結成10周年を迎えた、とけた電球──待望の初フル・アルバムに込めた温もりと軌跡
バンド結成10周年を迎え、初のフル・アルバム『piece of film』をリリースした、とけた電球。10月9日からは、東名阪をまわる初のワンマン・ツアーも開催する。結成10年を迎えたと同時に、アルバムのリリースにワンマン・ツアーと、“はじめて”尽くしとなった彼らはいまなにを思うのか。「いまででいちばん新鮮な気持ちでリリースする」と語る本作の制作過程と、ツアーへの意気込みを語ってもらった。
とけた電球初のフル・アルバムはこちら!
INTERVIEW : とけた電球
とけた電球は結成してからの10年間、シングルやEPをコンスタントに発表することで、リスナーへグッド・ミュージックを絶えず届けてきた。そしてついにリリースされる待望のファースト・フル・アルバムは、全15曲のうち11曲が新録という、期待感たっぷりな1枚だ。いざ聴いてみると、その期待以上の楽曲ばかりが収録されている。なかには結成当初に作った曲も収録されていたりと、いまの彼らだからこそ制作できたアルバムであると同時に、とけた電球の10年間の軌跡を感じるのにもってこいの作品でもあるだろう。渾身のバンド・サウンドをぜひ堪能してもらいたい。
インタヴュー・文:梶野有希
写真:作永裕範
いまやりたいことを詰め込んだ素敵な1枚
──初のフル・アルバムですが、制作のきっかけは何でしたか。
境直哉(Key) (以下、境):スタッフさんから「フル・アルバムを作ろう」というお話をいただいたんです。いままではこまめにリリースしてきたんですけど、アルバムとなると曲数が必要なので、ある程度の曲数をストックするところからのスタートでした。
──全15曲のうち11曲が新録ですが、制作はやはり大変でした?
岩瀬賢明(Vo/Gt)(以下、岩瀬):僕は曲を書くのが比較的遅いうえに、締め切りもあるという状況下で、曲をたくさん作らないといけなかったので、なかなかハードな制作でした。
──完パケは今年の6月中旬頃とのことですが、完成から数ヶ月経ったいま、どんな1枚になりましたか?
岩瀬:初のフル・アルバムなので、10年間バンドをやってきたなかで、いちばん新鮮な気持ちでリリースします。いままでにないタイプの曲もあるのでバラエティ豊かだし、とけた電球がいまやりたいことを詰め込んだ素敵な1枚になりました。ツアーも控えているので、ライヴでは収録曲がどういう風になるのかワクワクします。
横山航大(Ba)(以下、横山):コロナ禍で心境が変わったり、ライヴ数が減ったりしたなかで、曲もメンバーの意識も、少しずつ成長や変化をしていったんです。その過程が映されたアルバムかなと。
境:今作はアレンジにもたくさん携わらせてもらったのですが、全体を通していままでよりも自由な発想で作れました。特にドラムの音作りやビート感は、プロデューサーの矢野博康さんも一緒に音作りをしてくださったんです。貴重な経験もさせてもらいつつ、まだできないことがあると実感もしましたが、総じて自由に、かつ楽しく制作できました。
高城有輝(Dr)(以下、高城):とけた電球らしい1枚になりましたね。テンポも曲調も違う15曲が収録されているので、色々な曲を作れるという僕らの強みがちゃんと出ているし、アルバム制作を通じて岩瀬はおもしろいソング・ライターだなと改めて思いましたね。
──制作はどのように進めていきましたか?
高城:普段はバンドで合わせながら曲作りをしていますけど、コロナの影響もあり、オンラインでの作業がメインでした。だからレコーディングではじめてみんなで合わせる曲も多かったんです。ドラムを叩いている身としては、レコーディングのときにようやく曲に息が吹き込まれる感じがして。そういった温度感も詰まっていると思いますね。
横山:スタジオでのセッションは、ほぼなかったよね。
境:うん。岩瀬が弾き語りのデモを送ってきてくれて。そこにキーボードとか上物の音をオンライン上で足していきつつ、みんなで話し合いながら作っていったんです。
──そうだったんですね。全曲を通して、各パートの見せ場もありつつ、存在感がしっかりとあって、バランスのとれた音作りをされていると感じました。
境:プレイヤーとして癖の強い人たちが集まっているバンドだと思うんですけど、楽器隊の僕らのなかに「あくまでも中心は歌」という共通認識があるので、そういった塩梅になったのかなと。