2022/10/05 18:00

結成10周年を迎えた、とけた電球──待望の初フル・アルバムに込めた温もりと軌跡

とけた電球 [横山航大(Ba) / 岩瀬賢明(Vo/Gt)/ 高城有輝(Dr) / 境直哉(Key)]

バンド結成10周年を迎え、初のフル・アルバム『piece of film』をリリースした、とけた電球。10月9日からは、東名阪をまわる初のワンマン・ツアーも開催する。結成10年を迎えたと同時に、アルバムのリリースにワンマン・ツアーと、“はじめて”尽くしとなった彼らはいまなにを思うのか。「いまででいちばん新鮮な気持ちでリリースする」と語る本作の制作過程と、ツアーへの意気込みを語ってもらった。

とけた電球初のフル・アルバムはこちら!


INTERVIEW : とけた電球

とけた電球は結成してからの10年間、シングルやEPをコンスタントに発表することで、リスナーへグッド・ミュージックを絶えず届けてきた。そしてついにリリースされる待望のファースト・フル・アルバムは、全15曲のうち11曲が新録という、期待感たっぷりな1枚だ。いざ聴いてみると、その期待以上の楽曲ばかりが収録されている。なかには結成当初に作った曲も収録されていたりと、いまの彼らだからこそ制作できたアルバムであると同時に、とけた電球の10年間の軌跡を感じるのにもってこいの作品でもあるだろう。渾身のバンド・サウンドをぜひ堪能してもらいたい。

インタヴュー・文:梶野有希
写真:作永裕範

いまやりたいことを詰め込んだ素敵な1枚

──初のフル・アルバムですが、制作のきっかけは何でしたか。

境直哉(Key) (以下、境):スタッフさんから「フル・アルバムを作ろう」というお話をいただいたんです。いままではこまめにリリースしてきたんですけど、アルバムとなると曲数が必要なので、ある程度の曲数をストックするところからのスタートでした。

──全15曲のうち11曲が新録ですが、制作はやはり大変でした?

岩瀬賢明(Vo/Gt)(以下、岩瀬):僕は曲を書くのが比較的遅いうえに、締め切りもあるという状況下で、曲をたくさん作らないといけなかったので、なかなかハードな制作でした。

──完パケは今年の6月中旬頃とのことですが、完成から数ヶ月経ったいま、どんな1枚になりましたか?

岩瀬:初のフル・アルバムなので、10年間バンドをやってきたなかで、いちばん新鮮な気持ちでリリースします。いままでにないタイプの曲もあるのでバラエティ豊かだし、とけた電球がいまやりたいことを詰め込んだ素敵な1枚になりました。ツアーも控えているので、ライヴでは収録曲がどういう風になるのかワクワクします。

横山航大(Ba)(以下、横山):コロナ禍で心境が変わったり、ライヴ数が減ったりしたなかで、曲もメンバーの意識も、少しずつ成長や変化をしていったんです。その過程が映されたアルバムかなと。

:今作はアレンジにもたくさん携わらせてもらったのですが、全体を通していままでよりも自由な発想で作れました。特にドラムの音作りやビート感は、プロデューサーの矢野博康さんも一緒に音作りをしてくださったんです。貴重な経験もさせてもらいつつ、まだできないことがあると実感もしましたが、総じて自由に、かつ楽しく制作できました。

高城有輝(Dr)(以下、高城):とけた電球らしい1枚になりましたね。テンポも曲調も違う15曲が収録されているので、色々な曲を作れるという僕らの強みがちゃんと出ているし、アルバム制作を通じて岩瀬はおもしろいソング・ライターだなと改めて思いましたね。

──制作はどのように進めていきましたか?

高城:普段はバンドで合わせながら曲作りをしていますけど、コロナの影響もあり、オンラインでの作業がメインでした。だからレコーディングではじめてみんなで合わせる曲も多かったんです。ドラムを叩いている身としては、レコーディングのときにようやく曲に息が吹き込まれる感じがして。そういった温度感も詰まっていると思いますね。

横山:スタジオでのセッションは、ほぼなかったよね。

:うん。岩瀬が弾き語りのデモを送ってきてくれて。そこにキーボードとか上物の音をオンライン上で足していきつつ、みんなで話し合いながら作っていったんです。

──そうだったんですね。全曲を通して、各パートの見せ場もありつつ、存在感がしっかりとあって、バランスのとれた音作りをされていると感じました。

:プレイヤーとして癖の強い人たちが集まっているバンドだと思うんですけど、楽器隊の僕らのなかに「あくまでも中心は歌」という共通認識があるので、そういった塩梅になったのかなと。

