JP2000109902A - 蓄光性多層膜被覆粉体 - Google Patents

蓄光性多層膜被覆粉体

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 染料や顔料を加えずとも、青、緑、黄色など
の単色の美麗で安定な色調のカラーインキの色材として
用いることができ、しかも検査機器を用いずに、例え
ば、室内で蛍光灯あるいは赤外線ランプのような光源を
照射するなどの簡便な方式によって印刷物等の偽造防止
性能を更に高めることができる機能をも有する蓄光性多
層膜被覆粉体を提供する。 【解決手段】 基体粒子上に複数の被覆膜を有する多層
膜被覆粉体において、該被覆膜の少なくとも1層に蓄光
性物質を有することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は蓄光性多層膜被覆粉
体に関し、詳しくは基体粒子表面に多層膜を有し、蓄光
性を有するカラー印刷、塗工等のインキ、顔料、塗料と
して有用な蓄光性多層膜被覆粉体に関する。
【0002】
【従来の技術】粉体の表面を他の物質の膜で被覆するこ
とにより、その粉体の性質を改善したり、その性質に多
様性を与えることが知られ、従来そのための方法として
種々の手段が提案されている。例えば、物体の表面に保
護や装飾のために膜を形成する被覆技術には、塗着法、
沈着法、スパッタリング、真空蒸着法、電着法や陽極酸
化法等多くの手段が知られている。しかし、塗着法や沈
着法では膜の厚みを均一にすることが困難であり、スパ
ッタリングや真空蒸着法では膜厚の厚い被膜を得ること
が困難である。また、電着法や陽極酸化法は被処理物を
電極とする関係上粉体の処理には向かないという問題点
を有している。種々の技術分野における進歩に伴い、特
異な性質を備えた粉体、特に金属粉体或は金属化合物粉
体を求める要望が増しており、粉体、特に金属粉体また
は金属化合物粉体だけが備える性質の他に別の性質を合
わせ持ち、複合した機能を有する粉体が求められてい
る。これらの粉体を製造するには、基体粒子の上に均一
な厚さの金属酸化物膜等を複数層設けることが考えられ
た。
【0003】上記のような新しい要求に応えられる複合
した性質を有し、複合した機能を果たし得る粉体、特に
金属または金属化合物粉体を提供するための金属酸化物
の形成方法の有用なものとして、先に、本発明者らは、
金属粉体又は金属酸化物粉体を金属アルコキシド溶液中
に分散し、該金属アルコキシドを加水分解することによ
り、金属酸化物の皮膜を形成し、金属または金属化合物
の基体の表面に、均一な0.01〜20μmの厚みの、
前記基体を構成する金属とは異種の金属を成分とする金
属酸化物膜を有する粉体を発明した(特開平6ー228
604号公報)。
【0004】この粉体において、前記の金属酸化物膜を
複数層設ける場合には、前記膜の各層の厚さを調整する
ことにより特別の機能を与えることができるものであっ
て、例えば、基体の表面に、屈折率の異なる被覆膜を、
光の4分の1波長に相当する厚さで設けるようにする
と、光はすべて反射される。この手段を鉄、コバルト、
ニッケルなどの金属粉末或は金属の合金粉末、或いは窒
化鉄の粉末などの磁性体を基体とするものに適用する
と、光を全反射して白色に輝く磁性トナー用磁性粉体を
得ることができる。さらに、その粉体の上に着色層を設
け、その上に樹脂層を設ければ、カラー磁性トナーが得
られることを開示している(特開平7ー90310号公
報)。
【0005】また、本発明者らは多層膜の物質の組み合
わせおよび膜厚を制御することにより、多層膜の反射光
干渉波形を調整できることを見出し、染料や顔料を用い
ずとも、長期保存においても安定な色調を有する多層膜
被覆粉体を提供することを開示した(WO96/282
69)。
【0006】前記したように、本発明者らは金属粉体又
は金属化合物粉体の表面に金属酸化物や金属の被膜を形
成して、基体になる金属又は金属化合物粉体が備えてい
る性質の他に別の性質を付与して機能性の高い金属又は
金属化合物粉体を開発することに努めてきた。近年需要
が伸びているギフト券やチケットカードなどのカラー印
刷やカラー磁気印刷の場合には、着色の優美さに加え
て、目視や磁気読み取りのほかに偽造防止のための特殊
な機能が求められている。この動向に対応して、上記の
多層膜の反射光干渉波形を調整することにより、染料や
顔料を用いずとも青、緑、黄色などの美麗で安定な色調
のインキとなり、しかも、可視光域以外にも干渉反射ピ
ークを有するため、紫外線や赤外線による反射光を用い
た読み取り機と組み合せることで、目視や磁気読み取り
以外の新たな方式によって印刷物の偽造防止性能を更に
高めることができる機能をも有するカラーインキ組成物
を提供した(特開平10ー60350号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
カラーインキ組成物においては、紫外線や赤外線による
反射光を用いた読み取り機と組み合せることで、真偽を
判別するため、検査機器が必要である。容易に真偽を判
別できることが、機能的に必須であり、改良の余地があ
った。従って、本発明の目的は、これらの問題点を解決
し、染料や顔料を加えずとも、青、緑、黄色などの単色
の美麗で安定な色調のカラーインキの色材として用いる
ことができ、しかも検査機器を用いずに、例えば、室内
で蛍光灯あるいは赤外線ランプのような光源を照射する
などの簡便な方式によって印刷物等の偽造防止性能を更
に高めることができる機能をも有する蓄光性多層膜被覆
粉体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究
を進めた結果、粉体表面に屈折率の異なる多層の薄膜を
形成し多層膜の反射光干渉波形を調整すること、および
その多層膜の少なくとも一層にその色とは異なる、蓄光
