CH-53Kとは、シコルスキー・エアクラフト社が開発中の3発エンジンの重輸送ヘリコプターである。
概要
現在アメリカ海兵隊で使用されているCH-53E輸送ヘリコプターの近代改修機である。
初飛行は2014年を予定している。
現時点での調達予定機数は約200機。8個の航空隊と1個の訓練飛行隊が構成される見通し。
就役の暁には西側最大のヘリコプターとなる。
なお同規模のヘリコプターにはロシアのMi-6(1957年初飛行)がある。実際にはちょっと大きいよ
開発経緯
現在アメリカ海兵隊が使用している3発重輸送ヘリコプターCH-53Eは1980年代に配備されたもののため、そろそろ耐用年数が近づいてきており、これに代わるものとして、シコルスキーが提案したものである。
2009年より退役が始まるのを機に、HLR(Heavy Lift Replacement)計画が立ち上げられた。
当初はCH-53Eの改修案もあったものの、1フライト当たりのコストが高止まりしていたため、早々にキャンセルされている。
この為、シコルスキーが中心となり、こちらを再設計・新規調達する形でCH-53Kが調達されることとなった。
なおE型はK型就役まで現役にとどまる予定であるが、双発機であるD型は2012年末に全機退役予定。
特徴
基本的なスタイルはCH-53Eと同様の3発エンジンの重輸送ヘリコプターであるが、いたるところに最新技術が詰め込まれており、ほぼ別物とまでなっている。
機体構造
全面的に刷新されている。
- 機体の全長・全幅が拡大。
- 機体はこれまでの全金属製から複合材性へと変更。これにより耐腐食性、整備性の向上が期待されている。
- サイドスポンソンも大型化し、燃料搭載量が増大している。
- 装甲に関しても新世代の軽量装甲が採用され生存性が向上している。
- 機体は衝撃吸収構造とされ墜落時の生存性を高めている。
- 兵員座席についても衝撃吸収構造となっている。
- 機体各部にセンサーを設置。統合された防御装置を搭載。
- 積載能力が向上。463Lパレット×2、或いはハンヴィーが直接搭載できる貨物スペースが確保されている。
- 機体下部のカーゴフックは3か所(前型と変わらず)。吊り下げ能力は3倍に増強。
- 搭載物の統合化された荷役管理システムの採用による乗員ワークロードの低減。
駆動系
こちらも全面的に刷新されている。
- エンジンはGE38-1B(出力: 7,500軸馬力!)×3となり従来の7割増しとなり、燃費も20%改善している。また部品点数も削減している。
- トランスミッションも新型に更新されている。
- 第4世代複合素材性ローターブレードの採用。
- 新型ローターヘッドの採用。
- 尾部テイルローターの設計を刷新。
アヴィオニクス
こちらも全面的に(ry
- 操縦系統に関してはFBW化されている。
- またコクピットに関してもグラスコクピット化されている。
- ロックウェル・コリンズ社製のアビオニクス管理システムを搭載。飛行制御を統合化。
- これらにより乗員のワークロードが低減されている。
- 機首のFLIR(赤外線前方監視装置)が得た画像は、パイロットのHMD(ヘルメット装着表示装置)に表示することが出来る。また飛行経路の表示も可能。これにより夜間作戦能力が向上。
要するに・・・
全部変えました! そこ、新規開発じゃねーかとか言わない。予算が厳しいんだ。
これまでとこれから
2012年3月にシコルスキーから正式にプロポーサル(企画・提案)が提出される。
提案が通った場合2019年にIOC(Initial Operating Capability/初期作戦能力)を獲得する模様。
なお、この段階では初飛行は2013年を予定していた。
システム開発・実証機(SDD/System Development and Demonstration)7機を発注。内約は地上試験機2機、静強度試験機1機、飛行試験機4機。
現在、フロリダ州ウェストパームビーチのシコルスキー工場において地上試験機と飛行試験機2機が製作中。
新規システムのインテグレーションが済み次第、前述の通り2014年に飛行試験機の初飛行が予定されている。 また、同時進行で静強度試験用の機体も開発中。こちらはコネチカット州の工場で製造中。
開発段階を終了次第、システム実証機(SDTA/System Demonstration Test Article)4機にバトンタッチする模様。
その後IOCを獲得しLRIP(Law Rate Initial Production/低率初期生産)に移る予定。
開発状況
- 2012年12月地上試験機が完成。当初はローターを装備せず各コンポーネントの試験に使用される模様。
- 2013年5月 SDTA4機をアメリカ海軍航空システム軍団が発注。2017年に海兵隊引き渡し予定。
- 2014年2月 地上試験機が各コンポーネント試験を完了、機体に組み込んだGE38-1B3基を用いてローターヘッドを回す試験を開始。
- 2014年5月 ウェストパームビーチにてロールアウト。愛称をキングスタリオンに決定。
スペック
- 全長(胴体のみ):30.2m
- 高さ:8.46m
- 主回転翼直径:24.1m
- エンジン:GE38-1B(7,500shp×3)
- 最大離陸重量:33.6t(予定)
- 速度(巡航):170ノット(315km/h)
- 上昇率(海面上):664m/m
- 上昇限度:14,400ft
- 航続距離:841km
- 乗員:5名
- 武装:GAU-21×3t
- 戦闘行動半径:110nm (CH-53Eの約3倍)