この記事の筆者
梶野 有希

1998年生まれ。誕生日は徳川家康と一緒です。カルチャーメディア『DIGLE MAGAZINE』でライター・編集を担当し、2021年1月よりOTOTOYに入社しました。インディーからメジャーまで邦ロックばかり聴いています。

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.276 とある日の記録

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.276 とある日の記録

垣根を越えて、“アゲ”で広がっていく輪──ビバラッシュpresents 〈アゲアゲJAPAN'24〉

垣根を越えて、“アゲ”で広がっていく輪──ビバラッシュpresents 〈アゲアゲJAPAN'24〉

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.269 昨夏、あの場所で

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.269 昨夏、あの場所で

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.261 長ければ長いほどいいですからね

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.261 長ければ長いほどいいですからね

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.254 三が日はサッカーボールとともに

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.254 三が日はサッカーボールとともに

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.247 小説を読む、音楽を知る

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.247 小説を読む、音楽を知る

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.239 料理をするようになったのは

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.239 料理をするようになったのは

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.227 地上で唯一出会える神様

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.227 地上で唯一出会える神様

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.220 コレクターって最高にかっこいい

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.220 コレクターって最高にかっこいい

視覚と聴覚を往来する、ヨルシカの音楽画集『幻燈』レビュー──2名の評者が魅せられた世界観とは

視覚と聴覚を往来する、ヨルシカの音楽画集『幻燈』レビュー──2名の評者が魅せられた世界観とは

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.212 仕事の境界線を超えて

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.212 仕事の境界線を超えて

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.205 映像作品を縁取る音

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.205 映像作品を縁取る音

いい曲を作ることがいいライヴへ繋がる──神はサイコロを振らないがパフォーマンスへかける想い

いい曲を作ることがいいライヴへ繋がる──神はサイコロを振らないがパフォーマンスへかける想い

TWEEDEES『World Record』を2名の評者が徹底レビュー!──メッセージ性や音質の違いに迫る

TWEEDEES『World Record』を2名の評者が徹底レビュー!──メッセージ性や音質の違いに迫る

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.197 2022年のベストライヴ10

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.197 2022年のベストライヴ10

Half time Oldが綴る世の中へのアイロニーと希望──「成長」をテーマに制作した、フル・アルバム

Half time Oldが綴る世の中へのアイロニーと希望──「成長」をテーマに制作した、フル・アルバム

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.190 男女 “ふたり” のデュエット曲

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.190 男女 “ふたり” のデュエット曲

結成10周年を迎えた、とけた電球──待望の初フル・アルバムに込めた温もりと軌跡

結成10周年を迎えた、とけた電球──待望の初フル・アルバムに込めた温もりと軌跡

TikTokで話題のドラマー、葵がアーティスト・デビュー! "青い"プロジェクトで魅せる、本当の自分

TikTokで話題のドラマー、葵がアーティスト・デビュー! "青い"プロジェクトで魅せる、本当の自分

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.184 愛犬といつか音楽を

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.184 愛犬といつか音楽を

大幅なアップデートを遂げた、神はサイコロを振らない ── 最新シングルとライヴを通じて、その理由を探

大幅なアップデートを遂げた、神はサイコロを振らない ── 最新シングルとライヴを通じて、その理由を探

願うは、愛と平和。──希望を届ける、神はサイコロを振らない〈Live Tour 2022「事象の地平線」〉ファイナル公演

願うは、愛と平和。──希望を届ける、神はサイコロを振らない〈Live Tour 2022「事象の地平線」〉ファイナル公演

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.173 2022年前半の音楽メモリー

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.173 2022年前半の音楽メモリー

新東京──ギターレスで魅せる、バンドサウンドの新たな可能性

新東京──ギターレスで魅せる、バンドサウンドの新たな可能性

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.167 音楽からあのキャラクターを

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.167 音楽からあのキャラクターを

厄介な心との向き合い方──3人の評者が秋山黄色のサード・アルバム『ONE MORE SHABON』を徹底レビュー!

厄介な心との向き合い方──3人の評者が秋山黄色のサード・アルバム『ONE MORE SHABON』を徹底レビュー!