を発する顔料を含有させるか、または光干渉に関与しな
い蓄光性物質の層(膜)を形成することにより、染料や
顔料を用いずとも青、緑、黄色などの美麗で安定な色調
のインキとなり、しかも同時に蓄光の有無による印刷物
の識別で偽造防止が可能となることを見い出し、本発明
を完成するに至った。また、上記粉体の基体として強誘
電体や導電体など様々な性質を有するものを活用するこ
とができ、基体として磁性体を使用した場合でも、該多
層膜被覆粉体が磁性を損なわずに鮮やかな着色および蓄
光発色性が得られることを見い出した。
【0009】すなわち、本発明は、 (1)基体粒子上に複数の被覆膜を有する多層膜被覆粉
体において、該被覆膜の少なくとも1層に蓄光性物質を
有することを特徴とする蓄光性多層膜被覆粉体。 (2)前記多層膜が光干渉作用を示すことを特徴とする
前記(1)記載の蓄光性多層膜被覆粉体。 (3)前記基体粒子が磁性粒子であることを特徴とする
前記(1)記載の蓄光性多層膜被覆粉体、である。
【0010】本発明の蓄光性多層膜被覆粉体は上記のよ
うに、蓄光を有するカラー印刷、塗工等のインキ、顔料
または塗料として有用であり、基体として磁性体を用い
た場合には、高機能性カラー磁気印刷用インキの色材と
しても適用可能であり、可視光、蓄光発色および磁気の
3種の識別機能をもち、印刷物の偽造防止効果を高める
ことが可能である。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明において用いる多層膜被覆
粉体の基体としては特に限定されるものではなく、磁
性、強誘電性、導電性など様々な性質を有する粉体を用
いることができる。物質の種類としては、金属、金属化
合物、有機物、無機物など広範な物質を用いることがで
きる。金属としては、鉄、ニッケル、クロム、チタン、
アルミニウム等の金属、また鉄−ニッケルや鉄−コバル
ト合金等の金属合金、さらには鉄・ニッケル合金窒化物
や鉄・ニッケル・コバルト合金窒化物、また金属酸化物
としては例えば鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミ
ニウム、ケイ素(この場合ケイ素は金属に分類するもの
とする)等の酸化物の他、カルシウム、マグネシウム、
バリウム等のアルカリ土類金属酸化物あるいはこれらの
複合酸化物、粘土類、ガラス類等が挙げられる。本発明
においては、その目的の一つがカラー磁性トナーやカラ
ー磁性インクのような磁性も共有する粉体を製造するこ
とにあるので、その場合本発明の蓄光性多層膜被覆粉体
の基体としては強磁性体を使用することが好ましい。強
磁性体としては鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミ
ニウム等の透磁率の大きい金属でもよいが、フェライ
ト、γ−酸化鉄のような強磁性酸化物や強磁性合金も使
用される。
【0012】また、有機物としては樹脂粒子が好まし
く、その具体例としては、セルロースパウダー、酢酸セ
ルロースパウダー、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエ
ステル、メラミン樹脂、ポリウレタン、酢酸ビニル樹
脂、ケイ素樹脂、アクリル酸エステル、メタアクリル酸
エステル、スチレン、エチレン、プロピレン及びこれら
の誘導体の重合または共重合により得られる球状または
破砕の粒子などが挙げられる。特に好ましい樹脂粒子は
アクリル酸またはメタアクリル酸エステルの重合により
得られる球状のアクリル樹脂粒子である。更に、無機物
としてはシラスバルーン(中空ケイ酸粒子)などの無機
中空粒子、微小炭素中空球(クレカスフェアー)、電融
アルミナバブル、アエロジル、ホワイトカーボン、シリ
カ微小中空球、炭酸カルシウム微小中空球、炭酸カルシ
ウム、パーライト、タルク、ベントナイト、カオリン等
を用いることができる。粉体核粒子の形状としては、球
体、亜球状態、正多面体等の等方体、直方体、回転楕円
体、菱面体、板状体、針状体(円柱、角柱)などの多面
体、さらに粉砕物のような全く不定形な粉体も使用可能
である。
【0013】これらの基体は、粒径については特に限定
するものでないが、0.01μm〜数mmの範囲のもの
が好ましい。また、基体粒子の比重としては、0.1〜
10.5の範囲のものが用いられるが、流動性、浮遊性
の面から0.1〜5.5が好ましく、より好ましくは
0.1〜2.8、更に、好ましくは0.5〜1.8の範
囲である。基体の比重が0.1未満では液体中での浮力
が大きすぎ、膜を多層あるいは非常に厚くする必要があ
り、不経済である。一方、10.5を超えると、浮遊さ
せるための膜が厚くなり、同様に不経済である。
【0014】本発明においては、屈折率が互いに異なる
複数の被膜層を用い、上記基体粒子を、各被膜層の屈折
率および層厚を適宜選択して被覆することにより、その
干渉色により着色させることができる。各被膜層を構成
する材料は無機金属化合物、金属または合金、および有
機物のうちから任意に選択することが望ましい。被膜層
を構成する無機金属化合物としては、その代表的なもの
として金属酸化物が挙げられ、具体例として例えば鉄、
ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素、カ
ルシウム、マグネシウム、バリウムなどの酸化物、ある
いはこれらの複合酸化物が挙げられる。さらに、金属酸
化物以外の金属化合物としてはフッ化マグネシウム、鉄
窒化物などの金属窒化物、金属炭化物などが挙げられ
る。被膜層を構成する金属単体としては金属銀、金属コ
バルト、金属ニッケル、金属鉄などが挙げられ、金属合
金としては鉄・ニッケル合金、鉄・コバルト合金、鉄・
ニッケル合金窒化物、鉄・ニッケル・コバルト合金窒化
物などが挙げられる。
【0015】被膜層を構成する有機物としては、基体を
