JP2000288124A - マルチピースゴルフボール - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 コアと、該コアを被覆する中間層と、該
中間層を被覆するカバーとを具備してなる３層構造以上
のマルチピースゴルフボールにおいて、コアの１００ｋ
ｇ荷重負荷時の変形量をＡ（ｍｍ）、該コアに中間層を
被覆形成してなる中間層形成コアの１００ｋｇ荷重負荷
時の変形量をＢ（ｍｍ）とした場合、Ａ／Ｂが１．１０
以上であると共に、マルチピースゴルフボールの反発係
数をＣ．Ｏ．Ｒ値とした場合、入射速度２５ｍ／ｓの
Ｃ．Ｏ．Ｒ値−入射速度５０ｍ／ｓのＣ．Ｏ．Ｒ値＜
０．１００であることを特徴とするマルチピースゴルフ
ボール。 【効果】 本発明のマルチピースゴルフボールは、ヘッ
ドスピード依存性が小さく、所定のクラブ番手に応じた
飛距離を正確に出すことができ、特に高ヘッドスピード
での飛び性能に優れるものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、３層構造以上の多
層構造のマルチピースゴルフボールであって、ヘッドス
ピード依存性が少なく、特に、高ヘッドスピード領域で
の飛び性能に優れ、クラブに応じた打撃の正確性に優れ
たマルチピースゴルフボールに関する。

【０００２】

【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来よ
り、糸巻きゴルフボールに代わって、飛距離の面で有利
な優れたソリッドコアを有するソリッドゴルフボール
（２層構造のツーピースゴルフボール、３層構造のスリ
ーピースゴルフボール、４層構造以上のマルチピースゴ
ルフボール）が主流となってきており、糸巻きゴルフボ
ールに及ばないとされてきたアプローチスピン時の特性
も、ソフトカバー等の開発によって付与されるようにな
ってきている。

【０００３】しかし、プロや上級者には依然として糸巻
きゴルフボールの使用者が多く、これは、アプローチ時
の特性だけでなく、高ヘッドスピード領域での反発性に
よるものと考えられている。また、糸巻きゴルフボール
は、その反発性に速度依存性が少なく、ソリッドゴルフ
ボールと比べて、高ヘッドスピード領域で反発性の減少
が小さく、飛距離が伸びるという特性を有している。こ
れは、糸巻きゴルフボール特有の性質で、ソリッドゴル
フボールでこの性質を出すのは難しいとされてきた。

【０００４】本発明は、上記事情に鑑みなされたもの
で、ヘッドスピード依存性が少なく、高ヘッドスピード
領域での飛び性能に優れ、クラブに応じた打撃の正確性
に優れた３層構造以上の多層構造のマルチピースゴルフ
ボールを得ることを目的する。

【０００５】

【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】本
発明者は上記目的を達成するため、鋭意検討を行った結
果、コアと、該コアを被覆する中間層と、該中間層を被
覆するカバーとを具備してなる３層構造以上のマルチピ
ースゴルフボールにおいて、Ｃ．Ｏ．Ｒ値（反発係数）
の入射速度と所定のクラブにおける打撃時のヘッドスピ
ード（ＨＳ）が同じ値であれば、インパクト時のボール
の変形挙動がほぼ同一であることを知見すると共に、打
撃時の低ＨＳ域（２５ｍ／ｓ）と高ＨＳ域（５０ｍ／
ｓ）とのＣ．Ｏ．Ｒ値の差を小さくすること、即ち高ヘ
ッドスピードと低ヘッドスピードとのクラブ打撃による
反発係数の差が少ないほどヘッドスピード依存性が少な
いボールであることを見出し、更に検討を行った結果、
コアの１００ｋｇ荷重負荷時の変形量をＡ（ｍｍ）、中
間層が被覆形成されたコアの１００ｋｇ荷重負荷時の変
形量をＢ（ｍｍ）とした場合、Ａ／Ｂを１．１０以上に
すると共に、マルチピースゴルフボールの反発係数につ
いて上記低入射速度のＣＯＲと高入射速度のＣＯＲとの
差を０．１００より小さく制限することで、意外にもヘ
ッドスピード依存性が少なく、高ヘッドスピード領域で
の飛び性能に優れ、またクラブ番手に応じた打撃の正確
性に優れたマルチピースゴルフボールが得られることを
知見した。

