸化物
が多数形成されることに起因し、疲労特性としてビード
部での破断が顕著となる。一方、N鋼はO量が高く外れた
ために全体的に酸化物が多数形成され、穴拡げ性が悪
い。
【0039】実施例3 実施例2の本発明の範囲にしたがったB及びC鋼につい
て、薄スラブ連鋳法による鋳造後直ちに粗圧延工程に送
る製造工程と、熱延工程で粗圧延終了後に先行材と接続
して圧延を実施する、いわゆる連続熱延による工程で製
造した。表5に製造工程を示す。なお、仕上温度、冷却
条件及び巻取温度は実施例2と同じとした。得られた材
質を同表に示す。ア、イ、ウ、エ、オ及びカいずれも得
られた材質は、実施例2でのものとほぼ同様の特性であ
る。
【0040】
【表5】
【0041】
【発明の効果】本発明により、とくに高い穴拡げ性を有
するとともに、溶接後のHAZ部疲労強度も劣化すること
のない、自動車足回り部材に使用される高強度熱延鋼板
を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】S量とd/d0の関係を示す図。
【図2】O量とd/d0の関係を示す図。
【図3】Mg量とd/d0の関係を示す図。
【図4】Mg添加の有無によるオーステナイトの粒成長挙
動の差を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 38/14 C22C 38/14 // B21B 1/46 B21B 1/46 B Fターム(参考) 4E002 AA04 AD04 BC06 BD02 BD03 CB01 4K037 EA01 EA02 EA05 EA09 EA14 EA15 EA16 EA17 EA18 EA19 EA22 EA23 EA25 EA27 EA28 EA31 EA32 EB05 EB11 EC01 FA02 FA03 FC07 FD04 FE01

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェライトと、ベイナイトを主体とする
    第二相とからなり、また、鋼板中に介在物が総量で0.05
    %以下でかつ、A系+B系介在物の合計で0.01%以下であ
    ることを特徴とする穴拡げ性及びHAZ部疲労特性に優れ
    た高強度熱延鋼板。
  2. 【請求項2】 重量比で、C:0.03〜0.08%、Si:0.1〜2
    %、Mn:0.5〜3% 、S:0.0005〜0.0030%、Al:0.005〜0.1
    %以下を含み、P:0.02%以下、N:0.0035%以下、O:0.003
    5%以下であり、さらにMgを0.0005〜0.02%添加し、残部F
    e及び不可避的不純物元素からなることを特徴とする請
    求項1に記載の穴拡げ性及びHAZ部疲労特性に優れた高
    強度熱延鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の熱延鋼板に、Ti,Nb及
    びVを1種または2種以上をそれぞれ0.2%以下含有する穴
    拡げ性及びHAZ部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
  4. 【請求項4】 請求項2又は3に記載の熱延鋼板に、Mo
    を0.5%以下含有する穴拡げ性及びHAZ部疲労特性に優れ
    た高強度熱延鋼板。
  5. 【請求項5】 請求項2乃至4のいずれかに記載の熱延
    鋼板に、Caを0.005%以下含有する穴拡げ性及びHAZ部疲
    労特性に優れた高強度熱延鋼板。
  6. 【請求項6】 請求項2乃至5のいずれかに記載の熱延
    鋼板に、Bを0.003%以下含有する穴拡げ性及びHAZ部疲労
    特性に優れた高強度熱延鋼板。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至6のいずれかに記載の熱延
    鋼板の表面に、めっき層を有することを特徴とする穴拡
    げ性及びHAZ部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板。
  8. 【請求項8】 連続鋳造にてスラブとした後、再加熱あ
    るいは鋳造後直ちに粗圧延を実施し、Ar3変態点以上の
    温度域で仕上圧延を終了させ、巻取温度:400〜550℃と
    することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載
    の穴拡げ性及びHAZ部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板
    の製造方法。
  9. 【請求項9】 粗圧延を終了し、シートバーを一旦コイ
    ルに巻き取り、そのまま仕上圧延に供するか、あるいは
    先行するシートバーに接続後、仕上圧延を行うことを特
    徴とする請求項8に記載の穴拡げ性及びHAZ部靭性に優
    れた高強度熱延鋼板の製造方法。
  10. 【請求項10】 100mm以下の鋳片に鋳造後、直ちに粗
    圧延を実施することを特徴とする請求項8又は9に記載
    の穴拡げ性及びHAZ部疲労特性に優れた高強度熱延鋼板
    の製造方法。
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