構成する上記の有機物と同一でも異なってもよく、特に
限定されるものではないが、好ましくは樹脂である。樹
脂の具体例としては、セルロース、酢酸セルロース、ポ
リアミド、エポキシ樹脂、ポリエステル、メラミン樹
脂、ポリウレタン、樹脂ビニル樹脂、ケイ素樹脂、アク
リル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、
エチレン、プロピレン及びこれらの誘導体の重合体また
は共重合体などが挙げられる。このように、被膜層を構
成する材料として種々の材料を使用することができる
が、それらの材料の組合せは各被膜層の屈折率を考慮し
た上で、用途に応じて適宜選択することが必要である。
本発明に係わる蓄光性多層膜被覆粉体の粒径は、特に限
定されず、目的に応じて適宜調整することができるが、
通常は0.01μm〜数mmの範囲である。
【0016】本発明において、その1回に形成させる被
覆膜の膜の厚さとしては、5nm〜10μmの範囲とす
ることが可能であり、従来の形成法より厚くすることが
できる。複数回に分けて形成する被覆膜の合計の厚さと
しては、前記したカラー粉体の場合、その干渉による反
射率が良い被覆膜を形成するためには、10nm〜20
μmの範囲が好ましい、さらに好ましくは20nm〜5
μmの範囲とすることである。粒径が制限されるなど特
に薄い膜厚で可視光を干渉反射させるためには0.02
〜2.0μmの範囲とすることが好ましい。
【0017】また、前記複数の被膜層を構成する各単位
被膜層は、特定の同一波長の干渉反射ピークまたは干渉
透過ボトムを有するように各単位被膜層の膜厚を設定し
たものである。さらに好ましくは、各単位被膜層の膜厚
の設定は、下記式(1): N×d=m×λ/4 (1) 〔但し、Nは複素屈折率、dは基本膜厚、mは整数(自
然数)、λは前記干渉反射ピークまたは干渉透過ボトム
の波長を表し、Nは下記式(2): N=n+iκ (2) (nは各単位被膜層の屈折率、iは複素数、κは減衰係
数を表す)〕を満たす基本膜厚とし、屈折率の減衰係数
κによる位相ずれ、膜界面での位相ずれ、屈折率の分散
および粒子形状に依存するピークシフトからなる関数よ
り、各単位被膜層が前記特定の同一波長の干渉反射ピー
クまたは干渉透過ボトムを有するように、該各単位被膜
層の実膜厚を補正したものである。
【0018】その膜の形成方法としては、その形成する
物質に応じて次のような方法を挙げることができるが、
その外の方法を使用することもできる。 (1)有機物膜(樹脂膜)を形成する場合 a.液相中での重合法 基体となる粒子を分散させて乳化重合させることによ
り、その粒子の上に樹脂膜を形成させる方法などが使用
できる。 b.気相中での製膜法(CVD)(PVD) (2)無機金属化合物膜を形成する場合 a.液相中での固相析出法 基体となる粒子を金属アルコキシド溶液中に分散し、金
属アルコキシドを加水分解することにより、その粒子の
上に金属酸化物膜を形成する方法が好ましく、緻密な金
属酸化物膜を形成することができる。また、金属塩水溶
液の反応により粒子の上に金属酸化物膜等を形成するこ
とができる。 b.気相中での製膜法(CVD)(PVD)
【0019】(3)金属膜あるいは合金膜を形成する場
合 a.液相中での金属塩の還元法 金属塩水溶液中で金属塩を還元して金属を析出させて金
属膜を形成する、いわゆる化学メッキ法が使用される。 b.気相中での製膜法(CVD)(PVD) 金属の真空蒸着などにより、粒子の表面に金属膜を形成
することができる。
【0020】本発明の蓄光性多層膜被覆粉体において、
蓄光性物質を有する被覆層(以下、蓄光発色層という)
とは、前記多層膜被覆粉体に蓄光発色性を付与する層で
ある。蓄光発色層の含有物質としては、前記多層膜被覆
粉体の蓄光発色性、即ち、紫外線光や可視光を照射する
ことにより、容易に判別できる蓄光を発する特性を有す
るものであれば特に限定されないが、長期に蓄光発色性
を保持できる蓄光性物質が好ましい。蓄光性物質は、光
エネルギーを蓄えることができ、太陽光や蛍光灯などの
光照射後、光源を無くしても発光が続くものであり、光
源の無い暗所(光の入らない部屋や箱など)に入れて
も、一定時間(数十秒ないし数十時間)特定の波長の発
光をする物質である。古くから、蓄光性物質(蓄光性蛍
光体)としては金属の硫化物が知られており、例えば、
CaS:Bi(紫青色発光)、CaSrS:Bi(青色
発光)、ZnS:Cu(緑色発光)、ZnCdS:Cu
(黄色〜橙色発光)等が挙げられるが、これらは夜光時
計や避難誘導標識、その他の屋内用の夜間表示等に使用
されている。
【0021】上記蓄光発色層に適用される蓄光性物質の
具体例として次のものが挙げられるが、本発明はこれら
の具体例に限定されるものではない。蓄光性(燐光)顔
料は、硫化亜鉛などの顔料に銅、マンガン、水銀などの
活性剤を添加することにより、蓄光性を持たせたもので
ある。これらの例としては、ZnCdS:Cu、Ca
S:Bi、CaSrS:Bi等の微量金属含有硫化物粉
体、Al23、SrCl2、BaCO3の酸化物、塩類、
SrAl24、CaAl 24等のアルカリ土類金属のア
ルミン酸等にEu,Dyなどの希土類金属等を添加し、
従来の硫化物に比べ発光時間が長く、これらは緑、青、
黄、橙色に発光するものが挙げられる。
【0022】本発明において、蓄光発色層は、蓄光性多
層膜被覆粉体の基体となる粒子の表面、基体の表面上に
形成された光干渉性多層被覆膜中、または多層膜被覆粉
体の表面上のいずれかに、形成させることができる。そ
のための蓄光発色層の構成としては、下記の三つの方法
がある。 (1)蓄光性物質を主成分とする層を設け、この蓄光発
色層が可視光干渉に関与する。 (2)蓄光性物質を主成分とする層を設け、この蓄光発
色層は可視光干渉に関与しない。(可視光干渉の効果を