【０００６】そして、本発明者は上記マルチピースゴル
フボールについて更に検討を行った結果、カバーに形成
されるディンプルの総容積を特定すること、カバー材の
材質及びそのショアＤ硬度を規定すること、コアの１０
０ｋｇ荷重負荷時の変形量を特定すること、コア材と中
間層材を特定することにより、上述した効果をより向上
させることができることを知見し、本発明をなすに至っ
たものである。

【０００７】従って、本発明は、下記マルチピースゴル
フボールを提供する。 （１）コアと、該コアを被覆する中間層と、該中間層を
被覆するカバーとを具備してなる３層構造以上のマルチ
ピースゴルフボールにおいて、コアの１００ｋｇ荷重負
荷時の変形量をＡ（ｍｍ）、該コアに中間層を被覆形成
してなる中間層形成コアの１００ｋｇ荷重負荷時の変形
量をＢ（ｍｍ）とした場合、Ａ／Ｂが１．１０以上であ
ると共に、マルチピースゴルフボールの反発係数をＣ．
Ｏ．Ｒ値とした場合、入射速度２５ｍ／ｓのＣ．Ｏ．Ｒ
値−入射速度５０ｍ／ｓのＣ．Ｏ．Ｒ値＜０．１００で
あることを特徴とするマルチピースゴルフボール。 （２）カバー表面に多数のディンプルが形成されると共
に、ボール表面をディンプルが形成されていない仮想球
面と仮定した場合、この仮想球面に対するディンプルの
総容積が２５０〜４５０ｍｍ³である（１）記載のマル
チピースゴルフボール。 （３）カバーがショアＤ硬度６２以下の熱可塑性樹脂に
て形成された（１）又は（２）記載のマルチピースゴル
フボール。 （４）コアの１００ｋｇ荷重負荷時の変形量が２．５〜
６．５ｍｍである（１）乃至（３）のいずれか１項記載
のマルチピースゴルフボール。 （５）コアがゴム組成物を基材としてなると共に、中間
層が熱可塑性樹脂を基材としてなる（１）乃至（４）の
いずれか１項記載のマルチピースゴルフボール。

【０００８】本発明のマルチピースゴルフボールは、プ
ロや上級者のようなヘッドスピードの速いプレイヤーで
も満足のいく飛距離を与える。また、速度依存性が小さ
く、どの番手のクラブで打撃しても反発係数が大きく変
わらないので、各番手に応じた飛距離を正確に与え、こ
の点でも優れたものである。

【０００９】以下、本発明につき更に詳しく説明する
と、本発明のマルチピースゴルフボールは、上述したよ
うに、コアと、該コアを被覆する中間層と、該中間層を
被覆するカバーとを具備した３層構造以上の多層構造の
マルチピースゴルフボールであり、上述したように、コ
アの１００ｋｇ荷重負荷時の変形量をＡ（ｍｍ）、コア
に中間層を被覆形成した中間層形成コアの１００ｋｇ荷
重負荷時の変形量をＢ（ｍｍ）とした場合、Ａ／Ｂが
１．１０以上、好ましくは１．２０以上であることを要
するものである。Ａ／Ｂの値が１．１０未満であると、
本発明の目的は達成し得ない。

【００１０】また、本発明のマルチピースゴルフボール
は、上記Ａ／Ｂの要件に加えて、マルチピースゴルフボ
ールの反発係数をＣ．Ｏ．Ｒ値とした場合、入射速度２
５ｍ／ｓのＣ．Ｏ．Ｒ値−入射速度５０ｍ／ｓのＣ．
Ｏ．Ｒ値＜０．１００、好ましくは０．０９５以下、更
に好ましくは０．０９０以下であることを要するもの
で、これにより、インパクト時のボールの変形挙動はほ
ぼ同じになり、ヘッドスピード依存性の低いボールを得
ることができる。

