著作権とは、創作物の利用を支配することを目的とする権利。知的財産権の一つ。ニコニコ内(というかむしろネット上)で最もないがしろにされているものでもある。
概要
用語の整理
- 著作物
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思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
著作権法に例示されているのは、小説、音楽、舞踊、絵、彫刻、地図、模型、映画、写真、プログラムなど。 - 二次的著作物
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著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。
3つの著作権
著作権は、大きく3つに分けられる。
- (知的財産権としての、狭義の)著作権は、みんながイメージするいわゆる著作権である。複製権、演奏権、公衆送信権など。音楽の場合、作曲者、作詞者が持つ権利である(が、実際は音楽出版社などに譲渡されている事も多い)。JASRACが管理しているのもこの部分。
- 著作者人格権は、著作者の持つ権利のうち、他人に譲渡や委託が出来ない権利である(譲渡できてしまうと金にモノを言わせて権利者を虐げる企業が出たりするので設けられている)。主に、著作者としての名誉を守るための権利である。「これは自分の作った曲だ」と表示してもらう権利(氏名表示権)と、勝手に改変されない権利(同一性保持権)が有名なところである。
- 著作隣接権は、著作権者ではないがそれっぽい人が持つ権利の総称。例えば歌についてだと、作詞作曲者だけでなく、音源を製作したレコード会社や、歌手、演奏家、テレビ局なんかも持つ権利がそれぞれあるため、ひっくるめてこう呼ばれる。動画などで音楽を使う場合、特にレコード会社が持つ原盤権が問題になる事が多いので、この件については後述。
著作権の適用範囲例
著作権を侵害すると
著作権侵害は親告罪なので、侵害されたら告訴しないと警察は動いてくれない。ただ、あくまでも「告訴がなければ検察が公訴を提起することができない」というだけであって、侵害する側の言い分で「親告罪だから訴えられない限りはシロ」というのは間違い。
侵害して訴えを起こされた側は、民事なら損害賠償責任を取らなくてはならない。つまり、著作権を侵害したことによって相手に与えた損失を、金銭で補填する責任がある。
刑事罰にも処せられる可能性もある。上の民事責任は、過失で著作権を侵害した場合も含まれるが、この刑事責任は故意に著作権を侵害した場合に限られる。 規定では「著作権を故意に侵害した者は、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金に処す」と、かなり重い罰則がある。また、罰金と懲役が併科されることもある。
著作権侵害にならない場合
この項目での「著作権侵害にならない」は、ニコニコ動画にアップロードしても権利者は削除する事が出来ない事を意味する。
- 著作権法(第五十一条から第五十八条)上、保護期間を過ぎたもの。(詳しくは著作権法を参照)
- 個人の場合は、著作者の死後70年を過ぎたもの(第五十一条)
- 共同著作物の場合は、最後の著作者の死後70年を過ぎたもの(第五十一条)
- 無名(著作者不明)または変名(ペンネーム)の場合は、公表後70年を過ぎたもの(第五十二条)
- 団体名義の場合は、公表後70年を過ぎたもの(第五十三条)
- 映画の場合は、公表後70年を過ぎたもの(第五十四条)
- 上記の保護期間の計算方法は、死亡日または公表日を含む年の次の年から起算する。(第五十七条)
- 一部の国の著作物については、第二次世界大戦中の権利を保護できなかったため戦時加算(アメリカだと3794日)がある(連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律)
- 著作権法が改正された2004年以前に保護期間が切れた映画については、公表後50年を過ぎたもの(2007年最高裁判決)
例えば「ローマの休日」は1953年公表のため、2003年12月31日で50年となり保護期間は消滅
最近よく見かける古い映画の格安DVDはこれを適用して第三者が発売したものである - 映画であっても著作者が個人と認められた場合は、公表後70年か、旧法の死後38年か長い方を過ぎたもの
チャップリンのDVD販売についての裁判では、作品のクレジットに「CHARLES CHAPLIN」の表示があり著作者が個人と判断された。2007年の判決では作品ごとに公表後70年か旧法の死後38年が適用され全て保護期間中とされた。戦時加算は適用されなかった。(東京地裁判決、2008年知財高裁が控訴棄却し確定)
- 事実の伝達にすぎない報道の引用
- 著作権者がOKと言った場合
ただ、法的にOKでも運営が「いや、これは合法だ!」と削除命令を拒否するかは別問題であって…→大人の事情
音楽にかかわる著作権
ニコニコユーザの関心が高いであろう、音楽に絡む著作権について簡単に説明する。
動画で音楽を使うときに絡む権利
音楽を動画で使って配信する時には、前項の1番目と3番目の権利が絡む事が多い。
両者は、大雑把な言い方をすると、曲そのものに対する権利と、その曲の、特定の演奏・音源に対する権利である。「楽譜・歌詞カード」に関連する権利と、それを実際に演奏したもの(を録音したもの)に発生する権利、と考えるとイメージしやすい。なお、後者はレコードやCDの原盤(コピーなどの際のマスターとなる、ソース音源)と一緒に扱われる事が多いため、音楽業界では伝統的に原盤権と呼ばれる。