減じないことが好ましい)。 (3)光干渉に関与する被覆膜中に蓄光性物質を分散さ
せて含有した層として設ける。
【0023】上記(1)、(2)および(3)の蓄光発
色層の形成法の概要としては、次の方法が挙げられる。 1)蓄光性物質を主成分とする層を設け、この蓄光発色
層が可視光干渉に関与する場合、屈折率の大小から干渉
の高屈折率層あるいは低屈折率層に用い、干渉条件が合
うように屈折率と膜厚を設計し、可視光干渉反射が起こ
り着色され、同時に蓄光を発する膜とする。製膜はゾル
−ゲル法や水溶液からの固層析出等の表面への析出を利
用する方法がある。これらの得られた粉体を必要によっ
ては熱処理することが望ましい。膜物質が熱分解する場
合には、最外層に蓄光発色層を形成することが望まし
い。 2)光干渉に関与しない蓄光性物質を主成分とする層を
設け、この蓄光発色層が可視光干渉に関与しない場合、
最外層に干渉が起こらないように十分薄く蓄光性物質膜
を形成する。この場合蓄光性物質膜は微粒子からなる膜
でもよい。製膜はゾル−ゲル法や水溶液からの固層析出
等の表面への析出を利用する方法がある。また、溶媒中
に分散した蓄光性物質微粒子(被覆される基体となる粒
子より粒径の小さい蓄光質粒子)を混合し、ヘテロ凝集
などで付着させる方法がある。上記の二つの方法の場
合、これらの得られた粉体を必要によっては熱処理する
ことが望ましい。膜物質が熱分解する場合には、最外層
に蓄光発色層を形成することが望ましい。
【0024】3)光干渉に関与する被覆膜中に蓄光性物
質を分散させて含有した層として設ける場合の一つの方
法は、原料組成物に蓄光性物質を溶解または分散により
混合し、これを用いて被膜形成を行う。干渉の高屈折率
層あるいは低屈折率層に蓄光性物質を含有させるため
に、製膜時に原料を含む溶媒中に蓄光性物質微粒子(被
覆される基体となる粒子より粒径の小さい蓄光質粒子)
を混合し、製膜し1層以上の層中に粒子を含有させる。
この場合より外側の層に含有させること、また、多くの
層に含有させることが望ましい。更に、ヘテロ凝集等に
より蓄光性物質微粒子を基体粒子に吸着させてから製膜
することも可能である。 4)光干渉に関与する被覆膜中に蓄光性物質を分散させ
て含有した層として設ける場合の他の方法は、多層膜被
覆粉体を形成し、熱処理をした後、多層膜被覆粉体を蓄
光性物質溶解液に浸漬し、含浸させる。最外層を熱処理
する場合、例えば、製膜時に添加剤をいれたり、温度や
熱処理時間を長くすることにより、最外層を多孔質と
し、その空隙に溶媒に分散あるいは溶解した蓄光性物質
を含浸させることにより形成する。
【0025】次に一例として、高屈折率の金属酸化物
と、低屈折率の蓄光性物質を含む金属酸化物の交互多層
膜を形成する方法について具体的に説明する。まず、チ
タンあるいはジルコニウムなどのアルコキシドを溶解し
たアルコール溶液に基体粒子を分散し、攪拌させながら
水とアルコール及び触媒の混合溶液を滴下し、前記アル
コキシドを加水分解することにより、基体粒子表面に高
屈折率膜として酸化チタン膜あるいは酸化ジルコニウム
膜を形成する。その後、この粉体を固液分離し、乾燥
後、熱処理を施す。乾燥手段としては、真空加熱乾燥、
真空乾燥、自然乾燥のいずれでもよい。また、雰囲気調
整しながら不活性雰囲気中で噴霧乾燥機などの装置を用
いることも可能である。熱処理は、酸化しない被膜組成
物は空気中で、酸化しやすい被膜組成物は不活性雰囲気
中で、150〜1100℃(粉体核粒子が無機粉体の場
合)または150〜500℃(粉体核粒子が無機粉体以
外の場合)で1分〜3時間熱処理する。続いて、ケイ素
アルコキシド、アルミニウムアルコキシドなどの、酸化
物になったときに低屈折率となる金属アルコキシドおよ
び蓄光性物質を溶解したアルコール溶液に、前記の高屈
折率膜を形成した粉体を分散し、攪拌させながら水とア
ルコール及び触媒の混合溶液を滴下し、前記アルコキシ
ドを加水分解することにより、前記高屈折率膜被覆粉体
表面に低屈折率膜として酸化ケイ素あるいは酸化アルミ
ニウムの膜を形成する。その後、粉体を固液分離し、真
空乾燥後、前記と同様に熱処理を施す。この操作によ
り、粉体基体粒子の表面に2層の、高屈折率の金属酸化
物膜を形成する操作を繰り返すことにより、多層の金属
酸化物膜を有する蓄光性多層膜被覆粉体が得られる。
【0026】また、基体粒子の表面に形成する屈折率の
異なる交互被覆膜の各層の厚さを調整することにより特
別の機能を与えることができる。例えば、基体粒子の表
面に、屈折率の異なる交互被覆膜を、次の式(3)を満
たすように、被膜を形成する物質(単位被覆層)の屈折
率nと可視光の波長の4分の1の整数m倍に相当する厚
さdを有する交互膜を適当な厚さと膜数設ける。これに
より、特定の波長λの光(フレネルの干渉反射を利用し
たもの)が反射または吸収される。 nd=mλ/4 (3) この作用を利用して、基体粒子の表面に目標とする可視
光の波長に対し式(3)を満たすような膜の厚みと屈折
率を有する膜を製膜し、さらにその上に屈折率の異なる
膜を被覆することを1度あるいはそれ以上交互に繰り返
すことにより可視光域に特有の反射あるいは吸収波長幅
をする膜が形成される。このとき製膜する物質の順序は
次のように決める。まず基体粒子自体の屈折率が高いと
きには第1層目が屈折率の低い膜、逆の関係の場合には
第1層目が屈折率の高い膜とすることが好ましい。
【0027】膜厚は、膜屈折率と膜厚の積である光学膜
厚の変化を分光光度計などで反射波形として測定、制御
するが、反射波形が最終的に必要な波形になるように各
層の膜厚を設計する。例えば、多層膜を構成する各単位
被膜の反射波形のピーク位置がずれた場合に白色の粉体
となるが、各単位被膜の反射波形のピーク位置を精密に
合わせると、染料や顔料を用いずとも青、緑、黄色など
の単色の着色粉体とすることができる。