【００１１】ここで、Ｃ．Ｏ．Ｒ値とは、同一の鋼鉄板
に所定の速度（入射速度）でボールを衝突させた際、衝
突前の速度に対して衝突後のボールの速度を除した値の
ことを言い、その値は１に近いほど反発性が高いことを
意味する。

【００１２】上記Ｃ．Ｏ．Ｒ値の差が０．１００以上で
あるとヘッドスピード依存性が顕著になり、本発明の目
的が達成されない。

【００１３】上記マルチピースゴルフボールのＣ．Ｏ．
Ｒ値は、入射速度２５ｍ／ｓの場合０．８０〜０．８
８、好ましくは０．８２〜０．８７、入射速度５０ｍ／
ｓの場合０．７４〜０．８０、好ましくは０．７４〜
０．７９であり、上記範囲より高いと、ルール外になる
可能性が高く、また低いと反発性が悪くなり、十分な飛
距離がでなくなる場合がある。

【００１４】本発明のマルチピースゴルフボールは、上
述した特性を有する少なくとも３層からなる多層構造の
マルチピースゴルフボールであり、公知の材料にて形成
することができる。ここで、コアとしては、公知のゴム
組成物にて形成することができ、例えば、基材として、
ポリブタジエンを使用したものが好ましい。このポリブ
タジエンとしては、シス構造を少なくとも４０％以上有
する１，４−シスポリブタジエンが好適なものとして挙
げられる。また、この基材ゴム中には、所望によりポリ
ブタジエンに天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン
ブタジエンゴムなどを適宜配合することができる。ゴム
成分を多くすることにより、マルチピースゴルフボール
の反発性を向上させることができる。なお、ポリブタジ
エン１００重量部に対して、これら成分は１０重量部以
下にすることが好ましい。

【００１５】また、上記ゴム組成物には、架橋剤として
メタクリル酸亜鉛、アクリル酸亜鉛等の不飽和脂肪酸の
亜鉛塩、マグネシウム塩や、トリメチルプロパンメタク
リレート等のエステル化合物を配合し得るが、特に反発
性の高さからアクリル酸亜鉛を好適に使用し得る。これ
ら架橋剤の配合量は、上記基材ゴム１００重量部に対し
て１０〜４０重量部とすることが好ましい。

【００１６】上記ゴム組成物には、通常加硫剤が配合さ
れているが、この加硫剤はパーオキサイドが好ましく、
またこの中には１分間で半減期を迎える温度を１５５℃
以下とするパーオキサイドが含まれていることが推奨さ
れ、その配合量は加硫剤全体の３０重量％以上、特に４
０〜７０重量％であることが好ましい。このようなパー
オキサイドとしては、市販品を挙げることができ、例え
ば、パーヘキサ３Ｍ（日本油脂社製）等が挙げられる。
その配合量は、基材ゴム１００重量部に対して０．６〜
２重量部とすることができる。

【００１７】更に、上記ゴム組成物には、必要に応じ
て、老化防止剤や比重調整の充填剤として酸化亜鉛や硫
酸バリウム等を配合することができる。なお、上記比重
調整剤の配合量は、基材ゴム１００重量部に対して１〜
３０重量部とすることができる。

【００１８】上記コアの製造において、上記ゴム組成物
は、公知の方法で加硫・硬化させて製造することがで
き、またコアは、１層であっても２層以上の多層構造を
有していてもよい。また、コアの外径は３１〜３８ｍ
ｍ、特に３２〜３７ｍｍとすることができる。コアの外
径が３１ｍｍ未満であると、ソフトな打感を得ることが
困難になり、一方、３８ｍｍを超えると、後述する中間
層、カバーの厚さが制限される場合がある。

【００１９】本発明のコアは、１００ｋｇ荷重負荷時の
変形量が２．５〜６．５ｍｍ、特に３．０〜６．０ｍｍ
であることが推奨され、変形量が２．５ｍｍ未満である
と、硬くなりすぎて速度依存性を下げることができず、
６．５ｍｍを超えると反発性が悪くなる可能性がある。

