敵国とは、自国に敵対している国、また戦争の相手国である。究極的な言い方をすれば自国以外すべての外国
敵国条項
国連憲章の53条と107条(と77条の一部)のこと。第二次世界大戦中に枢軸国であった国が戦後決まったことを覆そうとしたりした時は国連加盟国は制裁できるとした53条と、旧敵国に対しておこなった戦後措置は憲章によっても無効にならないという107条と、敵国から分離される地域について定めた77条のこと。
ここでいう敵国は「第二次世界大戦中の国連憲章のいずれかの署名国の敵国」としか定義されておらず具体的な国名は記されていないが、枢軸国のうち併合されていた国やタイを除く日本、ドイツ、イタリア、ルーマニア、フィンランド、ブルガリア、ハンガリーであるとされる。
「70年以上たった今も敵国扱いされている」として問題視されることがあるが、実際には1995年の第50回国連総会で改正・削除が決議されており、現在は既に死文化しているとの見方が一般的。現在の日本政府も「現在においては、いかなる国も旧敵国条項を援用する余地はもはやない」としている。
ただし国連憲章改正に当たって安保理常任理事国5カ国を含めた国連加盟国の2/3による批准が必要で、いつものように中国とロシアがゴネるのが目に見えているため削除の実現には至っていない(特にロシアはソ連時代から北方領土領有の根拠として敵国条項を援用してきた実績がある)。
敵性
敵国の文化、物、言語、人のこと。第二次世界大戦中は日本にとっては英語やキリスト教などが該当し、キリスト教系の学校は改名をせまられたり、英語を日本語に置き換えて英語を使わないようにしたが、法的な強制があったわけではなく、また工場などでは日本語にできない部品も多かった為、意外と不徹底であったともいわれる。
日本以外では、ロシアと対立したグルジアがロシア語読みの国名から英語読みのジョージアに改名した例や、韓国の日本からの借用語排除運動、第一次大戦でドイツと敵対したイギリスが王朝の名前を変更したりした例や、アメリカでイラク戦争の際開戦をめぐって意見が対立したフランスのものに敵性があるとされ、フランス語に堪能な政治家が叩かれたりフレンチフライをフリーダムフライに言い換えようとした例や、第二次大戦中の日系人収容などがある。
仮想敵国(想像敵国、対象国)
戦争の相手国となる可能性があると見なされている国、あるいは安全保障上のリスクとなることが想定されている国のこと。これらの国々を念頭に置いたうえで国家安全保障戦略を練るのである。
問題は、その対象国と国交が断絶しているとは限らない点である。現状で貿易も国際交流も行っている相手国であったりもするので、おおっぴらに「仮想敵国」と名指ししたりすると様々な点で都合がよろしくない。そのため、現在の公的文書などで、国交がある特定の国を指して「仮想敵国」という刺激的な言葉が用いられることはまずない。
しかし、防衛省が毎年出している防衛白書などをよく読むと、中国・北朝鮮・ロシアの動きについて警戒する記述がある。また、中国・ロシアの飛行機や潜水艦に対するスクランブル(空自の戦闘機の緊急発進)や海上警備行動(海自の艦艇や航空機による追尾行動)の記録も公表している。そのため、日本の防衛省がこれら中国・北朝鮮・ロシアの三国を安全保障上の脅威、つまりある意味での「実質的な仮想敵国」と見なして警戒対象としていることは暗黙の了解となっている。
ただし防衛白書内では、中国・ロシアとの防衛交流について紹介されるとともに、「中国の軍事・安全保障政策の透明性の向上を図るとともに、不測の事態の発生の回避・防止のため……」「隣国であるロシアとの間で、不測の事態や不必要な摩擦を招かないためにも……」と言った、緊張緩和を目指す内容も掲載されており、「敵国」という響きから想像されるような「完全に敵対している」という状態ともまた異なる。北朝鮮についてはお察し下さい。
日韓の間に竹島問題が存在している関係から、インターネット上などでは韓国についても「仮想敵国である」とする意見もある。だが防衛白書内では同国については、日韓で戦略的利害を共有していること、日米韓の同盟・協力体制が安全保障上重要であることが一貫して説かれている。さらには情報保護協定及び物品役務相互提供協定(ACSA)の締結の重要性にまで言及されており、基本的に防衛白書内では同盟国扱いしていると言ってよい。
だが近年の日本の防衛白書や韓国の国防白書には、竹島について「わが国固有の領土」という趣旨の記載が毎年掲載されており、それに対して両国ともに相手国に「厳重に抗議」している。「仮想敵国」と言えるほどであるかは疑問符が付くが、日韓両国間に互いの主張が対立する点が存在していることは否めない。
(※この節は防衛省・自衛隊|平成28年版防衛白書などを参考とした)
敵国に関する格言
「自国以外の国は全て敵国である」 ウィンストン・チャーチル
関連項目
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