【0028】ただし、実際の粉体の場合、粉体の粒径、
形状、膜物質および核粒子物質の相互の界面での位相ず
れ及び屈折率の波長依存性によるピークシフトなどを考
慮して設計する必要がある。例えば、核粒子の形状が平
行平板状である場合には、粒子平面に形成される平行膜
によるフレネル干渉は上記式(3)のnを次の式(4)
のNに置き換えた条件で設計する。特に、粉体の形状が
平行平板状である場合でも金属膜が含まれる場合には、
式(4)の金属の屈折率Nに減衰係数κが含まれる。な
お、透明酸化物(誘電体)の場合にはκは非常に小さく
無視できる。 N=n+iκ(iは複素数を表す) (4) この減衰係数κが大きいと、膜物質および核粒子物質の
相互の界面での位相ずれが大きくなり、さらに多層膜の
すべての層に位相ずれによる干渉最適膜厚に影響を及ぼ
す。
【0029】これにより幾何学的な膜厚だけを合わせて
もピーク位置がずれるため、特に単色に着色する際に色
が淡くなる。これを防ぐためには、すべての膜に対する
位相ずれの影響を加味し、コンピュータシミュレーショ
ンであらかじめ膜厚の組合せが最適になるように設計す
る。さらに、金属表面にある酸化物層のための位相ずれ
や、屈折率の波長依存性によるピークシフトがある。こ
れらを補正するためには、分光光度計などで、反射ピー
クや吸収ボトムが最終設定膜数で目標波長になるよう最
適の条件を見出すことが必要である。
【0030】球状粉体などの曲面に形成された膜の干渉
は平板と同様に起こり、基本的にはフレネルの干渉原理
に従う。したがって、着色方法も単色に設計することが
できる。ただし曲面の場合には、粉体に入射し反射され
た光が複雑に干渉を起こす。これらの干渉波形は膜数が
少ない場合には平板とほぼ同じである。しかし、総数が
増えると多層膜内部での干渉がより複雑になる。多層膜
の場合もフレネル干渉に基づいて、反射分光曲線をコン
ピュータシミュレーションであらかじめ膜厚の組合せが
最適になるよう設計することができる。特に基体粒子表
面への被膜形成の場合、基体粒子表面とすべての膜に対
する位相ずれの影響を加味し、コンピュータシミュレー
ションであらかじめ膜厚の組合せが最適になるよう設計
する。さらに、基体粒子表面にある皮膜層のためのピー
クシフトや屈折率の波長依存性によるピークシフトも加
味する。実際のサンプル製造では設計した分光曲線を参
考にし、実際の膜においてこれらを補正するために、分
光光度計などで反射ピークや吸収ボトムが最終目的膜数
で目標波長になるよう膜厚を変えながら最適の条件を見
出さねばならない。不定形状の粉末に着色する場合も多
層膜による干渉が起こり、球状粉体の干渉多層膜の条件
を参考にし基本的な膜設計を行う。上記の多層膜を構成
する各単位被膜のピーク位置は各層の膜厚により調整す
ることができ、膜厚は溶液組成および反応時間および原
料の添加回数による調整することができ所望の色に着色
することができる。以上のように、反射ピークや吸収ボ
トムが最終目的膜数で目標波長になるよう膜形成溶液な
どの製膜条件を変えながら最適の条件を見出すことによ
り、単色の粉体を得ることができる。また、多層膜を構
成する物質の組合せおよび各単位被膜の膜厚を制御する
ことにより多層膜干渉による発色を調整することができ
る。これにより、染料や顔料を用いなくても粉体を所望
の色に鮮やかに着色することができる。
【0031】次にかくして得られる本発明に係る蓄光性
多層膜被覆粉体を用いてカラーインキ組成物を調製する
方法について説明する。本発明において用いるインキ用
分散媒としては、カラー印刷用あるいはカラー磁気印刷
に用いられる従来公知のワニスを用いることができ、例
えば液状ポリマー、有機溶媒に溶解したポリマーやモノ
マーなどを粉体の種類やインキの適用方法、用途に応じ
て適宜に選択して使用することができる。
【0032】液状ポリマーとしては、ポリペンタジエ
ン、ポリブタジエン等のジエン類、ポリエチレングリコ
ール類、ポリアミド類、ポリプロピレン類、ワックス類
あるいはこれらの共重合体編成体等を挙げることができ
る。有機溶媒に溶解するポリマーとしては、オレフィン
系ポリマー類、オリゴエステルアクリレート等のアクリ
ル系樹脂類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリイソ
シアネート類、アミノ樹脂類、キシレン樹脂類、ケトン
樹脂類、ジエン系樹脂類、ロジン変性フェノール樹脂、
ジエン系ゴム類、クロロプレン樹脂類、ワックス類ある
いはこれらの変性体や共重合体などを挙げることができ
る。有機溶媒に溶解するモノマーとしては、スチレン、
エチレン、ブタジエン、プロピレンなどを挙げることが
できる。有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノ
ール、ノルマルプロパノール等のアルコール類、アセト
ン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ケロ
シン、ベンジン炭化水素類、エステル類、エーテル類あ
るいはこれらの変性体や共重合体などを挙げることがで
きる。
【0033】本発明の蓄光性多層膜被覆粉体を用いたカ
ラーインキ組成物には、そのほか着色剤あるいは調色剤
として、油性染料や、乾燥の遅い樹脂には固化剤、粘性
を上げるために増粘剤、粘性を下げるための流動化剤、
粒子同志の分散のために分散剤などの成分を含ませるこ
とができる。本発明の蓄光性多層膜被覆粉体によるカラ
ーインキ組成物は、単一の粉体ないしは分光特性の異な
る複数の粉体の組み合せにより、カラー印刷やカラー磁
気印刷に適用できるほか、3原色の粉体を用いて、可視
光、蓄光および磁気の3種の識別機能をもち、印刷物の
偽造防止用カラー磁性インキなどセキュリティ機能を必
要とする他の用途に適用することができる。
【0034】
〔実施例1〕
