ガリル(Galil)とは、イスラエルのIWI(イスラエル・ウェポン・インダストリーズ)社が生産するアサルトライフルである。
名称は開発者の一人イスラエル・ガリリと、イスラエル領内のガリラヤ地方の二つにちなんでいる。
概要
1960年代にスタートしたFN FALに替わるイスラエル軍新制式突撃銃プロジェクトのため、イスラエル・ガリリを始めするチームが設計したアサルトライフルである。
全体的に見ればAK-47のコピーと言った感じではあるが、厳密にはフィンランドのバルメ社がオリジナルAKをベースに設計したRk62へイスラエルならではの改良を加えた亜流品であり、見方によってはオリジナル設計のライフルであるとも言える。
また、バルメ社のみならずアメリカのコルト社やキャデラックゲージ社などからも部品を調達、ストックはFALの品を流用し、イスラエル国内で組み上げた物を試作品とした事から、諸外国からは「寄せ集め部品ライフル」のあだ名を付けられてしまっている。
だが、当時のイスラエルは戦時下で完成品の輸入は難しく、また他国に新型銃器開発の計画を知られたくないがた部品調達の分散化が図られた経緯によるもので、当時の事情を考えれば仕方なかったと考えられる。
口径・使用弾薬は5.56mm×45系を主とするが、7.62mm×51や7.62mm×39、.30カービンのモデルも存在する。5.56mmでは基本装弾数35発の専用マガジンを用いるほか、M16系STANAGマガジン(基本30発)もアダプター併用で流用可能としている。
アイアンサイトはAKオリジナルではなく、バルメRk62の物をそのまま流用。機関部上のフロントサイトからガス・ピストン上部のリアサイトまでの距離は短く、接眼距離を短くとる事で逆光の反射を防ぎやすいため、日差しの強いイスラエルでは利点となる。
レシーバー右側面にあるAK-47由来の大型セレクターに加えて、別の小型セレクターもグリップ左側面上部にあるが、とても固く親指一本で操作出来る代物では無いらしい。
イスラエル軍に採用された後の生産・販売は、IMI(イスラエル・ミリタリー・インダストリーズ)社の小火器(銃器開発)部門が担当していた。
現在では小火器部門が独立したIWI社によりガリルの生産・販売が引き継がれ、改良も行われている。
バリエーションは大別して旧世代型と新世代型『ガリル・エース』(Galil ACE)の二種があり、その中で更に仕様の異なるモデルが複数存在する。
ガリルの採用状況
イスラエル軍では1972年に制式採用し配備される事となった。
だが同時期にアメリカとの間で中古M16系を大量購入・輸入する事が決まり、現在では比較的少数の納入に留まってしまっている。
ガリルの本格採用に至らなかった厳密な理由は不明だが、中古M16との値段の差や政治的判断以外にも約4.5キロ(ARM)もの重量が祟り、M16系と比べて歩兵の一部には重量がやや苦痛に感じてしまうだろう点もイスラエル軍が全面採用しなかった理由の一つと考える人も多い。
M16全面採用の経緯もあり、その後IMI社(当時)は積極的な輸出を開始した。
結果はおよそ20ヶ国へ採用され、イスラエル製銃器ではウージー短機関銃に続き商業的な成功を収めた。
栓抜き
このガリル突撃銃の大きな特徴として、基礎のARMモデルには何と“栓抜き”として使える溝がハンドガードのバイポッド固定部分に加工されている点が挙げられる。
他に類を見ない栓抜き機能を採用した理由は、イスラエル軍の兵士が飲み物の瓶の王冠を外すためにFALの銃剣装着部分やマガジンの給弾口部分(厳密には先端のリップと呼ばれる部分)を使い変形させてしまい、駄目にしちゃった事に対して設計者のガリリ氏が生真面目に対策を練った結果、この世にも奇妙な機能が備わったとされている。
なお、バイポッドの基部もワイヤーカッターとして扱う事が可能である。AK-47の銃剣に加工されたワイヤーカッター機能と比べて、銃自体と一体化させたことや長い二脚のお陰で比較的少ない力でワイヤーの切断を可能としたが、垂直方向ならいざ知らず、水平方向のカットでは身体を高くしないと切りにくいため、実戦では物陰から身体を晒してしまう可能性がある(AKなら水平方向でもOK)。
だが、ARM以外の派生モデルでは栓抜き機能は一切排除されてしまい、以降のIWI社製銃器でも採用された事はなく、ガリルARMだけが銃器史上唯一の栓抜きライフルとして歴史に名を残す事になりそうである。
省かれた理由ですか?…お察し下さい。それから黒歴史とか言うなよ!絶対に言うなよ!