【００２０】なお、コアを２層以上の多層構造とする場
合、コアの外径、１００ｋｇ荷重負荷時の変形量は、そ
れぞれコア全体が上述した範囲内にあればよい。

【００２１】本発明のマルチピースゴルフボールは、上
記コアに中間層とカバーが順に被覆形成されたもので、
各層を形成する中間層材、カバー材は共に熱可塑性樹脂
等の公知材料を使用することができ、具体的には、アイ
オノマー樹脂、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリエ
ステル系などの熱可塑性エラストマー等を挙げることが
できる。また、中間層、カバー形成には、それぞれ通常
の射出成形法が好適に採用し得、いずれも１層を単独又
は２層以上の多層構造に形成することができる。

【００２２】本発明の中間層は、熱可塑性樹脂を主材と
して形成することが推奨される。中間層をコアに被覆形
成した場合、コアと中間層を合わせた外径は、通常３
７．５〜４０．０ｍｍ、特に３８．５〜４０．０ｍｍと
することができ、この範囲内であれば中間層を２層以上
の多層構造にすることもできる。

【００２３】上記中間層はコア表面に形成されるが、コ
アに中間層を被覆した中間層形成コアの１００ｋｇ荷重
負荷時の変形量は、通常２．２〜５．８ｍｍ、特に２．
６〜５．５ｍｍであることが推奨され、２．２ｍｍ未満
であると、硬すぎてフィーリングの低下を招き、５．８
ｍｍより大きいと軟らかすぎてヘッドスピード依存性が
顕著になる場合がある。

【００２４】また、中間層材として熱可塑性樹脂を使用
する場合、そのショアＤ硬度は、５０〜８０、特に５５
〜７０の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。

【００２５】本発明において、カバー材としては、上述
した材料の中から、ショアＤ硬度６２以下、好ましくは
６０以下、更に好ましくは５８以下の熱可塑性樹脂を選
んで使用することが推奨され、ショアＤ硬度が６２より
大きい熱可塑性樹脂を使用すると、フィーリングを損な
う上に、上級者使用に耐え得るスピン性能が得られなく
なる場合がある。

【００２６】またカバーの厚さは、特に制限されるもの
ではないが、通常１．４〜２．５ｍｍ、特に１．５〜
２．３ｍｍであることが好ましく、カバーを２層構造以
上にする場合には、層全体の厚さを上記範囲内にするこ
とが推奨される。

【００２７】以上のように形成されるマルチピースゴル
フボールは、１００ｋｇ荷重負荷時の変形量は、通常
２．０〜３．５ｍｍ、特に２．２〜３．３ｍｍであるこ
とが推奨される。

【００２８】本発明において、上記変形量比Ａ／Ｂ及び
反発係数差を有するマルチピースゴルフボールは、コア
の材料の種類や加硫条件、直径、中間層の材料の種類や
硬さ、厚さ、カバー材料の種類や硬さ、厚さを適宜選定
することにより、得ることができる。

【００２９】本発明のマルチピースゴルフボールは、通
常のゴルフボールと同様にして、カバー表面に多数のデ
ィンプルを形成するものであり、公知のディンプル形
状、デインプル配列は種々選定されるものである。

【００３０】本発明においては、ボール表面をディンプ
ルが形成されていない仮想球面と仮定した場合、この仮
想球面に対するディンプルの総容積が２５０〜４５０ｍ
ｍ³、特に３００〜４００ｍｍ³であることが推奨され
る。この場合、総容積が上述した範囲を逸脱すると、ヘ
ッドスピードの高い打撃時に吹けあがったり、所望の飛
距離を得ることが困難になる場合がある。この場合、デ
ィンプル直径は１．０〜５．０ｍｍ、深さは０．０８〜
０．３０ｍｍで選定することができ、互いに直径及び／
又は深さの異なる複数（好ましくは２〜６種）のディン
プルにて形成することができ、ディンプル総数は３００
〜４５０個とすることができる。