(磁性体を用いた蓄光性多層膜被覆粉体1、蓄光体単独
層被覆の場合) (1層目シリカコーティング)BASF製カーボニル鉄
粉(平均粒径1.8μm,10kOeでの磁化は203emu
/g)20gに対し、あらかじめエタノール158.6g
にシリコンエトキシド3.5gを溶解したエタノール溶
液に分散させた後、撹拌しながら、あらかじめ用意して
おいたアンモニア水8.0gと脱イオン水8.0gの混
合溶液を添加した。添加後5時間常温で反応し、十分の
エタノールで洗浄後、真空乾燥し、さらに回転式チュー
ブ炉を用いて、窒素雰囲気で800℃で、30分熱処理
し、冷却し、シリカコート鉄粉A1を得た。
【0035】(2層目銅含有硫化亜鉛コーティング)セ
パラブルフラスコにシリカコート鉄粉A1、20gを、
あらかじめエタノール198.3gに対し、亜鉛エトキ
シド5.6gを溶解したエタノール溶液に分散させた
後、撹拌しながら、硫化水素ガスを100ml/mi
n.の割合でバブル通気し、更に、あらかじめ用意して
おいた3%硫酸第1銅エタノール溶液55.9gを1時
間かけて滴下した。滴下後、4時間常温で反応し、十分
のエタノールで洗浄後、真空乾燥し、さらに回転式チュ
ーブ炉を用いて、窒素雰囲気で800℃で、30分熱処
理し、冷却し、シリカ−硫化亜鉛コート鉄粉A2を得
た。この硫化亜鉛の厚さは55nmであり、この粉体の
反射ピークは420nmで、反射率30%の青色であっ
た。この粉体に蛍光灯を照射すると、帯緑黄色の蓄光色
がみられた。
【0036】(3層目シリカコーティング)シリカ−硫
化亜鉛コート鉄粉A220gを、あらかじめエタノール
158.6gにシリコンエトキシド3.5gを溶解した
エタノール溶液に分散させた後、撹拌しながら、あらか
じめ用意しておいたアンモニア水8.0gと脱イオン水
8.0gの混合溶液を添加した。添加後5時間常温で反
応し、十分のエタノールで洗浄後、真空乾燥し、さらに
回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気で800℃で、
30分熱処理し、冷却し、シリカ−硫化亜鉛コート鉄粉
3を得た。
【0037】(4層目銅含有硫化亜鉛コーティング)セ
パラブルフラスコにシリカ−硫化亜鉛コートカーボニル
鉄粉A320gを、あらかじめエタノール198.3g
に対し、亜鉛エトキシド5.4gを溶解したエタノール
溶液に分散させた後、撹拌しながら、硫化水素ガスを1
00ml/min.の割合でバブル通気し、更に、あら
かじめ用意しておいた0.9%硫酸第1銅エタノール溶
液55.9gを1時間かけて滴下した。滴下後、4時間
常温で反応し、十分のエタノールで洗浄後、真空乾燥
し、さらに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気で8
00℃で、30分熱処理し、冷却し、シリカ−硫化亜鉛
コートカーボニル鉄粉C4を得た。この硫化亜鉛の厚さ
は55nmであり、この粉体の反射ピークは385nm
で、反射率41%の紫色であった、この粉体に蛍光灯を
当てると、帯緑黄色の蓄光色がみられ、2層より明るく
なった。
【0038】(カラーインキ組成物の調製および分光特
性)このようにして得られた粉体C4を、ポリエステル
樹脂系ワニス35部に対し、粉体65部で混合した後、
ブレードコーターで白紙に塗布した。塗布した紙の反射
ピークは可視光域では480nmで、反射率35%であっ
た。また、蛍光灯を10分間照射後、黄色の燐光を発色
した。
【0039】〔実施例2〕 (磁性体を用いた蓄光性多層膜被覆粉体2、蓄光体、S
rAl2 4 :Eu,単独層被覆の場合) (1層目シリカコーティング)BASF製カーボニル鉄
粉(平均粒径1.8μm,10kOeでの磁化は203emu
/g)18gに対し、あらかじめエタノール158.6g
にシリコンエトキシド3.5gを溶解したエタノール溶
液に分散させた後、撹拌しながら、あらかじめ用意して
おいたアンモニア水8.5gと脱イオン水8.5gの混
合溶液を添加した。添加後,5時間常温で反応し、十分
のエタノールで洗浄後、真空乾燥し、さらに回転式チュ
ーブ炉を用いて、窒素雰囲気で800℃で、30分熱処
理し、冷却し、シリカコート鉄粉B1を得た。
【0040】(2層目Eu含有アルミン酸ストロンチウ
ムコーティング)セパラブルフラスコにシリカコート鉄
粉B1、20gを、あらかじめエタノール198.3g
に対し、アルミニウムエトキシド5.8gと、ストロン
チウムエトキシド4.5gとユーロピウムエトキシド
0.8gを混合し、十分均一化した後、撹拌しながら、
蒸留水5.3gをエタノール55.9gに混合した溶液
を1時間かけて滴下した。滴下後、6時間常温で反応
し、その後十分のエタノールで洗浄後、真空乾燥し、さ
らに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気で1000
℃で、30分熱処理し、急冷し、Eu含有アルミン酸ス
トロンチウムコート鉄粉B2を得た。このEu含有アル
ミン酸ストロンチウム膜の厚さは60nmであり、この
粉体の反射ピークは500nmで、反射率28%の緑色で
あった。この粉体に蛍光灯を当てた後、暗い箱の中に入
れた際に、青色の発光がみられた。
【0041】(3層目シリカコーティング)シリカ−E
u含有アルミン酸ストロンチウム被覆鉄粉B216g
を、あらかじめエタノール158.6gにシリコンエト
キシド4.0gを溶解したエタノール溶液に分散させた
後、撹拌しながら、あらかじめ用意しておいたアンモニ
ア水8.5gと脱イオン水8.5gの混合溶液を添加し
た。添加後,5時間常温で反応し、十分のエタノールで
洗浄後、真空乾燥し、さらに回転式チューブ炉を用い
て、窒素雰囲気で800℃で、30分熱処理し、冷却
し、シリカ−Eu含有アルミン酸ストロンチウム−シリ
カコート鉄粉B3を得た。