余談だが、ガリルの原型であるバルメRk62のマガジン・リップもその形状から同様に栓抜きとして扱われ、故障の要因になっていた事がある。
このRk62の呪われし血筋経緯がガリリ氏の栓抜き導入に影響を及ぼしたのかどうか、は…。
さらに余談ではあるがH&K社のG36は、ストックを折りたためばそこで栓を開けられる。
もっともこちらの栓抜きはガリルと違い設計者の想定外の使い方であろうから、史上唯一の栓抜き付きライフルの名前はまだまだ揺るぐことはなさそうである。
旧世代バリエーション
ARMを基本に4種類の機種が存在する。
- ARM(アサルトライフル&マシンガン)
- 簡易的な軽機関銃や狙撃銃の用途を兼ねた基礎モデル。栓抜きが付いてるのはこいつだけ。
派生種として、ARMの7.62mm対応型をベースに狙撃用途特化の改修を施した「ガラッツ」が存在する。
現在のIWI社ではオリジナルのARMは生産されておらず、派生機種のガラッツのみに縮小されてしまった模様。 - AR(アサルトライフル)
- ARMの一部部品を簡素化した一般的なモデル。
- SAR(ショートアサルトライフル)
- ARより短めのバレルを装備したカービンモデル。
- MAR(マイクロアサルトライフル)/マイクロガリル
- SARより更に短いバレルを装備し、短機関銃並みの短い全長にしたモデル。
極端なバレルの短さ故に野戦向きではないが室内戦闘・市街戦には向き、
IWI社では従来のUZIやMP5など短機関銃を使っていた特殊部隊や警察機関向けとしている。
コッキングハンドルを左側に移し、操作性を高めた改良型のマイクロガリル・ポリス、口径.30カービンの派生種「マガル」が存在する。
新世代バリエーション『ガリル・エース』
IWI社により近代戦闘向けに改修されたガリル。
それまで部分的な採用だったポリマーを更に機関部などにも多用、従来と比較して大幅な軽量化を達成した。
それに伴う各種機器搭載前提のピカティニーレールの大幅配置、MARで見られた左側のコッキングハンドルは標準仕様に、二つのセレクターは更に小型化し操作性も向上、ストックはM4カービン系の伸縮式ストックに変更されるなど、外観は従来のガリルとは違った印象を受ける。
バリエーションも簡略化され、大まかに口径別の3種に別けられている。
新たにAK-47向けの口径7.62mm×39を扱えるバリエーション(エース30系列)も誕生した。
ちなみに7.62mm×39は本来のAK-47の口径であり、ある意味で先祖返りしたと言えなくもない。
余談だが、本来の7.62mm×39では強めの反動や命中精度に問題があるからこそ、わざわざガリル氏が小口径化したと言うのに…(ry
- エース20系列(エース21/22/23)
- 5.56mm NATO口径のシリーズでエース系統の基礎モデル。括弧内左からMAR、SAR、ARに相当する。
- エース30系列(エース31/32)
- 7.62mm×39口径のシリーズ。括弧内左からMAR、SARに相当し、現状ではフルサイズのAR(33?)は存在しない。
- エース50系列(エース52/53)
- 7.62mm×51 NATO口径のシリーズ。括弧内左からSAR、ARに相当し、30系列とは対照的にMAR(51?)は存在しない。
バイポッドや各種照準器の取り付けで狙撃仕様にも出来る他、従来の7.62mm×51口径モデルでは外されていたフルオート機能が復活した。
これも兵器マーケットの流行に合わせたからっぽいけど、反動は大丈夫なのか非常に心配です。
関連動画
関連項目
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