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.159 家族の時間

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.159 家族の時間

はじまりは劣等感の肯定から──神はサイコロを振らない、未知なる日常を彩る初のフル・アルバムをリリース

はじまりは劣等感の肯定から──神はサイコロを振らない、未知なる日常を彩る初のフル・アルバムをリリース

10年間の想いを込めた初の武道館公演──“チームSHE'S”で作りあげた〈SHE’S in BUDOKAN〉ライヴレポート

10年間の想いを込めた初の武道館公演──“チームSHE'S”で作りあげた〈SHE’S in BUDOKAN〉ライヴレポート

ひとりひとりが“need you”!──緑黄色社会が受け止めるそれぞれの多面性

ひとりひとりが“need you”!──緑黄色社会が受け止めるそれぞれの多面性

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.148 読んでほしい! 2021年のオススメ記事

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.148 読んでほしい! 2021年のオススメ記事

Sean Oshima──ノンフィクションな表現を貫くソロ・シンガー

Sean Oshima──ノンフィクションな表現を貫くソロ・シンガー

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.142 音と色が繋がるとき

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.142 音と色が繋がるとき

灰色ロジックが辿り着いたストレートな表現─CD限定の初アルバムをリリース

灰色ロジックが辿り着いたストレートな表現─CD限定の初アルバムをリリース

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.136 バンドとライヴハウス

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.136 バンドとライヴハウス

【ライヴレポート】3組が表現したそれぞれのポップ──peanut buttersレコ発ライヴ〈Peanut Night〉

【ライヴレポート】3組が表現したそれぞれのポップ──peanut buttersレコ発ライヴ〈Peanut Night〉

文藝天国──聴覚と視覚で感じる淡い共鳴

文藝天国──聴覚と視覚で感じる淡い共鳴

大切なことはフィーリング! ───“これまで”を収録したpeanut buttersの初アルバム

大切なことはフィーリング! ───“これまで”を収録したpeanut buttersの初アルバム

chilldspotは10代をどう過ごしたのか?──これまでの歩みを映した初アルバム『ingredients』

chilldspotは10代をどう過ごしたのか?──これまでの歩みを映した初アルバム『ingredients』

オンライン・ライヴ・シリーズ『The LIVE-HOUSE』独占インタヴュー──第5弾出演アーティスト・lucky Kilimanjaroのときめきの正体とは?

オンライン・ライヴ・シリーズ『The LIVE-HOUSE』独占インタヴュー──第5弾出演アーティスト・lucky Kilimanjaroのときめきの正体とは?

小玉ひかり×Tani Yuuki スペシャル対談──コラボ楽曲“more”で共鳴するふたりの想い

小玉ひかり×Tani Yuuki スペシャル対談──コラボ楽曲“more”で共鳴するふたりの想い

初作にして傑作か?──5年のキャリアの集大成、ファースト・アルバムをリリースしたNewdums

初作にして傑作か?──5年のキャリアの集大成、ファースト・アルバムをリリースしたNewdums

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.121 週末、空いていますか?

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.121 週末、空いていますか?

ネクライトーキーが向かう新たな表現とは? ───ロック・サウンドを追求した意欲作『FREAK』

ネクライトーキーが向かう新たな表現とは? ───ロック・サウンドを追求した意欲作『FREAK』

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.114 〈JAPAN JAM〉予想セット・リスト

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.114 〈JAPAN JAM〉予想セット・リスト

the McFaddin×HOLIDAY! RECORDSs×FRIENDSHIP.の座談インタヴュー──関係者が語るバンドのエモーショナルな魅力と4曲の新作について

the McFaddin×HOLIDAY! RECORDSs×FRIENDSHIP.の座談インタヴュー──関係者が語るバンドのエモーショナルな魅力と4曲の新作について

比喩根(chilldspot)──信念を歌声に乗せて。世の中へ疑問を投げかける若きシンガー

比喩根(chilldspot)──信念を歌声に乗せて。世の中へ疑問を投げかける若きシンガー

今週のFRIENDSHIP.(2021年3月17日).

今週のFRIENDSHIP.(2021年3月17日).

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.106 “さくら”ソングと一緒に!

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.106 “さくら”ソングと一緒に!

ナリタジュンヤ──Miyamotoをプロデューサーに招いた新作「Regret」。共作の魅力やふたりの音楽性に迫る

ナリタジュンヤ──Miyamotoをプロデューサーに招いた新作「Regret」。共作の魅力やふたりの音楽性に迫る

Helsinki Lambda Clubは、これからも少年と大人の間を行き来する──〈"MIND THE GAP!!"〉ファイナル公演 ライヴレポート

Helsinki Lambda Clubは、これからも少年と大人の間を行き来する──〈"MIND THE GAP!!"〉ファイナル公演 ライヴレポート

先週のオトトイ(2021年2月1日)

先週のオトトイ(2021年2月1日)

REVIEWS : 012 国内インディ・ロック(2021年1月)──梶野有希

REVIEWS : 012 国内インディ・ロック(2021年1月)──梶野有希

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.100 2018年のインディーロックを振り返る

OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.100 2018年のインディーロックを振り返る

[インタヴュー] とけた電球

TOP