【0042】(4層目Eu含有アルミン酸ストロンチウ
ムコーティング)セパラブルフラスコにシリカコート鉄
粉B3、16gを、あらかじめエタノール198.3g
に対し、アルミニウムエトキシド5.8gと、ストロン
チウムエトキシド4.5gとユーロピウムエトキシド
0.8gを混合し、十分均一化した後、撹拌しながら、
蒸留水5.3gをエタノール55.9gに混合した溶液
を1時間かけて滴下した。滴下後、6時間常温で反応
し、その後十分のエタノールで洗浄後、真空乾燥し、さ
らに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気で1000
℃で、30分熱処理し、急冷し、Eu含有アルミン酸ス
トロンチウムコート鉄粉B4を得た。このEu含有アル
ミン酸ストロンチウム膜の厚さは60nmであり、この
粉体の反射ピークは480nmで、反射率38%の緑色で
あった。この粉体に蛍光灯を当てた後、暗い箱の中に入
れた際に、青色の発光がみられ、上記2層被覆物B2
り明るくなった。
【0043】(カラーインキ組成物の調製および分光特
性)このようにして得られた粉体B4を、ポリエステル
樹脂系ワニス35部に対し、粉体65部で混合した後、
ブレードコーターで白紙に塗布した。塗布した紙の反射
ピークは可視光域では450nmで、反射率38%であっ
た。また、蛍光灯を10分間照射後、淡緑色の燐光を発
した。
【0044】〔実施例3〕 (磁性体を用いた蓄光性多層膜被覆粉体3;第2層目チ
タニアコーティングに蓄光体含有の場合) (1層目シリカコーティング)BASF製カーボニル鉄
粉(平均粒径1.8μm,10kOeでの磁化は203emu
/g)20gをエタノール100ml中に分散し、容器をオ
イルバスで加熱して液の温度を55℃に保持した。これ
にシリコンエトキシド6gとアンモニア水(29%)8
gおよび水8gを添加し、撹拌しながら2時間反応させ
た。反応後エタノールで希釈洗浄し、濾過し、真空乾燥
機で110℃3時間乾燥した。乾燥後、回転式チューブ
炉を用いて加熱処理を650℃で30分施しシリカコー
ト粉体C 1 を得た。得られたシリカコート膜の膜厚は9
8nmであり、分散状態は非常に良かった。
【0045】(2層目チタニアコーティング)加熱処理
後再度、得られたシリカコート粉体C1 10g及び蓄光
物質である銅含有硫化亜鉛微粒子(平均粒径0.015
μm)8gをエタノール200mlに分散した。容器をオ
イルバスで加熱して液の温度を55℃に保持した。これ
にチタンエトキシド4.7g加え撹拌する。これにエタ
ノール30mlと水8.0gの混合溶液を60分かけて滴
下した後、2時間反応させ、真空乾燥および加熱処理を
施しチタニア−シリカコート粉体C2を得た。得られた
チタニア−蛍光体銅含有硫化亜鉛カドミウム微粒子/シ
リカコート粉体C2は分散性が良く、それぞれ単粒子で
あった。チタニア−シリカコート粉体C2のチタニア膜
の厚さは77nmであった。またこの粉体の分光反射曲線
のピーク波長は450nmであり、ピーク波長での反射率
は35%で、鮮やかなシアン色であった。さらにこの粉
体の10kOeでの磁化は167emu/gであった。
【0046】(3層目シリカコーティング)チタニア−
シリカコート粉体C2 10gをエタノール100ml中に
分散し、容器をオイルバスで加熱して液の温度を55℃
に保持した。これにシリカコンエトキシド6gとアンモ
ニア水(29%)8gおよび水8gを添加し、撹拌しな
がら2時間反応させた。反応後エタノールで希釈洗浄
し、濾過し、真空乾燥機で110℃3時間乾燥した。乾
燥後、回転式チューブ炉を用いて加熱処理を650℃で
30分施しシリカ−チタニアコード粉体C3を得た。得
られたシリカ−チタニアコート粉体C3の膜厚は99nm
であり、分散状態は非常に良かった。
【0047】(4層目チタニアコーティング)加熱処理
後再度、得られたシリカ−チタニアコート粉体C3 10
gをエタノール200mlを加え分散し、容器をオイルバ
スで加熱して液の温度を55℃に保持した。これにチタ
ンエトキシド5.3g加え撹拌する。これにエタノール
30mlと水8.0gの混合溶液を60分かけて滴下した
後、2時間反応させ、真空乾燥および加熱処理を施しチ
タニア−シリカコート粉体C4を得た。得られたチタニ
ア−シリカコート粉体C4は分散性が良く、それぞれ単
粒子であった。チタニア−シリカコート粉体C4のチタ
ニア膜の厚さは75nmであった。この粉体の反射ピーク
は553nmで、反射率47%で鮮やかな緑色であった。
さらにこの粉体の10kOeでの磁化は146emu/gであっ
た。
【0048】(カラーインキ組成物の調製および分光特
性)このようにして得られた粉体を、ポリエステル樹脂
系ワニス35部に対し、粉体65部で混合した後、ブレ
ードコーターで白紙に塗布した。塗布した紙の反射ピー
クは可視光域では553nmで、反射率は53%であっ
た。また、蛍光灯を10分間照射後、淡緑色の燐光を発
した。
【0049】〔比較例1〕 (磁性体を用いた多層膜被覆粉体1;蓄光体を含有しな
い場合)実施例1と同じ操作を行った。但し、2層目チ
タニアコーティングにおける反応液中に蓄光体銅含有硫
化亜鉛カドミウム微粒子を分散、混合をしなかった。塗
布した紙の反射ピークは可視光域では553nmで53%
であったが、蛍光灯を照らしても、燐光の発色は認めら
れなかった。
【0050】〔実施例4〕 (磁性体を用いた蓄光性多層膜被覆粉体4;蓄光体含浸
の場合) (1層目シリカコーティング)BASF製カーボニル鉄
粉(平均粒径1.8μm,10kOeでの磁化は203emu
/g)20gを、あらかじめエタノール158.6gにシ
リコンエトキシド3.0gを溶解したエタノール溶液に
分散させた後、撹拌しながら、あらかじめ用意しておい
たアンモニア水8.0gと脱イオン水8.0gの混合溶
液を添加した。添加後5時間常温で反応し、十分のエタ