前者の権利は、作曲者/作詞家/音楽出版社がJASRACに信託している事が多い(自分じゃ使用料徴収とかできないから)。そのため、JASRACとの包括契約を結んでいるニコニコ動画上では、この前者の権利については許諾を得ているものとして扱うことが出来る。従って、ニコニコ動画上で「歌ってみた(例外有り。後述)」「演奏してみた」をするのは合法である。
注意すべきは後者である。原盤権は、JASRACに信託されずにレコード会社などがそのまま保有している。そのため、「演奏してみた」ではなく、CDの内容をそのまま配信すると、この原盤権の侵害となり、削除対象となる。「歌ってみた」のBGMに、CDのインストゥルメンタル・トラック(カラオケver.)を使うと権利侵害となる事が多いので気をつけよう。
また、人格権(前項の2番目)についても配慮が必要である。JASRACやTV曲、レコード会社からは何も言われないが、勝手にアレンジをすると、作曲者本人の著作者人格権に触れてしまい、クレームがつく可能性がある (大地讃頌の例がこれに該当する) 。「演奏してみた」が合法であるので留意しないユーザーが多いが、編曲・アレンジなども度が過ぎると違法になることをちゃんと心に留めておくべきである。ある曲に違う歌詞を当てはめる「替え歌」なども、この権利を考慮するとかなりグレーゾーンである。
当然であるが、他人の曲を自分のものだと勝手に主張したりするのもいけない。
著作権を有する作品を上映する場合
原則として上映する場合は著作権を有する人物に許可を得ないと権利侵害と言うことになってしまう。
ただし、例外として第38条によれば「非営利」「無料・無報酬」であれば映画の著作物も含み、著作権者に許可を得なくても上映(上演・演奏を含む。公衆配信はアウト)が可能となる。
「非営利」は営業・販売に結びつかない目的であること、「無料・無報酬」については儲けがなければいいので、例えばカラオケルームの部屋を貸し切って上映した場合、参加者から部屋代を徴収した場合は主催者の儲けにならないので何の問題も無いが、それ以上の金銭を徴収した場合は主催者に儲けが出てしまうためアウトになる という解釈と、部屋代を「入場料」とみなし「無料」では無くなってしまう。との解釈もある。つまり、裁判をしてはっきり確定させないと分からない。
どちらにせよ、家で複数人が集まって非営利・無料の上映をする、と言うことならまず問題は無いであろう。
2016年現在、BD発売直後のガルパンTVシリーズ等その他二桁作品の無料上映会を開催している人が存在し、その人曰く「今まで開催後トラブルは一切なし。角川etc各メーカーに問い合わせ済み」との事。
第38条第4項では映画の著作物は別扱い。という記述が2016年まで存在したが、第38条第4項は「その複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供することができる。」であり、第38条の「上映する」事を制限する理由にはならない
二次創作と著作権
誰かの著作物を改変(アレンジ、組み合わせ)して生み出された二次的著作物にも著作権は存在する。
たとえば、ゲームなどの音楽をアレンジした音源には、編曲者である個人(うp主)や同人サークルなどのアレンジ者も権利を持つ。従って、このアレンジ曲を勝手に使用/改変した「三次創作」は、二次創作者であるうp主や同人サークルなどから訴えらたり権利者削除されたりする可能性も存在する。
なお、原曲の二次創作が許可されているかいないかは、この件に関しては問題とならない(勿論、原曲の二次使用がNGとなれば、三次使用もNGとはなるだろうが)。二次使用そのものが無断使用であったとしても、それは二次使用者に無断で三次使用をしていいという事にはならない。
初音ミク騒動
著作権は企業やプロだけが持つものではなく、ニコニコ動画上などで創作活動を行う一般人も持つ権利である。ニコニコ動画上で、一般ユーザの持つ権利に対し論争となった事例として、「初音ミク」を使用したオリジナル音楽の着うた化論争がある。
争点となったのは主に、「原盤権は誰が持っているのか」「著作隣接権のひとつ、配信権の扱い」「JASRACに権利が信託された件」「権利委託のタイミングと、委託された権利が何なのか」である。(「初音ミク」という名前に存在する商標権も問題としてあったが、音楽の権利と直接関係がない話なので除外する)。
双方の細かい主張は、ここに書くと齟齬が発生しそうなのでパス。ここまでの記事を読んだ上で、共同コメントや議論の流れを追えば、かなりの部分が理解できるだろう。この件に関する議論に関しても掲示板部に任せる。
- 原盤権は人に譲らない
- (ドワンゴなどの)第三者に自分の著作物を扱わせる時は、著作権という大雑把な枠組みで考えず、どの権利をどう扱うかを個別に考える。
- 権利を他人へ譲渡/信託する際は、そのメリットとデメリット、代替選択肢をきちんと検討する
辺りになるだろう。
関連動画
コミュニティ
関連項目
- 無方式主義
- 知的財産権
- 大人の事情
- 著作権切れ
- 著作権フリー
- パブリックドメイン
- CCCD
- ディズニー - ビジネスに置ける著作権のあり方を固めたある意味すべての元凶 (先駆けではない)
- 著作権の非親告罪化
- 著作権法違反の厳罰化
- サンプリング
- 初音ミク
- グレーゾーン
- 新垣隆(ゴーストライター)
- 模写 / トレース / トレパク / コピー
- パクリ / 盗用
- パチモン / 偽物
- 海賊版
- 映画泥棒
- 著作隣接権
- クリエイティブコモンズ
- ライセンス
- アニメ / 漫画 / 小説 / ゲーム / 映画
- 映像 / 音楽 / 写真 / デザイン / キャラクター
- パロディ / オマージュ / リスペクト
- 二次創作 / オリジナル
- JASRAC
関連リンク
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