【００３１】なお、本発明のマルチピースゴルフボール
は、その直径、重さはゴルフ規則に従い、直径４２．６
７ｍｍ以上、重量は４５．９３ｇ以下に形成することが
できる。

【００３２】

【発明の効果】本発明のマルチピースゴルフボールは、
ヘッドスピード依存性が小さく、所定のクラブ番手に応
じた飛距離を正確に出すことができ、特に高ヘッドスピ
ードでの飛び性能に優れるものである。

【００３３】

【実施例】以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体
的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるもの
ではない。

【００３４】〔実施例、比較例〕表１で示される各材料
を使用してコアを製造し、更にこのコアに順に中間層、
カバーを射出成形し、表２に示す態様のディンプルが形
成されたマルチピースゴルフボールを得た。

【００３５】次いで、それぞれのマルチピースゴルフボ
ールについて、下記の通り評価した。結果を表１に併記
する。トータル飛距離 スイングロボットを用い、ロフト角９．５度のブリヂス
トンスポーツ社製ゴルフクラブ「２３０Ｔｉ」（以下、
＃Ｗ１という）でヘッドスピード４８ｍ／ｓ（ＨＳ４
８）で打撃し、トータル飛距離を測定した。Ｃ．Ｏ．Ｒ値（反発係数） 十分に重量のある鋼鉄製の壁面に、各ボールをボール速
度２５ｍ／ｓ、５０ｍ／ｓで衝突させ、衝突の前後の速
度から算出した。

【００３６】表１の結果より、比較例１のマルチピース
ゴルフボールは、５０ｍ／ｓにおけるＣ．Ｏ．Ｒ値が低
く、反発係数差が多すぎて飛距離に満足のいかないもの
であった。また、比較例２のマルチピースゴルフボール
は、Ａ／Ｂの値が１．１０以下であり、いずれのマルチ
ピースゴルフボールもヘッドスピード依存性が高く、高
ヘッドスピード打撃時における飛距離も劣るものであっ
た。更に、比較例３はツーピースゴルフボールであり、
ヘッドスピード依存性が高く、飛距離も本発明のマルチ
ピースゴルフボールに比して劣るものであった。これに
対して、本発明のマルチピースゴルフボールは、いずれ
もヘッドスピード依存性が少なく、特に高ヘッドスピー
ドでの飛び性能にも優れたものであった。

【００３７】

【表１】

【００３８】

【表２】

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 コアと、該コアを被覆する中間層と、該
   中間層を被覆するカバーとを具備してなる３層構造以上
   のマルチピースゴルフボールにおいて、コアの１００ｋ
   ｇ荷重負荷時の変形量をＡ（ｍｍ）、該コアに中間層を
   被覆形成してなる中間層形成コアの１００ｋｇ荷重負荷
   時の変形量をＢ（ｍｍ）とした場合、Ａ／Ｂが１．１０
   以上であると共に、マルチピースゴルフボールの反発係
   数をＣ．Ｏ．Ｒ値とした場合、入射速度２５ｍ／ｓの
   Ｃ．Ｏ．Ｒ値−入射速度５０ｍ／ｓのＣ．Ｏ．Ｒ値＜
   ０．１００であることを特徴とするマルチピースゴルフ
   ボール。
2. 【請求項２】 カバー表面に多数のディンプルが形成さ
   れると共に、ボール表面をディンプルが形成されていな
   い仮想球面と仮定した場合、この仮想球面に対するディ
   ンプルの総容積が２５０〜４５０ｍｍ³である請求項１
   記載のマルチピースゴルフボール。
3. 【請求項３】 カバーがショアＤ硬度６２以下の熱可塑
   性樹脂にて形成された請求項１又は２記載のマルチピー
   スゴルフボール。
4. 【請求項４】 コアの１００ｋｇ荷重負荷時の変形量が
   ２．５〜６．５ｍｍである請求項１乃至３のいずれか１
   項記載のマルチピースゴルフボール。
5. 【請求項５】 コアがゴム組成物を基材としてなると共
   に、中間層が熱可塑性樹脂を基材としてなる請求項１乃
   至４のいずれか１項記載のマルチピースゴルフボール。