ノールで洗浄後、真空乾燥し、さらに回転式チューブ炉
を用いて、窒素雰囲気で500℃で、30分熱処理し、
シリカコートカーボニル鉄粉D1を得た。
【0051】(2層目チタニアコーティング)シリカコ
ートカーボニル鉄粉D1 20gを、あらかじめエタノー
ル198.3gにチタンエトキシド3.0gを溶解した
エタノール溶液に分散させた後、撹拌しながら、あらか
じめ用意しておいた脱イオン水3.0gとエタノール2
3.7gの混合溶液を1時間かけて滴下した。滴下後5
時間常温で反応し、十分のエタノールで洗浄後、真空乾
燥し、さらに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気で
500℃で、30分熱処理し、チタニア−シリカコート
カーボニル鉄粉D2を得た。
【0052】(3層目シリカコーティング)チタニア−
シリカコートカーボニル鉄粉D2 20gを、あらかじめ
エタノール158.6gにシリコンエトキシド3.0g
を溶解したエタノール溶液に分散させた後、撹拌しなが
ら、あらかじめ用意しておいたアンモニア水8.0gと
脱イオン水8.0gの混合溶液を添加した。添加後5時
間常温で反応し、十分のエタノールで洗浄後、真空乾燥
し、さらに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気で5
00℃で、30分熱処理し、シリカ−チタニアコートカ
ーボニル鉄粉D3を得た。
【0053】(4層目チタニアコーティング)シリカ−
チタニアコートカーボニル鉄粉D3 20gを、あらかじ
めエタノール198.3gにチタンエトキシド3.0g
を溶解したエタノール溶液に分散させた後、撹拌しなが
ら、あらかじめ用意しておいた脱イオン水3.0gとエ
タノール23.7gの混合溶液を1時間かけて滴下し
た。滴下後5時間常温で反応し、十分のエタノールで洗
浄後、真空乾燥し、さらに回転式チューブ炉を用いて、
窒素雰囲気で500℃で、30分熱処理し、チタニア−
シリカコートカーボニル鉄粉D4を得た。
【0054】(5層目シリカコーティング)チタニア−
シリカコートカーボニル鉄粉D4 20gを、あらかじめ
エタノール158.6gにシリコンエトキシド3.0g
を溶解したエタノール溶液に分散させた後、撹拌しなが
ら、あらかじめ用意しておいたアンモニア水8.0gと
脱イオン水8.0gの混合溶液を添加した。添加後5時
間常温で反応し、十分のエタノールで洗浄後、真空乾燥
し、さらに回転式チューブ炉を用いて、窒素雰囲気で5
00℃で、30分熱処理し、シリカ−チタニアコートカ
ーボニル鉄粉D5を得た。
【0055】(6層目チタニアコーティング)シリカ−
チタニアコートカーボニル鉄粉D5 20gを、あらかじ
めエタノール198.3gにチタンエトキシド3.0g
を溶解したエタノール溶液に分散させた後、撹拌しなが
ら、あらかじめ用意しておいた脱イオン水3.0gとエ
タノール23.7gの混合溶液を1時間かけて滴下し
た。滴下後5時間常温で反応し、十分のエタノールで洗
浄後、真空乾燥し、さらに回転式チューブ炉を用いて、
窒素雰囲気で500℃で、30分熱処理し、チタニア−
シリカコートカーボニル鉄粉D6を得た。
【0056】かくして得られた多層膜被覆粉体を蓄光物
質である銅含有硫化カドミウム微粒子(0.01μm)
を水に乳化分散させた濃度5g/100gの乳化液に浸
漬し、固液分離後、真空乾燥し、蓄光体含浸チタニア−
シリカコートカーボニル鉄粉D7を得た。
【0057】(カラーインキ組成物の調製および分光特
性)これをポリエステル樹脂系ワニス10gに対し、チ
タニア−シリカコートカーボニル鉄粉D72gを、さら
に溶剤としてキシレン7gを混合し、インキとし、この
インキ5gをブレードコーターでA4判アート紙に一様
にコートし乾燥した。乾燥後得られた塗布紙の色は46
0nmにピークを有し、反射率64%の鮮やかなシアン色
となった。また、蛍光灯を10分間照射後、淡い黄緑色
の燐光を発した。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
染料や顔料を用いずとも青、緑、黄色などの美麗で安定
な色調のインキとなる。しかも特別な読取り機器を用い
ずに、蓄光の有無による印刷物の識別で偽造防止が可能
となる。これらの優れた機能を有すると共に、基体とし
て磁性体を活用すると、高性能カラー磁気印刷用インキ
の色材としても適用可能であり、可視光、蓄光および磁
気の3種の識別機能をもち、印刷物の偽造防止効果を高
めることが可能であり、極めて高い実用性を有するもの
である。
フロントページの続き (72)発明者 星野 希宜 東京都西多摩郡日の出町平井字欠下2−1 日鉄鉱業株式会社内 (72)発明者 中塚 勝人 宮城県仙台市太白区茂庭台四丁目3番5の 1403号 Fターム(参考) 4J039 BA06 BA13 BA22 BA23 BA25 BA30 BA32 BA35 BA36 BA37 BA38 BE01 BE33 EA26 EA27 EA48 4K018 BB10 BC28 BC29 BD04 BD10 5E041 AA11 BC08 CA10 HB17

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体粒子上に複数の被覆膜を有する多層
    膜被覆粉体において、該被覆膜の少なくとも1層に蓄光
    性物質を有することを特徴とする蓄光性多層膜被覆粉
    体。
  2. 【請求項2】 前記多層膜が光干渉作用を示すことを特
    徴とする請求項1記載の蓄光性多層膜被覆粉体。
  3. 【請求項3】 前記基体粒子が磁性粒子であることを特
    徴とする請求項1記載の蓄光性多層膜被覆粉体。
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